(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態における衛星測位システムの構成を示す。衛星測位システムにおいては、複数のGNSS衛星12が発信する信号が搬送するGNSS衛星情報を用いて、車両1の位置が推定される。ユーザの車両1に、車載器2が搭載される。車載器2は、GNSS衛星情報をGNSSアンテナ6によって受信する。車載器2が備えるGNSSチップ7は、受信したGNSS衛星情報に基づいて車両1の現在位置を推定し、測位結果として出力する。車載器2は更に、GNSSチップ7から出力される測位結果を用いて課金処理等を行う計算機である処理部3を備える。
【0011】
車両1はバッテリを備え、バッテリから車載器2に車両電源電圧17を供給する。車両電源電圧17は、車載器2が備える電源回路4に供給される。車両1は更に、イグニッションキーがオンの方向に回されエンジンがオンされたか、オフの方向に回されエンジンがオフされたかを示すイグニッションON/OFF信号18を車載器2に出力する。イグニッションON/OFF信号18は電源回路4を経由して処理部3にイグニッションON/OFF信号19として送信される。
【0012】
処理部3は、車両1のイグニッションがオンされたことを示すイグニッションON/OFF信号19に応じて、車載器2の電源をオンすることを指令する車載器電源電圧ON/OFF信号20を電源回路4に出力する。電源回路4は、その車載器電源電圧ON/OFF信号20に応答して、車両1から供給される車両電源電圧17に基づいて、車載器電源電圧21を出力する。車載器2が備える各種回路は、その車載器電源電圧21によって駆動する。
【0013】
車載器2は更に、DSRC通信処理部11とDSRCアンテナ10を備える。車両1が走行する道路や駐車場などの路側に、路側システム16が設置される。路側システム16は、DSRCアンテナ15を備える。路側システム16とDSRC通信処理部11とは、DSRCアンテナ15とDSRCアンテナ10を介して双方向にDSRC(Dedicated Short Range Communication)を行うことが可能である。
【0014】
図2は、車載器2の構成を示す。車載器2は、GNSSアンテナ6、GNSSチップ7、DSRCアンテナ10、DSRC通信処理部11、メイン処理部34、及びスプーフィング検知部31を備える。これらのうち、メイン処理部34、及びスプーフィング検知部34が、
図1の処理部3に相当する。処理部3に含まれるこれらの各部は、CPUが実行するソフトウェアによって実現してもよいし、それぞれの機能を有する別個の装置によってハードウェア的に実現してもよい。
【0015】
GNSSチップ7が出力する測位結果35(第1位置情報)は、スプーフィング検知部31に入力される。一方、路側システム16は、DSRCアンテナ15(路側装置)の位置を示すDSRC位置情報(第2位置情報)を発信する。DSRC通信処理部11は、DSRCアンテナ10が受信したDSRC位置情報を、DSRC測位結果としてスプーフィング検知部31に受け渡す。
【0016】
スプーフィング検知部31は、GNSSチップ7が出力する測位結果36(GNSS測位結果)と、DSRC測位結果とに基づいて、スプーフィングが行われているか否かの判定結果39を出力する。メイン処理部34は、GNSSチップ7が出力する測位結果38と、スプーフィング検出部31が出力する判定結果39とに基づいて、車両1が有料道路を走行した際の課金処理などを実行する。
【0017】
図3は、スプーフィング検知部31が備える機能ブロックを示す。本実施形態におけるスプーフィング検知部31は、判定部41と、位置情報取得部45とを備える。これらの機能ブロックは、車載器2が備えるメインCPUが記憶装置に格納されたプログラムを読み出し、そのプログラムに記載された手順に従って動作することによって実現することができる。
【0018】
次に、
図4を参照して、本実施形態におけるスプーフィング検知部31の動作について説明する。まず、車両1のエンジンが起動し、車載器2がオンとなっているとき、GNSSチップ7は、GNSS衛星情報に基づいて、車両1の地球上での三次元的な位置を示すデータである測位結果36、38を出力する(ステップC1)。位置情報取得部45は、DSRC通信処理部11からDSRC測位結果をほぼリアルタイムで入力する(ステップC2)。
【0019】
