(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ビス止めによる固定方法は、吐水パイプに穴をあける必要があるため、デザインの観点からは好ましくない。また、内蔵部品が比較的大きい場合には、1つのビスによる1点固定では「がたつき」をなくすことはできない可能性もある。しかし、ビスを増やすことはデザイン性だけでなく、組立性も低下させるため特に好ましくない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、デザイン性に配慮しつつ吐水パイプの内部に内蔵部品を安定させるための構造を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様の水栓は、側面に筒形状の吐水部を形成された吐水パイプと、吐水パイプの内部に固定される内蔵部品と、吐水部に挿入され、内蔵部品を支持するための支持部材と、を備える。
支持部材は、内蔵部品を吐水パイプ内で位置決めさせて吐水部に固定される。
【0008】
支持部材は吐水部に挿入されるため外観から視認されにくく、それゆえにデザイン性が損なわれにくい。そして、ある程度の大きさを有する支持部材により内蔵部品を位置決めしているため、簡易な構造でありながら、内蔵部品を強く支持しやすい。たとえば、支持部材を内蔵部品あるいは内蔵部品を固定する他の部材(以下、「内蔵部品等」とよぶ)に係合させることにより内蔵部品を位置決めしてもよいし、接着や溶着により内蔵部品等と支持部材を固定することで内蔵部品を位置決めしてもよい。
【0009】
支持部材は、内蔵部品を吐水パイプの内側面に押しつけた状態で吐水部に固定されてもよい。支持部材により内蔵部品を押しつけることができるため、いいかえれば、支持部材からの圧力で内蔵部品等を固定するため、簡易な構造にて内蔵部品を強く支持しやすい。
【0010】
支持部材は、吐水を整流するための整流部材としても機能してもよい。
整流部材を支持部材としても機能させることにより、吐水部の限られた内部スペースを有効に活用しやすくなる。
【0011】
内蔵部品は、カバー部材に挿入され、支持部材は、カバー部材を介して内蔵部品を吐水パイプの内側面に押しつける。
内蔵部品をカバー部材によって保護することにより、カバー部材を緩衝部材としても機能させやすくなる。
【0012】
支持部材は、吐水部よりも熱伝導率が低い材質により形成されてもよい。
支持部材に断熱性をもたせることにより、熱湯通水時に吐水部の温度上昇を抑制しやすくなる。
【0013】
支持部材は、更に、吐水部の内側面の略全体を覆う筒形状の部材であってもよい。
吐水部の内側面を支持部材で覆うことにより、熱湯通水時の熱が直接吐水部に伝わるのを防止しやすくなる。
【0014】
支持部材は、吐水部の吐水口側に位置する係合部と、吐水パイプ側に位置する非係合部を有してもよい。支持部材の係合部が吐水部と係合するとともに、非係合部と吐水部の内側面の間には断熱層が形成されてもよい。
支持部材と吐水部の間に断熱層を作ることにより、熱湯通水時に吐水部の温度上昇をいっそう抑制しやすくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、デザイン性に配慮しつつ内蔵部品を吐水パイプ内に安定させやすい水栓を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、オフィスの給湯室に設置されるキッチン102の斜視図である。
キッチン102は、熱湯単水栓100および混合水栓104を備える。熱湯単水栓100は、最大95℃の熱湯専用の水栓である。混合水栓104は、最大60℃程度まで温度調整を可能な水栓である。お茶やコーヒーを作るときには、熱湯単水栓100により即時に熱湯を供給できる。
【0018】
第1給水管106から供給される水は、いったん電気温水器108に供給される。電気温水器108は、供給された水を加熱して熱湯を作る。電気温水器108の第2給水管110からは湯、第3給水管112からは冷水が混合水栓104に供給される。混合水栓104の根元に取り付けられるレバー式ハンドル116を操作することにより、吐水量と温度(湯と冷水の混合比)を調整できる。混合水栓104から吐き出された水は、排水口118を介して排水管120から排出される。
【0019】
一方、電気温水器108の第4給水管114からは熱湯が熱湯単水栓100に供給される。熱湯単水栓100の先端に取り付けられる回動式ハンドル122を操作することにより、吐水量を調整できる。熱湯単水栓100は吐水温度の調整をできない。熱湯単水栓100から吐き出された熱湯も、排水口118を介して排水管120から排出される。
【0020】
以下、本実施形態においては、熱湯単水栓100の内部構造を中心として説明する。
