(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0016】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0017】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0018】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0019】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0020】
(実施の形態1)
<ワイヤレスセンサネットワーク>
以下に説明する実施の形態1では、無線通信システムの一例として、ワイヤレスセンサネットワークを取り挙げて説明するが、実施の形態1における技術的思想は、これに限らず、センサを利用した無線通信システムに幅広く適用できるものである。
【0021】
センサを利用した無線通信システムの一例であるワイヤレスセンサネットワークは、近年非常に注目されている技術であり、広く利用されることが期待されている。ワイヤレスセンサネットワークを構成するノード(端末)は、例えば、温度、照度、加速度などのセンサから出力されるデータを取得して、取得したデータを無線波で送信するように構成されている。例えば、ワイヤレスセンサネットワークでは、ノードで取得したデータをノード間のバケツリレー方式で転送する「マルチホップ・アドホック通信」が利用される。
【0022】
すなわち、従来型の移動体通信では、基地局、および、これらを繋ぐ固定網などの基盤整備が必要である。これに対し、「マルチホップ・アドホック通信」を利用したワイヤレスセンサネットワークでは、各ノード自身の自律的なルーティングで通信を行なうことができる。このため、ワイヤレスセンサネットワークに固定ネットワークは不要であり、ネットワークを構築したい環境にノードを配置するだけで、ネットワークを即座に構築できる利点がある。なお、ワイヤレスセンサネットワークの形態としては、これに限らず、1対1、スター型、メッシュ型があり、そのいずれでもよい。
【0023】
このように、ワイヤレスセンサネットワークは、ノードを配置するだけで自律的なネットワークを構成できるため、利用現場での敷設作業を軽減できる利点が得られる。また、センサから出力されるデータを取得することにより、現実世界の動態を捉えることができるため、対象物のトラッキングや自然環境のモニタリングが、ワイヤレスセンサネットワークにおける有望なアプリケーションとして期待されている。
【0024】
図1は、ワイヤレスセンサネットワークを用いたアプリケーションの一般的な構成例を示す模式図である。
図1において、ワイヤレスセンサネットワークでは、複数のノードNDが配置されており、各ノードNDは、センサ機能を使用して周辺環境を観測するように構成されている。そして、各ノードNDで観測された環境データは、例えば、ノードND間の「マルチホップ・アドホック通信」によりベースステーションBSに集められる。
【0025】
ベースステーションBSは、ワイヤレスセンサネットワークにアクセス可能なコンピュータであり、例えば、ワイヤレスセンサネットワークから得られた環境データを集約して保持している。ここで、ワイヤレスセンサネットワークから環境データを取得したいシステム運用者のコンピュータは、例えば、ベースステーションBSにアクセスして必要なデータを取得し、取得したデータを解析することにより、実環境の状態を把握し、解析された状態に基づいてアプリケーションで要求されている処理を実施することができる。
【0026】
<ノードの構成>
続いて、ワイヤレスセンサネットワークを構成するノードについて説明する。
図2は、ノードの構成を示すブロック図である。
図2に示すように、ワイヤレスセンサネットワークの構成要素であるノードは、例えば、センサSR、データ処理部DPU、無線通信部RFU、および、アンテナANTを備えている。
【0027】
センサSRは、温度・圧力・流量・光・磁気などの物理量やそれらの変化量を検出する素子や装置から構成され、さらに、検出量を適切な信号に変換して出力するように構成されている。このセンサSRには、例えば、温度センサ、圧力センサ、流量センサ、光センサ、磁気センサ、照度センサ、加速度センサ、角速度センサ、あるいは、画像センサなどが含まれる。
【0028】
データ処理部DPUは、センサSRから出力された出力信号を処理し、処理したデータを出力するように構成されている。また、無線通信部RFUは、データ処理部DPUで処理されたデータを無線周波数の信号に変換して、アンテナANTから送信するように構成されている。さらに、無線通信部RFUは、アンテナANTを介して無線周波数の信号を受信するようにも構成されている。
【0029】
このように構成されているノードにおいては、センサSRで物理量が検出されると、センサSRから信号が出力され、この出力された信号がデータ処理部DPUに入力される。そして、データ処理部DPUでは、入力した信号を処理して、処理したデータが無線通信部RFUへ出力される。その後、無線通信部RFUでは、入力したデータを無線周波数の信号に変換して、無線周波数の信号がアンテナANTから送信される。このようにして、ノードでは、センサSRで検出された物理量に基づいて、この物理量に対応した無線周波数の信号が送信されることになる。
【0030】
<ノードの詳細構成>
さらに、ノードの詳細な構成の一例について説明する。
図3は、主に、ノードに含まれるデータ処理部DPUの詳細な構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、ノードに含まれるデータ処理部DPUは、アナログデータ処理部ADPUとデジタルデータ処理部DDPUから構成されている。そして、アナログデータ処理部ADPUは、センシング部SUとAD変換部ADUを含むように構成され、デジタルデータ処理部DDPUは、数値解析部NAUと判断部JUを含むように構成されている。
【0031】
なお、センサSRの中には、デジタル信号を出力するものもあり、この場合は、データ処理部DPUとして、アナログデータ処理部ADPUは不要となり、デジタルデータ処理部DDPUから構成することもできる。この場合、センサSRには、アナログデータ処理部ADPUが内蔵されることになる。ただし、ここでは、一例として、データ処理部DPUをアナログデータ処理部ADPUとデジタルデータ処理部DDPUから構成する形態について説明するが、これに限定されるものではない。
【0032】
まず、アナログデータ処理部ADPUについて説明する。アナログデータ処理部ADPUは、センサSRから出力されるアナログ信号を入力して、このアナログ信号を取扱い易いデータに変換するように構成されており、センシング部SUとAD変換部ADUを含む。
【0033】
センシング部SUは、例えば、増幅回路や、トランスインピーダンス回路や、フィルタ回路などを含むように構成されている。センサSRから出力される出力信号は、微小であり、かつ、信号形式がデジタルデータ処理部DDPUの処理に適していない場合が多い。そこで、センサSRから出力される微小なアナログ信号を、デジタルデータ処理部DDPUの入力に適した大きさのアナログ信号に増幅する回路が必要となる。また、センサSRから出力される出力信号が電圧ではなく電流である場合もある。この場合、アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換回路では、電圧信号しか受け取ることができない。このことから、電流信号を電圧信号に変換しながら、適切な大きさの電圧信号に増幅する回路が必要となる。この回路は、トランスインピーダンス回路と呼ばれ、変換回路と増幅回路を兼ねるアナログ回路である。さらに、センサSRからの出力信号には、不要な周波数信号(雑音)が混じっていることがある。この場合、雑音によって、センサSRからの出力信号の取得がしにくくなる。このため、例えば、雑音が出力信号よりも高い周波数である場合には、ローパスフィルタ回路によって雑音を取り除く必要がある。一方、雑音が出力信号よりも低い周波数である場合には、ハイパスフィルタ回路によって雑音を取り除く必要がある。
【0034】
このようにセンサSRからの出力信号を直接取り扱うことは困難であるため、アナログデータ処理部ADPUが設けられており、このアナログデータ処理部ADPUにおいては、上述した増幅回路やトランスインピーダンス回路やフィルタ回路を含むセンシング部SUが設けられている。このセンシング部SUを構成する一連のアナログ回路は、「アナログフロントエンド(AFE)」とも呼ばれる。
【0035】
次に、AD変換部ADUは、センシング部SUから出力されたアナログデータをデジタルデータに変換するように構成されている。つまり、デジタルデータ処理部DDPUでは、デジタルデータしか取り扱うことができないため、AD変換部ADUによって、アナログデータをデジタルデータに変換する必要があるのである。
【0036】
続いて、デジタルデータ処理部DDPUは、アナログデータ処理部ADPUから出力されるデジタルデータを入力して、このデジタルデータを処理するように構成され、例えば、数値解析部NAUと判断部JUを含む。このとき、デジタルデータ処理部DDPUは、例えば、マイコン(MCU:Micro Control Unit)から構成される。
【0037】
数値解析部NAUは、アナログデータ処理部ADPUから出力されたデジタルデータを入力し、プログラムに基づいて、このデジタルデータに数値演算処理を施すように構成されている。そして、判断部JUは、数値解析部NAUでの数値演算処理の結果に基づいて、例えば、無線通信部RFUに出力するデータを選別するように構成されている。
【0038】
データ処理部DPUは上記のように構成されており、以下に動作について説明する。まず、センサSRで温度・圧力・流量・光・磁気などの物理量が検出され、この検出結果に基づいて、センサSRからアナログ信号である微弱な検出信号が出力される。そして、出力された微弱な検出信号は、アナログデータ処理部ADPU内のセンシング部SUに入力する。そして、センシング部SUにおいては、増幅回路によって入力した検出信号が増幅される。また、検出信号が電圧信号ではなく電流信号である場合には、トランスインピーダンス回路によって、電流信号が電圧信号に変換される。さらに、検出信号に含まれる雑音を除去するために、フィルタ回路によって、検出信号に含まれる雑音が除去される。このようにして、センシング部SUにおいては、センサSRから入力した検出信号(アナログ信号)を処理してアナログデータ(アナログ信号)が生成されて出力される。続いて、AD変換部ADUでは、センシング部SUから出力されたアナログデータを入力して、デジタルデータに変換する。その後、AD変換部ADUで変換されたデジタルデータは、デジタルデータ処理部DDPU内の数値解析部NAUに入力する。そして、数値解析部NAUでは、入力したデジタルデータに基づいて、数値演算処理を実施し、その後、数値演算処理の結果に基づいて判断部JUで無線通信部RFUに出力されるデジタルデータが選別される。次に、デジタルデータ処理部DDPUから出力されたデジタルデータは、無線通信部RFUに入力して、無線周波数の信号に変換された後、アンテナANTから送信される。以上のようにして、ノードでは、センサSRで検出された物理量に基づくデータが作成され、このデータに対応した無線周波数の信号が送信されることになる。
