特許第6385719号(P6385719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385719
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
   G01N27/409 100
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-111162(P2014-111162)
(22)【出願日】2014年5月29日
(65)【公開番号】特開2015-225020(P2015-225020A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116090
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】田口 政孝
(72)【発明者】
【氏名】浅井 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】高田 歩
(72)【発明者】
【氏名】足立 直樹
(72)【発明者】
【氏名】安田 功二郎
【審査官】 大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−033034(JP,A)
【文献】 特開2010−181347(JP,A)
【文献】 特開2012−233787(JP,A)
【文献】 特開2014−035242(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0190829(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/406 − 27/419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延び、先端部が被測定ガスに晒されるガスセンサ素子であって、有底筒状の素子本体と、該ガスセンサ素子の先端部から後端部にわたって、該素子本体の外表面に設けられた外側電極と、を有するガスセンサ素子と;
前記ガスセンサ素子の後端部を径方向から包囲して前記外側電極と電気的に接続される筒状部であって、前記ガスセンサ素子の後端部に自身を外嵌した際に弾性力によって拡径する筒状部と、該筒状部の先端縁に周方向にわたって断続的に接続すると共に、該先端縁から径方向外側に広がりつつ先端側に向かって延びる複数のガイド片と、を有する外側端子と;
を備えたガスセンサであって、
前記ガスセンサ素子の前記後端部には、前記素子本体の前記外表面が後端側に向かってテーパ状に窄まるストレート部と、
該ストレート部の後端側に繋がり、前記素子本体の前記外表面が後端側に向かって該ストレート部よりも窄まると共に、径方向内側に湾曲する湾曲部と、が形成されているガスセンサ。
【請求項2】
前記ストレート部の外表面と前記湾曲部の外表面とは滑らかに繋がる請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記ストレート部のテーパ角θ2は、前記ガイド片の開き角θ1よりも小さい請求項1又は請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記ガスセンサ素子に外嵌される前の自由状態での前記筒状部の先端縁の内径d1は、前記ストレート部と前記湾曲部との接続点における前記素子本体の外径d2以上である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出ガスの濃度を検出するガスセンサ素子を備えたガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の排気ガス中の特定ガス(酸素やNO)の濃度を検出するガスセンサとして、固体電解質を用いたガスセンサ素子を有するものが知られている。
図6に示すように、このガスセンサ素子300として、軸線方向に延びる筒状の素子本体300Sの外表面に外側電極(検知電極)300Cを設け、素子本体300Sの内孔300dの表面に内側電極(図示せず)を設けたものがある(特許文献1、2)。さらに外側電極300Cは、素子本体300Sの先端側の外側検知部300CSと、外側検知部300CSから後端に延びる線状のリード部300CLと、素子本体300Sの後端側に周方向の一部に延びるように設けられてリード部300CLと接続する接続部300CPとを有している。
そして、ガスセンサ素子300の後端側の外周面に、外側端子91の筒状部93を外嵌し、接続部300CPと筒状部93とを電気的に接続する。これにより、外側電極300Cの外側検知部300CSの検出信号を外側端子91から外部回路等に取り出すようになっている。
