(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
最初に、
図1を参照して、本発明の実施例に係るショベルについて説明する。なお、
図1は、本実施例に係るショベルの側面図である。
図1に示すショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、作業アタッチメントが取り付けられている。作業アタッチメントは、例えば、ブーム4、アーム5、及びバケット6を含む。具体的には、上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられ、ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン11等の動力源が搭載される。
【0012】
図2は、
図1のショベルに搭載される駆動系の構成例を示すブロック図であり、機械的動力系、高圧油圧ライン、パイロットライン、及び電気制御系をそれぞれ二重線、実線、破線、及び点線で示す。
【0013】
ショベルの駆動系は、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、圧力センサ29、コントローラ30、大気圧センサP1、吐出圧センサP2、過給機25、及びエンジン回転数調整ダイヤル75を含む。
【0014】
エンジン11は、ショベルの駆動源であり、例えば、所定の回転数を維持するように動作する内燃機関としてのディーゼルエンジンである。また、エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15の入力軸に接続される。本実施例では、エンジン11は、その出力軸がメインポンプ14の入力軸に接続された状態において一定回転数で制御される。
【0015】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御するための装置であり、例えば、メインポンプ14の吐出圧、又はコントローラ30からの制御信号等に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによって、メインポンプ14の吐出量を制御する。
【0016】
メインポンプ14は、高圧油圧ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給するための油圧ポンプであり、例えば、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0017】
パイロットポンプ15は、パイロットラインを介して各種油圧制御機器に作動油を供給するための油圧ポンプであり、例えば、固定容量型油圧ポンプである。
【0018】
コントロールバルブ17は、ショベルにおける油圧システムを制御する油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、例えば、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、走行用油圧モータ1A(左用)、走行用油圧モータ1B(右用)、及び旋回用油圧モータ2Aのうちの1又は複数のものに対しメインポンプ14が吐出する作動油を選択的に供給する。なお、以下では、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、走行用油圧モータ1A(左用)、走行用油圧モータ1B(右用)、及び旋回用油圧モータ2Aを集合的に「油圧アクチュエータ」と称する。
【0019】
過給機25は、エンジン11へ空気を強制的に送り込む装置であり、例えば、エンジン11からの排気ガスを利用して吸気圧を増大させる(過給圧を発生させる)。なお、過給機25は、エンジン11の出力軸の回転を利用して過給圧を発生させてもよい。本実施例では、過給機25は、エンジン11の回転数に応じて排気ガスの流量を制御可能な可変ノズルターボである。なお、可変ノズルターボ25の詳細については後述する。
【0020】
操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータの操作のために用いる装置であり、パイロットラインを介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する流量制御弁のパイロットポートに供給する。なお、パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバー又はペダル(図示せず。)の操作方向及び操作量に応じた圧力である。
【0021】
圧力センサ29は、操作装置26を用いた操作者の操作内容を検出するためのセンサであり、例えば、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバー又はペダルの操作方向及び操作量を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。なお、操作装置26の操作内容は、圧力センサ以外の他のセンサを用いて検出されてもよい。
【0022】
コントローラ30は、ショベルを制御するための制御装置であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えたコンピュータで構成される。また、コントローラ30は、過給圧増大要否判定部300及び過給圧制御部301のそれぞれに対応するプログラムをROMから読み出してRAMにロードし、それぞれに対応する処理をCPUに実行させる。
【0023】
