【文献】
手塚慎一、手塚純一ほか,耐震開口フレームを用いて補強した木質構造軸組に関する実験的検討,日本建築学会大会学術講演梗概集,2004年 7月31日,C-1,構造III,PP.343-344
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コンクリート基礎又は下横架材上に並列して木質の柱が立設され、両柱の上端部を木質の上横架材で連結してなる枠構造体の開口内を補強する構造であって、以下のように構成することを特徴とする木質フレーム構造。
(1) 前記並列した両柱の内側に沿って、木質で一体のフレーム柱材を配置し、該フレーム柱材の下端を前記コンクリート基礎又は下横架材の上面に接合する。
(2) 前記上横架材の下面に沿って、かつ所定の間隙を設けて、木質で一体のフレーム横架材を配置して、前記両フレーム柱材の上端部と、前記フレーム横架材の両端部を接合して門型フレームを構成する。
(3) 前記フレーム柱材及び前記フレーム横架材の面であって、前記フレーム柱材とフレーム横架材とを接合してなる垂直構面と平行な面を、接合垂直側面とする。かつ、前記接合垂直側面に直角な前記フレーム柱材の面を垂直他面とし、前記垂直他面の内、前記両フレーム柱材の対向する面を内垂直他面とし他側を外垂直他面とする。かつ前記接合垂直側面に直角な前記フレーム横架材の面を上水平他面及び下水平他面とする。
(4) 前記フレーム柱材とフレーム横架材の接合部周辺で接合垂直側面は略面一に形成され、前記接合部で前記フレーム柱材の両接合垂直側面及び前記外垂直他面と、前記接合部で前記フレーム横架材の両接合垂直側面及び前記上水平他面とを、金属板を屈曲して形成した一体で箱状の補強金属板で被覆し、かつ前記箱状の補強金属板は前記フレーム柱材の上面の一部のみを覆うように開口を形成する。かつ前記フレーム柱材の内垂直他面及び前記フレーム梁材の下水平他面を、前記補強金属板で被覆しない。
(5) 前記フレーム柱材の中間部の一垂直他面と前記柱を接合金物で接合し、前記フレーム横架材の中間部の水平他面と前記上横架材とを接合金物で接合する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術では、フレーム状の梁材を縦又は横に分割し、構築現場で一体に組み立てる構造であり、前者の場合には梁の接合に金物を使用してビスやボルト類を多数打ち込み、さらに樹脂シートで覆う必要があり、現場施工は困難であった。
また、後者の場合には、軸組の柱や上下の梁に外側から、現場で、合板を打ち付ける必要があり、やはり現場施工に手間がかかり、また接合部の補強が充分とは言えない場合もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一体のフレーム柱材に一体のフレーム横架材を接合して、かつフレーム柱材とフレーム横架材の接合部を金属板を屈曲して形成した一体の補強金属板で被覆して木質フレーム構造体を構築したので、前記問題点を解決した。
【0006】
即ちこの発明は、コンクリート基礎又は下横架材上に並列して木質の柱が立設され、両柱の上端部を木質の上横架材で連結してなる枠構造体の開口内を補強する構造であって、以下のように構成することを特徴とする木質フレーム構造である。
(1) 前記並列した両柱の内側に沿って、木質で一体のフレーム柱材を配置し、該フレーム柱材の下端を前記コンクリート基礎又は下横架材の上面に接合する。
(2) 前記上横架材の下面に沿って、かつ所定の間隙を設けて、木質で一体のフレーム横架材を配置して、前記両フレーム柱材の上端部と、前記フレーム横架材の両端部を接合して門型フレームを構成する。
(3) 前記フレーム柱材及び前記フレーム横架材の面であって、前記フレーム柱材とフレーム横架材とを接合してなる垂直構面と平行な面を、接合垂直側面とする。かつ、前記接合垂直側面に直角な前記フレーム柱材の面を垂直他面とし、前記垂直他面の内、前記両フレーム柱材の対向する面を内垂直他面とし他側を外垂直他面とする。かつ前記接合垂直側面に直角な前記フレーム横架材の面を上水平他面及び下水平他面とする。
