(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385671
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ガス交換バルブ並びにガス交換バルブの製造方法
(51)【国際特許分類】
F01L 3/20 20060101AFI20180827BHJP
B23K 9/04 20060101ALI20180827BHJP
F01L 3/02 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
F01L3/20 B
B23K9/04 B
B23K9/04 H
B23K9/04 J
B23K9/04 K
B23K9/04 N
B23K9/04 U
F01L3/02 G
F01L3/02 J
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-255071(P2013-255071)
(22)【出願日】2013年12月10日
(65)【公開番号】特開2014-114817(P2014-114817A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2016年11月28日
(31)【優先権主張番号】12196566.9
(32)【優先日】2012年12月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501082602
【氏名又は名称】ヴェルトジィレ シュヴァイツ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トルステン ヘンツカ
(72)【発明者】
【氏名】ディエトマール シュラガー
【審査官】
首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−275699(JP,A)
【文献】
特開平04−311611(JP,A)
【文献】
特開2012−072748(JP,A)
【文献】
特開平11−050821(JP,A)
【文献】
特開2011−162803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 3/20
F01L 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向バルブシャフト軸に沿って延びるバルブシャフト、並びに前記バルブシャフトに接合するバルブディスクを有するバルブ本体を含み、前記バルブディスクは、前記軸方向に前記バルブシャフトから離れて延びるとともに前記バルブシャフト軸に対して半径方向外側に拡がって延び、
バルブ合わせ面が、前記バルブシャフト軸に対して略直交して形成される前記バルブディスクの下部表面と前記バルブシャフトとの間の前記バルブディスクに形成される、
往復動ピストン内燃機関用ガス交換バルブ、特に長手方向掃気式大型2ストロークディーゼルエンジン用排出バルブであって、
第1のコーティング凹所の形態の凹所が前記バルブディスクの前記下部表面に設けられ、前記コーティング凹所には、第1の腐食保護層の形態の腐食保護コーティングが設けられる、
ガス交換バルブ。
【請求項2】
前記第1の腐食保護層の外側境界線が、前記バルブシャフト軸周りに外側境界半径を有して円形に形成される、
請求項1に記載のガス交換バルブ。
【請求項3】
前記第1の腐食保護層は、前記バルブシャフト軸周りに且つ内部境界半径を有して環状に形成される、
請求項1又は2に記載のガス交換バルブ。
【請求項4】
前記腐食保護コーティングは、少なくとも第2の腐食保護層を含む、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガス交換バルブ。
【請求項5】
前記第2の腐食保護層は、第2のコーティング凹所に設けられる、
請求項4に記載のガス交換バルブ。
【請求項6】
前記第1の腐食保護層は、前記バルブシャフトと前記第2の腐食保護層との間の領域に設けられる、
請求項4又は5に記載のガス交換バルブ。
【請求項7】
前記第2の腐食保護層の外側境界線は、前記バルブシャフト周りに且つ外側境界半径を有して円形に構成される、
請求項4乃至6のいずれか1項に記載のガス交換バルブ。
【請求項8】
