(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385696
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ドリルチャック
(51)【国際特許分類】
B23B 31/12 20060101AFI20180827BHJP
B23B 31/173 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
B23B31/12 C
B23B31/173 C
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-61930(P2014-61930)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-184554(P2014-184554A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2017年1月12日
(31)【優先権主張番号】20 2013 101 255.6
(32)【優先日】2013年3月25日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597007204
【氏名又は名称】ロェーム ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】ペーター シェンク
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ティーマン
【審査官】
村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2003/0067123(US,A1)
【文献】
特開平08−243818(JP,A)
【文献】
米国特許第03712632(US,A)
【文献】
米国特許第03727931(US,A)
【文献】
特開平08−047807(JP,A)
【文献】
特開昭61−146401(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第1170079(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/12
B23B 31/173
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端部にスピンドル受入部(3)を備えるチャック駆幹体(2)と、
締付面及び外向き歯切部(7)を備え、チャック駆幹体(2)内における、チャック軸(5)に対して斜めに延びる案内通路(4)中をズレ動き可能に案内される複数の締付あご(6)と、
締付あご(6)の外向き歯切部(7)に噛み合うネジ切部(8)を備え、締付あご(6)の位置・姿勢を、開放の位置・姿勢と締付の位置・姿勢との間でシフトさせるべく、チャック駆幹体(2)に沿って回転可能に案内されたネジ切リング(9)と、
ネジ切リング(9)を操作するべく、チャック駆幹体(2)を外周側から包み込む締付スリーブ(10)と、
後端部に配置され、くず排出開口(14)が備えられた閉じ止め板(12)とを備えるドリルチャックにおいて、
複数の締付あご(6)における閉じ止め板(12)の側の端部には、外向き歯切部(7)の後端から前方へと傾斜して延びるくず送り出し面(11)が設けられており、
穿孔くずを排出するように、複数の締付あご(6)のくず送り出し面(11)に、それぞれ、くず排出開口(14)が割り当てられて配置され、
複数の締付あご(6)の後端部には、外向き歯切部(7)の側に、それぞれくず送り出し突起(15)が備えられていることを特徴とするドリルチャック。
【請求項2】
くず送り出し面(11)が平坦面(18)からなることを特徴とする請求項1に記載のドリルチャック。
【請求項3】
くず送り出し面(11)が湾曲面(13)からなることを特徴とする請求項1に記載のドリルチャック。
【請求項4】
チャック軸(5)に沿った断面において、前記平坦面(18)、または、前記湾曲面(13)の両端をつなぐ弦状の線が、チャック軸(5)の垂線に対してなす角度αが、2°〜15°の範囲内から選ばれるか、または5°であることを特徴とする請求項2または3に記載のドリルチャック。
【請求項5】
くず排出開口(14)が、閉じ止め板(12)を、半径方向または軸方向に貫いていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のドリルチャック。
【請求項6】
