(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0014】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0015】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
【0016】
(実施の形態1)
<半導体装置の全体構造について>
本実施の形態の半導体装置を、図面を参照して説明する。
【0017】
図1および
図2は、本実施の形態の半導体装置(半導体チップ)CPの全体平面図であり、
図1は、半導体装置CPの上面側の全体平面図が示され、
図2は、半導体装置CPの裏面(下面)側の全体平面図が示されている。
【0018】
図1および
図2に示されるように、本実施の形態の半導体装置(半導体チップ)CPは、一方の主面である上面と、上面とは反対側の主面である裏面(下面)とを有しており、
図1には、半導体装置CPの上面が示され、
図2には、半導体装置CPの裏面が示されている。
【0019】
半導体装置CPは、
図1に示されるように、上面側に、第1端子としてのエミッタ用パッドPDEと、制御用端子としてのゲート用パッドPDGとを有し、また、
図2に示されるように、裏面側に、第2端子としての裏面電極BEを有している。エミッタ用パッドPDEとゲート用パッドPDGと裏面電極BEとは、それぞれ、半導体装置CPの外部接続用の端子として機能することができる。
【0020】
具体的には、半導体装置CPの上面側の最上層には、表面保護膜としての絶縁膜PAが形成されているが、その絶縁膜PAに設けられたエミッタ用開口部OPEからエミッタ用パッドPDEが露出され、絶縁膜PAに設けられたゲート用開口部OPGからゲート用パッドPDGが露出されている。また、半導体装置CPの裏面側の最上層は裏面電極BEであり、半導体装置CPの裏面全体に裏面電極BEが形成されている。
【0021】
半導体装置CPを構成する半導体基板SBには、半導体装置CPの上面側に形成された第1端子(ここではエミッタ用パッドPDE)と半導体装置CPの裏面側に形成された第2端子(ここでは裏面電極BE)との間の導通を制御する半導体素子として、IGBTが形成されている。なお、半導体装置CPを構成する半導体基板SBは、
図1および
図2では図示されていないが、後述の
図4に示されている。このため、半導体装置CPは、半導体基板SBに形成されたIGBTを制御することにより、上面側の第1端子と裏面側の第2端子との間の導通が制御されて、上面側の第1端子と裏面側の第2端子との間に電流が流れるようになっている。このため、半導体装置CPは、例えば、大電流が流れるスイッチング素子として用いることができる。ゲート用パッドPDGは、第1端子と第2端子との間の導通を制御する制御用端子として機能する。半導体装置CP内に形成されている半導体素子はIGBTであるため、半導体装置CPの上面側の第1端子(ここではエミッタ用パッドPDE)は、エミッタ端子であり、半導体装置CPの裏面側の第2端子(ここでは裏面電極BE)はコレクタ端子であり、半導体装置CPの上面側の制御用端子(ゲート用パッドPDG)はゲート端子である。
【0022】
<半導体装置の内部構造について>
次に、上記半導体装置(半導体チップ)CPの内部構造について、図面を参照して説明する。
【0023】
図3は、本実施の形態の半導体装置CPの要部平面図であり、
図4〜
図6は、本実施の形態の半導体装置CPの要部断面図である。
図3は、上記
図1に示される領域RG1の平面図にほぼ対応し、
図4は、
図3のA−A線の断面図にほぼ対応し、
図5は、
図3のB−B線の断面図にほぼ対応している。
図6は、ゲート用パッドPDGを横切る断面図に対応している。
図7は、
図4の一部を拡大して示した部分拡大断面図であり、1つの単位トランジスタQ1が示されている。なお、
図3においては、図面を見やすくするために、エミッタ用の配線M1Eを二点鎖線で示し、ゲート用の配線M1Gを破線で示し、半導体層EP、ゲート電極GEおよびコンタクトホールCT1,CT2を実線で示してある。
【0024】
本実施の形態の半導体装置CPは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を備えた半導体装置である。このため、半導体装置CPを構成する半導体基板SBには、IGBTが形成されている。半導体基板SBに形成されたIGBTは、パワートランジスタ(パワー半導体素子)とみなすこともできる。このため、半導体装置CPは、パワートランジスタ(パワー半導体素子)としてIGBTを備えた半導体装置と言うこともできる。
【0025】
図4〜
図7にも示されるように、半導体装置CPを構成する半導体基板SBは、例えばリン(P)などのn型の不純物が導入されたn型の単結晶シリコンなどからなる。半導体基板SBとして、n型もしくはp型の単結晶シリコン基板からなる基板本体上にそれよりも低不純物濃度のn
−型の単結晶シリコンからなるエピタキシャル半導体層を形成した半導体基板(いわゆるエピタキシャルウエハ)を用いることも可能である。
【0026】
半導体基板SBの主面に、パワートランジスタ(パワー半導体素子)を構成するトレンチゲート型のIGBTが形成されている。具体的には、半導体基板SBの主面のトランジスタセル領域において、
図3に示される単位構造(単位セル構造、繰り返し単位)UCLがX方向に繰り返されており、各単位構造UCLにより、単位トランジスタ(単位トランジスタセル)Q1が形成されている。従って、半導体基板SBの主面のトランジスタセル領域には、複数の単位トランジスタQ1が形成されており、半導体基板SBに形成された複数の単位トランジスタQ1が並列に接続されることで、1つのパワートランジスタが形成されている。ここで、半導体基板SBの主面において、パワートランジスタを構成する複数の単位トランジスタQ1が形成(配置)されている平面領域を、トランジスタセル領域と称することとする。各単位トランジスタQ1は、トレンチゲート型の縦型のIGBTで構成されている。なお、トレンチゲート型のIGBTは、トレンチ型ゲート構造(溝に埋め込まれたゲート電極構造)を有するIGBTである。
【0027】
半導体基板SBの底部には、すなわち半導体基板SBの裏面側には、所定の厚みのp型半導体領域(p型コレクタ層)CLが形成されている。p型半導体領域CLは、p型コレクタ層(p型コレクタ領域)である。p型半導体領域CLは、半導体基板SBの裏面全体にわたって形成することができる。そして、半導体基板SBの裏面全面上に、p型半導体領域CLに接するように、裏面電極(コレクタ電極、裏面コレクタ電極)BEが形成されている。裏面電極BEは、コレクタ電極である。裏面電極BEを、端子(コレクタ端子)とみなすこともできる。
【0028】
また、p型半導体領域CLの、裏面電極BEに隣接する側とは反対側には、p型半導体領域CLに接するように、n型半導体領域(フィールドストップ層)FSが形成されている。n型半導体領域FSは、半導体基板SB(n型基板領域NSB)よりも高い不純物濃度を有している。すなわち、p型半導体領域CLは、裏面電極BEに隣接するとともに、裏面電極BEに隣接する側とは反対側において、n型半導体領域FSに隣接している。半導体基板SB内において、p型半導体領域CLとn型半導体領域FSとの積層構造は、半導体基板SBの裏面全体にわたって形成することができる。
【0029】
裏面電極BEは、例えば、半導体基板SBの裏面から順にアルミニウム(Al)層、チタン(Ti)層、ニッケル(Ni)層および金(Au)層の積層膜により、形成することができる。アルミニウム(Al)層の代わりに、Al−Si合金層を用いることもできる。裏面電極BEはp型半導体領域CLに接しており、裏面電極BEとp型半導体領域CLとは電気的に接続されている。
【0030】
なお、半導体基板SBにおいて、絶縁層ZSが形成されている側の主面とは反対側の主面を、半導体基板SBの裏面と称することとする。
【0031】
半導体基板SBの主面(主面全面)上には、絶縁層(絶縁膜)ZSが形成されている。絶縁層ZSは、好ましくは酸化シリコン層からなる。
【0032】
絶縁層ZSには、絶縁層ZSの厚さ方向に延びる溝(トレンチ)TRが形成されている。溝TR内には、半導体層(エピタキシャル半導体層)EPと、半導体層EPを挟むように半導体層EPの両側に形成された一対(2本)のゲート電極GEと、半導体層EPと一対(2本)のゲート電極GEとの間に介在するゲート絶縁膜GIとが形成されている(埋め込まれている)。
【0033】
半導体層EPは、溝TRの底部で露出する半導体基板SB上に形成されている。すなわち、半導体層EPは、溝TR内において、溝TRの底部で露出する半導体基板SB上に形成されたエピタキシャル層(エピタキシャル半導体層)であり、例えば、不純物が導入された単結晶シリコンからなる。
【0034】
溝TRは、絶縁層ZSを貫通して半導体基板SBに達する溝部(トレンチ)TR1と、溝部TR1の両側(X方向の両側)に位置しかつ直下に絶縁層ZSの一部が残存している溝部(トレンチ)TR2とにより構成されている。このため、溝TRにおいては、溝部TR1の底部で半導体基板SBが露出しているが、溝部TR1の両側の溝部TR2は半導体基板SBに達しておらず、溝部TR2の直下には、絶縁層ZSの厚みの一部が残存している。すなわち、溝部TR2の底面は、半導体基板SBの上面よりも上にあり、溝部TR2の底面と半導体基板SBとの間には、絶縁層ZSの一部が介在している。
【0035】
溝部TR1の両側に溝部TR2が存在しているため、溝部TR2の底面と溝部TR1の側面(側壁)とは、つながっている。溝部TR2の側面(側壁)と底面とは、絶縁層ZSにより構成され、溝部TR1の側面(側壁)は、絶縁層ZSにより構成され、溝部TR1の底面は、半導体基板SBの表面(上面)により形成されている。
【0036】
半導体層EPは、溝TR内において、溝部TR1の底部で露出する半導体基板SB上に形成されており、溝部TR1内が半導体層EPで埋められるとともに、半導体層EPの上面(コンタクトホールCT1が形成されていない部分の半導体層EPの上面、すなわちn
+型半導体領域NRの上面)は、溝TRが形成されていない部分の絶縁層ZSの上面とほぼ同じ高さ位置にある。ゲート電極GEは、溝部TR2内に形成されている。ゲート絶縁膜GIは、溝TR内において、ゲート電極GEと半導体層EPとの間に介在している。
【0037】
溝TR内においては、溝TRの底部(具体的には溝部TR1の底部)で露出する半導体基板SB上に半導体層EPが形成され、半導体層EPを挟むように、半導体層EPの両側に一対のゲート電極GEが形成された状態になっている。すなわち、溝TR内に半導体層EPと一対のゲート電極GEとが埋め込まれているが、半導体層EPが一対のゲート電極GEで挟まれた状態になっている。つまり、溝部TR1の両側に、溝部TR2が形成され、溝部TR1内に半導体層EPが形成され、溝TR2内にゲート電極GEが形成されているため、半導体層EPの両側にゲート電極GEが形成された状態になっている。つまり、溝部TR1の両側に一対の溝部TR2が配置され、溝部TR1とその溝部TR1の両側の溝TR2とは互いに繋がっているが、半導体層EPが形成されている(埋め込まれている)部分が、溝部TR1に対応し、ゲート電極GEが形成されている部分(埋め込まれている部分)が溝部TR2に対応している。ゲート電極GEの上面は、溝TRが形成されていない部分の絶縁層ZSの上面とほぼ同じ高さ位置にある。このため、半導体層EPの上面(コンタクトホールCT1が形成されていない部分の半導体層EPの上面、すなわちn
+型半導体領域NRの上面)と、半導体層EPの両側に形成された一対のゲート電極GEの上面とは、ほぼ同じ高さ位置にある。
【0038】
但し、ゲート電極GEと半導体層EPとは互いに接しておらず、間にゲート絶縁膜GIが介在している。すなわち、ゲート電極GEに隣接する部分の半導体層EPの側面には、酸化シリコン膜などからなるゲート絶縁膜GIが形成されており、ゲート電極GEと半導体層EPとの間には、ゲート絶縁膜GIが介在した状態になっている。このため、ゲート電極GEは、ゲート絶縁膜GIを介して半導体層EPと隣接した状態になっている。ゲート電極GEは、溝部TR2内に埋め込まれた導電膜(導電体膜)からなり、例えばn型不純物(例えばリン)が導入された多結晶シリコン膜(ドープトポリシリコン膜)からなる。ゲート電極GEにおけるゲート絶縁膜GIを介して半導体層EPに対向する側とは反対側の側面は、絶縁層ZSに隣接している。
【0039】
また、溝部TR2は半導体基板SBに到達していないため、ゲート電極GEは、半導体基板SBに達しておらず、ゲート電極GEの下には、絶縁層ZSの一部が存在している。すなわち、ゲート電極GEの底面(下面)と半導体基板SBの上面との間には、絶縁層ZSの一部が介在している。ゲート電極GEの下に存在する部分の絶縁層ZSの厚み(すなわち、ゲート電極GEの下面と半導体基板SBの上面との間における絶縁層ZSの厚み)は、ゲート絶縁膜GIの厚みよりも十分に厚く、例えば、ゲート絶縁膜GIの厚みの10倍以上である。
【0040】
一方、溝部TR1は、半導体基板SBに到達しているため、半導体層EPの底面(下面)は、半導体基板SBに接しており、半導体層EPの底面(下面)と半導体基板SBの上面との間には、絶縁層ZSは介在していない。このため、ゲート電極GEが形成されている厚みの範囲では、半導体層EPは一対のゲート電極GEによりゲート絶縁膜GIを介して挟まれており、従って、半導体層EPは、ゲート絶縁膜GIを介してゲート電極GEと対向している。しかしながら、ゲート電極GEの底面(下面)よりも深い領域では、半導体層EPはゲート電極GEによって挟まれておらず、従って、半導体層EPはゲート電極GEと隣り合っておらず、半導体層EPの側面が絶縁層ZSによって囲まれた(覆われた)状態になっている。
【0041】
半導体層EPおよびゲート電極GEの平面レイアウトは、次のようになっている。なお、X方向とY方向とは、半導体基板SBの主面に平行な方向であるが、互いに交差する方向であり、好ましくは、互いに直交する方向である。
【0042】
図3に示されるように、トランジスタセル領域において、Y方向に延在する半導体層EPが、X方向に所定の間隔(ピッチ)で複数配列している。すなわち、トランジスタセル領域において、各半導体層EPは、Y方向に延在しており、Y方向に延在する半導体層EPが、X方向に所定の間隔(ピッチ)で複数配列している。Y方向に延在する各半導体層EPの両側(X方向の両側)に、Y方向に延在するゲート電極GEが配置されている。すなわち、Y方向に延在する1本の半導体層EPに対して、Y方向に延在する2本(一対)のゲート電極GEが設けられており、それぞれY方向に延在する2本(一対)のゲート電極GEが、Y方向に延在する半導体層EPを、X方向に挟んでいる。そして、Y方向に延在する半導体層EPがY方向に延在する2本(一対)のゲート電極GEによってX方向に挟まれた構造体が、X方向に所定の間隔(ピッチ)で複数配列している。従って、Y方向は、半導体層EPの延在方向であり、また、ゲート電極GEの延在方向でもあり、一方、X方向は、半導体層EPを一対のゲート電極GEが挟む方向である。
【0043】
なお、
図3の場合は、Y方向に延在する半導体層EPを挟むように半導体層EPの両側(X方向の両側)に形成された2本(一対)のゲート電極GEは、一体的に連結されてはいない(繋がってはいない)。但し、Y方向に延在する半導体層EPを挟むように半導体層EPの両側に形成された2本(一対)のゲート電極GEは、ゲート用ビア部VGおよびゲート用の配線M1Gを介して互いに電気的に接続されている。
【0044】
他の形態として、Y方向に延在する半導体層EPを挟むように半導体層EPの両側(X方向の両側)に形成された2本(一対)のゲート電極GEは、一体的に連結されている(繋がっている)場合もあり得る。その場合、例えば、Y方向に延在する半導体層EPを挟むように半導体層EPの両側に形成された2本(一対)のゲート電極GEを、そのゲート電極GEの端部(Y方向の端部)において、一体的に連結する(繋ぐ)ことができる。
【0045】
図4および
図7に示されるように、各半導体層EPにおいて、半導体層EPの上部(上層部)には、p型半導体領域(p型ベース層)PRが形成されており、p型半導体領域PRの上部に、n
+型半導体領域(n型エミッタ層)NRが形成されている。すなわち、各半導体層EPにおいて、半導体層EPの最表層部にn
+型半導体領域NRが形成され、n
+型半導体領域NRの下には、p型半導体領域PRが存在している。p型半導体領域PRは、p型ベース層(p型ベース領域)であり、n
+型半導体領域NRは、n型エミッタ層(n型エミッタ領域)である。また、ゲート電極GEへの電圧の印加により、n
+型半導体領域NRとn型半導体領域EP1との間に位置しかつゲート絶縁膜GIを介してゲート電極GEに対向する部分のp型半導体領域PRにチャネル(n型反転層)が形成されるため、p型半導体領域PRは、p型チャネル形成層とみなすこともできる。
【0046】
