(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385669
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】回転電機およびこれを搭載した電動車両
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20180827BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20180827BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
H02K9/19 A
E02F9/20 Z
H02K7/116
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-245424(P2013-245424)
(22)【出願日】2013年11月27日
(65)【公開番号】特開2015-104290(P2015-104290A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中原 明仁
(72)【発明者】
【氏名】菊地 聡
(72)【発明者】
【氏名】石田 誠司
(72)【発明者】
【氏名】石島 真
(72)【発明者】
【氏名】三好 努
【審査官】
安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−191719(JP,A)
【文献】
特開2006−197772(JP,A)
【文献】
特開2012−105457(JP,A)
【文献】
特開2010−252502(JP,A)
【文献】
特開2013−066348(JP,A)
【文献】
特開2009−071923(JP,A)
【文献】
特開2006−101672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
E02F 9/20
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有する回転子と、前記回転子の外周側に同心に配置される固定子鉄心と、前記固定子鉄心のティースに巻回された電機子巻線と、前記固定子鉄心をその外周側で保持するハウジングと、前記ハウジングの回転軸方向両端に配置されて前記回転軸の軸受を保持するブラケットと、を備え、
前記電機子巻線、前記固定子鉄心及び回転子を冷却する液体冷媒を循環させるポンプと、前記液体冷媒が流通する冷媒経路と、前記液体冷媒の溜め部と、を有し、
前記ポンプは前記ブラケットの内部に設けられて前記軸受の外周側又はその回転軸方向端部側に着脱可能に配置されており、
前記冷媒経路が前記ブラケットの内部に設けられているとともに、前記ブラケットの内側端面に前記冷媒経路を流通する前記液体冷媒を前記電機子巻線に向けて噴射する噴出口が設けられていることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1において、
前記噴出口が設けられたリングを備えており、前記リングが前記ブラケットに着脱可能に取り付けられていることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1において、
前記ポンプの動力は前記回転軸の回転から得ることを特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項1,2または3において、
前記溜め部は前記ハウジングの下方に配置され、前記溜め部には当該溜め部内の液体冷媒を冷却するための2次液体冷媒配管が配設されていることを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項4において、
前記2次液体冷媒配管を流れる2次液体冷媒は、前記回転電機以外の他の機器の冷却用の液体冷媒と兼用したものであることを特徴とする回転電機。
【請求項6】
請求項1,2または3において、
前記液体冷媒として油を使用し、
前記冷媒経路から分岐する油供給路を設け、前記油供給路を前記軸受に接続して前記油を前記軸受に供給することを特徴とする回転電機。
【請求項7】
請求項1,2または3において、