くず送り出し経路(17)を形成すべく、閉じ止め板(12)の内面は、締付あご(6)の後端部に面した領域内にて、くず送り出し面(11)に対応する輪郭(16)を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のドリルチャック。
【請求項7】
くず排出開口(14)が設けられた周方向領域内にて、閉じ止め板(12)には、スピンドル受入部(3)の部分を囲む箇所の外周側に、案内面(19)が備えられ、この案内面(19)は、案内通路(4)と同一の方向に延びるとともに案内通路(4)の壁面に連続することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のドリルチャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャック駆幹体を有し、その後端部にスピンドル受入部が設けられたドリルチャックに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなドリルチャックにおいて、チャック駆幹体内における、チャック軸(ドリルチャックの中心軸線)に対して斜めに延在する案内通路内には、締付面を有する締付あごがズレ動き可能に案内されている。また、締付あごの位置・姿勢(位置または姿勢)を、開放の位置・姿勢と締付の位置・姿勢との間でシフトさせるべく、締付あごの外向き歯切部は、チャック駆幹体に回転可能に案内されたネジ切リングの締付ネジ切部と噛み合っている。ネジ切リングを操作するためには、チャック駆幹体を外周側から包み込む締付スリーブが備えられている。また、ドリルチャックの後端に配置される閉じ止め板には、複数のくず排出開口備えられる。
【0003】
ドリルチャックには、常に、次のような問題がある。特には頭上作業行う場合に、穿孔くず(ドリリングにより生ずる、粉塵、小片などの各種の切削くず)がハウジング内に入り込む可能性がある。これにより、穿孔運転または締付あごの位置・姿勢のシフトが困難になり、ドリル機械の耐用年数が短かくなってしまう。というのは、ドリルチャック内部に存在する粉塵粒子や切削小片が研削・摩耗作用を有していて、摩耗劣化を大きくするからである。
【0004】
このような問題をなくし、ドリルチャックの耐用年数を延ばすべく、冒頭部で述べたようなドリルチャックにおいて、例えば特許文献1より公知であるようにすることができる。すなわち、一旦ドリルチャック内に入り込んだ穿孔くずが、閉じ止め板に設けられたくず排出開口を通して外へと排出され得るようにすることができる。しかしながら、この排出は、技術水準により公知のドリルチャックにおいては、予測不能に、または偶然に行われるのであり、そのため、効果的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ヨーロッパ特許EP1170079B(特開2002-052408)
【特許文献2】ヨーロッパ特許EP0710518B(日本特許3774793)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明のベースをなす課題は、上記に説明した不利な点を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明によると、冒頭部で述べたようなドリルチャックにおいて、次のようであることにより解決される。複数の締付あごのそれぞれにおける、閉じ止め板の側の端部は、いずれも、外向き歯切部から前方へと傾斜して延びる、くず送り出し面をなす。また、締付あごのくず送り出し面には、いずれにも、穿孔くずを排出するべく、複数のくず排出開口の一つが備え付けられている。このようであることにより、解決される。特には、くず送り出し面が傾斜しているならば、例えば頭上作業時にドリルチャック内に入り込んだ穿孔くずは、穿孔運転中に作用する遠心力によって半径方向外側へと運ばれるとともに、傾斜したくず送り出し面によって、閉じ止め板へと向かう運動量が付与される。締付あごは、締付の位置・姿勢から開放の位置・姿勢へシフトさせる際に、したがって、特にはドリル工具を交換するごとに、同時に、閉じ止め板へと向かってズレ動かされる。これにより、案内通路内に存在する穿孔くずと、穿孔運転中に作用する遠心力によってくず送り出し面を通じて半径方向外側へと運ばれて来た穿孔くずとが、締付あごの位置・姿勢のシフトによって、効果的にくず排出開口から排出される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明による第1の実施形態のドリルチャックについての部分断面・側面図である。
【
図2】
図1のドリルチャックの後端部を示す平面図である。
【
図3】本発明による第2の実施形態のドリルチャックについての部分断面・側面図である。
【
図4】
図3のドリルチャックの後端部を示す平面図である。
