特許第6385661号(P6385661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385661
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ドア
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/23 20060101AFI20180827BHJP
   E06B 5/16 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   E06B7/23 A
   E06B5/16
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-200714(P2013-200714)
(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公開番号】特開2015-67975(P2015-67975A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年3月29日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 知規
(72)【発明者】
【氏名】竹田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】松井 さと子
(72)【発明者】
【氏名】増井 由季
(72)【発明者】
【氏名】西尾 直浩
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−242438(JP,A)
【文献】 特開平10−037629(JP,A)
【文献】 特開平05−280259(JP,A)
【文献】 特開2007−162271(JP,A)
【文献】 特開2006−22589(JP,A)
【文献】 特開平10−317809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00 − 5/20
7/00 − 7/36
3/04 − 3/46,3/50 − 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親ドアと子ドアを備え、子ドアは戸先部に煙返しを有し、煙返しの見付面と見込面に亘って補強材が取付けてあり、煙返しは、見付面部にタイト材を有し、タイト材は、親ドアに当接する軟質樹脂製ヒレ片部と、火災の熱により発泡する発泡性耐火材部を有し、発泡性耐火材部は親子ドアの突合せ部の隙間に対向していることを特徴とするドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親ドアと子ドアを備えるドアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の親子ドアは、子ドアの戸先部の室内側に設けた煙返しに軟質樹脂より成るタイト材(例えば、特許文献1参照)を設け、タイト材を親ドアに当接させることで気密性や水密性を確保している。火災時には、タイト材が溶融して無くなり、親ドアと子ドアの突合せ部より火炎や煙が室内外を連通し、延焼に繋がるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−37629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、火災時に親子ドアの突合せ部からの火炎や煙の連通を防ぎ、延焼を防止できるドアの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明によるドアは、親ドアと子ドアを備え、子ドアは戸先部に煙返しを有し、煙返しの見付面と見込面に亘って補強材が取付けてあり、煙返しは、見付面部にタイト材を有し、タイト材は、親ドアに当接する軟質樹脂製ヒレ片部と、火災の熱により発泡する発泡性耐火材部を有し、発泡性耐火材部は親子ドアの突合せ部の隙間に対向していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によるドアは、子ドアの戸先部に煙返しを有し、煙返しは、見付面部にタイト材を有し、タイト材は、親ドアに当接する軟質樹脂製ヒレ片部と、火災の熱により発泡する発泡性耐火材部を有し、発泡性耐火材部は親子ドアの突合せ部の隙間に対向しているので、火災時にタイト材の発泡性耐火材部が発泡して親子ドアの突合せ部の隙間を塞ぐため、親子ドアの突合せ部からの火炎や煙の連通を防ぎ、延焼を防止できる。煙返しの見付面と見込面に亘って補強材が取付けてあることで、煙返しが火災の熱で溶けても補強材は残り、タイト材の発泡性耐火材部が補強材に当たるように発泡・膨張することで、親子ドアの突合せ部の隙間を塞いだ状態を確実に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】親子ドアの突合せ部を拡大して示す横断面図である。
図2図3のA−A断面図である。
図3】本発明に係るドアの一実施形態を示す室内側正面図である。
図4】火災時における親子ドアの突合せ部の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜3は、本発明に係るドアの一実施形態を示している。本ドアは玄関用のドアであり、図2,3に示すように、躯体開口部に取付けられる枠7と、一方の竪枠8aに蝶番9aで室外側に開くように取付けた親ドア1と、他方の竪枠8bに蝶番9bで室外側に開くように取付けた子ドア2を備える。親ドア1は、戸先側にハンドル10と、ハンドル10と連動したラッチ錠と、ハンドル10の上下2か所に設けた本締り錠38a,38bを備え、ラッチ錠と本締り錠38a,38bを子ドア2の戸先部に設けた錠受けに係合することで施錠される。子ドア2は、フランス落しにより施錠される。
【0009】
親ドア1は、図2に示すように、金属製のフレーム11を四周枠組みし、その枠内に発泡スチロール板等の断熱材12を配置し、室外側と室外側に鋼板よりなるパネル13a,13bを貼り付けたいわゆるフラッシュ構造となっている。パネル13a,13bは、四周の縁部を見込み方向に折り曲げて、リベット14でフレーム11に固定してある。