判定部41は、GNSSチップ7が出力した現在の測位結果36(GNSS測位結果)と、DSRC測位結果とを比較する(ステップC3)。判定部41は、GNSS測位結果が示す位置とDSRC測位結果が示す位置との差異(両者間の距離)と、予め設定された閾値との大小関係を判定する。この閾値としては、DSRCの路側機の通信範囲と同程度か、それより大きい距離が設定される。判定部41は、差異が閾値より小さい場合(ステップC4NO)、ステップC5の処理に進み、差異が閾値以上であった場合(ステップC4YES)、ステップC6の処理に進む。
【0020】
ステップC4においてYESの判定がなされると、判定部41は、スプーフィングの疑いがあると判定する(ステップC6)。スプーフィング疑いがあると判定された場合、現在時刻と対応づけて、スプーフィング疑いの履歴がスプーフィング候補データベース51に登録される。
【0021】
判定部41は、スプーフィング疑いが発生した場合、過去のスプーフィング疑いの履歴をスプーフィング候補データベース51から抽出する。スプーフィング疑いが継続した期間が所定の閾値より短かった場合は(ステップC7NO)、マルチパス等による短期的な測位誤差であり、スプーフィングが発生しなかったと判定する(ステップC5)。スプーフィング疑いが継続した期間が所定の閾値以上であった場合は(ステップC7YES)、スプーフィングが発生したと判定する(ステップC8)。
【0022】
ステップC6〜C8の処理により、マルチパス等に起因して衛星測位に基づく車両の運動経路が一時的に不自然な飛躍を示し、再び元の正しい測位結果に戻った場合に、誤ってスプーフィングと判定することを避けることができる。
【0023】
判定部41は、ステップC5において生成されたスプーフィングなし、又はステップC8において生成されたスプーフィングありを示す判定結果を出力する(ステップC9)。メイン処理部34は、GNSSチップ7が出力する測位結果38に基づいて課金処理等を実行する際に、判定結果39を考慮に入れる。例えば、スプーフィングが行われていると判定されたときは、通常の課金処理を中止し、その判定結果39を示すデータを記憶装置に格納する。
【0024】
以上の処理により、スプーフィングが行われた結果、GNSS衛星情報に基づく測位結果が通信を行っているDSRC路側機の位置から不自然に離れていた場合に、スプーフィングの発生を検知することができる。
【0025】
以上に説明した手段によるスプーフィング検知は、車載器2への実装が容易であるという利点を有する。以下に、その利点について説明する。
【0026】
衛星測位システムにおいては、専用のGNSSチップが車載器に搭載される。スプーフィング検知機能を実装するために、GNSチップの内部に、GNSS衛星から受信するデータを検証する機能を追加することも考えられる。しかしながら、実装の容易さの観点からは、GNSSチップに変更を加える必要が無く、GNSSチップが出力する信号を用いたスプーフィング検知を可能とする技術が望ましい。
【0027】
GNSSチップが出力する信号は、NMEA(National Marine Electronics Association)などによって規格が定められている。そのような規格に定められた出力信号に基づいてスプーフィング検知を行うことができれば、どの種類のチップを採用することもでき、チップ選定の自由度が高い。
【0028】
図4に示したスプーフィング検知処理においては、衛星測位システムが生成するデータとして、GNSSチップ7が出力する車両1の推定位置が用いられる。このような推定位置は、どのような種類のGNSSチップ7でも出力することが規格に定められている。そして、各GNSS衛星の軌道情報などの、GNSSチップ7が必ずしも出力するとは限らない詳細な情報は、
図4のスプーフィング検知においては必要とされない。そのため、
図4に示したスプーフィング検知処理は、GNSSチップ7自身に変更を加えること無く実行でき、更に、GNSSチップ7の種類を問わずに実行することができるという利点を有する。このような利点は、以下に説明する本発明の他の実施形態も同様に有する。
【0029】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態における衛星測位システムの構成を示す。
図6は、本実施形態における車載器2の構成を示す。本実施形態においては、第1実施形態の路側システム16に替えて、セルラ通信が用いられる。
図1に示された衛星測位システムと比べて、本実施形態における衛星測位システムは、セルラ通信チップ9とセルラ通信アンテナ8とを備え、センタシステム14とセルラ基地局13とからなるセルラ通信網を利用する。
【0030】