【
図5】本発明による第3の実施形態のドリルチャックについての部分断面・側面図である。
【
図6】
図5のドリルチャックの後端部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
くず送り出し面が一つの平坦面からなるのであれば、特に好ましいことが知られた。このようであると、特には、ドリルチャック内に存在する穿孔くずは、穿孔運転中に特に効果的に半径方向外側へと送り出される。しかも、このような形のくず送り出し面は、容易に製造することができる。したがって、個々の締付あごの製造コストの面で有利になり、これにより、本発明によるドリルチャックの製造コストの面で有利になる。
【0010】
さらには、くず送り出し面が湾曲面からなるのであれば、好ましい。湾曲面に沿って曲率半径が変化しうる湾曲面であると、締付あごの案内面が短くなり過ぎるのを防ぐことができる。なお、締付あごの案内面は、締付あごにおける、外向き歯切部とは逆の側面である。このように湾曲面からなることにより、締付あごを案内する案内寸法を、案内通路中にて、比較的大きく保つことができる。これにより、つかみ径が小さい場合にも、確実な、つかみ及び締付を行うことができる。
【0011】
チャック軸に沿った断面において、平坦面、または、湾曲面の両端部をつなぐ弦状の線が、チャック軸の垂線に対して、2°〜15°の範囲から選ばれる角度αをなすのであれば好ましく、5°の角度αをなすのであれば特に好ましい。くず送り出し面がこのように傾斜した形態であると、特には、ドリルチャック内に存在する穿孔くずを、穿孔運転中に半径方向に送り出す上で、好ましい。また、このように傾斜するならば、本発明によるドリルチャックの長さにとり、有利なものとなっている。これは、次の理由による。このような傾斜角度αを選択することにより、案内通路内に受け入れられた締付あごは、チャック軸に投影した長さが短かくなる。これにより、チャック駆幹体を短く設けることができ、そのため、ドリルチャック全体をより短くすることができる。また、このようなことにより、ドリルチャックを非常にコンパクトにすることが可能となっている。
【0012】
また、締付あごの後端部における外向き歯切部の側に、締付あごごとに1つの、くず送り出し突起が備えられているならば好ましいことが知られた。このようなくず送り出し突起により、穿孔くずを次のような具合に排出することができる。すなわち、締付あごを締付の位置・姿勢から開放の位置・姿勢へシフトさせる際、穿孔運転中に発生する遠心力でもって半径方向外側へと送り出された穿孔くずは、締付あごに備えられたくず送り出し突起によって、対応するくず排出開口から排出される。これに関連して、くず排出開口が、閉じ止め板を、半径方向または軸方向に貫くように設けられているならば、やはり、好ましいことが知られた。このように設けることで、ドリルチャック内に入り込んだ穿孔くずは、効果的にドリルチャックから排出される。しかしながら、本発明の枠内において、くず排出開口は、閉じ止め板を斜めに貫くように設けられていてもよい。例えば、閉じ止め板における、水平壁部分と、この外縁またはその近傍から下方へと延びる垂直壁部分との間に、くず排出開口が設けられていても良い。特には、水平壁部分と垂直壁部分との間に傾斜壁が備えられ、この部分に、くず排出開口が設けられていても良い。
【0013】
また、本発明の枠内で、次のようであると好ましいことが知られた。すなわち、くず送り出し経路を形成すべく、閉じ止め板の内面が、締付あごの後端部に面した領域内にて、くず送り出し面に一致または対応する輪郭を有していれば、好ましいということが知られた。このようなくず送り出し経路であると、ドリルチャック内に存在する穿孔くずが、半径方向外方へと送り出す上で好ましい。このようであると、締付あごによるつかみ径(工具をつかんで締め付けた状態での工具の径)の関数として、くず送り出し経路の開き寸法(締付あごと閉じ止め板との間の間隔)が変化する。すなわち、つかみ込む工具の径が小さくなるにつれて、くず送り出し経路の開き寸法が小さくなる。開放の位置・姿勢において、好ましくは、穿孔くずが案内通路内に新たに入り込むのを防ぐべく、くず送り出し経路が完全に閉じられている。
【0014】
また、次のようであれば好ましいことが知られた。すなわち、閉じ止め板における、スピンドル受入部とは逆の側であって、くず排出開口に相当する周方向領域内に、案内通路の方向と一致する方向に延びる案内面が備えられているならば、好ましいことが知られた。具体的には、閉じ止め板における水平壁部分の内縁から下方へと延びる壁が、案内通路の方向と一致する方向に延びるとともに、案内通路の壁面に連続する案内面をなす。このようにして、この案内面と、締付あごの内側の面(横断面にて曲面または平面)との間に、くず排出用の案内路をなし、くず送り出し経路の内側端部へと送り出すことができる。上記のようであると、締付の位置・姿勢から開放の位置・姿勢へと締付あごの位置・姿勢をシフトさせる際に、案内通路内に存在する穿孔くずは、締付あごによって特に効果的に、案内面に沿ってくず排出開口へと案内され、これによってドリルチャックから導出される。