p型半導体領域PRの底面(下面)は、溝部TR2の底面よりも浅く、従って、ゲート電極GEの底面(下面)よりも浅い。換言すれば、溝部TR2の底面は、p型半導体領域PRの底面よりも深く、従って、ゲート電極GEの底面(下面)は、p型半導体領域PRの底面(下面)よりも深い。
【0047】
p型半導体領域PRおよびn
+型半導体領域NRを形成する前は、半導体層EPは全体がn型の半導体層であるが、n型の半導体層EPに、p型不純物を注入することでn型の半導体層EPとは導電型が逆のp型半導体領域PRが形成され、更にn型不純物を注入することでn型の半導体層EPと同じ導電型だが不純物濃度がより高いn
+型半導体領域NRが形成されている。このため、p型半導体領域PRの下に位置する部分の半導体層EPは、n型となっている。
【0048】
ここで、半導体層EPのうち、p型半導体領域PRの下に位置する部分を、n型半導体領域EP1と称することとする。このため、半導体層EPは、n型半導体領域EP1と、n型半導体領域EP1上に存在するp型半導体領域PRと、p型半導体領域PR上に存在するn
+型半導体領域NRとにより構成されている。
【0049】
n
+型半導体領域NRの下にp型半導体領域PRが存在し、p型半導体領域PRの下にn型半導体領域EP1が存在し、n型半導体領域EP1の下に、n型の半導体基板SB(すなわちn型基板領域NSB)が存在している。
【0050】
p型半導体領域PRの下面(すなわちp型半導体領域PRとn型半導体領域EP1との界面)は、ゲート電極GEの下面よりも浅く、ゲート電極GEは、ゲート絶縁膜GIを介して、n
+型半導体領域NRと、p型半導体領域PRと、n型半導体領域EP1の一部とに隣接(対向)している。
【0051】
ここで、半導体基板SBのうち、n型の半導体基板として形成されたときのn型の状態が維持されている領域を、n型基板領域NSBと称することとする。このため、n型基板領域NSBの下にn型基板領域NSBよりも高不純物濃度のn型半導体領域(フィールドストップ層)FSが存在し、n型半導体領域FSの下にp型半導体領域(p型コレクタ層)CLが存在している。半導体層EPは、溝部TR1の底部で露出する部分のn型基板領域NSB上に形成されているため、n型半導体領域EP1の下には、n型基板領域NSBが存在している。n型半導体領域EP1の不純物濃度(n型不純物濃度)は、n型基板領域NSBの不純物濃度(n型不純物濃度)よりも高いことが好ましい。
【0052】
n型基板領域NSBおよびn型半導体領域EP1は、n型ベース層(n型ベース領域)である。n型基板領域NSBは、n型ドリフト層とみなすこともできる。また、n型半導体領域EP1は、ホールバリア層とみなすこともできる。また、n型半導体領域FSは、半導体基板SBの表面側から延びる空乏層がp型半導体領域(p型コレクタ層)CLに到達しないようにするフィールドストップ層として機能することができる。
【0053】
また、「深さ」または「深さ位置」とは、半導体基板SBの主面上に形成された絶縁層ZSの上面からの距離(半導体基板SBの主面に垂直な方向の距離)に対応している。ここで、深さの基準面としての絶縁層ZSの上面とは、溝TR(溝TR1a,TR2a)を形成する前における絶縁層ZSの上面に対応しているため、溝TR(TR1a,TR2a)を形成した後は、溝TR(溝TR1a,TR2a)が形成されていない領域における絶縁層ZSの上面の延長面が、深さの基準面となる。そして、絶縁層ZSの上面に近い側を浅い側とし、絶縁層ZSの上面から遠い側(換言すれば半導体基板SBの裏面に近い側)を深い側とする。
【0054】
また、「高さ」または「高さ位置」とは、半導体基板SBの主面(絶縁層ZSが形成された側の主面)が基準面であり、半導体基板SBの主面からの距離(半導体基板SBの主面に垂直な方向の距離)に対応している。そして、半導体基板SBの裏面から遠い側を高い側とし、半導体基板SBの裏面に近い側を低い側とする。このため、例えば、「p型半導体領域PRの下面がゲート電極GEの下面よりも浅い」ことは、「p型半導体領域PRの下面の高さ位置がゲート電極GEの下面の高さ位置よりも高い」ことと、実質的に同じ意味である。
【0055】
次に、絶縁層ZSよりも上層の構造について説明する。
【0056】
図4〜
図7に示されるように、絶縁層ZS上には、ゲート電極GEおよび半導体層EPを覆うように、絶縁層(絶縁膜、層間絶縁膜)ILが形成されている。絶縁層ILは、層間絶縁膜であり、例えば酸化シリコン層からなる。
【0057】
絶縁層ILにはコンタクトホール(開口部、貫通孔)CT1,CT2が形成されている。
【0058】
コンタクトホールCT1は、エミッタ用のコンタクトホールであり、各半導体層EP上に形成(配置)されており、絶縁層ILを貫通して半導体層EPに達している。
図3、
図4および
図7からも分かるように、平面視において、コンタクトホールCT1は、半導体層EPに内包されている。
【0059】
なお、「平面視」または「平面的に見て」などと言うときは、半導体基板SBの主面に平行な平面で見た場合をいう。
【0060】
図4および
図7に示されるように、コンタクトホールCT1は、絶縁層ILを貫通するとともに、更に半導体層EPの一部を掘り込んでおり、コンタクトホールCT1からは、n
+型半導体領域NRとp型半導体領域PRとが露出されている。すなわち、コンタクトホールCT1は、絶縁層ILを貫通するとともに、更にn
+型半導体領域NRを貫通し、コンタクトホールCT1の底面は、p型半導体領域PRに達している。このため、コンタクトホールCT1の底面は、p型半導体領域PRの厚みの途中に位置している。コンタクトホールCT1の底面の下には、p型半導体領域PRが存在している。但し、コンタクトホールCT1は、n型半導体領域EP1には達していない。このため、コンタクトホールCT1の底面は、n
+型半導体領域NRの底面(すなわちn
+型半導体領域NRとp型半導体領域PRとの境界面)よりも深いが、p型半導体領域PRの底面(すなわちp型半導体領域PRとn型半導体領域EP1との境界面)よりも浅い位置にある。
【0061】
コンタクトホールCT2は、ゲート用のコンタクトホールである。
図3および
図5からも分かるように、コンタクトホールCT2は、ゲート電極GE上に配置されている。なお、ゲート用のコンタクトホールCT2は、エミッタ用のコンタクトホールCT1やエミッタ用の配線M1Eとは平面視で重ならない位置に設ける必要がある。このため、
図3に示されるように、平面視において、Y方向に延在する各ゲート電極GEの端部(Y方向の端部)近傍において、そのゲート電極GE上にゲート用のコンタクトホールCT2を形成している。
図5に示されるように、コンタクトホールCT2は、絶縁層ILを貫通し、コンタクトホールCT2の底面はゲート電極GEに達している。このため、コンタクトホールCT2の底部では、ゲート電極GEの一部が露出されている。
【0062】
図4〜
図7に示されるように、絶縁層IL上には、導電膜(導電体)からなる配線M1が形成されている。配線M1は、エミッタ用の配線M1Eとゲート用の配線M1Gとを含んでいる。エミッタ用の配線M1Eとゲート用の配線M1Gとは、同工程で同層に形成されている。エミッタ用の配線M1Eとゲート用の配線M1Gとは、互いに分離されており、繋がっていない。すなわち、エミッタ用の配線M1Eとゲート用の配線M1Gとは、導体を通じて繋がっていない。
【0063】
エミッタ用の配線M1Eは、絶縁層IL上に形成されるとともに、エミッタ用の配線M1Eの一部は、エミッタ用のコンタクトホールCT1内を埋め込んでいる。エミッタ用の配線M1Eのうち、エミッタ用のコンタクトホールCT1内を埋め込む部分を、エミッタ用ビア部VEと称することとする。エミッタ用ビア部VEは、エミッタ用の配線M1Eのビア部とみなすこともできる。また、エミッタ用ビア部VEを電極(エミッタ電極)とみなすこともできる。すなわち、コンタクトホールCT1内には、n
+型半導体領域NRおよびp型半導体領域PRに電気的に接続されるエミッタ電極として、エミッタ用ビア部VEが形成されている。
【0064】
ゲート用の配線M1Gは、絶縁層IL上に形成されるとともに、ゲート用の配線M1Gの一部は、ゲート用のコンタクトホールCT2内を埋め込んでいる。ゲート用の配線M1Gのうち、ゲート用のコンタクトホールCT2内を埋め込む部分を、ゲート用ビア部VGと称することとする。ゲート用ビア部VGは、ゲート用の配線M1Gのビア部とみなすこともできる。また、ゲート用ビア部VGを電極(ゲート用の電極)とみなすこともできる。
【0065】
また、ここでは、エミッタ用ビア部VEがエミッタ用の配線M1Eと一体的に形成され、ゲート用ビア部VGがゲート用の配線M1Gと一体的に形成されている場合について説明している。他の形態として、エミッタ用ビア部VE(エミッタ用のコンタクトホールCT1内を埋め込む導電部)をエミッタ用の配線M1Eとは別個に(別工程で)形成し、ゲート用ビア部VG(ゲート用のコンタクトホールCT2内を埋め込む導電部)をゲート用の配線M1Gとは別個に(別工程で)形成することもできる。
【0066】
エミッタ用の配線M1Eは、複数の単位トランジスタQ1が形成されている平面領域(トランジスタセル領域)のほぼ全体に形成されている。エミッタ用のコンタクトホールCT1は、トランジスタセル領域において、平面視でゲート電極GEに挟まれた半導体層EPの上方に形成されており、絶縁層ILおよびn
+型半導体領域NRを貫通して、コンタクトホールCT1の底部がp型半導体領域PRに達している。このため、エミッタ用のコンタクトホールCT1内に埋め込まれたエミッタ用ビア部VEも、絶縁層ILおよびn
+型半導体領域NRを貫通し、エミッタ用ビア部VEの底部がp型半導体領域PRに達している。
【0067】
エミッタ用ビア部VEの下部側面がn
+型半導体領域NRに接しているため、エミッタ用ビア部VEはn
+型半導体領域NRと接してn
+型半導体領域NRと電気的に接続されている。また、エミッタ用ビア部VEの底面(下面)がp型半導体領域PRに接しているため、エミッタ用ビア部VEは、p型半導体領域PRと接してp型半導体領域PRと電気的に接続されている。
【0068】
但し、コンタクトホールCT1は、n型半導体領域EP1には達しておらず、コンタクトホールCT1の底面は、p型半導体領域PRの下面(すなわちp型半導体領域PRとn型半導体領域EP1との境界面)よりも浅い位置にあるため、コンタクトホールCT1からn型半導体領域EP1は露出されておらず、エミッタ用ビア部VEは、n型半導体領域EP1には接していない。
【0069】
なお、
図4および
図7の場合は、エミッタ用ビア部VEは、p型半導体領域PRと直接的に接している。他の形態として、エミッタ用ビア部VEの底面に接しかつp型半導体領域PRに内包される位置に、p型半導体領域PRよりも高不純物濃度のp
+型半導体領域を設け、そのp
+型半導体領域を介してエミッタ用ビア部VEをp型半導体領域PRに電気的に接続することもできる。エミッタ用ビア部VEとp型半導体領域PRとの間にp
+型半導体領域を介在させた場合は、エミッタ用ビア部VEのコンタクト抵抗を低減することができるため、エミッタ用ビア部VEとp型半導体領域PRとの間を低抵抗で接続することができるようになる。
【0070】
このように、エミッタ用の配線M1Eのビア部、すなわちエミッタ用ビア部VEは、n
+型半導体領域NRおよびp型半導体領域PRの両方に電気的に接続されている。従って、エミッタ用の配線M1Eは、n
+型半導体領域NRおよびp型半導体領域PRの両方に電気的に接続されている。すなわち、n
+型半導体領域NRとその下のp型半導体領域PRとは、エミッタ用ビア部VEを介して、エミッタ用の配線M1Eと電気的に接続されている。
【0071】
エミッタ用のコンタクトホールCT1は、トランジスタセル領域において、各半導体層EP上に形成されている。このため、コンタクトホールCT1は、トランジスタセル領域において複数形成され、それら複数のコンタクトホールCT1に埋め込まれたエミッタ用ビア部VEを介して、トランジスタセル領域に設けられた複数の単位トランジスタQ1のn型エミッタ領域(n
+型半導体領域NR)およびp型ベース領域(p型半導体領域PR)が、共通のエミッタ用の配線M1Eに電気的に接続されている。従って、エミッタ用の配線M1Eは、エミッタ用ビア部VEを介して、トランジスタセル領域に設けられた複数の単位トランジスタQ1のn型エミッタ領域(n
+型半導体領域NR)およびp型ベース領域(p型半導体領域PR)に電気的に接続されている。
【0072】
ゲート用の配線M1Gは、平面視において、エミッタ用の配線M1Eと重ならない位置に形成されている。このため、ゲート用の配線M1Gは、平面視において、トランジスタセル領域の周囲に形成されている。Y方向に延在するゲート電極GEの端部(Y方向の端部)近傍において、ゲート電極GE上にゲート用のコンタクトホールCT2が形成されているため、ゲート用ビア部VGはゲート電極GE上に配置されて、ゲート電極GEと接して電気的に接続されている。このため、各ゲート電極GEは、ゲート用ビア部VGを介して、ゲート用の配線M1Gに電気的に接続されている。従って、ゲート用の配線M1Gは、ゲート用ビア部VGを介して、トランジスタセル領域に設けられた複数の単位トランジスタQ1のゲート電極GEに電気的に接続されている。
【0073】
また、本実施の形態では、トランジスタセル領域の周囲において、溝部TR2に埋め込まれたゲート電極GE上にゲート用のコンタクトホールCT2およびそれを埋めるゲート用ビア部VGを配置することで、溝部TR2に埋め込まれたゲート電極GEをゲート用ビア部VGに接続している。他の形態として、ゲート電極GEと一体的に形成されたゲート引き出し用配線部を溝部TR2の外部の絶縁層ZS上に延在させて、そのゲート引き出し用配線部上にゲート用のコンタクトホールCT2およびそれを埋めるゲート用ビア部VGを配置することで、ゲート引き出し用配線部をゲート用ビア部VGに接続することも可能である。その場合、ゲート電極GEは、ゲート引き出し用配線部およびゲート用ビア部VGを介して、ゲート用の配線M1Gに電気的に接続されることになる。
【0074】
エミッタ用ビア部VEおよびゲート用ビア部VGは、それぞれ、金属伝導を示す導電体からなり、電極(電極部)とみなすことができる。具体的には、エミッタ用ビア部VEは、エミッタ電極とみなすことができ、ゲート用ビア部VGは、ゲート用の電極とみなすことができる。
【0075】
配線M1(ゲート用の配線M1Gおよびエミッタ用の配線M1E)は、表面保護のための絶縁膜PAにより覆われている。すなわち、絶縁層IL上に、配線M1(ゲート用の配線M1Gおよびエミッタ用の配線M1E)を覆うように、絶縁膜PAが形成されている。この絶縁膜PAは、半導体装置CPの最上層の膜(絶縁膜)である。
【0076】
絶縁膜PAには複数の開口部OPが形成されており、各開口部OPからは、配線M1の一部が露出されている。開口部OPから露出する配線M1が、ボンディングパッド(パッド電極)となっている。
【0077】
すなわち、絶縁膜PAに形成された開口部OPのうち、エミッタ用の開口部OPEから露出するエミッタ用の配線M1Eによって、エミッタ用のボンディングパッドであるエミッタ用パッドPDEが形成されている。なお、エミッタ用の開口部OPEは、上記
図1に示されており、
図4の断面図は、エミッタ用の開口部OPE内の領域の断面図に対応している。
【0078】
また、絶縁膜PAに形成された開口部OPのうち、ゲート用の開口部OPGから露出するゲート用の配線M1Gによって、ゲート用のボンディングパッドであるゲート用パッドPDGが形成されている。なお、ゲート用の開口部OPGは、上記
図1および
図6に示されている。
【0079】
エミッタ用の開口部OPEは、エミッタ用のボンディングパッド(ここではエミッタ用パッドPDE)を形成するための開口部であり、ゲート用の開口部OPGは、ゲート用のボンディングパッド(ここではゲート用パッドPDG)を形成するための開口部である。
【0080】
このような構成の半導体装置においては、IGBTの動作電流は、エミッタ用パッドPDE(エミッタ用の配線M1E)と裏面電極BEとの間に流れる。すなわち、トランジスタセル領域に形成されたIGBTの動作電流は、半導体基板SBの厚さ方向に流れる。このため、トランジスタセル領域に形成されたIGBTは、縦型のトランジスタ(縦型のIGBT)でもある。ここで、縦型のトランジスタとは、動作電流が、半導体基板の厚さ方向(半導体基板の主面に略垂直な方向)に流れるトランジスタに対応する。ゲート用パッドPDGは、エミッタ用パッドPDE(エミッタ用の配線M1E)と裏面電極BEとの間の導通を制御するための端子である。
【0081】
<半導体装置の製造工程について>
次に、本実施の形態の半導体装置の製造工程について、
図8〜
図25を参照して説明する。
図8および
図9は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を示すプロセスフロー図である。
図10〜
図25は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図であり、上記