セルラ通信は、移動体通信の方式の一つとして一般的に用いられている方式である。以下に概略を説明する。セルラ通信においては、通信地域が多数の小さいセルに分けられ、各セルに基地局が設置される。セルのサイズは、典型的には基地局を中心とする数キロメートルから十数キロメートル程度の範囲だが、それより小さいマイクロセルに分割する方式も用いられている。各基地局の電波の出力は、その基地局が属するセルを通信範囲としてカバーする程度の大きさである。すなわち、各基地局は、他の基地局に対して、電波干渉を起こさない程度に離れて設置される。そのため、異なる基地局で同じ周波数を使い回すことが可能であり、周波数の有効利用が可能である。
【0031】
セルラ通信網は、GNSSによる車両1の位置推定結果を用いた課金システムの一部として使用することができる。GNSSチップ7は、GNSS衛星12から受信するGNSS衛星情報に基づいて、車両1の位置を推定して測位結果として出力する。セルラ通信チップ9は、その測位結果をセルラ通信アンテナ8から発信する。測位結果は、車両1の近くのセルラ基地局13を介してセンタシステム14に送信される。車載器2とセルラ通信網とが双方向に通信することにより、車両1の測位結果を用いた課金等の処理が行われる。
【0032】
図7は、本実施形態におけるスプーフィング検知部31に予め登録される基地局IDテーブル52を示す。基地局IDテーブル52は、複数の基地局の各々を特定する識別子である基地局ID53と、各基地局によってカバーされる通信範囲を示す情報である領域54とを対応付ける。
【0033】
本実施形態において、スプーフィング検知部3は、
図4に示した第1実施形態の動作において、DSRC測位結果に替えて、セルラ基地局13の位置を用いてスプーフィング検知を行う。セルラ通信網は、セルラ基地局13を介して車載器2と課金処理等のための通信を行う際に、車載器2と通信中のセルラ基地局13を特定する基地局ID53を車載器2に送信する。その基地局ID53によって、車両1が位置する位置を概略的に知り、第1実施形態におけるDSRC測位結果の代わりに用いることができる。
【0034】
図8は、本実施形態におけるスプーフィング検知部31の動作を示す。
図4のステップC1と同様に、衛星測位システムによる測位結果36がスプーフィング検知部31に入力される(ステップC11)。セルラ通信チップ9は、セルラ通信アンテナ8を介してセルラ基地局13から受信する信号の中から、通信中のセルラ基地局13を特定する基地局ID53を抽出する。位置情報取得部45は、セルラ通信チップ9から基地局ID53を入力する(ステップC12)。位置情報取得部45は、セルラ通信チップ9から取得した基地局ID53に対応する領域54を基地局IDテーブル52から検索する(ステップC13)。
【0035】
判定部41は、GNSS測位結果が示す位置と、基地局IDテーブル52から検索された領域54(セルラ基地局通信範囲)とを比較する(ステップC14)。判定部41は、GNSS測位結果がセルラ基地局通信範囲に入っていた場合(ステップC15NO)、ステップC16の処理に進み、入っていなかった場合(ステップC15YES)、ステップC17の処理に進む。それ以降のステップC16〜C20の処理は、
図4のステップC5〜C9とそれぞれ同じである。
【0036】
本実施形態において、スプーフィング検知部3は、
図4に示した第1実施形態の動作におけるDSRC測位結果に替えて、通信中のセルラ基地局13の位置を用いてスプーフィング検知を行う。このような衛星測位システムにおいては、DSRCの路側装置が設置されていない領域においても、スプーフィング検知を行うことができる。
【0037】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図9は、第3実施形態における衛星測位システムの構成を示す。
図10は、本実施形態における車載器2の構成を示す。本実施形態においては、以下の処理が行われる。
(1)過去と現在のGNSS測位結果に基づくスプーフィング検知。
(2)GNSS時刻とDSRC時刻(又はセルラ通信時刻)との比較に基づくスプーフィング検知。
(3)GNSS測位結果とDSRC路側機の位置(又はセルラ基地局の通信領域)との比較に基づくスプーフィング検知。
これらのうち、(3)については、第1実施形態又は第2実施形態に示した処理が行われる。本実施形態においては更に、(1)と(2)の処理が追加される。
【0038】
(過去の測位結果の記録)
本実施形態における車載器2において、処理部3は、GNSS衛星情報に基づく測位結果を、測位が行われた時刻を示す測位時刻と共に、記憶装置に用意された測位結果記憶領域5に格納する。GNSSチップ7が測位結果35を出力すると、測位結果保存部32はその測位結果35を現在時刻と共に測位結果記憶領域5に格納する。測位結果記憶領域5には、測位結果35が測位時刻と対応づけられて格納される。