(4) 前記フレーム柱材とフレーム横架材の接合部周辺で接合垂直側面は略面一に形成され、前記接合部で前記フレーム柱材の両接合垂直側面及び前記外垂直他面と、前記接合部で前記フレーム横架材の両接合垂直側面及び前記上水平他面とを、金属板を屈曲して形成した一体で箱状の補強金属板で被覆
し、かつ前記箱状の補強金属板は前記フレーム柱材の上面の一部のみを覆うように開口を形成する。かつ前記フレーム柱材の内垂直他面及び前記フレーム梁材の下水平他面を、前記補強金属板で被覆しない。
(5) 前記フレーム柱材の中間部の一垂直他面と前記柱を接合金物で接合し、前記フレーム横架材の中間部の水平他面と前記上横架材とを接合金物で接合する。
【0007】
また、前記において、以下のように構成することを特徴とする木質フレーム構造である。
(1) フレーム柱材の下端に固定した柱脚金物を前記コンクリート基礎に埋設したアンカーボルトに固定して、前記フレーム柱材をコンクリート基礎又は土台に接合する。前記柱脚金物は、奥側に開放部を有する切り欠きを形成して、該切り欠きに前記アンカーボルトを挿通して定着させる。
(2)前記両フレーム柱材の対向する内垂直他面の上端部に、前記フレーム横架材の両端面を接合して門型フレームを構成する。
(3) 前記補強金属板は、前記フレーム柱材とフレーム横架材の接合部周辺で接合垂直側面を覆うことができる逆L字状の第1板及び第2板と、前記フレーム柱材の外垂直他面を覆う第3板と、前記フレーム柱材の上面の一部及びフレーム横架材の上水平他面の一部を覆う第
4板及び第
5板とからなり、
前記第1板と前記第2板とを前記第3板を介して連設して、前記第1板の上縁に前記第4板を連設して、前記第2板の上縁に前記第5板を連設してした一体の板材を屈曲して
箱状に形成する。
かつ、前記第1板の上縁及び前記第2板の上縁で、前記第4板及び第5板が形成されない開口を形成し、前記フレーム柱材の上面の一部は、前記第4板及び第5板により覆われない構成とする。
【0009】
この発明は、枠構造体をフレーム柱材及びフレーム横架材とともに新設する場合、あるいは、既設の枠構造体をいわゆるリフォームで補強する場合のいずれにでも適用できる。
また、前記におけるフレーム柱材とフレーム横架材との接合構造は、通常は、両フレーム柱材の間に、フレーム横架材の両端面を当接するように接合するが、両フレーム柱材の上面にフレーム横架材の下面を当接する構造、その他の構造でも可能である。要は両部材が構造的に接合されれば良い。
また、前記におけるフレーム横架材は主にフレーム梁材として構成するが、他の横架材とすることも可能である。
また、前記における「前記フレーム横架材を垂直方向にゆるく貫通して」とは、フレーム横架材に固定用棒材の外径より若干小さい径の貫通孔を形成して、固定用棒材の軸方向の移動についてはフレーム横架材は固定用棒材に対してある程度自由に移動できるが、固定用棒材の軸に垂直な方向の移動にはフレーム横架材と固定用棒材が一体で移動するような状態を指す。
また、前記における固定用棒材とは、各種ボルト、ピン、ビスなどを指す。
【発明の効果】
【0010】
特許文献1では、フレーム柱とフレーム梁がアラミドシートでプレセットされ現場納品されるので、運搬時にフレーム部材で荷姿が大きくなり、運搬コストがかかっていた。この発明は、一体のフレーム柱材、フレーム横架材、柱脚金物及び補強金属板とから門型フレームを構成するので、本フレームはフレーム柱とフレーム梁が接合されていない状態で現場に納品することができるので、運搬時の荷姿を減らすことを実現し、運搬コストを削減して、搬送効率を高めることができる。
また、現場作業は、ピンやビス、ボルト類のみの汎用の固定用棒材で組み立てができるので、現場作業を効率化できる効果がある。また、補強金属板が、フレーム柱材の両接合垂直側面及び垂直他面と、フレーム横架材の両接合垂直側面及び水平他面とを被覆できる一体の構造としたので、フレーム柱材とフレーム横架材の接合状態を保つことができる。
