特許第6385700号(P6385700)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385700
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】オイルリング
(51)【国際特許分類】
   F16J 9/20 20060101AFI20180827BHJP
   F16J 9/06 20060101ALI20180827BHJP
   F02F 5/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   F16J9/20
   F16J9/06 A
   F02F5/00 301A
   F02F5/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-73980(P2014-73980)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-197121(P2015-197121A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2017年3月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000139023
【氏名又は名称】株式会社リケン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】阿部 豊
(72)【発明者】
【氏名】中村 太亮
(72)【発明者】
【氏名】藤田 正顕
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−074704(JP,A)
【文献】 特開2011−058373(JP,A)
【文献】 特許第5030165(JP,B2)
【文献】 特開昭61−045172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 9/00 − 9/28
F02F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通油孔が設けられたウェブ部と該ウェブ部の軸方向両側に一体に設けられる一対のレール部とを備え、合口を有する円環状に形成されたオイルリング本体と、該オイルリング本体の径方向内側部分に装着され、前記オイルリング本体を径方向外側に向けて付勢するコイルエキスパンダーと、を有するオイルリングであって、
一方の前記レール部の径方向外側を向く外周面の軸方向外側縁と、他方の前記レール部の径方向外側を向く外周面の軸方向外側縁との間の軸方向距離が、前記オイルリング本体の軸方向幅寸法の70%以下であり、
一対の前記レール部のランドの前記ウェブ部に対する径方向外側への突出する厚みが、前記オイルリング本体の径方向厚み寸法の40%以上であり、
前記オイルリング本体のその周方向に垂直な断面における径方向重心位置から前記コイルエキスパンダーのその周方向に垂直な断面における径方向重心位置までの径方向距離が、前記オイルリング本体の径方向厚み寸法の55%未満であることを特徴とするオイルリング。
【請求項2】
一対の前記レール部の外周面の軸方向幅寸法が、それぞれ前記オイルリング本体の軸方向幅寸法の5.0%〜10.0%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のオイルリング。
【請求項3】
前記ウェブ部の径方向厚み寸法が、前記オイルリング本体の径方向厚み寸法の25%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のオイルリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レシプロエンジン(往復動内燃機関)のピストンに用いられるオイルリングに関し、特に、合口を有する円環状に形成されたオイルリング本体の径方向内側部分にコイルエキスパンダーを装着してなる2ピースタイプのものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レシプロエンジンのピストンには、燃焼ガスをシールするためのコンプレッションリングに加えて、潤滑用のオイルをシールするためのオイルリングが装着されている。