図4に対応する断面図が示されている。
【0082】
半導体装置を製造するには、まず、
図10に示されるように、例えばn型の単結晶シリコンなどからなるn型の半導体基板SB(半導体ウエハ)を用意する(
図8のステップS1)。半導体基板SBとして、n型の単結晶シリコン基板からなる基板本体上にそれよりも低不純物濃度のn
−型の単結晶シリコンからなるエピタキシャル半導体層を形成した半導体基板(いわゆるエピタキシャルウエハ)を用いることも可能である。
【0083】
次に、
図11に示されるように、半導体基板SBの主面(主面全面)上に、絶縁層ZSを形成する(
図8のステップS2)。絶縁層ZSは、酸化シリコン膜などからなり、例えば熱酸化法などを用いて形成することができる。絶縁層ZSは、比較的厚く、例えば4μm程度の厚みを有することができる。
【0084】
次に、
図12〜
図15に示されるように、絶縁層ZSに、溝(トレンチ)TR1aを形成する(
図8のステップS3)。ステップS3で形成された溝TR1aは、絶縁層ZSを貫通して、半導体基板SBに到達し、溝TR1aの底部で半導体基板SBが露出される。溝TR1aは、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて形成することができる。例えば、
図12に示されるように、絶縁層ZS上にフォトリソグラフィ技術を用いてフォトレジストパターンRP1を形成してから、
図13および
図14に示されるように、フォトレジストパターンRP1をエッチングマスクとして用いて絶縁層ZSをエッチングすることにより、絶縁層ZSに溝TR1aを形成することができる。その後、
図15に示されるように、フォトレジストパターンRP1を除去する。
【0085】
ここで、ステップS3で形成される溝TR1aの形状を工夫している。すなわち、
図15からも分かるように、溝TR1aの上部における溝TR1aの幅W3が、溝TR1aの下部における溝TR1aの幅W4よりも大きくなるようにしている(すなわちW3>W4)。別の見方をすると、溝TR1aの下部では、溝TR1aの側面(側壁)は、半導体基板SBの主面に対してほぼ垂直であり、溝TR1aの幅W4は、深さ位置によらずほぼ一定であるが、溝TR1aの上部では、深さ位置が浅くなるほど、溝TR1aの幅W3が大きくなっている。更に別の見方をすると、溝TR1aの下部では、溝TR1aの側面(側壁)は、半導体基板SBの主面に対してほぼ垂直であるが、溝TR1aの上部では、溝TR1aの側面は、テーパを有している。なお、幅W3,W4は、X方向の幅(寸法)である。
【0086】
このような形状の溝TR1aを形成することは、ステップS3における、溝TR1aを形成するエッチング工程において、等方性エッチングと異方性エッチングとを組み合わせて行うことにより、実現することができる。
【0087】
例えば、ステップS3において、
図12に示されるように、絶縁層ZS上にフォトレジストパターンRP1を形成してから、フォトレジストパターンRP1をエッチングマスクとして用いて絶縁層ZSをエッチングする際に、まず、
図13に示されるように、溝TR1aの深さが所定の深さD1になるまで等方性エッチングを行う。これにより、
図13に示されるように、絶縁層ZSの厚みの途中まで溝TR1aが形成され、溝TR1aの底面の深さ位置は、深さD1に一致したものとなる。なお、深さD1は、絶縁層ZSの厚みよりも小さい。このときのエッチングは等方性のエッチングであり、溝TR1aの側面ではサイドエッチングが発生するため、溝TR1aの幅W5aは、フォトレジストパターンRP1の開口部RP1aの幅W6よりも若干大きくなる(すなわちW5a>W6)。等方性エッチングとしては、ドライエッチングまたはウェットエッチングあるいはその組み合わせを用いることができる。ここで、フォトレジストパターンRP1の開口部RP1aは、溝TR1a形成用の開口部であり、開口部RP1aから露出される部分の絶縁層ZSがエッチングされて溝TR1aが形成される。幅W5a,W6は、X方向の幅(寸法)である。
【0088】
それから、等方性のエッチングから異方性のエッチングに切り替えて、
図14に示されるように、フォトレジストパターンRP1をエッチングマスクとして用いて絶縁層ZSを異方性エッチングする。この異方性エッチングを、溝TR1aが半導体基板SBに達するまで行う。これにより、
図14に示されるように、溝TR1aが絶縁層ZSを貫通して、溝TR1aの底部で半導体基板SBが露出され、溝TR1a形成用のエッチング工程が完了する。異方性エッチングとしては、異方性のドライエッチングが用いられる。異方性のエッチングを行っている間は、溝TR1aの側面ではサイドエッチングがほとんど発生しないため、異方性エッチングによって形成された部分の溝TR1a(すなわち深さD1よりも深い位置における溝TR1a)では、溝TR1aの幅W5bは、フォトレジストパターンRP1の開口部RP1aの幅W6とほぼ同じになる(すなわちW5b=W6)。なお、幅W5bは、X方向の幅(寸法)である。
【0089】
従って、このようにして形成された溝TR1aにおいては、深さD1よりも深い位置では、溝TR1aの幅W5bは、ほぼ一定であり、溝TR1aの側面(側壁)は、半導体基板SBの主面に対してほぼ垂直であるが、深さD1よりも浅い位置では、溝TR1aの幅W5aは、深さD1よりも深い位置での溝TR1aの幅W5bよりも大きく(すなわちW5a>W5b)なる。そして、深さD1よりも浅い位置では、深さ位置が浅くなるほど、溝TR1aの幅W5aが大きくなっており、溝TR1aの側面はテーパを有したものとなる。幅W5bが、上記幅W4に対応し、幅W5aが上記幅W3に対応している。
【0090】
ステップS3における溝TR1aを形成するエッチング工程において、等方性エッチングを終了してエッチングを一旦停止してから、異方性エッチングを開始する場合と、等方性エッチングから異方性エッチングに連続的に移行する場合とがあり得る。等方性エッチングから異方性エッチングに連続的に移行する場合は、等方性エッチングと異方性エッチングとは、いずれもドライエッチングにより行い、ガス種やガス流量などを変えることで、等方性エッチングから異方性エッチングに連続的に移行することができる。
【0091】
絶縁層ZSとして、酸化シリコン層を用いた場合には、ステップS3のエッチングに用いる処理ガスは、例えば、エッチングガス(反応ガス)として、CF
4ガス、CHF
3ガス、C
2F
6ガスまたはC
3F
6ガスなどのフルオロカーボン系のガスを含み、添加ガスとして、H
2ガスまたはO
2ガスなどを含んでいる。処理ガスが、更に、キャリアガスとして、ArガスまたはHeガスなどの不活性ガスを含むこともできる。
【0092】
例えば、ステップS3のエッチングの処理ガス(フルオロカーボン系のエッチングガスを含む)に添加ガスとしてH
2ガスを添加すると、エッチング中にフルオロカーボン系のポリマが生成されて溝TR1aの側壁に堆積するため、溝TR1aの側壁はエッチングされにくくなり、異方性のエッチングが進行する。このときのエッチングで形成された部分の溝TR1aの側壁は、半導体基板SBの主面にほぼ垂直になる。一方、ステップS3のエッチングの処理ガス(フルオロカーボン系のエッチングガスを含む)に添加ガスとしてO
2ガスを添加すると、エッチング中のポリマの生成が抑制されるため、エッチング中に溝TR1aの側壁にポリマは堆積されにくく、等方性に近いエッチングが進行することになる。このため、例えば、ステップS3において、まず、処理ガスとしてCF
4ガスとO
2ガスとの混合ガス(Arガスを更に含有していてもよい)を用いて等方性に近いエッチングを深さD1まで行ってから、処理ガスをCF
4ガスとH
2ガスとの混合ガス(Arガスを更に含有していてもよい)に切り換えて、溝TR1aが絶縁層ZSを貫通するまで異方性のエッチングを行うことができる。
【0093】
次に、
図16に示されるように、溝TR1aから露出する半導体基板SB上に、半導体層EPをエピタキシャル成長させる(
図8のステップS4)。半導体層EPは、下地の半導体基板SBと同種の半導体材料からなり、ここでは、単結晶シリコンからなる。半導体層EPは、n型の不純物が導入されたn型の半導体層である。半導体層EPは、溝TR1aから露出する半導体基板SB上に選択的に成長するため、半導体層EPを成長させると、溝TR1a内は半導体層EPで埋められることになる。半導体層EPのエピタキシャル成長は、半導体層EPの上面が絶縁層ZSの上面とほぼ一致した段階で終了させる。半導体層EPを形成すると、溝TR1a内が半導体層EPで埋め込まれた状態になる。半導体層EPが溝TR1a内を埋め込んだ状態になるため、溝TR1aの形状と溝TR1aに埋め込まれた半導体層EPの形状とは、ほぼ一致している。
【0094】
溝TR1aは、Y方向に延在しているため、半導体層EPも、Y方向に延在している。なお、溝TR1aに半導体層EPが埋め込まれているため、溝TR1aのレイアウトは、上記
図3において半導体層EPが形成されている領域とほぼ一致しており、上記
図3において半導体層EPが形成されている領域が、溝TR1aが形成された領域に対応している。
【0095】
次に、
図17および
図18に示されるように、絶縁層ZSにおいて、溝TR1aの両側に、溝(トレンチ)TR2aを形成する(
図8のステップS5)。
【0096】
溝TR2aは、絶縁層ZSを貫通せずに、溝TR2aの下に絶縁層ZSの厚みの一部が残存するように、形成される。溝TR2aは、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて形成することができる。例えば、
図17に示されるように、半導体層EPが埋めこまれた絶縁層ZS上にフォトリソグラフィ技術を用いてフォトレジストパターンRP2を形成してから、フォトレジストパターンRP2をエッチングマスクとして用いて絶縁層ZSをエッチングすることにより、
図18に示されるように、絶縁層ZSに溝TR2aを形成することができる。このときのエッチングは、異方性エッチングを用いることが好ましい。
【0097】
ステップS5で溝TR2aを形成すると、平面視において、Y方向に延在する一対の溝TR2aが、Y方向に延在する溝TR1a(半導体層EP)をX方向に挟んだ状態になる。ここで、Y方向は、上記
図3に示されているが、
図4および
図10〜
図25では、紙面に垂直な方向がY方向に対応している。また、X方向は、上記
図3に示されているが、
図4および
図10〜
図25では、紙面に平行な横方向がX方向に対応している。
【0098】
但し、平面視において、溝TR2aは、溝TR1aから離間して形成され、従って、溝TR2aは、溝TR1a内に埋め込まれた半導体層EPから離間して形成される。このため、溝TR1aと溝TR2aとの間には、絶縁層ZSの一部が介在しており、従って、溝TR1aに埋め込まれた半導体層EPと、溝TR2aとの間には、絶縁層ZSの一部が介在している。このため、ステップS5で溝TR2aを形成した段階では、溝TR2aから半導体層EPの側面は露出されない。
【0099】
なお、ステップS3で形成された溝TR1aと同様に、ステップS5で形成された溝TR2aにおいても、溝TR2aの上部における溝TR2aの幅が、溝TR2aの下部における溝TR2aの幅よりも大きくなるようにすることもできる。別の見方をすると、ステップS3で形成された溝TR1aと同様に、ステップS5で形成された溝TR2aにおいても、溝TR2aの下部では、溝TR2aの側面(側壁)は、半導体基板SBの主面に対してほぼ垂直であり、溝TR2aの幅は、深さ位置によらずほぼ一定であるが、溝TR2aの上部では、深さ位置が浅くなるほど、溝TR2aの幅が大きくなるようにすることもできる。そうすれば、後述のステップS6のエッチングの際に、溝TR2a内にエッチング液が侵入しやすくなるため、後述のステップS6のエッチングを行いやすくなる。ステップS5で形成された溝TR2aにおいて、溝TR2aの上部における溝TR2aの幅が、溝TR2aの下部における溝TR2aの幅よりも大きくなるようにするには、ステップS3のエッチングと同様に、ステップS5のエッチングにおいても、上記フォトレジストパターンRP2を形成した後、等方性エッチングを行ってから異方性エッチングを行うことで、溝TR2aを形成すればよい。
【0100】
次に、
図19に示されるように、等方性エッチングを用いて、溝TR2aの内面(側面および底面)において絶縁層ZSをエッチングすることにより、溝TR2aを拡張する(
図8のステップS6)。等方性エッチングとしては、ウェットエッチングがより好ましい。この際、絶縁層ZS上に上記フォトレジストパターンRP2が形成されている状態で、ウェットエッチングを行うことが好ましい。これにより、絶縁層ZSの上面はフォトレジストパターンRP2で覆われることでエッチングが阻止され、一方、エッチング液が溝TR2a内に侵入することにより、溝TR2aの内面を構成する絶縁層ZSの露出面がエッチングされることになる。これにより、絶縁層ZSの上面のエッチングを防ぎながら、溝TR2aの内面で露出する絶縁層ZSをエッチングして、溝TR2aを拡張することができる。ステップS6のエッチング工程の後、フォトレジストパターンRP2は除去される。ステップS6のエッチングにおいて、溝TR2aは、横方向にも下方向にも斜め方向にも拡張されるが、溝TR2aと半導体層EPとの間に介在していた部分の絶縁層ZSもエッチングされて除去されるため、溝TR2aの側面(半導体層EP側の側面)で、半導体層EPの側面の一部(上部)が露出されることになる。
【0101】
すなわち、ステップS5で溝TR2aを形成した段階、すなわち、ステップS6の溝TR2aを拡張するエッチング工程を行う前の段階では、溝TR2aと半導体層EPとの間には絶縁層ZSが介在していたため、溝TR2aの内面で半導体層EPは露出されていなかった。しかしながら、ステップS6の溝TR2aを拡張するエッチング工程を行うと、溝TR2aと半導体層EPとの間に介在していた部分の絶縁層ZSもエッチングされて除去されるため、溝TR2aの内面(具体的には半導体層EP側の側面)で、半導体層EPの側面の一部(上部)が露出されることになる。
【0102】
別の見方をすると、ステップS5においては、溝TR2aの内面で半導体層EPの側面が露出されないように、溝TR2aを形成し、ステップS6の溝TR2aを拡張するエッチング工程においては、溝TR2aの内面(具体的には半導体層EP側の側面)で半導体層EPの側面が露出されるように、エッチングを行う必要がある。
【0103】
なお、ステップS6の溝TR2aを拡張するエッチング工程は、絶縁層ZSに比べて半導体層EPがエッチングされにくいエッチング条件、すなわち、絶縁層ZSのエッチング速度に比べて半導体層EPのエッチング速度が小さくなるようなエッチング条件、を採用することが好ましい。これにより、ステップS6において、溝TR2aの内面で露出した半導体層EPがエッチングされるのを抑制または防止することができる。つまり、ステップS6において、半導体層EPをエッチングストッパとして機能させることができる。従って、ステップS6の溝TR2aを拡張するエッチング工程では、絶縁層ZSを選択的にエッチングできるようなエッチング液を用いることが望ましい。絶縁層ZSが酸化シリコン膜で半導体層EPが単結晶シリコン層の場合は、ステップS6で用いるエッチング液としては、例えばフッ酸の水溶液などを好適に用いることができる。
【0104】
ステップS6の溝TR2aを拡張するエッチング工程を行う前よりも、行った後の方が、溝TR2aの深さは深くなり、かつ、溝TR2aの幅は大きくなる。但し、ステップS6を行っても、溝TR2aの絶縁層ZSの一部が残存するようにする。これは、ステップS5で形成した溝TR2aの深さと、ステップS6におけるエッチング量を制御することにより、実現できる。
【0105】
また、ステップS6の溝TR2aを拡張するエッチング工程では、等方性のエッチングが行われるため、溝TR2aを拡張するエッチング工程を行うと、溝TR2aの内面の角部はラウンド形状となり、丸みを帯びたものになり得る。
【0106】
上記ステップS2で形成した絶縁層ZSの厚みは、例えば4μm程度とすることができ、ステップS6(溝TR2a拡張工程)を終えた段階における溝TR2aの深さは、例えば0.7〜2μm程度とすることができる。この場合、ステップS6(溝TR2a拡張工程)を終えた段階において、溝TR2aの直下に位置する部分の絶縁層ZSの厚みは、2〜3.3μm程度になる。この場合、後述のステップS8でゲート電極GEを形成すると、ゲート電極GEの直下に存在する部分の絶縁層ZSの厚みは、溝TR1a,TR2aが形成されていない領域における絶縁層ZSの厚み(ステップS2における絶縁膜ZSの形成厚みにほぼ対応)の概ね半分以上になる。
【0107】
また、フォトマスクの合わせずれなどに起因してステップS5で溝TR2aの形成位置が設計から多少ずれる場合がある。そのような場合でもステップS6で半導体層EPの側面が露出されるようにステップS6のエッチング量を予め設定しておき、半導体層EPをエッチングストッパとして機能させることで、ステップS5で溝TR2aの形成位置が設計から多少ずれた場合であっても、ステップS6において、溝TR2aから半導体層EPを露出させることができる。
