(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記圧電基板上に前記櫛型電極を覆って設けられ、前記圧電基板の弾性定数の温度係数とは逆符号の温度係数である弾性定数を有する誘電体膜を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
前記圧電基板上に、前記櫛型電極と前記金属パターンとを覆い、前記圧電基板の弾性定数の温度係数とは逆符号の温度係数である弾性定数を有する誘電体膜を形成する工程を備え、
前記金属パターン上の前記誘電体膜と前記金属パターンの前記最上層とを同じマスクを用いて連続して除去して前記金属パターンの前記一層下の層を露出させることを特徴とする請求項7または8記載の弾性波デバイスの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献4では、配線を厚膜化して電気抵抗を下げることが提案されているが、パッド電極の圧電基板に垂直な方向の電気抵抗については考慮されていない。本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、パッド電極の圧電基板に垂直な方向の電気抵抗を抑えることが可能な弾性波デバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、圧電基板と、前記圧電基板上に設けられた櫛型電極と、前記圧電基板上に設けられ、前記櫛型電極に電気的に接続されたパッド電極と、を備え、前記櫛型電極は、複数の
金属層が互いの側面を覆わずに積層され、前記複数の
金属層のうちの最上層の材料の電気抵抗率が前記最上層よりも一層下の層の材料の電気抵抗率よりも大きい積層
金属膜であり、前記パッド電極は、前記櫛型電極の前記積層
金属膜のうちの前記圧電基板側から前記一層下の層までの膜構成と同じ膜構成を有し、前記一層下の層に相当する層の上面が露出していることを特徴とする弾性波デバイスである。
【0009】
上記構成において、前記パッド電極の前記一層下の層に相当する層上に設けられたバンプを備える構成とすることができる。
【0010】
本発明は、圧電基板と
、前記圧電基板上に設けられた櫛型電極と、前記圧電基板上に設けられ、前記櫛型電極に電気的に接続されたパッド電極と、を備え、前記櫛型電極は、複数の
金属層が互いの側面を覆わずに積層され、前記複数の
金属層のうちの最上層の材料の電気抵抗率が前記最上層よりも一層下の層の材料の電気抵抗率よりも大きい積層
金属膜であり、前記パッド電極は、前記櫛型電極の前記積層
金属膜のうちの前記圧電基板側から前記一層下の層までの膜構成と同じ膜構成を有すると共に、前記一層下の層に相当する層上に前記最上層とは異なる材料からなる
金属層が設けられていることを特徴とする弾性波デバイスである。
【0011】
上記構成において、前記パッド電極の前記最上層とは異なる材料からなる層上に設けられたバンプを備える構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記圧電基板上に前記櫛型電極を覆って設けられ、前記圧電基板の弾性定数の温度係数とは逆符号の温度係数である弾性定数を有する誘電体膜を備える構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記誘電体膜は、酸化シリコンを主成分とする構成とすることができる。
【0014】
本発明は、圧電基板上に複数の
金属層が互いの側面を覆わずに積層された積層
金属膜であって前記複数の
金属層のうちの最上層の材料の電気抵抗率が前記最上層よりも一層下の層の材料の電気抵抗率よりも大きい前記積層
金属膜を形成して、前記積層
金属膜からなる櫛型電極と、前記櫛型電極に電気的に接続された前記積層
金属膜からなる金属パターンと、を同時に形成する工程と、前記金属パターンの前記最上層を除去して前記一層下の層を露出させて、前記櫛型電極に電気的に接続されたパッド電極を形成する工程と、を備えることを特徴とする弾性波デバイスの製造方法である。
【0015】
本発明は、圧電基板上に複数の
金属層が互いの側面を覆わずに積層された積層
金属膜であって前記複数の
