特許第6385660号(P6385660)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6385660少なくとも1つの間隔要素を備えた蓄積装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385660
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】少なくとも1つの間隔要素を備えた蓄積装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 1/04 20060101AFI20180827BHJP
   B60T 8/42 20060101ALI20180827BHJP
   B60T 17/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   F15B1/04
   B60T8/42
   B60T17/00 D
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-196678(P2013-196678)
(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公開番号】特開2014-66361(P2014-66361A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2016年9月5日
(31)【優先権主張番号】10 2012 217 458.3
(32)【優先日】2012年9月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】ディートマル・クラッツアー
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05354187(US,A)
【文献】 実開平05−076961(JP,U)
【文献】 特開平10−138128(JP,A)
【文献】 特開2001−012416(JP,A)
【文献】 特開2001−328526(JP,A)
【文献】 実開平5−096502(JP,U)
【文献】 米国特許第03142318(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 1/00−7/10
F15B 15/00−15/28
B60T 7/12−8/1769
B60T 8/32−8/96
B60T 15/00−17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アキュムレータシリンダ(40)と、その中で案内されているアキュムレータピストン(42)とを備えた、蓄積装置(38)であって、前記アキュムレータシリンダ(40)が前記アキュムレータピストン(42)に対向しているシリンダ底部(48)を有し、前記アキュムレータピストン(42)が前記シリンダ底部(48)に対向しているピストン端部(66)を有し、前記シリンダ底部(48)と前記ピストン端部(66)との間の間隔(74)を保持するための少なくとも1つの間隔要素(72)が設けられている前記蓄積装置において、
個々の前記間隔要素(72)が前記シリンダ底部(48)と前記ピストン端部(66)との間に設けた別個の部材であ
前記アキュムレータシリンダ(40)が長手軸線(62)を有し、該長手軸線(62)から異なる距離半径(76,78)をもった少なくとも2つの間隔要素(72)が設けられている、蓄積装置。
【請求項2】
前記別個の部材が前記シリンダ底部(48)に位置固定して配置されている、請求項1に記載の蓄積装置。
【請求項3】
前記別個の部材が前記ピストン端部(66)に位置固定して配置されている、請求項1に記載の蓄積装置。
【請求項4】
前記別個の部材が球体状に構成されている、請求項1から3のいずれか一つに記載の蓄積装置。
【請求項5】
前記別個の部材がその付属の当接面(64,68)よりも硬い材料で形成されている、請求項1から4のいずれか一つに記載の蓄積装置。
【請求項6】
前記別個の部材が付属の繰り抜き部(70)に配置されている、請求項1から5のいずれか一つに記載の蓄積装置。
【請求項7】
前記別個の部材が付属の繰り抜き部(70)に圧入されている、請求項6に記載の蓄積装置。
【請求項8】
前記別個の部材が付属の前記繰り抜き部(70)を取り囲んでいる材料とかしめされている、請求項6に記載の蓄積装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一つに記載の蓄積装置(38)を車両ブレーキ装置(10)に使用する使用方法
【請求項10】