前記第1の腐食保護層及び/又は前記第2の腐食保護層は、前記バルブディスクに設けられた整備用穴の周りに設けられる、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のガス交換バルブ。
【請求項9】
前記腐食コーティングは、ニッケルベース腐食保護コーティングである、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のガス交換バルブ。
【請求項10】
前記腐食コーティングは、少なくともニッケル及びクロムを含むニッケルベース合金から作られ、
前記クロムの含有量は好ましくは、10重量%と60重量%のクロムとの間に、より具体的には、15重量%と50重量%のクロムとの間に、特に好ましくは、20重量%と45重量%のクロムとの間にある、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のガス交換バルブ。
【請求項11】
前記第1の腐食保護層は、前記第2の腐食保護層と同じ材料から作られる、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のガス交換バルブ。
【請求項12】
前記ガス交換バルブの前記バルブ本体は、クロームニッケル鋼から製造される、及び/又は前記腐食コーティングの鉄含有量が、5重量%より小さい、好ましくは、0.5重量%と4重量%との間にある、より具体的には、3重量%より小さい、
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のガス交換バルブ。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のガス交換バルブの製造方法であって、
バルブ本体が提供され、
第1のコーティング凹所及び/又は第2のコーティング凹所の形態の凹所が前記ガス交換バルブの前記バルブ本体のバルブディスクの下部表面に設けられ、
第1の腐食保護層及び/又は第2の腐食保護層の形態の腐食保護コーティングが、前記第1のコーティング凹所及び/又は前記第2のコーティング凹所に設けられる、
方法。
【請求項14】
前記第1の腐食保護層及び/又は前記第2の腐食保護層は、溶着溶接によって、特に金属保護ガス溶接によって、付けられる、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記腐食保護コーティングは、少なくともニッケル及びクロムを含むニッケルベース合金から作られ、
前記クロムの含有量は、好ましくは10重量%と60重量%のクロムとの間、より具体的には、15重量%と50重量%のクロムとの間、特に好ましくは、20重量%と45重量%のクロムとの間で選択され、
前記ガス交換バルブの前記バルブ本体は、クロムニッケル鋼から製造され、金属保護ガス溶接が、金属保護ガス溶接において、5重量%より小さい腐食保護コーティングの鉄含有量が達成されるように、好ましくは0.5重量%と4重量%との間、より具体的には3重量%より小さく達成されるように、溶接プロセスとして使用される、
請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれのカテゴリの独立請求項の前段部による、往復動内燃機関用ガス交換バルブ、特に長手方向掃気式大型2ストロークディーゼルエンジン用排出バルブ、並びにガス交換バルブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
しばしば単に熱腐食又は高温ガス腐食とも称される、高温腐食に対する保護コーティングが従来技術でよく知られている。これらは、例えば、腐食に対する、特に高温及び化学的に過酷な環境での酸化又は硫化に対して、高い耐性を有する表面層保護コーティングであると理解される。それらは、例えば、溶射によって製造され、MCrAlY層が高温腐食保護として広く使用される。これに関連して、金属Mは、例えば、鉄、コバルト又はニッケル又はこれらの又は他の金属の合金であり得る。また、例えばクロマイジングによって形成されるアルミニウムクロム層は、多くの用途において高温腐食に対して、特に酸化物含有媒体に対して、大体良好な耐性を示す。
【0003】