金属層のうちの最上層の材料の電気抵抗率が前記最上層よりも一層下の層の材料の電気抵抗率よりも大きい前記積層
金属膜を形成して、前記積層
金属膜からなる櫛型電極と、前記櫛型電極に電気的に接続された前記積層
金属膜からなる金属パターンと、を同時に形成する工程と、前記金属パターンの前記最上層を除去して前記一層下の層を露出させる工程と、前記金属パターンの露出した前記一層下の層上に前記最上層とは異なる材料からなる
金属層を形成して、前記櫛型電極に電気的に接続されたパッド電極を形成する工程と、を備えることを特徴とする弾性波デバイスの製造方法である。
【0016】
上記構成において、前記圧電基板上に、前記櫛型電極と前記金属パターンとを覆い、前記圧電基板の弾性定数の温度係数とは逆符号の温度係数である弾性定数を有する誘電体膜を形成する工程を備え、前記金属パターン上の前記誘電体膜と前記金属パターンの前記最上層とを同じマスクを用いて連続して除去して前記金属パターンの前記一層下の層を露出させる構成とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、パッド電極の圧電基板に垂直な方向の電気抵抗を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、比較例の弾性波デバイスについて説明する。
図1は、比較例1に係る弾性波デバイスを示す断面図である。
図1のように、比較例1の弾性波デバイスは、圧電基板102上に、櫛型電極104と、櫛型電極104に電気的に接続されたパッド電極106と、が設けられている。パッド電極106上にバンプ108が設けられている。
【0020】
櫛型電極104は、複数の金属層が積層された積層金属膜であり、例えば圧電基板102側から第1層110、第2層112、第3層114がこの順に積層されている。第1層110は、例えばチタン(Ti)層からなり、第2層112は、例えば銅(Cu)層からなり、第3層114は、例えばTi層からなる。
【0021】
パッド電極106は、製造工程の簡略化のために、櫛型電極104と同時に形成される。したがって、パッド電極106は、櫛型電極104と同じ膜構成をしている。つまり、パッド電極106は、圧電基板102側から櫛型電極104の第1層110と同じ材料且つ同じ膜厚の第1層120、櫛型電極104の第2層112と同じ材料且つ同じ膜厚の第2層122、櫛型電極104の第3層114と同じ材料且つ同じ膜厚の第3層124がこの順に積層されている。
【0022】
図2は、比較例2に係る弾性波デバイスを示す断面図である。
図2のように、比較例2の弾性波デバイスでは、パッド電極106aは、第3層124上に第4層126、第5層128をこの順に備える。第4層126は、例えばクロム(Cr)層からなり、第5層128は、例えば金(Au)層からなる。パッド電極106aの第5層128上に、バンプ108が設けられている。その他の構成は、比較例1の
図1と同じであるため説明を省略する。バンプ108が例えばAuバンプからなる場合には、密着の点から、比較例2のように、Au層からなる第5層128上にバンプ108が設けられることが好ましい。
【0023】
図3(a)から
図3(d)は、比較例2に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
図3(a)のように、圧電基板102上に、櫛型電極104及びパッド電極106aを形成すべき領域に少なくとも開口132を有するレジストパターン130を形成する。圧電基板102上に、例えば蒸着法を用いて、Ti層134、Cu層136、Ti層138をこの順に堆積する。Ti層134、Cu層136、及びTi層138は、レジストパターン130上に形成されると共に、レジストパターン130の開口132内にも形成される。
【0024】
図3(b)のように、レジストパターン130とその上に形成されたTi層134、Cu層136、及びTi層138とをリフトオフによって除去する。これにより、Ti層の第1層110、Cu層の第2層112、及びTi層の第3層114からなる積層金属膜の櫛型電極104が形成される。また、パッド電極106aが形成されるべき領域には、櫛型電極104と同時に、Ti層134、Cu層136、及びTi層138からなる積層金属膜の金属パターン140が形成される。