前記回転軸の回転を歯車を介して前記ポンプに動力伝達することを特徴とする回転電機。
【請求項8】
請求項1,2または3において、
前記回転軸の回転を歯車を介して前記ポンプに動力伝達し、
前記液体冷媒として油を使用し、前記冷媒経路から分岐する油供給路を設け、前記油供給路を前記歯車と前記軸受に接続して前記油を前記歯車と前記軸受に供給することを特徴とする回転電機。
【請求項9】
走行体と、前記走行体上で旋回可能に設けた旋回体と、前記旋回体上に設けた運転室と、前記旋回体上に配置されたエンジン室と、前記旋回体の前部に設けられてアーム及びバケットを有する多関節型フロント装置と、を備え、
前記エンジン室には、請求項1,2または3に記載された回転電機がエンジンと前記多関節型フロント装置を駆動する油圧ポンプとの間に介在されて配設されることを特徴とする電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体冷媒により巻線を冷却する回転電機に係わり、特に建設機械に好適な回転電機及び電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機の巻線においては通電時電流が流れる際の損失により発熱が生じるため、絶縁の耐熱温度を超過しないよう冷却設計がなされている。回転電機が内燃機関など高温となる機器の近傍に併設される場合又は回転電機の体格(体積)当たりの出力が大きい場合などには空気の循環だけでは回転電機内を十分に冷却できない場合がある。
【0003】
このような場合に、従来、巻線を冷却する方法として油等の液体冷媒を用いる技術がある。この従来の技術を用いた場合には、冷却効果が高い一方で、液体を循環させるポンプなどの機器や液体冷媒を流通させるための配管を実装する空間を要するという課題が生じる。この課題に対して、ポンプと配管を回転電機内に納めることで、液体冷媒の循環装置実装に要する空間を不要とした構成が提案されている。
【0004】
その提案として、例えば、特許文献1には、建設機械車両の上部旋回体駆動用モータに対して油を冷媒とした冷却を行い、ポンプをモータ内に設けてコンパクトな構成とした電動モータが示されている。また、特許文献2には、ハウジングとブラケットで油溜め部を形成し、軸受と併設した歯車ポンプによって油を巻線に噴射することにより油冷却装置の外部設置を必要とせず、油配管の引き回しを容易構成とした発電電動機が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−71923号公報
【特許文献2】特開2012−191719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、建設機械車両のように車体が傾斜する車両に対して回転電機が搭載される場合には、上記の特許文献1に示すような、回転電機のロータコアの回転で液体を吸い上げるポンプ方式では、車体傾斜時に液体冷媒の液面が変化するのでポンプ吸い上げによる液体循環が困難になる可能性があり、また、ロータコア内に冷媒通路があるので、冷媒通路に異物が混入した場合にはロータまでも分解する必要が生じる。
【0007】
さらに、上記の特許文献2では冷媒通路は、モータ自体を車体に保持するためのハウジングに設けられており、且つ回転軸を支えるブラケットとは別に設けられているので、回転電機内を循環する液体冷媒に異物が混入したり又は何らかの変質が認められた場合には、液体を流通させる配管とポンプを取り外してメンテナンスを行う必要が生じ得るが、回転電機のハウジングに配管を有しているので、回転電機を保持しているハウジングまでも分解する必要があり液体媒体の点検、保守作業には多大な時間を要することになる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、液体冷媒を用いて巻線を冷却する回転電機において、液体冷媒を循環するためのポンプおよび冷媒経路をコンパクトにまとめて小型化するとともにメンテナンス性を向上した、特に建設機械車両に好適な回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は主として次のような構成を採用する。