【0039】
次に、ノードに含まれる無線通信部RFUの詳細な構成例について説明する。
図4は、主に、ノードに含まれる無線通信部RFUの送信部における詳細な構成例を示すブロック図である。
図4において、無線通信部RFUは、例えば、ベースバンド処理部BBU、ミキサMIX、発振器OSR、電力増幅器PA、バランBLを有している。
【0040】
ベースバンド処理部BBUは、データ処理部から入力したデジタルデータから変調用のベースバンド信号を生成して処理するように構成されており、発振器OSRは、無線周波数の搬送波を生成するように構成されている。また、ミキサMIXは、ベースバンド処理部BBUで生成されたベースバンド信号を、発振器OSRで生成された搬送波に重畳して、無線周波数の信号を生成するように構成されている。さらに、電力増幅器PAは、ミキサMIXから出力される無線周波数の信号を増幅するように構成され、バランBLは、平衡と不平衡の状態にある電気信号を変換するための素子である。
【0041】
無線通信部RFUの送信部は上記のように構成されており、以下にその動作を説明する。まず、ベースバンド処理部BBUにおいて、データ処理部から入力したデジタルデータから変調用のベースバンド信号が生成される。そして、このベースバンド信号と、発振器OSRで生成された搬送波とをミキサMIXで混合することにより変調されて、無線周波数の信号が生成される。この無線周波数の信号は、電力増幅器PAで増幅された後、バランBLを介して無線通信部RFUから出力される。その後、無線通信部RFUから出力された無線周波数の信号は、無線通信部RFUと電気的に接続されているアンテナANTから送信される。以上のようにして、ノードから無線周波数の信号を送信することができる。
【0042】
続いて、
図5は、主に、ノードに含まれる無線通信部RFUの受信部における詳細な構成例を示すブロック図である。
図5において、無線通信部RFUは、ベースバンド処理部BBU、ミキサMIX、発振器OSR、低雑音増幅器LNA、バランBLを有している。
【0043】
バランBLは、平衡と不平衡の状態にある電気信号を変換するための素子である。また、低雑音増幅器LNAは、受信した微弱な受信信号を増幅するように構成されている。発振器OSRは、無線周波数の搬送波を生成するように構成されており、ミキサMIXは、低雑音増幅器LNAで増幅された受信信号を、発振器OSRで生成された搬送波に重畳して、ベースバンド信号を生成するように構成されている。ベースバンド処理部BBUは、復調されたベースバンド信号からデジタルデータを生成して処理するように構成されている。
【0044】
無線通信部RFUの受信部は上記のように構成されており、以下にその動作を説明する。まず、アンテナANTで受信された受信信号は、バランBLを介して低雑音増幅器LNAに入力して増幅される。その後、増幅された受信信号は、発振器OSRで生成された搬送波とミキサMIXで混合することにより復調されて、ベースバンド信号が生成される。そして、復調されたベースバンド信号は、ベースバンド処理部BBUにおいて、デジタルデータに変換されて処理される。以上のようにして、ノードで受信信号を受信することができる。
【0045】
<実施の形態1における基本思想>
上述したワイヤレスセンサネットワークの一利用形態として、ノードを構成する電子装置を動物の体内にインプラントし、動物の行動や状態についての有効なデータを収集することが検討されている。この点に関し、本発明者は、ワイヤレスセンサネットワークの構成要素となるノードを動物の体内にインプラントすることを前提として、動物の行動や状態についての有効なデータを収集するためには、どのようなノードの構成が望ましい構成であるかについて検討している。
【0046】
例えば、ノードの構成として、センサや無線通信部からなるモジュール部と、このモジュール部に電力を供給する電池とを一体化した構造が考えられる。ところが、一体化した構造のノードは、電池を含むため、ノード全体の重量密度が大きくなる。この結果、モジュール部と電池とを一体化した構造のノードを動物の体内にインプラントすると、対象動物がストレスを感じやすくなる。したがって、この場合、ノードの体内へのインプラントによって、対象動物の行動が大きな影響を受けることになり、対象動物の自然な行動や状態についての有効な意味のあるデータを取得することが困難となる。
【0047】
つまり、モジュール部と電池とを一体化した構造のノードは、ノード全体のコンパクト化に寄与するものと考えられる。ところが、ノードを動物の体内にインプラントすることを考えた場合、モジュール部と電池とを一体化した構造のノードを使用することは、対象動物の自然な行動や状態についての有効な意味のあるデータを取得する観点から妥当とは言えないのである。
【0048】
そこで、本実施の形態1では、ノードを動物の体内にインプラントすることを前提として、対象動物の自然な行動や状態についての有効な意味のあるデータを取得する観点から、ノードとなる電子装置の実装構成に工夫を施している。この工夫の基本思想は、モジュール部と電池とを一体化するという思想とはまったく正反対のノードの荷重分散を図るという思想である。この基本思想によれば、インプラントされるノードにおいて、荷重の局所集中が緩和されるため、対象動物がストレスを感じにくくなる。この結果、ノードに荷重分散を図るという本実施の形態1における基本思想によれば、対象動物の自然な行動や状態についての有効な意味のあるデータを取得することができるのである。
【0049】
このように、本実施の形態1における基本思想は、ノードの荷重分散を図る思想であり、以下に、この基本思想を具現化した本実施の形態1におけるノードの実装構成について説明する。すなわち、ノードを構成する電子装置を動物の体内にインプラントすることを前提として、対象動物がストレスを感じにくい電子装置の実装構成について説明する。
【0050】
<実施の形態1におけるケースの構成>
図6は、本実施の形態1における電子装置の構成要素が収納されるケースCSの外観構成を示す斜視図である。また、
図7(a)は、本実施の形態1におけるケースCSを示す上面図であり、
図7(b)は、本実施の形態1におけるケースCSを示す側面図である。
【0051】
図6、
図7(a)および
図7(b)に示すように、本実施の形態1におけるケースCSは、内部に第1空間を有する容積部CP1と、内部に第2空間を有する容積部CP2と、内部に第3空間を有する容積部CP3と、内部に第4空間を有する容積部CP4とを備えている。このとき、容積部CP1と容積部CP2と容積部CP3と容積部CP4のそれぞれは、密閉されている。すなわち、ケースCSは、密閉されていることになる。
【0052】
ここで、容積部CP1と容積部CP2とは、互いに離間して設けられており、容積部CP1と容積部CP2とは、容積部CP3によって接続されている。具体的に、容積部CP1と容積部CP2のそれぞれは、略直方体形状をしている。そして、容積部CP3は、x方向に並んで配置された容積部CP1と容積部CP2とを接続するように、x方向に延在する略直方体形状から形成されている。また、容積部CP4は、容積部CP1と接続され、かつ、容積部CP3と並行してx方向に延在する略直方体形状から形成されている。
【0053】
本実施の形態1におけるケースCSは、上記のように構成されており、このケースCSの内部に電子装置の構成要素が収納されている。
【0054】
本実施の形態1におけるケースCSは、生体親和材料から形成されている。すなわち、ケースCSを構成する容積部CP1と容積部CP2と容積部CP3と容積部CP4のそれぞれは、生体親和材料から形成されている。生体親和材料としては、例えば、生体親和型のシリコーン樹脂を挙げることができる。生体親和型のシリコーン樹脂からなるケースCSは、例えば、コンプレッション成形(圧縮成型)やインジェクション成形(射出成形)によって形成することができる。
【0055】
生体親和型のシリコーン樹脂の硬度は、添加物濃度などによって、およそ25°から75°の範囲で調整可能であるが、本実施の形態1におけるケースCSでは、成形後の表面タック性やインプラント後の生体に与えるストレスを考慮して、生体親和型のシリコーン樹脂の硬度を50°に設定している。ただし、生体親和型のシリコーン樹脂の硬度は、これに限定されるものではなく、インプラントの対象や用途に応じて適宜設定できる。
【0056】
<電子装置の構成要素の実装構成>
以下では、ケースCSの内部に収納される電子装置の構成要素の実装構成について説明する。まず、
図8は、本実施の形態1における電子装置(ノード)の機能構成と電子装置の実装部品との間の対応関係を示す図である。
図8において、本実施の形態1では、センサSRとセンシング部SUとAD変換部ADUとが一体的にセンサモジュールSMを構成している。一方、数値解析部NAUおよび判断部JUがMCUを構成する半導体装置SA1に形成されている。そして、センサモジュールSMおよび半導体装置SA1は、共通する配線基板WB1に搭載されることになる。
【0057】
これに対し、無線通信部RFUおよびアンテナANTは、配線基板WB1とは別基板である配線基板WB2に配置されることになる。このとき、
図4および
図5に示すように、無線通信部RFUの構成要素のうち、ベースバンド処理部BBU、発振器OSR、ミキサMIX、電力増幅器PA、および、低雑音増幅器LNAは、MCUを構成する半導体装置SA2に形成されている。
【0058】
続いて、
図9は、電子部品が搭載された配線基板WB1の実装構成を模式的に示す斜視図である。
図9に示すように、配線基板WB1の表面(上面)には、例えば、コネクタCNTと半導体装置SA1が搭載されている。この半導体装置SA1には、
図8に示す数値解析部NAUおよび判断部JUを実現するMCUなどが形成されている。一方、
図9では、図示されないが、配線基板WB1の裏面(下面)には、例えば、
図8に示すセンサSRとセンシング部SUとAD変換部ADUとを含むセンサモジュールSMが配置されている。すなわち、本実施の形態1における配線基板WB1においては、表面と裏面の両面に電子部品が搭載されていることになる。
