(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
[第1の実施形態]
<電気化学セルスタック>
図1は、本実施形態による電気化学セルスタックの構成を簡略に示す斜視図であり、
図2は、
図1のA−A断面図であり、
図3は、
図1のB−B断面図である。
図1〜
図3に示されるように、電気化学セルスタック10は、小単位セルスタック11と、熱交換部12とを備え、小単位セルスタック11および熱交換器(熱交換部)12が積層して構成されている。
【0013】
なお、本実施形態において、小単位セルスタック11内に供給される反応ガスとは、酸化剤、還元剤、または水蒸気をいう。酸化剤とは、空気など酸素を含むガスをいい、還元剤とは、水素または炭化水素などの燃料ガスをいい、水蒸気は、水の大部分が気相状態の媒体であればよく、液相状態の水を一部含んでいる場合も含む。
【0014】
(小単位セルスタック)
小単位セルスタック11は、平板型の単セル13を1つ以上含んで(
図1〜
図3に示された実施形態では5段積層されて)構成されている。なお、小単位セルスタック11は、単セルを1つ以上含んで構成されてなるものである。本実施形態では、小単位セルスタック11は、単セルを3〜30個積層されて構成されていることが好ましい。小単位セルスタック11中の単セルの数が上記範囲内であれば、後述するように、各単セル13と熱交換器12との熱交換を確実に行うことができるため、小単位セルスタック11内の温度の温度分布を制御することが容易になり、各単セル13の温度を一定にすることができる。
【0015】
単セル13の分解斜視図を
図4に示す。
図4に示されるように、単セル13は、電気化学セル14と、その電気化学セル14の両面に設けられる集電体15および16(第1集電体15、第2集電体16)と、電気化学セル14を第1集電体15および第2集電体16の外側から挟み込む一対のセパレータ17と、セルホルダー19とを有している。
【0016】
電気化学セル14は、固体電解質膜(電解質膜)21と、固体電解質膜21の一方の主面21aに設けられる酸素極22と、固体電解質膜21の他方の主面21bに設けられる水素極23と、水素極23の固体電解質膜21側とは反対側の面に設けられる水素極多孔質基材24とを備え、これらが積層されたものである。
【0017】
第1集電体15は酸素極22の外側の面に積層され、第2集電体16は水素極23の外側の面に積層される。固体電解質膜21、酸素極22、水素極23、および水素極多孔質基材24とは、いずれも矩形状の形状を有する。また、酸素極22の大きさは固体電解質膜21よりも小さく、固体電解質膜21の外周には酸素極22で覆われていない部分が存在する。なお、固体電解質膜21、酸素極22、水素極23、および水素極多孔質基材24の形状は、正方形に限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。
【0018】
固体電解質膜21は、電子絶縁性と酸素イオン伝導性を有する固体酸化物を膜状に稠密に形成させたものである。ここで、稠密とは、固体電解質膜21におけるガスリークが実質的に無視できる程度の稠密度であればよい。固体電解質膜21は、例えば、安定化ジルコニア、ペロブスカイト型酸化物、またはセリア(CeO
2)系電解質固溶体などを用いて形成される。なお、安定化ジルコニアとは、安定化剤をジルコニア中に固溶させたジルコニアである。安定化剤としては、例えば、Y
2O
3、Sc
2O
3、Yb
2O
3、Gd
2O
3、Nd
2O
3、CaO、MgOなどが挙げられる。また、ペロブスカイト型酸化物としては、例えば、LaSrGaMg酸化物、LaSrGaMgCo酸化物、およびLaSrGaMgCoFe酸化物などが挙げられる。また、セリア系電解質固溶体としては、CeO
2を含む材料に、Sm
2O
3、Gd
2O
3、Y
2O
3、またはLa
2O
3などを固溶させた固溶体が挙げられる。また、固体電解質膜21は、これらの材料に限定されるものではなく、これら以外の材料で構成されてもよい。
【0019】
固体電解質膜21は、例えば、700〜1000℃の温度範囲内で電子絶縁性と酸素イオン伝導性を有する。この温度範囲内で、酸素イオンは固体電解質膜を通過することができる。
【0020】
また、固体電解質膜21の厚さは、使用される用途に応じて適宜任意に調整することができ、例えば、固体電解質膜21の厚さは、例えば、5μm〜500μmの範囲であることが好ましい。