【0025】
図3(c)のように、圧電基板102上に、金属パターン140上に開口144を有するレジストパターン142を形成する。その後、圧電基板102上に、例えば蒸着法を用いて、Cr層146、Au層148をこの順に堆積する。
【0026】
図3(d)のように、レジストパターン142とその上に形成されたCr層146及びAu層148をリフトオフによって除去する。これにより、Ti層の第1層120、Cu層の第2層122、Ti層の第3層124、Cr層の第4層126、及びAu層の第5層128からなる積層金属膜のパッド電極106aが形成される。その後、パッド電極106aの第5層128上に、バンプ108を形成する。以上の工程を含んで、比較例2の弾性波デバイスを形成することができる。
【0027】
なお、比較例1の弾性波デバイスは、以下の工程を含んで形成することができる。
図3(a)及び
図3(b)を実施して、Ti層の第1層110、Cu層の第2層112、及びTi層の第3層114からなる積層金属膜の櫛型電極104と同時に、Ti層の第1層120、Cu層の第2層122、及びTi層の第3層124からなる積層金属膜のパッド電極106を形成する。その後、パッド電極106の第3層124上にバンプ108を形成する。
【0028】
比較例1及び比較例2によれば、櫛型電極104とパッド電極106、106aの少なくとも一部とは、製造工程の簡略化のために同時に形成されているため、同じ膜構成をしている。このため、耐電力性又は特性等を考慮して櫛型電極104に用いる材料を選定した場合に、パッド電極106、106aの圧電基板102に垂直な方向(信号取り出し方向)の電気抵抗が高くなる恐れがある。そこで、パッド電極の圧電基板に垂直な方向の電気抵抗を抑えることが可能な実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0029】
図4は、実施例1に係る弾性波デバイスを示す上面図である。
図4のように、実施例1の弾性波デバイス10は、ニオブ酸リチウム又はタンタル酸リチウム等の圧電材料からなる圧電基板12上に、複数の直列共振器S1〜S3と複数の並列共振器P1、P2とが設けられたラダー型フィルタである。
【0030】
複数の直列共振器S1〜S3は、圧電基板12上に設けられた入出力用のパッド電極16(左上及び左下のパッド電極16)の間に、配線20を介して直列に接続されている。複数の並列共振器P1、P2は、圧電基板12上に設けられたグランド用のパッド電極16(右上及び右下のパッド電極16)と直列共振器S1、S2の間のノードとの間に、配線20を介してそれぞれ接続されている。
【0031】
複数の直列共振器S1〜S3及び複数の並列共振器P1、P2は、例えば弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)共振器である。複数の直列共振器S1〜S3及び複数の並列共振器P1、P2は、弾性波を励振する1組の櫛型電極14からなるIDT(Interdigital Transducer)22と、弾性表面波の励振方向でIDT22の両側に位置する反射器24と、を含む。
【0032】
図5は、
図4のA−A間の断面図である。なお、
図5では、図の明瞭化のために、反射器24の図示は省略しており、櫛型電極14の電極指の本数も減らして図示している。
図5のように、圧電基板12上に設けられた櫛型電極14は、複数の金属層が積層された積層金属膜であり、例えば圧電基板12側からTi層の第1層30、Cu層の第2層32、Ti層の第3層34がこの順に積層されている。各層の厚さは、使用されるフィルタの周期、特性によって最適な膜厚があるが、例えばこの場合、第1層30〜第3層34それぞれの膜厚は、例えば数十nm〜300nm程度である。第1層30は、例えば圧電基板12との密着のために設けられている。第2層32は、櫛型電極14の主電極となる層であり、例えば櫛型電極14の電気抵抗を抑える材料(Cu)が用いられている。第3層34は、例えば第2層32の酸化を抑制するために設けられている。
【0033】