【0021】
図2は、熱湯単水栓100の外観斜視図である。
熱湯単水栓100は、台座124と座金126によりキッチン102に固定される。吐水パイプ128は、台座124においてz軸を回転軸として150度程度回転可能である。吐水パイプ128には、図示しないホース(後述)が挿通されている。このホースは台座124および継手148(
図2では図示せず。後述)を介して第4給水管114と接続される。詳細は後述するが、ホースと吐水パイプ128の間隙が断熱層となり、ホースを通る熱湯の熱エネルギーが吐水パイプ128まで伝わりにくい構造となっている。
【0022】
吐水パイプ128はz軸方向(垂直方向)に延びたあと、y軸方向に折れ曲がるL字形状をしており、その先端側面部に吐水部130が形成される。吐水パイプ128の先端には回動式ハンドル122が取り付けられる。吐水パイプ128の根元側ではなく、先端側に回動式ハンドル122が設置されるため、操作者は台座124付近まで深く手を差し入れなくても、吐水部130の手前で熱湯単水栓100を操作できる。このため、吐水部130から吐水される熱湯、あるいは、その飛沫水や湯気が手にかかりにくい安全な構成となっている。
【0023】
回動式ハンドル122の外側面134と吐水パイプ128の外側面134はフラット(面一)につらなる。このため、回動式ハンドル122が吐水パイプ128を一体化させたシンプルなデザインとなっている。
【0024】
操作者は、回動式ハンドル122に取り付けられるグリップ部材132に指を添えて、回動式ハンドル122をy軸を中心として回転させる。グリップ部材132は、回動式ハンドル122の外側面134においてライン状に延びるとともに、上端面138の一部にも形成されるL字型の部材である。
図2に示すように、グリップ部材132が水平位置にあるときには止水状態となる。そこから回動式ハンドル122を回転させると吐水が始まって徐々に流量が増していき、約90度まで回転させてグリップ部材132が垂直位置にあるときには吐水が全開の状態となる。
【0025】
吐水パイプ128および回動式ハンドル122の色彩は同一または類似あることが好ましい。本実施形態においては、吐水パイプ128および回動式ハンドル122は黄銅や亜鉛等の金属により形成される。一方、グリップ部材132は、表面に複数の突起物が配列された赤色の樹脂部材であり、「操作面」を形成する。なお、グリップ部材132のような別体ではなく、外側面134の一部を加工することにより、操作面を形成してもよい。
【0026】
回動式ハンドル122の外側面134と、外側面134に形成される操作面(グリップ部材132)の一番の違いは滑りにくさ(摩擦係数)の違いである。本実施形態においては、グリップ部材132の表面に複数の突起物を配列することにより、グリップ部材132の摩擦係数を高めている。操作者は、触感および視覚から、回動式ハンドル122における操作すべき場所、すなわち、操作面の場所や範囲を直感的に認識できる。したがって、操作者は回動式ハンドル122全体を深く握り込む必要はなく、グリップ部材132に指を添える程度の把持により回動式ハンドル122を操作できることを直感的に理解できる。このように、触感において、好ましくは視覚においても識別しやすい操作面を外側面134に沿って形成することにより、操作者の指を自然に操作面に導くことができる。
【0027】
図3は、熱湯単水栓100の側断面図である。
熱湯単水栓100の台座124は、パッキン140を介してキッチン102の設置面に挿通され、座金126および締付ナット142により固定される。台座124の上部は回転ソケット144に挿通され、台座124と回転ソケット144は更に2つのOリング146により保持される。第4給水管114は、台座124および継手148を介してホース150と接続される。ホース150は、吐水パイプ128に沿って曲げられる。第4給水管114から供給される熱湯はホース150を通る。吐水パイプ128とホース150の間に形成される空気層152が断熱層となるため、ホース150の熱エネルギーが吐水パイプ128に伝わりにくい構成となっている。このような構成により、吐水パイプ128の温度上昇を抑制している。
【0028】
ホース150は、継手158を介して固定部材156(内蔵部品の一種)と接続される。固定部材156は、カバー部材160を介して吐水パイプ128に固定されている。ホース150の出口はスピンドル154によってふさがれている。回動式ハンドル122を回転させるとスピンドル154がy軸負方向に動き、ホース150の出口が開放され、ホース150内の熱湯が吐水部130から吐水される。
【0029】
図4は、熱湯単水栓100における吐水部130周辺の拡大側断面図である。
