特許第6385650号(P6385650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デピュイ・ミテック・エルエルシーの特許一覧

特許6385650無外傷的股関節アクセスのための股関節オブチュレーター及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385650
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】無外傷的股関節アクセスのための股関節オブチュレーター及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3211 20060101AFI20180827BHJP
   A61B 17/56 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   A61B17/3211
   A61B17/56
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-109697(P2013-109697)
(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公開番号】特開2013-244411(P2013-244411A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2016年5月24日
(31)【優先権主張番号】13/480,509
(32)【優先日】2012年5月25日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507083478
【氏名又は名称】デピュイ・ミテック・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・クリーブランド
(72)【発明者】
【氏名】ベサニー・エフ・グラント
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・トロネン
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−538933(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0087258(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0319839(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0157999(US,A1)
【文献】 特表2010−518902(JP,A)
【文献】 米国特許第5607440(US,A)
【文献】 国際公開第2008/103308(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/32−17/3217
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端を有する軸方向に細長い本体と、
前記本体を通って前記遠位端まで至る貫通孔と、
刃先を備えた収納可能なブレードであって、前記刃先が前記本体内に配置される収納位置及び前記刃先が前記本体の前記遠位端から延出する延伸位置を有する、ブレードと、
前記本体遠位端における前記本体の遠位先端と、を含み、
前記遠位先端は本体遠位端直径よりも小さい外径を有して、前記遠位先端と前記本体遠位端との間に遠位側に向いたアバットメントを形成しており
前記ブレードが前記延伸位置にあるときに前記刃先が前記遠位先端を超えて遠位側に延出せず、また前記本体の遠位端直径を超えて横方向に延出せず、
前記ブレードが、側辺部分と、逃げを有する遠位部分とに沿って延在する、刃先を有する、股関節包を貫通するための股関節鏡オブチュレーター。
【請求項2】
前記ブレードが、前記収納位置に向かって偏向されている、請求項1に記載の股関節鏡オブチュレーター。
【請求項3】
前記本体遠位端の近位側に配置され、前記ブレードに接続された手動係合可能な作動装置を更に含み、これによりユーザーが前記ブレードを前記延伸位置に延伸させることができる、請求項1に記載の股関節鏡オブチュレーター。
【請求項4】
前記本体が中央長手方向軸を有し、前記貫通孔が前記遠位端で前記中央長手方向軸から横方向にオフセットされている、請求項1に記載の股関節鏡オブチュレーター。