櫛型電極14を構成する第1層30及び第3層34の材料であるTiの電気抵抗率は47〜55μΩ・cm程度であり、第2層32の材料であるCuの電気抵抗率は1.7μΩ・cm程度である。このように、櫛型電極14は、最上層である第3層34の材料(Ti)の電気抵抗率が最上層より一層下の層である第2層32の材料(Cu)の電気抵抗率よりも大きい積層金属膜となっている。
【0034】
圧電基板12上に設けられたパッド電極16は、例えば圧電基板12側から第1層40、第2層42がこの順に積層された積層金属膜である。第1層40は、櫛型電極14の第1層30と同じ材料且つ同じ膜厚からなる。第2層42は、櫛型電極14の第2層32と同じ材料且つ同じ膜厚からなる。即ち、第1層40は、膜厚が数十nm〜300nm程度のTi層からなり、第2層42は、膜厚が数十nm〜300nm程度のCu層からなる。このように、パッド電極16は、櫛型電極14の積層金属膜のうちの圧電基板12側から第2層32までの膜構成と同じ膜構成を有し、櫛型電極14の第2層32に相当する第2層42の上面が露出した構成をしている。なお、膜構成が同じとは、同じ材料からなる膜で構成されている場合や、同じ材料且つ同じ膜厚からなる膜で構成されている場合を含むものである。
【0035】
パッド電極16の第2層42の上面には、弾性波デバイス10を実装基板等に実装するためのバンプ18が設けられている。バンプ18は、例えばAuバンプ又は半田バンプ等である。
【0036】
次に、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法について説明する。
図6(a)から
図7(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
図6(a)のように、圧電基板12上に、櫛型電極14、反射器24、パッド電極16、及び配線20を形成すべき領域に開口52を有し、その他の領域を覆うレジストパターン50を形成する。
【0037】
図6(b)のように、圧電基板12上に、例えば蒸着法を用いて、Ti層54、Cu層56、Ti層58をこの順に堆積する。Ti層54、Cu層56、及びTi層58は、レジストパターン50上に形成されると共に、レジストパターン50の開口52内にも形成される。
【0038】
図6(c)のように、レジストパターン50とその上に形成されたTi層54、Cu層56、及びTi層58とをリフトオフによって除去する。これにより、Ti層の第1層30、Cu層の第2層32、及びTi層の第3層34からなる積層金属膜の櫛型電極14が形成される。また、図示はしないが、Ti層、Cu層、及びTi層からなる積層金属膜の反射器24及び配線20も形成される。さらに、パッド電極16が形成されるべき領域には、Ti層54、Cu層56、及びTi層58からなる積層金属膜であり、櫛型電極14に電気的に接続された金属パターン60が形成される。上述したようにTiはCuよりも電気抵抗率が大きいことから、最上層の材料の電気抵抗率が最上層よりも一層下の層の材料よりも大きい積層金属膜からなる櫛型電極14、反射器24、配線20、及び金属パターン60が同時に形成される。
【0039】
図6(d)のように、圧電基板12上に、金属パターン60上に開口64を有し、その他の領域を覆うレジストパターン62を形成する。レジストパターン62の開口64は、例えば金属パターン60の上面全体が露出するように開いている
【0040】
図7(a)のように、レジストパターン62をマスクとして金属パターン60に対してエッチングを施し、最上層であるTi層58を除去して、最上層よりも一層下の層であるCu層56を露出させる。エッチングは、ドライエッチングで行ってもよいし、ウエットエッチングで行ってもよい。
【0041】
図7(b)のように、レジストパターン62を除去する。これにより、Ti層の第1層40及びCu層の第2層42からなる積層金属膜のパッド電極16が形成される。パッド電極16の第1層40は櫛型電極14の第1層30と同じ材料且つ同じ膜厚からなり、パッド電極16の第2層42は櫛型電極14の第2層32と同じ材料且つ同じ膜厚からなる。
【0042】
図7(c)のように、パッド電極16の第2層42の上面に、バンプ18を形成する。以上の工程を含んで、実施例1の弾性波デバイスを形成することができる。
【0043】
実施例1によれば、