高温腐食の現象は、この点について、概して、数100℃から1000℃をはるかに超える比較的高いプロセス温度が存在する所に現れ、しばしば、このような高温が腐食効果の出現の原因となるだけでなく、例えば、燃焼生成物又は他の化学反応生成物に戻って結び付けられ得る又は燃料、潤滑油等の中の混合物によってももたらされ得る、化学的に過酷な環境条件にも見出すことができる。
【0004】
したがって、特に、多かれ少なかれ燃焼プロセスと直接接触しているワークピース、構成部品及び機械部品は高温腐食の脅威にさらされている。この例は、内燃機関のピストンのピストン表面、シリンダ壁、シリンダカバー、噴射ノズル、ガス交換バルブ、また、例えば、ターボチャージャ、特にタービン部品及び/又は排気供給部又は排気の抽出部及びターボチャージャシステム等、内燃機関の排気ガスシステムの構成部品である。
【0005】
これに関連して大型ディーゼル燃焼モータはしばしばニッケルベース合金(超合金)、例えば、ナイモニック80Aから構成される。このニッケルベース合金は、重油の燃焼で生じる攻撃的な媒体に対して適切な腐食耐性を有する。ニッケルベース合金に比べて費用効果の高い変形は、バルブ本体の製造のための耐食クロムニッケル鋼の使用である。しかしこの腐食関連特性はニッケルベース合金のものに達しない。これらの鋼の対応する特性を対応する要件に適合させるために、これらのガス交換バルブの腐食の危険にさらされる領域を、溶着溶接によって多層に、例えば、およそ6から9層に堆積させることが知られている。これに関連して溶着溶接によって導入される熱が、バルブ本体の強い固有応力、部品の変形につながり、このようにバルブ本体のき裂の形成の危険性を増加させる。
【0006】
この良く知られた問題の状態が以下に概略
図1を参照して説明される。
【0007】
これに関連して、現段階では、技術水準に関連する例の特徴に対して提供される参照符号は逆コンマを含む一方、本発明による実施形態に関連する特徴は逆コンマを有していないことが留意されるべきである。
【0008】
図1は、長手方向掃気式大型2ストロークディーゼルエンジンの技術水準から良く知られる排出バルブを概略図で示す。
【0009】
図1の排出バルブ1’は、軸方向バルブシャフト軸A’に沿って延びるバルブシャフト2’、並びにバルブシャフト2’に接合するバルブディスク3’を有するバルブ本体を含み、このバルブディスクは、バルブシャフト2’から軸方向に離れて延びるとともにバルブシャフト軸A’に対して半径方向外側に拡がって延びる。これに関連して、バルブ合わせ面32’が、バルブシャフト軸A’に対して略直交して形成された、バルブディスク3’の下部表面31’とバルブシャフト2’との間のバルブディスク3’に作られる。
【0010】
設置された状態において、大型ディーゼルエンジンのシリンダ内で動いているピストンの表面に面する、バルブディスク3’の下部表面31’には、互いの上に堆積された、連続して堆積された腐食保護層51’、52’の形態の、運転状態においてシリンダ内の燃焼プロセスに起因する、攻撃的な、熱的、化学的および物理的な負荷に対して下部表面31’の保護のために提供される、腐食保護コーティング5’がある。
図1の排出バルブ1’の腐食保護コーティング5’は、この点に関して、下部表面31’の全体の半径R1’に渡って拡げられる。
【0011】
下部表面31’に多層で堆積された腐食保護コーティング5’は、これに関連して、実際にはしばしば、連続して堆積される大体6から9層を有するが、2つの層のみが、ずなわち2つの腐食保護コーティング51’、52’が明確さのために
図1に示されている。これに関連して溶着溶接によって導入される熱は、バルブ本体に、しかし特に
図1にZ’で示されるバルブディスク3’の領域だけでなく、強い固有応力Z’をもたらす。溶着溶接中、これらは、
図1に矢印W’によって示される構成要素変形W’をもたらし、それによって、特に、バルブ本体のき裂形成の危険性が大きく増大する。さらに、熱間割れ及び溶着溶接内の繰返しの溶融ひびの形成の危険性が導入される熱で増加する。
【0012】
構成要素変形W’の結果として、バルブディスク3’は、多層溶接の結果として、バルブシャフト2’から離れる方向にとても強く膨らむので、バルブディスク3’の中心の腐食保護層52’の追加的な層の溶接は、出きる限り平坦な面が再び下部表面31’で確保されるように、再び構成要素変形W’を相殺するために、取り代が必要とされる。
【0013】