具体的には、コントローラ30は、圧力センサ29等が出力する検出値を受信し、それら検出値に基づいて過給圧増大要否判定部300及び過給圧制御部301のそれぞれによる処理を実行する。その後、コントローラ30は、過給圧増大要否判定部300及び過給圧制御部301のそれぞれの処理結果に応じた制御信号を適宜に過給機25等に対して出力する。
【0024】
より具体的には、過給圧増大要否判定部300は、過給機25の過給圧を増大させる必要があるか否かを判定する。そして、過給圧を増大させる必要があると過給圧増大要否判定部300が判定した場合、過給圧制御部301は、後述の過給圧調整部60を駆動し、過給機25の過給圧を調整する。
【0025】
大気圧センサP1は、大気圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。また、吐出圧センサP2は、メインポンプ14の吐出圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0026】
エンジン回転数調整ダイヤル75は、エンジン回転数を切り換えるための装置である。本実施例では、エンジン回転数調整ダイヤル75は、3段階以上の段階でエンジン回転数を切り換えできるようにする。エンジン11は、エンジン回転数調整ダイヤル75で設定されたエンジン回転数で一定に回転数制御される。
【0027】
ここで、
図3を参照しながら、
図1のショベルに搭載される油圧システムについて説明する。なお、
図3は、
図1のショベルに搭載される油圧システムの構成例を示す概略図であり、
図2と同様に、機械的動力系、高圧油圧ライン、パイロットライン、及び電気制御系を、それぞれ二重線、実線、破線、及び点線で示す。
【0028】
図3において、油圧システムは、エンジン11によって駆動されるメインポンプ14L、14Rから、センターバイパス管路40L、40Rのそれぞれを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。なお、メインポンプ14L、14Rは、
図2のメインポンプ14に対応する。
【0029】
センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブ17内に配置された流量制御弁171、173、175及び177を通る高圧油圧ラインであり、センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブ17内に配置された流量制御弁170、172、174、176及び178を通る高圧油圧ラインである。
【0030】
流量制御弁173、174は、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、かつ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。なお、流量制御弁174は、ブーム操作レバー26Aが操作された場合に常に作動するスプール弁である。また、流量制御弁173は、ブーム操作レバー26Aが所定操作量以上で操作された場合にのみ作動するスプール弁である。
【0031】
流量制御弁175、176は、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、かつ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。なお、流量制御弁175は、アーム操作レバー(図示せず。)が操作された場合に常に作動する弁である。また、流量制御弁176は、アーム操作レバーが所定操作量以上で操作された場合にのみ作動する弁である。
【0032】
流量制御弁177は、メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回用油圧モータ2Aで循環させるために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0033】
流量制御弁178は、メインポンプ14Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、かつ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するためのスプール弁である。
【0034】
レギュレータ13L、13Rは、メインポンプ14L、14Rの吐出圧に応じてメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節することによって、メインポンプ14L、14Rの吐出量を制御する。なお、レギュレータ13L、13Rは、
図2のレギュレータ13に対応する。具体的には、レギュレータ13L、13Rは、メインポンプ14L、14Rの吐出圧が所定値以上となった場合にメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないようにするためである。なお、この制御を「全馬力制御」と称する。
【0035】
ブーム操作レバー26Aは、操作装置26の一例であり、ブーム4を操作するために用いられる。また、ブーム操作レバー26Aは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用して、レバー操作量に応じた制御圧を流量制御弁174の左右何れかのパイロットポートに導入させる。なお、ブーム操作レバー26Aは、レバー操作量が所定操作量以上の場合には、流量制御弁173の左右何れかのパイロットポートにも作動油を導入させる。
【0036】