図5のように、櫛型電極14は、最上層である第3層34の材料(Ti)の電気抵抗率が最上層よりも一層下の層である第2層32の材料(Cu)の電気抵抗率よりも大きい積層膜である。パッド電極16は、櫛型電極14の積層膜のうちの圧電基板12側から第2層32までの膜構成と同じ膜構成を有し、櫛型電極14の第2層32に相当する層である第2層42の上面が露出している。このように、パッド電極16は、櫛型電極14の積層膜から電気抵抗率が高い最上層が除去された構成をしているため、比較例1のようにパッド電極と櫛型電極とが同じ膜構成をしている場合に比べて、パッド電極16の圧電基板12に垂直な方向(信号取り出し方向)の電気抵抗を抑えることができる。よって、フィルタの挿入損失を抑えることができる。例えば、耐電力性又は特性等を考慮して櫛型電極14に所望の材料を選択した場合でも、パッド電極16の圧電基板12に垂直な方向の電気抵抗を抑えることができる。
【0044】
実施例1の弾性波デバイス10は、
図6(a)から
図7(c)で説明したように、以下の製造工程を含んで形成することができる。圧電基板12上に最上層(Ti層58)の材料の電気抵抗率が最上層よりも一層下の層(Cu層56)の材料よりも大きい積層膜を形成して、この積層膜からなる櫛型電極14と櫛型電極14に電気的に接続され、上記積層膜からなる金属パターン60とを同時に形成する(
図6(b)及び
図6(c))。金属パターン60の最上層(Ti層58)を除去して一層下の層(Cu層56)を露出させて、櫛型電極14に電気的に接続されたパッド電極16を形成する(
図7(a)及び
図7(b))。この製造方法によれば、櫛型電極14と同じ膜構成をした金属パターン60の電気抵抗率の大きい最上層を除去してパッド電極16としているため、比較例1のようにパッド電極と櫛型電極とが同じ膜構成をしている場合に比べて、パッド電極16の圧電基板12に垂直な方向の電気抵抗を抑えることができる。
【実施例2】
【0045】
図8は、実施例2に係る弾性波デバイスを示す断面図である。
図8のように、実施例2の弾性波デバイス10aでは、パッド電極16aは、第2層42の上面に第3層44と第4層46とをこの順に備えている。第3層44は、例えば膜厚が100nm程度のCr層である。第4層46は、例えば膜厚が100nm程度のAu層である。バンプ18は、例えばAuバンプであり、パッド電極16aの第4層46の上面に設けられている。パッド電極16aの第3層44は、第2層42との密着のために設けられており、第4層46はバンプ18の密着のために設けられている。その他の構成は、実施例1の
図5と同じであるため説明を省略する。
【0046】
図9(a)から
図9(d)は、実施例2に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。まず、実施例1の
図6(a)から
図7(a)の工程を実施する。その後、レジストパターン62を除去して、
図9(a)のように、圧電基板12上に、Ti層の第1層30、Cu層の第2層32、及びTi層の第3層34からなる積層金属膜の櫛型電極14と、Ti層54及びCu層56からなる積層金属膜の金属パターン60と、を形成する。
【0047】
図9(b)のように、圧電基板12上に、金属パターン60上に開口69を有し、その他の領域を覆うレジストパターン66を形成する。レジストパターン66の開口69は、例えば金属パターン60の上面全体が露出するように開いている。その後、圧電基板12上に、例えば蒸着法を用いて、Cr層68、Au層70をこの順に堆積する。Cr層68及びAu層70は、レジストパターン66上に形成されると共に、レジストパターン66の開口69内の金属パターン60上にも形成される。
【0048】
図9(c)のように、レジストパターン66とその上に形成されたCr層68及びAu層70をリフトオフによって除去する。これにより、Ti層の第1層40、Cu層の第2層42、Cr層の第3層44、及びAu層の第4層46からなる積層金属膜のパッド電極16aが形成される。
【0049】
図9(d)のように、パッド電極16aの第4層46の上面に、バンプ18を形成する。以上の工程を含んで、実施例2の弾性波デバイスを形成することができる。
【0050】
実施例2によれば、