【0003】
ここで、筒状部93はスリットMを有する断面C字形状をなし、ガスセンサ素子300の後端部に自身を外嵌して拡開した際にバネ力によって筒状部93が縮まり、接続部300CPに押圧されるようになっている。
又、外側端子91の筒状部93の先端縁の周方向にわたって断続的に接続する複数のガイド片98が設けられ、ガイド片98は、径方向外側に広がりつつ先端側に向かって延びている。ガイド片98は、筒状部93をガスセンサ素子300に外嵌する際のガイドとなっている。又、素子本体300Sの接続部300CPよりも後端側には、後端側に向かってテーパ状に窄まる面取り部300eが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−233786号公報
【特許文献1】特開2014−38061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図7に示すように、筒状部93をガスセンサ素子300に外嵌する際、まず、素子本体300Sの面取り部300eの後端縁に位置する角部300pにガイド片98の内面が当接し、角部300pがガイド片98の内面を擦りながらガイド片98(筒状部93)を押し広げ、筒状部93内にガスセンサ素子300が挿入されるようになっている。
しかしながら、尖った形状の角部300pがガイド片98の内面に引っ掛るため、筒状部93の挿入荷重が過大になってそれ以上の挿入が困難になったり、ガイド片98が変形し、生産性や製品歩留りが低下するという問題がある。
【0006】
これに対し、例えば、素子本体の面取り部の後端縁の直径をより小さくし、筒状部をガスセンサ素子に外嵌する際に、角部がガイド片に接触しないようにすることが考えられる。これにより、面取り部が筒状部の先端縁(の内面)を擦りながらガイド片(筒状部)を押し広げ、筒状部内にガスセンサ素子が挿入されるようになる。よって、角部にガイド片の内面が引っ掛ること無く、筒状部の挿入荷重が過大になってそれ以上の挿入が困難になったり、ガイド片が変形したりすることを抑制できる。
【0007】
しかしながら、筒状部をガスセンサ素子に外嵌する際、筒状部の軸心がガスセンサ素子の軸心に対して径方向にずれてしまい、一部のガイド片の内面が径方向内側に配置した素子本体の角部に接触してしまう(以下、片当たりとも言う)虞がある。この場合、上述の問題と同様に、尖った形状の角部がガイド片の内面に引っ掛ることがあり、筒状部の挿入荷重が過大になってそれ以上の挿入が困難になったり、ガイド片が変形し、生産性や製品歩留りが低下するという問題がある。
【0008】
従って、本発明は、筒状のガスセンサ素子へ筒状の外側端子を外嵌する際の挿入荷重を低減し、生産性や製品歩留りを向上させたガスセンサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のガスセンサは、軸線方向に延び、先端部が被測定ガスに晒されるガスセンサ素子であって、有底筒状の素子本体と、該ガスセンサ素子の先端部から後端部にわたって、該素子本体の外表面に設けられた外側電極と、を有するガスセンサ素子と;前記ガスセンサ素子の後端部を径方向から包囲して前記外側電極と電気的に接続される筒状部であって、前記ガスセンサ素子の後端部に自身を外嵌した際に弾性力によって拡径する筒状部と、該筒状部の先端縁に周方向にわたって断続的に接続すると共に、該先端縁から径方向外側に広がりつつ先端側に向かって延びる複数のガイド片と、を有する外側端子と;を備えたガスセンサであって、前記ガスセンサ素子の前記後端部には、前記素子本体の前記外表面が後端側に向かってテーパ状に窄まるストレート部と、該ストレート部の後端側に繋がり、前記素子本体の前記外表面が後端側に向かって該ストレート部よりも窄まると共に、径方向内側に湾曲する湾曲部と、が形成されている
【0010】
本発明では、ストレート部の後端側に繋がり、素子本体の前記外表面が後端側に向かって該ストレート部よりも窄まると共に、径方向内側に湾曲する湾曲部を設けている。素子本体の後端側に筒状部を外嵌した際、筒状部の軸心が素子本体の軸心に対して径方向にずれてしまい、ガイド片の内面が素子本体に片当たりすることがある。このとき、片当りする部位を湾曲部とすることで、湾曲部は角部の無い曲面になっているため、片当たりしたとしても、ガイド片の内面との接触点でガイド片との接圧が低減されつつ、筒状部を径方向に移動させることで、筒状部の軸心と素子本体の軸心とを合わせる(片当たりを解消する)ことができる。
【0011】
また、本発明では、湾曲部の先端側に繋がるように、外表面が後端側に向かってテーパ状に窄まるストレート部を設けている。素子本体に筒状部がさらに挿入され、湾曲部を越えてストレート部に筒状部の先端縁(ガイド片の最後端)が接触する。このとき、筒状部内にストレート部が挿入されるにつれて先端縁(筒状部)が拡径される割合が一定となり、筒状部内に素子本体を安定して挿入することができる。
