(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385649
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】バイフューエルエンジンにおける燃料切替装置
(51)【国際特許分類】
F02D 19/06 20060101AFI20180827BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
F02D19/06 D
F02D45/00 301M
F02D45/00 374Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-106615(P2013-106615)
(22)【出願日】2013年5月20日
(65)【公開番号】特開2014-227869(P2014-227869A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153122
【氏名又は名称】株式会社ニッキ
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100178342
【弁理士】
【氏名又は名称】土田 新
(72)【発明者】
【氏名】ママット アブドゥカディル
(72)【発明者】
【氏名】安藤 芳之
(72)【発明者】
【氏名】ウメルジャン サウット
【審査官】
田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−336499(JP,A)
【文献】
実開昭58−102747(JP,U)
【文献】
実開昭59−137350(JP,U)
【文献】
特開2009−13880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D13/00 − 28/00
F02D41/00 − 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各気筒に備えた基本燃料に対応したインジェクタから基本燃料用ECUの電子的な制御により適切な燃料噴射量を調節して基本燃料を噴射する基本燃料噴射装置を有するエンジンに、前記基本燃料と異なる種類の別種燃料を後から付加し各気筒に備えた別種燃料噴射用インジェクタから別種燃料用ECUによる電子的な制御により適切な噴射量を調節して噴射する別種燃料噴射装置を付加して、基本燃料と別種燃料とを選択的に切替えて単一エンジンの運転制御を行うバイフューエルエンジンにおける燃料切替装置において、前記別種燃料用ECUに備えた燃料切替スイッチから選択された現走行中燃料モードとは異なる燃料への燃料切替CPU入力信号の入力に基づいて前記基本燃料用ECUから出力される燃料切替CPU出力信号の論理否定と基本燃料インジェクタ用パルス信号の論理否定との論理積による合成を行い基本燃料噴射禁止信号または基本燃料噴射許可信号を生成することで基本燃料インジェクタからの基本燃料の噴射、非噴射を制御し、基本燃料と別種燃料のどちらか一方の燃料噴射のみを許可することを特徴とするバイフューエルエンジンにおける燃料切替装置。
【請求項2】
基本燃料走行モードから別種燃料走行モードへ燃料切替を行う場合に、基本燃料ECUから別種燃料ECUへ送信される基本燃料インジェクタ用パルス信号を別種燃料ECU内の基本燃料動止インタフェース回路において、燃料切替CPU出力信号の論理否定と基本燃料用ECUの基本燃料インジェクタ噴射用パルス信号の論理否定との論理積による合成処理を実行することにより、基本燃料噴射禁止信号を生成し、基本燃料インジェクタからの基本燃料噴射を止めることを特徴とする請求項1に記載のバイフューエルエンジンにおける燃料切替装置。
【請求項3】
別種燃料走行モードから基本燃料走行モードへ燃料切替を行う場合に、前記別種燃料用ECU内の基本燃料噴射動止インタフェース回路において、燃料切替CPU出力信号の論理否定と基本燃料用ECUの基本燃料インジェクタ噴射用パルス信号の論理否定との論理積の合成処理を行い、基本燃料噴射許可信号を生成するとともに別種燃料噴射停止信号を別種燃料用ECU内の別種燃料インジェクタ駆動用インタフェース回路へ出力し別種燃料の噴射を確実に終了させ、基本燃料の噴射を許可することにより別種燃料走行時に基本燃料の漏れや誤噴射を防ぐことを特徴とする請求項1に記載のバイフューエルエンジンにおける燃料切替装置。
