(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
患者(被測定者)が就寝中に睡眠障害があるか否かを判定することで、患者の状態を調べたり、治療に活躍したりするためのシステムが知られている。睡眠障害としては、例えば睡眠1時間当たりの無呼吸の回数に基づく無呼吸指数や、周期的な四肢の運動回数に基づく周期性四肢運動障害指数等が知られている。
【0003】
例えば、睡眠1時間当たりの無呼吸の回数(AI:Apnea Index)を利用したり、AHI(Apnea Hypopnea Index:無呼吸低呼吸指数)を利用したりして評価する方法が知られている。
【0004】
ここで、睡眠障害を正確に検知するためには、PSG(ポリソムノグラフィ、睡眠ポリグラフ検査)が用いられる。PSGは、睡眠時における脳波、呼吸、脚の運動、あごの運動、眼球運動(レム睡眠とノンレム睡眠)、心電図、酸素飽和度、胸壁の運動、腹壁の運動等の様々な状態を記録し、睡眠状態を判定する。
【0005】
しかし、そのためには多くのセンサを被測定者に取り付ける必要があり、使い勝手が良いものではない。したがって、体動を検知することにより、簡易的に睡眠状態を判定する装置が知られている。
【0006】
このとき、睡眠状態を判定する方法として、体動と、睡眠時間との関係より、睡眠の評価を行う発明が開示されている。(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非装着の呼吸・体動センサでは睡眠/覚醒を体動の頻度により判定しているため、睡眠時無呼吸からの呼吸再開時の深呼吸、周期性四肢運動障害による睡眠中の四肢の動き、アトピー性皮膚炎患者の睡眠中の掻破行動を覚醒と判定し、睡眠時間を本来より短く判定する傾向がある。
【0009】
本来より短い睡眠時間と判定した場合は、睡眠1時間あたりの障害回数である重症度(無呼吸指数や周期性四肢運動障害指数等)は本来より高く判定されてしまう。極端な場合では、睡眠時間が0分となるケースもあり、指数算出ができないこともある。
【0010】
また、測定1時間あたり又は離床/在床の判定より算出した就床1時間あたりの障害回数を重症度とする場合には、睡眠1時間あたりの障害回数を重症度とするPSGと比較して、睡眠障害の重症度を過小評価してしまうという問題点があった。
【0011】
上述した課題に鑑み、本発明が目的とするところは、体動により検出された患者の状態から適切な睡眠状態を判定し、在床時間及び睡眠時間を用いることにより、睡眠障害の有無について適切に判定することができる睡眠状態判定装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題に鑑み、本発明の睡眠障害判定装置は、
被測定者が在床している在床時間を計時する在床時間計時手段と、
被測定者の体動から睡眠状態である睡眠時間を計時する睡眠状態計時手段と、
被測定者の体動から睡眠障害イベントを検出する睡眠障害イベント検出手段と、
前記睡眠障害イベントの回数を、前記在床時間と、前記睡眠時間との平均値で除することにより、睡眠障害の重症度を判定する睡眠障害重症度判定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の睡眠障害判定方法は、
被測定者が在床している在床時間を計時する在床時間計時ステップと、
被測定者の体動から睡眠状態である睡眠時間を計時する睡眠状態計時ステップと、
被測定者の体動から睡眠障害イベントを検出する睡眠障害イベント検出ステップと、
前記睡眠障害イベントの回数を、前記在床時間と、前記睡眠時間との平均値で除することにより、睡眠障害の重症度を判定する睡眠障害重症度判定ステップと、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被測定者の体動から検出された睡眠障害イベントの回数を、在床時間と、睡眠時間との平均値で除することにより、睡眠障害の重症度を判定することができる。これにより、本格的な検査装置を用いることなく、簡易な方法であっても、被測定者の睡眠障害の重症度を適切に判定することが可能となる
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0017】
[1.システム全体]
図1は、睡眠障害判定システムの使用方法について説明するための図である。
図1に示すように、睡眠障害判定システム1は、ベッド10の床部と、マットレス20の間に載置される検出装置3と、検出装置3より出力される値を処理するため処理装置5を備えて構成されている。この検出装置3、処理装置5とで睡眠障害判定装置を構成している。