圧力センサ29Aは、圧力センサ29の一例であり、ブーム操作レバー26Aに対する操作者の操作内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作内容は、例えば、レバー操作方向、レバー操作量(レバー操作角度)等である。
【0037】
左右走行レバー(又はペダル)、アーム操作レバー、バケット操作レバー、及び旋回操作レバー(何れも図示せず。)はそれぞれ、下部走行体1の走行、アーム5の開閉、バケット6の開閉、及び、上部旋回体3の旋回を操作するための操作装置である。これらの操作装置は、ブーム操作レバー26Aと同様に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用して、レバー操作量(又はペダル操作量)に応じた制御圧を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する流量制御弁の左右何れかのパイロットポートに導入させる。また、これらの操作装置のそれぞれに対する操作者の操作内容は、圧力センサ29Aと同様、対応する圧力センサによって圧力の形で検出され、検出値がコントローラ30に対して出力される。
【0038】
コントローラ30は、圧力センサ29A等の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13L、13Rに対して制御信号を出力し、メインポンプ14L、14Rの吐出量を変化させる。
【0039】
スイッチ50は、コントローラ30が過給機25の過給圧を増大させる処理(以下、「過給圧増大処理」とする。)の作動・停止を切り換えるスイッチであり、例えばキャビン10内に設置される。操作者は、スイッチ50をオン位置に切り換えることで過給圧増大処理が実行されるようにし、スイッチ50をオフ位置に切り換えることで過給圧増大処理が実行されないようにする。具体的には、コントローラ30は、スイッチ50がオフ位置に切り換えられると、過給圧増大要否判定部300及び過給圧制御部301の実行を禁止し、それらの機能を無効にする。
【0040】
ここで、
図3の油圧システムで採用されるネガティブコントロール制御について説明する。
【0041】
センターバイパス管路40L、40Rは、最も下流にある流量制御弁177、178のそれぞれと作動油タンクとの間にネガティブコントロール絞り18L、18Rを備える。メインポンプ14L、14Rが吐出した作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rで制限される。そして、ネガティブコントロール絞り18L、18Rは、レギュレータ13L、13Rを制御するための制御圧(以下、「ネガコン圧」とする。)を発生させる。
【0042】
破線で示されるネガコン圧管路41L、41Rは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rの上流で発生させたネガコン圧をレギュレータ13L、13Rに伝達するためのパイロットラインである。
【0043】
レギュレータ13L、13Rは、ネガコン圧に応じてメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節することによって、メインポンプ14L、14Rの吐出量を制御する。また、レギュレータ13L、13Rは、導入されるネガコン圧が大きいほどメインポンプ14L、14Rの吐出量を減少させ、導入されるネガコン圧が小さいほどメインポンプ14L、14Rの吐出量を増大させる。
【0044】
具体的には、
図3で示されるように、ショベルにおける油圧アクチュエータが何れも操作されていない場合(以下、「待機モード」とする。)、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油は、センターバイパス管路40L、40Rを通ってネガティブコントロール絞り18L、18Rに至る。そして、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rの上流で発生するネガコン圧を増大させる。その結果、レギュレータ13L、13Rは、メインポンプ14L、14Rの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油がセンターバイパス管路40L、40Rを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。
【0045】
一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する流量制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rに至る量を減少或いは消滅させ、ネガティブコントロール絞り18L、18Rの上流で発生するネガコン圧を低下させる。その結果、低下したネガコン圧を受けるレギュレータ13L、13Rは、メインポンプ14L、14Rの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータの駆動を確かなものとする。
【0046】
上述のような構成により、
図3の油圧システムは、待機モードにおいては、メインポンプ14L、14Rにおける無駄なエネルギー消費を抑制することができる。なお、無駄なエネルギー消費は、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油がセンターバイパス管路40L、40Rで発生させるポンピングロスを含む。
【0047】
また、
図3の油圧システムは、油圧アクチュエータを作動させる場合には、メインポンプ14L、14Rから必要十分な作動油を作動対象の油圧アクチュエータに確実に供給できるようにする。