【0059】
次に、
図10は、電子部品が搭載された配線基板WB2の実装構成を模式的に示す斜視図である。
図10に示すように、配線基板WB2の表面(上面)には、例えば、チップアンテナから構成されるアンテナ(アンテナ部)ANTと半導体装置SA2が搭載されている。ここで、アンテナANTは、チップアンテナではなく、パターンアンテナから構成することもできる。半導体装置SA2には、
図8に示す無線通信部RFUの主要な構成要素が形成されている。以上のようにして、配線基板WB1には、少なくとも、物理量を検出するセンサ(センサモジュールSM)が搭載されている一方、配線基板WB2には、少なくとも、センサからの出力信号に基づくデータを送信する無線通信部RFUが搭載されている。したがって、センサモジュールSMと無線通信部RFUとを含むモジュール部は、
図9に示す配線基板WB1と、
図10に示す配線基板WB2とを有している。以下に、このモジュール部の実装構成について、図面を参照しながら説明する。
【0060】
<モジュール部の実装構成>
図11は、本実施の形態1におけるモジュール部MJU1の実装構成を示す図である。具体的に、
図11(a)は、本実施の形態1におけるモジュール部MJU1の実装構成を示す斜視図であり、
図11(b)は、本実施の形態1におけるモジュール部MJU1の実装構成を示す側面図である。
【0061】
まず、
図11(a)に示すように、本実施の形態1におけるモジュール部MJU1は、
図9に示す配線基板WB1と、
図10に示す配線基板WB2との積層構造から構成されている。例えば、本実施の形態1におけるモジュール部MJU1は、下部に配置された配線基板WB1と、この配線基板WB1の上部に配置された配線基板WB2から構成される。
【0062】
詳細には、
図11(b)に示すように、配線基板WB1においては、配線基板WB1の裏面に、センサを含むセンサモジュールSMとともにその他の電子部品が搭載されている。一方、配線基板WB1の表面には、コネクタCNTの他に、半導体装置SA1を含む電子部品が搭載されている。これに対し、配線基板WB2においては、配線基板WB2の裏面に、例えば、コネクタCNTを差し込むソケットが形成されている。この結果、下部に配置された配線基板WB1の表面に形成されたコネクタCNTを、上部に配置された配線基板WB2の裏面に形成されたソケットに差し込むことにより、配線基板WB1と配線基板WB2とが電気的に、かつ、物理的に接続することができる。さらに、配線基板WB1と配線基板WB2とは、接着材ADH1によっても、物理的に接続されている。そして、配線基板WB2の表面には、アンテナANTおよび半導体装置SA2を含む電子装置が搭載されている。このようにして、本実施の形態1におけるモジュール部MJU1が形成されている。
【0063】
このように構成されている本実施の形態1におけるモジュール部MJU1は、モジュール部MJU1に含まれる無線通信部RFUとセンサモジュールSMとを実装構成上で分離している。すなわち、本実施の形態1では、互いに異なる配線基板WB1と配線基板WB2とからモジュール部MJU1を構成し、配線基板WB1に搭載される電子部品(実装部品)によってセンサモジュールSMを実現し、配線基板WB2に搭載される電子部品(実装部品)によって無線通信部RFUを実現している。
【0064】
以下に、モジュール部MJU1に含まれる無線通信部RFUとセンサモジュールSMとを実装構成上で分離して構成することによる利点について説明する。例えば、無線通信部RFUとセンサモジュールSMとを実装構成上で一体的にモジュール部を構成する場合、センサの異なるモジュール部毎に電波認証を取得する必要があり、モジュール部の製造コストが上昇することになる。
【0065】
これに対し、本実施の形態1におけるモジュール部MJU1のように、無線通信部RFUとセンサモジュールSMとを実装構成上で分離する場合には、電波認証が取得された無線通信部RFUを共通として、センサモジュールSMだけをカスタマイズすることができる。つまり、無線通信部RFUが形成された配線基板WB2を共通化することができるため、たとえセンサモジュールSMの構成が異なる場合であっても、センサの種類の異なるモジュール部ごとに電波認証を取得する必要がなくなり、モジュール部全体の製造コストを低減することができるのである。特に、無線通信部RFUが形成される配線基板WB2の実装構成を共通とし、センサモジュールSMが形成される配線基板WB1の実装構成だけをカスタマイズするだけで、異なる種類のセンサに対応したモジュール部MJU1を構成することができる。このため、モジュール部MJU1を構成する実装部品の共通化を推進した汎用性を向上させることができ、この観点からもモジュール部MJU1の製造コストを低減することができる。つまり、本実施の形態1におけるモジュール部MJU1の分離構成によれば、無線通信部RFUを共通化することによる電波認証の取得の容易性と、実装部品の共通化に起因する汎用性の向上によって、大幅にモジュール部MJU1の製造コストを低減できるという顕著な効果を得ることができる。
【0066】
次に、本実施の形態1におけるモジュール部MJU1は、配線基板WB1と配線基板WB2とを基板の厚さ方向に積層して配置している。これにより、モジュール部MJU1全体の平面サイズを小さくすることができる。例えば、1つの配線基板上に無線通信部RFUとセンサモジュールSMとを一体的に配置する場合には、1つの配線基板上に実装される実装部品の数も多くなり、これによって、配線基板の平面サイズが大きくなってしまい、モジュール部全体の平面サイズが増大することになる。
【0067】
これに対し、本実施の形態1におけるモジュール部MJU1のように、センサモジュールSMを配置した配線基板WB1上に、無線通信部RFUおよびアンテナANTを配置した配線基板WB2を積層配置する場合には、配線基板WB1あるいは配線基板WB2に実装される実装部品の数も少なくなる。この結果、配線基板WB1および配線基板WB2の平面サイズを小さくすることができる。そして、配線基板WB1上に配線基板WB2を積層配置することにより、モジュール部MJU1全体の平面サイズは大幅に低減される。この結果、本実施の形態1におけるモジュール部MJU1によれば、配線基板WB1と配線基板WB2を含むモジュール部MJU1全体の小型化を図ることができる。
【0068】
さらに、本実施の形態1では、配線基板WB1と配線基板WB2とをコネクタCNTで接続している。この場合、配線基板WB1と配線基板WB2とは、着脱可能となる。このことから、例えば、上層に配置される配線基板WB2に実装される実装部品で実現されている無線通信部RFUに不具合が生じた場合、不具合が発生した配線基板WB2を配線基板WB1から外すことが容易となる。そして、不具合が発生した配線基板WB2に替えて良品の配線基板WB2を配線基板WB1に接続することにより、問題なく良品のモジュールとして使用することができる。なお、本実施の形態1では、配線基板WB1と配線基板WB2との接続強度を向上させるために、配線基板WB1と配線基板WB2とをコネクタCNTだけでなく、接着材ADH1によっても接着している。この場合、配線基板WB1と配線基板WB2との着脱容易性が犠牲になることが考えられるが、この接着材ADH1として、例えば、シリコーン系接着材などの剥がしやすい材質を使用することにより、配線基板WB1と配線基板WB2との着脱容易性を犠牲にすることなく、配線基板WB1と配線基板WB2との接続強度の向上を図ることができる。
【0069】
<ケースに収納された電子装置全体の実装構成>
続いて、ケースCSに収納された電子装置EA1全体の実装構成について説明する。
図12は、本実施の形態1における電子装置EA1の実装構成を示す模式的な透視上面図である。また、
図13は、本実施の形態1における電子装置EA1の実装構成を示す模式的な透視側面図である。
図12および
図13において、ケースCSの一部を構成する容積部CP1の内部の第1空間には、配線基板WB1と配線基板WB2との積層構造からなるモジュール部MJU1が収納されている。一方、容積部CP1と離間して配置された容積部CP2の内部の第2空間には、電池BATが収納されている。この容積部CP2に収納されている電池BATは、容積部CP1に収納されているモジュール部MJU1に電力を供給する機能を有し、例えば、リチウムイオン電池から構成することができる。
【0070】
図12において、互いに離間して配置された略直方体形状の容積部CP1と略直方体形状の容積部CP2との両方に接続するように容積部CP3が配置されている。この容積部CP3は、x方向に延在する略直方体形状をしており、容積部CP3の内部の第3空間には、配線WL1が収納されている。この配線WL1は、容積部CP1に収納されているモジュール部MJU1と電気的に接続されているとともに、容積部CP2に収納されている電池BATと電気的に接続されている。したがって、容積部CP3に収納されている配線WL1は、モジュール部MJU1と電池BATとを電気的に接続する接続部としての機能を有していることになる。
【0071】
これにより、容積部CP3に収納されている配線WL1を介して、容積部CP2に収納されている電池BATから、容積部CP1に収納されているモジュール部MJU1に電力を供給することができる。
【0072】
また、
図12および
図13に示すように、本実施の形態1におけるケースCSには、容積部CP1と接続し、かつ、x方向に延在する略直方体形状をした容積部CP4が設けられている。この容積部CP4の内部の第4空間には、温度センサが収納されている。温度センサは、例えば、生体の体温を測定する機能を有し、例えば、サーミスタTHと配線WL2から構成されている。配線WL2は、容積部CP1に収納されているモジュール部MJU1と電気的に接続されており、これによって、サーミスタTHとモジュール部MJU1とは、配線WL2を介して、電気的に接続されていることになる。つまり、容積部CP4に収納されている配線WL2は、モジュール部MJU1とサーミスタTHとを電気的に接続する機能を有していることになる。
【0073】
これにより、容積部CP4に収納されている配線WL2を介して、容積部CP4に収納されているサーミスタTHで検出された体温に対応する検出信号は、容積部CP1に収納されているモジュール部MJU1に取り込まれる。
【0074】
図14は、
図13の一部を拡大して示す拡大図である。
図14に示すように、ケースCSの一部を構成する容積部CP1の内部には、空間SP1が設けられており、この空間SP1に。
図11(a)および
図11(b)に示すモジュール部MJU1が収納されている。一方、容積部CP1と接続される容積部CP3の内部には、空間SP3が設けられており、この空間SP3に、配線WL1が収納されている。そして、この配線WL1は、モジュール部MJU1の一部の構成要素である配線基板WB1と、例えば、半田接合によって、電気的に接続されている。