【請求項4】
前記基本燃料噴射許可信号は、基本燃料インジェクタのローサイドを駆動している別種燃料用ECU内のFETを基本燃料インジェクタ用パルス信号にてオン/オフさせることにより、基本燃料を噴射させ、前記基本燃料噴射禁止信号は、基本燃料インジェクタのローサイドを駆動している別種燃料用ECU内のFETをオフにすることにより基本燃料の噴射を止めることを特徴とする請求項1,2または3に記載のバイフューエルエンジンにおける燃料切替装置。
【請求項5】
別種燃料用ECU内に備えられた別種燃料用CPUの別種燃料インジェクタ噴射制御用のロジック演算により、別種燃料噴射停止信号が別種燃料インジェクタ駆動用インタフェース回路を経て、別種燃料インジェクタを遮断し、別種燃料の噴射を停止させることを特徴とする請求項3記載のバイフューエルエンジンにおける燃料切替装置。
【請求項6】
気筒が複数であり、各気筒に基本燃料インジェクタ及び別種燃料インジェクタが配置された請求項1〜5に記載の燃料切替装置を有するバイフューエルエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類の燃料を必要性に応じて確実に精度よく切替できるバイフューエルエンジンにおける燃料切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一つのエンジンについて、例えばガソリンと圧縮天然ガス(CNG)やガソリンとLPGのような異なる燃料を用いて走行可能としたバイフューエルエンジンを搭載した車両が知られている。
【0003】
そして、このバイフューエルエンジンを用いた車両は、走行環境の変化に応じて使用される燃料の最適な条件を引き出すことができるため、極めて経済的であるとともに、状況に応じて燃料を選択できるため環境にもやさしいとされ、世界的にも導入が進んでいる。
【0004】
また通常、バイフューエルエンジンを搭載した車両は、元々単一燃料の車両であったものを改造してバイフューエルエンジンシステムを導入することが多いため、これらの車両には、基本燃料(例えばガソリン)の噴射制御のための電子制御装置(以下、「ECU」という。)と別種燃料(例えばCNG)の噴射制御のためのECUとが別個に備えられている。
【0005】
そして、このバイフューエルエンジンシステムをスムーズに制御するためには、元から備えられている基本燃料用ECUと後から付加された別種燃料用ECUとを通信可能に接続し、燃料切替信号を通信経由で共有することにより、外部リレーにより切替制御を行っているが、その通信方式としては一般的にCAN通信システムが使用されていることから基本燃料用ECUの制御内容の調整が必要になるため、後から付加される別種燃料用には向いていない。
【0006】
そして、CAN通信を可能としたバイフューエルシステムの場合に、2つの異なる燃料用のECUの制御方法としては、例えば、特許文献1の公報に記載されている基本燃料用ECUにおいて生成された燃料噴射信号を、一度別種燃料用ECUに入力し、別種燃料用ECUがその時に選択されている燃料の状態に応じて燃料噴射信号を基本燃料ECUからの燃料噴射信号のまま出力するか、別種燃料用に補正をして出力するかを選択することによりインジェクタに噴射する燃料を制御するバイフューエルエンジンにおける燃料切替装置が知られている。
【0007】
しかしながら、前記公報に記載の燃料切替装置の場合には、基本燃料から別種燃料への燃料噴射の切り替えタイミングにおいて、基本燃料の燃料切り替え信号の受信タイミングと別種燃料への燃料噴射信号の受信タイミングに受信時の遅れによるズレが生じた場合に、基本燃料と別種燃料が同時に噴射されるおそれがある。加えて、CAN通信を使うためには、この二つのECUの通信周期の同期をとる必要があり、後から付加されるシステムにおいてはコスト的にも高価になる可能性がある。
【0008】
このような、異なる燃料の同時噴射は、エミッションの悪化やエンジンの出力の低下を招来する原因となる。そこで、このようなエンジンの燃料切り替え時の不具合を解決する手段として、特許文献2に記載の公報にあるように、特定気筒の圧縮行程、膨張行程、排気行程、吸気行程を1サイクルとして、前記燃料切替要求が発生した場合に、2つのECU間における信号の送受信を制御して、燃料切替信号の通信の遅れを原因とする両燃料の同時噴射及び未噴射を防止してエンジントラブルを防止するバイフューエルエンジンにお
ける燃料切替装置が提示されている。