【0003】
オイルリングには、主としてガソリンエンジンに用いられる3ピースタイプのものと、主としてディーゼルエンジンに用いられる2ピースタイプのものとがあるが、低燃費化等の要請から、ガソリンエンジンにおいても、より軸方向幅を薄型化することが可能な2ピースタイプのオイルリングが用いられるようになってきている。
【0004】
このような2ピースタイプのオイルリングとしては、例えば特許文献1に記載されるように、通油孔が設けられたウェブ部とこのウェブ部の軸方向両側(上下)に一体に設けられた一対のレール部とを有するオイルリング本体と、このオイルリング本体の径方向内側部分に装着されてオイルリング本体を径方向外側に向けて付勢するコイルエキスパンダーの2つのパーツで構成されたものが知られている。この場合、オイルリング本体は合口を有する円環状に形成され、コイルエキスパンダーにより径方向外側に向けて付勢されることで拡張(拡径)できるようになっており、オイルリング本体が拡張し、各レール部の外周面がシリンダ内面に一定の接触圧力(面圧)で接触することにより、ピストンが往復動したときに、一対のレール部の間に滞留するオイルをシリンダ内面に塗布するとともに余分なオイルをレール部により掻き落としつつ通油孔を通して排出して、シリンダ内面に適切な厚みの油膜を形成するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−45172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来のオイルリングでは、潤滑用のオイルのオイル上がりを効果的に抑制してオイル消費量を低減させるために、シリンダ内面に対する面圧はコンプレッションリングに比べて数倍高くなるように設定されている。
【0007】
一方、エンジンの低燃費化の観点から、オイルリングには、シリンダ内面に対するフリクションの低減が求められており、そのためにはオイルリングを低張力化してシリンダ内面に対するシール部の面圧を下げることが必要である。
【0008】
しかしながら、オイルリングを低張力化すると、ピストンが傾動(首振り)したときの各レール部のシリンダ内面への追従性が低下してオイル消費量が増大することになるので、低張力化によるフリクション低減とオイル消費量低減とを両立させることは困難であった。
【0009】
本発明は、このような点を解決することを課題とするものであり、その目的は、低張力でありながらオイル消費量低減能力が優れたオイルリングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、上記の課題の解決手段につき鋭意究明したところ、低張力でありながらオイル消費量低減能力を高めるには、オイルリング本体をシリンダ内面に対する追従性が高い形状とすることが肝要であり、そのために、一方のレール部の径方向外側を向く外周面の軸方向外側縁と、他方のレール部の径方向外側を向く外周面の軸方向外側縁との間の軸方向距離を、オイルリング本体の軸方向幅寸法の70%以下とし、一対のレール部のランドのウェブ部に対する径方向外側への突出する厚みを、オイルリング本体の径方向厚み寸法の40%以上とし、オイルリング本体のその周方向に垂直な断面における径方向重心位置からコイルエキスパンダーのその周方向に垂直な断面における径方向重心位置までの径方向距離を、オイルリング本体の径方向厚み寸法の55%未満とすることが最も効果的であることを新規に知見し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明のオイルリングは、通油孔が設けられたウェブ部と該ウェブ部の軸方向両側に一体に設けられる一対のレール部とを備え、合口を有する円環状に形成されたオイルリング本体と、該オイルリング本体の径方向内側部分に装着され、前記オイルリング本体を径方向外側に向けて付勢するコイルエキスパンダーと、を有するオイルリングであって、一方の前記レール部の径方向外側を向く外周面の軸方向外側縁と、他方の前記レール部の径方向外側を向く外周面の軸方向外側縁との間の軸方向距離が、前記オイルリング本体の軸方向幅寸法の70%以下であり、一対の前記レール部のランドの前記ウェブ部に対する径方向外側への突出する厚みが、前記オイルリング本体の径方向厚み寸法の40%以上であり、前記オイルリング本体のその周方向に垂直な断面における径方向重心位置から前記コイルエキスパンダーのその周方向に垂直な断面における径方向重心位置までの径方向距離が、前記オイルリング本体の径方向厚み寸法の55%未満であることを特徴とする。