【請求項5】
前記ブレードが、前記アバットメントを通って前記収納位置から前記延伸位置へと動くことができる、請求項1に記載の股関節鏡オブチュレーター。
【請求項6】
前記貫通孔が前記遠位先端を通って延在している、請求項4に記載の股関節鏡オブチュレーター。
【請求項7】
前記貫通孔を通って延在するガイドワイヤーを更に含む、請求項1に記載の股関節鏡オブチュレーター。
【請求項8】
中に貫通する軸方向管腔を有するカニューレを更に含み、前記オブチュレーターが、この管腔内に受容される、請求項1に記載の股関節鏡オブチュレーター。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、関節、特に股関節へのアクセスを提供する外科用ツール及び方法に関する。
【0002】
股関節は、大腿骨頭及び大腿骨頸部の大半を包み込む保護関節包によって覆われている。股関節の手術を行うためには、外科医はまずこの関節包を貫通して、関節内部へのアクセスを得なければならない。現行のアクセス技法には、ニチノールガイドワイヤーを後ろにつなげた細長い腰椎穿刺針を導入することが挙げられる。遠位端が弾丸状で、直径が最終的に4.5〜5.5mmとなるカニューレ型拡張器をガイドワイヤーに沿って押し進め、関節包に侵入させる。この器具を関節包に挿入するにはかなりの力が必要であり、抑制されない状態で器具が関節包を突き破り、時にはその内部の大腿骨頭、関節唇、又は臼蓋軟骨を損傷することが珍しくない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、単純かつ洗練された設計で、従来技術のこれらの制限及び他の制限を克服する。
【0004】
本発明による外科器具は、股関節包を貫通するための股関節鏡オブチュレーターを含む。このオブチュレーターは遠位端を有する軸方向に細長い本体と、その本体を通って遠位端まで至るカニューレと、刃先を含む収納可能なブレードとを含み、この収納位置では刃先が本体内に配置され、延伸位置では刃先が本体の遠位端から延出する。
【0005】
好ましくは、このブレードは収納位置に向かって偏向力がかけられている。好ましくは、手動で係合可能な作動装置が本体遠位端の近位側に配置され、ブレードに接続されており、これによってユーザーがブレードを延伸位置に延長させることができる。
【0006】
好ましくは、本体は中央長手方向軸を有し、カニューレは遠位端でこの軸から横にずれている。好ましくは、本体遠位端にある本体遠位先端は、本体遠位端直径よりも狭い外径を有し、これによりこれらの間に遠位向きのアバットメントを形成している。好ましくは、ブレードはアバットメントを通って収納位置から延伸位置へと可動である。好ましくは、ブレードが延伸位置にあるときに、刃先が本体の遠位先端から遠位側に超えて延出せず、また本体の遠位端直径を横方向にも超えない。好ましくは、カニューレは遠位先端を通って延在する。
【0007】
好ましくは、ガイドワイヤーがカニューレを通って延在する。
【0008】
好ましくは、更に、中に貫通する軸管腔を有するカニューレが提供され、オブチュレーターがこの管腔内に受容される。
【0009】
本発明による方法は、股関節鏡手術における股関節包へのアクセスを提供する。この方法は、軸方向に細長い本体を含むオブチュレーターの遠位端を股関節包に接触させるステップと、刃先を有する収納可能なブレードを、刃先が本体内に配置されている収納位置から、刃先が本体の遠位端から延出している延伸位置へと延長させて、股関節包に当て、股関節包を切断するステップと、を含む。
【0010】
好ましくは、この方法は更に、ガイドワイヤーを股関節包に挿入して股関節の空隙に入れるステップと、ガイドワイヤーに沿ってオブチュレーターを動かしてその遠位端を関節包に接触させるステップとを含む。
【0011】
好ましくは、股関節包を刃先で切断した後、ブレードは収納位置に収納される。この後、追加の切断を行うことができる。オブチュレーターは、刃先によってすでに切断された部分を通って股関節包の内側に入り込むことができ、次にブレードを再び延伸位置に延伸させて更に股関節包を切断することができる。あるいは、オブチュレーターを回転させ、ブレードを再び延伸位置に延伸させて更に股関節包を切断することができる。このような一連の内側への切断及び回転切断を手順中に一緒に採用することができる。
【0012】