ホース150は継手158を介して固定部材156と接続される。固定部材156にはホース150から熱湯が流れ込むので、固定部材156も熱くなりやすい。固定部材156は、樹脂製のカバー部材160を介して吐水パイプ128に嵌め込まれる。カバー部材160は、固定部材156の熱が吐水パイプ128に伝わるのを抑止する断熱材であるとともに、固定部材156を吐水パイプ128に対して固定する役割も担う。
【0030】
回動式ハンドル122の内部には、Oリング164を介してハンドル本体部162が設置される。また、ハンドル本体部162は、スピンドル154と固定ビス166により接続される。止水時においては、ホース150の出口168は、スピンドル154によって塞がれる。回動式ハンドル122を回動させると、スピンドル154が
図4の紙面右方向に移動し、出口168が開放され、ホース150と吐水部130が開通する。出口168が開放されると、ホース150に流れ込んでいた熱湯は、出口168を経由して、吐水部130に流れ込み、吐水部130の内部の整流キャップ170を通って
図4の紙面下方向に吐水される。
【0031】
吐水パイプ128と、回動式ハンドル122の接合部分には若干の溝172がある。回動式ハンドル122を回転させ、回動式ハンドル122が平行移動すると、溝172の幅も大きくなる。溝172が深い場合、特に吐水時に溝172が目立つ。これは、美観上好ましくない。また、溝172が大きく深くなると、溝172から湯気が入り込みやすくなる。回動式ハンドル122や吐水パイプ128に入り込んだ湯気はやがて冷えて水滴となり、溝172からしずくとなって垂れてくる可能性もある。このように美観面からも衛生面からも、溝172をなるべく小さく、特に、浅くしておきたい。
【0032】
そこで、本実施形態においては、吐水パイプ128から少しだけカバー部材160を突出させている。そして、この突出したカバー部材160の外側面と回動式ハンドル122の内側面を沿わせている。カバー部材160と回動式ハンドル122の隙間はゼロであることが理想ではあるが、構造上、少なくとも0.5ミリメートル以下、好ましくは、0.25ミリメートル以下であることが好ましい。このように、カバー部材160を吐水パイプ128から少し突出させ、回動式ハンドル122の内側面をカバー部材160の突出部分の外側面に沿わせることで、吐水パイプ128と回動式ハンドル122の接合部分の溝172を浅くしている。
【0033】
また、上述のように、カバー部材160は断熱材であるとともに固定部材156を吐水パイプ128内に安定させる役割も担う。本実施形態においては、回動式ハンドル122とそれにつながるスピンドル154が固定部材156に挿入されているため、固定部材156が不安定だと回動式ハンドル122ががたついてしまう。カバー部材160により固定部材156をいっそう強く安定させるための方法として、ネジを吐水パイプ128の外側からカバー部材160に貫通させてカバー部材160や固定部材156を吐水パイプ128に固定する方法が考えられる。しかし、この場合、ネジが吐水パイプ128の外から見えてしまうため美観上好ましくない。また、カバー部材160と吐水パイプ128をしっかり固定するためにはネジを複数箇所に設ける必要がある。
【0034】
そこで、本実施形態においては、吐水部130に整流キャップ170をねじ込み、整流キャップ170がパッキン174を介して固定部材156およびカバー部材160を吐水パイプ128に押しつけることで、固定部材156とカバー部材160を吐水パイプ128に固定している。整流部材は、吐水を整流するための必須構成品である。そこで、本実施形態においては、ネジのように吐水部130に差し込む整流部材としての整流キャップ170に、固定部材156やカバー部材160を安定させる役割も担わせている。
【0035】
図5は、整流キャップ170の外観斜視図である。
吐水部130は筒形状であり、吐水部130に挿入される整流キャップ170(支持部材)も同じく筒形状である。整流キャップ170の内部の整流板180により水流が整えられる。整流キャップ170は、ネジ溝を切られた係合部176と、ネジ溝を有しない非係合部178を有する。係合部176の外径よりも、非係合部178の外径は小さい。係合部176が吐水部130の内側面に切られたネジ溝と係合することにより、整流キャップ170は吐水部130に固定される。整流キャップ170上部の円環状の当接面182は、パッキン174を介して固定部材156と当接する。
【0036】
図6は、吐水部130の拡大側断面図である。
熱湯単水栓100の製造工程において、吐水部130の吐水口側から整流キャップ170を差し込む。整流キャップ170の係合部176は、吐水部130の内壁のネジ溝と係合する。整流キャップ170は、パッキン174を介して固定部材156を紙面上方向に押し上げる。固定部材156はカバー部材160を介して吐水パイプ128の上面に押しつけられる(