【0012】
さらに、本発明では、前記ストレート部の外表面と前記湾曲部の外表面とは滑らかに繋がる。これにより、ストレート部と湾曲部との接続点には、角部が形成されず、その結果、筒状部内に素子本体が挿入され、筒状部の先端縁が湾曲部を超えてストレート部を擦る際に、接続点に筒状部の先端縁が引っ掛ることが無く、筒状部の挿入荷重が過大になってそれ以上の挿入が困難になったり、ガイド片が変形したりすることを抑制できる。
【0013】
さらに、本発明では、前記ストレート部のテーパ角θ2は、前記ガイド片の開き角θ1よりも小さい。テーパ角θ2が開き角θ1よりも小さいので、ガイド片の尖った先端がストレート部に当接することはなく、筒状部の先端縁が確実にストレート部に接触するので、ガイド片の先端が接触することにより挿入荷重が過大になることを抑制できる。
【0014】
なお、湾曲部はストレート部よりも窄まっている。つまり、湾曲部においても、ガイド片は先端に向かって湾曲部よりも径方向外側に開いていることになる。このため、上記したように筒状部の軸芯がずれてずれてもガイド片の尖った先端が湾曲部に当接することがなく、ガイド片の内面が確実に湾曲部に接触するので、ガイド片の先端が接触することにより挿入荷重が過大になることを抑制できる。
【0015】
前記ガスセンサ素子に外嵌される前の自由状態での前記筒状部の先端縁の内径d1は、前記ストレート部と前記湾曲部との接続点における前記素子本体の外径d2以上であってもよい。
このガスセンサによれば、片当たりが解消され、筒状部の先端縁が周方向に亘って素子本体に接触する際に、ストレート部にて接触するようになる。このため、筒状部の挿入荷重をより一層低減させることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、筒状のガスセンサ素子へ筒状の外側端子を外嵌する際の挿入荷重を低減し、生産性や製品歩留りを向上させたガスセンサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るガスセンサを軸線方向に沿う面で切断した断面図である。
図2】ガスセンサ素子及び外側端子の構造を示す斜視図である。
図3】ガスセンサを製造する態様を示す図である。
図4】ガスセンサ素子及び外側端子の構造を示す側面図である。
図5】ガスセンサ素子に外側端子を外嵌する際、ストレート部及び湾曲部と外側端子との接触状態を示す図である。
図6】従来のガスセンサ素子及び外側端子の構造を示す斜視図である。
図7】従来のガスセンサ素子に外側端子を外嵌する際の両者の接触状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るガスセンサ素子3を有するガスセンサ100を軸線O方向に沿う面で切断した断面構造を示す。図2はガスセンサ素子及び外側端子の構造を示す斜視図である。図3はガスセンサを製造する態様を示す図である。
この実施形態において、ガスセンサ100は自動車の排気管内に挿入されて先端が排気ガス中に曝され、排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサになっている。ガスセンサ素子3は、酸素イオン伝導性の固体電解質体に一対の電極を積層した酸素濃淡電池を構成し、酸素量に応じた検出値を出力する公知の酸素センサ素子である。
なお、図1の下側をガスセンサ100の先端側とし、図1の上側をガスセンサ100の後端側とする。
【0019】
ガスセンサ100は、先端が閉じた略円筒状(中空軸状)のガスセンサ素子(この例では酸素センサ素子)3を、筒状の金具本体(主体金具)20の内側に挿通して保持するよう組み付けられている。センサ素子3は、先端に向かってテーパ状に縮径する筒状の固体電解質体からなる素子本体(図2参照)3Sと、固体電解質体の内周面と外周面にそれぞれ形成された内側電極3B及び外側電極(検知電極)3Cとからなる。そして、ガスセンサ素子3の内部空間を基準ガス雰囲気とし、ガスセンサ素子3の外面に被検出ガスを接触させてガスの検知を行うようになっている。
又、ガスセンサ素子3の中空部には丸棒状のヒータ15が挿入され、ガスセンサ素子3を活性化温度に昇温するようになっている。