好ましくは、このブレードは収納位置に向かって偏向力がかけられている。ブレードを延伸させ、股関節包を切断した後、ブレードを解放して、ブレードを収納位置に戻す。
【0013】
本発明の一態様において、軸方向の管腔が中に貫通しているカニューレを、刃先によって切断された股関節包に貫通させる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明によるオブチュレーターの側面図。
図2図1のオブチュレーターの別の側面図。
図3】ブレードが収納位置にある図1のオブチュレーターのシャフトの遠位端の側面図。
図4】ブレードが延伸位置にある図1のオブチュレーターのシャフトの遠位端の側面図。
図5A図1(FIG)のオブチュレーターがアクセスしている股関節の断面側面図。
図5B図1(FIG)のオブチュレーターがアクセスしている股関節の断面側面図。
図5C図1(FIG)のオブチュレーターがアクセスしている股関節の断面側面図。
図5D図1(FIG)のオブチュレーターがアクセスしている股関節の断面側面図。
図5E図1(FIG)のオブチュレーターがアクセスしている股関節の断面側面図。
図5F図1(FIG)のオブチュレーターがアクセスしている股関節の断面側面図。
図6A図1のオブチュレーターが貫通している図5A〜5Fの股関節の関節包の側面図。
図6B図1のオブチュレーターが貫通している図5A〜5Fの股関節の関節包の側面図。
図6C図1のオブチュレーターが貫通している図5A〜5Fの股関節の関節包の側面図。
図6D図1のオブチュレーターが貫通している図5A〜5Fの股関節の関節包の側面図。
図6E図1のオブチュレーターが貫通している図5A〜5Fの股関節の関節包の側面図。
図6F図1のオブチュレーターが貫通している図5A〜5Fの股関節の関節包の側面図。
図7A】本発明の別の一実施形態のオブチュレーターの斜視図。
図7B図7Aのオブチュレーターの断面斜視図。
図7C図7Aのオブチュレーターの断面拡大斜視図。
図8A】ブレード部材をオブチュレーターの中に搭載している様子を示す図7Aオブチュレーターの斜視図。
図8B】ブレード部材をオブチュレーターの中に搭載している様子を示す図7Aのオブチュレーターの斜視図。
図8C】ブレード部材をオブチュレーターの中に搭載している様子を示す図7Aのオブチュレーターの斜視図。
図8D】ブレード部材をオブチュレーターの中に搭載している様子を示す図7Aのオブチュレーターの斜視図。
図9】本発明によるオブチュレーターの更なる一実施形態と、それと共に使用する一連の異なるサイズのカニューレの側面図。
図10】カニューレをオブチュレーターに適切に収めるためのスペーサーを備えた、図9のオブチュレーター及びカニューレの側面図。
図11】カニューレをオブチュレーターに適切に収めるためのグロメットタイプのスペーサーを備えた、図9のオブチュレーターの斜視図。
図12A】別のブレード形状を有する、本発明によるオブチュレーターの側面図。
図12B】別のブレード形状を有する、本発明によるオブチュレーターの側面図。
図12C】別のブレード形状を有する、本発明によるオブチュレーターの側面図。
図12D】別のブレード形状を有する、本発明によるオブチュレーターの側面図。
図12E】別のブレード形状を有する、本発明によるオブチュレーターの側面図。
図12F】別のブレード形状を有する、本発明によるオブチュレーターの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び2は本発明によるオブチュレーター10を示す。これは、遠位方向に延びる細長いシャフト14を有するハンドル12を含む。シャフト14の末端は遠位側に突出した突起16は、シャフト12の中心軸線18からずれている。突起16は、近位基部20から遠位先端22へと延びている。先端22は、貫通を助け、かつ貫通時の組織損傷を回避するよう、先端が丸くなっている。24はオブチュレーター10の中を貫通し、ハンドル12からシャフト14を通り突起遠位先端22から外に出る。このは、ガイドワイヤー24を通すような寸法にされる。
【0016】