【0012】
なお、上記構成において、「オイルリング本体が合口を有する円環状」とは、円環状のオイルリング本体が、その周方向の一部分において切断されて当該切断部分が合口となったC字形状に形成されていることを意味する。
【0013】
また、上記構成において、「一方の前記レール部の径方向外側を向く外周面の軸方向外側縁と、他方の前記レール部の径方向外側を向く外周面の軸方向外側縁との間の軸方向距離」とは、一方のレール部の外周面と他方のレール部の外周面の互いに軸方向に最も離れた部分間の距離を意味する。
【0014】
本発明は、上記構成において、一対の前記レール部の外周面の軸方向幅寸法が、それぞれ前記オイルリング本体の軸方向幅寸法の5.0%〜10.0%の範囲内であるのが好ましい。好ましくは5.0%〜8.0%の範囲である。
【0015】
また、本発明は、上記構成において、前記ウェブ部の径方向厚み寸法が、前記オイルリング本体の径方向厚み寸法の25%以下であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、オイルリング本体をシリンダ内面に対する追従性が高い形状とすることにより、オイルリングを低張力化してシリンダ内面に対するフリクションを低減させつつオイルリング本体を効果的にシリンダ内面に追従させてオイル消費量を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施の形態であるオイルリングの平面図である。
図2図1におけるA−A線に沿う断面図である。
図3図1に示すオイルリングの一部を径方向外側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に例示説明する。
【0020】
図1に示す本発明の一実施の形態であるオイルリング1はオイルコントロールリングとも呼ばれるものであり、例えばディーゼルエンジンのピストンの外周面に形成されたリング溝に装着されて使用される。このオイルリング1は2ピースタイプとなっており、オイルリング本体10とコイルエキスパンダー20とを有している。
【0021】
オイルリング本体10は、鋼材により合口を備えた円環状つまり周方向の一部分が切断されて当該切断部分が合口10a、10bとなったC字形状に形成されている。合口10a、10bが形成されることにより、オイルリング本体10は、これらの合口10a、10bを互いに周方向に離間させるように弾性変形して、径方向外側に向けて拡張(拡径)することができる。また、オイルリング本体10は、ピストンに装着された状態でシリンダ内に配置されると、合口10a、10bが閉じた略円環状となってピストンの全周に亘ってオイルをシールすることができる。
【0022】
図2図3に示すように、オイルリング本体10はウェブ部11、上側のレール部12および下側のレール部13を有し、その断面は略I字形状となっている。
【0023】
ウェブ部11は薄肉の円筒状に形成され、その軸方向の中央位置には複数の通油孔14が周方向に間隔を空けて並べて設けられている。これらの通油孔14はそれぞれ周方向の延びる長孔に形成され、ウェブ部11を径方向に貫通している。
【0024】
上側のレール部12はウェブ部11の軸方向の一方側に該ウェブ部11と一体に設けられ、下側のレール部13はウェブ部11の軸方向の他方側に該ウェブ部11と一体に設けられている。各レール部12、13の径方向厚み寸法は、それぞれウェブ部11の径方向厚み寸法よりも大きくなっており、ウェブ部11は各レール部12、13の径方向中間部位において当該レール部12、13に連ねられている。各レール部12、13のウェブ部11よりも径方向外側に突出した部分はランド12a、13aとなっており、これらのランド12a、13aの径方向外側を向く外周面12b、13bは、それぞれシリンダ内面に接する摺動面となっている。各ランド12a、13aは、それぞれその基端側から外周面12b、13bの側に向けて徐々に軸方向幅が狭まる断面略台形状となっており、また、各外周面12b、13bはそれぞれオイルリング本体10の軸方向両端に対して当該オイルリング本体10の軸方向の中心位置側にずれて配置されている。