さらに、フレーム横架材は、木造軸組(枠構造体)の上横架材の下面から所定の間隙を設けて、配置されるので、枠構造体からの鉛直加重を負担せずに、総じて、枠構造体を効率的に補強する。
また、この発明の門型フレームは、木造枠組(軸組構造)の開口に取りつけ、材端部を半剛接合としたものである。したがって、この門型フレームを取り付けた軸組は、耐力壁を有する構面として算定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面に基づきこの発明の実施形態を説明する。
【0014】
(1) コンクリート製の基礎71の上に土台72、72(横架材)が固定され、幅L0のスパンで土台72が無い開口76が形成されている。土台72、72の端縁部に既設の柱73がそれぞれ立設され、既設の柱73、73の上端に既設の梁74が架設固定されてた構造となっている(
図2)。柱73と土台72、柱73と梁74とは、それぞれ通常の接合金物などを使った通常の構成で接合されている。なお、幅L0の部分に土台を形成してもよく、また、コンクリート製の基礎71上の土台72を全部省略することもできる(図示していない)。
【0016】
(1)フレーム柱材1(
図6)
フレーム柱材1は、断面(短辺L11×長辺L12)で、杭頭部の一側をL12より細くなるように、上面5からL13の範囲に、切り欠きを形成し、切り欠きの端に係止段部7を形成する(
図6)。L13は使用するフレーム梁材20の梁せい(=H21)に応じて設定する。
フレーム柱材1は、幅L12の面を接合垂直側面2、2として、幅L11の面で、係止段部7を形成した面を内垂直他面3、係止段部7を形成しない面を外垂直他面4とする。
フレーム柱材1の柱頭部で、内垂直他面3から外垂直他面4に向けて、径13mm程度の貫通孔8、8を穿設する。貫通孔8はボルトを挿通する孔で、外垂直他面4側に径60×深さ30mm程度で、ボルト頭部を収容する座堀を形成する。また、貫通孔8は使用する梁受け金物40により異なり、この場合には、上下に3つ形成する。
また、フレーム柱材1の柱脚部で、下面6からL14まで切欠き9を形成する。切欠き9は使用する柱脚金物50により異なるが、この場合には、L14=250mm程度で形成し、下面6をテーパーを形成する。また、接合垂直側面2、2間に貫通孔11、11を形成する。貫通孔11は使用する柱脚金物50により異なるが、この場合、4つを台形の頂点の位置に配置し、切欠き9を貫通する。
また、フレーム柱材1の中間高さに内垂直他面3から外垂直他面4に貫通する水平方向の貫通孔12、12を形成する。貫通孔12は、ラグスクリューボルト(コーチボルト)を挿通する目的で、柱脚と柱頭を除く位置に3箇所等間隔で形成して、内垂直他面3側にボルトの頭部を収容する座堀を形成する。
また、フレーム柱材1は、例えば、
短辺L11×長辺L12=105×240mm、または120×240mm
で形成する。
【0017】
(2)フレーム梁材20(フレーム横架材
)(図7)
フレーム梁材20は、スパンL0に対応した長さ(通常はL0−2×L12+α)で、断面幅D21×高さH21で形成される。
梁の長さ方向(水平方向)で、フレーム梁材20は、高さH21の面を接合垂直側面21、21とし、幅D21の面を、上水平他面22、下水平他面23とする。
フレーム梁材20の両端部に、端面24、24から水平方向L21まで、切欠き25、25を形成する。切欠き25は、使用する梁受け金物50の構造により異なるが、この場合には、2本を上水平他面22から下水平他面23まで貫通して設ける。また、2本の切欠き25、25間で、他面22、23側をさらに切り欠いて収容部空間26を形成する。また、両接合垂直側面21、21間に切欠きを貫通する水平方向の貫通孔27、27を設ける。
また、フレーム梁材20の中間部に、下水平他面23から上水平他面22に至る縦方向の貫通孔28、28を設ける。貫通孔28は、ラグスクリューボルト(コーチボルト)を挿通する目的で、両端部を除く位置に3箇所を等間隔で形成して、下水平他面23にボルトの頭部を収容する座堀を形成する。