これに関連して、それぞれのさらなる層の溶接が、熱間割れの形成及び繰返しの溶接ひびの形成の危険性を増大させるとともにさらなる構成要素変形W’をもたらし得ることが留意されるべきである。さらに、既に述べたように、固有応力Z’が、導入される溶接熱に起因して、特にバルブシャフト2’からバルブディスク3’への移行部の重要な領域で生じる。この点に関して排出バルブ1’の機械的な負荷は多大であり、固有応力Z’はき裂の形成を促進する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このために、本発明の目的は、溶着溶接時の構成要素変形を避けること及び/又は溶着溶接時の構成要素変形の大花な減少をもたらすこと、及びこのようにバルブ本体での、特にバルブシャフトがバルブディスクに移行する重要な領域での、付随する固有応力の減少、及びこのように溶接された腐食保護層での固有き裂形成を避けることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的を満たす本発明の手段は、独立請求項の特徴部によって特徴付けられる。
【0016】
従属請求項は、本発明の特に有利な実施形態に関連する。
【0017】
したがって、本発明は、往復動ピストン内燃機関用ガス交換バルブ、特に長手方向掃気式大型2ストロークディーゼルエンジン用排出バルブに関し、ガス交換バルブは、軸方向バルブシャフト軸に沿って延びるバルブシャフト、並びにバルブシャフトに接合するバルブディスクを有するバルブ本体を含み、このバルブディスクは、軸方向にバルブシャフトから離れて延びるとともにバルブシャフト軸に対して半径方向外側に拡がって延びる。これに関連して、バルブ合わせ面が、バルブシャフト軸に対して略直交して形成された、バルブディスクの下部表面とバルブシャフトとの間でバルブディスクに形成される。本発明によれば、第1のコーティング凹所の形態の凹所がバルブディスクの下部表面に設けられ、このコーティング凹所には、第1の腐食保護層の形態の腐食保護コーティングが設けられる。
【0018】
本発明によれば、腐食保護コーティングがバルブディスクの下部表面の平坦な外側表面に直接溶接されず、むしろ、バルブディスクの下部表面に機械加工されるコーティング凹所内に溶接されるという事実によって、構成要素変形は実質的に溶着溶接時に防がれることができ、概して、技術的に関連した寸法に関して完全に防がれ得る。
【0019】
この重要な理由は、バルブディスクへの熱の導入がもはや下部表面全体に渡って生じることはなく、本質的にはバルブシャフト軸と平行にしか生じず、むしろ、本発明によるバルブのバルブシャフト軸に対する熱の導入はまたバルブシャフト軸と垂直である必須構成要素を含むことであるべきである。
【0020】
さらに、少なくとも、第1のコーティング凹所の形態の第1の凹所のみがバルブディスクの下部表面に設けられる場合及び/又は下部表面の外側境界領域が腐食保護層を備えない場合、バルブディスクの外側境界領域は溶着溶接時に導入される熱を強く加えられないので、構成要素変形はしたがってまた、著しく減少され得る及び/又は完全に防がれる。
【0021】
特に好ましくは、腐食保護コーティングは、少なくとも第2の腐食保護層を含み、第2の腐食保護層は、特に第2のコーティング凹所に設けられ得る。これに関連して、第1の腐食保護層は特に好ましくは、バルブシャフトと第2の腐食保護層との間の領域に設けられ、実際には、第2の腐食保護層は第1の腐食保護層の上に直接溶接される。
【0022】
少なくとも第1及び第2の腐食保護層は好ましくは第1のコーティング凹所及び/又は第2のコーティング凹所にそれぞれ互いの上に直接溶接されるという事実によって、導入される溶接熱は対応して各溶接プロセスに対して減少され得る。この各溶接プロセスはさらに技術水準から知られる有害な構成要素変形を減少させる及び/又は実質的に完全に防ぐ。バルブディスクへの熱の全導入の減少はしたがって、溶接層の数及び溶接領域が減少されることで有利に達成され得る。
【0023】
これに関連して、好適な実施形態では、最初に本発明によるコーティング凹所の使用を通じて、下部表面に、好ましくはバルブ軸周りの中心領域に配置された単一の腐食保護層だけでさえ、十分な腐食保護を実現することが可能になることが大いに留意されるべきである。このように、自然にバルブディスクへの全体的な熱の導入は大幅に減らされることができるので、溶着溶接の結果としての構成要素変形の危険は、実際には完全に排除されることができる。