親ドア1の戸先側の見込面には、図1に示すように、アルミ形材よりなるエッジ材15が取付けてある。エッジ材15は、室外側に煙返し16を有し、煙返し16は室外側に突出する見込面部16aと、見込面部16aの先端より親ドア1の戸先側に突出する見付面部16bを有しており、煙返し16により親子ドア1,2の突合せ部の隙間17を室外側から隠している。
親ドア1の戸先側の見込面の室外側の部分には、熱に反応して発泡・膨張する発泡性耐火材18が長手方向に沿って設けてある。かかる発泡性耐火材18は、市販品の中から適宜選択して用いることができ、例えば積水化学工業株式会社製の商品名「フィブロック」を用いることができる。これは、プラスチック技術を活用した有機系耐火材であり、通常の状態では薄いシート状で、200℃以上に加熱されると厚さ方向に5〜40倍に膨張し、断熱層を形成する。火災時に消失することがなく、有害ガスが発生することもない。またフィブロックは、片面に剥離紙付きの接着層を有しているので、剥離紙を剥がして簡便に接着取付けできる。
【0010】
子ドア2は、親ドア1と同様に、金属製のフレーム19を四周枠組みし、その枠内に発泡スチロール板等の断熱材20を配置し、室外側と室外側に鋼板よりなるパネル21a,21bを貼り付けたいわゆるフラッシュ構造となっている。パネル21a,21bは、四周の縁部を見込み方向に折り曲げて、リベット22でフレーム19に固定してある。
子ドア2の戸先側の見込面には、図1に示すように、アルミ形材よりなるエッジ材23が取付けてある。エッジ材23は、室内側に煙返し3を有し、煙返し3は室内側に突出する見込面部3aと、見込面部3aの先端より子ドア2の戸先側に突出する見付面部3bを有し、煙返し3により親子ドア1,2の突合せ部の隙間17を室内側から隠している。見付面部3bの戸先側端部には、タイト材ホルダー24が室外側に向けて設けられ、タイト材ホルダー24にタイト材4が取付けてある。タイト材4は、軟質樹脂製ヒレ片部5と、熱に反応して発泡・膨張する発泡性耐火材部6とを、二色押出成形により一体化したものである。軟質樹脂製ヒレ片部5は、発泡性耐火材部6よりも煙返し3の見込面部3aから遠い側にあって、親ドア1の室内側の見付面の戸先側端部に当接し、親子ドア1,2の突合せ部の隙間17からの風雨の吹き込みを阻止している。発泡性耐火材部6は、軟質樹脂製ヒレ片部5よりも煙返し3の見込面部3aに近い側にあって、親子ドア1,2の突合せ部の隙間17に対向している。発泡性耐火材部6は、中空部25を設けて弾力性を持たせている。
【0011】
煙返し3は、図1に示すように、ステンレス板よりなる補強材26を取付けて補強してある。補強材26は、煙返し3の外側(室内側)に配置した主補強材26aと、煙返し3の内側(室外側)に配置した従補強材26bとからなり、両補強材26a,26bは煙返し3の見込面部3aを挟み込むようにしてリベット27で取付けてある。主補強材26aは、室外側の端部が煙返し3の見込面部3aの付け根部分に形成された溝28に係止し、室内側の端部がタイト材ホルダー24の室内側までのびている。従補強材26bは、見込方向・見付方向共に主補強材26aよりも短くなっている。煙返し3は、室内側から係合取付けした樹脂製のカバー材29によりカバーされている。
【0012】
親ドア1及び子ドア2の戸先側見込面の室内側端部には、エッジ材15,23とパネル13b,21bの折り返し部分との間に挟み込んで、発泡性耐火材30,31が長手方向に沿って設けてある。
また、子ドア2の戸先側見込面の室外側端部にも発泡性耐火材32が長手方向に沿って設けてある。この発泡性耐火材32は、親ドア1の戸先側見込面の発泡性耐火材18と対向して設けてある。
【0013】
枠7は、図2に示すように、内周側の見込面の室内側にタイト材ホルダー33を内周側に突出して有し、タイト材ホルダー33にタイト材34が室外側に向けて設けてある。この枠のタイト材34は、煙返し3のタイト材4と同様に、軟質樹脂製ヒレ片部35と発泡性耐火材部36を有するものであり、軟質樹脂製ヒレ片部35が親ドア1及び子ドア2の室内側見付面の周縁部に当接し、発泡性耐火材部36は親ドア1及び子ドア2と枠7との隙間37に対向している。
【0014】
図4は、火災時における親子ドア1,2の突合せ部の状態を示している。同図に示すように、火災が発生すると子ドア2の煙返し3に取付けたタイト材4の発泡性耐火材部6が火災の熱により発泡・膨張し、親子ドア1,2の突合せ部の隙間17を室内側から塞ぎ、親子ドア1,2の戸先側見込面の室外側に取付けた発泡性耐火材18,32が火災の熱により発泡・膨張し、親子ドア1,2の突合せ部の隙間17を室外側から塞ぐ。これにより親子ドア1,2の突合せ部からの火炎や煙の連通を防ぎ、延焼を防止できる。
子ドア2の煙返し3が補強材26で補強してあるため、煙返し3が火災の熱で溶けたとしても補強材26は残り、タイト材4の発泡性耐火材部6が補強材26に当たるように発泡・膨張することで、親子ドア1,2の突合せ部の隙間17を塞いだ状態を確実に維持できる。
また、親ドア1及び子ドア2の見込面に発泡性耐火材18,32が対向して設けてあることで、親ドア1が熱反りして戸先側の上部と下部が見込方向に移動したとしても、親子ドア1,2の見込面間の空間を発泡性耐火材18,32で密に塞ぐことができる。
さらに、親ドア1及び子ドア2にエッジ材15,23とパネル13b,21bの間に挟み込んで設けた発泡性耐火材30,31が発泡・膨張することで、ドアの錠や錠受け等の機能部品の隙間を通って室内側に流れ込む煙や、ドア内部の断熱材12,20から発生する可燃ガスが室内側に連通するのを防止できる。
また、枠7のタイト材34の発泡性耐火材部36が発泡・膨張して親子ドア1,2の周囲と枠7の間の隙間37を塞ぎ、親子ドア1,2の周囲と枠7の間から火炎や煙が連通することも防止できる。
【0015】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。タイト材4の軟質樹脂製ヒレ片部5及び発泡性耐火材部6の材質・形状は、適宜変更することができる。親ドア1及び子ドア2の構造は任意であり、フラッシュ構造のものに限らず、例えば框組みした枠にパネルを嵌め込んだ構造等であってもよい。本発明は、玄関ドアに限らず、勝手口のドアや室内のドア等、あらゆるドアに適用することができる。
【符号の説明】
【0016】
1 親ドア
2 子ドア
3 煙返し
4 タイト材
5 軟質樹脂製ヒレ片部
6 発泡性耐火材部
図1
図2
図3
図4