【0021】
酸素極22は、酸素を効率よく解離させることができるとともに、電子伝導性を有する材料で構成される。酸素極22は、電気化学セルの酸素極として用いられている公知の材料を用いて構成される。酸素極22としては、例えば、ランタン・ストロンチウム・マンガン(LaSrMn)系ペロブスカイト型酸化物(LSM)、LaSrCo酸化物(LSC)、LaSrCoFe酸化物(LSCF)、LaSrFe酸化物(LSF)、LaSrMnCo酸化物(LSMC)、LaSrMnCr酸化物(LSMC)、LaCoMn酸化物(LCM)、LaSrCu酸化物(LSC)、LaSrFeNi酸化物(LSFN)、LaNiFe酸化物(LNF)、LaBaCo酸化物(LBC)、LaNiCo酸化物(LNC)、LaSrAlFe酸化物(LSAF)、LaSrCoNiCu酸化物(LSCNC)、LaSrFeNiCu酸化物(LSFNC)、LaNi酸化物(LN)、GdSrCo酸化物(GSC)、GdSrMn酸化物(GSM)、PrCaMn酸化物(PCaM)、PrSrMn酸化物(PSM)、PrBaCo酸化物(PBC)、SmSrCo酸化物(SSC)、NdSmCo酸化物(NSC)、BiSrCaCu酸化物(BSCC)、BaLaFeCo酸化物(BLFC)、BaSrFeCo酸化物(BSFC)、YSrFeCo酸化物(YLFC)、YCuCoFe酸化物(YCCF)、またはYBaCu酸化物(YBC)などで形成される。酸素極22は、これらの酸化物の混合体でもよく、例えば、LSM−YSZ、LSCF−SDC、LSCF−GDC、LSCF−YDC、LSCF−LDC、LSCF−CDC、LSM−ScSZ、LSM−SDC、LSM−GDCなどで形成されてもよい。さらに、酸素極22に、例えばPt、Ru、Au、Ag、Pdなどの成分を添加してもよい。
【0022】
酸素極22の厚さは、使用される用途に応じて任意に設定することができる。例えば、酸素極22の厚さを、30μm〜100μmの範囲に設定することができる。
【0023】
水素極23は、水素極触媒金属からなる平均粒子径が0.1μm〜5μmの金属粒子、および固体電解質膜21と同じ酸素イオン伝導性を有する酸化物からなる平均粒子径が1nm〜100nmの酸化物粒子を含んで構成されている。水素極触媒金属としては、例えば、ニッケル、銀、または白金などの金属や、酸化ニッケル、または酸化コバルトなどの金属酸化物が挙げられる。酸化物粒子を構成する酸化物は、酸素イオン伝導性を有するセラミックスで構成され、例えば、サマリア安定化セリア(SDC)、またはガドリニア安定化セリア(GDC)などのセリア系酸化物、またはイットリア安定化ジルコニア(YSZ)などのジルコニア系酸化物などが挙げられる。また、酸化物粒子を構成する酸化物として、固体電解質膜21を構成する酸化物を使用してもよい。
【0024】
金属粒子の平均粒子径が0.1μm〜5μmの範囲内であれば、触媒粒子の表面積を大きくできるため、電極としての活性を高くでき、好ましい。また、さらに好ましい金属粒子の平均粒子径は、1μm以下である。なお、粒径が小さすぎると、単セル13の運用時、特に高電流密度において金属粒子の凝集による特性低下が生じるため、金属粒子の平均粒子径の下限値は0.1μmとすることが好ましい。
【0025】
また、酸化物粒子の平均粒子径が1nm〜100nmの範囲内であれば、焼成による組織焼結の緻密性を向上させることができるため、好ましい。また、酸化物粒子の平均粒子径は、1nm〜50nmであることがより好ましい。なお、製造技術や混合時の分散性の観点から、酸化物粒子の平均粒子径の下限値は1nmとすることが好ましい。
【0026】
なお、平均粒子径とは、有効径による体積平均径をいい、平均粒子径は、例えば、レーザー回折・散乱法または動的光散乱法などによって測定される。
【0027】
金属粒子と酸化物粒子との混合割合について、金属粒子の質量を1とした場合、酸化物粒子の質量は、0.6〜1.6の範囲に設定することが好ましい。この範囲内であれば、金属粒子および酸化物粒子は、均一に分散され、水素極23の活性および水素極23中の酸素イオン伝導経路、電子伝導経路を最もバランスよく配置することができる。
【0028】
また、水素極23の厚さは、使用される用途に応じて任意に設定することができる。例えば、水素極23の厚さは、50μm〜200μmの範囲内設定することができる。