回転軸を有する回転子と、前記回転子の外周側に同心に配置される固定子鉄心と、前記固定子鉄心のティースに巻回された電機子巻線と、前記固定子鉄心をその外周側で保持するハウジングと、前記ハウジングの回転軸方向両端に配置されて前記回転軸の軸受を保持するブラケットと、を備え、前記電機子巻線、前記固定子鉄心及び回転子を冷却する液体冷媒を循環させるポンプと、前記液体冷媒が流通する冷媒経路と、前記液体冷媒の溜め部と、を有し、前記ポンプは前記ブラケット
の内部に設けられて前記軸受の外周側又はその回転軸方向端部側に着脱可能に配置されており、前記冷媒経路が前記ブラケットの内部に設けられているとともに、前記ブラケットの内側端面に前記冷媒経路を流通する前記液体冷媒を前記電機子巻線に向けて噴射する噴出口が設けられている構成とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回転電機の液体冷媒を循環するためのポンプおよび冷媒経路をコンパクトにまとめて小型化することができ、さらに、ポンプおよび冷媒経路のメンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態1に係る回転電機の構成を示す断面図である。
【
図2】本実施形態1の構成であり、
図1に示すA−A’線の切断断面図である。
【
図3】本実施形態1の構成であり、
図1に示すB−B’線の切断断面図である。
【
図4】本実施形態1に係る回転電機における各構成要素を示す分解図である。
【
図5】本発明の実施形態2に係る回転電機の構成を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施形態3に係る回転電機の構成を示す断面図である。
【
図7】本発明の実施形態4に係る回転電機の構成を示す断面図である。
【
図8】本発明の実施形態5に係る回転電機の構成を示す断面図である。
【
図9】本発明の実施形態6に係る回転電機を搭載した電動車両における傾斜地作業状況を表す説明図である。
【
図10】本発明の実施形態6に係る回転電機を搭載した電動車両におけるエンジン室の断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る回転電機とこれを搭載した電動車両について、図面を参照しながら以下説明する。本発明の実施形態1について
図1〜
図4を参照し、実施形態2について
図5を参照し、実施形態3について
図6を参照し、実施形態4について
図7を参照し、実施形態5について
図8を参照し、実施形態6について
図9及び
図10を参照して、それぞれ個別に説明する。
【0013】
「実施形態1」
本発明の実施形態1に係る回転電機を表す
図1〜
図4は、上記の図面の簡単な説明欄で説明したとおりの構成を表すものである。図面において、1は固定子鉄心、2はティース、3はスロット、4は電機子巻線、5は回転子、6はシャフト、7はブラケット、8はハウジング、9は軸受、10はポンプ、11は液体(油)溜め部、12は冷媒経路、17は液体(油)抜き孔、35はオイルシール、36はリング、37は噴射口、をそれぞれ表す。
【0014】
固定子鉄心1はティース2とスロット3を有し(
図4、
図1を参照)、スロット3に納められた電機子巻線4がティース2に巻回されている。固定子鉄心1は外径側からハウジング8により保持されている。ハウジング8の両側端にはブラケット7が配置されている。ここで、ハウジング8は本実施形態に係る回転電機を装置本体に保持して設置する機能を有し、ブラケット7はハウジング8の両側端で固定され、回転軸であるシャフト6を軸受9を介して保持する機能を有しているものである。
【0015】
ブラケット7には、その内部に冷媒経路12が形成されるとともに、ポンプ10(例、トロコイドポンプ)が配置されている。ここで、ポンプ10内のポンプロータはシャフト6に取付けられていて、シャフト6の回転動力を利用するものである。また、ハウジング8の下には液体(油)溜め部11が取り付けられている。
【0016】
油などの液体冷媒は液体溜め部11からブラケット7内のポンプ10に吸い上げられ、冷媒経路12を通って電機子巻線4の端部に向けて噴射される。
図2に示すように、ポンプ10を経由した後の冷媒経路12は円周形状で配され、電機子巻線4の端部に向かって噴射口37を通って噴射できるようになっている。冷媒経路12の回転軸中央方向への噴射口37は、その数と位置について、スロット3及び電機子巻線4の配置に対応して適切に設計するのが好ましい。