【0018】
マットレス20に、被測定者Pが在床すると、マットレス20を介して被測定者Pの体動(振動)を検出装置3が検出する。そして、検出された振動に基づいて、被測定者Pの呼吸が検出される。本実施形態においては、検出された呼吸が無線を介して処理装置5(例えば、コンピュータ等)に送信され、呼吸波形を求めることができる。なお、例えば検出装置3に記憶部、表示部等を設けることにより一体に形成されてもよい。また、処理装置5は、汎用的な装置で良いため、コンピュータ等の情報処理装置に限られず、例えばタブレッドやスマートフォン等といった装置で構成されてもよい。
【0019】
ここで、検出装置3は、厚さが薄くなるようにシート状に構成されている。これにより、ベッド10と、マットレス20の間に載置されたとしても、被測定者Pに違和感を覚えさせることなく使用できることとなる。
【0020】
なお、検出装置3は、被測定者Pの体動や呼吸運動を検出できればよい。本実施形態においては、体動に基づいて呼吸を検出しているが、例えば赤外線センサ等により被測定者Pの体動を検出したり、歪みゲージ付きアクチュエータを利用しても良い。
【0021】
[2.機能構成]
続いて、睡眠障害判定システム1(睡眠障害判定装置)の機能構成について、
図2を用いて説明する。本実施形態における睡眠障害判定システム1は、検出装置3と、処理装置5とを含む構成となっており、各機能部(処理)は、体動検出センサ200以外についてはどちらで実現されても良い。
【0022】
睡眠障害判定システム1は、制御部100と、体動検出センサ200と、入力部300と、出力部400と、記憶部500とを含んで構成されている。
図1の場合であれば、制御部100、体動検出センサ200及び記憶部500は検出装置3に備えられており、制御部100、入力部300、出力部400、記憶部500は端末装置5に備えられている。
【0023】
制御部100は、睡眠障害判定システム1の動作を制御するための機能部であり、CPU等、睡眠障害判定システム1に必要な制御回路によって構成されている。制御部100は、記憶部500に記憶されている各種プログラムを読み出して実行することにより各種処理を実現することとなる。なお、本実施形態においては、制御部100は全体として動作しているが、検出装置3、処理装置5のそれぞれに設けられるものである。
【0024】
体動検出センサ200は、被測定者Pの体動を検出するセンサである。体動検出センサ200は、呼吸検出部210と、体動検出部220とを有して構成されている。
【0025】
呼吸検出部210は、被測定者の呼吸を検出するための機能部である。検出された振動(体動)から、被測定者の呼吸を検出する。また、体動検出部220を利用することにより、寝返りや心拍等被測定者Pの呼吸以外の体動を検出することもできる。
【0026】
本実施形態における呼吸検出部210は、例えば、圧力センサにより被測定者の振動(体動)を検出し、振動から呼吸を検出するが、荷重センサにより、被測定者の重心位置(体動)の変化により呼吸を検出することとしても良いし、マイクロフォンを設けることにより、マイクロフォンが拾う音に基づいて検出しても良い。何れかのセンサを用いて、被測定者の呼吸が検出出来れば良い。
【0027】
更に体動検出センサ200を利用することにより、被測定者Pの在床状態(在床、離床や端座位等)を検出したり、睡眠状態(睡眠、覚醒)を検出したりすることが可能である。
【0028】
入力部300は、測定者が種々の条件を入力したり、測定開始の操作入力を行う為の機能部である。例えば、ハードウェアキーや、ソフトウェアキーといった何れかの入力手段により実現される。
【0029】
出力部400は、睡眠状態を出力したり、判定された睡眠障害の状態を報知したりするための機能部である。出力部400としては、ディスプレイ等の表示装置であっても良いし、警報等を報知する報知装置(音出力装置)であっても良い。また、データを記憶する外部記憶装置や、データを通信路で送信する送信装置等であっても良い。
【0030】
記憶部500は、睡眠障害判定システム1が動作するための各種データ及びプログラムを記憶しておく機能部である。制御部100は、記憶部500に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現することとなる。ここで、記憶部500は、例えば半導体メモリや、磁気ディスク装置等により構成されている。
【0031】