【0024】
これに関連して、バルブディスクの下部表面の腐食は、例えば、バルブディスクの下部表面の直径の約2/3の領域で非常に高い頻度で最強であるとともに、前述の内部領域より小さい最大で直径の約3/4までであることが示されている。さらに、適用分野及びモータ(内燃機関)の運転状態に応じて、例えば、腐食負荷が中心溶接シャフト軸に対して半径方向に離間されるリング状領域において最大であること及び腐食負荷が前述のリング領域の半径方向内及び半径方向外側で減少することが可能であり得る。前述の記述は、実際にはずれている値又は幾何形状を有し得るとともにモータ、その負荷等に依存することが理解されるべきである。
【0025】
このため、第1の腐食保護層の外側境界線が、本発明の特定の実施形態に関して、バルブシャフト軸周りに外側境界半径を有して円形に形成され、例えば、腐食負荷が、しばしばバルブ下側とも称される下部表面の円形領域に優勢に生じるとき、第1の腐食保護層はまた、バルブシャフト軸周りに所定の内部境界半径を持つ環状に形成され得る又は原理的にはまた、異なる適切な幾何形状を取り得る。
【0026】
実際には、腐食保護コーティングは当然また、少なくとも第2の腐食保護層又はさらに追加的な保護層さえ含むことができ、第2の保護層は、好ましくは、しかし、必然的ではなく、第2のコーティング凹所に設けられ得るとともに、場合によって、さらなる腐食保護層が同様に、対応するコーティング凹所に設けられ得る。
【0027】
これに関連して、第1の腐食保護層は、必ずしもそうではないが、特に好ましくは、バルブシャフトと第2の腐食保護層との間の領域に設けられ、第2の腐食保護層の外側境界線は、例えば、バルブシャフト周りに外側境界半径を持つ円形に構成されることができるが、当然、任意の他の適切な幾何形状も取ることができる。
【0028】
例えば、取り付け時又は取外し時又は全ての他のサーフェシング作業のために、ガス交換バルブをより良く扱うために、第1の腐食保護層及び/又は第2の腐食保護層は、バルブディスクに設けられる整備用穴の周りに当然知られている方法で設けられることができる。実際には、整備用穴は、例えば、ガス交換バルブのより快適な取り扱いのためのハンドリング装置がネジで留めされ得る内部ネジ山を有することができる。整備用穴は好ましくは、腐食保護コーティングが既に溶接されているとき、最初に導入されることが理解されるべきである。
【0029】
これに関連して、腐食コーティング自体は、任意の適切な材料から構成され、使用されることになる材料は当業者の要求に応じて選択されることができる。これに関連して、実際には、ニッケルベース腐食保護コーティング、特に少なくともニッケル及びクロムを含むニッケルベース合金から作られる腐食保護コーティングを使用することが知られることができ、クロム含有量は好ましくは、10重量%と60重量%のクロムとの間に、より具体的には、15重量%と50重量%のクロムとの間に、特に好ましくは、20重量%と45重量%のクロムとの間にあり、例えば43重量%にある。
【0030】
これに関連して、第1の腐食保護層は、第2の腐食保護層と同じ材料から製造されることができるが、特に、異なる材料の2つ以上の腐食保護層が使用されることも可能である。
【0031】
ガス交換バルブのバルブ本体は、これに関連して当然また同様に、任意の適切な材料から製造されることができるが、特に好ましくは、クロムニッケル鋼から製造され、特に、腐食コーティングの鉄含有量は、5重量%より小さい、好ましくは、0.5重量%と4重量%との間にあり、より具体的には、3重量%より小さい。
【0032】
本発明はさらに、詳細に上述されたガス交換バルブの製造方法に関し、この方法では、バルブ本体が提供されるとともに、第1のコーティング凹所及び/又は第2のコーティング凹所の形態の凹所がガス交換バルブのバルブ本体のバルブディスクの下部表面に設けられる。これに関連して、第1の腐食保護層及び/又は第2の腐食保護層の形態の腐食保護コーティングが、第1のコーティング凹所及び/又は第2のコーティング凹所に設けられる。
【0033】
これに関連して、第1の腐食保護層及び/又は第2の腐食保護層は、溶着溶接によって、特に金属保護ガス溶接によって、付けられることができ、腐食保護コーティングは、少なくともニッケル及びクロムを含むニッケルベース合金から作られる。クロム含有量は、特に好ましくは10重量%と60重量%のクロムとの間に、より具体的には、15重量%と50重量%のクロムとの間に、特に好ましくは、20重量%と45重量%のクロムとの間にある。