ここで図3及び4を参照し、突起基部20においてシャフト14が延びてアバットメント26を形成している。ブレード部材28はシャフト14内で動作し、遠位側に向いたブレード30を末端に備えている。ブレード30は好ましくは、突起16に隣接する遠位端32を有して傾斜しており、かつ近位方向に曲がっている。ハンドル12上のボタン34はブレード部材28に接続されており、これによりユーザーはブレード部材28を、収納位置(図3)から、遠位側へと動かす。この収納位置においては、ブレード30がシャフト14内に収納されており、ブレード30が突起遠位端22を超えない程度に露出する延出位置(図4)にはなっていない。好ましくは、ばね36又はその他の偏向力手段を提供して、ブレード部材28が自然に収納位置に戻るようにする。延出位置にあるブレード30は好ましくは遠位端22を超えて遠位方向に延出することはなく、好ましくはシャフト14の幅を超えて半径方向に延出することもない。
【0017】
ここで図5A〜5Fを参照し、オブチュレーター10の使用が股関節40を参照して説明される。ただし、例えば肩又は膝などの他の使用も可能であり、任意の関節アクセス手順への適用が期待される。股関節40は、大腿骨44上に大腿骨頭42を含み、これは寛骨臼46内に受容されている。関節唇48は軟骨の環であり、寛骨臼46を取り囲んでいる。線維性組織の関節包50が、この寛骨臼46から、大腿骨頭42と大腿骨44の他の部分との間にある大腿骨44の頸部52に至るまで延在し、股関節40を包囲している。関節包50は、股関節40を保護するための非常に強靱な線維性繊維からなっているが、この強靱さにより、外科医のアクセスが困難である。オブチュレーター10によって外科医は、従来のデバイス及び方法よりはるかに容易に、関節包50を貫通して股関節40にアクセスすることができる。
【0018】
股関節40にアクセスするには、最初に、X線透視下において、好ましいアクセス向きでカニューレ型腰椎穿刺針54を股関節40内に導入する。図5Aに見られるように、針は大腿骨頭42と関節唇48との間の間隙に入る。腰椎穿刺針54にガイドワイヤー24を通し、寛骨臼内に配置する(図5B)。腰椎穿刺針54は抜き取ることができる(図5C)。オブチュレーター10は、スコープシース56又は他のアクセスカニューレ型装置に組み立てられ、ガイドワイヤー24に沿って推し進め、関節包50にまで到達させる(図5D)。本明細書で使用される用語「スコープシース」は、関節鏡、内視鏡、腹腔鏡等の外科用視覚装置に採用されているシースを指す。オブチュレーター10は、関節包50を貫通して押し進められ、スコープシース56を収容するのに十分な大きさの穴58を形成する(図5E)。オブチュレーター10が関節包50に貫通する様子の詳細は、図6A〜6Fを参照して説明される。スコープシース56が関節包50を貫通して股関節40内に受容されたら、オブチュレーター10をここから引き抜き(図5F)、股関節40内で外科的手技を実施することができ、例えば関節鏡カメラ(図示なし)をスコープシース56内を通過させて股関節40を視覚化することができる。
【0019】
ここで図6A〜6Fを参照し、明瞭化のためオブチュレーター10はスコープシース56なしで図示されている。関節包50貫通のアクセスは、まず突起16を関節包50に近づけ(図6A)、次に、アバットメント26が関節包に接するまで、ブレード30を収納した状態のまま押し込む(図6B)。次にブレード30を延伸して、関節包組織50内に切断60を形成する(図6C)。この手順は切断60のような単一の切断を含むよう実施することができるが、より制御されたアクセスにより、複数の小さな切断60を提供することも可能であることが想像される。ここでは図6Cにおいて、ブレード30は関節包50に部分的に侵入しているのみである。切断60によりアクセスが提供されて、シャフト14とアバットメント26を、ブレード30を収納した状態で関節包50内に更に押し込むことが可能になり(図6D)、次にブレード30は再び延伸されて、切断60を更に拡大する(図6E)。そのような切断後に毎回ブレード30が収納され、数回の切断の後にシャフト14が関節包50を完全に貫通している。関節包50の厚さと使用の状況によって異なるが、典型的には約1〜5回の切断が行われ、好ましくは3回以下の切断が行われ得る。切断と、更にはアバットメント26によって、オブチュレーター10の関節包50貫通のアクセスは、爆発的又は急激なものではなく、コントロールされた状態となるため、これによって股関節40内の組織に衝撃及び損傷を与えるリスクを大幅に低減させる。
【0020】
切断は、他の向きで実施することもできる。例えば、ガイドワイヤー24を中心にシャフト14を回転させて、切断60の反対側に、あるいは星形模様に、追加の切断を行うことができる。オブチュレーター10は、中央軸線18からずれた位置に単一ブレード30を備えて示されているが、例えば中央ハブから放射状に延在する2枚以上のブレードエッジを備えたような他の構成も想像される。