【0075】
なお、
図14では、図示されないが、配線WL1は、電池BATとも半田接合によって接合される。ただし、配線WL1と電池BATとをコネクタによって電気的に接続することもできる。この場合、電池BATは着脱可能となり、例えば、電池BATを充電可能な二次電池から構成する際には、電池BATを取り外して充電することが容易になる。
【0076】
図15(a)は、ケースCSの一部を構成する容積部CP3の模式的な断面図であり、
図15(b)は、ケースCSの一部を構成する容積部CP4の模式的な断面図である。
図15(a)に示すように、容積部CP3の内部には、空間SP3が設けられており、この空間SP3にx方向へ延在する配線WL1が収納されていることがわかる。このことから、容積部CP3の内部に形成されている空間SP3の断面形状は、少なくとも、配線WL1の断面形状よりも大きい必要があることがわかる。
【0077】
また、
図15(b)に示すように、容積部CP4の内部には、空間SP4が設けられており、この空間SP4にx方向へ延在する配線WL2と、この配線WL2と接続されるサーミスタTHとが収納されている。このとき、
図15(b)に示すように、サーミスタTHの断面形状は、配線WL2の断面形状よりも大きいことがわかる。したがって、容積部CP4の内部に形成されている空間SP4の断面形状は、少なくとも、配線WL2の断面形状よりも大きい必要があり、さらに、サーミスタTHが収納される場所においては、サーミスタTHの断面形状よりも大きい必要があることがわかる。
【0078】
以上のように構成されている本実施の形態1における電子装置EA1は、無線通信システムの構成要素(ノード)となる電子装置であって、電子装置EA1は、密閉されたケースCSを含む。このとき、ケースCSは、内部に中空空間を有する容積部CP1と、容積部CP1とは離間して設けられ、かつ、内部に中空空間を有する容積部CP2と、容積部CP1と容積部CP2とを接続する接続部とを有する。そして、容積部CP1の中空空間には、モジュール部MJU1が収納され、容積部CP2の中空空間には、電池BATが収納されている。また、接続部は、モジュール部MJU1と電池BATとを電気的に接続する配線WL1を含む。さらに、モジュール部MJU1は、物理量を検出するセンサを含むセンサモジュールSMと、センサモジュールSMからの出力信号に基づくデータを送信する無線通信部RFUとを有することになる。
【0079】
なお、本実施の形態1における電子装置EA1の具体的な外形寸法について説明すると、ケースCSの一部を構成する容積部CP1のx方向の長さは、19mm程度であり、y方向の長さは、11mm程度であり、z方向の厚さは、7mm程度である。また、ケースCSの一部を構成する容積部CP2のx方向の長さは、26mm程度であり、y方向の長さは、15mm程度であり、z方向の厚さは、6mm程度である。さらに、ケースCSの一部を構成する容積部CP3のx方向の長さは、54mm程度であり、y方向の長さは、4.4mm程度であり、z方向の厚さは、2mm程度である。また、ケースCSの一部を構成する容積部CP4のx方向の長さは、100mm程度であり、y方向の長さは、4.2mm程度であり、z方向の厚さは、2.2mm程度である。
【0080】
<実施の形態1における特徴>
本実施の形態1における電子装置EA1は、上記のように構成されており、以下に、本実施の形態1における電子装置EA1の特徴点について説明する。
【0081】
本実施の形態1における第1特徴点は、例えば、
図12に示すように、モジュール部MJU1と電池BATとを互いに分離して配置している点にある。すなわち、本実施の形態1における第1特徴点は、互いに分離されて配置されている容積部CP1と容積部CP2とを含むケースCSを採用することにより、容積部CP1の内部の空間にモジュール部MJU1を収納し、かつ、容積部CP2の内部の空間に電池BATを収納する点にある。
【0082】
この結果、本実施の形態1によれば、モジュール部MJU1と電池BATとを一体化するという思想とはまったく正反対の電子装置EA1の荷重分散を図るという思想が具現化される。つまり、モジュール部MJU1と電池BATとを互いに分離して配置するという本実施の形態1における第1特徴点によって、電子装置EA1の荷重分散が実現される。すなわち、モジュール部MJU1の質量と、電池BATの質量とが、電子装置EA1全体の質量の大部分を占めることから、モジュール部MJU1と電池BATとを互いに分離して配置することにより、効果的に電子装置EA1の荷重分散を図ることができる。
【0083】
これにより、本実施の形態1における電子装置EA1をインプラントされるノードに使用する場合、モジュール部MJU1と電池BATとの荷重分散によって、電子装置EA1の荷重の局所集中が緩和される。このため、電子装置EA1をインプラントする対象動物がストレスを感じにくくなる。この結果、ノードに荷重分散を図るという基本思想を具現化した本実施の形態1における第1特徴点によれば、対象動物の自然な行動や状態についての有効な意味のあるデータを取得することができる。
【0084】
このようにモジュール部MJU1と電池BATとが互いに分離して配置される本実施の形態1における電子装置EA1によれば、例えば、対象動物の後頭部付近をセンシングしたい場合に、モジュール部MJU1が収納された容積部CP1を後頭部付近に配置し、かつ、電池BATが収納された容積部CP2を背中や腹部などの比較的鈍感な部位に選択して配置することが可能となる。この場合、本実施の形態1における第1特徴点によって、電子装置EA1全体の重心の位置が低くなる効果と、対象動物の頭部への荷重負荷が軽減される効果との相乗効果によって、対象動物が感じる荷重を軽減することができる。このことは、電子装置EA1をインプラントする対象動物がストレスを感じにくくなることを意味し、これによって、電子装置EA1を対象動物にインプラントしても、対象動物の自然な行動や状態を維持できることを意味する。この結果、本実施の形態1における電子装置EA1によれば、電子装置EA1を対象動物にインプラントしながらも、対象動物の自然な行動や状態についての有効な意味のあるデータを取得することができる。
【0085】
さらに、モジュール部MJU1と電池BATとを互いに分離して配置するという本実施の形態1における第1特徴点によれば、電子装置EA1の荷重分散を図るだけでなく、電子装置EA1の体積分散も図ることができる。
【0086】
例えば、モジュール部MJU1と電池BATとを一体的に積層配置する電子装置においては、電子装置の体積集中が生じることになり、これによって、電子装置の厚さが厚くなってしまう。この場合、電子装置を対象動物にインプラントすると、電子装置の厚さが厚いため、対象動物の皮が突っ張ってしまう。このことは、対象動物がストレスを感じやすくなることを意味し、これによって、対象動物の自然な行動や状態が阻害されて、対象動物についての有効な意味のあるデータを取得することができなくなるおそれが高まる。
【0087】
これに対し、本実施の形態1における第1特徴点によれば、モジュール部MJU1と電池BATとが互いに分離して配置されるため、モジュール部MJU1が収納された容積部CP1の厚さや電池BATが収納された容積部CP2の厚さのそれぞれを薄くすることができる。このことは、本実施の形態1における電子装置EA1を対象動物にインプラントしても、対象動物の皮が突っ張りにくくなることを意味する。したがって、本実施の形態1における電子装置EA1によれば、対象動物がストレスを感じにくく、これによって、対象動物の自然な行動や状態が保持されて、対象動物についての有効な意味のあるデータを取得することができる。
【0088】
さらには、電池BATが収納された容積部CP2に着目すると、本実施の形態1では、容積部CP2の厚さが薄くすることができることから、電池容量の選択肢も増加することになる。言い換えれば、本実施の形態1の第1特徴点による容積部CP2の薄型化によって、対象動物にストレスを与えにくくしながら、比較的大きな電池容量の電池BATを使用することができるため、対象動物にインプラントされた電子装置EA1の長寿命化を図ることができる。このことは、長期間にわたって、対象動物についての有効な意味のあるデータを継続して取得できることを意味する。この結果、本実施の形態1における電子装置EA1をワイヤレスセンサネットワークのノードに使用する場合に、メンテナンス周期が長く、ランニングコストの低減を図ることができるノードを提供できる利点を得ることができる。特に、対象動物にインプラントされた電子装置EA1を取り出すには、対象動物に手術を施す必要があり、ノードのメンテナンスが複雑化しやすい。したがって、メンテナンス周期が長く、ランニングコストの低減を図ることができるという利点は、本実施の形態1における電子装置EA1のように、対象動物にインプラントすることを前提とする電子装置において、特に有用である。
【0089】
以上のことから、モジュール部MJU1と電池BATとを互いに分離して配置するという本実施の形態1における第1特徴点によれば、電子装置EA1の荷重分散と電子装置EA1の体積分散とが共に実現される。この結果、本実施の形態1における電子装置EA1によれば、荷重分散と体積分散の相乗効果によって、電子装置EA1を対象動物にインプラントしても、対象動物がストレスを感じにくく、したがって、対象動物の自然な行動や状態が保持される。このため、本実施の形態1における電子装置EA1をワイヤレスセンサネットワークのノードに採用することにより、対象動物についての有効な意味のあるデータを取得することができるという顕著な効果を得ることができる。
【0090】
次に、本実施の形態1における第2特徴点は、
図12に示すように、モジュール部MJU1が収納された容積部CP1と、電池BATが収納された容積部CP2とが、容積部CP1と容積部CP2との離間方向であるx方向に長い容積部CP3で接続され、この容積部CP3の内部の空間に、モジュール部MJU1と電池BATとを電気的に接続する配線WL1が収納されている点にある。これにより、互いに離間して配置されたモジュール部MJU1と電池BATとが、配線WL1で電気的に接続されるとともに、配線WL1が収納されている容積部CP3自体がx方向に長い略直方体形状をしているため、容積部CP3がフレキシビリティを有することになる。したがって、本実施の形態1における第2特徴点によれば、本実施の形態1における電子装置EA1を対象動物にインプラントした場合に、配線WL1が収納された容積部CP3のフレキシビリティによって、対象動物の動作に追従して、電子装置EA1が変形することになる。このことは、対象動物が動いても、電子装置EA1の変形によって、対象動物がストレスを感じにくくなり、対象動物の自然な行動や状態が阻害されることを抑制できる。このため、本実施の形態1における電子装置EA1をワイヤレスセンサネットワークのノードに採用することにより、対象動物についての有効な意味のあるデータを取得することができるという顕著な効果を得ることができる。つまり、本実施の形態1における電子装置EA1によれば、配線WL1が収納された容積部CP3のフレキシブル性を備えているという第2特徴点を有している結果、特に、対象動物が動いても、インプラントされている電子装置EA1に起因する違和感が生じにくく、これによって、対象動物の自然な行動や状態が担保される。