【0029】
水素極多孔質基材24は、電気化学セル14の支持基材となる層であり、水素極23に一体的に接合した状態で設けられる。水素極多孔質基材24は、電気化学セル14の支持体として機能するため、電気化学セル14の機械的強度の維持または向上を図ることができる。
【0030】
水素極多孔質基材24の気孔率は、例えば30〜80%であることが好ましい。気孔率が30%以上の場合には、ガス透過性が損なわれず、電気化学セル14の特性を維持できるので好ましい。一方、気孔率が80%以下の場合には、機械的強度を十分に維持することができ、組立の際に破損が生じることを抑制できるので好ましい。なお、気孔率は、ガス透過法や吸水法、ポロシメータなどによって測定される。
【0031】
水素極多孔質基材24の厚さは、例えば500μm〜5mmの範囲に設定することが好ましい。水素極多孔質基材24の厚さがこの範囲内であれば、機械的強度を維持すると共にガス透過性を確保することができる。
【0032】
なお、水素極多孔質基材24は、水素極23の主面23bに設けているが、酸素極22側の固体電解質膜21の片面に設けてもよい。
【0033】
このような電気化学セル14では、発電時には、下記式(1)で示されるとおり、酸素極22で酸素が解離して酸素イオン(O
2−)を生じる。この酸素イオンが、固体電解質膜21を通って水素極23へ移動し、水素極23で、下記式(2)で示されるとおり酸素イオンと水素とが反応して水が生成する。このときに生じた電子が取り出されて、外部負荷で消費される。このときの電気化学セル14における発電時の反応は、発熱反応である。
1/2O
2+2e
-→O
2- ・・・(1)
H
2+O
2-→H
2O+2e
- ・・・(2)
【0034】
一方、電気化学セル14では、電気分解時には、外部負荷に代えて外部電源が接続され、発電時の逆反応が進行する。すなわち、単セル13に外部電源から供給された電力により、下記式(3)で示されるとおり、水素極23で、供給された水蒸気(水)が水素と酸素イオン(O
2−)に分解され、水素が放出される。また、酸素イオンは、固体電解質膜21を通って酸素極22へ移動する。そして酸素極22で、下記式(4で示されるとおり、酸素イオンから電子が分離されて酸素となり、その酸素が放出される。このときに分離された電子が取り出されて、循環して利用される。このときの電気化学セル14における電気分解時の反応は、吸熱反応である。
H
2O+2e
-→H
2+O
2- ・・・(3)
O
2-→1/2O
2+2e
- ・・・(4)
【0035】
第1集電体15および第2集電体16は、いずれも、導電性を持つ材料で形成され、気体が通過可能に構成されている。第1集電体15および第2集電体16は、それぞれ酸素極22および水素極23と電気的に接続されている。第1集電体15および第2集電体16は、電極全面から均等に集電するため、板状に形成されているのが一般的である。また、第1集電体15および第2集電体16は、一般に、いずれも固体電解質膜21よりも小さい矩形状に形成され、第1集電体15は、酸素極22とほぼ同じ大きさに形成されている。
【0036】
第1集電体15および第2集電体16は、メッシュ状、布状、多孔質体などで構成される。第1集電体15および第2集電体16は、これらを適当な厚さになるように重ねて用いることが好ましい。これにより、第1集電体15および第2集電体16の厚さを任意に調整することができる。
【0037】
第1集電体15は、例えば、耐酸化表面処理を施したニッケルやステンレスなどの金属、または金、銀もしくは白金などの耐酸化性を有する金属などで形成される。
【0038】
第2集電体16は、例えば、ニッケル、銀または白金などの金属で形成される。
【0039】
また、第1集電体15および第2集電体16は、上記材料の他に、例えば金、銀など各電極に用いられる材料や耐酸化性の強い金属ペーストと、発泡材料とを混合したものを用いて形成することができる。
【0040】
発泡材料とは、常温から使用温度になる間に発泡する材料である。発泡物質としては、例えば炭酸カルシウム(CaCO
3)を用いることができる。炭酸カルシウムは、加熱により酸化カルシウム(CaO)と二酸化炭素(CO
2)に分解する。CO
2が発生すると、第1集電体15および第2集電体16の中に気泡が生成される。また、発泡物質として、常温と使用温度の間の温度で熱処理を施すことにより、ガラス化する成分と、水蒸気またはCO