【0034】
これに関連して、金属保護ガス溶接は、技術分野から知られる溶接方法であり、その原理は明快さのために以下に簡単に説明される。しばしばMSGと略される金属保護ガス溶接は、例えば、不活性ガスを用いる金属溶接としても、MIG溶接として又はMAG溶接としても、その異なる変形で知られ、これは、活性ガスを用いる金属溶接が、反応することができるとともに溶融溶接ワイヤがしばしば自動的に連続的に可変速度のモータによって供給されるという基本的な原理の観点から光アーク溶接方法であることを意味する。よく使用される溶接ワイヤの直径は、例えば、0.6mmと2mmとの間にある、又は3mmまでですらある。ワイヤ送給と当時に、保護又は混合ガスが、特定の用途によって当然定められる予め定義可能な量でノズルによって溶接ポイントに供給される。供給されるガスは特に、光アークの下の液体金属を化学変化から、特に、溶接ビードを弱くする酸化から保護する。これに関連して、いわゆるマグ溶接(MAG)では、人はしばしば、純粋なCO2又はアルゴン並びに少量のCO2及びO2の混合ガスを用いて作業し、ミグ溶接(MIG)では、不活性ガスアルゴンがしばしば使用され、より稀な場合には、高価な不活性ガスヘリウムも使用される。MAG法はこれに関連して主に鋼に対して実際には使用され、MIG法は好ましくはNE金属に対して使用される。
【0035】
充填ワイヤはまた当然選択的に金属保護ガス溶接に使用されることができる。これらは、スラグ形成材料及び場合によって合金添加物を内部に持って提供されることができる。それらは、ワイヤ電極の封入と同じ目的で用いられる。一方では、成分は溶接容積に寄与し、他方では、それらはスラグを形成するとともに溶接位置を酸化から保護する。
【0036】
これに関連して、本発明によるガス交換バルブのバルブ本体は、例えば、クロムニッケル鋼から又は異なる材料からも、製造されることができ、特に好ましくは、上述の金属保護ガス溶接は、金属保護ガス溶接において、5重量%より小さい腐食保護コーティングの鉄含有量が達成されるように、好ましくは0.5重量%と4重量%との間、特に3重量%より小さいものが達成されるように、溶接プロセスとして使用される。
【0037】
以下には、本発明が概略図を参照して詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、技術水準から知られている大型2ストロークディーゼルエンジンの排出バルブである。
【
図2a】
図2aは、本発明によるガス交換バルブの第1の実施形態である。
【
図2b】
図2bは、2つのコーティング凹所を有する本発明によるガス交換バルブの第2の実施形態である。
【
図2d】
図2dは、整備用穴及びコーティングバルブシートを有する
図2bによる異なる実施形態である。
【
図2e】
図2eは、リング状コーティング凹所を有する本発明によるガス交換バルブの実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
技術水準から知られている
図1による大型2ストロークディーゼルエンジンの排出バルブは導入部で詳細に既に議論されており、このためこの段階ではさらに議論される必要はない。
【0040】
図2aは、本発明によるガス交換バルブの第1の簡略化された実施形態を示し、このガス交換バルブは以下では全体として参照数字1を使用して示される。
【0041】
図2aの往復動ピストン内燃機関のための本発明によるガス交換バルブ1の具体的な実施形態は、この例では、長手方向掃気式大型2ストロークディーゼルエンジンのための排出バルブである。ガス交換バルブ1は、軸方向バルブシャフト軸Aに沿って延びるバルブシャフト2、並びにバルブシャフト2に接合するバルブディスク3を有するバルブ本体を含み、このバルブディスク3は、バルブシャフト2から軸方向に離れて延びるとともにバルブシャフト軸Aに対して半径方向外側に拡がって延びる。これに関連して、バルブ合わせ面32が、バルブシャフト軸Aに対して略直交して形成された、バルブディスク3の下部表面31とバルブシャフト2との間のバルブディスク3に作られる。この下部表面を当業者はしばしばまた単純にバルブディスク底部側とも称する。本発明によれば、第1のコーティング凹所41の形態の凹所4がバルブディスク3の下部表面31に設けられ、このコーティング凹所には、第1の腐食保護層51の形態の腐食保護コーティング5が設けられる。これに関連して、コーティング凹所41は、腐食保護層51を付ける前に既知の方法を用いて機械加工されることができる。第1の腐食保護層51の外側境界線は、この例に関して、バルブシャフト軸A周りに外側境界半径R1を有する円に形成される。