【0025】
各レール部12、13の外周面(摺動面)12b、13bには、例えば硬質クロムめっき、窒化(GNR)、イオンプレーティング(PVD)等の各種表面処理により硬質皮膜を形成するようにしてもよい。
【0026】
図2に示すように、オイルリング本体10の径方向内側部分(内周面)には、コイルエキスパンダー20を装着するための装着溝15が設けられている。この装着溝15は、ウェブ部11から両レール部12、13にまで達する半円形の凹断面を有し、周方向に沿ってオイルリング本体10の全周に亘って延びている。
【0027】
図1においては簡略化して示すが、コイルエキスパンダー20は、鋼材等により形成された線材をコイル状に巻いたものを、その両端を接続して円環状に形成して構成されている。このコイルエキスパンダー20は径方向内外方向に向けて弾性変形自在となっており、その自然状態における外径寸法はオイルリング本体10の内径寸法よりも大きくなっている。そして、コイルエキスパンダー20は、図2に示すように、縮径方向に弾性変形した状態でオイルリング本体10の装着溝15に装着されることにより、オイルリング本体10を径方向外側に向けて付勢している。
【0028】
なお、コイルエキスパンダー20の周方向に垂直な方向から見た半径は、オイルリング本体10の装着溝15の半径よりも僅かに小さくなっている。
【0029】
このような構成のオイルリング1は、ピストンのリング溝に装着されてシリンダ内に配置されると、オイルリング本体10が、その自己の弾性力に加えてコイルエキスパンダー20に付勢されることにより径方向外側に向けて拡張し、各レール部12、13の外周面12b、13bが所定の面圧でシリンダ内面に接触する。そして、ピストンが往復動したときに、上下のレール部12、13の間に滞留するオイルをシリンダ内面に塗布するとともに余分なオイルをレール部12、13により掻き落とし、また、上下のレール部12、13の間の過剰なオイルを、通油孔14を通してピストンのリング溝に設けられた排油孔に案内して、シリンダ内面に適切な厚みの油膜を形成することができる。
【0030】
図2に示すように、本発明のオイルリング1では、自己の弾性力とコイルエキスパンダー20の付勢力とによる張力(径方向外側に向けた弾性力)を低減しつつ、オイルリング本体10のシリンダ内面に対する追従性を高めてエンジンのオイル消費量を低減させることを可能とするために、上側のレール部12の外周面12bの軸方向外側縁と下側のレール部13の外周面13bの軸方向外側縁との間の軸方向距離D1を、オイルリング本体10の軸方向幅寸法w1の70%以下に設定するようにしている。つまり、上側のレール部12の外周面12bと下側のレール部13の外周面13bの互いに軸方向に最も離れた部分間の軸方向距離D1を、オイルリング本体10の軸方向幅寸法w1の70%以下に設定することにより、オイルリング本体10の軸方向幅寸法w1よりも狭い幅でオイルリング本体10をシリンダ内面に当接させるようにしている。特に、本実施の形態においては、上記した軸方向距離D1を、オイルリング本体10の軸方向幅寸法w1の66%に設定するようにしている。
【0031】
このような構成により、ピストンが傾動(首振り)したときにおけるオイルリング本体10のシリンダ内面に対する追従性を高くすることができる。つまり、ピストンが傾動すると、一対のレール部12、13の何れか一方がシリンダ内面に接し、他方がシリンダ内面から離れることになるが、このとき、軸方向距離D1を、オイルリング本体10の軸方向幅寸法w1の70%以下に設定することにより、シリンダ内面に対するピストンの傾きが同じであっても、上側のレール部12の外周面12bの軸方向外側縁と下側のレール部13の外周面13bの軸方向外側縁との間の軸方向距離D1が軸方向幅寸法w1と同一とされる場合に比べて、シリンダ内面からのレール部12、13の離間距離を小さくすることができる。したがって、オイルリング1を低張力化してシリンダ内面に対するフリクションを低減させた構成としても、運転中においてピストンが傾動(首振り)したときにオイルリング本体10、つまり各レール部12、13の外周面12b、13bをシリンダ内面に効果的に追従させることができる。したがって、このオイルリング1が用いられたエンジンのオイル消費量を低減させることができる。このように、オイルリング本体10をシリンダ内面に効果的に追従させることができるので、コイルエキスパンダー20としてより弾性力の小さなものを用いる等して、このオイルリング1を低張力化しても、オイル上がりを効果的に抑制して、このオイルリング1のオイル消費量を低減させることができる。