前記蓄積装置は、車両ブレーキ装置(10)用の蓄積装置である、請求項1から8のいずれか一つに記載の蓄積装置(38)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキュムレータシリンダと、その中で案内されているアキュムレータピストンとを備えた、特に車両ブレーキ装置用の蓄積装置であって、前記アキュムレータシリンダが前記アキュムレータピストンに対向しているシリンダ底部を有し、前記アキュムレータピストンが前記シリンダ底部に対向しているピストン端部を有し、前記シリンダ底部と前記ピストン端部との間の間隔を保持するための少なくとも1つの間隔要素が設けられている前記蓄積装置に関するものである。さらに、本発明はこの種の蓄積装置を車両ブレーキ装置に使用する使用方法にも関わる。
【背景技術】
【0002】
この種の蓄積装置は特に車両ブレーキ装置において使用され、流体の形態の圧力媒体、特にブレーキ液を中間蓄積するために用いられる。圧力媒体は車輪ブレーキシリンダから戻され、或いは、たとえばアンチロックブレーキシステム(ABS)および電子式走行安定プログラム(ESP)を備えた車両ブレーキ装置においては、車両ブレーキ装置のメインアキュムレータから供給される。
【0003】
蓄積装置は、アキュムレータシリンダと、その中で案内されているアキュムレータピストンとを含み、アキュムレータピストンにより圧力媒体用の蓄積容積が画成される。蓄積容積から圧力媒体を必要な時にブレーキ回路内へ搬送することができる。蓄積容積が縮小すると、アキュムレータピストンはアキュムレータシリンダ内へ深く進入する。
【0004】
付加機能を備えた蓄積装置においては、作動中に蓄積容積を最小化して、非常にわずかな圧力媒体が蓄積装置内にあることが必要な時がしばしばある。このためには、アキュムレータピストンは、そのピストン端部でもって該ピストン端部に対向しているアキュムレータシリンダのシリンダ底部で係止されるまで、アキュムレータシリンダ内へ進入しなければならない。シリンダ底部もピストン端部も、製造技術上の理由から、少なくとも十分平坦な面を有している。それ故、ピストン端部がシリンダ底部で係止されると全面接触が生じ、まだ圧力媒体が存在しているために、アキュムレータピストンが単に減速されるだけでシリンダ底部から再び離れることになる。この作用は液圧接着と呼ばれ、圧力推移を阻害して望ましくなく、そして好ましくない騒音が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、従来の蓄積装置の欠点を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、特に車両ブレーキ装置用の蓄積装置は、アキュムレータシリンダと、その中で案内されているアキュムレータピストンとを備え、前記アキュムレータシリンダは前記アキュムレータピストンに対向しているシリンダ底部を有し、前記アキュムレータピストンは前記シリンダ底部に対向しているピストン端部を有し、前記シリンダ底部と前記ピストン端部との間の間隔を保持するための少なくとも1つの間隔要素が設けられている。この場合、個々の前記間隔要素は前記シリンダ底部と前記ピストン端部との間に設けた別個の部材である。
【0007】
本発明による別個の部材により、作動中にポンプピストンがアキュムレータシリンダ内へ最大限進入すると、すなわち係止部まで進入すると、シリンダ底部とピストン端部との間に間隔が提供される。同時に、本発明による間隔要素によって提供される間隔によって全面による係止が回避されるので、ピストン端部とシリンダ底部とは少なくとも十分平坦なピストン端面およびシリンダ底面を有していてよい。従って液圧接着も阻止されるので有利である。
【0008】
別個の部材としての本発明による間隔要素により、ポンプピストンとポンプシリンダとは平坦なピストン端面および平坦なシリンダ底面を備えるように回転対称に切削して製造することができる。この簡単な切削製造方法は、公知の蓄積装置を製造する生産方法に比べて著しく低コストである。従来では、液圧接着を阻止するため、たとえばピストン端部に設けた細条部により、幾何学的形状の点で適当に構成したピストン端部を創作していた。このような幾何学的形状を備えたピストン端部は非回転対称形状を必要とし、鋳造、射出成形或いは冷間成形のような非切削成形法でしか製造することができない。もし高精度の要求のためにアキュムレータピストンを切削で製造する場合は、ピストン端部の上記幾何学的形状は、たとえばフライス加工のような高価な製造ステップで形成しなければならない。シリンダ底部の非回転対称形状も、従来は高価な方法でしか製造できない。
【0009】
本発明による別個の部材は、ピストン端面またはシリンダ底面の平面からわずかしか突出しないので有利である。わずかな突出量が有利であるのは、ポンプピストンが係止される際にも、ポンプシリンダ内で流体が残る空間がわずかに提供されているからである。
