(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385772
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】オゾンハイドレートを用いたオゾン処理方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
C01B 13/10 20060101AFI20180827BHJP
C02F 1/50 20060101ALI20180827BHJP
C02F 1/78 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
C01B13/10 Z
C02F1/50 510A
C02F1/50 520P
C02F1/50 531R
C02F1/50 540A
C02F1/50 550C
C02F1/50 550D
C02F1/50 550H
C02F1/78
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-194158(P2014-194158)
(22)【出願日】2014年9月24日
(65)【公開番号】特開2016-64944(P2016-64944A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(73)【特許権者】
【識別番号】592009281
【氏名又は名称】IHIプラント建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 美栄
(72)【発明者】
【氏名】小島 知弥
(72)【発明者】
【氏名】西塚 史郎
(72)【発明者】
【氏名】西 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】戸村 重男
【審査官】
壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−240901(JP,A)
【文献】
特開2010−195645(JP,A)
【文献】
特開2006−303143(JP,A)
【文献】
特開平03−094427(JP,A)
【文献】
特表平06−511500(JP,A)
【文献】
特開2007−319023(JP,A)
【文献】
特開2009−242494(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0292155(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B13/00−13/36
A61L2/00−2/28,11/00−12/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾンハイドレートをオゾンハイドレート混合機に供給すると共にそのオゾンハイドレート混合機に乾燥した圧縮空気を供給してオゾンハイドレート混合機内でオゾンハイドレートを圧縮空気で分解してオゾンを発生させ、このオゾンを需要先に供給してオゾンによる処理を行うことを特徴とするオゾンハイドレートを用いたオゾン処理方法。
【請求項2】
オゾンハイドレートを貯蔵するハイドレートタンクと、
前記ハイドレートタンク内のオゾンハイドレートを払い出す払出ポンプと、
乾燥した圧縮空気を供給する圧縮空気供給装置と、
前記払出ポンプからのオゾンハイドレートが導入されると共に前記圧縮空気供給装置からの圧縮空気が供給され、オゾンハイドレートを圧縮空気で分解すると共に発生したオゾンと圧縮空気とを混合して需要先に供給するオゾンハイドレート混合機と
を備えたことを特徴とするオゾンハイドレートを用いたオゾン処理装置。
【請求項3】
前記払出ポンプがインバータで能力可変に制御され、前記圧縮空気供給装置から前記オゾンハイドレート混合機への圧縮空気供給ラインに流量調整弁が接続され、前記オゾンハイドレート混合機から需要先へのオゾン供給ラインにオゾン濃度を計測する分析計が接続され、その分析計にて前記前記払出ポンプによるオゾンハイドレートの払出量と流量調整弁による圧縮空気量が制御されてオゾン濃度が調整される請求項2記載のオゾンハイドレートを用いたオゾン処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温で安定して長期保存可能な高濃度オゾンハイドレートを用いてオゾンを発生し、そのオゾンで殺菌などの処理を行うためのオゾンハイドレートを用いたオゾン処理方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高濃度のオゾンを得るために、オゾンハイドレートを製造することが提案(特許文献1)されているが、オゾンハイドレートの生成条件には、13MPa以上の高圧、−25℃以下の低温条件で、オゾンと水とを接触させる必要があるため、大量にオゾンハイドレートを製造することは困難であった。