【0108】
次に、
図20に示されるように、半導体層EPの露出面を熱酸化法などを用いて酸化することにより、半導体層EPの露出面上にゲート絶縁膜用の絶縁膜GIaを形成する(
図8のステップS7)。絶縁膜GIaは、酸化シリコン膜などからなり、溝TR2aから露出する半導体層EPの側面上と、半導体層EPの上面上とに形成される。
【0109】
なお、ステップS7の絶縁膜GIa形成工程は、溝TR2aから露出する半導体層EPの側面に絶縁膜GIaを形成するために行っているため、溝TR2aから露出する半導体層EPの側面を酸化する(すなわち溝TR2aから露出する半導体層EPの側面に酸化膜を形成する)ことが重要であり、半導体層EPの上面は酸化してもしなくてもよい。このため、ステップS7の絶縁膜GIa形成工程は、溝TR2aから露出する半導体層EPの側面にゲート絶縁膜用の絶縁膜GIaを形成する工程とみなすことができる。但し、
図20に示されるように、溝TR2aから露出する半導体層EPの側面だけでなく、半導体層EPの上面も酸化する場合の方が、半導体層EP上に耐酸化用のマスク層を形成しないで済むため、製造工程が簡易になる。
【0110】
次に、
図21に示されるように、溝TR2内にゲート電極GEを形成する(
図8のステップS8)。
【0111】
ステップS8において、ゲート電極GEは、例えば次のようにして形成することができる。すなわち、まず、絶縁層ZS上に、溝TR2a内を埋めるように、ゲート電極用導電膜を形成する。ゲート電極用導電膜は、例えば、不純物(例えばn型不純物)が導入されて低抵抗率とされた多結晶シリコン膜(ドープトポリシリコン膜)などからなり、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法などを用いて形成することができる。それから、ゲート電極用導電膜をエッチバック(エッチング、異方性エッチング)することにより、溝TR2a内にゲート電極用導電膜を残し、溝TR2aの外部のゲート電極用導電膜を除去する。溝TR2a内に残存するゲート電極用導電膜により、ゲート電極GEが形成される。また、ゲート電極GEと半導体層EPとの間に介在して残存する絶縁膜GIaがゲート絶縁膜GIとなる。半導体層EPの上面の絶縁膜GIaは、ゲート電極用導電膜のエッチバック工程で除去される場合と、残存する場合とがあり得る。
【0112】
このようにして、
図21に示されるように、溝TR2a内に埋め込まれた導電膜からなるゲート電極GEが形成される。ゲート電極GEと半導体層EPとの間には、ゲート絶縁膜GI(絶縁膜GIa)が介在している。また、ゲート電極GEの下には、絶縁層ZSの一部が存在している。上記ステップS6で溝TR2aの下に絶縁層ZSの一部を残存させたことにより、ステップS8でゲート電極GEを形成したときに、ゲート電極GEの下に絶縁層ZSの一部が存在する構造を得ることができる。
【0113】
溝TR2aは、Y方向に延在しているため、ゲート電極GEも、Y方向に延在している。なお、溝TR2aにゲート電極GEが埋め込まれているため、溝TR2aのレイアウトは、上記
図3においてゲート電極GEが形成されている領域とほぼ一致しており、上記
図3においてゲート電極GEが形成されている領域が、溝TR2aが形成された領域に対応している。
【0114】
なお、ステップS5で溝TR2aを形成した段階では、溝TR2aは溝TR1aから離間し、溝TR2aと溝TR1aとの間に絶縁層ZSの一部が介在しているため、溝TR1a内に埋め込まれている半導体層EPの側面は、溝TR2aから露出されない。しかしながら、ステップS6で溝TR2aを拡張すると、溝TR2aと溝TR1aとの間に介在していた部分の絶縁層ZSがエッチングによって除去されるため、溝TR2aが溝TR1aと繋がり、溝TR2aの底面よりも浅い部分の半導体層EPの側面が溝TR2aから露出されることになる。これにより、溝TR1aが上記溝部TR1になり、溝TR2aが上記溝部TR2になり、溝部TR1と溝部TR2とにより、上記溝TRが形成されることになる。
【0115】
次に、
図22に示されるように、半導体層EPの上部(上層部)にp型の不純物(例えばホウ素(B))をイオン注入することなどにより、半導体層EPの上部にp型半導体領域PRを形成する(
図8のステップS9)。
【0116】
次に、半導体層EPの上部(上層部)にn型の不純物(例えばヒ素(As))をイオン注入することなどにより、n
+型半導体領域NRを形成する(
図9のステップS10)。
【0117】
n
+型半導体領域NRの深さ(底部の深さ位置)は、p型半導体領域PRの深さ(底部の深さ位置)よりも浅い。このため、p型半導体領域PRおよびn
+型半導体領域NRは、半導体層EPの上層部(表層部)に形成されるが、n
+型半導体領域NRはp型半導体領域PRの上部に形成され、n
+型半導体領域NRの下にp型半導体領域PRが存在し、p型半導体領域PRの上にn
+型半導体領域NRが存在する状態になる。p型半導体領域PRの下には、n型を維持している半導体層EP、すなわちn型半導体領域EP1が存在している。
【0118】
但し、n
+型半導体領域NRおよびp型半導体領域PRは、ゲート電極GEの底面(下面)よりも浅く形成される。このため、n
+型半導体領域NRとp型半導体領域PRとの間の界面は、ゲート電極GEの底面(下面)よりも浅い位置にあり、かつ、p型半導体領域PRとn型半導体領域EP1との間の界面も、ゲート電極GEの底面(下面)よりも浅い位置にある。
【0119】
また、ここでは、p型半導体領域PRを先に形成してから、n
+型半導体領域NRを形成する場合について説明したが、他の形態として、n
+型半導体領域NRを先に形成してから、p型半導体領域PRを形成することもできる。すなわち、ステップS9とステップS10との順番を入れ替えることもできる。
【0120】
次に、導入された不純物を活性化するための熱処理である活性化アニールを行う(
図9のステップS11)。この活性化アニールは、例えば800〜1000℃程度で行うことができる。これにより、半導体基板SBや半導体層EPに形成した各半導体領域(p型半導体領域CL,PRおよびn
+型半導体領域NRなど)に導入された不純物を活性化させることができる。
【0121】
次に、
図23に示されるように、絶縁層ZS上に、ゲート電極GEおよび半導体層EPを覆うように、層間絶縁膜として絶縁層(絶縁膜)ILを形成する(
図9のステップS12)。絶縁層ILは、例えば酸化シリコン膜などからなり、CVD法などを用いて形成することができる。絶縁層ILとして、積層絶縁膜を用いることも可能である。絶縁層ILの形成後、絶縁層ILの上面をCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)法で研磨するなどして、絶縁層ILの平坦性を高めることもできる。
【0122】
次に、
図24に示されるように、フォトリソグラフィ法を用いて絶縁層IL上に形成したフォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして、絶縁層ILをエッチング(好ましくはドライエッチング)し、更に、半導体層EPをエッチング(好ましくはドライエッチング)することにより、コンタクトホールCT1を形成する(
図9のステップS13)。
【0123】
コンタクトホールCT1は、平面視で半導体層EPに内包されるように形成され、絶縁層ILおよびn
+型半導体領域NRを貫通して、コンタクトホールCT1の底部がp型半導体領域PRに達している。このため、コンタクトホールCT1の底面では、p型半導体領域PRが露出され、コンタクトホールCT1の側面の下部では、n
+型半導体領域NRが露出される。
【0124】
次に、
図24には図示されないが、上記
図5に示されるように、フォトリソグラフィ法を用いて絶縁層IL上に形成した他のフォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして、絶縁層ILをエッチング(好ましくはドライエッチング)することにより、コンタクトホールCT2を形成する(
図9のステップS14)。コンタクトホールCT2は、ゲート電極GEの上に形成され、コンタクトホールCT2の底部ではゲート電極GEが露出される。コンタクトホールCT2をコンタクトホールCT1と同工程で形成する場合もあり得る。
【0125】
次に、
図25に示されるように、絶縁層IL上に配線M1を形成する(
図9のステップS15)。配線M1は、例えば、次のようにして形成することができる。まず、コンタクトホールCT1,CT2内を含む絶縁層IL上に、配線M1形成用の導電膜を形成する。配線M1形成用の導電膜は、例えばアルミニウム膜またはアルミニウム合金膜を主体とする金属膜からなる。それから、その配線M1形成用の導電膜を、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング技術を用いてパターニングすることにより、パターニングされた導電膜からなる配線M1を形成することができる。上述のように、配線M1は、エミッタ用の配線M1Eとゲート用の配線M1Gとを含んでいる。なお、ゲート用の配線M1Gは、
図25には示されていないが、上記
図5および
図6に示されている。
【0126】
エミッタ用の配線M1Eのビア部(エミッタ用のコンタクトホールCT1内を埋め込む部分)であるエミッタ用ビア部VEは、エミッタ用の配線M1Eと一体的に形成され、ゲート用の配線M1Gのビア部(ゲート用のコンタクトホールCT2内を埋め込む部分)であるゲート用ビア部VGは、ゲート用の配線M1Gと一体的に形成されている。エミッタ用ビア部VEは、コンタクトホールCT1の底部付近で、n
+型半導体領域NRおよびp型半導体領域PRに接して、それらと電気的に接続される。ゲート用ビア部VGは、コンタクトホールCT2の底部でゲート電極GEに接して電気的に接続される。
【0127】
他の形態として、エミッタ用ビア部VE(エミッタ用のコンタクトホールCT1内を埋め込む導電部)をエミッタ用の配線M1Eとは別個に(別工程で)形成し、ゲート用ビア部VG(ゲート用のコンタクトホールCT2内を埋め込む導電部)をゲート用の配線M1Gとは別個に(別工程で)形成することもできる。その場合は、コンタクトホールCT1,CT2を形成した後、絶縁層IL上に、コンタクトホールCT1,CT2内を埋めるように、プラグ形成用の導電膜を形成してから、CMP法などを用いてコンタクトホールCT1,CT2の外部の導電膜(プラグ形成用の導電膜)を除去することで、コンタクトホールCT1,CT2内を埋め込む導電性プラグを形成する。コンタクトホールCT2内を埋め込む導電性プラグがゲート用ビア部VGに相当し、コンタクトホールCT1内を埋め込む導電性プラグがエミッタ用ビア部VEに相当する。その後、導電性プラグが埋め込まれた絶縁層IL上に、配線M1形成用の導電膜を形成してから、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてその配線M1形成用の導電膜をパターニングすることにより、配線M1(エミッタ用の配線M1Eおよびゲート用の配線M1G)を形成すればよい。
【0128】
次に、上記
図1、
図4〜
図6に示されるように、絶縁層IL上に、配線M1(エミッタ用の配線M1Eおよびゲート用の配線M1G)を覆うように、絶縁膜PAを形成する(
図9のステップS16)。それから、絶縁膜PAに開口部OPを形成する(
図9のステップS17)。絶縁膜PAは、例えばポリイミド系の樹脂などの樹脂膜からなり、表面保護の機能を有することができる。絶縁膜PAを形成した段階では、配線M1全体が絶縁膜PAで覆われることになる。
【0129】
開口部OPは、例えば次のようにして形成することができる。すなわち、絶縁膜PAを感光性樹脂膜として形成しておき、感光性樹脂からなる絶縁膜PA上にフォトリソグラフィ技術を用いてフォトレジストパターン(図示せず)を形成する。それから、このフォトレジストパターンをマスクとして用いて、感光性樹脂からなる絶縁膜PAを露光する。これにより、フォトレジストパターンで覆われずに露出した部分の絶縁膜PAが露光される。その後、フォトレジストパターンを除去してから、感光性樹脂からなる絶縁膜PAを現像処理することにより、絶縁膜PAにおける露光部を除去する。この露光、現像処理により、開口部OPとなる部分の絶縁膜PAを選択的に除去することで、絶縁膜PAに開口部OPを形成することができる。その後、熱処理を施して、絶縁膜PAを硬化させることもできる。開口部OPは、絶縁膜PAを貫通するように形成され、開口部OPから配線M1の一部が露出される。
【0130】
また、他の形態として、絶縁膜PA上にフォトリソグラフィ技術を用いて形成したフォトレジストパターンをエッチングマスクとして用いて、絶縁膜PAをエッチング(例えばドライエッチング)することにより、絶縁膜PAに開口部OPを形成することもできる。その場合は、絶縁膜PAは感光性の樹脂膜でなくともよい。
【0131】
開口部OPは、エミッタ用の開口部OPEとゲート用の開口部OPGとを含んでいる。エミッタ用の開口部OPEとゲート用の開口部OPGとは、つながっておらず、互いに離間している。エミッタ用の開口部OPEは、エミッタ用の配線M1E上に形成されてそのエミッタ用の配線M1Eの一部を露出する。このため、エミッタ用の開口部OPEは、平面視において、エミッタ用の配線M1Eに内包されている。絶縁膜PAの開口部OPEから露出するエミッタ用の配線M1Eによって、エミッタ用のボンディングパッドであるエミッタ用パッドPDEが形成される。ゲート用の開口部OPGは、ゲート用の配線M1G上に形成されてそのゲート用の配線M1Gの一部を露出する。このため、ゲート用の開口部OPGは、平面視において、ゲート用の配線M1Gに内包されている。絶縁膜PAの開口部OPGから露出するゲート用の配線M1Gによって、ゲート用のボンディングパッドであるゲート用パッドPDGが形成される。
【0132】
また、開口部OPから露出する配線M1の表面(すなわちボンディングパッドの表面)上には、メッキ法などで更に金属層(図示せず)を形成する場合もある。この金属層は、例えば、下から順に形成されたニッケル(Ni)膜と金(Au)膜との積層膜などからなる。この金属層を形成したことにより、下地のアルミニウム(配線M1)の表面の酸化を抑制または防止することができる。
【0133】
次に、必要に応じて、半導体基板SBの裏面(絶縁層ZSを形成した側の主面とは反対側の主面)を研削または研磨して、半導体基板SBの厚みを薄くする。
【0134】
次に、上記
図4〜
図6示されるように、半導体基板SBの裏面側に、p型半導体領域CLをイオン注入法などを用いて形成し(
図9のステップS18)、更に、n型半導体領域FSをイオン注入法などを用いて形成する(
図9のステップS19)。ステップS18(p型半導体領域CL形成工程)とステップS19(n型半導体領域FS形成工程)とは、順序を入れ替えることもできる。また、他の形態として、上記ステップS2(絶縁層形成ZS工程)の前に、ステップS18(p型半導体領域CL形成工程)およびステップS19(n型半導体領域FS形成工程)を行うこともできる。
【0135】
その後、上記
図4〜
図6に示されるように、半導体基板SBの裏面全体に裏面電極BEを形成する(
図9のステップS20)。裏面電極BEは、半導体基板SBの裏面に近い側から順に、アルミニウム(Al)膜とチタン(Ti)膜とニッケル(Ni)膜と金(Au)膜との積層金属膜などからなり、例えば蒸着法などを用いて形成することができる。
【0136】
このようにして、本実施の形態の半導体装置が製造される。その後、半導体基板SBおよび半導体基板SB上の構造体をダイシングなどによって分割(分離、切断)することにより、半導体基板SBから個々の半導体チップ(半導体装置CP)が取得される。
【0137】
<IGBTの構成および動作について>
図26は、半導体基板SBのトランジスタセル領域に形成されている上記単位トランジスタQ1を構成するIGBTの等価回路図である。
【0138】
半導体基板SBに形成されたIGBTの回路構成について、
図26および上記
図7を参照しながら説明する。なお、
図26中の符号Eはエミッタ電極であり、上記エミッタ用ビア部VEがエミッタ電極Eに対応し、また、
図26中の符号Cはコレクタ電極であり、上記裏面電極BEがコレクタ電極Cに対応し、また、
図26中の符号Gは、ゲート用の電極であり、上記ゲート用ビア部VGが、ゲート用の電極Gに対応している。
【0139】
半導体基板SBのトランジスタセル領域に形成された単位トランジスタQ1を構成するIGBTは、
図26に示されるように、pnpバイポーラトランジスタBP1と、npnバイポーラトランジスタBP2と、電界効果トランジスタFEとを有している。ここで、pnpバイポーラトランジスタBP1と電界効果トランジスタFEとにより、IGBTが構成されており、npnバイポーラトランジスタBP2は、デバイス構造上寄生的に形成される寄生トランジスタである。すなわち、IGBTの主要構成は、pnpバイポーラトランジスタBP1と電界効果トランジスタFEとであり、npnバイポーラトランジスタBP2は寄生的な構成要素である。
