【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記のように本発明の各局面に想到した。
【0009】
すなわち、本発明の第1の局面に係るカテーテル治療シミュレータは、
弾性材料で形成され、流体を流通させるための疑似血管流路を有する板状の疑似血管流路層と、
前記流体を排出するための排出流路を有する板状の排出流路層と、
を備えるカテーテル治療シミュレータであって、
前記疑似血管流路層と前記排出流路層とが積層され、
前記疑似血管流路層には、前記疑似血管流路から伸び、前記排出流路に接続する連絡流路が形成されている、
ことを特徴とするカテーテル治療シミュレータである。
【0010】
このように規定される第1の局面のカテーテル治療シミュレータによれば、疑似血管流路の枝分かれした複数の端部が疑似血管流路層内部に分散して配置され直線的に整列しない場合であっても、例えば、各端部から連絡流路を介して、疑似血管流路層に積層された排出流路層の排出流路へと、流体を流通させ排出するように構成することが可能となる。これにより、疑似血管流路層内における疑似血管流路の配置自由度が向上する。
【0011】
本発明の第2の局面によれば、上記カテーテル治療シミュレータにおいて、前記疑似血管流路は生体の動脈を模した流路として形成され、前記排出流路は前記生体の静脈を模した流路として形成される。
このように、排出流路を静脈モデルとしても用いることができ、排出流路における疑似血液流体の流れにより、静脈の血流を模擬することができる。
【0012】
本発明の第3の局面によれば、上記カテーテル治療シミュレータにおいて、前記疑似血管流路層は、シリコーンエラストマーまたはポリビニルアルコールの水性ゲルで形成される。
シリコーンエラストマーまたはポリビニルアルコールの水性ゲルは生体組織に近い弾性を有するためカテーテルを挿入するためのモデルとして好適である。特にポリビニルアルコールの水性ゲルは高い光弾性効果を有するため、光弾性効果を用いた疑似血管流路の周壁における応力の観察を行う場合に好適である。
【0013】
本発明の第4の局面によれば、上記カテーテル治療シミュレータにおいて、前記排出流路層は、アクリル樹脂またはガラスにより形成されている。このようにすれば、排出流路層の機械的強度を増すことができ、積層体全体としての強度確保に貢献できる。
【0014】
本発明の第5の局面によれば、上記カテーテル治療シミュレータは、連通路を有する板状の連通路層を更に備え、
前記疑似血管流路層の前記連絡流路と前記排出流路層の前記排出流路とが前記連通路層の前記連通路を通じて接続するように、前記疑似血管流路層と、前記連通路層と、前記排出流路層とが積層される。
このように規定される第5の局面のカテーテル治療シミュレータによれば、疑似血管流路の枝分かれした複数の端部が疑似血管流路層内部に分散して配置され直線的に整列しない場合であっても、各端部から、疑似血管流路層内の連絡流路および、疑似血管流路層に対して積層された連通路層内の連通路を介して、更に積層された排出流路層中の排出流路へと、流体を流通させ排出することができる。これにより、疑似血管流路層内における疑似血管流路の配置自由度が向上する。
【0015】
本発明の第6の局面によれば、上記カテーテル治療シミュレータにおいて、
前記疑似血管流路は、前記疑似血管流路層の積層面に沿う方向に伸長し、
前記排出流路は、前記排出流路層の積層面に沿う方向に伸長し、
前記連通路は、前記連通路層の積層面と交わる方向に伸長し、該連通路層を貫通する。
上記構成によれば、疑似血管流路は積層面に沿うため、カテーテル治療シミュレーションを実施する時に、疑似血管流路およびその内部を流通する流体を観察しやすい。連通路は、積層面と交わる方向に伸長するため、形成がしやすい。排出流路は、積層面に沿う方向に伸長するため、最終的な排出口を層の端縁付近に形成することができ、好適である。また、カテーテル治療シミュレーション実施時に、排出流路の内部を流通する流体を観察しやすい。
【0016】
本発明の第7の局面によれば、上記カテーテル治療シミュレータにおいて、前記連通路はオリフィスを有する。
上記構成によれば、連通路に流量調整機能を備えることができる。そのため、例えば、疑似血管流路の各枝分かれ部分を流れる流体の流量を調整して、生体中の実際の血液の流れをより正確に模した状態で、カテーテルシ手術ミュレーションを行うことが可能となる。
【0017】
本発明の第8の局面によれば、上記カテーテル治療シミュレータにおいて、前記連通路層には、カテーテル治療シミュレータ内の所定の物理化学的性状を計測するためのセンサが備えられる。このような構成によれば、例えば、前記疑似血管流路層と接する前記連通路層に温度センサを備えることにより、疑似血管流路層の温度や疑似血管流路内部を流れる流体の温度を把握しながら、カテーテル治療シミュレーションを行うことができる。
【0018】
本発明の第9の局面によれば、上記カテーテル治療シミュレータにおいて、前記連通路層は、前記疑似血管流路の複数の部分と連絡する空洞部分を有する。例えば、上記構成における疑似血管流路の複数の部分と連絡する空洞部分を病変モデル部として、カテーテル治療シミュレーションを行うことができる。
本発明の第10の局面によれば、前記連通路層は、アクリル樹脂またはガラスにより形成されている。このようにすれば、連通路層の機械的強度を増すことができ、積層体全体としての強度確保に貢献できる。
【0019】
本発明の第11の局面によれば、上記カテーテル治療シミュレータにおいて、
前記疑似血管流路層は、前記流体を前記疑似血管流路へ流入させるための流入口を有し、
前記疑似血管流路は前記流入口から徐々に枝分かれするように伸長し、
前記連通路は、前記疑似血管流路の枝分かれした複数の先端部付近とそれぞれ連絡する複数の流路部分を有する。
このような具体的な構成においても、上記第1の局面と同様の効果を奏することができる。
【0020】
本発明の第12の局面によれば、上記カテーテル治療シミュレータにおいて、前記疑似血管流路層は無色透明であり、前記連通路層は、有色である。
このような構成とすれば、疑似血管流路層を無色透明とし、その下側の連通路層を有色とすることで視覚的に明確に区別できることから、疑似血管流路層内部がより観察しやすくなる。
【0021】
本発明の第13の局面によれば、上記カテーテル治療シミュレータは、発光素子を有し前記疑似血管流路層および前記排出流路層とともに積層される発光層を更に備える。
発光層の発光素子を積層体の下方部分からの発光に用いれば、疑似血管流路等内における疑似血液の流れの観察が容易になる。また、光弾性効果を用いた応力観察のための外部光源を必要としないため好適である。更に発光層の発光素子により、もしくは、更に液晶層を備えることによって、文字や図形の表示を行うことも可能となる。その場合は、モデル各部の情報や、シミュレーションの条件や状況を随時表示でき、モデルを注視したままシミュレーションを行うことができる。