【0003】
本出願人は、二酸化炭素(CO
2)を補助ゲスト剤として低温の水とオゾン(O
3)を混合することにより、オゾンと二酸化炭素のハイドレートを2〜3MPa、温度約0℃で生成させるオゾンハイドレートの製造方法を提案した(特許文献2、3)。
【0004】
この提案では、オゾンハイドレートを生成する際に、オゾンと二酸化炭素の混合比により、オゾンハイドレート生成圧力を下げることができ、単位体積当たりの氷中の保有オゾン濃度を20000ppm以上に飛躍的に高めることができ、また約0℃の低温水でオゾンハイドレートの生成熱を冷却することにより、比較的低圧力(2〜3MPa)でハイドレートを生成できるメリットがある。
【0005】
このオゾンハイドレートは、大気圧下でも、約−20℃以下の過冷却状態で保存することで、オゾンが分解せずに長期保存が可能となり、また大気圧下で、−5℃にすると、オゾンハイドレートが分解してオゾン殺菌が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−210881号公報
【特許文献2】特開2011−168413号公報
【特許文献3】特開2012−240901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、製造したオゾンハイドレートを利用してオゾン殺菌する際に、粉末状で、−25℃で貯蔵されているオゾンハイドレートを用いてオゾンを発生させた場合、発生するオゾン濃度が高いため、これを、人体等などにできるだけ悪影響のない濃度に調整する必要がある。
【0008】
しかし、オゾンハイドレートは、温度が高くなるとその半減期が短くなり、分解して消滅するため、単にオゾンハイドレートを昇温して分解し、これを空気で希釈しただけでは、適正なオゾン濃度に調整することはできない。
【0009】
上述のようにオゾンハイドレートは、含有オゾン濃度が、20000ppm以上(通常2mass%程度)であり、これに対してオゾンガス殺菌で使用するオゾン濃度は3ppm程度であり、オゾンハイドレートを大量の空気で希釈して分解させたのでは、オゾンハイドレートのノズルに空気中の水分が付着して凍結してノズルを閉塞するので、所望濃度のオゾンを安定して連続的に発生させることが困難である。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、オゾンハイドレートを用いて所望濃度のオゾンを安全に連続して発生させてオゾン殺菌などの処理が行えるオゾンハイドレートを用いたオゾン処理方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、オゾンハイドレートをオゾンハイドレート混合機に供給すると共にそのオゾンハイドレート混合機に
乾燥した圧縮空気を供給してオゾンハイドレート混合機内でオゾンハイドレートを圧縮空気で分解してオゾンを発生させ、このオゾンを需要先に供給してオゾンによる処理を行うことを特徴とするオゾンハイドレートを用いたオゾン処理方法である。
【0012】
また本発明は、オゾンハイドレートを貯蔵するハイドレートタンクと、前記ハイドレートタンク内のオゾンハイドレートを払い出す払出ポンプと、乾燥した圧縮空気を供給する圧縮空気供給装置と、前記払出ポンプからのオゾンハイドレートが導入されると共に前記圧縮空気供給装置からの圧縮空気が供給され、オゾンハイドレートを圧縮空気で分解すると共に発生したオゾンと圧縮空気とを混合して需要先に供給するオゾンハイドレート混合機とを備えたことを特徴とするオゾンハイドレートを用いたオゾン処理装置である。
【0013】