【0140】
pnpバイポーラトランジスタBP1は、p型半導体領域PRとn型領域(n型半導体領域EP1、n型基板領域NSBおよびn型半導体領域FS)とp型半導体領域CLとにより構成されている。また、寄生的な構成要素であるnpnバイポーラトランジスタBP2は、n
+型半導体領域NRとp型半導体領域PRとn型領域(n型半導体領域EP1、n型基板領域NSBおよびn型半導体領域FS)とにより構成されている。そして、電界効果トランジスタFEは、ソース領域となるn
+型半導体領域NRと、ドレイン領域となるn型領域(n型半導体領域EP1、n型基板領域NSBおよびn型半導体領域FS)と、ゲート電極GEと、ゲート絶縁膜GIとにより構成されている。n
+型半導体領域NRとn型半導体領域EP1との間に位置しかつゲート絶縁膜GIを介してゲート電極GEに対向する部分のp型半導体領域PRが、電界効果トランジスタFEのチャネル形成領域となる。
【0141】
次に、pnpバイポーラトランジスタBP1、npnバイポーラトランジスタBP2および電界効果トランジスタFEの接続関係について説明する。エミッタ電極E(エミッタ用ビア部VEに対応)とコレクタ電極C(裏面電極BEに対応)との間に、pnpバイポーラトランジスタBP1が接続されている。そして、pnpバイポーラトランジスタBP1のベース(n型半導体領域EP1、n型基板領域NSBおよびn型半導体領域FS)が電界効果トランジスタFEのドレイン領域(n型半導体領域EP1、n型基板領域NSBおよびn型半導体領域FS)に接続され、電界効果トランジスタFEのソース領域(n
+型半導体領域NR)がエミッタ電極E(エミッタ用ビア部VE)に接続されている。このとき、寄生的に形成されるnpnバイポーラトランジスタBP2のコレクタ(n型半導体領域EP1、n型基板領域NSBおよびn型半導体領域FS)がpnpバイポーラトランジスタBP1のベース(n型半導体領域EP1、n型基板領域NSBおよびn型半導体領域FS)に接続され、npnバイポーラトランジスタBP2のエミッタ(n
+型半導体領域NR)がエミッタ電極E(エミッタ用ビア部VE)に接続されている。そして、寄生的に形成されるnpnバイポーラトランジスタBP2のベース(p型半導体領域PR)がエミッタ電極E(エミッタ用ビア部VE)に接続されている。
【0142】
次に、IGBTの動作について、
図7および
図26を参照しながら説明する。
【0143】
エミッタ電極E(エミッタ用ビア部VE)よりも高電位をコレクタ電極C(裏面電極BE)に印加した状態で、ゲート用の電極G(ゲート用ビア部VG)を介して電界効果トランジスタFEのゲート電極GEにしきい値電圧以上のゲート電圧を印加する。すると、電界効果トランジスタFEがオンして、pnpバイポーラトランジスタBP1のベース電流が流れる。その結果、pnpバイポーラトランジスタBP1が接続されているコレクタ電極C(裏面電極BE)とエミッタ電極E(エミッタ用ビア部VE)との間に電流が流れる。すなわち、pnpバイポーラトランジスタBP1がオン(導通)する。このようにして、IGBTがオン(導通)する。続いて、電界効果トランジスタFEのゲート電極GEにしきい値電圧以下のゲート電圧を印加する。すると、電界効果トランジスタFEがオフして、pnpバイポーラトランジスタBP1のベース電流が流れなくなる。このため、ベース電流に基づいてコレクタ電極C(裏面電極BE)とエミッタ電極E(エミッタ用ビア部VE)との間に流れている電流が流れなくなる。すなわち、pnpバイポーラトランジスタBP1がオフする結果、IGBTがオフする。このようにIGBTでは、電界効果トランジスタFEのオン/オフを制御することによって、pnpバイポーラトランジスタBP1のベース電流の通電および遮断を制御している。このpnpバイポーラトランジスタBP1のベース電流の通電および遮断によって、結果的に、pnpバイポーラトランジスタBP1のコレクタ電流の通電および遮断が制御され、IGBTのオン/オフが制御されることになる。したがって、IGBTは、電界効果トランジスタFEの高速スイッチング特性や電圧駆動特性と、pnpバイポーラトランジスタBP1の低オン電圧特性を兼ね備える半導体素子である。
【0144】
次に、デバイス構造での動作について
図7を参照しながら説明する。エミッタ用ビア部VE(エミッタ電極E)よりも高電位を裏面電極BE(コレクタ電極C)に印加した状態で、ゲート用ビア部VGを介してゲート電極GEにしきい値電圧以上のゲート電圧を印加する。すると、ゲート絶縁膜GIを介してゲート電極GEに対向しているp型チャネル形成領域(p型半導体領域PR)に、n型半導体層からなる反転層(チャネル)が形成される。従って、n
+型半導体領域NRとn型半導体領域EP1とは反転層(チャネル)で電気的に接続されることとなり、n
+型半導体領域NRから反転層を介してn型ベース領域(n型半導体領域EP1、n型基板領域NSBおよびn型半導体領域FS)に電子が流れる。一方、n型ベース領域(n型半導体領域EP1、n型基板領域NSBおよびn型半導体領域FS)とp型コレクタ領域(p型半導体領域CL)との間が順バイアスされるので、p型コレクタ領域(p型半導体領域CL)からn型ベース領域(n型半導体領域FS、n型基板領域NSBおよびn型半導体領域EP1)に正孔(ホール)が注入される。このため、n型ベース領域(n型半導体領域FS、n型基板領域NSBおよびn型半導体領域EP1)には正孔が蓄積される。この蓄積された正孔による正電荷によって電子が引き寄せられる結果、n型ベース領域(n型半導体領域EP1、n型基板領域NSBおよびn型半導体領域FS)に多量の電子が流入する。これにより、n型ベース領域(n型半導体領域EP1、n型基板領域NSBおよびn型半導体領域FS)の抵抗が低下する。この現象がいわゆる伝導度変調であり、この伝導度変調によりIGBTのオン電圧が低くなる。そして、n型ベース領域(n型半導体領域FS、n型基板領域NSBおよびn型半導体領域EP1)に流入した正孔は、p型半導体領域PRを介してエミッタ用ビア部VE(エミッタ電極E)に流出する。このようにして、裏面電極BE(コレクタ電極C)からエミッタ用ビア部VE(エミッタ電極E)に電流が流れることによりIGBTがターンオンする。このとき、p型コレクタ領域(p型半導体領域CL)からn型ベース領域(n型半導体領域FS、n型基板領域NSBおよびn型半導体領域EP1)に注入された正孔は、n型ベース領域(n型半導体領域FS、n型基板領域NSBおよびn型半導体領域EP1)に存在する電子と再結合することが考えられる。しかしながら、シリコンを主体とする半導体材料では、化合物半導体を主体とする半導体材料に比べて、電子と正孔の再結合が起こりにくい性質がある。従って、n型ベース領域(n型半導体領域FS、n型基板領域NSBおよびn型半導体領域EP1)に注入された正孔の大部分は、n型ベース領域(n型半導体領域FS、n型基板領域NSBおよびn型半導体領域EP1)にある電子と再結合せず蓄積される。その結果、n型ベース領域(n型半導体領域FS、n型基板領域NSBおよびn型半導体領域EP1)に正孔が蓄積され、この蓄積された正孔に引き寄せられるように、n
+型半導体領域NRから流入した電子がn型ベース領域(n型半導体領域FS、n型基板領域NSBおよびn型半導体領域EP1)に蓄積されて伝導度変調が生じるのである。以上のことから、IGBTでは伝導度変調によりオン電圧(オン時の電圧)が低くなる特徴がある。
【0145】
このようなIGBTを形成する単位トランジスタQ1が、エミッタ用ビア部VE(エミッタ電極E)と裏面電極BE(コレクタ電極C)との間に形成されており、そのような単位トランジスタQ1が半導体基板SBのトランジスタセル領域に複数形成されて規則的に配置(配列)されている。各エミッタ用ビア部VE(エミッタ電極E)は共通のエミッタ用の配線M1Eに接続されているため、エミッタ用の配線M1Eと裏面電極BEとの間に、複数の単位トランジスタQ1(単位IGBT)が並列に接続された状態になっている。複数の単位トランジスタQ1(単位IGBT)のゲート電極GEは、ゲート用の配線M1Gを介して互いに電気的に接続され、ゲート用の配線M1Gを通じて共通のゲート用パッドPDGに電気的に接続されている。並列に接続された複数の単位トランジスタQ1(単位IGBT)により、1つのパワートランジスタ(パワーIGBT)が、エミッタ用の配線M1Eと裏面電極BEとの間に、従ってエミッタ用パッドPDEと裏面電極BEとの間に、形成されることになる。
【0146】
<検討例について>
次に、本発明者が検討した検討例の半導体装置について説明する。
【0147】
図27〜
図33は、本発明者が検討した検討例の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。この検討例の半導体装置も、IGBTを有する半導体装置である。
【0148】
検討例の半導体装置を製造するには、まず、
図27に示されるように、n型の半導体基板SB100の主面全面上に絶縁層ZS100を形成する。それから、
図28に示されるように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて絶縁層ZS100に溝(トレンチ)TR101を形成する。溝TR101は、絶縁層ZS100を貫通し、溝TR101の底部では半導体基板SB100の一部が露出される。それから、
図29に示されるように、溝TR101の底部で露出する半導体基板SB100上に、n型の半導体層EP100をエピタキシャル成長により形成する。n型の半導体層EP100を形成すると、溝TR101内はn型の半導体層EP100で埋められた状態になる。
【0149】
それから、
図30に示されるように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて半導体層EP100に溝(トレンチ)TR102を形成する。それから、
図31に示されるように、溝TR102内に、ゲート絶縁膜GI100を介してゲート電極GE100を形成する。例えば、半導体層EP100の露出面上にゲート絶縁膜GI100を形成してから、溝TR102内を埋めるように、半導体層EP100および絶縁層ZS100上にゲート電極用導電膜を形成し、その後、溝TR102の外部のゲート電極用導電膜を除去することにより、溝TR102内にゲート絶縁膜GI100を介して埋め込まれたゲート電極GE100を形成することができる。それから、
図32に示されるように、半導体層EPにおいて、半導体層EPの上部にp型ベース層PR100をイオン注入により形成し、更に、p型ベース層PR100の上部にn型エミッタ層NR100をイオン注入により形成する。
【0150】
それから、
図33に示されるように、絶縁層ZS100上に、半導体層EP100およびゲート電極GE100を覆うように、絶縁層IL100を形成してから、絶縁層IL100およびn型エミッタ層NR100を貫通してp型ベース層PR100に達するコンタクトホールCT100を形成する。その後、絶縁層IL100上に、コンタクトホールCT100内を埋めるように、導電膜を形成してから、その導電膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることにより、エミッタ用の配線M1E100とエミッタ用ビア部VE100を形成する。エミッタ用ビア部VE100は、エミッタ用の配線M1E100と一体的に形成されてコンタクトホールCT100内を埋め込んでおり、p型ベース層PR100とn型エミッタ層NR100の両方に接して電気的に接続されている。その後、上記絶縁膜PAに相当する保護膜を形成し、更に、半導体基板SB100の裏面側にp型コレクタ層CL100を形成してから、p型コレクタ層CL100に接する裏面コレクタ電極BE100を形成する。
【0151】
図27〜
図33に示される検討例の半導体装置では、絶縁層ZS100の溝TR101内にn型の半導体層EP100を埋め込み、半導体層EP100に溝TR102を形成してその溝TR102にゲート絶縁膜GI100を介してゲート電極GE100を埋め込んでいる。このため、検討例は、ゲート電極GE100の両側に、n型エミッタ層NR100とp型ベース層PR100とを含む半導体層EP100が存在し、その半導体層EP100の外側(ゲート電極GE100から離れる側)には絶縁層ZS100が存在する構造となっている。このため、p型ベース層PR100の下に位置し、かつ、絶縁層ZS100とゲート電極GE100とで挟まれた部分のn型の半導体層EP100の幅W11,W12を小さくすることができる。従って、コレクタ側からp型ベース層PR100側へ流れる正孔電流が、幅W11,W12が狭いn型の半導体層EP100に集中するため、n型の半導体層EP100に蓄積されるキャリア密度(正孔密度)を高めることができる。これにより、IE(Injection Enhancement:注入促進)効果を高めて、伝導度変調によるオン電圧の低減を促進することができる。
【0152】
しかしながら、本発明者の検討によれば、
図27〜
図33に示される検討例の半導体装置では、次のような課題が生じることが分かった。
【0153】
図27〜
図33に示される検討例の半導体装置では、絶縁層ZS100の溝TR101内にn型の半導体層EP100を埋め込み、半導体層EP100に溝TR102を形成してその溝TR102にゲート絶縁膜GI100を介してゲート電極GE100を埋め込んでいる。溝TR101と溝TR102とは別工程で形成するため、溝TR101と溝TR102の相対的な位置関係については、設計通りに形成することは容易ではない。例えば、溝TR101を形成する際に用いたフォトリソグラフィ技術における位置合わせのずれと、溝TR102を形成する際に用いたフォトリソグラフィ技術における位置合わせのずれとに起因して、溝TR101の形成位置に対する溝TR102の形成位置が、設計からずれてしまう虞がある。溝TR101の形成位置に対する溝TR102の形成位置が設計からずれてしまうことは、n型の半導体層EP100の幅W11と幅W12とが設計値からずれることにつながる。ここで、ゲート電極GE100の両側のうちの一方(
図33では左側)における半導体層EP100の幅が、幅W11に対応し、ゲート電極GE100の両側のうちの他方(
図33では右側)における半導体層EP100の幅が、幅W12に対応している。
【0154】
例えば、
図33において、設計上は溝TR101の中央に溝TR102を形成すべきであった場合に、溝TR101の中央よりも左側にずれて溝TR102が形成されてしまうと、幅W11は設計値よりも小さくなり、幅W12は設計値よりも大きくなってしまう。一方、
図33において、設計上は溝TR101の中央に溝TR102を形成すべきであった場合に、溝TR101の中央よりも右側にずれて溝TR102が形成されてしまうと、幅W11は設計値よりも大きくなり、幅W12は設計値よりも小さくなってしまう。
【0155】
幅W11,W12の値は、IGBTの電気的特性を決めるうえで重要であり、幅W11,W12の値が設計値からずれると、特性ばらつきを招くなどして、半導体装置の性能が低下してしまう。また、半導体装置の信頼性が低下してしまう。特に、IE効果をより高めるために幅W11,W12の設計値を小さくしようとすると、幅W11,W12の値が設計値からずれたときの特性ばらつきが大きくなってしまう。
【0156】
また、
図33に示される検討例の半導体装置では、ゲート電極GE100の下面の直下に薄いゲート絶縁膜GI100が存在し、それが容量絶縁膜となって、ゲート電極GE100に起因した寄生容量、例えばゲート・コレクタ間の寄生容量を増大させてしまう。ゲート・コレクタ間の寄生容量の増大は、IGBTのスイッチングスピードの低下につながり、ひいては、半導体装置の性能の低下につながってしまう。
【0157】
また、
図33に示される検討例の半導体装置では、ゲート電極GE100の両側面と下面とにゲート絶縁膜GI100が形成されているため、ゲート電極GE100の表面に形成したゲート絶縁膜GI100の総面積が大きくなる。ゲート絶縁膜GI100は、比較的薄い絶縁膜であり、ゲート絶縁膜GI100において一か所でもショート破壊が発生すると、IGBTとして機能しなくなる。このため、半導体装置の信頼性をできるだけ高めるためには、ゲート絶縁膜GI100の総面積は小さい方が望ましい。
【0158】
また、
図33に示される検討例の半導体装置では、半導体層EP100の幅は、深さ位置にかかわらず一定である。すなわち、半導体層EP100の上部における半導体層EP100の幅と、半導体層EP100の下部における半導体層EP100の幅とは同じである。このため、IE効果をより高めるために幅W11,W12の設計値を小さくしようとすると、半導体層EP100上にコンタクトホールCT100を形成しにくくなる。また、IE効果をより高めるために幅W11,W12の設計値を小さくしようとすると、エミッタ用ビア部VE100がn型エミッタ層NR100とp型ベース層PR100との両方に接続し、かつ、ソース領域としても機能するn型エミッタ層NR100がゲート絶縁膜GI100を介してゲート電極GE100に対向する構造を、半導体層EP100の上部に上手く形成しにくくなる。これを避けるために、幅W11,W12の設計値を大きくしてしまうと、IE効果が低下してしまう。