【0091】
以上のことから、本実施の形態1における電子装置EA1によれば、モジュール部MJU1と電池BATとを互いに分離して配置することにより実現される電子装置EA1の荷重分散と電子装置EA1の体積分散とともに、容積部CP3が細長い略長方形形状をしていることにより容積部CP3のフレキシビリティが実現される。この結果、本実施の形態1における第1特徴点と第2特徴点との相乗効果によって、対象動物の自然な行動や状態に対応した意味のあるデータを取得することができる。
【0092】
なお、本実施の形態1における電子装置EA1では、例えば、
図12に示すように、容積部CP4も細長い略長方形形状(略直方体形状)をしているとともに、ケースCSの材質としても柔軟性を有する材料(例えば、生体親和型のシリコーン樹脂)を使用していることにより、容積部CP4のフレキシビリティが実現される。つまり、本実施の形態1では、サーミスタTHが収納される容積部CP4もフレキシビリティを有していることから、サーミスタTHの配置自由度も向上させることができる。
【0093】
続いて、本実施の形態1における第3特徴点は、例えば、
図12に示すように、電子装置EA1の構成要素が生体親和材料からなるケースCSの内部に収納され、かつ、このケースCSが密閉されている点にある。
【0094】
このように、本実施の形態1における第3特徴点によれば、まず、電子装置EA1の構成要素が生体親和材料からなるケースCSの内部に収納されている。このことから、本実施の形態1における電子装置EA1を対象動物の体内にインプラントしても、対象動物の体内組織と電子装置EA1の構成要素とが直接接触することなく、対象動物の体内組織は、体内組織と親和性の高い生体親和材料からなるケースCSと直接接触することになる。
【0095】
これにより、対象動物の体内組織は、インプラントされた電子装置EA1の構成要素による悪影響やダメージを受けにくくなり、電子装置EA1をインプラントしても、対象動物の健康状態が保持される。このことは、広い意味で、対象動物の自然な行動や状態が保障されることを意味し、これによって、対象動物の自然な行動や状態に対応した意味のあるデータを取得することができる。
【0096】
さらに、本実施の形態1における第3特徴点によれば、生体親和材料からなるケースCSが密閉されている。このことから、ケースCS内に収納されている電子装置EA1の構成要素から対象動物の体内へ有害物質が流出することを防止できる。この観点からも、対象動物の体内組織は、インプラントされた電子装置EA1の構成要素による悪影響やダメージを受けにくくなる。このように、生体親和材料からなるケースCSが密閉されている構成は、電子装置EA1からの対象動物の体内への有害物質の流出を防止する技術的意義を有している。別の見方をすれば、生体親和材料からなるケースCSが密閉されている構成は、対象動物の体内組織で発生する体液などが、ケースCS内に収納されている電子装置EA1の構成要素に入り込むことを防止する技術的意義を有しているとも言える。
【0097】
すなわち、本実施の形態1における第3特徴点は、電子装置EA1をインプラントすることによる対象動物の健康への悪影響を抑制する技術的意義を有しているとともに、対象動物の体内にインプラントされる電子装置EA1の信頼性を担保する技術的意義を有していることになる。そして、本実施の形態1における第3特徴点の直接的な技術的意義は、対象動物への健康への悪影響を排除し、かつ、インプラントされた電子装置EA1の信頼性を向上することにあるが、この直接的な技術的意義を通じて、本実施の形態1における第3特徴点は、対象動物の自然な行動や状態に対応した意味のあるデータを取得することに寄与しているということができる。
【0098】
次に、本実施の形態1における第4特徴点は、例えば、
図14に示すように、容積部CP1と容積部CP3との接続部位(下側部位)に、曲線形状RSPが形成されている点にある。これにより、密閉されたケースCSの製造容易性を向上させることができる。
【0099】
以下に、この点について、具体的に説明する。例えば、密閉されたケースCSは、後述する電子装置の製造方法で詳述するが、ケースCSは、下パーツと上パーツとから構成されており、この下パーツと上パーツとを接合することにより、密閉されたケースCSを製造することになる。ここで、
図14に示すように、容積部CP1に収納されているモジュール部MJU1と、容積部CP3に収納されている配線WL1とは、モジュール部MJU1の構成要素である配線基板WB1に配線WL1を半田接合することにより接続される。このとき、
図14に示すように、配線基板WB1が配置される高さ(z方向)と、配線WL1が配置される高さ(z方向)とは、相違している。つまり、配線基板WB1と配線WL1との間には、z方向に段差が生じていることになる。この場合、容積部CP1と容積部CP3との接続部位(下側部位)が直角形状であると、この接続部位近傍において、配線WL1は垂直に折れ曲がるようにして、ケースCS内に密閉されることになる。ところが、配線WL1は直角には折れ曲がりにくい。この結果、容積部CP1と容積部CP3との接続部位(下側部位)が直角形状であると、配線WL1が、この接続部位の近傍で、完全に直角に折れ曲がらない結果、下パーツ内に配線WL1が収納されず、配線WL1の一部が下パーツからはみ出るおそれがある。この場合、はみ出た配線WL1の一部が、下パーツと上パーツとの接合を阻害することになり、ケースCSの密着性が確保されなくなるおそれが高まる。さらには、配線WL1および配線WL2を無理に屈曲させると、配線WL1および配線WL2の断線が生じるおそれや、配線基板WB1との半田接合部への応力が付加されることによる半田接合部へ損傷を与えるおそれが高まる。
【0100】
そこで、本実施の形態1では、
図14に示すように、容積部CP1と容積部CP3との接続部位(下側部位)に、曲線形状RSP1および曲線形状RSP2を形成している(第4特徴点)。この場合、曲線形状RSP1によって、配線WL1が、接続部位の近傍で、完全に直角に折れ曲がらなくても、下パーツ内に配線WL1が収納されるフレキシビリティ(余裕)が生まれる。この結果、本実施の形態1における第4特徴点によれば、たとえ、配線基板WB1と配線WL1との間に段差が生じる場合であっても、下パーツ内に配線WL1が収納されやすくなり、配線WL1の一部が下パーツからはみ出ることを抑制できる。したがって、本実施の形態1における第4特徴点によれば、はみ出た配線WL1の一部が、下パーツと上パーツとの接合を阻害することが生じにくくなり、これによって、ケースCSの密着性が確保されやすくなる。すなわち、本実施の形態1における第4特徴点によれば、曲線形状RSP1によって、配線WL1の配置自由度が向上し、この結果、密閉されたケースCSの製造容易性を向上させることができる。
【0101】
このように、容積部CP1と容積部CP3との接続部位(下側部位)に、曲線形状RSP1を形成するという本実施の形態1の第4特徴点は、たとえ、配線基板WB1と配線WL1との間に段差が生じる場合であっても、下パーツ内に配線WL1が収納されるフレキシビリティ(余裕)を生じさせる技術的意義を有しているが、さらに、本実施の形態1では、第4特徴点として、曲線形状RSP2も形成する点が含まれている。そして、この曲線形状RSP2を形成する構成は、以下に示す技術的意義も有している。すなわち、容積部CP1と容積部CP3との接続部位(下側部位)に、曲線形状RSP2が形成されているということは、ケースCSの強度向上を図ることができるとともに、本実施の形態1における電子装置EA1を対象動物の体内にインプラントした際、対象動物の体内組織に与えるダメージを緩和できることを意味している。このことから、本実施の形態1における第4特徴点は、曲線形状RSP2を形成することによって、ケースCSの強度向上とともに、対象動物の体内組織に与えるダメージを緩和するという技術的意義も有し、この技術的意義を通じて、さらに、本実施の形態1における第4特徴点は、対象動物の自然な行動や状態に対応した意味のあるデータを取得することに寄与しているということができる。
【0102】
なお、ここでは、容積部CP1と容積部CP3との接続部位(下側部位)に、曲線形状RSP1および曲線形状RSP2を形成する構成について説明したが、例えば、
図13に示すように、容積部CP1と容積部CP4との接続部位(下側部位)に、曲線形状を形成する構成も効果的である。なぜなら、
図13に示すように、配線基板WB1とサーミスタTHとを接続する配線WL2においても、配線基板WB1と電池BATとを接続する配線WL1と同様の接続構成をしているからである。すなわち、容積部CP1と容積部CP4との接続部位(下側部位)に、曲線形状を形成する構成によって、配線基板WB1と配線WL2との間に段差が生じる場合であっても、下パーツ内に配線WL2が収納されやすくなり、配線WL2の一部が下パーツからはみ出ることを抑制できると考えられる。
【0103】
さらに、配線WL1が収納される容積部CP3と、電池BATが収納される容積部CP2との接続部位(
図12参照)にも、曲線形状を形成してもよい。この場合は、例えば、配線WL1と電池BATとの接続部位との間に段差がほとんど生じていない。このため、容積部CP1と容積部CP3との接続部位や、容積部CP1と容積部CP4との接続部位で生じる問題点が顕在化する可能性は低いが、対象動物の体内組織に与えるダメージを緩和するという技術的意義が発揮されることから、容積部CP3と容積部CP2との接続部位にも、曲線形状を形成することが望ましいと言える。
【0104】
続いて、本実施の形態1における第5特徴点について説明する。
図16は、ケースCSの一部を構成する容積部CP4の内部の空間SP4にサーミスタTHおよび配線WL2が収納される状態を示す模式的な透視平面図である。