2などにガス化する成分とを含有するセラミックスを用いることができる。このような発泡物質としては、パーライト、フライアッシュ、または黒曜石が挙げられる。黒曜石に熱処理を施すことにより発泡した物質は、シラスバルーンとして用いられる。
【0041】
第1集電体15および第2集電体16中の発泡物質の含有量が少なすぎると、発泡に伴う体積膨張が小さくなり、電気分解セル14の熱膨張に追随できない可能性がある。また、発泡物質の量が多すぎると、気泡が連結して気密性を確保できない可能性がある。そこで、発泡物質の含有量は、例えば1〜20wt%、より好ましくは5〜10wt%とする。
【0042】
第1集電体15および第2集電体16として、発泡材料を混合した材料を用いることで、電気化学セル14の使用温度において第1集電体15および第2集電体16が膨張または伸張することにより、第1集電体15または第2集電体16と、酸素極22または水素極23との接触抵抗が低減することを抑制することができる。
【0043】
電気化学セル14と第1集電体15および第2集電体16との積層単位構成は、電気的な接続と、ガスリークを抑制するガスシール性とを確保する観点から、平坦度(flatness)が高いことが好ましい。なお、平坦度は、JISにより定義されている。セパレータ17やセルホルダー19の厚さの範囲は、第1集電体15と、第2集電体16と、セルホルダー19と第1集電体15または第2集電体16との間に設けられるガスシール部35とに用いられるそれぞれの材料により決まる。
【0044】
本実施形態においては、第1集電体15または第2集電体16とガスシール部35との厚さの差は、±50μm以下であることが好ましく、より好ましくは±20μm以下である。第1集電体15および第2集電体16とガスシール部35との厚さの差が上記範囲内であれば、電気化学セル14のセパレータ17との電気的な接続と単セル13のガスシール性とを確保することができる。
【0045】
このような電気的な接続とガスシール性を確保した第1集電体15および第2集電体16を形成する方法として、例えば、導電性の粒子状物質および/または繊維状物質を含む導電性多孔質材料を所定の厚さに積層して形成する方法がある。導電性多孔質材料を所定の厚さに積層して、第1集電体15および第2集電体16を形成することにより、第1集電体15および第2集電体16は、ロバスト性に優れるため、電気化学セル14の厚さのばらつきが大きい場合でも、平坦度が高い単セル13を形成することができ、第1集電体15または第2集電体16と酸素極22または水素極23との電気的な接続と、単セル13のガスシール性とを確保することができ、良好な電気化学セルスタック10を製造することができる。そこで、第1集電体15および第2集電体16の構成の一例を以下に示す。
【0046】
図5は、第1集電体15または第2集電体16の一例を模式的に示す図であり、
図6は、
図5の部分拡大図である。
図5および
図6に示されるように、第1集電体15または第2集電体16は、骨材粒子41と、骨材粒子41同士または骨材粒子41と電極とを結合する結合微細粒子42とを含む積層体(粒子状集電層)43で形成され、骨材粒子41の表面に導電層44が形成されている。
【0047】
骨材粒子41は、金属、セラミックス、または有機ポリマーなどを用いることができる。金属としては、ステンレス鋼、フェライト系合金、アルミニウム、Ni系金属、Cr系金属などを用いることができる。セラミックスとしては、Al、Si、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Pd、Pt、Zr、La、Sr、Gd、Mnから選択されるいずれか1種の酸化物、窒化物、または炭化物のいずれかを用いることができる。有機ポリマーとしては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、尿素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、または塩化ビニル樹脂などを用いることができる。骨材粒子41は、通常市販されている粉末を持いてもよいし、アトマイズ法などによって製作した後、粒径を調整したものを用いてもよい。
【0048】