【0015】
以下に本発明を、図面に示した実施例を用いて詳しく説明する。
【0016】
図1は、本発明による、第1の実施形態のドリルチャック1についての部分断面・側面図を示す。ドリルチャック1はチャック駆幹体2を有しており、このチャック駆幹体2は、その後端部にスピンドル受入部3を有している。チャック駆幹体2内における、チャック軸5に対して斜めに延びる案内通路4内に、複数の締付あご6がズレ動き可能に案内されている。これら締付あご6における外向き歯切部7は、チャック駆幹体2に沿って回転可能に案内されているネジ切リング9における締付ネジ切部8と噛み合っている。ここで、ネジ切リング9の位置・姿勢のシフトは、チャック駆幹体2を外周側から包み込んでいる締付スリーブ10を通じて行われる。締付あご6の後端には、外向き歯切部7の後端から内側へと、前方に向かって斜めに延びる、くず送り出し面11が備えられる。このくず送り出し面11は、次のような役割を果たす。すなわち、ドリルチャック1内に存在する穿孔くずを、穿孔運転中に発生する遠心力によって半径方向外側へと送り出し、ドリルチャックの後端に取り付けられた閉じ止め板12の側へと排出する役割を果たす。図示の実施形態において、くず送り出し面11は、断面が弓状ないし湾入状である一つの湾曲面13からなる。この湾曲面13は、曲率半径が一定でなく、図示の具体例において、半径方向外側端の近傍にて曲率半径が大きくなっている。また、ここで、湾曲面13の両端をつなぐ、弦状の線は、チャック軸5の垂線に対して5°の角度αを有している。やはり図面から知られるように、くず送り出し面11が傾斜していることにより、案内通路4内に収納された締付あご6をチャック軸5に投影した場合の寸法、すなわち、チャック軸方向の締付あご6の寸法も短くなっている。これにより、チャック駆幹体2をより短く構成することができ、ドリルチャック1の長さをより短くすることができる。ドリルチャック1内に入り込んだ穿孔くずを効果的に排出できるようにするべく、閉じ止め板12には、複数のくず排出開口14が備え付けられている。これらのくず排出開口14は、次のように、閉じ止め板12に配置されている。すなわち、くず排出開口14は、それぞれの締付あご6に備え付けられた、くず送り出し突起15と組み合わさって作動するように配置されている。これにより、ドリルチャック1内に入り込んだ穿孔くずは、締付あご6を締付の位置・姿勢から開放の位置・姿勢へとシフトさせる際に、対応するくず排出開口14から効果的に排出され得る。好ましいいくつかの実施形態において、閉じ止め板12は、リング状の水平壁部分と、その外縁から下方へと延びるリング状の垂直壁部分とからなり、チャック軸に沿った半断面において、半径方向外側の部分が、逆L字状である。そして、
図1に示した実施形態において、くず排出開口14は、閉じ止め板12を軸方向に貫くように配置されている。また、閉じ止め板12は、締付あご6の後端に面した領域内に、くず送り出し面11に対応する輪郭16を有している。すなわち、閉じ止め板12の下面における、チャック軸方向から見て締付あご6の後端面と重なる領域は、チャック軸に沿った断面において、締付あご6の後端面(くず送り出し面11)に並行に延びている。言い換えるならば、当該断面において、一方をチャック軸方向にずらしたなら重なり合うような形状を互いに有している。これにより、ドリルチャック1内の穿孔くずを効果的に半径方向へ送り出して、ドリルチャックから排出することができるようにするための、くず送り出し経路17が形成されている。
【0017】
図1は、ヨーロッパ特許EP0710518B(日本特許3774793)に詳しく記載された半径方向のインターロック機構を備えたドリルチャックを示している。このインターロック機構についての記載が、本出願に、明示的に引用される。半径方向のインターロック機構は、U字部分を有するばね部材からなる係止部材20を有している。この係止部材は、締付スリーブ10の内側面に形成された切替・調整カム面によって位置・姿勢がシフトされる。係止部材は、具体的には、板ばねの周方向の先端部が、チャック駆幹体2の外周面に設けられた歯切り部に噛み合って、チャック駆幹体2と、締付スリーブ10との間の回転を阻止するものである。この板ばねにおける、半径方向外側に膨出するU字部分は、締付スリーブ10を締付方向に回転させて、その内側面の切替・調整カム面によって、内側へと押し入れられた際に、回転を阻止するように噛み合う。