【0018】
(3)補強鋼板30(補強金属板)
図10(b)、
図11
補強鋼板30は、同一形状の第1板31a及び第2板31bと、第3板31cと、同一形状の第4板31d及び第5板31eとから構成する。各板31a〜31eには、フレーム柱材1やフレーム梁材20にビス類を打ち込んで固定するエンボス孔からなる透孔32、32が多数穿設されている。
第1板31a及び第2板31bは、フレーム梁材20とフレーム柱材1との接合部(接合部の隅部。以下同様)と、接合部に連続するフレーム柱材1の接合垂直側面2の一部と、接合部に連続するフレーム梁材20の接合垂直側面21の一部を覆うことができるように、略逆L字状に形成されている。また、フレーム梁材20の接合垂直側面21の下縁に対応した縁34からフレーム柱材の垂直側面の内側の縁に対応した縁33が交わる部分は部分円弧状にアール35が形成されている。なお、フレーム梁材20の接合垂直側面21の下縁に対応した縁34は、その下縁より多少上方(内側)に位置させてあるが、下縁と一致又は下方に位置させることもできる(図示していない)。また、同様に、フレーム柱材1の接合垂直側面2の内側の縁に対応した縁34は、その内側の縁より多少内側に位置させたが、その縁と一致又は多少外側に位置させることもできる(図示していない)。
また、第3板31cは、フレーム柱材1の外垂直他面4の上端部を覆うことができるような縦長長方形の形状となっている。
また、第4板31d及び第5板31eは、両板31d、31eが協働して、フレーム梁材2の上水平他面22で接合部に連続する部分と、上水平他面22に連続するフレーム柱材1の上面5の一部とを覆うことができる形状で形成する。
補強鋼板30の製造は、先ず第3板31cの長辺に、それぞれ第1板31a、第2板31bを連設し、第1板31aの上縁に第4板31dを連設し、第2板31bの上縁に第5板31eを連設した展開図状の一体の板材30aを形成する(
図11(d))。板材は、例えば、厚さ1.6mm程度の鋼板を打ち抜いて製造する。
この板材30aで各板材31a〜31eを
、各板を区分する線に沿って折り曲げて、箱状の補強鋼板30を構成する(
図10(b))。第4板材31dと第5板材31eとは、組み立てた状態で自由縁36、36が近接して、2枚でフレーム梁材20の上水平他面22の一部とフレーム柱材1の上面5の一部を覆うようになる(
図11(a)、
図10(b))。
図11(c)で、右向きの縁(縁33を含む)の右方及び下向きの縁(縁34を含む)の下方はいずれも開口している。また、第1板31a、第2板31b及び第3板31cの上縁で、第4板31d及び第5板31eで塞がれていない部分には、開口37が形成されている(
図11(a)、
図10(b))。
また、フレーム柱材の外垂直他面4に対応する第3板31cの下側の端縁を端縁38とする。また、フレーム梁材20の上水平他面23に対応する第4板31d、第5板31eで、フレーム梁材20の長さ方向の中心側の縁を縁39とする。
なお、この箱状の補強鋼板30では、施工し易さから、フレーム柱材1の内垂直他面3、フレーム梁材20の下水平他面23を覆っていない(開口されている)が、内垂直他面3及び下水平他面23を覆う板をさらに連設することもできる(図示していない)。また、フレーム柱材1の上面は一部しか覆っていない。また、補強鋼板30は鋼製が望ましいが、同様な構造であれば材料は問わない。
【0019】
(4)梁受け金物40(
図10(a))
梁受け金物40は、フレーム柱材1側からのボルトを受けるねじ孔42、42を多数設けた縦長長方形の受け板41と、受け板41の両縦長辺に、係止片43を連設して構成する(
図10(a))。受け板41は、フレーム梁材20の端面24、24に沿って配置され、収容部空間26の端に位置する。また、係止片43は、フレーム梁材20の切欠き25、25に挿入され、貫通孔27、27に連通できる透孔44及び係止凹部45を穿設してある。