【0048】
次に、
図4を参照して、過給機としての可変ノズルターボ25の機能について説明する。なお、
図4は、可変ノズルターボ25の構成例を示す概略図である。
【0049】
可変ノズルターボ25は、主に、ノズルベーン25a、タービン翼25b、ターボ軸25c、コンプレッサ翼25dを含む。
【0050】
ノズルベーン25aは、エンジン11の排気口11aからタービン翼25bに流れる排気ガスの流量を制御する部材である。本実施例では、ノズルベーン25aは、ノズル開度(開口面積)が増減するように、過給圧調整部としてのノズルアクチュエータ60によって制御される。
【0051】
タービン翼25bは、エンジン11の排気ガスを受けて回転する部材であり、ターボ軸25cを介してコンプレッサ翼25dに結合される。そのため、タービン翼25bの回転は、ターボ軸25cの回転を介してコンプレッサ翼25dに伝達される。
【0052】
コンプレッサ翼25dは、外気を圧縮してエンジン11の吸気口に供給する部材であり、タービン翼25bと共に回転して外気をエンジン11の吸気口に強制的に流入させる。
【0053】
ノズルアクチュエータ60は、過給圧調整部の1例であり、複数のノズルベーン25aを同時に駆動して複数のノズルベーン25aのそれぞれのノズル開度を同時に制御する。
【0054】
具体的には、ノズルアクチュエータ60は、エンジン11の回転数が高いほどノズル開度が大きくなるようにノズルベーン25aを駆動する。
図4上図は、エンジン回転数が比較的高くノズル開度が比較的大きい状態にある可変ノズルターボ25を示す。この場合、ノズルベーン25aを通過する排気ガスの排気圧力は、ノズル開度が比較的小さい場合に比べて低い状態に維持され、タービン翼25bを通過する排気ガスの相対流速も比較的低い状態に維持される。なお、タービン翼25bを通過する排気ガスの相対流速は、エンジン11の排気口11aを通過する排気ガスの流速とタービン翼25bを通過する排気ガスの流速との差を意味する。
【0055】
一方、
図4下図は、エンジン回転数が比較的低くノズル開度が比較的小さい状態にある可変ノズルターボ25を示す。この場合、ノズルベーン25aを通過する排気ガスの排気圧力は、ノズル開度が大きい場合に比べて高い状態に維持され、タービン翼25bを通過する排気ガスの相対流速も比較的高い状態に維持される。その結果、エンジン11の排気口11aを通過する排気ガスの流速が同じであっても、ノズル開度が小さいほど、タービン翼25bを通過する排気ガスの相対流速が大きくなり、タービン翼25bの回転速度も増大する。そして、ターボ軸25cを介してタービン翼25bに結合されるコンプレッサ翼25dの回転速度も増大する。その結果、コンプレッサ翼25dは、過給圧を増大させ、より多くの空気をエンジン11の吸気口に供給する。
【0056】
なお、
図4上図は、ノズルベーン25a間の流路が比較的広いため、タービン翼25bを通過する排気ガスの相対流速が比較的小さい状態を細い実線の矢印で表す。また、
図4上図は、ターボ軸25cの回転が比較的遅い状態、及び、コンプレッサ翼25dを通過する空気の流速が比較的小さい状態のそれぞれを細い実線の矢印で表す。一方、
図4下図は、ノズルベーン25a間の流路が比較的狭いため、タービン翼25bを通過する排気ガスの相対流速が比較的大きい状態を太い実線の矢印で表す。また、
図4下図は、ターボ軸25cの回転が比較的速い状態、及び、コンプレッサ翼25dを通過する空気の流速が比較的大きい状態のそれぞれを太い実線の矢印で表す。また、以下では、上述のようなノズルアクチュエータ60によるエンジン回転数に応じたノズル開度の制御を「通常制御」と称する。この通常制御により、コントローラ30は、エンジン回転数が低い場合に過給効率を向上させ、また、エンジン回転数が高い場合に排気圧力を低減させることができる。
【0057】
また、ノズルアクチュエータ60は、通常制御とは別に、過給圧増大要否判定部300が過給圧を増大させる必要があると判定した場合、コントローラ30が出力する制御信号に応じて、ノズル開度Aを、通常制御時のノズル開度より小さい過給圧増大時ノズル開度Asに調整する。なお、以下では、ノズルアクチュエータ60によるこのノズル開度の制御を「過給圧増大制御」と称する。
【0058】
より具体的には、過給圧増大要否判定部300は、例えば、高地におけるショベルが待機モードにある場合に、過給圧を増大させる必要があると判定する。そして、過給圧制御部301は、ノズルアクチュエータ60に対して制御信号を出力し、ノズルベーン25aのノズル開度Aが過給圧増大時ノズル開度Asに調整されるようにする。
【0059】
次に、
図5を参照して、本実施例に係るショベルのコントローラ30が必要に応じて過給圧を増大させる処理(以下、「過給圧増大処理」とする。)について説明する。なお、
図5は、過給圧増大処理の流れを示すフローチャートであり、コントローラ30は、所定周期で繰り返しこの過給圧増大処理を実行する。また、本実施例では、高地等の大気圧が低い環境にショベルがあり、スイッチ50が手動でオン位置に切り換えられているため、コントローラ30は、過給圧増大要否判定部300及び過給圧制御部301を有効に機能させることができる。
【0060】
最初に、コントローラ30の過給圧増大要否判定部300は、ショベルが待機モードにあるか否かを判定する(ステップS1)。本実施例では、過給圧増大要否判定部300は、メインポンプ14の吐出圧が所定圧以上であるか否かに基づいて、ショベルが待機モードにあるか否かを判定する。例えば、過給圧増大要否判定部300は、メインポンプ14の吐出圧が所定圧未満であれば、ショベルが待機モードにあると判定する。なお、過給圧増大要否判定部300は、油圧アクチュエータの圧力に基づいて、ショベルが待機モードにあるか否かを判定してもよい。