金具本体20の後端部には、ガスセンサ素子3の後端側に設けられたリード線や端子(後述)を保持し、センサ素子3の後端部を覆う筒状の外筒40が接合されている。さらに、ガスセンサ素子3の後端側の外筒40内側には、絶縁性で円柱状のセパレータ121が保持金具80を介して加締め固定されている。一方、ガスセンサ素子3先端の検出部はプロテクタ7で覆われている。そして、このようにして製造されたガスセンサ100の金具本体20の雄ねじ部20dを排気管等のネジ孔に取付けることで、ガスセンサ素子3先端の検出部を排気管内に露出させて被検出ガス(排気ガス)を検知している。なお、金具本体20の中央付近には、六角レンチ等を係合するための多角形の鍔部20cが設けられ、鍔部20cと雄ねじ部20dとの間の段部には、排気管に取付けた際のガス抜けを防止するガスケット14が嵌挿されている。
【0020】
ガスセンサ素子3の中央側に鍔部3aが設けられ、金具本体20の先端寄りの内周面には内側に縮径する段部20eが設けられている。又、段部20eの後端向き面にワッシャ12を介して筒状のセラミックホルダ5が配置されている。そして、ガスセンサ素子3が金具本体20及びセラミックホルダ5の内側に挿通され、セラミックホルダ5に後端側からワッシャ13を介してガスセンサ素子3の鍔部3aが当接している。
さらに、鍔部3aの後端側におけるガスセンサ素子3と金具本体20との径方向の隙間に、筒状の滑石粉末6、及び筒状のセラミックスリーブ10が配置されている。そして、セラミックスリーブ10の後端側に金属リング30を配し、金具本体20の後端部を内側に屈曲して加締め部20aを形成することにより、セラミックスリーブ10が先端側に押し付けられる。これにより滑石リング6を押し潰し、セラミックスリーブ10及び滑石粉末6が加締め固定されるとともに、ガスセンサ素子3と金具本体20の隙間がシールされている。
【0021】
ガスセンサ素子3の後端側にセパレータ121が配置され、セパレータ121と外筒40との間隙には保持金具80が配置されている。そして、保持金具80の内部にセパレータ121が保持されている。
セパレータ121には、挿通孔(この例では4個)が設けられ、そのうち2個の挿通孔にそれぞれ内側端子71、外側端子91の板状基部74、94が挿入されて固定されている。各板状基部74、94の後端にはそれぞれコネクタ部75、95が形成され、コネクタ部75、95にそれぞれリード線41、41が加締め接続されている。又、セパレータ121の図示しない2個の挿通孔(ヒータリード孔)に、ヒータ15から引き出されたヒータリード線43(図1では1個のみ図示)が挿通されている。
セパレータ121の後端側の外筒40の内側には筒状のグロメット131が加締め固定され、グロメット131の4個の挿通孔からそれぞれ2個のリード線41、及び2個のヒータリード線43が外部に引き出されている。
なお、グロメット131の中心には貫通孔131aが形成され、ガスセンサ素子3の内部空間に連通している。そして、グロメット131の貫通孔131aに撥水性の通気フィルタ140が介装され、外部の水を通さずにガスセンサ素子3の内部空間に基準ガス(大気)を導入するようになっている。
【0022】
一方、金具本体20の先端側には筒状のプロテクタ7が外嵌され、金具本体20から突出するガスセンサ素子3の先端側がプロテクタ7で覆われている。プロテクタ7は、複数の孔部(図示せず)を有する有底筒状で金属製(例えば、ステンレスなど)二重の外側プロテクタ7bおよび内側プロテクタ7aを、溶接等によって取り付けて構成されている。
【0023】
図2に示すように、外側電極(検知電極)3Cはガスセンサ素子3の素子本体3Sの外表面に形成され、さらに外側電極3Cは、素子本体3Sの先端側の全周に亘って設けられる検出部3CSと、検出部3CSから後端に延びる線状のリード部3CLと、素子本体3Sの後端側に周方向の一部に延びるように設けられてリード部3CL(検出部3CS)と接続する接続部3CPとを有している。なお、接続部3CPは周方向にリード部3CLより広幅で形成され、接続部3Cとリード部3CLとがT字状をなしている。又、内側電極3B(図1参照)は、素子本体3Sの先端部から後端部の内孔3dの表面に設けられている。
さらに、外側電極3C(より詳しくは接続部3CP)よりも後端側には、外表面が後端側に向かってテーパ状に窄まるストレート部3tと、ストレート部3tの後端側に繋がり、素子本体3Sの外表面が後端側に向かってストレート部3tよりも窄まるとともに、径方向内側に湾曲する湾曲部3eと、が形成されている。ストレート部3t及び湾曲部3eについては後述する。
【0024】
一方、外側端子91は、先端から後端に細長く延び、所定の形状に打ち抜かれた金属薄板(耐食耐熱超合金板)を曲げ加工して一体に形成されている。外側端子91の後端側には板状基部94が形成され、板状基部94の後端側にはリード線41の芯線に加締め接続される接続端部95が配置されている。一方、板状基部94の先端側には筒状部93が接続されている。さらに、板状基部94の軸線方向中央側には、他の部位より広幅の広幅部94wが形成され、広幅部94wの中央部は後端側が固定されたコ字状に打ち抜かれ、広幅部94wの背面側(前面と反対側の面)に切起こされた切り起こし部94Yが設けられている。