【0009】
しかしながら、前記公報に提示されているような燃料噴射制御方法を用いた場合においても、基本燃料用ECUにおいては基本燃料の噴射制御を行い、別種燃料用ECUでは別種燃料の噴射制御を実行しているため、別種燃料で走行中に基本燃料用の信号を誤って受信し基本燃料が別種燃料と同時に噴射されるおそれがある。
【0010】
また、前記公報に記載のバイフューエルエンジンの制御システムにおいては、基本燃料用ECUで生成された信号を補正して別種燃料用の燃料噴射制御信号として用いており、別種燃料用ECUにどうしても基本燃料用ECUとの強い関連性が求められることとなるため、後から付加する場合においても、従前から設置されている基本燃料用ECUの特性に合わせて別種燃料用ECUを細かく調整する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−206772号公報
【特許文献2】特開2012−41873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、燃料の切替時または片方の燃料で走行中に他方の燃料の漏れを確実に防止するとともに、基本燃料用ECUの特性に合わせて特別な調整を必要としない別種燃料用ECUを備えたバイフューエルエンジンにおける燃料切替装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明は、各気筒に備えた基本燃料に対応したインジェクタから基本燃料用ECUの電子的な制御により適切な燃料噴射量を調節して基本燃料を噴射する基本燃料噴射装置を有するエンジンに、前記基本燃料と異なる種類の別種燃料を後から付加し各気筒に備えた別種燃料噴射用インジェクタから別種燃料用ECUによる電子的な制御により適切な噴射量を調節して噴射する別種燃料噴射装置を付加して、基本燃料と別種燃料とを選択的に切替えて単一エンジンの運転制御を行うバイフューエルエンジンにおける燃料切替装置において、前記別種燃料用ECUに備えた燃料切替スイッチから選択された現走行中燃料モードとは異なる燃料への燃料切替CPU入力信号
の入力
に基づいて前記基本燃料用ECUから出力される
燃料切替CPU出力信号の論理否定と基本燃料インジェクタ用パルス信号
の論理否定との論理積による合成
を行い基本燃料噴射禁止信号または基本燃料噴射許可信号を
生成することで基本燃料インジェクタからの基本燃料の噴射、非噴射を制御し、基本燃料と別種燃料
のどちらか一方の燃料噴射のみを許可することを特徴とする。
【0014】
そして、基本燃料走行モードから別種燃料走行モードへ燃料切替を行う場合に、基本燃料用ECUから別種燃料用ECUへ送信される基本燃料インジェクタ用パルス信号を別種燃料用ECU内の基本燃料噴射動止インタ
フェース回路において、燃料切替CPU出力信号
の論理否定と基本燃料用ECUの基本燃料インジェクタ噴射用パルス信号
の論理否定との論理積による合成処理を実行することにより、基本燃料噴射禁止
信号を生成し、基本燃料インジェクタからの基本燃料噴射を止める。
【0015】
具体的には、前記基本燃料噴射禁止信号が、基本燃料インジェクタのローサイドを駆動している別種燃料
用ECU内の電界効果トランジスタ(以下、「FET」という。)をオフにすることにより基本燃料の噴射を止めることを特徴とする。
【0016】
一方、別種燃料走行モードから基本燃料走行モードへ燃料切替を行う場合に、前記別種燃料用ECU内の基本燃料噴射動止インタフェース回路において、燃料切替CPU出力信号
の論理否定と基本燃料用ECUの基本燃料インジェクタ噴射用パルス信号
の論理否定との論理積の合成処理を行い、基本燃料噴射許可
信号
を生成する
とともに別種燃料噴射停止信号を別種燃料用ECU内の別種燃料インジェクタ駆動用インタフェース回路へ出力し別種燃料の噴射を確実に終了させ、基本燃料の噴射を許可することにより別種燃料走行時に基本燃料の漏れや誤噴射を防ぐ構成としている。
【0017】
基本燃料の噴射を許可するための基本燃料噴射許可信号は、基本燃料インジェクタのローサイドを駆動している別種燃料
用ECU内のFETを基本燃料インジェクタ用パルス信号にてオン/オフさせることにより、基本燃料を噴射させることを特徴とする。
【0018】
また、基本燃料への切替時においては、別種燃料