【0017】
図3においては、電機子巻線4の回転軸方向の端部が図示されている。噴射口37から噴射された液体冷媒は、電機子巻線4の端部に当たり、電機子巻線4を伝ってスロット3の回転軸中央方向に流れて電機子巻線4と固定子鉄心1での発熱を除熱し、また、固定子鉄心1のティース2間の隙間を通して液体冷媒が固定子鉄心1から回転子5に流れ落ちて回転子5での発熱を除熱しながらハウジング8の下方に流れる。さらに、噴射された液体冷媒の流れ経路として、電機子巻線4の端部に当たった液体冷媒の一部はその下方にある電機子巻線4の端部に流れ落ちる。
【0018】
図3に示すように、ハウジング8の下方に溜まった液体冷媒は液体抜き孔17を通って液体溜め部11に戻る。
図1では、ハウジング8の下方に(液体抜き孔17の上方に)液体冷媒が溜まった様子を示しているが、液体冷媒の流量が少ない場合、すなわちシャフト6の回転数が低い場合には液体冷媒はハウジング8下方に溜まることなく液体溜め部11に戻る。すなわち、ポンプ10の通常動作ではハウジング8の下方に液体が溜まらないように液体抜き孔17の径を調整している。
【0019】
図4は、回転子5に界磁源としての永久磁石を有し、固定子鉄心1に電機子巻線4を有し、電機子巻線4に液体冷媒を噴射して冷却を行う本実施形態に係る回転電機の構成を示す分解図である。この回転電機には、回転子5の同心外径側に電機子巻線4を巻回した固定子鉄心1が配置され、固定子鉄心1の外径側にハウジング8が配置されている。
【0020】
また、
図4によると、シャフト6の軸方向両端側には、液体冷媒を噴射する噴射口37を設けたリング36が設けられている。ここで、リング36
とブラケット7
は別々の部材を一体化した一体的
構成であり、
リング36はブラケット7の一部を形成するものである。
図1ではブラケット7自体に冷媒経路12を設けた構造を示しているが、
図4に示すように、これに代えてブラケット7とリング36との組み合わせで冷媒経路12を形成してもよい。ブラケット7にはシャフト
6の軸受9が内設され、ブラケット7のシャフト6が貫通する位置にはオイルシール35が設けられている。なお、
図4でブラケット7に図示されている穴はハウジング8への固定用のねじ穴である。
【0021】
以上のように、本発明の実施形態1では、液体冷媒
を循環するためのポンプ10及び冷媒経路12をブラケット7に一体的に構成したことにより、回転電機内の冷媒経路12を点検する場合においてもハウジング8(回転電機のケース)は固定したままで行うことが可能である。ここで、上述した一体的構成というのは、ポンプ10及び冷媒経路12がブラケット7から着脱自在であることを意味し、液体冷媒中に異物が混入したときに、ブラケット7から容易にポンプ10を取り外し、また、冷媒経路を露出させて、混入した異物を取り出すことができるようになっている。また、ハウジング8内に冷媒経路を設けなくてよいためハウジング8をコンパクトに構成することができ、さらに、冷媒経路をブラケット7と別に設けていないためにコンパクト構成になる。ここで、本実施形態1に用いるポンプは自吸式のものが望ましい。
【0022】
「実施形態2」
本発明の実施形態2に係る回転電機について
図5を参照しながら説明する。
図5は本発明の実施形態2に係る回転電機の構成を示す断面図である。本実施形態2では、実施形態1と共通する構成要素を同じ符号で示しており、これについては実施形態1の説明を援用する。
【0023】
図5において、本実施形態2に係る回転電機は、実施形態1の構成に加えて、液体溜め部11内に2次冷媒を流通させるための2次冷媒配管13を設け、回転電機内を循環する液体冷媒を冷却している。具体的には、液体溜め部11の液体冷媒は油であってもよく、2次冷媒配管13に流れる液体は水であってもよく、この場合には循環する水で油を冷却している。ここで、回転電機はインバータを通して電力が供給されているのが一般的構成であり、インバータも発熱体であるのでインバータに水を供給して冷却する必要があり、このインバータ冷却用の水を液体溜め部11の2次液体冷媒と兼用させてもよい。なお、