図8のように、パッド電極16aは、櫛型電極14の積層膜のうちの圧電基板12側から第2層32までの膜構成と同じ膜構成を有すると共に、櫛型電極14の第2層32に相当する第2層42上に、櫛型電極14の第3層34とは異なる材料からなる層である第3層44及び第4層46が設けられている。比較例2でも述べたが、バンプ18がAuバンプからなる場合では、密着の点から、バンプ18はAu層からなる第4層46上に設けられることが好ましい。また、Cu層からなる第2層42の酸化を抑制する点においても、第3層44及び第4層46が設けられることが好ましい。比較例2のパッド電極106aは、櫛型電極104と同じ膜構成をした積層膜上にさらに別の層が上積みされた膜構成をしている。これに対し、実施例2のパッド電極16aは、櫛型電極14の積層膜から電気抵抗率が大きい最上層が除去された膜構成と同じ膜構成をした積層膜上にさらに別の層が上積みされた膜構成をしている。このため、実施例2は、比較例2に比べて、パッド電極16aの圧電基板12に垂直な方向の電気抵抗を抑えることができる。
【0051】
パッド電極16aの第2層42上に設けられた櫛型電極14の最上層とは異なる材料からなる層は、パッド電極16aの圧電基板12に垂直な方向の電気抵抗を抑える点から、櫛型電極14の最上層よりも電気抵抗率の小さい材料からなることが好ましい。
【0052】
実施例2の弾性波デバイス10aは、
図6(a)から
図7(a)及び
図9(a)から
図9(d)で説明したように、以下の製造工程を含んで形成することができる。圧電基板12上に最上層(Ti層58)の材料の電気抵抗率が最上層よりも一層下の層(Cu層56)の材料よりも大きい積層膜を形成して、この積層膜からなる櫛型電極14と櫛型電極14に電気的に接続され、上記積層膜からなる金属パターン60とを同時に形成する(
図6(b)及び
図6(c))。金属パターン60の最上層(Ti層58)を除去して一層下の層(Cu層56)を露出させる(
図9(a))。金属パターン60の露出したCu層56上に最上層(Ti層58)とは異なる材料からなる層(Cr層68及びAu層70)を形成して、櫛型電極14に電気的に接続されたパッド電極16aを形成する(
図9(b)及び
図9(c))。この製造方法によれば、パッド電極16aを形成するにあたって櫛型電極14と同じ膜構成をした金属パターン60の電気抵抗率の大きい最上層を除去しているため、比較例2に比べて、パッド電極16aの圧電基板12に垂直な方向の電気抵抗を抑えることができる。
【0053】
実施例2では、バンプ18がAuバンプである場合に、密着の点から、パッド電極16aの第2層42上にCr層の第3層44とAu層の第4層46とが設けられた場合を例に示した。しかしながら、バンプ18はAuバンプに限らず、例えば半田バンプ(半田ボールも含む)の場合でもよく、この場合では、パッド電極16aの第2層42上に、バリア層として機能する例えばニッケル(Ni)層が設けられていてもよい。
【実施例3】
【0054】
図10は、実施例3に係る弾性波デバイスを示す断面図である。
図10のように、実施例3の弾性波デバイス10bでは、圧電基板12上に、圧電基板12の弾性定数の温度係数とは逆符号の温度係数である弾性定数を有する誘電体膜72が櫛型電極14を覆って設けられている。誘電体膜72は、例えば二酸化シリコン膜であるが、例えばフッ素等の他の元素がドープされた酸化シリコン膜の場合でもよい。即ち、誘電体膜72は、酸化シリコンを主成分とする膜である。その他の構成は、実施例1の
図4と同じであるため説明を省略する。
【0055】
実施例3の弾性波デバイス10bは、以下の工程を含んで形成することができる。まず、実施例1の
図6(a)から
図7(b)の工程を実施する。その後、圧電基板12上に櫛型電極14等を覆う誘電体膜72を堆積した後、誘電体膜72をパターニングして、櫛型電極14を覆う所望の形状とする。その後、パッド電極16の第2層42の上面にバンプ18を形成する。
【0056】
実施例3によれば、圧電基板12の弾性定数の温度係数とは逆符号の温度係数である弾性定数を有する誘電体膜72が、櫛型電極14を覆って設けられている。このため、パッド電極16の圧電基板12に垂直な方向の電気抵抗を抑えることに加え、弾性波デバイス10bの温度特性を向上させることができる。