【0159】
<主要な特徴と効果について>
本実施の形態の半導体装置は、n型の半導体基板SBと、半導体基板SBの主面上に形成された絶縁層ZSと、絶縁層ZSに形成された溝TRと、溝TR内において、溝TRの底部で露出する半導体基板SB上に形成された半導体層EPと、溝TR内において、半導体層EPを挟むように半導体層EPの両側に形成された一対のゲート電極GEと、を有している。本実施の形態の半導体装置は、更に、溝TR内において、半導体層EPと一対のゲート電極GEとの間に介在するゲート絶縁膜GIと、絶縁層ZS上に、半導体層EPおよび一対のゲート電極GEを覆うように形成された絶縁層ILと、半導体層EP上に形成され、絶縁層ILを貫通し、半導体層EPに達するコンタクトホールCT1と、を有している。本実施の形態の半導体装置は、更に、コンタクトホールCT1内に形成されたエミッタ用ビア部VE(電極部、エミッタ電極)と、半導体基板SBにおいて、絶縁層ZSが形成されている側とは反対側である裏面側に形成されたp型半導体領域CLと、半導体基板SBの裏面上に形成され、p型半導体領域CLに電気的に接続された裏面電極BEと、を有している。半導体層EPにおいて、半導体層EPの上部には、p型半導体領域PRとp型半導体領域PR上のn
+型半導体領域NRとが形成されている。半導体層EPにおいて、p型半導体領域PRの下の部分はn型である。エミッタ用ビア部VE(電極部、エミッタ電極)は、p型半導体領域PRおよびn
+型半導体領域NRと電気的に接続されている。半導体層EPの両側に形成された一対のゲート電極GEの下には、絶縁層ZSの一部が存在し、一対のゲート電極GEにおけるゲート絶縁膜GIを介して半導体層EPに対向する側とは反対側の側面は、絶縁層ZSに隣接している。
【0160】
本実施の形態の半導体装置の主要な特徴のうちの一つは、半導体基板SBの主面上に形成された絶縁層ZSの溝TR内に、溝TRの底部で露出する半導体基板SB上に形成された半導体層EPと、半導体層EPを挟むように半導体層EPの両側に形成された一対のゲート電極GEとが形成されていることである。溝TR内において、半導体層EPと一対のゲート電極GEとの間にはゲート絶縁膜GIが介在している。そして、半導体層EPの両側に形成された一対のゲート電極GEの下には、絶縁層ZSの一部が存在し、一対のゲート電極GEにおけるゲート絶縁膜GIを介して半導体層EPに対向する側とは反対側の側面は、絶縁層ZSに隣接している。
【0161】
本実施の形態の半導体装置では、絶縁層ZSの溝TR内に、半導体基板SB上に形成された半導体層EPと、半導体層EPの両側に形成された一対のゲート電極GEとが形成されており、半導体層EPに、p型半導体領域PRおよびn
+型半導体領域NRが形成されている。このため、p型半導体領域PRの下に位置する部分の半導体層EP(n型半導体領域EP1)の幅(X方向の幅)を小さくすることができる。従って、コレクタ側からp型ベース層(p型半導体領域PR)側へ流れる正孔電流が、幅が狭いn型の半導体層EP(n型半導体領域EP1)に集中するため、n型の半導体層EP(n型半導体領域EP1)に蓄積されるキャリア密度(正孔密度)を高めることができる。これにより、IE(Injection Enhancement:注入促進)効果を高めて、伝導度変調によるオン電圧の低減を促進することができる。このため、オン電圧(オン時の電圧)を低減することができ、従って、オン抵抗(オン時の抵抗)を低減することができる。従って、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0162】
上記
図33に示される検討例の半導体装置では、半導体基板SB100の主面上に形成された絶縁層ZS100の溝TR101内に、半導体層EP100とゲート電極GE100とが形成されているが、半導体層EP100の両側にゲート電極GE100が設けられているのではなく、ゲート電極GE100の両側に半導体層EP100が設けられている構造である。このため、ゲート電極GE100の下面の直下の薄いゲート絶縁膜GI100が容量絶縁膜として作用することで、ゲート電極GE101に起因した寄生容量、例えばゲート・コレクタ間の寄生容量を増大させてしまう。また、上記
図33に示される検討例の半導体装置では、ゲート電極GE100の両側面と下面とにゲート絶縁膜GI100が形成されているため、ゲート絶縁膜GI100の総面積が大きくなってしまう。
【0163】
それに対して、本実施の形態では、半導体基板SBの主面上に形成された絶縁層ZSの溝TR内に、半導体層EPと、半導体層EPの両側に形成された一対のゲート電極GEとが形成されており、一対のゲート電極GEの下には、絶縁層ZSの一部が存在し、一対のゲート電極GEにおけるゲート絶縁膜GIを介して半導体層EPに対向する側とは反対側の側面は、絶縁層ZSに隣接している。
【0164】
本実施の形態では、ゲート電極GEの下には、絶縁層ZSの一部が存在しており、ゲート電極GEの下面が薄いゲート絶縁膜GIを介して半導体または半導体領域に対向する構造とはなっていないため、ゲート電極GEに起因した寄生容量、例えばゲート・コレクタ間の寄生容量を抑制することができる。これにより、半導体装置の性能を向上させることができる。例えば、ゲート・コレクタ間の寄生容量の増大は、IGBTのスイッチングスピードの低下につながるが、本実施の形態では、ゲート・コレクタ間の寄生容量を抑制することができるため、IGBTのスイッチングスピードを向上させることができる。
【0165】
また、本実施の形態では、ゲート電極GEの下には絶縁層ZSの一部が存在し、かつ、ゲート電極GEにおけるゲート絶縁膜GIを介して半導体層EPに対向する側とは反対側の側面は、絶縁層ZSに隣接している。このため、ゲート電極GEが薄いゲート絶縁膜GIを介して半導体領域に隣接しているのは、ゲート電極GEにおけるゲート絶縁膜GIを介して半導体層EPに対向する側の側面だけである。ゲート電極GEにおけるゲート絶縁膜GIを介して半導体層EPに対向する側とは反対側の側面と、ゲート電極GEの下面とは、薄いゲート絶縁膜GIを介して半導体領域に隣接してはおらず、絶縁層ZSに隣接している。このため、ゲート電極GEに接するゲート絶縁膜GIの総面積を抑制することができる。ゲート絶縁膜GIは、比較的薄い絶縁膜であり、ゲート絶縁膜GIにおいて一か所でもショート破壊が発生すると、IGBTとして機能しなくなるが、本実施の形態では、ゲート絶縁膜GIの総面積を抑制できることにより、ゲート絶縁膜GIにおけるショート破壊の発生確率を低減することができる。従って、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0166】
また、本実施の形態の半導体装置の製造工程は、ステップS1で、n型ベース領域用のn型の半導体基板SBを用意し、ステップS2で、半導体基板SBの主面上に絶縁層ZSを形成し、ステップS3で、絶縁層ZSに、絶縁層ZSを貫通して半導体基板SBの一部を露出する溝TR1aを形成する。それから、ステップS4で、溝TR1aの底部で露出する半導体基板SB上に、溝TR1a内を埋めるように、n型の半導体層EPを形成する。それから、ステップS5で、絶縁層ZSにおいて、溝TR1aの両側に、溝TR1aを挟むように、一対の溝TR2aを形成し、ステップS6で、一対の溝TR2aを拡張して、一対の溝TR2aから、半導体層EPの側面の一部を露出させる。なお、ステップS5では、一対の溝TR2aから半導体層EPの側面は露出されず、かつ、一対の溝TR2aは、半導体基板SBに達していない。それから、ステップS7で、一対の溝TR2aから露出する半導体層EPの側面にゲート絶縁膜用の絶縁膜GIaを形成し、ステップS8で、一対の溝TR2a内のそれぞれにゲート電極GEを形成し、ステップS9,S10で、半導体層EPの上部にp型ベース領域(p型半導体領域PR)とn型エミッタ領域(n
+型半導体領域NR)とを形成する。
【0167】
上記
図27〜
図33に示される検討例では、溝TR101内に埋め込まれた半導体層EP100に、溝TR102を形成して、その溝TR102にゲート絶縁膜GI100を介してゲート電極GE100を埋め込んでいる。このため、上述のように、溝TR101の形成位置に対する溝TR102の形成位置が、設計からずれてしまった場合には、n型の半導体層EP100の幅W11,幅W12が設計値からずれることになり、特性変動を招くなどして、半導体装置の性能が低下してしまう。
【0168】
それに対して、本実施の形態では、溝TR1a内に埋め込まれた半導体層EPに溝TR2aを形成するのではなく、ステップS5で、絶縁層ZSにおいて、溝TR1aの両側に、すなわち、溝TR1a内に埋め込まれた半導体層EPの両側に、溝TR2aを形成する。この段階では、溝TR2aから半導体層EPの側面は露出されない。そして、ステップS6で、溝TR2aを拡張して溝TR2aから半導体層EPの側面の一部を露出させるのである。このため、半導体層EPの幅(X方向の幅)は、ステップS3で形成した溝TR1aの幅(X方向の幅)によって規定されることになり、ステップS5における溝TR2aの形成位置がたとえ設計からずれたとしても、半導体層EPの幅(X方向の幅)が設計値からずれるのを抑制または防止することができる。半導体層EPの幅(X方向の幅)が設計値からずれると、特性ばらつきを招く虞があるが、本実施の形態では、半導体層EPの幅(X方向の幅)が設計値からずれるのを抑制または防止できるため、特性ばらつきを抑制または防止することができ、半導体装置の性能を向上させることができる。また、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0169】
また、本実施の形態では、ステップS5で溝TR2aを形成した段階では、溝TR2aから半導体層EPの側面は露出されておらず、ステップS6で溝TR2aを拡張することにより、溝TR2aから半導体層EPの側面の一部を露出させる。これは、ステップS5では、溝TR1aから離間して、すなわち溝TR1a内に埋め込まれた半導体層EPから離間して、溝TR2aを形成するため、ステップS5で溝TR2aを形成した段階では、溝TR2aから半導体層EPの側面は露出されず、ステップS6で溝TR2aを拡張することにより、溝TR2aから半導体層EPの側面が露出されるからである。このため、たとえステップS5で溝TR2aの形成位置が設計位置から多少ずれたとしても、ステップS6で溝TR2aを拡張することにより、溝TR2aから半導体層EPの側面の一部を露出させることができるため、ステップS5とステップS6とにより、半導体層EPの両側に、半導体層EPに隣接した位置に、溝TR2aを自己整合的に形成することが可能になる。
【0170】
このため、本実施の形態では、たとえステップS3での溝TR1aの形成位置に対するステップS5での溝TR2aの形成位置が、設計から多少ずれたとしても、ステップS6を終了した段階で、半導体層EPの幅はほぼ設計値通りの寸法にすることができ、また、半導体層EPの両側に、半導体層EPに隣接した位置に、溝TR2aを自己整合的に形成することができる。そして、ステップS7で、溝TR2aから露出する半導体層EPの側面にゲート絶縁膜用の絶縁膜GIaを形成し、ステップS8で、溝TR2a内にゲート電極GEを形成する。このため、たとえステップS3での溝TR1aの形成位置に対するステップS5での溝TR2aの形成位置が、設計から多少ずれたとしても、ステップS8を終了した段階で、半導体層EPの幅はほぼ設計値通りの寸法にすることができ、また、半導体層EPの両側に、半導体層EPに隣接した位置に、絶縁膜GIa(ゲート絶縁膜GI)を介してゲート電極GEを形成することができる。半導体層EPの幅が設計値からずれるのを抑制または防止できるため、特性ばらつきを抑制または防止することができ、半導体装置の性能を向上させることができる。また、半導体装置の信頼性を向上させることができる。また、ステップS3での溝TR1aの形成位置に対するステップS5での溝TR2aの形成位置が、設計から多少ずれることを許容できるようになるため、半導体装置の製造工程を行いやすくなる。また、半導体装置の製造歩留まりを向上させることができる。また、製造工程の管理が容易になる。
【0171】
また、フォトリソグラフィ工程を用いて何らかのパターン(例えば溝)を形成する場合、フォトマスクの合わせずれなどに起因してパターン(例えば溝)の形成位置は設計位置からずれる可能性があるが、パターン(例えば溝)の寸法については、ほとんど変動せず、ほぼ設計値通りに形成することができる。製造された半導体装置における半導体層EPの幅は、主としてステップS3で形成した溝TR1aの幅により規定されるため、半導体層EPの幅が設計値からずれるのを抑制または防止することができる。このため、半導体層EPの幅がばらつくことに起因した特性ばらつきを抑制または防止することができ、半導体装置の性能を向上させることができる。また、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0172】
また、半導体層EPの幅(X方向の幅)は、深さ位置によらずにほぼ一定にすることも可能である。しかしながら、上記
図7に示されるように、半導体層EPの幅(X方向の幅)を半導体層EPの上部において相対的に大きくすることが、より好ましい。
【0173】
具体的には、本実施の形態の半導体装置では、コンタクトホールCT1の底面の深さ位置における半導体層EPの幅W1と、p型半導体領域PRの下でかつゲート電極GEによって挟まれた部分の半導体層EPの幅W2とが、W1>W2の関係を有していることが好ましい。すなわち、幅W1が幅W2よりも大きいことが好ましく、言い換えると、幅W2が幅W1よりも小さいことが好ましい。なお、幅W1,W2は、上記
図7に示されており、幅W1と幅W2は、いずれもX方向の幅(寸法)である。幅W1は、コンタクトホールCT1の底面の深さ位置における半導体層EPの幅であるが、コンタクトホールCT1の底面の深さ位置とエミッタ用ビア部VEの底面(下面)の深さ位置とは実質的に同じなので、幅W1は、エミッタ用ビア部VEの底面(下面)の深さ位置における半導体層EPの幅とみなすこともできる。また、幅W2は、p型半導体領域PRの下でかつゲート電極GEによって挟まれた部分の半導体層EPの幅であるが、p型半導体領域PRよりも深くかつゲート電極GEの下面よりも浅い位置での半導体層EPの幅とみなすこともできる。
【0174】
次に、W1>W2の関係が成り立つことが好ましい理由について説明する。
【0175】
IE効果を高めるためには、p型半導体領域PRの下における半導体層EP(n型半導体領域EP1)の幅W2を小さくすることが有効である。幅W2を小さくすることにより、p型半導体領域PRの下におけるn型の半導体層EP(n型半導体領域EP1)に蓄積されるキャリア密度(正孔密度)を高めることができるため、IE効果を高めることができる。
【0176】
一方、コンタクトホールCT1の底面の深さ位置における半導体層EPの幅W1は、ある程度大きくすることが望ましい。幅W1が小さいと、コンタクトホールCT1を形成しにくくなる。例えば、幅W1が小さい場合には、コンタクトホールCT1の形成位置が設計位置からずれてしまうと、コンタクトホールCT1がゲート電極GEと重なってしまい、コンタクトホールCT1内に形成するエミッタ用ビア部VEがゲート電極GEとショートしてしまう虞がある。これを防ぐために、コンタクトホールCT1の幅(X方向の幅)W9を更に小さくしてしまうと、コンタクトホールCT1内に形成するエミッタ用ビア部VEのコンタクト抵抗が増大してしまう。エミッタ用ビア部VEのコンタクト抵抗が増大すると、上述した寄生バイポーラトランジスタであるnpnバイポーラトランジスタBP2がオンしやすくなるため、エミッタ用ビア部VEのコンタクト抵抗は小さくすることが望ましく、従って、コンタクトホールCT1の幅W9は、ある程度大きくすることが望ましい。ここで、コンタクトホールCT1の幅W9は、上記
図7に示されており、X方向の幅(寸法)である。なお、コンタクトホールCT1を形成したときに、ゲート絶縁膜GIを介してゲート電極GEに隣接する位置にn
+型半導体領域NRが存在できるように、コンタクトホールCT1の幅W9は、コンタクトホールCT1の底面の深さ位置における半導体層EPの幅W1よりも小さい(W9<W1)。
【0177】
そこで、本実施の形態では、コンタクトホールCT1の底面の深さ位置における半導体層EPの幅W1が、p型半導体領域PRの下でかつゲート電極GEによって挟まれた部分の半導体層EPの幅W2よりも大きく(W1>W2)なるようにしている。これにより、幅W2を小さくしたことにより、IE効果を高めてオン電圧をより低減することができるとともに、幅W1を大きくしたことにより、コンタクトホールCT1を形成しやすくなる。つまり、W1>W2が成り立つようにすることで、IE効果の向上とコンタクトホールCT1の形成しやすさとを両立することができる。また、幅W1を大きくしたことにより、コンタクトホールCT1内のエミッタ用ビア部VEがn型エミッタ層(n