【0021】
図7Aは、本発明による第2のオブチュレーター70の実施形態を示す。これはハンドル72とシャフト74を含み、シャフト74の末端にはアバットメント78を画定する突起76がある。深さ目印80がシャフト74上に提供され、好ましくは印字された深さ表記を備えた環状溝部を含む。ここで図7B及び7Cも参照し、ブレード部材82はオブチュレーター70内に取り外し可能に収納され、シャフト74内を通りかつ末端に遠位ブレード86を有する細長いロッド84を含む(図8A及び8Bを参照)。ロッド84の近位側L字型グリップ88は、ソリ90内に収納され、ハンドル72のチャンバ92内で近位側及び遠位側に動く。レバー94は軸96を中心に旋回可能に取り付けられ、ソリ90内に受容される係合脚100に接続された引き金98を有している。これによって、引き金98をハンドル72方向に押すことによって生じたレバー94の回転が、ソリ90の遠位方向への動きをもたらし、これによってブレード部材82が遠位方向に動く。チャンバ92内のバネ102は、スレッド90上のアバットメント104に対し、近位方向の偏向力をかける。ハンドルの可撓性金属ストリップ106の端がチャンバ92内に突出しており、これが引き金98の動程の最後で係合脚100の突起108に係合し、ユーザーに触覚的フィードバックを提供する。ハンドル72のラッチ110は、引き金98のスロット112に係合し、ブレード86が延伸した状態でレバー94をロックする。114はハンドル72とシャフト74の中を貫通して、ガイドワイヤー24を受容する(図7A〜7Cには図示なし)。
【0022】
図8A〜8Dは、ハンドル72内の近位側開口部106を通って、ソリ90内の対応する凹部108(図7C参照)にグリップ88が収まるまで、オブチュレーター70内にブレード部材82を装着している様子を示す。これにより、ブレード部材がソリ90と同時に近位側及び遠位側に動く。
【0023】
オブチュレーター70は、オブチュレーター10について前述したのと同様に使用される。ハンドル72及びシャフト74は再利用可能であり得、これに使用するブレード部材82は好ましくは使い捨てであり得る。したがって、使用の前に、新しい滅菌ブレード部材82が、洗浄及び滅菌処理済みのハンドル72及びシャフト74組立品に搭載される。関節包50にアクセスするために、突起76が組織内に押し進められ、引き金98をハンドル72方向に握ることによってブレード84の延伸が提供される。
【0024】
関節包にアクセスした後、ラッチ110をかけてブレード86を露出位置にロックし、これによる切断で関節包切断術を実施できるようにする。多くの手順において、最初の視覚化用の入口を確立した後、第2の入口を確立し、しばしばこれらは関節包切断術で連結される。オブチュレーター70内のブレード86を用いることによって、入口で別のブレードを使用又は交換する必要はなくなる。別の方法としては、ブレード部材82をオブチュレーター70から除去し、オブチュレーターなしで単独で使用して、関節包切断術を実施する。更に別の方法としては、図示されていないが、関節包切断術実施での切断機能を強化するため、ブレードが、突起76より更に延伸した遠位側位置を有していてもよい。
【0025】
図9は、オブチュレーター70と類似の、ハンドル122、シャフト124、及び引き金126を有する、本発明によるオブチュレーター120を示す。オブチュレーター120と共に示されているのは、サイズの異なる3本の別個のカニューレ(スコープシース)128、130及び132であり、これらはそれぞれオブチュレーター120と共に使用可能である。上段のカニューレ128は、オブチュレーター120に取り付けられた状態で示されている。シャフト124はカニューレ128内に密接に収納され、上段のカニューレ128の遠位端からアバットメント26までわずかな長さだけ(理想的には3mm以下)遠位側に突出している。もしこの長さがこれより長くなると、カニューレ128がオブチュレーター120で関節包に侵入できなくなる可能性がある。中段のカニューレ130はカニューレ128と同様の長さを有するが、より大きな直径を有し、これによりシャフト124は内部での収納が密接でないため、カニューレ130とシャフト124との間に隙間が生じ、これによって関節包を貫通するのがより難しくなる。下段のカニューレ132は上段のカニューレ128よりも大きな直径を有し、かつより短い。ハンドル122は、カニューレ128、130及び132の近位側継手136に対応するよう形づくられた受容部134を有する。ハンドル122は、受容部134と継手136との間のアダプター(図示なし)を備え、様々なカニューレメーカーによる様々なタイプ、形状、及び寸法の継手136に対応することが可能である。