【0032】
本発明のオイルリング1では、上側のレール部12の外周面12bの軸方向外側縁と下側のレール部13の外周面13bの軸方向外側縁との間の軸方向距離D1を、オイルリング本体10の軸方向幅寸法w1の70%以下に設定する構成に加えて、上側のレール部12の外周面12bの軸方向幅寸法w2と下側のレール部13の外周面13bの軸方向幅寸法w2とを、それぞれオイルリング本体10の軸方向幅寸法w1の5.0%〜10.0%の範囲内とするのが好ましい。例えば、本実施の形態では、軸方向幅寸法w2をオイルリング本体10の軸方向幅寸法w1の8.0%に設定するようにしている。
【0033】
このように、レール部12、13の外周面12b、13bの軸方向幅寸法w2を、それぞれオイルリング本体10の軸方向幅寸法w1の5.0%〜10.0%の範囲内とすることにより、過度に弾性力が大きなコイルエキスパンダー20を用いることなく、オイルリング本体10のサイズに対して適切な面圧で各レール部12、13の外周面12b、13bをシリンダ内面に当接させることができる。したがって、上記のように、上側のレール部12の外周面12bの軸方向外側縁と下側のレール部13の外周面13bの軸方向外側縁との間の軸方向距離D1をオイルリング本体10の軸方向幅寸法w1の70%以下に設定することにより、オイルリング1を低張力化するようにしても、レール部12、13の外周面12b、13bをシリンダ内面に所定の面圧で当接させてオイル上がりを効果的に抑制し、このオイルリング1のオイル消費量をさらに低減させることができる。
【0034】
なお、上記した軸方向距離D1を、オイルリング本体10の軸方向幅寸法w1の70%以下に設定するとともに、各レール部12、13の外周面12b、13bの軸方向幅寸法w2を、オイルリング本体10の軸方向幅寸法w1の5.0%〜10.0%の範囲内とすることにより、上側のレール部12の外周面12bと下側のレール部13の外周面13bの間隔は、オイルリング本体10の軸方向幅寸法w1の60%以下に設定されることになる。この場合、上側のレール部12の外周面12bと下側のレール部13の外周面13bの間隔を、オイルリング本体10の軸方向幅寸法w1の60%以下であるとともに、当該軸方向幅寸法w1の20%以上とすることにより、オイルリング本体10のシリンダ内面に対する追従性を確保しつつ、ウェブ部11に設けられる通油孔14の開口面積を十分に確保することができる。
【0035】
本発明のオイルリング1では、上側のレール部12の外周面12bの軸方向外側縁と下側のレール部13の外周面13bの軸方向外側縁との間の軸方向距離D1を、オイルリング本体10の軸方向幅寸法w1の70%以下に設定する構成に加えて、ウェブ部11の径方向厚み寸法t2を、オイルリング本体10の径方向厚み寸法t1の25%以下とするのが好ましい。例えば、本実施の形態では、径方向厚み寸法t2をオイルリング本体10の径方向厚み寸法t1の20%に設定するようにしている。
【0036】
このように、ウェブ部11の径方向厚み寸法t2を、オイルリング本体10の径方向厚み寸法t1の25%以下とすることにより、ウェブ部11つまりオイルリング本体10の断面二次モーメントを小さくして、ピストンが傾動(首振り)したときにオイルリング本体10を、ウェブ部11を中心として両レール部12、13の外周面12b、13bの間隔が増減するように変形し(撓み)易くすることができる。したがって、ピストンの傾動により径方向荷重を受けてウェブ部11が変形すると、シリンダ内面から離れていた方のレール部12、13の外周面12b、13bがシリンダ内面に接近することになるので、オイルリング本体10のシリンダ内面に対する追従性をさらに高めて、このオイルリング1のオイル消費量をさらに低減させることができる。