図5では2次冷媒流入口13aが2次冷媒流出口13bよりも上方にある配置となっているが、出口が上方となる配置あるいは同程度の水平位置であっても構わない。
【0024】
液体溜め部11はハウジング8とは別に構成されているため、回転電機内の冷媒経路を点検する場合においてもハウジングは固定したままで行うことが可能である。
【0025】
「実施形態3」
本発明の実施形態3に係る回転電機について
図6を参照しながら説明する。
図6は本発明の実施形態3に係る回転電機の構成を示す断面図である。本実施形態3では、実施形態1と共通する構成要素を同じ符号で示しており、これについては実施形態1の説明を援用する。
【0026】
図6において、本実施形態3では液体冷媒として油を用い、実施形態1の構成に加えて、噴射口37を形成する冷媒経路12に分岐路である油供給路14を設けて、この油供給路14から軸受9に油を供給している。油は回転電機内の冷却と軸受9の潤滑を共に担っている。
【0027】
油供給路14もブラケット7に一体的に設けたことにより、回転電機内の冷媒経路を点検する場合においてもハウジングは固定したままで行うことが可能である。また、循環する油によって軸受9を潤滑することで、グリスの劣化などによる信頼性の低下を防ぐことができる。
【0028】
本実施形態3では軸受9に油供給される構成例を示したが、軸受9の潤滑だけでなく、シャフト6などの潤滑に利用してもよい。
【0029】
「実施形態4」
本発明の実施形態4に係る回転電機について
図7を参照しながら説明する。
図7は本発明の実施形態4に係る回転電機の構成を示す断面図である。本実施形態4では、実施形態1と共通する構成要素を同じ符号で示しており、これについては実施形態1の説明を援用する。
【0030】
図7において、実施形態1で用いたポンプ10が、歯車15を介して回転シャフト6によって駆動されるように構成したものである。
【0031】
歯車15の段数を適切に選ぶことにより、ポンプ10の回転数をシャフト6の回転数に対して増減させることができる。これにより、例えばシャフト6に対して歯車15で増速した場合には小型のポンプを適用することが可能となり、回転電機をコンパクトに構成することができる。また、ポンプのシールが容易に行える利点もある。
【0032】
図7では、シャフト6に対して上方にポンプが配置されているが、下方あるいは同程度の水平位置であっても構わない。
【0033】
「実施形態5」
本発明の実施形態5に係る回転電機について
図8を参照しながら説明する。
図8は本発明の実施形態5に係る回転電機の構成を示す断面図である。本実施形態5では、実施形態1と共通する構成要素を同じ符号で示しており、これについては実施形態1の説明を援用する。
【0034】
本実施形態5に係る回転電機は、実施形態4の回転電機に工夫を加えた構成例であり、液体冷媒として油を用いたものである。
【0035】
図8において、本実施形態5では液体冷媒として油を用い、実施形態4の構成に加えて、冷媒経路12から分岐路を設けて、歯車15に向かう油供給路14及び補助油溜め部16を形成している。補助油溜め部16は軸受9に繋がっており、油は軸受9にも供給されている。本実施形態5では、冷媒経路12からの油による回転電機内の冷却に加えて、冷媒経路12から分岐された油供給路14からの油が軸受9及び歯車15の潤滑を担っている。
【0036】
「実施形態6」
本発明の実施形態6に係る回転電機を搭載した電動車両について、
図9と
図10を参照しながら以下説明する。
図9は本発明の実施形態6に係る回転電機を搭載した電動車両における傾斜地作業状況を表す説明図であり、
図10は本発明の実施形態6に係る回転電機を搭載した電動車両におけるエンジン室の断面構成図である。
【0037】
図9と
図10において、40は傾斜地、41は走行体、42は旋回体、43は運転室、44はエンジン室、46は多関節型フロント装置、47はブーム、48はアーム、49はバケット、50は回転電機、51はエンジン、52は油圧ポンプ、54はフレーム、56はラジエータ、57は冷却ファン、58はクランク軸、59はファンベルト、65は内燃機関部、66はフライホイール、67はギヤ、68は油圧機構部、70は吸込口、71は吐出口、72は吸音体、73はマフラー、Pは空気流(冷却風)、をそれぞれ表す。
【0038】
図9と