図4も参照)。整流キャップ170が下から固定部材156を圧迫することにより、いいかえれば、吐水パイプ128(の上面)と整流キャップ170により固定部材156を挟み込むことにより、固定部材156を吐水パイプ128内に安定させている。
【0037】
整流キャップ170を吐水部130から挿入する方式であるため、吐水パイプ128にネジ穴を作る必要がない。整流キャップ170は、吐水部130に隠れるため、整流キャップ170によってデザイン性が損なわれることもない。また、
図5に示したように、整流キャップ170の比較的大きな当接面182で固定部材156を押しつけるため、ネジによる1点固定方式よりも固定部材156を安定させやすい。
【0038】
吐水部130は吐水パイプ128に溶接固定されており、整流キャップ170はその吐水部130としっかりと係合するため、整流キャップ170を強く押し込むことで固定部材156を強く固定できる。
【0039】
また、整流キャップ170は、整流部材であるとともに支持部材としても機能するため、いいかえれば、1つの部品に2つの機能を担わせることができるため、吐水部130の限られたスペースを有効活用できる。
【0040】
カバー部材160は、固定部材156を吐水パイプ128に固定するとともに、固定部材156から吐水パイプ128への熱伝導を抑制する断熱部材でもある。また、固定部材156が吐水パイプ128(の上面)に押しつけられるときの緩衝部材としても機能する。
【0041】
整流キャップ170は、熱湯を通水するため比較的高温になりやすい。整流キャップ170の熱が吐水部130に伝わり、吐水パイプ128にも伝わると、吐水部130と吐水パイプ128の双方とも高温になる。吐水部130のような露出部分の温度上昇は安全性の観点からすると好ましいことではない。そこで、整流キャップ170を樹脂などの熱伝導率の低い材料で形成すれば、吐水部130への熱伝導を抑制できる。
【0042】
また、
図6に示すように、整流キャップ170の外側面は、吐水部130の内側面を全体的に覆っている。これは、整流キャップ170の内部を通水する熱湯が吐水部130に直接触れにくくするためである。具体的には、吐水部130の内側面面積の95%以上、少なくとも85%以上が整流キャップ170の外側面によってカバーされることが好ましい。
【0043】
更に、本実施形態における整流キャップ170は、係合部176よりも外径の小さな非係合部178を有する。このため、非係合部178と吐水部130の間には空隙184ができる。この空隙184が断熱層となり、吐水部130への熱伝導がいっそう抑制されている。このように、整流キャップ170は、固定部材と整流部材としてだけではなく断熱部材としても機能している。
【0044】
以上、実施形態に基づいて、熱湯単水栓100、特に、吐水パイプ128の内部において固定部材156を整流キャップ170によって固定するための構造を中心として説明した。
まず、回動式ハンドル122は熱湯単水栓100の根元ではなく先端部に取り付けられる。回動式ハンドル122の外側面134と吐水パイプ128の外側面136がフラットに連なるため、回動式ハンドル122を熱湯単水栓100に外観において一体化したシンプルなデザインを実現できる。
【0045】
本実施形態の場合、回動式ハンドル122とそれにつながるスピンドル154が固定部材156に挿入されているため、固定部材156ががたつくと回動式ハンドル122もがたつきやすい。カバー部材160によって固定部材156をある程度は固定できるが、より確実な固定のために整流キャップ170を支持部材として使っている。整流キャップ170は、吐水部130の内部に挿入されるので外部からは視認されない。このため、デザイン性を損なうことなく、固定部材156を安定させることができる。整流キャップ170は、回転させながら吐水部130に挿入するだけで取り付け可能なので組立ても容易となる。
【0046】
もともと吐水部130に設けられるべき整流キャップ170に、支持部材および断熱部材としての機能も担わせる構造であるため、熱湯単水栓100の限られた内部スペースを有効活用できる。
【0047】
以上、本発明をいくつかの実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0048】
本実施形態においては、熱湯単水栓100を対象として説明したが、本実施形態における内蔵部品の支持構造は混合水栓や冷水用の水栓にも応用可能である。また、吐水パイプと吐水部は円筒型であるとして説明したが、断面は楕円や矩形など他の形状であってもよい。台所用の水栓だけではなく、浴室や洗面化粧台の水栓にも応用可能である。