【0039】
(DSRCによる時刻情報の取得)
図10に示すように、本実施形態における車載器2は、リアルタイムクロック33を備える。GNSSチップ7がGNSS衛星情報に基づいて生成する情報の中には、現在時刻を示す時刻情報37(GNSS時刻情報)が含まれる。GNSSチップ7は時刻情報37を車載器2の内部のリアルタイムクロック33に出力する。リアルタイムクロック33は、車載器2内の処理においてでタイムスタンプ等として利用できるように時刻情報37を出力する。
【0040】
路側システム16は、現在時刻を示すDSRC時刻情報を常に生成している。DSRC通信処理部11は、DSRCアンテナ10を介してそのDSRC時刻情報を受信し、スプーフィング検知部31に受け渡す。
【0041】
(スプーフィング検知部の構成)
スプーフィング検知部31は、測位結果記憶領域5に格納された過去の測位結果35及び測位時刻と、GNSSチップ7が出力する測位結果36(GNSS測位結果)と、リアルタイムクロック33が出力するGNSS時刻情報と、DSRC通信処理部11が出力するDSRC時刻情報とに基づいて、スプーフィングが行われているか否かの判定結果39を出力する。メイン処理部34は、GNSSチップ7が出力する測位結果38と、スプーフィング検出部31が出力する判定結果39とに基づいて、車両1が有料道路を走行した際の課金処理などを実行する。
【0042】
図11は、スプーフィング検知部31が備える機能ブロックを示す。本実施形態におけるスプーフィング検知部31は、
図3に示す第1実施形態に加えて更に、閾値設定部42と、エンジン情報収集部43と、時刻情報取得部44とを備える。これらの機能ブロックは、車載器2が備えるメインCPUが記憶装置に格納されたプログラムを読み出し、そのプログラムに記載された手順に従って動作することによって実現することができる。
【0043】
(過去と現在のGNSS測位結果を用いたスプーフィング検知部の動作)
次に、本実施形態におけるスプーフィング検知部31の動作について説明する。
図12は、既述の以下の処理、
(1)過去と現在のGNSS測位結果に基づくスプーフィング検知。
を示すフローチャートである。
【0044】
車両1のエンジンが起動し、車載器2がオンとなっているとき、GNSSチップ7は、GNSS衛星情報に基づいて、車両1の地球上での三次元的な位置を示すデータである測位結果35、36、38を出力する。測位結果保存部35は、現在時刻を示す測位時刻と共に、測位結果35を測位結果記憶領域5に格納する(ステップA1)。
【0045】
判定部41は、GNSSチップ7が出力した現在の測位結果36と、測位結果記憶領域5に格納された過去の測位結果とを比較する。この比較は、例えば、予め時間のずれ量を設定し、測位結果記憶領域5から、設定されたずれ量だけ過去の(例えば10秒前の)測位結果を読み出し、現在の測位結果36と比較することによって実行される(ステップA2)。
【0046】
判定部41は、過去の測位結果と現在の測位結果の差異と、予め設定された閾値との大小関係を判定する。この閾値としては、ステップA2で用いられた設定されたずれ量の間に、車両1がそれ以上運動するのは不自然だと思われる距離が設定される。例えば、時間のずれ量を10秒に設定し、閾値を500メートルに設定すると、10秒前の測位結果と現在の測位結果が500メートル以上である場合は、不自然な運動であると判断される。
【0047】
判定部41は、差異が閾値以上でない場合は(ステップA3NO)、スプーフィングが無く、測位が正常に行われているものと判定する(ステップA5)。差異が閾値以上である場合は(ステップA3YES)、スプーフィングが行われたと判定する(ステップA4)。
【0048】
判定部41は、スプーフィングの有無に関する判定結果39を出力する(ステップA6)。メイン処理部34は、測位結果38に基づいて課金等の処理を行う際に、判定結果39も考慮に入れて処理を行う。例えば、スプーフィングが行われていると判定されたときは、通常の課金処理を中止し、その判定結果39を示すデータを記憶装置に格納する。
【0049】
以上の処理により、スプーフィングが行われた結果、GNSS衛星情報に基づく測位結果が不自然な飛躍を示した場合に、スプーフィング情報に依拠した課金処理を避けることができる。
【0050】
以上のスプーフィング検知処理に加えて、マルチパス等による衛星測位システムにおける測位誤差を識別する手段を用意してもよい。マルチパスによる測位誤差の場合は、例えば、衛星測位に基づく車両の運動経路が一時的に不自然な飛躍を示し、再び元の正しい測位結果に戻る。従って、ステップA3で判定した、距離の差異が閾値以上である期間が所定期間以下であるときは、マルチパス等による測位誤差の可能性があると判定して、スプーフィングと判定しないという処理を行ってもよい。