前記払出ポンプがインバータで能力可変に制御され、前記圧縮空気供給装置から前記オゾンハイドレート混合機への圧縮空気供給ラインに流量調整弁が接続され、前記オゾンハイドレート混合機から需要先へのオゾン供給ラインにオゾン濃度を計測する分析計が接続され、その分析計にて前記前記払出ポンプによるオゾンハイドレートの払出量と流量調整弁による圧縮空気量が制御されてオゾン濃度が調整されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、オゾンハイドレートを貯蔵したハイドレートタンクから払出ポンプでオゾンハイドレートを払い出してオゾンハイドレート混合機に供給し、オゾンハイドレート混合機に供給した圧縮空気でオゾンハイドレートを分解してオゾンを発生させると共にこれを需要先に供給することで、オゾン殺菌等の処理が行えるという優れた効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図1に示した需要先としての汚水処理装置を示す図である。
【
図3】
図1に示した需要先としてのコンテナ内オゾン殺菌を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0017】
先ず本発明で利用する高濃度オゾンハイドレートについて説明する。
【0018】
高濃度オゾンハイドレートの製造は、上述した特許文献2、3で提案したようにキセノンや二酸化炭素を補助ガスとし、オゾンをゲストガスとし、2〜3MPa、約0℃の水と接触させることで製造できる。
【0019】
また、本出願人は、粉末状の氷と二酸化炭素とオゾンガスとを接触させることで、高濃度オゾンハイドレートとすることを開発した。この高濃度オゾンハイドレートは、液分を含まない粉末状であり、特許文献2.3と同様に高濃度オゾンハイドレートとして使用できる。
【0020】
さて、
図1は、オゾンハイドレートを用いたオゾン処理装置を示したものである。
【0021】
オゾンハイドレートを用いたオゾン処理装置は、オゾンハイドレートを貯蔵するオゾンハイドレートタンク10と、オゾンハイドレートタンク10内のオゾンハイドレートを払い出す払出ポンプ11と、乾燥した圧縮空気を供給する圧縮空気供給装置12と、払出ポンプ11で払い出されたオゾンハイドレートを導入し、同じく圧縮空気供給装置12から圧縮空気を導入し、オゾンハイドレートを圧縮空で分解させると共に発生したオゾンと圧縮空気とを混合してオゾンとして需要先14に供給するためのオゾンハイドレート混合機13とから構成される。
【0022】
オゾンハイドレートタンク10は二重殻タンクで構成され、内外槽間が真空断熱或いは内外槽間に保冷材が充填されて構成されている。
【0023】
オゾンハイドレートタンク10には、上述のように生成されたオゾンハイドレートが貯蔵される。このオゾンハイドレートのオゾン濃度は、2.23mass%と高濃度であり、コンテナ内や汚水処理槽のオゾン殺菌などにはオゾン濃度3ppm程度でよいため、発生するオゾンを約7000倍に希釈する必要がある。
【0024】
オゾンハイドレートタンク10内のオゾンハイドレートは、オゾンハイドレートタンク10に設けた払出しポンプ11にて払い出す。この払出ポンプ11は駆動モータがインバータにて回転数可変に制御され、払い出すオゾンハイドレート量を調節できるようになっている。
【0025】
オゾンハイドレートタンク10内のオゾンハイドレートは、払出ポンプ11にてバルブ15を介して払出し管16にてオゾンハイドレート混合機13に供給される。払出し管16は、オゾンハイドレート混合機13内に、その下端のノズル16Nが突出するように設けられ、そのノズル16Nが、後述する乾燥圧縮空気から伝熱しやすいようにして、ノズル16Nに氷が付着しないようにされる。
【0026】
オゾンハイドレート混合機13には、圧縮空気供給ライン17を介して圧縮空気供給装置12が接続される。圧縮空気供給装置12は、空気を0.6MPa程度に圧縮すると共にその圧縮空気中の水分を除去して乾燥した圧縮空気(露点−25℃以下)として圧縮空気供給ライン17に供給する。
【0027】
圧縮空気供給ライン17には、流量計18とその流量計18の検出値で流量を制御する流量制御弁19が接続される。
【0028】
オゾンハイドレート混合機13は、払出し管16の下端のノズル16Nから供給されたオゾンハイドレートを、同じくオゾンハイドレート混合機13内に供給された圧縮空気でオゾンハイドレートを分解し、その分解で生じたオゾンと圧縮空気とを混合し、オゾン供給ライン20を介してオゾンを需要先14に供給(又は噴射)するようになっている。
【0029】
オゾン供給ライン20には、オゾン濃度を計測する分析計21が接続され、その検出値がオゾン濃度調整装置22に入力される。オゾン濃度調整装置22には、流量計18の検出値が入力され、分析計21で検出されるオゾン濃度が設定値(例えば3ppm)となるように、払出ポンプ11のモータ回転数をインバータ制御すると共に流量計18で検出される流量が設定流量となるように流量計18を介して流量制御弁19を制御するようになっている。