用ECU内に備えられた別種燃料CPUの別種燃料インジェクタ噴射制御用のロジック演算により、別種燃料噴射停止信号が別種燃料インジェクタ駆動用インタフェース回路を経て、別種燃料インジェクタを遮断し、別種燃料の噴射を停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、別種燃料用ECUにおいて、基本燃料インジェクタ用のパルス信号制御と別種燃料の燃料噴射制御を実行することにより、基本燃料用のECUの制御内容等の調整なしで動作環境に影響されることなく、付加された別種燃料用ECUにおいて2種類の燃料をその必要に応じて切替えることが可能であり、また基本燃料インジェクタ用パルス信号を別種燃料用ECU内の基本燃料噴射動止インタフェース回路により確実に制御するため燃料漏れや、燃料切替時の誤作動を確実に防止することができるバイフューエルエンジンにおける燃料切替装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態にかかるバイフューエルエンジンにおける燃料切替装置の概略図。
【
図2】本発明の実施の形態にかかるバイフューエルエンジンにおける燃料切替・識別フローチャート。
【
図3】本発明の実施の形態にかかる燃料走行モード選択フローチャート。
【
図4】本発明の実施の形態にかかるガソリン燃料からガス燃料に燃料切替を行う場合の動作概略図。
【
図5】本発明の実施の形態にかかるガス燃料からガソリン燃料に燃料切替を行う場合の動作概略図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施の形態においては、基本燃料としてガソリンを用い
(以下、「ガソリン燃料」と言う)、別種燃料としてガス(例えば、CNG)を用いる
(以下、「ガス燃料」と言う)タイプのバイフューエルエンジン車を用いたが、本発明は本実施の形態に限られることはなく、他の2種類の燃料切替を必要とするバイフューエルエンジン車両においても使用可能である。
【0022】
図1は燃料切替装置の概略図であり、ガソリン
燃料車に後からガス燃料による走行性能を付加したバイフューエルエンジン車両の燃料切替装置の概略図であり、太枠の四角はそれぞれ
ガソリン燃料用のECU(以下、「ガソリンECU
」と言う)1および
ガス燃料用ECU(以下、「ガスECU
」と言う)2を示し、前記ガスECU2に燃料切替SW3からの信号が入力されると、前記ガスECU2内の各回路等において段階的な処理が行われ、最終的に
ガソリン燃料用インジェクタ(以下、「ガソリンインジェクタ
」と言う)4または
ガス燃料用インジェクタ(以下、「ガスインジェクタ
」と言う)5のどちらかからその時に選択された燃料が噴射されるバイフューエルエンジンにおける燃料切替装置全体を示している。
【0023】
図1の燃料切替装置の概略図で示しているように、まず初めに燃料切替SW3により使用する走行燃料を選択し、選択された燃料を示す燃料切替SW操作信号は、ガスECU2内に搭載されている燃料切替SW信号入力インタフェース回路22において処理され、CPU21の燃料切替CPU入力端子に燃料切替CPU入力信号として入力される。
【0024】
前記ガスECU2内のCPU21は燃料切替CPU入力端子に入力された前記燃料切替CPU入力信号を基に、燃料切替SW3において選択された燃料の識別を行い、選択された燃料の識別は
図1のガスECU2内のCPU21における燃料切替ロジック処理器にて燃料切替が所定の手段により実行される。
【0025】
前記燃料切替手段は
図2の燃料切替・識別フローチャートに示す手順により行われる。以下、具体的な手順について説明する。
【0026】
初めに燃料切替SW3により選択されCPU21の燃料切替CPU端子に入力された燃料切替CPU入力信号(Select-Fuel-Mode)を基に選択された燃料の識別を実行するため
、現在走行中燃料モード(Run-Fuel-Mode)の確認を実行する。そして、現在走行中燃料モード(Run-Fuel-Mode)と燃料切替CPU入力信号(Select-Fuel-Mode)の比較を実行する。
【0027】
ここで、例えば、現在走行中燃料モードはガソリン
燃料であると認識されたら、燃料切替SW3により選択され、燃料切替CPU端子に入力された燃料切替CPU入力信号(Select-Fuel-Mode)はガスであると判断し、走行中燃料モードをガソリン
燃料からガス
燃料に切り替えるための燃料切替処理を実行する。
【0028】
前記燃料切替処理においては、ガソリン・ガス同時噴射によるエンジンの不具合や燃料切替時におけるショック、またはエンジンストールなどを防止し、最適なタイミングでの燃料切替を実現するため、