【0051】
上記の
図12に示した処理に加えて、更に、閾値設定部42の動作によって、スプーフィング判定処理を行うことができる。
図13は、そのようなスプーフィング検知部31の動作を示すフローチャートである。
図12のステップA1と同様に、GNSSチップ7が測位結果35、36、38を出力する。測位結果保存部32は、現在時刻を示す測位時刻と共に、測位結果35を測位結果記憶領域5に格納する(ステップA11)。
【0052】
次に、閾値設定部42は、車載器2内の記憶装置に格納された閾値データベース50を参照して、閾値を設定する。車両1の位置変化は、例えば高速道路を走行中には速く、市街地を走行中には遅い。従って、車両1の現在位置に応じて、異なる移動速度の閾値を設定することによって、車両1の測位結果35、36、38の時系列的な変化が不自然か否かを判定することができる。
【0053】
そのような判定を行うため、閾値データベース50は、地図上の領域と、閾値とを対応づけて格納する。例えば、高速道路を示す領域に対しては速度の閾値が大きく設定され、市街地を示す領域に対しては速度の閾値が小さく設定される。閾値設定部42は、GNSSチップ7が出力した測位結果36に示された車両1の現在位置に対応する閾値を閾値データベース50から抽出して、スプーフィング検知用の閾値として設定する。このような閾値は、例えば車両の速度、加速度、角速度などについてそれぞれ設定することができる(ステップA12)。
【0054】
判定部41は、GNSSチップ7から入力した測位結果36と、測位結果記憶領域5に格納された過去の測位結果と測位時刻の履歴に基づいて、車両1の現在の速度、加速度、及び角速度を算出する(ステップA13)。
【0055】
判定部41は、算出された車両1の速度と、閾値設定部42が設定した速度の閾値Vthとの大小関係を判定する。車両1の速度が閾値よりも小さい場合は(ステップA14YES)、ステップA15の処理に進む。車両1の速度が閾値以上の場合には(ステップA14NO)、スプーフィングが行われた疑いがあると判定される(ステップA18)。
【0056】
判定部41は、算出された車両1の加速度と、閾値設定部42が設定した加速度の閾値Athとの大小関係を判定する。車両1の加速度が閾値よりも小さい場合は(ステップA15YES)、ステップA16の処理に進む。車両1の加速度が閾値以上の場合には(ステップA15NO)、スプーフィングが行われた疑いがあると判定される(ステップA18)。
【0057】
判定部41は、算出された車両1の角速度と、閾値設定部42が設定した角速度の閾値Athとの大小関係を判定する。車両1の角速度が閾値よりも小さい場合は(ステップA16YES)、ステップA17の処理に進む。車両1の加速度が閾値以上の場合には(ステップA16NO)、スプーフィングが行われた疑いがあると判定される(ステップA18)。この処理により、車両の方向の変化率が不自然な程大きいときに、スプーフィング疑いがあると判定することができる。
【0058】
ステップA14〜A16の処理は、任意に順序を入れ替えて実行してもよいし、これら3種類の処理のうち1又は2種類のみ実行してもよい。これらの処理の全てにおいて、車両の運動を示す量(速度、加速度、角速度)が閾値を下回った場合には、スプーフィングが発生していないと判定される(ステップA17)。
【0059】
スプーフィング疑いがあると判定された場合、ステップA18において、GNSSチップ7が出力する現在時刻と対応づけて、スプーフィング疑いの履歴がスプーフィング候補データベース51に登録される。
【0060】
判定部41は、スプーフィング疑いが発生した場合、過去のスプーフィング疑いの履歴をスプーフィング候補データベース51から抽出する。スプーフィング疑いが継続した期間が所定の閾値より短かった場合は(ステップA19NO)、マルチパス等による短期的な測位誤差であり、スプーフィングが発生しなかったと判定する(ステップA17)。スプーフィング疑いが継続した期間が所定の閾値以上であった場合は(ステップA19YES)、スプーフィングが発生したと判定する(ステップA20)。
【0061】
判定部41は、ステップA17において生成されたスプーフィングなし、又はステップA20において生成されたスプーフィングありを示す判定結果39を出力する(ステップA21)。メイン処理部34は、GNSSチップ7が出力する測位結果38に基づいて課金処理等を実行する際に、第1実施形態と同様に、判定結果39を考慮に入れる。