【実施例4】
【0057】
図11は、実施例4に係る弾性波デバイスを示す断面図である。
図11のように、実施例4の弾性波デバイス10cでは、圧電基板12上に、圧電基板12の弾性定数の温度係数とは逆符号の温度係数である弾性定数を有する誘電体膜72が櫛型電極14を覆って設けられている。その他の構成は、実施例2の
図8と同じであるため説明を省略する。
【0058】
実施例4の弾性波デバイス10cは、以下の工程を含んで形成することができる。まず、実施例1の
図6(a)から
図7(a)及び実施例2の
図9(a)から
図9(c)の工程を実施する。その後、圧電基板12上に櫛型電極14等を覆う誘電体膜72を堆積した後、誘電体膜72をパターニングして、櫛型電極14を覆う所望の形状とする。その後、パッド電極16aの第4層46の上面にバンプ18を形成する。
【0059】
実施例4においても、櫛型電極14を覆う誘電体膜72が設けられているため、パッド電極16aの圧電基板12に垂直な方向の電気抵抗を抑えることに加え、弾性波デバイス10cの温度特性を向上させることができる。
【実施例5】
【0060】
図12は、実施例5に係る弾性波デバイスを示す断面図である。
図12のように、実施例5の弾性波デバイス10dでは、櫛型電極14を覆う誘電体膜72aは、パッド電極16bまで延在して、パッド電極16bの端部を覆っている。パッド電極16bは、第2層42上であって、誘電体膜72aで覆われた端部に層48を有する。層48は、櫛型電極14の第3層34と同じ材料且つ同じ膜厚である。その他の構成は、実施例1の
図4と同じであるため説明を省略する。
【0061】
図13(a)から
図13(d)は、実施例5に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。まず、実施例1の
図6(a)から
図6(c)の工程を実施する。その後、
図13(a)のように、圧電基板12上に、例えばスパッタ法を用いて、櫛型電極14及び金属パターン60を覆う誘電体膜72aを堆積する。
【0062】
図13(b)のように、誘電体膜72a上に、金属パターン60上に開口76を有するレジストパターン74を形成する。レジストパターン74は、金属パターン60の端部を覆い、金属パターン60の端部よりも内側部分上に開口76を有する。レジストパターン74をマスクとして誘電体膜72aに対してエッチングを施して、金属パターン60上の誘電体膜72aを除去する。続いて、レジストパターン74をマスクとして金属パターン60に対してエッチングを連続して施して、金属パターン60の最上層であるTi層58を除去する。レジストパターン74は、金属パターン60の端部を覆っていることから、金属パターン60の端部にはTi層58が残存し、Ti層58上には誘電体膜72aが残存する。誘電体膜72a及び金属パターン60に対するエッチングは、ドライエッチングを用いてもよいし、ウエットエッチングを用いてもよい。例えば、誘電体膜72aをフッ素系ガスによる反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)でエッチングし、このエッチングのエッチング時間を長くすることで、圧電基板12をエッチング装置から取り出すことなく連続して金属パターン60に対してエッチングを施してTi層58を除去してもよい。また、反応性イオンエッチングの代わりに、アルゴン(Ar)ガス等の希ガスを用いたイオンミリングを用いても良い。
【0063】
図13(c)のように、レジストパターン74を除去する。これにより、Ti層の第1層40及びCu層の第2層42が積層されると共に、第2層42の端部上にTi層からなる層48が設けられた積層金属膜のパッド電極16bが形成される。
【0064】
図13(d)のように、パッド電極16bの第2層42の上面に、バンプ18を形成する。以上の工程を含んで、実施例5の弾性波デバイスを形成することができる。
【0065】
実施例5においても、圧電基板12の弾性定数の温度係数とは逆符号の温度係数である弾性定数を有する誘電体膜72aが櫛型電極14を覆って設けられている。このため、パッド電極16bの圧電基板12に垂直な方向の電気抵抗を抑えることに加え、弾性波デバイス10dの温度特性を向上させることができる。