【0010】
特に低コストで1つの間隔要素のみが設けられているケースに対しては、この間隔要素は有利にはシリンダ底部とピストン端部との間の少なくともほぼ中央に配置される。すなわち、係止の際のポンプピストンの傾動が回避されるように配置される。有利には少なくとも1つの間隔要素が設けられ、特に有利には2つの間隔要素が設けられ、特に極めて有利には3つの間隔要素が設けられる。この場合にはポンプピストンはシリンダ底部を静力学的に特定の力で、安定に、力が平衡するように押圧する。
【0011】
有利には、別個の部材はシリンダ底部に位置固定して、特に形状拘束的に且つ/または摩擦で位置固定して配置されている。別個の部材は、ポンプピストンが、よってピストン端部がシリンダ底部を押す際に圧力を受けるように配置される。シリンダ底部はポンプシリンダの一部であり、その結果、発生する圧力はポンプシリンダにも伝えられる。ポンプシリンダは、通常は、ポンプケースとして用いられる液圧ブロックに設けた孔により形成される。これによって、発生する圧力は液圧ブロック全体に配分され、この圧力と関連する材料負荷を比較的小さく保つことができる。これにより本発明による蓄積装置の寿命は特に長いので有利である。
【0012】
これとは択一的に、または、これに加えて、別個の部材はピストン端部に位置固定して配置され、特にピストン端部と形状拘束的に且つ/または摩擦で結合されている。このように本発明に従って構成されるピストン端部により、必要な時には従来の蓄積装置を簡単に追装備できるようなポンプピストンが提供され、その結果そこでも液圧接着が阻止される。
【0013】
さらに、本発明によれば、別個の部材は好ましくは球体状に構成され、特に球体として、半球体としておよび/または球冠体として構成されている。球体形状により、コーナーおよびエッジのない間隔要素が提供され、流体は作動中に大きな阻害なしにこの間隔要素のそばを通り過ぎることができるので有利である。さらに、ポンプピストンの係止の際に、個々の間隔要素の球体形状と間隔要素に付属の当接面との間で点状の接触が提供され、流体は間隔要素のそばを容易に流動することができる。付属の当接面は、別個の部材がシリンダ底部に位置固定して配置されている場合にはピストン端面である。別個の部材をピストン端部に配置する場合には、付属の当接面はシリンダ底面である。
【0014】
少なくとも3つの球体状の別個の部材が間隔要素として設けられているのが特に有利である。というのは、ポンプピストンはポンプシリンダに係止されるときに傾動することがないので有利だからである。このような傾動は1つまたは2つの球体状の間隔要素を設けた場合に発生することがある。しかし、高さ位置と角度位置が整合している少なくとも3つの球体状の間隔要素は、係止の際にポンプシリンダ内で、すなわち係止位置で、一義的に静力学的に特定されたポンプピストンの位置を可能にする。
【0015】
さらに、有利には、別個の部材はその付属の当接面よりも硬い材料で形成されている。すなわち、係止の際に別個の部材が少なくともわずかにその付属の当接面の中へ侵入し、その結果安定した係止位置が提供されるように構成されている。特に別個の部材が球体状の場合には、係止の際にまず、最初の点状接触が生じ、この点状接触は、荷重によっては連続的に大きくなって、耐荷重性が増す面接触が形成される。ここではヘルツの圧力作用の法則が活用される。
【0016】
さらに、アキュムレータシリンダは有利には長手軸線を有し、本発明による蓄積装置では、長手軸線から異なる距離半径をもった有利には少なくとも2つの間隔要素が設けられている。すなわち少なくとも2つの間隔要素は長手軸線から異なる距離で配置されている。これが特に有利なのは、作動中にポンプピストンが並進往復運動を実施するばかりでなく、その長手軸線のまわりにも回転するからである。この回転運動のために、個々の間隔要素に付属の当接面に、長手軸線を中心にした、対応する距離半径をもつ円上に位置する接触点が生じる。同じ距離半径をもつ複数の間隔要素が設けられていれば、すべての接触点は当接面の1つの円上にのみ存在する。本発明に従って少なくとも2つの間隔要素の距離半径が異なっていれば、それらの接触点でもって異なる円が発生する。よって付属の当接面の摩耗が特に減少するので有利である。
【0017】
さらに、別個の部材は好ましくは付属の繰り抜き部の中に配置され、この繰り抜き部から別個の部材はわずかに突出してシリンダ底部とピストン端部との間の間隔を保持する。付属の繰り抜き部は穿孔具を用いて簡単に形成できるので有利である。ポンプシリンダまたはポンプピストンは、切削をして次にまたは同時に穿孔して付属の繰り抜き部を形成することで、低コストに回転対称に生産することができる。
【0018】