図16において、本実施の形態1における第5特徴点は、サーミスタTHを収納する容積部CP4の厚さが、容積部CP4のその他の部位の厚さよりも薄くなっている点にある。これにより、温度センサであるサーミスタTHの検出精度を向上することができる。つまり、サーミスタTHを収納する容積部CP4の厚さが厚くなればなるほど、サーミスタTHにおける対象動物の体温の検出精度が低下する。このことから、本実施の形態1では、容積部CP4の強度を確保できる範囲内で、できるだけ、サーミスタTHを収納する容積部CP4の厚さを薄くしているのである。この結果、本実施の形態1によれば、対象動物の体内にインプラントされた電子装置EA1によって、対象動物の体温に関する正確なデータを取得することができる。
【0105】
例えば、
図15(b)に示すように、サーミスタTHが収納される容積部CP4の上下部位の厚さを、上下方向の接合強度の維持を図ることができる範囲内で、容積部CP4の左右方向の厚さよりも薄くすることができる。これにより、本実施の形態1によれば、サーミスタTHを収納する容積部CP4の接合強度の維持を図りながら、サーミスタTHの温度検出感度の低下を抑制することができる。
【0106】
次に、本実施の形態1における第6特徴点について説明する。
図17(a)は、ケースCSの一部を構成する容積部CP3を上面から見た透視平面図である。
図17(a)において、本実施の形態1における第6特徴点は、容積部CP3の内部の空間SP3に向かって相対して突出する一対の突起部PJ1と突起部PJ2とが容積部CP3に設けられている点にある。これにより、例えば、
図17(b)に示すように、容積部CP3の内部の空間SP3に配線WL1を収納する際、互いに相対して突出する突起部PJ1と突起部PJ2とによって配線WL1を挟み込むことができる。特に、突起部PJ1と突起部PJ2との間の隙間が配線WL1の径と同等になるように設計される。この場合、配線WL1が突起部PJ1と突起部PJ2との間の隙間に挿入されると、突起部PJ1および突起部PJ2が歪み、これによって、配線WL1は、突起部PJ1と突起部PJ2とによって固定される。このように、容積部CP3に設けられる突起部PJ1および突起部PJ2は、配線WL1の位置を固定するために設けられている。
【0107】
例えば、ケースCSは、下パーツと上パーツとから構成されており、この下パーツと上パーツとを接合することにより、密閉されたケースCSが製造されることになる。このとき、容積部CP3の内部に設けられている空間SP3は、配線WL1の径に比べて大きく形成されているため、容積部CP3に突起部PJ1および突起部PJ2が設けられていない場合、配線WL1の位置が固定されないことになる。このことから、配線WL1の一部が下パーツからはみ出るおそれがある。この場合、はみ出た配線WL1の一部が、下パーツと上パーツとの接合を阻害することになり、ケースCSの密着性が確保されなくなる可能性がある。
【0108】
この点に関し、本実施の形態1では、互いに相対して突出する突起部PJ1と突起部PJ2とを容積部CP3に設けており、この突起部PJ1と突起部PJ2とにより配線WL1を挟み込むことができる。この結果、本実施の形態1によれば、突起部PJ1と突起部PJ2とによって、配線WL1の位置を固定することができる。したがって、本実施の形態1によれば、配線WL1が確実に固定されるため、配線WL1の一部が下パーツからはみ出ることを防止できる。以上のことから、本実施の形態1によれば、下パーツと上パーツとの接合を確実に実施することができ、これによって、ケースCSの密着性を確保することができる。つまり、本実施の形態1における第6特徴点によれば、ケースCSの密着性を確保できることを通じて、電子装置EA1の信頼性の向上を図ることができる。
【0109】
なお、本実施の形態1における電子装置EA1を対象動物の体内にインプラントする際、もしくは、インプラントした後において、電子装置EA1を変形させようとした場合、容積部CP3を構成する材料の適切な柔軟性から、突起部PJ1や突起部PJ2が変形したり、突起部PJ1や突起部PJ2と配線WL1の相対位置が変化することで、配線WL1に過大な応力が加わることを抑制でき、これによって、例えば、配線WL1の破損などを防止することができる。
【0110】
本実施の形態1における第6特徴点は、突起部PJ1と突起部PJ2とによって配線WL1を挟み込むことにより、配線WL1の位置を固定するという技術的思想であり、この技術的思想は、例えば、サーミスタTHとモジュール部MJU1とを接続する配線WL2にも適用することができる。
【0111】
具体的に、
図18(a)は、ケースCSの一部を構成する容積部CP4を上面から見た透視平面図である。
図18(a)において、容積部CP4の内部の空間SP4に向かって相対して突出する一対の突起部PJ1と突起部PJ2とが容積部CP4に設けられている。これにより、例えば、
図18(b)に示すように、容積部CP4の内部の空間SP4に配線WL2を収納する際、互いに相対して突出する突起部PJ1と突起部PJ2とで配線WL2を挟み込むことができる。この結果、本実施の形態1によれば、配線WL2も確実に固定されるため、配線WL2の一部が下パーツからはみ出ることを防止できる。したがって、本実施の形態1によれば、下パーツと上パーツとの接合を確実に実施することができ、これによって、ケースCSの密着性を確保することができる。
【0112】
なお、突起部PJ1および突起部PJ2の形状は、
図17(a)や
図18(a)に示す形状に限らず、例えば、
図19(a)や
図20(a)に示す形状にすることもできる。さらには、容積部CP3や容積部CP4の片側の側壁にだけ突起部(突起部PJ1あるいは突起部PJ2)を設けるように構成することもできる。
【0113】
具体的に、
図19(a)は、ケースCSの一部を構成する容積部CP3を上面から見た透視平面図であり、
図19(b)は、互いに相対して突出する突起部PJ1と突起部PJ2とによって配線WL1を挟み込む様子を示す模式図である。
図19(b)において、突起部PJ1と突起部PJ2との間の隙間は、配線WL1の径よりも若干小さくなるように設計されている。この場合、
図19(b)に示すように、配線WL1が突起部PJ1と突起部PJ2との間の隙間に挿入されると、突起部PJ1および突起部PJ2が撓り、これによって、配線WL1は、突起部PJ1と突起部PJ2で固定されることがわかる。
【0114】
同様に、
図20(a)は、ケースCSの一部を構成する容積部CP4を上面から見た透視平面図であり、
図20(b)は、互いに相対して突出する突起部PJ1と突起部PJ2とによって配線WL2を挟み込む様子を示す模式図である。
図20(b)に示すように、配線WL2が突起部PJ1と突起部PJ2との間の隙間に挿入されると、突起部PJ1および突起部PJ2が撓り、これによって、配線WL2は、突起部PJ1と突起部PJ2で固定されることがわかる。
【0115】
続いて、本実施の形態1における第7特徴点は、
図14に示すように、容積部CP1の内部に空間SP1が設けられており、この空間SP1にモジュール部MJU1が収納されている点にある。
【0116】
例えば、容積部CP1の内部に空間SP1を設けずに、モジュール部MJU1を生体親和材料(シーリング材料)で覆うことも考えられる。ただし、この場合、電子装置EA1からモジュール部MJU1を取り出しにくくなる。このことは、モジュール部MJU1を生体親和材料(シーリング材料)で覆う構成では、モジュール部MJU1の再利用や修理がしにくくなることを意味している。
【0117】
これに対し、本実施の形態1における第7特徴点によれば、容積部CP1の内部に設けられた空間SP1にモジュール部MJU1が収納されている。この場合、電子装置EA1からモジュール部MJU1が取り出しやすくなり、モジュール部MJU1の再利用や修理や故障解析がしやすくなる利点が得られる。また、容積部CP1の内部に空間SP1を設けることにより、電子装置EA1の軽量化も図ることができる。
【0118】
特に、電子装置EA1の軽量化によって、電子装置EA1をインプラントされた対象動物がストレスを感じにくくなる。このことから、容積部CP1の内部に設けられた空間SP1にモジュール部MJU1を収納するという本実施の形態1における第7特徴点は、モジュール部MJU1の再利用や修理や故障解析がしやすくなる利点を有しているだけでなく、電子装置EA1の軽量化を通じて、対象動物の自然な行動や状態に対応した意味のあるデータを取得することにも寄与すると言える。
【0119】
ただし、本実施の形態1における第7特徴点によれば、モジュール部MJU1ががたつきやすくなるというデメリットも存在する。この点に関し、本実施の形態1では、
図14に示すように、モジュール部MJU1の凹凸形状にフィットするように、容積部CP1の形状に凹凸を設ける工夫を施している。つまり、本実施の形態1では、モジュール部MJU1の部品実装に伴う凹凸形状を反映するように、容積部CP1の内壁形状に凹凸を設ける工夫を施している。これにより、本実施の形態1における電子装置EA1によれば、モジュール部MJU1のがたつきを軽減することができる。
【0120】
なお、モジュール部MJU1の凹凸形状に対して、ケースCSの一部を構成する容積部CP1の内壁形状をどの程度反映するかは、ケースCSを製造するための金型の価格や耐久性にも影響を与えるため、ケースCSの設計では、経済性も考慮する必要がある。
【0121】
本実施の形態1では、モジュール部MJU1のがたつきを軽減する観点から、さらなる工夫を施しており、この工夫点が、本実施の形態1における第8特徴点である。
【0122】
以下に、本実施の形態1における第8特徴点について説明する。
図14に示すように、本実施の形態1における第8特徴点は、容積部CP1の内部に存在する空間SP1に収納されたモジュール部MJU1と、容積部CP1の底面とを接着材ADH2で接着している点にある。例えば、本実施の形態1では、配線基板WB1の裏面(下面)に搭載されているセンサモジュールSMと容積部CP1の底面とを両面テープで接着している。したがって、センサモジュールSMに含まれるセンサは、容積部CP1に固定されていることになり、これによって、モジュール部MJU1が容積部CP1に固定されることなる。
【0123】
これにより、本実施の形態1における第8特徴点によれば、モジュール部MJU1のがたつきを抑制することができる。さらに、センサモジュールSMに含まれるセンサとして、加速度センサを使用する場合には、がたつきに起因する加速度センサへのノイズの重畳を抑制することができ、これによって、加速度センサのセンシング感度の劣化を抑制することができる。つまり、本実施の形態1における第8特徴点によって、モジュール部MJU1のがたつきが抑制される結果、加速度センサが、ケースCS、引いては、対象動物と一体となって同じ動きをすることになる。このことから、本実施の形態1における電子装置EA1によれば、加速度センサが持つ本来の性能(センシング感度)を引き出すことができる。このことは、対象動物の動作を忠実に反映したデータを取得することができることを意味し、本実施の形態1における第8特徴点は、モジュール部MJU1のがたつきが抑制されることを通じて、対象動物の行動や状態に正確に対応した意味のあるデータを取得することにも寄与すると言える。