【0037】
また、上記のように、ウェブ部11の径方向厚み寸法t2をオイルリング本体10の径方向厚み寸法t1の25%以下とすることにより、上側のレール部12と下側のレール部13との間の空間を大きくするとともに、ウェブ部11に設けられた通油孔14からのオイルの排出性を高めることができる。したがって、上側のレール部12の外周面12bと下側のレール部13の外周面13bの互いに軸方向に最も離れた部分間の軸方向距離D1をオイルリング本体10の軸方向幅寸法w1の70%以下に設定することにより、上側のレール部12と下側のレール部13との間の空間が狭められても、当該空間を拡大するとともに当該空間内のオイルをウェブ部11の通油孔14から効率良く排出させることができる。したがって、上記軸方向距離D1をオイルリング本体10の軸方向幅寸法w1の70%以下に設定するようにしても、上側のレール部12と下側のレール部13との間の空間のオイルを効率よく排出させて当該空間におけるオイルの滞留を低減させ、このオイルリング1のオイル消費をさらに低減させることができる。
【0038】
なお、ウェブ部11の径方向厚み寸法t2は、オイルリング本体10の径方向厚み寸法t1の25%以下であるとともに10%以上とするのが好ましい。これにより、オイルリング本体10の変形性を確保しつつ、ウェブ部11の強度を確保してオイルリング本体10の破損を防止することができる。
【0039】
さらに、本発明のオイルリング1では、上側のレール部12の外周面12bの軸方向外側縁と下側のレール部13の外周面13bの軸方向外側縁との間の軸方向距離D1を、オイルリング本体10の軸方向幅寸法w1の70%以下に設定する構成に加えて、オイルリング本体10のその周方向に垂直な断面における径方向重心位置G1からコイルエキスパンダー20のその周方向に垂直な断面における径方向重心位置G2までの径方向距離D2を、オイルリング本体10の径方向厚み寸法t1の55%未満とするのが好ましい。
【0040】
このような構成により、ピストンが傾動したときにおけるオイルリング1の傾動方向への慣性モーメントを低減させて、オイルリング本体1のシリンダ内面に対する追従性をさらに高めることができる。
【0041】
また、径方向距離D2を小さくしてオイルリング本体10の重心位置G1とコイルエキスパンダー20の重心位置G2とを近づけることにより、ピストンが傾動する際にオイルリング本体10とコイルエキスパンダー20とに生じる慣性モーメントの差を小さくすることができる。したがって、コイルエキスパンダー20をオイルリング本体10から脱落し難くすることができるとともにコイルエキスパンダー20の装着溝15への装着性を高めることができる。
【0042】
このオイルリング1では、一対のレール部12、13のランド12a、13aのウェブ部11に対する径方向外側への突出する厚みt3を、オイルリング本体10の径方向厚み寸法t1の40%以上に設定することができる。例えば、本実施の形態では、この厚みt3を、オイルリング本体10の径方向厚み寸法t1の42.5%に設定するようにしている。
【0043】
このように、ランド12a、13aのウェブ部11に対する径方向外側への突出する厚みt3を、オイルリング本体10の径方向厚み寸法t1の40%以上に設定することにより、上記した軸方向距離D1をオイルリング本体10の軸方向幅寸法w1の70%以下に設定することにより上側のレール部12と下側のレール部13との間の空間が狭められても、その分、当該空間を拡大することができる。これにより、上側のレール部12と下側のレール部13との間の空間内におけるオイルの滞留を低減させて、このオイルリング1のオイル消費をさらに低減させることができる。
【0044】
図3に示すように、このオイルリング1では、ウェブ部11に設けられた複数の通油孔14の軸方向に向けた開口高さhを、オイルリング本体10の軸方向幅寸法w1の25%以下に設定することができる。例えば、本実施の形態では、通油孔14の開口高さhを、オイルリング本体10の軸方向幅寸法w1の21.5%に設定するようにしている。また、通油孔14の周方向に向けた開口幅Lを、複数の通油孔14の周方向へのピッチPに対して20%以上とすることができる。例えば、本実施の形態では、開口幅Lを、複数の通油孔14の周方向へのピッチPに対して約31.4%に設定するようにしている。