ここで、記憶部500には、メインプログラム502と、在床時間計時プログラム504と、睡眠時間計時プログラム506と、睡眠障害イベント判定プログラム508とが記憶されている。
【0032】
ここで、在床時間計時プログラム504と、睡眠時間計時プログラム506とは、常時実行される事としてもよい。すなわち、バックグランドで実行されることにより、被測定者Pの在床時間や、睡眠時間を常時測定可能である。
【0033】
[3.処理の流れ]
続いて、本実施形態における睡眠障害判定システム1の処理の流れについて説明する。まず、バックグランドで実行される処理について説明する。
【0034】
[3.1 在床時間計時処理]
まず、在床時間計時処理について説明する。体動検出センサ200を使うことにより、被測定者の在床検知を行う(ステップS102)。例えば、体動検出センサ200に、所定値以上の荷重が検出された場合には、被測定者が在床であると検知される。また、別途在床か離床かを別途センサを設けたりしてもよいし、手動で設定しても良い。
【0035】
ここで、被測定者が在床していることが検知されると(ステップS102;Yes)、在床時間の計時がスタートする(ステップS104)。
【0036】
在床時間の計時が開始されている状況で、今度は離床があったがどうかを検知する(ステップS106)。離床の場合は在床と逆(例えば、体動検出センサ200から、検出されていた荷重が所定の閾値未満の値となる)の検知を行えば良い。離床が検知されると(ステップS106;Yes)、在床時間の計時がストップする(ステップS108)。また、離床の状態として、端座位等を含めても良い。
【0037】
[3.2 睡眠時間計時処理]
続いて、睡眠時間計時処理について説明する。本処理も、バックグランドで実行される処理であり、体動検出センサ200により、被測定者が在床状態にあるときに実行される処理である。
【0038】
まず、患者の状態が現在「睡眠状態」であるか否かを判定する(ステップS202)。ここで、患者が睡眠状態であると判定されると(ステップS202;Yes)、睡眠時間の計時がスタートする(ステップS204)。
【0039】
この状態で、患者が覚醒状態になったか否かを判定する(ステップS206)。患者が覚醒状態になると、(ステップS206;Yes)、睡眠時間の計時をストップする(ステップS208)。
【0040】
睡眠状態であるか否かは、体動検出センサ200から検出される体動により判定すれば良い。例えば、呼吸検出部210による呼吸であったり、体動検出部220から検出される体動の有無等により判定される。被測定者が睡眠状態であるか、覚醒状態であるかは、公知の技術を利用出来ることから、その詳細な説明を省略する。
【0041】
[3.3 メイン処理]
それでは、本実施形態におけるメイン処理について、
図5を用いて説明する。当該処理は、被測定者が在床状態の場合に実行される処理である。
【0042】
まず、被測定者の体動を検出し(ステップS302)、検出された体動により睡眠障害が起こったか否かを判定する(ステップS304)。そして、睡眠障害があった場合(睡眠障害が検出された場合)には(ステップS304;Yes)、睡眠障害イベント数が1加算される(ステップS306)。
【0043】
そして、被測定者が在床状態の間、すなわち本処理を終了する割り込みが発生するまで、上記ステップS302〜ステップS308を繰り返し実行する(ステップS308;No→ステップS302)。
【0044】
ここで、処理終了割り込みがあった場合には(ステップS308;Yes)、睡眠障害イベント数から、単位時間当たりの指数である睡眠障害指数(RDI)を算出する(ステップS310)。睡眠障害指数は、具体的には、
睡眠障害指数(RDI)=睡眠障害イベント数/((在床時間+睡眠時間)/2)
で、算出されることとなる。
【0045】
そして、算出された睡眠障害指数が出力部400に出力される(ステップS312)。ここで、出力先としては、例えばモニタ等の表示装置であれば表示装置上に表示され、通信装置であれば、メール等により送信されたりする。また、所定の睡眠障害指数を設定しておき、所定値を超えた場合にはアラームを出力するといったものでもよい。
【0046】
ここで、上記ステップS304において、睡眠障害が起こったか否かを判定しているが、睡眠障害を判定する手段として種々の方法が考えられる。
【0047】
例えば、睡眠障害を判定する睡眠障害イベント判定処理の一例を