板状基部94をセパレータ121の挿通孔に挿入した際、板状基部94が挿通孔内に位置決めされる。又、上記した切起こし部94Yが挿通孔の外端壁に当接し、そのバネ力によって板状基部94を挿通孔内に保持している。
【0025】
また、筒状部93は軸線Oを中心とする筒状をなし、かつ板状基部94と反対側に軸線O方向に沿ったスリットMを有する断面C字形状をなしている。そして、筒状部93の内径は、ガスセンサ素子3(素子本体3S)の後端部の外径より小さく、筒状部93をガスセンサ素子3に外嵌して拡開した際にバネ力によって筒状部93が縮まり、ガスセンサ素子3の外側電極3C(接続部3CP)に押圧されるようになっている。
又、筒状部93の先端縁93fに周方向にわたって断続的に接続すると共に、先端縁93fから径方向外側に向かって放射状に折り返した片状のガイド片98が合計8個(図2では4つのみ図示)形成されている。ガイド片98は径方向外側に広がりつつ、先端縁93fから先端側に向かって延び、筒状部93をセンサ素子3に外嵌する際のガイドとなっている。
【0026】
このガスセンサ100は、図3に示すようにして製造される。まず、ガスセンサ素子3を金具本体20の内側に保持してセンサ素子アセンブリBを組み付ける。具体的には、ガスセンサ素子3を金具本体20内に配置されたセラミックホルダ5上に配置する。その後、金具本体20とガスセンサ素子3との間隙に滑石(タルク)6を充填し、セラミックスリーブ10、金属パッキン30を順に滑石6上に配置し、金具本体20の後端側を加締めてセンサ素子アセンブリBを組み付ける。
一方で、外筒40内に、内側の内側端子71及び外側の外側端子91を組み付けたセパレータ121をグロメット131と共に外筒40を配置し、セパレータアセンブリAを組み付ける。具体的には、リード線41に接続された内側端子71及び外側端子91をセパレータ121内に挿入し、その後、セパレータ121を外筒40の段部40dに当接する。
その後、セパレータ121と外筒40との間隙に保持金具80を挿入すると共に、グロメット131を外筒40の後端側に配置し、セパレータアセンブリAを組み付ける。なお、内側端子71にはヒータ15が既に取付けられている。
【0027】
そして、セパレータアセンブリAと素子アセンブリBとの軸線を合わせ、セパレータアセンブリAをセンサ素子アセンブリBの後端に被せると、ガスセンサ素子3内にヒータ15が挿入されると共に、センサ素子3の内側電極3B及び外側電極3Cがそれぞれ内側端子71及び外側端子91と電気的に接続される。その後、外筒40のうち、保持金具80の外周部、グロメット131の外周部、金具本体20との重なり部をそれぞれ加締めると共に、外筒40と金具本体20との重なり部をレーザ溶接等によって金具本体20の後端に外筒40を接続させ、ガスセンサ100を製造する。
セパレータアセンブリAをセンサ素子アセンブリBに押し込む際には、加圧装置(図示せず)を用い、セパレータ121の先端向き面121aで外側端子91の筒状部93を所定ストロークで押し込む。これにより、筒状部93の先端側が、自身の弾性力で拡径することを利用して、ガスセンサ素子3の後端部寄り(外側電極3Cの接続部3CPの形成部分)に外嵌する。
このようにして、ガスセンサ素子3の後端側の外周面に、外側端子91の筒状部93を外嵌し、接続部3CPと筒状部93とを電気的に接続する。これにより、外側電極3C(検出部3CS)の検出信号を外側端子91からリード線41を介して外部に取り出すようになっている。
ここで、ガスセンサ素子3の後端側に筒状部93を外嵌した際の挿入荷重を低減させるため、素子本体3Sに以下のストレート部3t及び湾曲部3eを設ける。
【0028】
次に、図4図5を参照し、本発明の特徴部分である素子本体3Sのストレート部3t及び湾曲部3eの構成、及びそれによる挿入荷重の低減作用について説明する。
図4において、ストレート部3tのテーパ角θ2は、ガイド片98の開き角θ1よりも小さい。また、湾曲部3eは、素子本体3Sの外表面が後端側に向かってストレート部3tよりも窄まると共に、径方向内側に湾曲している。さらに、ストレート部3tの外表面と湾曲部3eの外表面とは滑らかに繋がっている。
ここで、テーパ角θ2は、図4に示すように、ストレート部3tを後端側に延長した仮想線の間のなす角度である。開き角θ1は、ガイド片98の内面を後端側に延長した仮想線S1の間のなす角度である。
また、本実施形態では、内径d1は、ストレート部3tと湾曲部3eとの接続点Pにおける素子本体3Sの外径d2以上になっている。
【0029】
そして、図5(a)に示すように、素子本体3Sの後端側に筒状部93を外嵌した際、筒状部93の軸心Xが素子本体3Sの軸心Yに対して径方向にずれてしまい、一部のガイド片98の内面が素子本体3Sに片当たりすることがある。