図10に示すように、本実施形態6に係る電動車両(油圧ショベル)は、走行体41と、走行体41上の旋回体42と、旋回体42の前方左側に設けた運転室43と、旋回体42上に横置きに配置したエンジン室44と、旋回体42の前部に設けられ、ブーム47、アーム48及びバケット49からなる多関節型フロント装置46と、を主として備えている。また、運転室43内の操作者による操作に応動して、エンジン室44内のエンジン51及び/又は本実施形態1〜5に係る回転電機50によって駆動される油圧ポンプ52からの圧油により、多関節型フロント装置46は駆動されるようになっている。
【0039】
ここで、本実施形態6に係る電動車両に搭載される回転電機50は、本実施形態1〜5に示す構成のものを用いて、油圧ポンプ52の駆動源として電動車両に適用されるものであり、回転電機50に対して、フライホイール66と内燃機関部65からなるエンジン51と、ギヤ67と油圧機構部68からなる油圧ポンプ52とが、シャフト6を介在して配設される。すなわち、本実施形態6に使用される回転電機50が、エンジン51と油圧ポンプ52に挟まれて配設される構成である。なお、エンジン51は必須構成でなくてもよく、電動車両は回転電機50と油圧ポンプ52とか構成されたものであってもよい。
【0040】
エンジン室44は、エンジン51と、本実施形態1〜5に係る回転電機50と、油圧ポンプ52とを備えているが、それ以外に、エンジン51の冷却水を冷却するラジエータ56と、冷却風Pを生起する冷却ファン57と、吸込口70と、吐出口71と、吸音体72と、エンジン51の回転を冷却ファン57に伝達するクランク軸58、マフラー73と、を主として備えている。
【0041】
本実施形態6に係る回転電機を搭載した電動車両は、
図9に示すように、傾斜地40で掘削作業をする場合に、まず傾斜地40上を走行体41が上昇していき、次いで旋回体42を旋回させてエンジン室44を横向きに配置させて作業を実施する。
図9に示すような傾斜地40での作業例では、本実施形態6に係る電動車両は、回転電機50のシャフト(回転軸)6の周方向の傾きに限らず、回転軸の軸方向に傾いて作業する場合もあり得る。回転電機50は、発熱源であるエンジン51と油圧ポンプ52との間に挟まれていて高温の温度環境下に設置されているので、回転電機の電機子巻線4の冷却効果の必要性が希求され、回転電機50が傾斜した場合にも平坦地と同様な冷却効果が求められるのである。
【0042】
また、本実施形態6に係る電動車両は、粉塵と振動を伴う作業環境で稼働するので、この電動車両に搭載される回転電機50は故障頻度が高くなりがちであり、その際、本実施形態1〜5の回転電機50を搭載すれば、ハウジング8を分解することなくブラケット7のみを取り外してその内部のポンプ10又は冷媒経路12を点検・保守・修理すれば済むのでメインテナンスが容易となる。また、本実施形態6に係る電動車両はエンジン室44の狭い空間に回転電機50を収容させる必要があり、本実施形態1〜5の回転電機50を搭載すれば、ポンプ10と冷媒経路12をブラケット7内に内蔵させているので回転電機50の小型化が可能であり、エンジン室の狭い空間の有効利用に好都合である。
【0043】
以上説明した本発明の実施形態1〜6は構成例を示したものであり、本実施形態の技術的思想の範囲内でこの構成例を適宜に変更する構成は本実施形態の範疇である。
【符号の説明】
【0044】
1…固定子鉄心、2…ティース、3…スロット、4…電機子巻線、5…回転子、6…シャフト、7…ブラケット、8…ハウジング、9…軸受、10…ポンプ、11…液体溜め部、12…冷媒経路、13…2次冷媒配管、13a…2次冷媒流入口、13b…2次冷媒流出口、14…油供給路、15…歯車、16…補助液体溜め部、17…液体抜き孔、35…オイルシール、36…リング、37…噴射口、
40…傾斜地、41…走行体、42…旋回体、43…運転室、44…エンジン室、46…多関節型フロント装置、47…ブーム、48…アーム、49…バケット、50…回転電機、51…エンジン、52…油圧ポンプ、54…フレーム、56…ラジエータ、57…冷却ファン、58…クランク軸、59…ファンベルト、65…内燃機関部、66…フライホイール、67…ギヤ、68…油圧機構部、70…吸込口、71…吐出口、72…吸音体、73…マフラー、P…空気流(冷却風)。