また、締付スリーブ10を締付解除方向に回転させた際に、切替・調整カム面によって、U字部分が外側へと出て来て、噛み合いが解除され、締付スリーブ10とチャック駆幹体2との間の回転を許容する。このような構成により、特には、締付スリーブ10を手でつかんで回転させるだけで、係止及びその解除を行うことができる。半径方向のインターロック機構を備えるドリルチャックにおいて、特には、プラスチックからなる切替・調整カム面内に堆積した穿孔くずは、半径方向インターロック機構の機能を損ない、摩耗を大きくする。そのため、本発明は、このように有用性の高いドリルチャックにおいて特別な利点が得られる。というのは、このような摩耗は、ドリルチャックそのものに備えられたクリーニング機能により、ドリルチャックを開放するごとに、すなわち、工具を交換するごとに、減少するからである。
【0018】
図2には、
図1に示した、本発明による、第1の実施形態のドリルチャック1における後端から見た平面図を示す。ドリルチャックの後端面のみが現れるこの平面図から、特には、次のことが知られる。すなわち、複数のくず排出開口14が規則的に配置されており、これらくず排出開口14が閉じ止め板12内を軸方向に延びるということが知られる。また、
図2から次のことが知られる。すなわち、くず排出開口14は、締付あご6対する配置に関して、締付あご6を締付の位置・姿勢から開放の位置・姿勢へとシフトさせる際に、水平エッジ状のくず送り出し突起15と、くず排出開口14とが組み合わさって作用を行うように位置決めされていることが知られる。図示の例で、くず排出開口14は、締付あごと同数であり、円弧状に多少湾曲したスリット状である。このようにくず送り出し突起15とくず排出開口14とが組み合わさって行う作用により、入り込んでいた穿孔くずをドリルチャック1からくず排出開口14を通して送り出すようにするのである。なお、
図1に示す例において、閉じ止め板12は、くず排出開口14の領域において、環状の水平壁部分の内縁から、斜めに下方へと延びる部分が、案内通路4と同一の方向に延びて案内面19をなす。図示の具体例で、閉じ止め板12は、チャック駆幹体2の上端の係合用の切欠き部に嵌まり込む、断面逆U字状の係合部を備え、この係合部における半径方向外側の面が、上記の案内面19をなす。この案内面19は、チャック軸に沿った断面において、チャック駆幹体2における、案内通路4の側の面と、面一(つらいち)となっている。なお、締付あご6の横断面が、チャック駆幹体2の側で円形状等の丸い形状であれば、案内面19、及びこれに連続するチャック駆幹体2の面も、横断面において、締付あご6の形状に合わせた、丸い形状とすることができる。
【0019】
図3には、本発明による、第2実施形態のドリルチャック1を示す。本実施形態においては、前方に向かって傾斜したくず送り出し面11は、一つの平坦面18からなる。この平坦面18は、チャック軸5に垂直な面に対して5°の角度αを有している。
図1に示した実施形態と同様に、閉じ止め板12は、締付あご6の後端部に面した領域にて、やはり、平坦面18として形成されたくず送り出し面11に対応する輪郭16を有している。これによって、くず送り出し経路17が形成されている。
図4に示された、ドリルチャック1についての後端から見た平面図(後端部のみが現れる平面図)でも知られるように、図示の実施形態においても、くず排出開口14の位置は、本発明によるドリルチャック1のくず送り出し突起15の位置と合わせられている。このようにして、同様に、締付あご6を締付の位置・姿勢から開放の位置・姿勢へとシフトさせる際にドリルチャック1から穿孔くずを効果的に排出することができるようにするためである。
【0020】
図5は、本発明による、第3の実施形態のドリルチャック1において、くず排出開口14が半径方向に設けられている様子を示す。
図6に示す、ドリルチャック1の後端からの平面図から知られるように、ドリルチャック1の後端面には、くず排出開口14が設けられていない。これら以外の点では、
図3に示す第2の実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0021】
1…ドリルチャック; 2…チャック駆幹体; 3…スピンドル受入部;
4…チャック駆幹体; 5…チャック軸; 6…締付あご;
7…外向き歯切部; 8…締付ネジ切部; 9…ネジ切リング;
10…締付スリーブ; 11…くず送り出し面; 12…閉じ止め板;
13…湾曲面; 14…くず排出開口; 15…くず送り出し突起;
16…輪郭; 17…くず送り出し経路; 18…平坦面;
19…閉じ止め板の案内面; 20…ばね部材からなる係止部材