【0061】
ショベルが待機モードにある(油圧負荷が存在しない)と過給圧増大要否判定部300が判定した場合(ステップS1のYES)、コントローラ30は、ノズル開度の通常制御を停止させる(ステップS2)。そして、コントローラ30は、ノズル開度の過給圧増大制御を作動させ、ノズルベーン25aのノズル開度Aを、通常制御時のノズル開度より小さい過給圧増大時ノズル開度Asに調整する(ステップS3)。本実施例では、コントローラ30の過給圧制御部301は、ノズルアクチュエータ60に対して制御信号を出力する。その制御信号を受信したノズルアクチュエータ60は、ノズル開度の通常制御を中断する。そして、ノズルベーン25aのノズル開度を過給圧増大時ノズル開度Asまで低減させる。これにより、タービン翼25bを通過する排気ガスの相対流速を大きくし、ターボ軸25cの回転速度を高め、コンプレッサ翼25dを通過する空気の流速を大きくして過給圧を増大させることができる。
【0062】
一方、ショベルが待機モードにない(油圧負荷が存在する)と過給圧増大要否判定部300が判定した場合(ステップS1のNO)、コントローラ30は、ノズル開度の過給圧増大制御を停止させ、ノズル開度の通常制御を作動させる(ステップS4)。そして、コントローラ30は、エンジン回転数に応じてノズルベーン25aのノズル開度Aを変化させる。
【0063】
このようにして、コントローラ30は、待機モードの際に過給圧を増大させる。そのため、コントローラ30は、外力による油圧負荷の増大に先だって過給圧を所定幅だけ予め増大させることができる。その結果、大気圧が低いために過給圧を迅速に増大させることができない場合であっても、エンジン回転数の低下(作業性の低下)やエンジン停止を引き起こす前に、増大する油圧負荷に見合う過給圧を発生させることができる。
【0064】
次に、
図6を参照して、過給圧増大処理を実行する場合の各種物理量の時間的推移について説明する。なお、
図6は、それら各種物理量の時間的推移を示す図であり、上から順に、大気圧、レバー操作量、油圧負荷(吸収馬力)、ノズル開度、過給圧、燃料噴射量、及びエンジン回転数のそれぞれの時間的推移を示す。また、
図6の破線で示す推移は、ショベルが低地(大気圧が比較的高い環境)にある場合に過給圧増大処理を実行しないときの推移を表し、
図6の一点鎖線で示す推移は、ショベルが高地(大気圧が比較的低い環境)にある場合に過給圧増大処理を実行しないときの推移を表す。また、
図6の実線で示す推移は、ショベルが高地(大気圧が比較的低い環境)にある場合に過給圧増大処理を実行するときの推移を表す。これら3種類の線で示される推移は、過給圧増大処理の効果を分かり易く説明するためのものである。具体的には、ショベルは、高地等、大気圧が比較的低い環境では、過給圧増大処理を実行しない場合、油圧負荷の増大を検出した時点で過給圧を増大させようとしても、大気圧が比較的高い環境における場合のようには増大させることができず、エンジン出力の不足を生じさせ、エンジンを停止させてしまうおそれがある。それに対し、高地等、大気圧が比較的低い環境で過給圧増大処理を実行する場合、ショベルは、エンジン出力の不足が発生するのを防止できる。
【0065】
本実施例では、時刻t1において、例えば、掘削のためにアーム5を動かすためのレバー操作が行われる場合を想定する。
【0066】
まず、比較のために、ショベルが低地(大気圧が比較的高い環境)にある場合に過給圧増大処理を実行しないとき、及び、ショベルが高地(大気圧が比較的低い環境)にある場合に過給圧増大処理を実行しないときの各種物理量の時間的推移について説明する。
【0067】
時刻t1において、掘削動作を行うために、アーム操作レバーの操作が開始される。アーム操作レバーの操作量(操作レバーを傾ける角度)は時刻t1から時刻t2まで増大され、時刻t2においてアーム操作レバーの操作量は一定に維持される。すなわち、時刻t1からアーム操作レバーが操作されて傾けられ、時刻t2においてアーム操作レバーの傾きは一定に保持される。
【0068】
アーム操作レバーが最も傾けられた状態になった時刻t2から、アーム5に加わる負荷によりメインポンプ14の吐出圧が上昇し、メインポンプ14の油圧負荷が上昇し始める。すなわち、メインポンプ14の油圧負荷は、破線及び一点鎖線に示すように、時刻t2付近から上昇し始める。また、メインポンプ14の油圧負荷はエンジン11の負荷に相当し、エンジン11の負荷もメインポンプ14の油圧負荷と共に上昇する。その結果、ショベルが低地(大気圧が比較的高い環境)にある場合には、エンジン11の回転数は、破線で示すように所定回転数に維持されるが、ショベルが高地(大気圧が比較的低い環境)にある場合には、エンジン11の回転数は、一点鎖線で示すように時刻t2を過ぎたあたりから大きく低下していく。大気圧が比較的低い環境では過給圧が低くなり、エンジン11の負荷に見合うエンジン出力を実現できないためである。
【0069】
具体的には、エンジン11の負荷が増大すると、通常、エンジン11の制御が働き、燃料噴射量が増大する。これにより、過給圧も増大し、エンジン11の燃焼効率が高められ、エンジン11の出力も増大する。しかしながら、過給圧が低い間は燃料噴射量の増大が制限され、エンジン11の燃焼効率を十分に高めることができない。その結果、エンジン11の負荷に見合うエンジン出力を実現できず、エンジン11の回転数を低下させてしまう。