【0020】
(5)柱脚金物50(
図8、
図9)
柱脚金物50は、フレーム柱材1の下面6の形状と略同一の上面を有するボックス本体51と、ボックス本体51の天板52の上面にフレーム柱材1の切欠9に挿通できる係止板56を突設して、構成する。
ボックス本体51は、底板53の上面と天板52の下面との間に仕切板54、54を縦に3本入れて構成し、底板53には背面側(開口76の奥側)に開放部55aを有する切欠き55が形成され、アンカーボルト75を切欠き55に挿通して、ボックス本体51内でナットを螺合できるようになっている。仕切板54はフレーム柱材1の接合垂直側面2に直角な方向に配置されておるので、接合垂直側面2方向に開口部を設けて、開放してある。
また、係止板56は、下端はボックス本体51と同じ幅で形成し、テーパー状の段差部57を経て幅を狭く形成してあり、また、フレーム柱材1の柱脚の貫通孔11、11に応じた透孔58、58を穿設してある。
【0021】
(6)柱補強金物(
図2)
柱補強金物60は、いわゆるホールダウン金物と同様の構造であり、既設の柱73の側面で、開口76とは反対側の側面に沿って縦に配置する固定板61と、固定板61の端部に設置した水平方向の係止板63とからなり、係止板63と固定板61との間を補強片で補強されている。
固定板61は、柱73の側面に向けて打ち込むビス類(ラグスクリューボルトなども含む)の軸を通す透孔62、62を多数設けてある。また、係止板63は、係止孔64を有し、係止孔64は、柱脚に使う場合には、コンクリート基礎71からのアンカーボルト75を挿通して、その上端部を定着できるように形成する。また、柱頭に使用する場合には、梁74を縦に貫通したボルト68の下端部を挿通して定着できるように形成する(
図2)。
【0023】
(1)門型フレーム70の構成(
図1)
(a) フレーム柱材1の下端部に柱脚金物50を配置し、フレーム柱材1の切欠き9に柱脚金物50の係止板56を挿入して、ボックス本体51の天板52を、フレーム柱材1の下面6に当接する。続いて、フレーム柱材1の貫通孔11、11からドリフトピン67、67を挿入して、係止板56の透孔58、58に挿通させ、フレーム柱材1に柱脚金物50を固定する。
(b) また、フレーム梁材20の両端部に梁受け金物40を配置し、梁受け金物40の係止片43、43をフレーム梁材20の切欠き25、25に挿入して、梁受け金物40の受け板41をフレーム梁材20の収容部空間26に配置する。フレーム梁材20の貫通孔27、27からドリフトピン67、67を打ち、係止片43の透孔44、44を挿通させて、フレーム梁材20に梁受け金物40を固定する。
(c) (b)の作業が完了したならば、2本のフレーム柱材1、1を、係止段部7が対向するように向き合わせて並列し、フレーム柱材1の柱頭で、係止段部7にフレーム梁材20の下水平他面23の端部を載せて、フレーム枠材20の端面をフレーム柱材1に当接する。ここで、フレーム柱材1、1の上面5、5は、フレーム梁材20の上水平他面22と略面一に配置される。
(d) (c)の作業が完了したならば、フレーム柱材1の外垂直他面4から貫通孔8、8にボルト68、68を挿入して、各ボルト68の先端を梁受け金物40の受け板41のねじ孔42に螺合緊結する。また、フレーム梁材20の一方の接合垂直側面21から、貫通孔27、27に向けてドリフトピン67、67を挿入して、梁受け金物40の係止片43の透孔44又は係止凹部45を貫通して、他の接合垂直側面21側に貫通させる。以上で、2本のフレーム柱材1、1とフレーム梁材20との接合が完了する。
(e) (d)が完了したならば、さらに、ボックス型の補強鋼板30をフレーム柱材1とフレーム梁材20の接合部に被せる。これにより、貫通孔8、27、切欠き25、フレーム梁材20の端縁が補強鋼板30で塞がれる。続いて、補強鋼板30の透孔32、32からビスを打ちをして、