【0124】
なお、接着材ADH2としては、上述した両面テープの他に、ワックスや可視光硬化型の仮固定材を使用することもできる。例えば、接着材ADH2として、加温水に浸すことにより剥離が可能となるタイプのワックスを使用することができる。
【0125】
次に、本実施の形態1における第9特徴点について説明する。例えば、
図11(a)および
図11(b)に示すように、本実施の形態1における第9特徴点は、アンテナANTの周囲になるべく導体パターン(金属パターン)や電子部品を配置しない点にある。例えば、平面視において、アンテナANTは、センサモジュールSMやコネクタCNTに代表されるモジュール部MJU1の構成要素である電子部品とは重ならない位置に設けられている。これにより、本実施の形態1によれば、アンテナANTの特性を改善することができる。この結果、モジュールの通信距離を長くすることができる。つまり、アンテナANTの周囲に導体パターンが存在すると、この導体パターンによる電磁波の遮蔽効果によって、アンテナANTの特性が著しく悪化することになる。そこで、本実施の形態1では、なるべくアンテナANTの周囲に導体パターンを配置していないのである。
【0126】
以上のことから、本実施の形態1における第9特徴点によれば、アンテナANTの特性を改善できるため、電子装置EA1(ノード)の通信距離を長くすることができる。このことは、ワイヤレスセンサネットワークの通信経路の選択の余地が拡大することを意味する。つまり、ノードの通信距離が長くなることによって、例えば、近接するノードとの間の通信経路が通信障害で使用不能の状態となったとしても、離れたノードとの間での通信経路を確保することが可能となる。このため、本実施の形態1における電子装置EA1をワイヤレスセンサネットワークのノードに使用することによって、通信障害の影響を受けにくいワイヤレスセンサネットワークを構築することができる。
【0127】
このように、本実施の形態1における第9特徴点によれば、アンテナ特性の改善によって、電子装置EA1の通信距離を長くすることができる。このことは、本実施の形態1における第9特徴点によれば、対象動物の行動範囲の影響を受けにくい電子装置EA1を提供することができることを意味する。この結果、本実施の形態1における電子装置EA1は、対象動物の自然な行動範囲が広範囲である場合にも対応することができ、これによって、対象動物の自然な行動や状態に対応した意味のあるデータを取得することができる。
【0128】
<変形例1>
続いて、本変形例1における電子装置EA2について説明する。
図21は、本変形例1における電子装置EA2の一部を拡大して示す図である。
図21に示す本変形例1における電子装置EA2の構成は、
図14に示す実施の形態1における電子装置EA1の構成とほぼ同様の構成をしていることから、相違点を中心に説明する。
【0129】
図21において、本変形例1における電子装置EA2では、ケースCS自体を工業用シリコーン樹脂から形成し、このケースCSの表面を生体親和型のシリコーン樹脂からなる被覆膜CATで被覆している。これにより、以下に示す利点を得ることができる。
【0130】
例えば、
図14に示す実施の形態1における電子装置EA1では、対象動物へのインプラントを前提としていることから、ケースCS自体を生体親和型のシリコーン樹脂から形成している。これにより、実施の形態1における電子装置EA1によれば、対象動物の体内組織に与えるダメージを低減することができる。
【0131】
ただし、生体親和材料は、高い品質管理基準などを満たすことが要求されるため、材料単価が高く、電子装置EA1の製造コストが上昇するデメリットがある。そこで、本変形例1では、ケースCS自体を工業用シリコーン樹脂から形成し、このケースCSの表面を生体親和型のシリコーン樹脂からなる被覆膜CATで被覆する構成を採用している。
【0132】
ここで、工業用シリコーン樹脂は、生体親和型のシリコーン樹脂に比べて、品質管理基準も低く、比較的安価である。したがって、本変形例1における電子装置EA2によれば、生体親和型のシリコーン樹脂に比べて安価な工業用シリコーン樹脂からケースCS自体を形成しているため、電子装置EA2の製造コストを削減することができる。
【0133】
ただし、工業用シリコーン樹脂から形成されたケースCSを対象動物にインプラントすると、対象動物の体内組織に悪影響を及ぼすことになる。このことは、対象動物にとって、非常に大きなストレスとなり、対象動物の自然な行動や状態に対応した意味のあるデータを取得することが困難になるどころか、対象動物の健康にも悪影響を及ぼすことになる。
【0134】
そこで、本変形例1では、ケースCS自体を安価な工業用シリコーン樹脂から形成する一方、ケースCSの表面を生体親和型のシリコーン樹脂からなる被覆膜CATで被覆している。この場合、ケースCSを対象動物にインプラントしても、対象動物の体内組織と直接接触するのは、工業用シリコーン樹脂ではなく、生体親和型のシリコーン樹脂からなる被覆膜CATであるため、対象動物の体内組織に与えるダメージを低減することができる。このように、本変形例1における電子装置EA2によれば、ケースCS自体の材料に工業用シリコーン樹脂を使用することにより、電子装置EA2の製造コストを削減しながら、生体親和型のシリコーン樹脂からなる被覆膜CATを形成することにより、電子装置EA2をインプラントする対象動物に対して与えるストレスを低減することができる。
【0135】
なお、生体親和型のシリコーン樹脂からなる被覆膜CATは、例えば、ディッピング法により形成することができる。このとき、1回のディッピングでは、必要な膜厚の被覆膜CATを形成できない場合には、複数回のディッピングを実施することにより、被覆膜CATの膜厚を確保することができる。
【0136】
<変形例2>
次に、本変形例2における電子装置EA3について説明する。
図22は、本変形例2における電子装置EA3の模式的な実装構成を示す透視平面図である。
図22において、本変形例2における電子装置EA3の特徴点は、例えば、ケースCSの一部を構成する容積部CP1の角部を曲線形状(ラウンド形状)にし、かつ、容積部CP2の角部も曲線形状(ラウンド形状)としている点にある。これにより、本変形例2における電子装置EA3を対象動物の体内にインプラントした場合、上述した曲線形状により、対象動物の体内組織に与えるダメージを低減することができる。そして、対象動物の体内組織へのダメージを低減できるということは、それだけ、対象動物に与えるストレスが低減されることを意味し、これによって、対象動物の自然な行動や状態が維持されやすくなる。この結果、本変形例2における電子装置EA3によれば、対象動物の自然な行動や状態に対応した意味のあるデータを取得することが容易となる利点を得ることができる。
【0137】
また、
図23は、本変形例2における電子装置EA3の模式的な実装構成を示す透視側面図である。
図23において、本変形例2における電子装置EA3の特徴点は、容積部CP1と容積部CP3(接続部)と容積部CP2とにわたって平坦な平坦面FSがケースCSに形成されている点にある。これにより、電子装置EA3を対象動物にインプラントしやすくなるという利点を得ることができる。例えば、電子装置EA3を対象動物の骨に沿ってインプラントすることが考えられる、この場合、本変形例2における電子装置EA3では、対象動物の骨に沿って平坦面FSを接触させることにより、対象動物に違和感を与えることなく、電子装置EA3を対象動物の体内にインプラントすることができる。
【0138】
以上のことから、本変形例2における電子装置EA3によれば、ケースCSの角部を曲線形状とすることにより、対象動物の体内組織に与えるダメージを低減し、かつ、ケースCSの底面を平坦面FSとすることにより、対象動物にできるだけ違和感を与えることなく、電子装置EA3を対象動物の体内にインプラントすることができる。
【0139】
なお、本変形例2では、例えば、
図23に示すように、配線WL1を配線基板WB1の下側から配線基板WB1に接続されている。同様に、
図23では図示されないが、配線WL2も配線基板WB1の下側から配線基板WB1に接続されている。
【0140】
<変形例3>
続いて、本変形例3における電子装置EA4について説明する。
図24は、本変形例3における電子装置EA4の一部を拡大して示す図である。
図24に示す本変形例3における電子装置EA4の特徴は、モジュール部MJU2が1つの配線基板WBを有し、この配線基板WBの両面にモジュール部MJU2を構成する電子部品が搭載されている点にある。すなわち、
図14に示す実施の形態1におけるモジュール部MJU1は、電子部品の搭載された配線基板WB1と、電子部品の搭載された配線基板WB2との積層構造から構成されている。これに対し、
図24に示す本変形例3におけるモジュール部MJU2は、電子部品が搭載された配線基板WBから構成され、積層構造とはなっていない。
【0141】
この場合、本変形例3によれば、モジュール部MJU2の平面積(フットプリント)は増大する一方、モジュール部MJU2の薄型化を図ることができる。したがって、本変形例3における電子装置EA4によれば、電子装置EA4を対象動物にインプラントしても、対象動物がストレスを感じにくく、対象動物の自然な行動や状態が保持される。このため、本変形例3における電子装置EA4をワイヤレスセンサネットワークのノードに採用することにより、対象動物についての有効な意味のあるデータを取得することができるという顕著な効果を得ることができる。
【0142】
<電子装置の製造方法>
次に、本実施の形態1における電子装置EA1の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図25は、本実施の形態1における電子装置EA1の製造工程の流れを示すフローチャートである。
【0143】
まず、ケースの一部となる下パーツBPRTを準備する(S101)。具体的に、
図26は、下パーツBPRTの構成形状を模式的に示す斜視図である。
図26に示すように、準備される下パーツBPRTには、凹部CAV1と、凹部CAV1とは離間した凹部CAV2と、凹部CAV1と凹部CAV2とを接続する凹部CAV3と、凹部CAV1と接続する凹部CAV4とが形成されている。なお、
図26では図示していないが、下パーツBPRTには、例えば、
図17および
図19に示す突起部PJ1や突起部PJ2が形成されている。
【0144】
また、ケースの一部となる上パーツUPRTも準備する(S102)。具体的に、
図27は、上パーツUPRTの構成形状を模式的に示す斜視図である。