有利には、付属の繰り抜き部はシリンダ底部に設けられ、その結果付属の繰り抜き部は、同様に蓄積装置のシリンダ底部に形成される供給孔および排出孔とともに、穿設することができる。これは作業の手間および時間を節減させ、よってコストを節減させる。さらに、シリンダ底部は、通常は同様に液圧ブロックに設けた孔であるポンプケースの構成部分である。液圧ブロックとともにシリンダ底部は比較的多くの材料を取り囲んでおり、その結果繰り抜き部の形成の際に少なくともシリンダ底部は、よってポンプケースはほとんど成形されない。
【0019】
これとは択一的に、または、これに加えて、個々の付属の繰り抜き部はピストン端部に設けられ、そこに個々の間隔要素が配置される。
【0020】
有利には、別個の部材は付属の繰り抜き部に圧入されている。この圧入により、別個の部材と繰り抜き部を取り囲んでいる材料との間の摩擦結合が特に簡単に提供される。
【0021】
さらに、別個の部材は、有利には付属の繰り抜き部を取り囲んでいる前記材料にかしめされている。かしめにより別個の部材と繰り抜き部を取り囲んでいる材料とがわずかに塑性変形し、その結果これらは特に安定に且つ互いに取り外し不能に摩擦でおよび形状拘束的に結合される。
【0022】
本発明は、さらに、対応的に、本発明によるこのような蓄積装置を車両ブレーキ装置で使用することにも向けられている。総じて、非常に低コストで液圧接着のない特に安定した作動を可能にする車両ブレーキ装置が提供される。
【0023】
次に、本発明による解決手段のいくつかの実施形態を添付の図面を用いて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】技術水準による蓄積装置の第1例を備えた車両ブレーキ装置の液圧回路図の一部を示す図である。
図2図1の詳細図である。
図3】技術水準による蓄積装置の第2例の縦断面図である。
図4】本発明による蓄積装置の第1実施形態の縦断面図である。
図5】本発明による蓄積装置の第2実施形態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1には車両ブレーキ装置10が図示されている。車両ブレーキ装置は、これが属している4輪車両のドライバーによって操作可能なブレーキペダル12を含んでいる。ブレーキペダル12はブレーキ倍力装置14に作用し、該ブレーキ倍力装置を用いて、付属のブレーキマスターシリンダ16においてブレーキ液の形態の流体に圧力を発生させることができる。ブレーキマスターシリンダ16は種々の流体管18と結合され、該流体管により特に切換え弁20、付属の駆動モータ24を備えたポンプ要素22、左後方用吸入弁26、右前方用吸入弁28、左後方用排出弁30、右前方用排出弁32、左後方用ブレーキシリンダ34、右前方用ブレーキシリンダ36が選択的に互いに流体結合される。さらに、流体管18には、ブレーキ液を中間蓄積するための蓄積装置38が接続されている。
【0026】
蓄積装置38については、図2に第1従来例が概略原理図で図示され、図3に第2従来例がより厳密な原理図で図示されている。蓄積装置38はグラス状の、円筒状のアキュムレータシリンダ40を含み、該アキュムレータシリンダ内にはアキュムレータピストン42が変位可能に支持されている。アキュムレータピストン42は、アキュムレータシリンダ40の内面において、該アキュムレータピストン42に位置固定して配置されているピストンシール44を用いて液密に、しかし同時に変位可能に密封されている。ピストンスプリング46はこのように変位可能に支持されているアキュムレータピストン42をアキュムレータシリンダ40のグラス形状内へ押しやり、これによって該アキュムレータシリンダの内部に、ブレーキ液を加圧状態で中間蓄積するための圧力室が形成されている。
【0027】
アキュムレータシリンダ40のグラス形状の、アキュムレータピストン42に対向している底面は、シリンダ底部48である。シリンダ底部48には、ブレーキ液を蓄積装置38内へ取り込むための供給孔50が設けられ、蓄積装置には、供給孔50を選択的に開閉するための弁52が形成されている。このため弁52は弁密封体54を備え、該弁密封体は弁ばね56によりアキュムレータピストン42の方向において弁座58に対し押しつけられる。弁座58は図示していない弁座体に一体成形されたものであり、本従来例では供給孔50に対応する弁穴を取り囲んでいる。
【0028】
シリンダ底部48にはさらに排出孔60が設けられ、該排出孔を通じてブレーキ液を蓄積装置38から排出させることができる。なお、排出孔60も供給孔50もその長手方向において蓄積装置38の長手軸線62に対し平行に延在している。
【0029】