結合微細粒子42は、Al、Si、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Mn、Ag、Au、Pd、Pt、Rh、Zr、La、Sr、Gdなどのいずれかが含まれるものを用いることができる。結合微細粒子42は、微細結晶および/または非晶質相の粒子で構成される。
【0049】
導電層44は、例えば、金属層、または導電性酸化物層である。より具体的には、各種の金属材料や良電導性酸化物といわれる酸化物化合物からなる層とすることができる。このような導電層44は、例えば、メッキ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、物理蒸着法、電気泳動法、ゾルゲル法、溶液析出法などにより形成することができる。導電性酸化物層については、特にその酸化物化合物の成分を有する何種類かの溶液を骨材粒子41と混合および乾燥(酸化)させることにより容易に形成することができる。
【0050】
良電導性酸化物といわれる酸化物化合物は、例えばNaCl型と呼ばれるTiO、VO、またはEuO
1−X、スピネル型と呼ばれるLiTi
2O
4、またはFe
3O
4、ペロブスカイト型と呼ばれるReO
2、M
xWO
3(Mは金属一般)、LaTiO
3、SrVO
3、CaCrO
3、SrCrO
3、La
1−XSrMnO
3、SrFeO
3、SrCoO
3、La
1−xSr
xCoO
3、LaNiO
3、CaRuO
3、SrRuO
3、SrIrO
3、BaPbO
3、BaPb
1−xBi
xO
3、または(Ba,Ca,Sr)TiO
3−x、コランダム型と呼ばれるV
2O
3、またはTi
2O
3、ルチル型と呼ばれるVO
2、CrO
2、MoO
2、WO
2、β−ReO
2、RuO
2、VnO
2n−1、またはTi
nO
2n−1、SnO
2−x、パイロクロア型と呼ばれるPb
2Ru
2O
7−x、またはBi
2Ru
2O
7−x、その他にTl
2O
2−x、Tl
1−xF、またはM
xV
2O
2−x(Mは金属一般)などが挙げられる。
【0051】
第1集電体15または第2集電体16では、隣接する骨材粒子41の導電層44同士が結合微細粒子42を介して結合することにより、全体として導電性を有している。
【0052】
このような集電体は、例えば以下の方法で製造することができる。予め表面に導電層44を形成した骨材粒子41とアルコキシド溶液と溶媒とをそれぞれ必要な分量を調整して十分混合してスラリーを作製する。その後、スラリーを電気化学セル14の一方の面に塗布して、所定の形状に成形、乾燥して、所定の厚さにする。その後、スラリーが塗布された電気化学セル14を平坦な金属板で挟み、スラリーを圧縮変形させて拘束したまま、スラリーが塗布された電気化学セル14を熱処理して、スラリー中のアルコキシドの加水分解を行う。これにより、アルコキシド溶液から結合微細粒子42が生成し、生成した結合微細粒子42を介して骨材粒子41同士、または電気化学セル14の電極と骨材粒子41とをそれぞれ結合して、電気化学セル14の一方の面に第1集電体15または第2集電体16が形成され、電気化学セル14の他方の面に他方の集電体が形成される。この際、隣接する骨材粒子41の導電層44同士が接触することにより、全体として導電性を有するものとなる。
【0053】
また、電気化学セル14の両面に第1集電体15および第2集電体16を形成した後、第1集電体15および第2集電体16の片面またはその両面を加工して平坦化してもよい。
【0054】
なお、上記した方法において、アルコキシド溶液は、骨材粒子41の成分原子を含有する金属アルコキシドを含む。具体的には、金属アルコキシドとしては、Al、Si、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Pd、Pt、Zr、La、Sr、Gd、またはMnのいずれかのアルコキシド化合物が用いられる。
【0055】
溶媒は、ブタノールなどアルコール溶液を用いることができる。
【0056】
この際、アルコキシド溶液としては、骨材粒子41の主成分原子を含有する金属アルコキシドと分散媒とを混合したものを用いることが好ましく、50℃以上で熱処理することが好ましい。熱処理温度を50℃以上とすることで加水分解処理を有効に進めることができる。熱処理温度が高いほど結合微細粒子42を安定させることができるが、温度が高すぎると骨材粒子41の機械的特性を低下させるおそれがあるため、500℃以下とすることが好ましい。
【0057】