図6にしめす。まず、現在算出されている呼吸波形が減衰範囲に入ったか否かを判定する(ステップS402)。ここで、減衰範囲とは、基準振幅に所定の減衰閾値を乗じたものであり、基準振幅から概ね30〜50%以上減衰している範囲である。例えば、本実施形態において、減衰閾値が0.5とすれば、基準振幅の50%以下に呼吸振幅が入ったか否かを判定する。
【0048】
そして、一度減衰範囲に呼吸波形が入った後に、呼吸波形が再び減衰範囲を超えた場合には(ステップS402;Yes→ステップS404;Yes)、呼吸波形が減衰範囲に入っていた時間が減衰時間以上であったか否かを判定する(ステップS406)。減衰時間は予め定められた閾値であり、本実施形態では10秒として設定されている。
【0049】
減衰時間以上、呼吸振幅が減衰範囲にあった後、1〜3呼吸以内に基準振幅を超えている場合には(ステップS406;Yes→ステップS408;Yes)、睡眠障害イベントとして判定する(ステップS412)。
【0050】
他方、1〜3呼吸以内に呼吸波形が基準振幅は超えていないが、体動を検出した場合にも(ステップS408;No→ステップS410;Yes)、睡眠障害イベントを判定する(ステップS412)。
【0051】
なお、これらの条件に合致しない場合には、睡眠障害イベント判定処理においては、睡眠障害イベントは判定されないこととなる(ステップS408;No→ステップS410;No、ステップS406;No)。
【0052】
また、上述した実施形態では、ステップS408、S410においては、1〜3呼吸内と説明したが、時間で検出しても良い。例えば、5秒以内に、基準振幅を超えた場合や、体動を検出した場合に睡眠障害イベントとして判定しても良い。
【0053】
[4.実施例・効果]
続いて、本実施形態における実施例・効果について説明する。まず、睡眠障害イベントとして判定される具体的な例について
図7を用いて説明する。
図7は、呼吸波形を模式的に表した図である。基準振幅がM1である場合、呼吸波形の振幅が減衰範囲M2に入っている時間が時間t1だけある。この時間t1が10秒以上であり、その後、時間t2の間に呼吸波形の振幅が減衰範囲M2を超えている。
【0054】
そして、時間t2の間(3呼吸以内)に、呼吸波形の振幅が基準振幅を超えている。したがって、
図7においては睡眠障害イベント判定処理により、睡眠障害イベントが判定される。
【0055】
次に、今回の睡眠障害イベント、例えば無呼吸状態を検出した相関関係を
図8、
図9に示す。縦軸はPSGを用いて睡眠障害イベント数(無呼吸状態となった数)を検出したものであり、横軸は体動検出センサのみを用いて検出した数である。
【0056】
ここで、PSGにより算出されたAHIは無呼吸の重症度を判定するのに用いられる指標である。例えば、5≦AHI<15を軽度、15≦AHI<30を中等度、30≦AHIを重度と判定することができる。
【0057】
また、
図8は睡眠時間のみで算出した値であり、
図9は、本実施形態の方法にて算出した値に基づいて散布図となっている。
【0058】
ここで、
図8の散布図に基づいて回帰分析を行うと、相関係数は「0.64」となるが、
図9の散布図に基づいて回帰分析を行うと、相関係数は「0.79」と求まる。このように、求められた相関関数(相関係数)からも本実施形態において、より正確な状態で睡眠障害イベントを判定していることが解る。
【0059】
特に、
図8示すように、体動が多い被測定者等は、従来は回帰直線から大きく離れた位置にプロットされてしまう場合がある。しかし、
図9でも明らかなように、本実施形態では回帰直線上にほぼ被測定者はプロットされることとなる。
【0060】
これにより、本実施形態において算出される睡眠障害指数(RDI)と、PSGによるAHIの相関関係が強いことから、睡眠障害指数に基づいて、睡眠障害の重症度を判定することが可能となる。
【0061】
ここで、睡眠障害の重症度を出力するためには、直接睡眠障害指数を出力しても良いし、睡眠障害指数に応じた重症度を判定し、出力しても良い。例えば、医療関係者向けには睡眠障害指数を出力し、介護関係者向けには、判定された内容(軽度、中等度、重度等)を出力しても良い。
【0062】
[5.変形例]
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も特許請求の範囲に含まれる。
【0063】
なお、上述した実施形態における検出装置3は、簡易的にマットレス20の上に載置して、被測定者Pの体動を検出しても良い。この場合、検出精度は落ちるが、例えばスマートフォン等を利用することにより、簡易的にシステムを実現することが可能となる。