【0070】
そこで、コントローラ30は、ショベルが高地(大気圧が比較的低い環境)にある場合には、過給圧増大処理を実行することによって、レバー操作が行われる前に過給圧を高めるようにする。
【0071】
なお、ここでは、ショベルが高地(大気圧が比較的低い環境)にある場合に過給圧増大処理を実行するときの各種物理量の時間的推移について、同じく
図6を参照しながら説明する。
図6において、ショベルが高地(大気圧が比較的低い環境)にある場合に過給圧増大処理を実行するときの各種物理量の時間的推移は実線で示される。なお、
図6では、ショベルは、時刻t1まで無負荷状態にあり、且つ、待機モードにある。
【0072】
オペレータのレバー操作としては上述のように、時刻t1において、掘削動作を行うために、アーム操作レバーの操作が開始される。アーム操作レバーの操作量(操作レバーを傾ける角度)は時刻t1から時刻t2まで増大され、時刻t2においてアーム操作レバーの操作量は一定に維持される。すなわち、時刻t1からアーム操作レバーが操作されて傾けられ、時刻t2においてアーム操作レバーの傾きは一定に保持される。時刻t1においてアーム操作レバーの操作が開始されると、アーム5が動き始め、時刻t2になると、アーム操作レバーが最も傾けられた状態になる。
【0073】
過給圧増大処理を実行する場合、コントローラ30は、時刻t1以前に、すなわち、レバー操作が行われる前に、ノズルベーン25aのノズル開度Aを通常制御時のノズル開度より小さい過給圧増大時ノズル開度Asに調整している。そのため、過給圧は、ショベルが低地(大気圧が比較的高い環境)にある場合と同様の比較的高い状態にある。また、アーム操作レバーが最も傾けられた状態となる時刻t2において直ちに上昇可能な状態にある。また、コントローラ30は、時刻t2においてメインポンプ14の油圧負荷が上昇すると、ショベルが待機モードにないと判定し、ノズル開度の過給圧増大制御を停止させて通常制御を作動させる。その結果、ノズル開度は、エンジン回転数に応じた値に制御される。なお、
図6において、通常制御時のノズル開度は、明瞭化のため、一定の値で推移するものとして示されるが、実際にはエンジン回転数等に応じて変動する。
【0074】
このように、ノズルベーン25aのノズル開度Aを通常制御時のノズル開度より小さい過給圧増大時ノズル開度Asに調整しておくことで、油圧負荷が上昇し始める時刻t2において過給圧を直ちに増大させることができる。
【0075】
時刻t2を過ぎると油圧負荷が上昇してエンジン11の負荷も増大し、燃料噴射量をさらに増大する指示が出され、燃料消費量が徐々に増加する。このときの燃料消費量の増加分は、油圧負荷の増大に対応する分だけである。エンジン回転数はすでに所定回転数に維持されており、エンジン回転数を上昇させるための燃料消費量が必要ないためである。また、時刻t3では、過給圧が所定値以上に上昇しているため、油圧負荷が増大しても、エンジン11は、効率的にエンジン出力を増大できる状態にある。
【0076】
以上のように、レバー操作が行われる前に、ノズルベーン25aのノズル開度Aを通常制御時より小さい過給圧増大時ノズル開度Asに調整しておくことで、油圧負荷が上昇し始める時点より前に過給圧を増大させておくことができる。
【0077】
また、上述の通り、大気圧が比較的高い環境では、過給圧増大処理を実行しなくとも、過給圧(破線参照。)は、時刻t1において既に比較的高い状態にある。
【0078】
そのため、過給圧増大処理を実行しなくとも、可変ノズルターボ25は、過給圧を迅速に増大させることができる状態にある。また、エンジン11は、エンジン回転数の低下(作業性の低下)やエンジン停止を引き起こすことなく、外力による油圧負荷に見合う駆動力を供給できる状態にある。
【0079】
しかしながら、大気圧が比較的低い環境では、過給圧増大処理を実行しない場合、過給圧(一点鎖線参照。)は、時刻t2においても比較的低い状態にある。また、大気圧が比較的低い環境にあるため、可変ノズルターボ25は、過給圧を迅速に増大させることができない。具体的には、可変ノズルターボ25は、時刻t3になるまで十分な過給圧を実現できず、エンジン11は、燃料噴射量を十分に増大させることができない。
【0080】
その結果、エンジン11は、エンジン回転数を一定に維持するだけの駆動力を出力できず、エンジン回転数(一点鎖線参照。)を低下させ、場合によってはエンジン回転数を増大させることができずそのまま停止してしまう。
【0081】
そこで、コントローラ30は、大気圧が比較的低い環境では、過給圧増大処理を実行することによって、時刻t1以前に、すなわち、レバー操作が行われる前に、ノズルベーン25aのノズル開度を通常制御時より小さい過給圧増大時ノズル開度Asに調整している。そのため、過給圧(実線参照。)は時刻t2において既に比較的高い状態にある。
【0082】
その結果、大気圧が比較的低い環境であっても、可変ノズルターボ25は、大気圧が比較的高い環境の場合と同様に、過給圧を迅速に増大させることができる状態にある。また、エンジン11は、エンジン回転数の低下(作業性の低下)やエンジン停止を引き起こすことなく、外力による油圧負荷に見合う駆動力を供給できる状態にある。
【0083】
この場合、時刻t2において、アーム5が地面に接すると掘削反力の増大に応じて油圧負荷が増大する。そして、メインポンプ14の吸収馬力に相当するこの油圧負荷の増大に応じてエンジン11の負荷も増大する。このとき、エンジン11は、所定のエンジン回転数を維持するため、可変ノズルターボ25により過給圧を迅速に増大させることができる。
【0084】