【0042】
腐食保護層51は、この例では、溶着溶接を用いて、好ましくは、より詳細に既に上で異なる変形で記載されているような金属保護ガス溶接を用いて、付けられる。
【0043】
図2bを参照すると、2つのコーティング凹所41、42を有する本発明によるガス交換バルブ1の第2の実施形態が概略的に示され、これは、特に実際には、非常に重要である。
図2bの実施形態は
図2aのものと、特に、この例において、腐食保護コーティング5が少なくともダウ2の腐食保護層52を含むという点で異なり、腐食保護層52は第2のコーティング凹所42に設けられるとともに、第1の腐食保護層51は、バルブシャフト2と第2の腐食保護層52との間の領域において第2の腐食保護層52の直下に溶着される。
【0044】
第2の腐食保護層52の外側境界線は、これに関連して、バルブシャフト軸A周りに外側境界半径R2を持って形成され、外側境界半径R2は下部表面31の半径より小さい。
【0045】
しかし、これに関連して、外側境界半径R2は、
図2cによって概略的に示されるように、下部表面31の半径と実質的に同じであることも可能である。これは、
図2cの実施形態に関して、第2のコーティング凹所42は実際、第1の腐食保護層51の表面と同一であり、下部表面31の残りの表面が第1の腐食保護層51によって覆われないことを意味する。
【0046】
これに関連して、整備用穴6がしばしば、
図2dに概略的に示されるように、良く知られた方法で下部表面31に設けられる。この整備用穴は好ましくは、取り付け及び整備作業のために、ハンドリングツールが整備用穴6にネジ止めされることができるように、内部ねじ山を含む。
【0047】
図2eは最後に、リング状コーティング凹所41を有する本発明によるガス交換バルブ1の異なる具体的な実施形態を示す。これは、第1の腐食保護層51が、例えば、バルブシャフト軸A周りに、内部境界半径R12及び外側境界半径R1を有して、環状に配置されることを意味する。
【0048】
図2eによる実施形態はまた、腐食負荷が、リング状腐食保護層51の領域で特に強く生じるとともに、腐食保護層が省略できるようにリング状腐食保護層51の内部及び外側であまり激しくないとき、特に有利に使用されることができる。
【0049】
本出願の文脈に記載された本発明の具体的な実施形態は単に例示として理解されるべきであり、本発明はまた当然、記載された実施形態の全ての適切な組合せ、並びに当業者に明らかである請求項に記載された保護範囲に関する本発明のさらなる発展も含むことが当然理解される。
【0050】
したがって、本発明によれば、要求に従う高腐食保護層の適用が、初めて大幅に減少した熱の導入を使用して内燃機関のガス交換バルブのために提案されている。例えば、強い腐食を伴う領域では、腐食保護層が、バルブディスクの下部上面の以前に設けられたコーティング凹所に好ましくは対応して大きい層厚さを持って、及び低腐食の領域では対応して小さい層厚さを持って付けられることができる。腐食負荷に応じて、この点に関して、例えば、バルブシャフトの下部表面から所定の距離だけ離間される、例えば、直径の3/4超ずらされる外側領域がまた、メッキなしに構成されることができ、これはまた、溶接溶着された腐食保護層のないことを意味する。本発明にしたがって実施されるメッキの形状は、技術水準から知られる下部表面における構成要素変形の補償のための複数の取り代層の溶着溶接がもはや必要とされないように、変形を最小に又は完全にさえ、減少させる。これは、大幅に最小化された及び/又は同様に実質的にもはや存在しない変形を通じて、溶接ビードを準備するとき、メッキの最終的な機械加工が、非常にしばしば省略されることができることを意味し、これは、本発明によるコーティング凹所が、溶接プロセスの前にバルブディスクベースに機械加工され、溶着溶接の厚さはコーティング凹所の深さに対応することを意味する。