図4に示すようにガソリン燃料走行モード側からのパルス信号のうち、燃料切替SW信号が入力され、燃料切替ロジック処理器で最適な燃料切替タイミング制御を実施し、その結果として燃料切替CPU出力信号が出力されるとガソリン燃料からガス燃料への燃料の切替が実行される。
【0029】
この時、ガソリンが誤ってガソリンインジェクタから噴射されることがないようにするため、基本燃料噴射許可パルス信号
の論理否定と基本燃料インジェクタ噴射用パルス信号
の論理否定との論理積により合成処理されて
生成されるガソリン
燃料噴射禁止信号を用いてガソリンインジェクタのローサイドを駆動しているFETをオフにすることによりガソリン
燃料の噴射を停止する。なお、燃料切替SW3により切替目的の燃料が選択された場合にはガソリンインジェクタ用パルス信号のタイミングが終了しているかを判断し、ガソリンインジェクタ用パルス信号のタイミングが終了していない場合は、前記ガソリンインジェクタ用パルス信号のタイミングが終了するまで燃料切替処理を停止する。
【0030】
ここで、前記ガソリンインジェクタ用パルス信号のタイミングが終了したか否かの判定は
図1に示すガソリンECU1のガソリンインジェクタ用パルス信号端子からのパルス信号をガスECU2側に備えられたガソリンインジェクタ噴射用パルス信号処理インタフェース回路24を通して前記ガスECU2側のCPU21のガソリンインジェクタ用パルス入力信号端子に入力されたガソリンインジェクタ用パルス入力信号を基に、燃料切替ロジック処理器にて判定する。
【0031】
そして前記ガソリンインジェクタ用パルス信号のタイミングが終了したものと判定されると、ガスECU2に搭載されているCPU21の燃料切替ロジック処理器により、燃料切替SW3において選択された燃料を、現在走行中燃料モード(Run-Fuel-Mode=Select-F
uel-Mode)として新たに設定する。本実施の形態においては、ガソリン燃料走行モードからガス燃料走行モードに切替える処理をおこなう。
【0032】
ここで、
図3に燃料走行モードの切替処理について燃料走行モード選択フローチャート概略図に示した。
【0033】
本実施の形態において、燃料走行モードの切替処理は、噴射燃料であるガソリンからガスへの切替処理を実行後に、ガソリン燃料の漏れや外部ノイズ等を原因とする誤作動による不具合などを防止するため、ガスECU2に配置された燃料切替CPU出力端子からガソリン噴射禁止信号(SW-Fuel-Mode = High)を出力する。
【0034】
そして、ガスECU2のガソリン噴射動止インタフェース回路23において、ガソリンECU1からガスECU2に入力されるガソリンインジェクタ用パルス信
号の論理否定とガソリン噴射禁止信号の
論理否定の論理積による合成処理
を行い、ガソリン燃料のガソリンインジェクタによるガソリン燃料噴射を完全に止めることが可能となり、2つのECU間の通信の遅れやズレ等を原因とする誤動作・燃料漏れなどを完全に防止することができる。
【0035】
ガソリンの噴射が完全に止められると、ガス噴射を行うためのガスインジェクタ用パルス信号をガスインジェクタ噴射制御ロジック演算により算出し、前記ロジック演算により算出されたガスインジェクタ噴射パルス信号はCPU21のガスインジェクタ噴射パルス信号出力端子より出力され、ガスインジェクタ駆動用インタフェース回路25を通して、ガスインジェクタ5を駆動し、ガス燃料の噴射を開始するとともに、ガス燃料走行へ移行する。
【0036】
次に、ガス燃料からガソリン燃料に燃料切替する場合の手順について説明する。
【0037】
現在走行中モードの燃料がガス
燃料であると認識された場合には、燃料切替SW3により選択され、燃料切替CPU端子に入力された燃料切替CPU入力信号燃料(Select-Fuel-Mode)はガソリンであると判断し、走行中燃料モードをガス
燃料からガソリン
燃料に切り替えるための切替処理を実行する。
【0038】
図5に示すようにガス燃料走行モードからガソリン燃料走行モードへの燃料切替処理においては、ガスECU2内のガソリン燃料動止インタフェース回路23において、燃料切替CPU出力信号
の論理否定とガソリン用ECU1のガソリンインジェクタ噴射用パルス信号からガソリン噴射許可パルス信号