【0062】
(エンジンの起動状態を用いたスプーフィング判定)
以上の処理に加えて、
図11のエンジン情報収集部43の動作によるスプーフィング判定を追加してもよい。通常、車両1のエンジンが停止している場合は、車両1の位置は変化しない。もし車両1のエンジンが停止中に、衛星測位システムによって推定された位置がある程度以上変化した場合には、スプーフィングの疑いがあると考えられる。
【0063】
そうしたスプーフィング疑いを検知するため、エンジン情報収集部43は、イグニッションON/OFF信号19を監視する。エンジン情報収集部43は、イグニッションON/OFF信号19に基づいて、車両1のエンジンが停止された(イグニッションキーがオフ状態とされた)と判定した場合、GNSSチップ7がそれ以前に出力した最後の測位結果36を、エンジン停止時測位結果として、車載器2の内部の記憶装置に保存する。
【0064】
エンジン情報収集部43が、イグニッションON/OFF信号19がオフからオンに変わったことを認識したとき、GNSSチップ7が出力する最初の測位結果36が、エンジン起動時測位結果として、エンジン停止時測位結果と共に、判定部41に受け渡される。判定部41は、エンジン停止時測位結果と、エンジン起動時測位結果の差を算出する。判定部41は、その差が所定の閾値より小さかった場合は正常であると判定し、所定の閾値以上であった場合はスプーフィングが発生したと判定する。
【0065】
(DSRC時刻情報を用いたスプーフィング検知部の動作)
次に、本実施形態におけるスプーフィング検知部31の動作について説明する。
図14は、既述の以下の処理、
(2)GNSS時刻とDSRC時刻(又はセルラ通信時刻)との比較に基づくスプーフィング検知。
を示すフローチャートである。
【0066】
まず、車両1のエンジンが起動し、車載器2がオンとなっているとき、GNSSチップ7は、GNSS衛星情報に基づいて、現在時刻を示す時刻情報37を出力する。リアルタイムクロック33は、その時刻情報37をGNSS時刻情報として、ほぼリアルタイムでスプーフィング検知部31に出力する(ステップB1)。時刻情報取得部44は、DSRC通信処理部11からDSRC時刻情報をほぼリアルタイムで取得する(ステップB2)。
【0067】
判定部41は、GNSS時刻情報とDSRC時刻情報とを比較する(ステップB3)。判定部41は、GNSS時刻情報とDSRC時刻情報との差が所定の閾値より小さい場合は(ステップB4NO)、スプーフィングが発生していないと判定する(ステップB6)。判定部41は、GNSS時刻情報とDSRC時刻情報との差が所定の閾値以上である場合は(ステップB4YES)、スプーフィングが発生したと判定する(ステップB5)。
【0068】
判定部41は、スプーフィングの有無に関する判定結果39を出力する(ステップB7)。メイン処理部34は、測位結果38に基づいて課金等の処理を行う際に、判定結果39も考慮に入れて処理を行う。例えば、スプーフィングが行われていると判定されたときは、通常の課金処理を中止し、その判定結果39を示すデータを記憶装置に格納する。
【0069】
スプーフィングの手法の一つとして、過去の衛星測位システムによる測位結果のデータを、現在の車両の位置データであるかのように偽装して使用することが考えられる。そのような場合、スプーフィング用の情報に含まれる時刻情報が現在時刻とは異なっている可能性がある。本実施形態における処理により、そのような場合に、衛星測位システムによる時刻を、路側システム16が提供する時刻と比較して検証することによって、スプーフィングの発生を検知することができる。
【0070】
(セルラ通信網時刻情報を用いたスプーフィング検知)
図14に示したスプーフィング検知の変形例として、路側システム16に替えて、セルラ通信を用いてもよい。本変形例において、セルラ通信網は、現在時刻を示すセルラ通信時刻情報を生成する。セルラ通信時刻情報は、セルラ基地局13から車載器2に送信される。セルラ通信チップ9は、セルラ通信アンテナ8を介して受信したセルラ通信時刻情報をスプーフィング検知部31にほぼリアルタイムで受け渡す。
【0071】
本変形例において、スプーフィング検知部31は、
図14のステップB2におけるDSRC時刻情報の入力に替えて、セルラ通信時刻情報を入力する。それ以外の処理は、
図14と同じである。このような衛星測位システムにおいては、DSRCの路側装置が設置されていない領域においても、セルラ通信網から供給される時刻を用いてGNSS時刻情報の信頼性を検証することにより、スプーフィング検知を行うことができる。