補強鋼板30をフレーム柱材1及びフレーム梁材20と一体に固定する。この際、第4板31dの自由端36と第5板31eの自由端36の間に多少(1〜数mm程度)の間隙が形成されるので、フレーム梁材20の変形などが生じた場合にも両自由端36、36が重なることを防止できる。
(f) 以上のようにして、門型フレーム70が構成される(
図1、
図4(a))。門型フレーム70の構築は、通常、フレーム柱材1、1、フレーム梁材20、補強鋼板30、梁受け金物40、柱脚金物50、柱補強金物60などを構築現場に搬入して、構築現場敷地内又は隣接した場所で構築することが望ましいが、構築場所は任意であり、工場などで構築して現場に搬入することもできる。また、組み立て手順も上記例に限らず、門型フレーム70が構築できれば任意である。
(g) この補強鋼板30により、フレーム柱材1、1とフレーム梁材20の接合部が離れようとする変形をおさえることができる。特許文献1のような一枚の鋼板ではビスに力を伝えて補強するだけになるが、箱状の補強鋼板30で外側を覆うことによって、補強鋼板30に直接力が伝わりやすくなり、より強固になる。また、フレーム柱材1、1とフレーム梁材20の接合部を回転するような力が加わった場合、接合部の外側を覆うことにより、箱状の補強鋼板30が有効には作用する。
【0024】
(2) (1)の門型フレーム70の組み立てに前後して、または、アンカーボルト75が埋設してコンクリート基礎71を形成し、土台72を構築する(
図4(a))。
【0025】
(3) 土台72上に、柱73を立て、柱73の柱脚部に、柱補強金物60を取り付け、土台72を貫通したアンカーボルト75を柱補強金物60の係止板63の係止孔64に挿通して、アンカーボルト75にナットを螺合して、アンカーボルト75と柱補強金物60、柱73を強固に固定する(
図2)。柱補強金物60は、固定板61の透孔62、62からラグスクリューボルト66を打ち込んで柱73に固定される。
【0026】
(4) (3)の柱補強金物60の固定が完了したならば、あるいは柱補強金物60を固定する前に、柱73、73、梁74の間の開口76に、柱脚金物50の底板53の開放部55aを
図2の奥側(背面側、室内側)に向けて、門型フレーム70を挿入して、柱73にフレーム柱材1の外垂直他面4が、対向するように取り付ける(
図4(b)。この際、コンクリート基礎71に固定されたアンカーボルト75が、柱脚金物50の位置(フレーム柱材1の下面6の位置)で上方突出しているので、柱脚金物50の底板53の開放部55aからアンカーボルト75をボックス本体51内に導く。
【0027】
(5) 続いて、柱73の柱頭部に、梁74を架設して、梁74の下面を、フレーム梁材20の上水平他面22に対向させる。この際、梁74の下面とフレーム梁材20の上水平他面22との間に、梁74の下面と補強鋼板30の第4板31d及び第5板31eの上面との間に、それぞれ20〜30mm程度の(10〜50mmでも可)間隙29が形成される。
また、柱73の柱頭部に、柱補強金物60を取り付け、梁74に固定して下方に伸びたボルト68を、柱補強金物60の係止板63の係止孔64に挿通して、ボルト68にナットを螺合して、ボルト68を介して、柱73と梁74とを強く固定する。
続いて、フレーム柱材1の貫通孔12、12からラグスクリューボルト66、66を柱73に向けて打ち込み、フレーム梁材20の貫通孔28、28からラグスクリューボルト66、66を梁74に向けて打ち込む。
ここで、貫通孔28は、ラグスクリューボルト66のネジ部の外径より若干小さな径で形成され、ラグスクリューボルト66はフレーム梁材20をはゆるく貫通している。なお、ラグスクリューボルト66の先端部は充分な強度で梁74に定着されている。従って、梁74に生じる垂直荷重(ラグスクリューボルト66の軸方向の荷重)は、構造計算上、門型フレーム70(フレーム梁材20)に伝達されない。さらに、梁74がたわむような荷重が作用しても、間隙29が形成されているので、同様に、梁74に生じる垂直荷重は、構造計算上、門型フレーム70(フレーム梁材20)に伝達されない。しかし、ラグスクリューボルト66の軸方向に直角な荷重(例えば、風による荷重など)の場合には、ラグスクリューボルト66は貫通孔28内で位置を保ち、門型フレーム70と木造軸組(柱73、梁74など)、すなわち木質フレーム構造80として、有効に抵抗できる。