このとき、片当りする部位を湾曲部3eとすることで、湾曲部3eは角部の無い曲面になっているため、片当たりしたとしても、ガイド片98の内面との接触点Cでガイド片98との接圧が低減されつつ、筒状部93を径方向(図5(a)の左右方向)に移動させることで、筒状部93の軸心Xと素子本体3Sの軸心Yを合わせることができる。
【0030】
次に、図5(b)、(c)に示すように、素子本体3Sに筒状部93がさらに挿入されると、湾曲部3eを越えてストレート部3tに接触点Dで筒状部93の先端縁93fが接触するようになる。このとき、ガイド片98をガイドとして両軸心X,Yが近づき(図5(b))、ストレート部3tに先端縁93fが接触した時点で両軸心X,Yが一致する(図5(c))。
【0031】
この実施形態では、湾曲部3eに繋がるように、外表面が後端側に向かってテーパ状に窄まるストレート部3tを設けている。これにより、筒状部93内にストレート部3tが挿入されるにつれて先端縁93f(筒状部93)が拡径される割合が一定となり、筒状部93内に素子本体3Sを安定して挿入することができる。これに対し、ストレート部3tを設けずに素子本体3Sの外面を湾曲させた場合には、挿入するにつれて先端縁93f(筒状部93)が拡径される割合が一定でなく、挿入荷重が変動する等により、筒状部93内に素子本体3Sを安定して挿入し難くなることがある。
【0032】
また、本実施形態では、ストレート部3tの外表面と湾曲部3eの外表面とは滑らかに繋がる(図4参照)。これにより、ストレート部3tと湾曲部3eとの接続点Pには、角部が形成されず、その結果、筒状部93内に素子本体3Sが挿入され、筒状部93の先端縁93fが湾曲部3eを超えてストレート部3tを擦る際に、接続点Pに筒状部93の先端縁93fが引っ掛ることが無く、筒状部93の挿入荷重が過大になってそれ以上の挿入が困難になったり、ガイド片が変形したりすることを抑制できる。
【0033】
また、本実施形態では、テーパ角θ2が開き角θ1よりも小さいので、ガイド片98の尖った先端98pがストレート部3tに当接することはなく、筒状部93の先端縁93fが確実にストレート部3tに接触するので、先端98pが接触することにより筒状部93の挿入荷重が過大になることを抑制できる。
その上、湾曲部3eはストレート部3tよりも窄まっている。つまり、ガイド片98は先端に向かって湾曲部3eよりも径方向外側に開いていることになる。このため、上記したように筒状部93の軸芯がずれてもガイド片98の尖った先端98pが湾曲部3eに当接することがなく、ガイド片98の内面が確実に湾曲部3eに接触するので、先端98pが接触することにより筒状部93の挿入荷重が過大になることを抑制できる。
【0034】
さらに、本実施形態では、先端縁93fの内径d1が、接続点Pにおける素子本体3Sの外径d2以上になっている。このため、片当りが解消され、筒状部93の先端縁93fが周方向に亘って素子本体3Sに接触する際に、ストレート部3tにて接触するようになる。このため、筒状部93の挿入荷重をより一層低減させることができる。
但し、内径d1は、ストレート部3tより先端側の素子本体3Sの外径d3(素子本体3Sの胴部の外径;図4参照)より小さい必要がある。d1≧d3であると、ガスセンサ素子3の後端部に自身を外嵌した後、バネ力によって筒状部93が縮まることができず、筒状部93が外側電極3C(の接続部3CP)と電気的に接続できなくなるからである。
【0035】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
ストレート部3tの形状は、θ2>θ1である限り限定されないし、ストレート部3tの軸方向の長さも限定されない。また、湾曲部3eの軸方向の長さも限定されない。
ガイド片98は複数個形成されれば個数は限定されず、その形状も限定されない。
又、ガスセンサ素子としては、筒状の素子であれば、上記した酸素センサ素子(λセンサ素子)の他、アンモニアセンサ素子、HCセンサ素子、Hセンサ素子等に用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
3 ガスセンサ素子
3C(3CS、3CL、3CP) 外側電極
3e 湾曲部
3S 素子本体
3t ストレート部
91 外側端子
93 筒状部
93f 筒状部の先端縁
98 ガイド片
100 ガスセンサ
O 軸線
M スリット
θ1 ガイド片の開き角
θ2 ストレート部のテーパ角
d1 自由状態での筒状部の先端縁の内径
d2 ストレート部と湾曲部との接続点における素子本体の外径
P ストレート部と湾曲部との接続点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7