このように、コントローラ30は、大気圧が比較的低い場合には、レバー操作が行われる前にノズル開度を小さくしておくことで、過給圧を比較的高いレベルで維持し、レバー操作が行われた後に過給圧を遅滞なく増大させることができる。その結果、レバー操作が行われたときにエンジン回転数が低下したり、エンジンが停止したりするのを防止できる。
【0085】
次に、
図7を参照して、過給圧増大処理の別の実施例について説明する。なお、
図7は、本実施例に係る過給圧増大処理の流れを示すフローチャートである。
図7の過給圧増大処理は、ステップS11における判定条件が、
図5の過給圧増大処理におけるステップS1の判定条件と相違するが、ステップS12〜S14は、
図5の過給圧増大処理のステップS2〜S4と同じである。そのため、ステップS11を詳細に説明し、他のステップの説明を省略する。また、本実施例では、スイッチ50が省略されており、コントローラ30は、過給圧増大要否判定部300及び過給圧制御部301を常に有効に機能させることができる。
【0086】
ステップS11において、過給圧増大要否判定部300は、ショベルが待機モードにあり且つショベル周辺の大気圧が所定圧未満であるという条件を満たすか否かを判定する。なお、本実施例では、コントローラ30は、ショベルに搭載される大気圧センサP1の出力に基づいてショベル周辺の大気圧が所定圧未満であるか否かを判定する。
【0087】
そして、上述の条件を満たすと判定された場合(ステップS11のYES)、コントローラ30は、ステップS12及びS13を実行する。
【0088】
一方、上述の条件を満たさないと判定された場合(ステップS11のNO)、コントローラ30は、ステップS14を実行する。
【0089】
これにより、コントローラ30は、
図5の過給圧増大処理の場合と同様の効果を実現できる。
【0090】
また、大気圧センサP1の出力を用いる本実施例では、コントローラ30は、大気圧の大きさに応じて過給圧増大時ノズル開度Asの大きさを決定してもよい。具体的には、コントローラ30は、大気圧が低いほど、過給圧増大時ノズル開度Asを小さくする。この場合、コントローラ30は、大気圧の大きさに応じて過給圧増大時ノズル開度Asの大きさを段階的に設定してもよく、無段階に設定してもよい。この構成により、コントローラ30は、待機モードにおける低減後のノズル開度の大きさを段階的に或いは無段階に制御でき、無駄なエネルギー消費をさらに抑制することができる。
【0091】
次に、
図8を参照して、過給圧増大処理のさらに別の実施例について説明する。なお、
図8は、本実施例に係る過給圧増大処理の流れを示すフローチャートである。
図8の過給圧増大処理は、大気圧の大小にかかわらず、レバー操作が開始された時点でノズルベーン25aのノズル開度を一時的に低減させる。そのため、本実施例では、スイッチ50が省略されており、コントローラ30は、過給圧増大要否判定部300及び過給圧制御部301を常に有効に機能させることができる。但し、スイッチ50又は大気圧センサP1を用い、大気圧が比較的低い場合に限り、本実施例に係る過給圧増大処理を機能させるようにしてもよい。
【0092】
最初に、コントローラ30の過給圧増大要否判定部300は、ショベルが待機モードにあるか否かを判定する(ステップS21)。本実施例では、
図5の過給圧増大処理と同様、過給圧増大要否判定部300は、メインポンプ14の吐出圧が所定圧以上であるか否かに基づいて、ショベルが待機モードにあるか否かを判定する。
【0093】
ショベルが待機モードにある(油圧負荷が存在しない)と過給圧増大要否判定部300が判定した場合(ステップS21のYES)、コントローラ30は、レバー操作が開始されたか否かを判定する(ステップS22)。本実施例では、コントローラ30は、圧力センサ29の出力に基づいて、レバー操作が開始されたか否かを判定する。
【0094】
レバー操作が開始されたと判定した場合(ステップS22のYES)、コントローラ30は、ノズル開度の通常制御を停止させる(ステップS23)。そして、コントローラ30は、ノズル開度の過給圧増大制御を作動させ、ノズルベーン25aのノズル開度を、通常制御時より小さい過給圧増大時ノズル開度Asに調整する(ステップS24)。
【0095】
一方、レバー操作が開始されていないと判定した場合(ステップS22のNO)、コントローラ30は、ノズル開度の過給圧増大制御を作動させることなく、ノズル開度の通常制御を作動させる(ステップS25)。ノズルベーン25aのノズル開度を、エンジン回転数に応じたノズル開度に調整するためである。
【0096】
また、ショベルが待機モードにない(油圧負荷が存在する)と過給圧増大要否判定部300が判定した場合(ステップS21のNO)、例えば、メインポンプ14の吐出圧が所定圧以上であると判定した場合にも、コントローラ30は、ノズル開度の過給圧増大制御を作動させることなく、或いは、ノズル開度の過給圧増大制御を停止させ、ノズル開度の通常制御を作動させる(ステップS25)。
【0097】
なお、過給圧増大要否判定部300は、メインポンプ14の吐出圧が所定圧以上であるか否か、ノズル開度の通常制御を停止させた後に所定時間が経過したか否か、或いは、それらの組み合わせに基づいて、ショベルが待機モードにあるか否かを判定してもよい。
【0098】