【0045】
このような構成により、通油孔14による上側のレール部12と下側のレール部13との間の空間からのオイルの排出性を高めることができるので、上記した軸方向距離D1をオイルリング本体10の軸方向幅寸法w1の70%以下に設定することにより上側のレール部12と下側のレール部13との間の空間が狭められても、当該空間のオイルを通油孔14から効率よく排出させることができる。これにより、上側のレール部12と下側のレール部13との間の空間内におけるオイルの滞留を低減させて、このオイルリング1のオイル消費をさらに低減させることができる。
【0046】
これらの通油孔14は、レーザー加工や電子ビーム加工を用いて形成される構成とすることができる。上記した軸方向距離D1をオイルリング本体10の軸方向幅寸法w1の70%以下に設定することにより上側のレール部12と下側のレール部13との間の空間が狭められても、レーザー加工や電子ビーム加工により、ウェブ部11に複数の通油孔14を精度良く形成することができる。したがって、軸方向距離D1をオイルリング本体10の軸方向幅寸法w1の70%以下に設定してオイルリング本体10のシリンダ内面に対する追従性を高めるとともに、上側のレール部12と下側のレール部13との間の空間のオイルを通油孔14から効果的に排出させて、このオイルリング1のオイル消費をさらに低減させることができる。
【実施例】
【0047】
実施例のオイルリングでは、オイルリング本体の軸方向幅寸法を2.00mm、上側のレール部の外周面の軸方向外側縁と下側のレール部の外周面の軸方向外側縁との間の軸方向距離を1.32mm、各レール部の外周面の軸方向幅寸法を0.16mm、オイルリング本体の径方向厚み寸法を2.00mm、ウェブ部の径方向厚み寸法を0.40mm、ランドの厚みを0.85mm、オイルリング本体のその周方向に垂直な断面における径方向重心位置からコイルエキスパンダーのその周方向に垂直な断面における径方向重心位置までの径方向距離を1.04mmとした。この場合、上側のレール部の外周面の軸方向外側縁と下側のレール部の外周面の軸方向外側縁との間の軸方向距離はオイルリング本体の軸方向幅寸法の66%となり、各レール部の外周面の軸方向幅寸法はオイルリング本体の軸方向幅寸法の8%となり、ウェブ部の径方向厚み寸法はオイルリング本体の径方向厚み寸法の20%となり、オイルリング本体のその周方向に垂直な断面における径方向重心位置からコイルエキスパンダーのその周方向に垂直な断面における径方向重心位置までの径方向距離はオイルリング本体の径方向厚み寸法の52%となる。
【0048】
また、本実施例では、ウェブ部に設けられた通油孔の開口高さを0.43mm、開口幅を1.10mm、複数の通油孔間のピッチを3.50mmとした。
【0049】
さらに、本実施例では、各レール部の互いに対向する内側側面つまり外周面とウェブの通油孔が開口する外周面とを連ねる側面は、径方向に対して10度の角度で傾斜しており、また、当該側面とウェブの外周面とが連なる部分には半径0.10mmのRがつけられている。一方、各レール部の互い反対側を向く外側側面は、径方向に対して18度の角度で傾斜している。
【0050】
次に、本実施例の比較例として、上側のレール部の外周面の軸方向外側縁と下側のレール部の外周面の軸方向外側縁との間の軸方向距離がオイルリング本体の軸方向幅寸法の70%以上となるオイルリングを示す。この比較例のオイルリングでは、オイルリング本体の軸方向幅寸法は2.00mm、上側のレール部の外周面の軸方向外側縁と下側のレール部の外周面の軸方向外側縁との間の軸方向距離は1.74mm、各レール部の外周面の軸方向幅寸法は0.22mm、オイルリング本体の径方向厚み寸法は2.00mm、ウェブ部の径方向厚み寸法は0.55mm、ランドの厚みは0.70mm、オイルリング本体のその周方向に垂直な断面における径方向重心位置からコイルエキスパンダーのその周方向に垂直な断面における径方向重心位置までの径方向距離は1.10mmである。この場合、上側のレール部の外周面の軸方向外側縁と下側のレール部の外周面の軸方向外側縁との間の軸方向距離はオイルリング本体の軸方向幅寸法の87%となり、各レール部の外周面の軸方向幅寸法はオイルリング本体の軸方向幅寸法の11%となり、ウェブ部の径方向厚み寸法はオイルリング本体の径方向厚み寸法の27.5%となり、オイルリング本体のその周方向に垂直な断面における径方向重心位置からコイルエキスパンダーのその周方向に垂直な断面における径方向重心位置までの径方向距離はオイルリング本体の径方向厚み寸法の55%となる。
