特許第6385773号(P6385773)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6385773オゾンハイドレートを用いたオゾン殺菌剤
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  • 特許6385773-オゾンハイドレートを用いたオゾン殺菌剤 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385773
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】オゾンハイドレートを用いたオゾン殺菌剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/00 20060101AFI20180827BHJP
   A01N 25/34 20060101ALI20180827BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20180827BHJP
   C01B 13/10 20060101ALN20180827BHJP
   C01B 13/00 20060101ALN20180827BHJP
   A23L 3/3409 20060101ALN20180827BHJP
【FI】
   A01N59/00 A
   A01N25/34 C
   A01P3/00
   !C01B13/10 D
   !C01B13/00
   !A23L3/3409
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-194159(P2014-194159)
(22)【出願日】2014年9月24日
(65)【公開番号】特開2016-65009(P2016-65009A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(73)【特許権者】
【識別番号】592009281
【氏名又は名称】IHIプラント建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 美栄
(72)【発明者】
【氏名】小島 知弥
(72)【発明者】
【氏名】西塚 史郎
(72)【発明者】
【氏名】西 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】戸村 重男
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−210881(JP,A)
【文献】 特開2010−195645(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3116227(JP,U)
【文献】 特開平04−224103(JP,A)
【文献】 特開2011−168413(JP,A)
【文献】 特開2012−240901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 59/00
A01N 25/34
A01P 3/00
A23L 3/3409
C01B 13/00
C01B 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾンハイドレートをゼラチン製の水溶性カプセルに封入して錠剤化したことを特徴とするオゾン殺菌剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温で安定して長期保存可能な高濃度オゾンハイドレートを用いてオゾンを発生し、そのオゾンで対象空間や対象物を殺菌するためのオゾンハイドレートを用いたオゾン殺菌剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高濃度のオゾンを得るために、オゾンハイドレートを製造することが提案(特許文献1)されているが、オゾンハイドレートの生成条件には、13MPa以上の高圧、−25℃以下の低温条件で、オゾンと水とを接触させる必要があるため、大量にオゾンハイドレートを製造することは困難であった。
【0003】
本出願人は、二酸化炭素(CO2)を補助ゲスト剤として低温の水とオゾン(O3)を混合することにより、オゾンと二酸化炭素のハイドレートを2〜3MPa、温度約0℃で生成させるオゾンハイドレートの製造方法を提案した(特許文献2、3)。
【0004】
この提案では、オゾンハイドレートを生成する際に、オゾンと二酸化炭素の混合比を変えることにより、オゾンハイドレート生成圧力を下げることができ、単位体積当たりの氷中の保有オゾン濃度を20000ppm以上に飛躍的に高めることができ、また約0℃の低温水でオゾンハイドレートの生成熱を冷却することにより、比較的低圧力(2〜3MPa)でハイドレートを生成できるメリットがある。
【0005】
このオゾンハイドレートは、大気圧下でも、約−20℃以下の過冷却状態で保存することで、オゾンが分解せずに長期保存が可能となり、また大気圧下で、−5℃にすると、オゾンハイドレートが分解してオゾン殺菌が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−210881号公報
【特許文献2】特開2011−168413号公報
【特許文献3】特開2012−240901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、製造したオゾンハイドレートを利用してコンテナ内等の対象空間や対象物をオゾン殺菌する際に、粉末状で、−25℃で貯蔵されているオゾンハイドレートを用いてオゾンを発生させた場合、発生するオゾン濃度が高いため、これを、人体等などに悪影響のない濃度に調整する必要がある。
【0008】
しかし、オゾンハイドレートは、温度が高くなるとその半減期が短くなり、分解して消滅するため、単にオゾンハイドレートを昇温して分解し、これを空気で希釈しただけでは、適正なオゾン濃度に調整することはできない。