このようにして、コントローラ30は、レバー操作が開始された場合に、一時的にノズルベーン25aのノズル開度を低減させる。そのため、コントローラ30は、外力による油圧負荷が未だ発生していない場合であっても、可変ノズルターボ25の過給圧を増大させることができる。すなわち、外力による油圧負荷の増大に先だって過給圧を所定幅だけ増大させることができる。その結果、可変ノズルターボ25は、外力による油圧負荷が急激に増大する場合であっても、エンジン回転数の低下(作業性の低下)やエンジン停止を引き起こす前に、外力に応じて増大する油圧負荷に見合う過給圧を発生させることができる。なお、過給圧の増大が外力による油圧負荷(エンジン負荷)の増大に追いつかない場合、エンジン11は、燃料噴射量を十分に増大させることができず、エンジン回転数を低下させ、場合によってはエンジン回転数を増大させることができずそのまま停止してしまう。
【0099】
次に、
図9を参照して、
図8の過給圧増大処理を実行する場合の各種物理量の時間的推移について説明する。なお、
図9は、それら各種物理量の時間的推移を示す図であり、上から順に、レバー操作量、油圧負荷(吸収馬力)、ノズル開度、過給圧、燃料噴射量、及びエンジン回転数のそれぞれの時間的推移を示す。また、
図9の実線で示す推移は、
図8の過給圧増大処理を実行するときの推移を表し、
図9の破線で示す推移は、
図8の過給圧増大処理を実行しないときの推移を表す。
【0100】
本実施例では、時刻t1において、例えば、掘削のためにアーム5を動かすためのレバー操作が開始された場合を想定する。
【0101】
まず、比較のために、
図8の過給圧増大処理を実行しないときの各種物理量の時間的推移について説明する。なお、アーム操作レバーのレバー操作量の時間的推移は、
図6の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0102】
図8の過給圧増大処理を実行しない場合、油圧負荷(破線参照。)は、時刻t2となるまで増大しないまま推移する。その後、時刻t2において、アーム5が地面に接すると掘削反力の増大に応じて油圧負荷が増大する。
【0103】
また、過給圧(破線参照。)も、時刻t2となるまで増大しないまま推移し、時刻t2においても比較的低い状態にある。そのため、可変ノズルターボ25は、時刻t2後の油圧負荷の増大に過給圧の増大を追従させることができない。その結果、エンジン11は、燃料噴射量を十分に増大させることができずにエンジン出力の不足を生じさせ、エンジン回転数を維持できずに低下させてしまい、場合によってはエンジン回転数を増大させることができずそのまま停止してしまう。
【0104】
これに対し、
図8の過給圧増大処理を実行する場合、ノズルベーン25aのノズル開度(実線参照。)は、時刻t1において低下し始め、時刻t2になる前に所定レベルまで低下する。そのため、過給圧(実線参照。)は、時刻t1において増大し始め、時刻t2になる前に所定レベルまで増大する。そのため、可変ノズルターボ25は、時刻t2後においても、油圧負荷の増大に大きな遅れを取ることなく、過給圧を増大させることができる。その結果、エンジン11は、エンジン出力の不足を生じさせることなく、エンジン回転数(実線参照。)を維持できる。
【0105】
また、コントローラ30は、時刻t2においてメインポンプ14の油圧負荷が上昇すると、ショベルが待機モードにないと判定し、ノズル開度の過給圧増大制御を停止させて通常制御を作動させる。その結果、ノズル開度は、エンジン回転数に応じた値に制御される。なお、
図9において、通常制御時のノズル開度は、明瞭化のため、一定の値で推移するものとして示されるが、実際にはエンジン回転数等に応じて変動する。
【0106】
このように、コントローラ30は、レバー操作が開始された後、掘削反力等の外力による油圧負荷が増大する前に、ノズルベーン25aのノズル開度を小さくすることによって、過給圧を比較的高いレベルまで増大させる。その結果、コントローラ30は、掘削反力等の外力による油圧負荷が急増した場合にも、既に比較的高いレベルにある過給圧を迅速に増大させることができる。また、過給圧を増大させる際に、エンジン回転数の低下(作業性の低下)、エンジン11の停止等を引き起こすこともない。
【0107】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0108】
例えば、上述の実施例では、コンプレッサ翼25dは、エンジン11の排気ガスを受けて回転するタービン翼25bと共に回転して外気をエンジン11の吸気口に強制的に流入させる。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。コンプレッサ翼25dの回転は、例えば
図10に示すように、過給機用電動モータ60aによって制御されてもよい。具体的には、過給機用電動モータ60aは、過給圧調整部60からの制御信号に応じて回転速度を変化させる。この場合、エンジン11の排気口11aを通過する排気ガスは、タービン翼を回転させる必要がない。
【0109】
また、上述の実施例では、メインポンプ14の吐出量は、ネガティブコントロール制御に基づいて制御されるが、ポジティブコントロール制御、ロードセンシング制御等に基づいて制御されてもよい。
【0110】
また、上述の実施例では旋回機構2が油圧式であったが、旋回機構2は電動式であってもよい。
【0111】
また、上述の実施例では、エンジン11のみでメインポンプ14を駆動するショベルに本発明を適用した例について説明したが、本発明は、エンジン11と電動発電機とをメインポンプ14に接続してメインポンプ14を駆動するショベルにも適用することができる。この場合、ショベルは、エンジン11の回転動力を電動発電機により電気エネルギーに変換し、蓄電装置にその電気エネルギーを蓄電できる。さらに、蓄電装置に蓄電した電気エネルギーを電動発電機により回転動力に変換してメインポンプ14を駆動させることができる。