図27に示す上パーツUPRTは、下パーツBPRTに形成されている凹部CAV1と凹部CAV2と凹部CAV3と凹部CAV4とを密閉する機能を有する。
【0145】
さらに、モジュール部MJU1を準備する(S103)。具体的には、加速度に代表される物理量を検出するセンサと、センサからの出力信号に基づくデータを送信する無線通信部と、を有するモジュール部MJU1を準備する。例えば、本実施の形態1におけるモジュール部MJU1は、
図9に示す配線基板WB1と、
図10に示す配線基板WB2とを有し、これらの配線基板WB1と配線基板WB2とを、
図11(a)および
図11(b)に示すように積層する。つまり、
図11(b)に示すように、配線基板WB1や配線基板WB2の所定位置に接着材(シリコーン接着材)ADH1を供給し、かつ、コネクタCNTを嵌合した後、キュア工程(120℃、1時間)を実施することにより、配線基板WB1と配線基板WB2との積層構造からなるモジュール部MJU1を準備する。
【0146】
また、例えば、リチウムイオン電池からなる電池BATも準備する(S104)。このとき、予め配線が接続された電池BATを準備してもよい。この電池BATは、モジュール部MJU1に電力を供給する機能を有する。
【0147】
続いて、例えば、半田接続を使用して、モジュール部MJU1と電池BATとを配線WL1で接続する(S105)。具体的には、
図28に示すように、モジュール部MJU1と電池BATとを配線WL1で接続し、かつ、サーミスタTHに予め接続されている配線WL2を使用して、モジュール部MJU1と温度センサであるサーミスタTHとを電気的に接続する。さらに、少なくとも、センサモジュールの裏面を含むモジュール部MJU1の領域に、両面テープを貼り付ける。なお、電池BATの裏面にも両面テープを貼り付けてもよい。
【0148】
次に、上パーツUPRTと下パーツBPRTとの分子接着のための前処理を実施する。具体的には、上パーツUPRTと下パーツBPRTとを治具にセットし、上パーツUPRTと下パーツBPRTとが変形しないように補助した後、前処理であるコロナ放電処理を実施する。
【0149】
その後、一体化されたモジュール部MJU1と電池BATとサーミスタTHとを下パーツBPRT内に配置する(S106)。具体的には、
図29に示すように、下パーツBPRTの凹部CAV1にモジュール部MJU1を配置し、かつ、下パーツBPRTの凹部CAV2に電池BATを配置する。ここで、モジュール部MJU1は、両面テープによって、凹部CAV1の底面に固定される。また、電池BATは、両面テープによって、凹部CAV2の底面に固定される。さらに、下パーツBPRTの凹部CAV3に配線WL1を配置し、かつ、下パーツBPRTの凹部CAV4に配線WL2を配置する。
【0150】
この際、上述した本実施の形態1における第4特徴点および第6特徴点により、下パーツBPRTの凹部CAV3内に配線WL1が収納されやすくなり、配線WL1の一部が下パーツBPRTからはみ出ることを抑制できる。同様に、下パーツBPRTの凹部CAV4内に配線WL2が収納されやすくなり、配線WL2の一部が下パーツBPRTからはみ出ることを抑制できる。
【0151】
続いて、下パーツBPRTと上パーツUPRTとを接着することにより、凹部CAV1と凹部CAV2と凹部CAV3と凹部CAV4とを密閉する(S107)。具体的には、上パーツUPRTを位置合わせして、下パーツBPRTに接触させた後、加熱・加圧工程を実施することにより、上パーツUPRTと下パーツBPRTとの分子接着が完了する。この加熱・加圧工程は、例えば、60℃(温度)、5kgf(荷重)、30分(時間)の条件で実施される。温度が高い場合には、短時間での接着が可能であるが、電池BATの耐熱性を考慮して、60℃としている。
【0152】
以上のようにして、
図30に示すように、ケースCSで密閉された本実施の形態1における電子装置EA1を製造することができる。
【0153】
なお、本実施の形態1では、上パーツUPRTと下パーツBPRTとの接着法に分子接着法を使用したが、これに限らず、接着材を使用することもできるし、分子間力接着法を使用することもできる。
【0154】
(実施の形態2)
<電子装置の実装構成>
次に、本実施の形態2における電子装置EA5について説明する。
【0155】
図31は、本実施の形態2における電子装置EA5の模式的な実装構成を示す透過平面図である。また、
図32は、本実施の形態2における電子装置EA5の模式的な実装構成を示す透過側面図である。
【0156】
図31および
図32において、本実施の形態2の特徴点は、生体親和材料からなる容積部CP1に収納されたモジュール部MJU1と、生体親和材料からなる容積部CP2に収納された電池BATとを電気的に接続する接続部が、生体親和材料からなる被覆膜CAT1で被覆された配線WL1から形成されている点にある。
【0157】
これにより、本実施の形態2における電子装置EA5によれば、接続部のフレキシビリティを向上することができる。このことは、本実施の形態2における電子装置EA5をインプラントした対象動物の動きに追従して、電子装置EA5の接続部が変形しやすくなることを意味する。これにより、対象動物は、ストレスを感じにくくなり、対象動物の自然な行動や状態が保持される。このため、本実施の形態2における電子装置EA5をワイヤレスセンサネットワークのノードに採用することにより、対象動物についての有効な意味のあるデータを取得することができるという顕著な効果を得ることができる。
【0158】
なお、本実施の形態2における電子装置EA5においては、容積部CP1と配線WL1との接続部位の強度を向上するために、容積部CP1と配線WL1との接続部位に、生体親和材料から形成された補強用接着材ADH3を設けている。
【0159】
図31および
図32において、生体親和材料からなる容積部CP1に収納されたモジュール部MJU1と配線WL2を介して電気的に接続されるサーミスタTHは、生体親和材料からなる被覆膜CAT2で被覆され、かつ、配線WL2も生体親和材料からなる被覆膜CAT2で被覆されている。このとき、本実施の形態2における電子装置EA5によれば、サーミスタTHを被覆する被覆膜CAT2の膜厚が薄くなるため、サーミスタTHの温度検出感度の低下を抑制することができる。
【0160】
なお、本実施の形態2における電子装置EA5においては、容積部CP1と配線WL2との接続部位の強度を向上するために、容積部CP1と配線WL2との接続部位に、生体親和材料から形成された補強用接着材ADH3を設けている。
【0161】
<電子装置の製造方法>
続いて、本実施の形態2における電子装置EA5の製造方法について説明する。
図33は、本実施の形態2における電子装置EA5の製造工程の流れを示すフローチャートである。
図33において、まず、第1凹部が形成された下パーツBPRT1と、第2凹部が形成された下パーツBPRT2とを準備する(S201)。また、下パーツBPRT1の第1凹部を密閉するための上パーツUPRT1と、下パーツBPRT2の第2凹部を密閉するための上パーツUPRT2とを準備する(S202)。
【0162】
さらに、物理量を検出するセンサと、センサからの出力信号に基づくデータを送信する無線通信部と、を有するモジュール部MJU1を準備する(S203)。また、モジュール部MJU1に電力を供給するための電池BATを準備する(S204)。
【0163】
次に、生体親和材料で被覆された配線WL1と、生体親和材料で被覆されたサーミスタ(配線を含む)を準備する(S205)。具体的に、配線WL1およびサーミスタは、後に半田接合する端部をテープなどでマスキングした後、生体親和材料へのディッピング→乾燥(常温)→焼成(80℃、1時間)を実施することにより、表面に被覆膜を形成する。このとき、配線WL1やサーミスタは、ブラインドとなる構造部位がなく、表面が比較的平滑であるため、ディッピング時での気泡の巻き込みに起因するボイドの発生を比較的容易に回避することができるとともに、ボイドの有無の検査も比較的容易である。また、電池BATやモジュール部MJU1とは切り離して被覆膜の形成ができるため、比較的高温での焼成も適用可能となり、作業効率を向上することができる。一方、電池BATに接続されている場合には、電池BATの耐熱性を確保する必要性から最大温度60℃の制約が存在するため、作業効率の向上が実現しにくくなる。
【0164】
なお、被覆膜の膜厚を厚くする場合には、配線WL1およびサーミスタが、平滑で比較的単純な形状であることから、溶剤含有量の調整により、高粘度樹脂へのディッピングの適用が可能であり、このディッピングによって、被覆膜の厚膜化を図ることができる。被覆膜の厚膜化を図る別の手段としては、ディッピング→乾燥→焼成の一連の工程を1サイクルとして、複数のサイクルを繰り返すことにより、被覆膜の厚膜化を実現できる。
【0165】
続いて、モジュール部MJU1と電池BATとを、被覆膜で被覆された配線WL1で接続するとともに、モジュール部MJU1とサーミスタ(配線を含む)とを電気的に接続する(S206)。
【0166】
その後、下パーツBPRT1内にモジュール部MJU1を配置し(S207)、下パーツBPRT2内に電池BATを配置する(S208)。そして、下パーツBPRT1と上パーツUPRT1とを接着し、かつ、下パーツBPRT2と上パーツUPRT2とを接着する(S209)。具体的に、本実施の形態2においても、前記実施の形態1と同じように分子接着法を使用するが、本実施の形態2では、モジュール部MJU1と電池BATとが別々のパーツによって密閉封止されることになる。このようにして、
図31や
図32に示すように、下パーツBPRT1と上パーツUPRT1との密閉構造からなる容積部CP1と、下パーツBPRT2と上パーツUPRT2との密閉構造からなる容積部CP2とが形成される。このとき、
図31および
図32に示すように、容積部CP1と容積部CP2とが、生体親和材料で被覆された配線WL1からなる接続部で接続され、容積部CP1と生体親和材料で被覆されたサーミスタTHとが、生体親和材料で被覆された配線WL2で接続されることになる。
【0167】
そして、最後に、
図31および
図32に示すように、容積部CP1と配線WL1との接続部位と、容積部CP1と配線WL2との接続部位とに、補強のための接着材ADH3を形成する。これにより、容積部CP1と配線WL1との接続部位、および、容積部CP1と配線WL2との接続部位の機械的強度を向上することができる。なお、補強用の接着材ADH3は、生体親和材料から形成される。
【0168】
以上のようにして、本実施の形態2における電子装置EA5を製造することができる。
【0169】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。