【0066】
実施例5では、
図13(a)のように、櫛型電極14と金属パターン60とを覆い、圧電基板12の弾性定数の温度係数とは逆符号の温度係数である弾性定数を有する誘電体膜72aを形成する。
図13(b)のように、金属パターン60上の誘電体膜72aと金属パターン60の最上層(Ti層58)とを同じレジストパターン74を用いて連続して除去して、金属パターン60の最上層より一層下の層(Cu層56)を露出させる。この製造方法によれば、パッド電極16bを形成するための金属パターン60の最上層の除去を、誘電体膜72aの除去に続いて連続して行うため、製造コストの増加を抑制することができる。
【実施例6】
【0067】
図14は、実施例6に係る弾性波デバイスを示す断面図である。
図14のように、実施例6の弾性波デバイス10eでは、パッド電極16cは、第2層42の端部上に設けられた層48よりも内側部分であって、第2層42の上面に第3層44と第4層46とが順に設けられている。第3層44は例えばCr層で、第4層46は例えばAu層である。バンプ18は、パッド電極16cの第4層46の上面に設けられている。その他の構成は、実施例5の
図12と同じであるため説明を省略する。
【0068】
図15(a)から
図15(c)は、実施例6に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。まず、実施例1の
図6(a)から
図6(c)及び実施例5の
図13(a)及び
図13(b)の工程を実施する。その後、
図15(a)のように、圧電基板12上に、例えば蒸着法を用いて、Cr層68、Au層70をこの順に堆積する。
【0069】
図15(b)のように、レジストパターン74とその上に形成されたCr層68及びAu層70をリフトオフによって除去する。これにより、Ti層の第1層40及びCu層の第2層42が積層されると共に、第2層42の端部上にTi層からなる層48が設けられ、層48よりも内側部分の第2層42上にCr層の第3層44とAu層の第4層46とが順に設けられた積層金属膜のパッド電極16cが形成される。
【0070】
図15(c)のように、パッド電極16cの第4層46の上面に、バンプ18を形成する。以上の工程を含んで、実施例6の弾性波デバイスを形成することができる。
【0071】
実施例6によっても、実施例5と同様に、製造コストの増加を抑制しつつ、パッド電極16cの圧電基板12に垂直な方向の電気抵抗の抑制と、弾性波デバイス10eの温度特性の向上と、を実現することができる。
【0072】
実施例5及び実施例6では、誘電体膜72aがパッド電極16b、16cの端部を覆っている場合を例に示したが、誘電体膜72aがパッド電極16b、16cの端部を覆っていない場合でもよい。この場合、パッド電極16b、16cの第2層42の端部上に層48は形成されない。
【0073】
実施例1から実施例6では、櫛型電極14の最上層がTi層で、最上層よりも一層下の層がCu層である場合を例に示したが、この場合に限られない。最上層の材料の電気抵抗率が最上層よりも一層下の層の材料よりも大きいことを満たせば、その他の材料の組み合わせの場合でもよい。例えば、最上層よりも一層下の層がCu層である場合では、最上層はTi層の他に、Cr層、Ni層、白金(Pt)層、モリブデン(Mo)層、Au層、タングステン(W)層、タンタル(Ta)層等の場合でもよい。また、例えば、最上層よりも一層下の層がAl層である場合では、最上層はTi層、Cr層、Ni層、Pt層、Mo層、W層、Ta層等の場合でもよい。また、弾性波デバイスをバンプによって実装基板等に実装する場合を例に示したが、バンプの代わりにワイヤによって実装基板等と接続する場合でもよい。
【0074】
弾性波デバイスがラダー型フィルタである場合を例に示したが、多重モード型フィルタ等の他のフィルタの場合でもよいし、共振器の場合でもよいし、多重モード型フィルタと共振器を組み合わせた場合でもよい。また、弾性表面波を用いた弾性波デバイスの場合に限らず、ラブ波又は弾性境界波等を用いた弾性波デバイスの場合でもよい。
【0075】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。