【0026】
下段のカニューレ132のような短いカニューレに対応するため、スペーサー138(図10)を提供することができる。スペーサー138は近位部分140を含み、これが受容部134と継手136との間に収まり、望ましい長さのシャフト124がカニューレ128から遠位方向に延びるように、カニューレ128をシャフト124上に配置するよう適合された長さを有する。この近位端142は受容部134内に収まるよう成形することができ、この遠位端144はカニューレ継手136を受容するよう成形されている。様々な形状の近位部分遠位端144を備えた様々なスペーサー138を提供することができ、これがアダプターとしても機能して、様々なタイプ、形状、及び寸法の継手136に対応することができる。細長い管状シム146は、近位部分から遠位側に延在して、その中に貫通する管腔148と、テーパ形状の遠位端150とを有する。これはカニューレ132内にオブチュレーターシャフト124と共に収納され、管腔148内に受容される。テーパ形状の遠位端150はカニューレ132から延在し、シャフト124の直径からカニューレ132の直径に至るまで、穏やかな移行を提供する。スペーサー138はこのように、オブチュレーター120に対するカニューレ132の長さと直径両方の適合を行う。長さのみの適合を必要とするカニューレについては、スペーサー138はシム146を省略することができる。中段のカニューレ130のように適切な長さを有するが直径がシャフト124よりも大きいカニューレについては、スペーサー138は近位部分140を省略することができ、あるいは、受容部134と継手136との間に収まるよう適合された薄い環状フランジ(図示なし)のみを有し得る。あるいは、グロメットタイプのスペーサー152(図11)をシャフト124に取り付けて、シャフトとより大きい直径のカニューレ130との間の移行を提供することができる。これは好ましくは、カニューレ132との係合よりも大きな力で摩擦によってシャフト124に留まり、これによって、シャフト124から外れることなく、カニューレ132を引き戻すことができる。
【0027】
図12A〜12Fは、別のブレード設計を図示している。類似の部品は、添字以外は同様の番号で示されている。図12Aは、直線の側辺部分206a及び曲線の遠位部分208aに沿って刃先204aが延在するブレード202aを有するオブチュレーター200aを示す。ブレード202aは延伸位置として示されており、その収納位置は点線で示されている。図12Bにおいて、ブレード202bは、直線の側辺部分206b及び斜めの遠位部分208bに沿って延在する刃先204bを有する。図12Cにおいて、ブレード202cは、斜めに遠位側を向いた部分210cに沿って延在する刃先204cを有する。図12Dにおいて、ブレード202dは、直線の側辺部分206d及び直線の遠位部分208dに沿って延在する刃先204dを有する。図12Eにおいて、ブレード202eは、直線の側辺部分206eと、逃げ212eを有する尖端遠位部分208eに沿って延在する刃先204eを有する。図12Fにおいて、ブレード202fは、直線の側辺部分206fと、逃げ212fを有する曲線遠位部分208fに沿って延在する刃先204fを有する。
【0028】
本発明について、その好ましい実施形態に関連して説明してきた。明らかに、先の詳細な説明を読み理解すると、修正及び変更が他者にも思いつくであろう。そのような修正及び変更が添付の特許請求の範囲及びその等価物の範疇に入る限り、本発明はそのような修正及び変更のすべてを含むと解釈されるものとする。例えば、引き金の動きに対して一定の比で直接前進するのではなく、引き金の作動によりバネの力で前進するよう解放され得るようなブレード部材が想到される。この力は、好ましくは所定の様相によって、例えば所定の力で、ブレード部材を前進させる内部バネ又はハンマーによって提供され得る。ブレード部材の動きの遠位側限度は、好ましくは、開示されている実施形態に従って制限され得る。バネ仕掛けのセンターポンチに採用されているものと同様のメカニズムを用いて、引き金ハンドルが、バネに力をかける操作と、次いで(例えば、ブレード部材上の別個のバネ仕掛けボール戻り止めに過負荷を与えることによって)蓄積されたエネルギーを解放する操作との両方を行い得る。