シリンダ底部48はシリンダ底面64とともに成形され、該シリンダ底面で、アキュムレータピストン42がアキュムレータシリンダ40内へ走入するときにそのピストン端部66でもって係止される。ピストン端部66も平坦面をピストン端面68として有しており、その結果ピストン端面68は係止の際にシリンダ底面64と全面接触する。全面接触は、ブレーキ液と協働していわゆる液圧接着を生じさせることがある。このことは、アキュムレータピストン42の走出の際にピストン端面68がシリンダ底面64から単に減速して再び離れることを意味しており、従って総じて不規則な、場合によっては途切れがちな液圧作動になる。
【0030】
このような作動中の望ましくない液圧接着は、図4および図5の本発明による蓄積装置38で有利に回避され、その結果安定した液圧作動が達成される。
【0031】
図4には第1実施形態が図示されており、この実施形態では、シリンダ底部48に3つの繰り抜き部70が穿設され、これらの繰り抜き部のうち1つの繰り抜き部70が縦断面で図示されている。これら3つの繰り抜き部70は、供給孔50および排出孔60とともに1回の製造工程で時間およびコストを節減して切削形成されるので有利である。
【0032】
3つの繰り抜き部70にはそれぞれ球体の形態の1つの間隔要素72が別個の部材として圧入されている。これら3つの別個の部材のうち、図示した縦断面は、平坦なシリンダ底面64から同じ高さでわずかに突出している2つの球体を示している。アキュムレータピストン42が走入したときにその平坦なピストン端面68が間隔要素72に係止されるように構成され、該間隔要素により平坦なシリンダ底面64に対する間隔74が保たれる。間隔74は前述した液圧接着を阻止するので有利である。さらに、個々の間隔要素72が球体状であるため、ブレーキ液はこれら間隔要素のそばをほとんど支障なく流れるので有利である。
【0033】
本実施形態では、ピストン端面68は球体状の間隔要素72のための当接面であり、しかも間隔要素はピストン端部66よりも硬い材料から形成されている。ピストン端面68に係止される際の個々の間隔要素72の最初の点状接触が圧力荷重の増大とともに面接触へ拡大するように構成されている。個々の間隔要素72はピストン端部66にわずかに侵入し、その結果アキュムレータピストン42の係止が全体的に緩衝されるので有利である。さらに、蓄積装置38の耐用期間中にピストン端面68に対し個々の間隔要素72が押圧される。押圧力は、作動中に長手軸線62のまわりでアキュムレータピストン42の回転運動が発生するので、ピストン端面68上の円に沿っている。
【0034】
本発明によれば、個々の間隔要素72は長手軸線62から半径方向において異なる間隔で配置されている。図示したのは、長手軸線62から第1の距離半径76と第2の距離半径78とを備えた2つの間隔要素72であり、この場合第1の距離半径76は第2の距離半径78よりも短い。さらに図示していない第3の間隔要素72は付属の第3の距離半径(図示せず)を有しており、この第3の距離半径は第1の距離半径76および第2の距離半径78とは異なっている。これら異なる距離半径により、係止の際に当接面としてピストン端面68上の異なる円が利用され、その結果ピストン面68に対する圧力荷重が配分される。このようにしてわずかな材料摩耗と長い寿命とが達成されるので特に有利である。
【0035】
図5は、上述した第1実施形態のすべての要素を含んでいる第2実施形態を示している。第1実施形態と異なるのは、第3の繰り抜き部70がピストン端部66に穿設されていることである。付属の3つの別個の部材は間隔要素72として締まりばめによりそこに挿入されており、平坦なピストン端面68から同じ高さで突出している。アキュムレータピストン42が走入すると、間隔要素72はアキュムレータピストン42とともに当接面としての平坦なシリンダ底面64に対し押しつけられ、これによって係止の際に間隔74が保たれる。従って、液圧接着を阻止するために図3の従来の蓄積装置38に簡単に追装備できるアキュムレータピストン42が提供されているので有利である。
【0036】
択一的な有利な実施形態では、別個の部材としての個々の間隔要素72は、付属の繰り抜き部70を取り囲んでいる材料でかしめされ、その結果特に安定な、取り外し不能な結合が提供される。
【0037】
本発明による他の実施形態では、それぞれ付属の繰り抜き部70内に設けられる個々の間隔要素72または別個の部材は、ピストン端部66内とシリンダ底部48との双方に配置される。
【0038】
さらに、本発明の択一的な実施形態では、間隔要素72または別個の部材は、シリンダピンとして、或いは、該シリンダピンの周囲に適合した四角形状で構成されている。
【符号の説明】
【0039】
10 車両ブレーキ装置
38 蓄積装置
40 アキュムレータシリンダ
42 アキュムレータピストン
48 シリンダ底部
62 アキュムレータシリンダの長手軸線
64,68 当接面
66 ピストン端部
70 繰り抜き部
72 間隔要素
74 シリンダ底部とピストン端部との間隔
76,78 距離半径
図1
図2
図3
図4
図5