の論理否定との論理積による合成処理を実行するとともに、ガスインジェクタ噴射制御ロジック演算により求められたガス噴射停止信号をガスECU2内のガスインジェクタ駆動用インタフェース回路25へ出力しガスの噴射を確実に終了させるとともに、ガソリンの噴射を許可することによりガソリン走行時にガスの漏れや誤噴射を防ぐように構成され、前記ガソリンの噴射を許可するためのガソリン噴射許可信号は、ガソリンインジェクタ4のローサイドを駆動しているガスECU2内のFETをオン/オフさせることにより、ガソリンを噴射させることにより実行される。
【0039】
また、ガスECU2内に備えられたCPU21のガスインジェクタ噴射制御用のロジック演算により、ガス噴射停止信号がガスインジェクタ駆動用インタフェース回路25を経て生成されると、ガスインジェクタを遮断し、ガスの噴射を確実に停止させる。
【0040】
なお、燃料の切替タイミングについては、ガス燃料噴射中にガソリン燃料噴射への切替を行わないようガスインジェクタ用パルス信号のタイミングが終了しているかを判断し、ガスインジェクタ用パルス信号のタイミングが終了していない場合は、前記ガスインジェクタ用パルス信号のタイミングが終了するまで燃料切替処理を停止する。
【0041】
ここで、前記ガスインジェクタ用パルス信号のタイミングが終了したか否かの判定は
図1に示すガスインジェクタ噴射制御ロジック演算により算出されるガスインジェクタ用パルス信号を基に燃料切替ロジック処理を実行して判断する。
【0042】
そして、前記ガスインジェクタ用パルス信号のタイミングが終了したものと判断されると、ガスECU2に搭載されているCPU21の燃料切替処理により、燃料切替SW3において選択された燃料を、現在走行中燃料モード(Run-Fuel-Mode=Select-Fuel-Mode)として新たに設定する。今回の場合においては、ガス燃料走行モードをガソリン燃料走行モードに切替処理を行う。
【0043】
ここで、実行される燃料走行モードの切替処理は
図3の燃料走行モード選択フローチャートに示した。
【0044】
燃料走行モードの切替処理については、噴射燃料のガスからガソリンに切替処理を実行後に、ガス燃料の漏れや外部ノイズなどを原因とする誤作動による不具合などを防止するため、ガスECU2内のCPU21においてガスインジェクタ噴射制御ロジック演算を実行し、ガスインジェクタ用パルス信号出力端子からのガスインジェクタ用パルス信号を止める。
【0045】
そして、燃料切替CPU出力端子からガソリン噴射許可信号(SW−Fuel−Mode=Low)を出力し、ガソリン噴射動止インタフェース回路23にて、ガソリンECU1からガスECU2に入力されるガソリンインジェクタ用パルス信号とガソリン噴射許可信号の
合成処理を実行することにより、ガソリンインジェクタ駆動信号出力し、ガソリンインジェクタ4によるガソリン燃料の噴射を許可する。
【0046】
この結果、ガソリンインジェクタ4によるガソリン噴射が実行され、ガソリン燃料走行モードに移行する。
【0047】
以上のように、本実施の形態に示したバイフューエルエンジンの燃料切替装置は、後から付加された別種燃料であるガス燃料のインジェクタの噴射制御を行うためのガスECU2に、ガソリンECU1からガソリンインジェクタパルス信号を取り込み、ガソリンインジェクタへのガソリンインジェクタ用パルス信号の出力を制御する構成としたことにより、ガソリン走行時においてはガソリン噴射動止インタフェース回路23にて
演算処理されたガソリン噴射許可信号により、ガスインジェクタ噴射制御ロジック演算処理にてガスインジェクタ噴射停止信号が制御され、ガスインジェクタ用パルス信号が止められ、逆にガス走行時においては、ガソリン噴射動止インタフェース回路23にて
演算処理されたガソリン噴射禁止信号が出力されガソリンインジェクタ用パルス信号が止められるため、燃料切替信号の通信の遅れを原因とするようなガソリン
燃料とガス
燃料の同時噴射や、燃料漏れ等の不具合を確実に防ぐことができる。
【0048】
尚、本実施の形態では1つの気筒について説明したが、多気筒の場合も各気筒について同様の切替装置により同様な処理がなされる。
【符号の説明】
【0049】
1 ガソリンECU、2 ガスECU、3 燃料切替SW、4 ガソリンインジェクタ、5 ガスインジェクタ、21 CPU、22 燃料切替SW信号入力インタフェース回路、23 ガソリン噴射動止インタフェース回路、24 ガソリンインジェクタ用パルス信号処理インタフェース回路、25 ガスインジェクタ駆動用インタフェース回路