【0029】
〔実施の態様〕
(1) 遠位端を有する軸方向に細長い本体と、
前記本体を通って前記遠位端まで至るカニューレ(cannulation)と、
刃先を備えた収納可能なブレードであって、前記刃先が前記本体内に配置される収納位置及び前記刃先が前記本体の前記遠位端から延出する延伸位置を有する、ブレードと、を含む、股関節包を貫通するための股関節鏡オブチュレーター(hip arthroscopy obturator)。
(2) 前記ブレードが、前記収納位置に向かって偏向されている、実施態様1に記載の股関節鏡オブチュレーター。
(3) 前記本体遠位端の近位側に配置され、前記ブレードに接続された手動係合可能な作動装置を更に含み、これによりユーザーが前記ブレードを前記延伸位置に延伸させることができる、実施態様1に記載の股関節鏡オブチュレーター。
(4) 前記本体が中央長手方向軸を有し、前記カニューレが前記遠位端で前記中央長手方向軸から横方向にオフセットされている、実施態様1に記載の股関節鏡オブチュレーター。
(5) 前記本体遠位端に前記本体の遠位先端を更に含み、前記遠位先端は本体遠位端直径よりも小さい外径を有して、これらの間に遠位側に向いたアバットメントを形成している、実施態様4に記載の股関節鏡オブチュレーター。
【0030】
(6) 前記ブレードが、前記アバットメントを通って前記収納位置から前記延伸位置へと動くことができる、実施態様5に記載の股関節鏡オブチュレーター。
(7) 前記ブレードが前記延伸位置にあるときに前記刃先が前記遠位先端を超えて遠位側に延出せず、また前記本体の遠位端直径を超えて横方向に延出しない、実施態様5に記載の股関節鏡オブチュレーター。
(8) 前記本体遠位端に前記本体の遠位先端を更に含み、前記遠位先端は本体遠位端直径よりも小さい外径を有し、前記カニューレが前記遠位先端を通って延在している、実施態様4に記載の股関節鏡オブチュレーター。
(9) 前記カニューレを通って延在するガイドワイヤーを更に含む、実施態様1に記載の股関節鏡オブチュレーター。
(10) 中に貫通する軸方向管腔を有するカニューレを更に含み、前記オブチュレーターが、この管腔内に受容される、実施態様1に記載の股関節鏡オブチュレーター。
【0031】
(11) 股関節鏡手術において股関節包にアクセスするための方法であって、
軸方向に細長い本体を含むオブチュレーターの遠位端を前記股関節包に接触させるステップと、
刃先を有する収納可能なブレードを、前記刃先が前記本体内に配置されている収納位置から、前記刃先が前記本体の前記遠位端から延出している延伸位置へと延長させて、前記股関節包に当て、前記股関節包を切断するステップと、を含む、方法。
(12) ガイドワイヤーを前記股関節包に挿入して股関節の空隙に入れるステップと、前記ガイドワイヤーに沿って前記オブチュレーターを動かしてその前記遠位端を前記関節包に接触させるステップとを更に含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記股関節包を前記刃先で切断した後、前記ブレードを前記収納位置に収納するステップを更に含む、実施態様11に記載の方法。
(14) 前記オブチュレーターが、前記刃先によってすでに切断された前記股関節包の部分を通って前記股関節包の内側に入り込み、次に前記ブレードを再び前記延伸位置に延伸させて更に前記股関節包を切断するステップを更に含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記オブチュレーターを回転させ、次に前記ブレードを再び前記延伸位置に延伸させて更に前記股関節包を切断するステップを更に含む、実施態様13に記載の方法。
【0032】
(16) 前記ブレードが前記収納位置に向かって偏向されており、前記ブレードを延伸させて前記股関節包を切断した後、前記ブレードを解放して、前記ブレードを前記収納位置に戻すステップを更に含む、実施態様11に記載の方法。
(17) 軸方向の管腔が中に貫通しているカニューレを、前記刃先によって切断された前記股関節包に貫通させるステップを更に含む、実施態様11に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F