【0051】
また、本比較例では、ウェブ部に設けられた通油孔の開口高さは0.50mm、開口幅は1.50mm、複数の通油孔間のピッチは10.00mmである。
【0052】
さらに、本比較例では、各レール部の互いに対向する内側側面つまり外周面とウェブの通油孔が開口する外周面とを連ねる側面は、径方向に対して10度の角度で傾斜しており、また、当該側面とウェブの外周面とが連なる部分には半径0.15mmのRがつけられている。一方、各レール部の互い反対側を向く外側側面は、径方向に対して20度の角度で傾斜している。
【0053】
実施例、比較例の何れのオイルリングも、ディーゼルエンジンのピストンに装着して用いられるものとし、その材質をスチール(鋼材)とした。また、実施例と比較例とで、コイルエキスパンダーは、コイル直径が1.6mmの同一のものを用い、同じ面圧が発生するようコイルの弾性力を調整した。
【0054】
実施例のオイルリングと比較例のオイルリングをそれぞれディーゼルエンジンのピストンに装着し、当該ディーゼルエンジンを所定の回転数および負荷で運転させたときのオイル消費量を測定し、その結果を比較した。その比較結果から、実施例のオイルリングは、比較例のオイルリングに対して、そのオイル消費量が約15%低減されることが解った。
【0055】
このように、実施例のオイルリングでは、オイルリング本体の軸方向幅寸法が2.00mmと薄く形成されたオイルリングにおいても、上側のレール部の外周面の軸方向外側縁と下側のレール部の外周面の軸方向外側縁との間の軸方向距離をオイルリング本体の軸方向幅寸法の70%以下に設定して、オイルリング本体10のシリンダ内面に対する追従性を高め、そのオイル消費量を低減できることが解った。
【0056】
また、実施例のオイルリングでは、オイルリング本体の軸方向幅寸法が2.00mmと薄く形成されたオイルリングにおいて、上側のレール部の外周面の軸方向外側縁と下側のレール部の外周面の軸方向外側縁との間の軸方向距離をオイルリング本体の軸方向幅寸法の70%以下に設定するようにしても、上側のレール部と下側レール部との間の空間におけるオイルの滞留を抑制し、これによりオイル上がりを抑制して、そのオイル消費量を低減できることが解った。
【0057】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0058】
例えば、前記実施の形態においては、本発明のオイルリングをディーゼルエンジンのピストンに装着されるものとして説明しているが、これに限らず、ガソリンエンジンのピストンに装着されるオイルリングに本発明を適用することもできる。
【0059】
また、前記実施の形態においては、各レール部12、13の外周面12b、13bは軸方向に垂直な平坦面に形成されているが、これらの外周面12b、13bを軸方向および径方向の両方向に対して傾斜する傾斜面に形成したり、凸状または凹状に湾曲する湾曲面に形成したりするなお、その形状は種々変更することができる。この場合、外周面12b、13bの軸方向外側縁は、当該外周面12b、13bのピストンの傾動に伴ってシリンダ内面に接する部分のうち、軸方向の最も外側の部分となる。
【0060】
さらに、オイルリング本体10の材質は鋼材に限らず他の材質とすることもでき、また、オイルリング本体10のレール部12、13の外周面12b、13b以外の部分の表面にも種々の表面処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0061】
1 オイルリング
10 オイルリング本体
10a、10b 合口
11 ウェブ部
12 上側のレール部
12a ランド
12b 外周面
13 下側のレール部
13a ランド
13b 外周面
14 通油孔
15 装着溝
20 コイルエキスパンダー
w1、w2 軸方向幅寸法
D1 軸方向距離
D2 径方向距離
t1、t2、t3 径方向厚み寸法
h 開口高さ
L 開口幅
P ピッチ
図1
図2
図3