+型半導体領域NR)とp型ベース層(p型半導体領域PR)との両方に接続し、かつ、ソース領域として機能するn型エミッタ層(n
+型半導体領域NR)がゲート絶縁膜GIを介してゲート電極GEに対向する構造を、半導体層EPの上部に形成しやすくなる。従って、幅W2を小さくしたことにより、半導体装置の性能向上を図りながら、幅W1を大きくしたことにより、半導体装置の製造工程が行いやすくなり、また、半導体装置の製造歩留まりを向上させることができる。また、幅W1を大きくしたことにより、コンタクトホールCT1の幅W9を大きくすることが可能になるため、エミッタ用ビア部VEのコンタクト抵抗を低減することができ、この点でも、半導体装置の性能向上を図ることができる。
【0178】
また、W1=W2であれば、コンタクトホールCT1の幅W9を、p型半導体領域PRの下における半導体層EPの幅W2よりも大きく(W9>W2)することはできないが、W1>W2としたことにより、コンタクトホールCT1の幅W9を、p型半導体領域PRの下における半導体層EPの幅W2よりも大きく(W9>W2)することができるようになる。このため、本実施の形態では、幅W9を幅W2よりも大きくし(W9>W2)、かつ、幅W1を幅W9よりも大きく(W1>W9)することも可能である。すなわち、W1>W9>W2が成り立つようにすることも可能である。この場合、W9>W2としたことで、幅W2を小さくしたことによりIE効果を高めてオン電圧をより低減できるとともに、コンタクトホールCT1の幅W9を大きくしたことによりエミッタ用ビア部VEのコンタクト抵抗を低減することができる。そして、W1>W9としたことで、コンタクトホールCT1を形成しても、ゲート絶縁膜GIを介してゲート電極GEに隣接する位置にn
+型半導体領域NRが存在することができる。
【0179】
また、製造された半導体装置において、W1>W2の関係が成り立つようにするには、ステップS3で形成される溝TR1aの形状を工夫すればよい。すなわち、ステップS3で形成された溝TR1aは、溝TR1aの上部における幅W3が、溝TR1aの下部における幅W4よりも大きく(W3>W4)なるようにしている。別の見方をすると、溝TR1aの下部では、溝TR1aの側面(側壁)は、半導体基板SBの主面に対してほぼ垂直であり、溝TR1aの幅W4は、深さ位置によらずほぼ一定であるが、溝TR1aの上部では、深さ位置が浅くなるほど、溝TR1aの幅W3が大きくなるようにしている。更に別の見方をすると、溝TR1aの下部では、溝TR1aの側面(側壁)は、半導体基板SBの主面に対してほぼ垂直であるが、溝TR1aの上部では、溝TR1aの側面は、テーパを有している。なお、幅W3,W4は、上記
図15に示されており、幅W3と幅W4は、いずれもX方向の幅(寸法)である。また、上記
図13〜
図15に関連して説明した上記幅W5a,W5b,W6も、X方向の幅(寸法)である。
【0180】
これにより、ステップS4で溝TR1a内に形成された半導体層EPは、半導体層EPの上部における幅W7が、半導体層EPの下部における幅W8よりも大きくなる(W7>W8)。別の見方をすると、半導体層EPの下部では、半導体層EPの側面(側壁)は、半導体基板SBの主面に対してほぼ垂直であり、半導体層EPの幅W8は、深さ位置によらずほぼ一定であるが、半導体層EPの上部では、深さ位置が浅くなるほど、半導体層EPの幅W7が大きくなる。更に別の見方をすると、半導体層EPの下部では、半導体層EPの側面(側壁)は、半導体基板SBの主面に対してほぼ垂直であるが、半導体層EPの上部では、半導体層EPの側面は、テーパを有している。なお、幅W7,W8は、上記
図16に示されており、幅W7と幅W8は、いずれもX方向の幅(寸法)である。半導体層EPは、溝TR1a内を埋めるように形成されるため、半導体層EPの側面は溝TR1aの内面と実質的に一致している。このため、幅W7は、上記幅W3と実質的に同じであり、幅W8は、上記幅W4と実質的に同じである。
【0181】
このようにステップS3で形成した溝TR1aの形状を工夫し、それによってステップS4で形成される半導体層EPの形状を工夫することにより、上述したW1>W2の関係を成り立たせ、上述した効果を享受することができる。
【0182】
(実施の形態2)
図34および
図35は、本実施の形態2の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0183】
上記ステップS6を行って上記
図19の構造を得るまでは、本実施の形態2も、上記実施の形態1の製造工程と同様であるので、ここではその繰り返しの説明は省略し、上記ステップS6に続く工程について説明する。
【0184】
上記実施の形態と同様にしてステップS6の工程までを行って上記
図19の構造を得た後、本実施の形態2では、
図34に示されるように、半導体層EPの露出面を酸化することにより、半導体層EPの露出面上に酸化膜(犠牲酸化膜)OXを形成する。酸化法としては、熱酸化法が好ましい。酸化膜OXは、犠牲酸化膜である。半導体層EPがシリコン層の場合は、酸化膜OXは酸化シリコン膜である。酸化膜OXは、溝TR2aから露出する半導体層EPの側面上と、半導体層EPの上面上とに形成される。
【0185】
なお、この
図34の酸化工程(酸化膜OX形成工程)は、溝TR2aから露出する部分の半導体層EPの幅(X方向の幅)を縮小するために行っているため、溝TR2aから露出する半導体層EPの側面を酸化する(すなわち溝TR2aから露出する半導体層EPの側面に酸化膜OXを形成する)ことが重要であり、半導体層EPの上面は酸化してもしなくてもよい。このため、
図34の酸化工程(酸化膜OX形成工程)は、溝TR2aから露出する半導体層EPの側面を酸化する工程とみなすことができる。但し、
図34に示されるように、溝TR2aから露出する半導体層EPの側面だけでなく、半導体層EPの上面も酸化する場合の方が、半導体層EP上に耐酸化用のマスク層を形成しないで済むため、製造工程が簡易になる。
【0186】
それから、
図35に示されるように、酸化膜OXをエッチングによって除去する。酸化膜OXの除去工程は、例えばウェットエッチングによって行うことができ、酸化膜OXを除去するエッチング工程は、酸化膜OXに比べて半導体層EPがエッチングされにくいエッチング条件、すなわち、酸化膜OXのエッチング速度に比べて半導体層EPのエッチング速度が小さくなるようなエッチング条件、を採用することが好ましい。これにより、酸化膜OXを除去したことで露出した半導体層EPがエッチングされるのを抑制または防止することができる。酸化膜OXを除去するエッチング工程で用いるエッチング液としては、例えばフッ酸の水溶液などを好適に用いることができる。
【0187】
その後、上記実施の形態1のステップS7(ゲート絶縁膜用の絶縁膜GIa形成工程)およびそれ以降の工程を行うが、ここではその図示および繰り返しの説明は省略する。
【0188】
すなわち、上記実施の形態1の製造工程において、上記ステップS6と上記ステップS7との間に、酸化膜OX形成工程と酸化膜OX除去工程とを追加したものが、本実施の形態2に対応している。また、ここでは、上記ステップS6とステップS7との間に、酸化膜OX形成工程(犠牲酸化膜形成工程)と酸化膜OX除去工程(犠牲酸化膜除去工程)とを1サイクル行った場合について説明したが、上記ステップS6とステップS7との間に、酸化膜OX形成工程(犠牲酸化膜形成工程)と酸化膜OX除去工程(犠牲酸化膜除去工程)とを2サイクル以上行うこともできる。例えば、2サイクル行う場合は、上記ステップS6の後に、半導体層EPの露出面を酸化して酸化膜OXを形成してから、エッチングによりその酸化膜OXを除去し、酸化膜OXを除去したことで露出した半導体層EPの露出面を再度酸化して酸化膜OXと同様の酸化膜(犠牲酸化膜)を形成してから、その酸化膜をエッチングによって除去し、その後、上記ステップS7を行えばよい。
【0189】
本実施の形態2では、上記ステップS6とステップS7との間に、酸化膜OX形成工程(犠牲酸化膜形成工程)と酸化膜OX除去工程(犠牲酸化膜除去工程)とを1サイクル以上行うことにより、溝TR2aから露出する部分の半導体層EPの幅(X方向の幅)を縮小することができる。すなわち、上記
図19の段階に比べて、酸化膜OX形成工程および酸化膜OX除去工程を行った
図35の方が、溝TR2aから露出する部分の半導体層EPの幅(X方向の幅)が小さくなる。これにより、上記幅W2を小さくすることができるため、IE効果をより向上させることができる。
【0190】
また、溝TR1aの上記幅W4(W5b)を小さくすれば、上記幅W2を小さくできるため、上述したIE効果を高めることができるが、溝TR1aの上記幅W4(W5b)を小さくし過ぎると、上記ステップS4で溝TR1a内を半導体層EPで埋め込みにくくなる虞がある。それに対して、本実施の形態2を適用した場合、溝TR1aの上記幅W4を確保して上記ステップS4で溝TR1a内を半導体層EPで埋め込みやすくしながら、酸化膜OX形成工程と酸化膜OX除去工程とを1サイクル以上行うことにより、溝TR2aから露出する部分の半導体層EPの幅(X方向の幅)を小さくすることができることで、上述したIE効果を高めることができる。
【0191】
また、溝TR1aの幅W4を小さくする限界は、フォトリソグラフィによる加工精度に依存するが、本実施の形態2を適用すれば、溝TR2aから露出する部分の半導体層EPの幅(X方向の幅)を、その限界より更に小さくすることも可能になる。
【0192】
(実施の形態3)
図36および
図37は、本実施の形態2の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0193】
上記ステップS2を行って上記
図11の構造を得るまでは、本実施の形態3も、上記実施の形態1の製造工程と同様であるので、ここではその繰り返しの説明は省略し、上記ステップS2に続く工程について説明する。
【0194】
上記実施の形態と同様にしてステップS2の工程までを行って上記
図11の構造を得た後、本実施の形態3では、ステップS3で、
図36に示されるように、絶縁層ZSに溝TR1aを形成する。溝TR1aは、絶縁層ZSを貫通して、半導体基板SBに到達し、溝TR1aの底部で半導体基板SBが露出される。本実施の形態3においては、ステップS3で形成された溝TR1aは、テーパを有している。
【0195】
以降の工程は、本実施の形態3も、上記実施の形態1と基本的には同じである。すなわち、上記実施の形態1と同様に、本実施の形態3においても、ステップS4で、
図37に示されるように、溝TR1aから露出する半導体基板SB上に、半導体層EPをエピタキシャル成長させる。半導体層EPを成長させると、溝TR1a内は半導体層EPで埋められることになる。その後、上記ステップS5およびそれ以降の工程を行うが、ここではその図示および繰り返しの説明は省略する。
【0196】
本実施の形態3における溝TR1aが上記実施の形態1における溝TR1aと相違しているのは、本実施の形態3の場合は、ステップS3で形成された溝TR1aが、テーパを有していることである。
【0197】
すなわち、上記実施の形態1の場合は、溝TR1aの下部では、溝TR1aの側面(側壁)は、半導体基板SBの主面に対してほぼ垂直である。
【0198】
それに対して、本実施の形態3の場合は、溝TR1aの下部においても、溝TR1aの側面(側壁)は、半導体基板SBの主面に対して垂直な面から傾斜しており、深さ位置が浅くなるほど、溝TR1aの幅(X方向の幅)が大きくなっている。
【0199】
但し、溝TR1aの下部よりも、溝TR1aの上部の方が、溝TR1aの側面(側壁)の傾斜角(半導体基板SBの主面に対して垂直な面からの傾斜角)が大きくなっていることが好ましい。すなわち、溝TR1aの上部よりも、溝TR1aの下部の方が、溝TR1aの側面(側壁)が半導体基板SBの主面に対して垂直に近いことが好ましい。これにより、上述したW1>W2の関係を満たすとともに、上記幅W1と上記幅W2との差(すなわちW1−W2)をより大きくすることができるため、上述したIE効果の向上とコンタクトホールCT1の形成しやすさの向上との両方を、より的確に実現することができるようになる。
【0200】
ここで、溝TR1aの側面(側壁)の傾斜角とは、半導体基板SBの主面に垂直でかつY方向に平行な平面に対する傾斜角に対応している。例えば、溝TR1aの側面が、半導体基板SBの主面に垂直でかつY方向に平行な平面に対して10°傾いている場合は、溝TR1aの側面の傾斜角は、10°ということになる。
【0201】
また、溝TR1aの下部が、上記
図4および
図7に示される溝部TR1になる。このため、上記実施の形態1では、上記溝部TR1の側面(側壁)は、半導体基板SBの主面に対してほぼ垂直である。一方、本実施の形態3を適用した場合は、溝TR1aがテーパを有することに伴い、上記溝部TR1がテーパを有することになり、上記溝部TR1の側面(側壁)が、半導体基板SBの主面に対して垂直な面から傾斜し、深さ位置が浅くなるほど、溝部TR1の幅(X方向の幅)が大きくなる。
【0202】
それ以外は、本実施の形態3も、上記実施の形態1と基本的には同じである。
【0203】
本実施の形態3では、上記実施の形態1で得られる効果に加えて、更に次のような効果も得ることができる。
【0204】
すなわち、本実施の形態3では、ステップS3で形成された溝TR1aがテーパを有していることにより、ステップS4において、溝TR1a内が半導体層EPで埋まりやすくなるという利点を得られる。
【0205】
また、本実施の形態3を、上記実施の形態2と組み合わせることもできる。
【0206】
(実施の形態4)
図38は、本実施の形態4の半導体装置の要部平面図であり、上記実施の形態1の上記
図3に対応するものである。
図39は、本実施の形態4の半導体装置の要部断面図であり、上記実施の形態1の上記
図4に対応するものである。
図39は、
図38のA−A線の断面図にほぼ対応している。
【0207】
本実施の形態4の半導体装置が、上記実施の形態1の半導体装置と相違しているのは、本実施の形態4では、キャリア排出用セルCCを設けていることであり、それ以外は、上記実施の形態1の半導体装置と基本的には同じである。このため、ここでは、上記実施の形態1との相違点を中心に説明し、上記実施の形態1と同様の部分については、繰り返しの説明は省略する。
【0208】
図38および
図39に示されるように、本実施の形態4では、半導体基板SB上の絶縁層ZSに、溝(トレンチ)TR3が形成され、溝TR3の底部で露出する半導体基板SB上に、溝TR3内を埋めるように、半導体層EP2が形成されている。半導体層EP2は、キャリア排出用セルCCを構成している。
【0209】
溝TR3は、溝TRから離間して形成されている。溝TR3は、Y方向に延在しているため、溝TR3内の半導体層EP2も、Y方向に延在している。
図38および
図39の場合は、溝TRと溝TR3とは、どちらもY方向に延在しており、X方向に隣り合う溝TRの間に、溝TR3が配置されている。すなわち、半導体層EPを一対のゲート電極GEがX方向に挟んだ構造体(但し半導体層EPとゲート電極GEとの間にはゲート絶縁膜GIが介在している)が、Y方向に延在し、X方向に隣り合う前記構造体の間に、Y方向に延在する半導体層EP2が配置されている。
【0210】
半導体層EP2の両側には、絶縁層ZSが存在している。すなわち、半導体層EP2の側面全体が絶縁層ZSに接している(覆われている)。半導体層EP2に隣接するゲート電極は形成されていない。
【0211】
キャリア排出用セルCCと単位トランジスタ(単位トランジスタセル)Q1とは、X方向に離間しており、間に絶縁層ZSが介在している。このため、キャリア排出用セルCCを構成する半導体層EP2と、単位トランジスタQ1を構成する構造体(半導体層EPを一対のゲート電極GEが挟んだ構造体)とは、X方向に離間しており、間に絶縁層ZSが介在している。従って、キャリア排出用セルCCを構成する半導体層EP2と、そのキャリア排出用セルCCにX方向に隣り合う単位トランジスタQ1のゲート電極GEとの間には、絶縁層ZSが介在しており、その半導体層EP2とゲート電極GEとの間に介在する部分の絶縁層ZSの寸法(X方向の寸法)は、ゲート絶縁膜GIの厚みよりも十分に大きく、例えば、ゲート絶縁膜GIの厚みの10倍以上である。
【0212】
半導体層EP2は、溝TR3内において、溝TR3の底部で露出する半導体基板SB上に形成されたエピタキシャル層(エピタキシャル半導体層)であり、例えば、不純物が導入された単結晶シリコンからなる。半導体層EP2は、半導体層EPと同工程で形成することが半導体装置の製造工程数を抑制する上で好ましいため、半導体層EP2は、半導体層EPと同材料からなることが好ましい。
【0213】
各半導体層EP2において、半導体層EP2の上部(上層部)には、p型半導体領域PR2が形成されている。p型半導体領域PR2上には、n型半導体領域は形成されていない。