また、これと前後して柱脚金物50のボックス本体51内位置するアンカーボルト75の先端部にナットを螺合して、アンカーボルト75と柱脚金物50(=フレーム柱材1)とを強固に固定する。
【0028】
(6) 以上のようにして、木質フレーム構造80を構築する(
図2、
図4(c))。
【0029】
(7) この木質フレーム構造80では、特に補強鋼板30の第3板31cがフレーム柱材1の外垂直他面4と柱73の間に挟まれ、かつラグスクリューボルト66で、フレーム柱材1と柱73とが接合される。かつラグスクリューボルト66で、フレーム梁材20と梁74とが接合される。
また、(5)で記載したように梁74の下面と門型フレーム70の上面(すなわち、フレーム梁材20の上水平他面22、補強鋼板30の第4板31d及び第5板31eの上面、フレーム柱材1、1の上面5、5)に間隙29が形成されので、梁74が凹に変形した場合であっても、構造計算上、梁74が負担する鉛直荷重が、門型フレーム70に伝達することを無視することができるので、構造計算を簡易にできる。
また、木造フレーム構造80に大きな外力(特に接合部を回転させるような外力)が掛かった場合、補強鋼板30がフレーム柱材1とフレーム梁材20との接合部の角度を維持でき、とりわけ、補強鋼板30の第3板31cの端縁38がフレーム柱材1の外垂直他面4に喰い込み、補強鋼板30の第4板31d、第5板31eの端縁39、39がフレーム梁材20の上水平他面22に喰い込み、門型フレーム70の接合部の外側の変形を防止できる。したがって、総じて木質フレーム構造80の開口76を従来に比して強固に補強できる。
【0030】
4.木質フレーム構造の他の構成(バリエーション)
【0031】
(1) 前記実施形態で、この木質フレーム構造80は、通常は、平面で一方向の軸に単独または直列(
図3(c)破線図示70)に適用するが、平面で1本の柱74に交わって直交する2方向に適用することもできる(
図3(a))。また、この場合、縦方向を1本の柱74から離して、この木質フレーム構造80を適用することもできる(
図3(b)。また、同一軸方向で、並列して2列以上この木質フレーム構造80を適用することもできる(
図3(c))。また、上下の階層に適用することもできる(図示していない)。
【0032】
(2) また、前記実施形態で、柱脚金物50は、通常の柱の下面と土台やコンクリート基礎とを接合する他の構造の金物を使用することもできる(図示していない)。この場合には、柱脚金物50に応じて、フレーム柱材1の柱脚部を加工する。
梁受け金物40も同様に、柱に梁を固定する際に使用する他の構造の金物を適用することもできる(図示していない)。この場合には、梁受け金物40に応じて、フレーム柱材1の柱頭部、フレーム梁材20の両端部を加工する。
【0033】
(3) また、前記実施形態では、コンクリート基礎71上に門型フレーム70を固定したが、土台72上に門型フレーム70のフレーム柱材1、1を固定することもできる(図示していない)。
また、アンカーボルト75と同等な強固な固定手段を使用すれば、2階以上の上方の階で、他の横架材(1階天井付近の梁材など)に門型フレーム70のフレーム柱材1、1を固定することもできる(図示していない)。
【0034】
(4) また、前記実施形態では、主に新築住宅工事で、門型フレーム70を構成して、柱73、梁74と平行して構築したが(
図4)、他の施工とすることもできる(
図5)。すなわち、柱73、梁74が先に構築され、開口76が形成され(
図5(a))、開口76に門型フレーム70をはめ込むように建て込むこともできる(
図5(b))。この工法では、新築のみならず、既設の柱73、梁74を補強するリフォーム工事などにも適用することができる。