【0030】
次に本発明のオゾンハイドレートを用いたオゾン処理方法を説明する。
【0031】
先ず、オゾンハイドレートタンク10には、オゾン濃度2.23mass%のオゾンハイドレート或いはオゾン濃度2.23mass%のオゾンハイドレートに粉末状氷を予め混合したオゾンハイドレートと粉末状氷の混合物が貯蔵される。
【0032】
オゾンハイドレートタンク10内のオゾンハイドレートは、払出ポンプ11にて払出し管16から下端のノズル16Nにて、オゾンハイドレート混合機13に供給される。またオゾンハイドレート混合機13には、圧縮空気供給装置12からの圧縮空気が供給され、導入されたオゾンハイドレートが、乾燥圧縮空気で分解されると共に発生したオゾンと圧縮空気が混合撹拌されてオゾン供給ライン20を通して需要先14に供給される。
【0033】
この際、オゾン供給ライン20に接続した分析計21にてオゾン濃度が検出され、その検出値がオゾン濃度調整装置22に入力される。オゾン濃度調整装置22は、オゾン供給ライン20から需要先14に供給するオゾン濃度が設定値(例えば3ppm)となるように、払出ポンプ11でのオゾンハイドレート払い出し量と圧縮空気供給装置12からの圧縮空気流量を制御する。
【0034】
これにより、需要先14には設定濃度にされたオゾンを安定して供給することが可能となる。またこのオゾン供給は、オゾンハイドレートを大気中に曝すことなく分解してオゾン発生するため安全にオゾンを供給することができる。
【0035】
次に需要先14でのオゾン殺菌処理を
図2、
図3にて説明する。
【0036】
図2は、需要先14としての汚水処理装置24を示したものである。
【0037】
この汚水処理装置24は、オゾン処理水槽25にオゾンを圧縮空気と共に噴出するオゾン噴出管26が設置され、そのオゾン噴出管26に、
図1で説明したオゾン供給ライン20が接続される。
【0038】
オゾン処理水槽25には、処理水27が流入し、その処理水をオゾン噴出管26から噴射したオゾンでオゾン殺菌処理し、オゾン処理後は、オゾン処理水槽25から浄化水28として排出する。また処理水を浮上したオゾンを含む空気はデオゾナイザ29にてオゾンが分解されて排気される。
【0039】
図3は、需要先14としての貨物用のコンテナ30内をオゾン殺菌する例を示したものである。
【0040】
図1で説明したオゾン供給ライン20からオゾンを含む圧縮空気がコンテナ30内に噴射され、その噴射されたオゾンでコンテナ30内をオゾン殺菌する。殺菌後のオゾンを含む空気は、デオゾナイザ31を介して大気に排気される。
【0041】
次に、(1)汚水処理と(2)コンテナのオゾン殺菌処理に本発明を適用したときの具体例を説明する。
【0042】
(1)汚染水の処理ケース
オゾンハイドレート分解量とオゾン含有空気量(又はオゾンガス量)で発生するオゾン全量と処理できる量
オゾンハイドレート量(kg/h) 1000
含有O
3量(kg/h) 22.3
O
3含有量(mass%) 2.23
噴射圧力(MPa) 0.301
温度(℃) 20
ハイドレート融解熱(kcal/kg) l19
ハイドレート量融解水量(t/h) >60
温度差(℃) 2
浄化に使用できる空気量(kg/h) 7426028
(Nm
3/h) 5801584
浄化に使用できる混合O
3率(ppm) 3
使用空気量との混合による温度降下(℃) 0.074
O
3分解熱量(kcal/h) 132
浄化可能水量(t/h) 7426
処理水溶解濃度(ppm) 3
このように、毎時約7500トンの汚染水を処理するには、オゾンハイドレートは1000kgで済み、汚染水処理に従来では不可能であったオゾン殺菌が可能となる。
【0043】
(2)コンテナ内殺菌
コンテナ寸法(内部)
長さL(m) 5.926
幅W(m) 2.349
高さ(H) 2.382
体積(m
3) 33
処理コンテナ数(個) 87484
オゾン含有空気供給回数 2
コンテナ1個に要するO
3ハイドレート量(g/1個) 11
粉末状O
3ハイドレート(cc/1個) 21
粉末空間率(%) 50
このように、33m
3のコンテナを3ppm濃度で、オゾン殺菌するには、11g程度のオゾンハイドレートを用いればよい。
【符号の説明】
【0044】
10 オゾンハイドレートタンク
11 払出ポンプ
12 圧縮空気供給装置
13 オゾンハイドレート混合機
14 需要先