【0009】
上述のようにオゾンハイドレートは、含有オゾン濃度が、20000ppm以上(通常2mass%程度)であり、これに対してオゾンガス殺菌で使用するオゾン濃度は3ppm程度であり、オゾンハイドレートを大量の空気で希釈して分解させたのでは、所望濃度のオゾンを安定して連続的に発生させることが困難である。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、オゾンハイドレートを用いて所望濃度のオゾンにして対象空間や対象物を適正な量でオゾン殺菌できるオゾンハイドレートを用いたオゾン殺菌剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、オゾンハイドレートを錠剤化したことを特徴とするオゾンハイドレートを用いたオゾン殺菌剤である。
【0012】
処理対象物のオゾン殺菌に見合った量のオゾンハイドレートを圧縮成形してペレット状に錠剤化したり、オゾンハイドレートをカプセルに封入して錠剤化するのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、オゾンハイドレートを錠剤化しておくことで、その錠剤中のオゾン量を把握できるため、殺菌する対象空間や対象物の容積に応じて錠剤数を選定すれば、適正なオゾン殺菌が安全に行えるという優れた効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のオゾンハイドレートを用いたオゾン殺菌剤を示し、(a)はペレットタイプの錠剤、(b)はカプセルタイプの錠剤を示す図である。
図2】本発明の一実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0016】
図1は、本発明のオゾンハイドレートを用いたオゾン殺菌剤を示したものである。
【0017】
図1(a)に示すようにオゾン殺菌剤10は、製造したオゾンハイドレートを−25℃に保ったまま、円筒状のペレット11に成型したものである。
【0018】
このペレット11は、例えば直径1〜3cm、長さ2〜4cm程度に成型しておく。
【0019】
オゾンハイドレートは、オゾン濃度が2.23mass%であり、オゾンハイドレート粉末で、ペレット11にしたときのオゾンハイドレートの空間率は約50%であり、またオゾンハイドレート1g当たり、約10Nccのオゾンが分解して発生する。
【0020】
図1(b)のオゾン殺菌剤10は、カプセル12にオゾンハイドレートを封入したものである。カプセル12は、通常の医薬品に用いられるゼラチン等の水溶性カプセル、或いは氷などで形成される。このカプセル12は、半割の大径カプセル部12aと小径カプセル部12bとからなり、その中にハイドレートを充填した後、両カプセル部12a、12bを嵌め合わせてオゾンハイドレートを封入する。
【0021】
このオゾン殺菌剤10を用いて殺菌する場合、例えば、1m3の殺菌対象空間を3ppmとしてオゾン燻蒸するには、オゾン殺菌剤から3ccのオゾンを発生すればよい。この場合、上述のようにオゾンハイドレート1gの分解で、約10Nccのオゾンが発生するため、0.3gのオゾン殺菌剤を一錠、1m3の殺菌対象空間に投入すればよい。
【0022】
またオゾン殺菌剤は、ペレットやカプセルで錠剤化する他に、袋などに封入するようにしてもよい。
【0023】
次に、図2により高濃度オゾンハイドレートの製造とオゾン殺菌剤の製造プロセスを説明する。
【0024】
例えば、氷からオゾンハイドレートを製造する場合については、粉末状氷製造兼供給装置20では、高圧酸素雰囲気下で氷片を製造し、その氷片を0.2mm以下の粉末状氷とする。
【0025】
この粉末状氷をオゾンハイドレート製造装置21に供給し、そのオゾンハイドレート製造装置21に、オゾン供給装置22からオゾンを、炭酸ガス供給装置23から炭酸ガスをそれぞれ供給し、オゾンハイドレート製造装置21内の圧力を2MPa以上3MPa以下、温度を、冷却装置24にて、−2℃以下−3℃以上に保って粉末状氷とオゾンと炭酸ガスを気固接触させることでオゾンハイドレートが生成される。
【0026】
次にこの生成したオゾンハイドレートをオゾンハイドレート冷却装置25に導入し、冷却装置24にて、オゾンハイドレートを−25℃に冷却すると共に雰囲気圧力を大気圧に落圧する。
【0027】
このように大気圧下にされ−25℃に保たれたオゾンハイドレートは、分解せずに長期保存が可能となる。
【0028】
上記はオゾンハイドレートを氷から製造した場合について説明したが、特許文献2、3のように水との混合でオゾンハイドレートを製造した場合には、粉末状氷製造兼供給装置20は不要で、オゾンハイドレート製造装置21で、水中から製造したオゾンハイドレートを分離し、これをオゾンハイドレート冷却装置25に導入する。
【0029】
次に、製造したオゾンハイドレートを、オゾンハイドレート錠剤化装置26に送り、図1(a)或いは図1(b)で説明したように錠剤化し、これを錠剤保存器27に貯蔵し、大気圧下で、−25℃に保って保存する。また市販の冷凍庫でも保存できるので便利である。
【0030】
このオゾン殺菌剤は、成形時の容積が既知であり、対象空間の容積が分かれば、オゾン殺菌剤を何粒投入すれば、対象空間内のオゾン濃度が分かるため、簡単に投入する錠剤数が分かる。
【0031】
また、オゾン殺菌剤は、−25℃に冷却保存しておけば長期保存が可能なため、保存容器を、例えば漁船に持ち込み、マグロなどの大型高級魚を捕獲して冷蔵・冷凍する際に、その高級魚の口を通してオゾン殺菌剤を投入すれば、内蔵をオゾン殺菌することができる。また漁船の船倉内に捕獲した魚を収容した際に、その船倉の容量に見合ったオゾン殺菌剤を投入すれば、捕獲した魚の鮮度維持も可能となる。
【符号の説明】
【0032】
10 オゾン殺菌剤
20 粉末状氷製造兼供給装置
21 オゾンハイドレート製造装置
25 オゾンハイドレート冷却装置
26 オゾンハイドレート錠剤化装置
図1
図2