【0214】
p型半導体領域PR2を形成する前は、半導体層EP2は全体がn型の半導体層であるが、n型の半導体層EP2に、p型不純物を注入することでn型の半導体層EP2とは導電型が逆のp型半導体領域PR2が形成されている。このため、p型半導体領域PR2の下に位置する部分の半導体層EP2は、n型となっている。
【0215】
ここで、半導体層EP2のうち、p型半導体領域PR2の下に位置する部分を、n型半導体領域EP3と称することとする。このため、半導体層EP2は、n型半導体領域EP3と、n型半導体領域EP3上に存在するp型半導体領域PR2とにより構成されている。
【0216】
絶縁層ILには、絶縁層ILを貫通し、半導体層EP2に達するコンタクトホール(開口部、貫通孔)CT3が形成されている。コンタクトホールCT3は、半導体層EP2上に形成され、絶縁層ILを貫通するとともに、更に半導体層EP2の一部を掘り込んでおり、コンタクトホールCT3からは、p型半導体領域PR2が露出されている。このため、コンタクトホールCT3の底面は、p型半導体領域PR2の厚みの途中に位置しているが、コンタクトホールCT3は、n型半導体領域EP3には達していない。
【0217】
エミッタ用の配線M1Eの一部は、コンタクトホールCT3内を埋め込んでいる。エミッタ用の配線M1Eのうち、コンタクトホールCT3内を埋め込む部分を、キャリア排出用ビア部VCと称することとする。キャリア排出用ビア部VCは、エミッタ用の配線M1Eのビア部とみなすこともできる。また、キャリア排出用ビア部VCは、金属伝導を示す導電体からなり、電極(電極部)とみなすことができる。
【0218】
キャリア排出用ビア部VCの底面(下面)がp型半導体領域PR2に接しているため、キャリア排出用ビア部VCは、p型半導体領域PR2と接してp型半導体領域PR2と電気的に接続されている。キャリア排出用ビア部VCは、n型半導体領域EP3には接していない。キャリア排出用ビア部VCとエミッタ用ビア部VEとは、導体であるエミッタ用の配線M1Eで繋がっている。
【0219】
本実施の形態4の半導体装置の他の構成は、上記実施の形態1の半導体装置と基本的には同じであるので、ここでは繰り返しの説明は省略する。
【0220】
次に、本実施の形態4の半導体装置の製造工程について説明する。
図40〜
図45は、本実施の形態4の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0221】
上記ステップS2を行って上記
図11の構造を得るまでは、本実施の形態4も、上記実施の形態1の製造工程と同様であるので、ここではその繰り返しの説明は省略し、上記ステップS2に続く工程について説明する。
【0222】
上記実施の形態と同様にしてステップS2の工程までを行って上記
図11の構造を得た後、本実施の形態4では、ステップS3で、上記
図15に相当する
図40に示されるように、絶縁層ZSに溝TR1aおよび溝TR3を形成する。溝TR1aと溝TR3とは、いずれも、絶縁層ZSを貫通して、半導体基板SBに到達し、各溝TR1a,TR3の底部で半導体基板SBが露出される。
【0223】
上記実施の形態1では、ステップS3では溝TR1aを形成したが、本実施の形態4では、ステップS3において、溝TR1aだけでなく溝TR3も形成する点が、上記実施の形態1と相違している。溝TR1aの形成法については、本実施の形態4も上記実施の形態1と同様であり、溝TR3は、溝TR1aと同工程で同様の手法で形成される。このため、本実施の形態4の場合は、上記
図12〜14に示されるフォトレジストパターンRP1が、溝TR1a形成用の開口部RP1aだけでなく、溝TR3形成用の開口部も有することになる。
【0224】
溝TR3は、溝TR1aから離間して形成される。
図40の場合は、各溝TR1a,TR3はY方向(
図40の紙面に垂直な方向)に延在しており、X方向に隣り合う溝TR1aの間に、溝TR3が配置され、溝TR1aと溝TR3とはX方向に離間している。
【0225】
溝TR3の形状は、溝TR1aと同様であるため、ここではその繰り返しの説明は省略する。また、溝TR3の寸法(X方向の寸法、Y方向の寸法)は、溝TR1aと同じであっても、あるいは、溝TR1aと異なっていてもよい。
【0226】
それから、ステップS4で、上記
図16に相当する
図41に示されるように、半導体層EPおよび半導体層EP2をエピタキシャル成長により形成する。半導体層EPは、溝TR1aから露出する半導体基板SB上に、溝TR1a内を埋めるように形成され、半導体層EP2は、溝TR3から露出する半導体基板SB上に、溝TR3内を埋めるように形成される。
【0227】
上記実施の形態1では、ステップS4では溝TR1a内に半導体層EPを形成したが、本実施の形態4では、ステップS4において、溝TR1a内に半導体層EPを形成するだけでなく、溝TR3内に半導体層EPも形成する点が、上記実施の形態1と相違している。半導体層EPの形成法については、本実施の形態4も上記実施の形態1と同様であり、半導体層EP2は、半導体層EPと同工程で同様の手法で形成される。半導体層EP2は、半導体層EPと同種の半導体材料からなる。ここでは、半導体層EPと半導体層EP2とは、いずれも単結晶シリコンからなる。また、半導体層EPと半導体層EP2とは、いずれも、n型の不純物が導入されたn型の半導体層である。
【0228】
それから、上記実施の形態1と同様にステップS5(溝TR2a形成工程)およびステップS6(溝TR2a拡張工程)を行うことにより、上記
図19に相当する
図42に示されるように、溝TR2aを形成する。ステップS5(溝TR2a形成工程)およびステップS6(溝TR2a拡張工程)については、本実施の形態4も上記実施の形態1と基本的には同じであるため、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0229】
溝TR2aについては、本実施の形態4も上記実施の形態1と同様である。このため、本実施の形態4においても、上記実施の形態1と同様に、溝TR1aの両側に溝TR2aが形成され、溝TR2aから半導体層EPの側面が露出される。一方、溝TR3に埋め込まれた半導体層EP2に対しては、溝TR2aに相当するものは形成されない。このため、ステップS5(溝TR2a形成工程)およびステップS6(溝TR2a拡張工程)を行っても、半導体層EP2の側面は露出されず、半導体層EP2の側面全体が絶縁層ZSで覆われた状態は維持されている。
【0230】
このように、本実施の形態4では、ステップS5(溝TR2a形成工程)およびステップS6(溝TR2a拡張工程)では、半導体層EP2に隣接して半導体層EP2の側面を露出させるような溝は形成されない。ステップS5およびステップS6によって形成された溝TR2aは、半導体層EP2ではなく、半導体層EPに隣接して、半導体層EPの側面を露出させる。
【0231】
それから、上記実施の形態1と同様にステップS7(ゲート絶縁膜用の絶縁膜GIa形成工程)およびステップS8(ゲート電極GE形成工程)を行うことにより、上記
図21に相当する
図43に示されるように、ゲート絶縁膜GIおよびゲート電極GEを形成する。ステップS7(絶縁膜GIa形成工程)およびステップS8(ゲート電極GE形成工程)については、本実施の形態4も上記実施の形態1と基本的には同じであるため、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0232】
本実施の形態4においては、半導体層EP2の側面は、絶縁層ZSで覆われているので、半導体層EP2の側面には、ゲート絶縁膜GIに相当するものは形成されず、また、半導体層EP2に隣接する位置には溝TR2aに相当するものは形成されていなかったため、半導体層EP2に隣接するゲート電極GEは形成されない。
【0233】
それから、ステップS9で、上記
図22に相当する
図44に示されるように、半導体層EPの上部(上層部)にp型半導体領域PRを形成し、ステップS10で、半導体層EPの上部(上層部)にn
+型半導体領域NRを形成する。p型半導体領域PRおよびn
+型半導体領域NRについては、本実施の形態4も上記実施の形態1と同様であるため、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0234】
本実施の形態4では、ステップS9で半導体層EPの上部(上層部)にp型半導体領域PRを形成する際に、半導体層EP2の上部(上層部)にp型半導体領域PR2を形成する。すなわち、同じイオン注入工程(p型不純物のイオン注入工程)により、半導体層EPの上部(上層部)にp型半導体領域PRを形成し、かつ、半導体層EP2の上部(上層部)にp型半導体領域PR2を形成する。
【0235】
しかしながら、ステップS10では、半導体層EPの上部(上層部)にn
+型半導体領域NRを形成するが、半導体層EP2には、n
+型半導体領域NRに相当するn型半導体領域は形成しない。すなわち、ステップS10では、半導体層EPを露出しかつ半導体層EP2を覆うようなマスク層を形成した状態で、n型不純物をイオン注入することにより、半導体層EPの上部(上層部)にn型不純物を注入(イオン注入)してn
+型半導体領域NRを形成し、半導体層EP2にはn型不純物が注入(イオン注入)されないようにする。
【0236】
ステップS9,S10を行うと、半導体層EPは、n型半導体領域EP1とn型半導体領域EP1上のp型半導体領域PRとp型半導体領域PR上のn
+型半導体領域NRとにより構成された状態になり、一方、半導体層EP2は、n型半導体領域EP3とn型半導体領域EP3上のp型半導体領域PR2とにより構成された状態になる。
【0237】
それから、上記
図25に相当する
図45に示されるように、上記実施の形態1と同様に、ステップS11で活性化アニールを行い、ステップS12で層間絶縁膜として絶縁層ILを形成する。
【0238】
それから、ステップS13で上記実施の形態1と同様のコンタクトホールCT1を形成するが、本実施の形態4では、ステップS13においては、コンタクトホールCT1だけでなく、コンタクトホールCT3も形成する。
【0239】
コンタクトホールCT3は、平面視で半導体層EP2に内包されるように形成され、絶縁層ILを貫通して、コンタクトホールCT3の底部がp型半導体領域PR2に達している。このため、コンタクトホールCT3は、半導体層EP2上に形成され、コンタクトホールCT3の底面では、p型半導体領域PR2が露出される。コンタクトホールCT3は、コンタクトホールCT1と同工程で同様の手法により形成される。このため、コンタクトホールCT3の深さ位置は、コンタクトホールCT1の深さ位置とほぼ同じであり、コンタクトホールCT3が、絶縁層ILを貫通するとともに、更に半導体層EP2の一部(p型半導体領域PR2の厚みの一部)を掘り込んでいてもよい。但し、コンタクトホールCT3は、p型半導体領域PR2を貫通せず、n型半導体領域EP3には達していない。
【0240】
それから、上記実施の形態1と同様に、ステップS14で上記コンタクトホールCT2を形成する。上記コンタクトホールCT2を、コンタクトホールCT1,CT3と同工程で形成する場合もあり得る。
【0241】
それから、ステップS15で絶縁層IL上に配線M1を形成する。エミッタ用の配線M1Eの一部がコンタクトホールCT3内を埋め込む点以外は、本実施の形態4の配線M1(エミッタ用の配線M1Eおよびゲート用の配線M1G)の構成および製造法は、上記実施の形態1と基本的には同じである。コンタクトホールCT1内には、エミッタ用の配線M1Eの一部が埋め込まれて、エミッタ用ビア部VEが形成され、コンタクトホールCT3内には、エミッタ用の配線M1Eの他の一部が埋め込まれて、キャリア排出用ビア部VCが形成される。コンタクトホールCT3内に埋め込まれたエミッタ用ビア部VEと、コンタクトホールCT3内に埋め込まれたキャリア排出用ビア部VCとは、導体で繋がっており、具体的には、エミッタ用の配線M1Eを通じて繋がっており、互いに電気的に接続されている。
【0242】
エミッタ用ビア部VEは、コンタクトホールCT1の底部付近で、n
+型半導体領域NRおよびp型半導体領域PRに接して、n
+型半導体領域NRおよびp型半導体領域PRの両者と電気的に接続される。キャリア排出用ビア部VCは、コンタクトホールCT3の底部でp型半導体領域PR2に接して、p型半導体領域PR2と電気的に接続される。ゲート用ビア部VGは、コンタクトホールCT2の底部でゲート電極GEに接してゲート電極GEと電気的に接続される。
【0243】
以降の工程は、本実施の形態4も上記実施の形態1と同様である。すなわち、ステップS16〜S20で、上記絶縁膜PAを形成してから上記絶縁膜PAに上記開口部OPを形成し、半導体基板SBの裏面を必要に応じて研削または研磨してから、p型半導体領域CLおよびn型半導体領域FSを形成し、半導体基板SBの裏面全体に上記裏面電極BEを形成するが、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0244】
本実施の形態4では、キャリア排出用セルCCを設けていることにより、上記実施の形態1で得られる効果に加えて、更に次のような効果も得ることができる。
【0245】
すなわち、上記実施の形態1の「IGBTの構成および動作について」の欄で説明したように、IGBTのオン状態では、n型ベース領域(n型半導体領域FS、n型基板領域NSBおよびn型半導体領域EP1)に正孔が蓄積される。IGBTをオン状態からオフ状態に切り替えるには、ゲート電極GEの電圧をしきい値以下の電圧にする。しかしながら、ゲート電極GEの電圧をしきい値以下の電圧にしても、IGBTが直ぐにターンオフするのではなく、n型ベース領域に蓄積された正孔がIGBTの外部に流出する時間だけ、ターンオフが遅れる。このため、オフ動作(ゲート電極GEの電圧をしきい値以下の電圧にする動作)を行った時に、IGBTを速やかにターンオフして電流が速やかに流れなくなるようにするためには、オフ動作時に、n型ベース領域に蓄積されている正孔がIGBTの外部に速やかに排出されるようにすることが望ましい。
【0246】
本実施の形態4では、キャリア排出用セルCCを設けていることにより、オフ動作を行ったときに、n型ベース領域(n型半導体領域FS、n型基板領域NSBおよびn型半導体領域EP1)に蓄積されている正孔を、キャリア排出用セルCCからも、エミッタ用の配線M1E側に排出することができる。すなわち、キャリア排出用セルCCを設けた場合は、キャリア排出用セルCCも正孔の排出経路になり、n型ベース領域(n型半導体領域FS、n型基板領域NSBおよびn型半導体領域EP1)に蓄積されている正孔を、半導体層EP2のn型半導体領域EP3とp型半導体領域PR2とを経由してキャリア排出用ビア部VC側に排出することができる。
【0247】
本実施の形態4では、キャリア排出用セルCCを設けた分、オフ動作時に、n型ベース領域に蓄積されている正孔をIGBTの外部に排出する経路が増加することになり、オフ動作を行った時に、n型ベース領域に蓄積されている正孔をIGBTの外部に排出しやすくなる。このため、オフ動作を行ってからIGBTがターンオフして電流が流れなくなるまでの時間(ターンオフ損失)を、より短く(小さく)することができる。IGBTのターンオフ損失を小さくすることは、IGBTのスイッチング速度を向上させることにつながる。従って、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0248】
一方、キャリア排出用セルCCを設けた場合は、オン時に、n型ベース領域に蓄積されている正孔の一部がキャリア排出用セルCCから排出されてしまう可能性がある。オン時に、n型ベース領域に蓄積されている正孔がキャリア排出用セルCCから排出されてしまうと、IGBTのオン電圧が高くなりやすい。
【0249】
このため、キャリア排出用セルCCを設けていない上記実施の形態1は、IGBTのオン電圧を低減する観点で、より有利であり、一方、キャリア排出用セルCCを設けた本実施の形態4は、ターンオフ損失を小さくする(従ってスイッチング速度を向上させる)観点で、より有利である。
【0250】
従って、IGBTのオン電圧を重視するか、スイッチング速度を重視するかで、キャリア排出用セルCCを設けるか設けないかを選択することができ、また、キャリア排出用セルCCを設ける場合も、キャリア排出用セルCCの数などを選択することができる。例えば、上記
図38および
図39の場合は、X方向に隣り合う単位トランジスタQ1の間にキャリア排出用セルCCを配置しているが、他の形態として、X方向に隣り合う単位トランジスタQ1の間にキャリア排出用セルCCが配置されている箇所と、X方向に隣り合う単位トランジスタQ1の間にキャリア排出用セルCCが配置されていない箇所とを、混在させることもできる。
【0251】
また、本実施の形態4において、上記実施の形態2,3の一方または両方を適用することもできる。
【0252】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。