また、第1集電体15または第2集電体16の他の一例を
図7に示す。
図7に示されるように、第1集電体15または第2集電体16は、骨材粒子41と、結合微細粒子42とからなり、骨材粒子41および結合微細粒子42のそれぞれの表面に導電層44が形成されてなるものである。この第1集電体15または第2集電体16では、隣接する骨材粒子41および結合微細粒子42のそれぞれの表面に導電層44が形成されることで、第1集電体15または第2集電体16に電気の通路が確保され、全体として導電性を有するものとなっている。このような構造が3次元的に網目状につながることにより、電気化学セル14側から第1集電体15または第2集電体16の表面までの電気通路となる。
【0058】
この第1集電体15または第2集電体16は、上記
図5および
図6に示す第1集電体15または第2集電体16を製造する方法において説明した通り、予め導電層44が形成された骨材粒子41を用いる代わりに、導電層44が形成されていない骨材粒子41を用いること以外は同様にして第1集電体15または第2集電体16を製造した後、全体に無電解メッキなどのメッキ処理を行うことにより骨材粒子41および結合微細粒子42のそれぞれの表面に導電層44を形成することにより得ることができる。このような構造が3次元的に網目状につながることにより、電気化学セル14側から第1集電体15または第2集電体16の表面まで電気通路となる。
【0059】
第1集電体15または第2集電体16の他の一例を
図8に示す。
図8に示されるように、第1集電体15または第2集電体16は、導電層44が被覆された骨材粒子41と、これを接合する金属粒子45とを有するものである。この第1集電体15または第2集電体16は、
図5、6に示す第1集電体15または第2集電体16とは、導電層44が形成された骨材粒子41を結合するものが金属材料からなる金属粒子45である点が異なる。この第1集電体15または第2集電体16では、隣接する骨材粒子41の導電層44同士が直接接触することにより、また金属粒子45を介して間接的に接触することにより、全体として導電性を有する。このような構造が3次元的に網目状につながることにより、電気化学セル14側から導電性多孔質材料の表面まで電気通路となる。
【0060】
この第1集電体15または第2集電体16は、予め導電層44が形成された骨材粒子41と、金属粒子45と、溶媒とを混合し、所定の形状に成形、乾燥した後、高温で熱処理することにより、導電層44が形成された骨材粒子41と金属粒子45とを融着により結合させることにより得ることができる。この際、骨材粒子41の導電層44同士が直接接触することにより、また金属粒子45を介して間接的に接触することにより、全体として導電性を有するものとなる。
【0061】
第1集電体15または第2集電体16の他の一例を
図9に示す。
図9に示されるように、第1集電体15または第2集電体16は、導電性の繊維状物質46からなる繊維状集電層47と、粒子状集電層43との2層で構成されている。
【0062】
この場合、電気化学セル14の上に、導電性の繊維状物質46を含むスラリーを塗布して熱処理を行い、繊維状集電層47を形成した後、上記
図5および
図6に示す第1集電体15または第2集電体16を製造する方法と同様にして行い、繊維状集電層47上に粒子状集電層43を形成する。これにより、電気化学セル14の一方の面に第1集電体15が形成され、電気化学セル14の他方の面に第2集電体16が形成される。
【0063】
第1集電体15または第2集電体16の他の一例を
図10に示す。
図10に示されるように、第1集電体15または第2集電体16は、金属繊維48と、セラミックス繊維49とを含み、層状に形成したものである。
【0064】
金属繊維48は、導電性を有する金属であれば用いることができる。
【0065】
セラミックス繊維49は、アルミナ繊維、またはジルコニア繊維などから構成される。また、セラミックス繊維49は、必要に応じてシリカなどを含むことができる。このシリカは、不純物として不可避的に含まれてもよいし、第2成分として含有させてもよい。
【0066】
セラミックス繊維49は、その径が0.5μm〜50μmであることが好ましく、その長さが10μm〜1000μmであることが好ましい。セラミックス繊維49の径が50μm以下であれば、セラミックス繊維49は湾曲し易いため、圧縮変形でき、シール特性が低下することを抑制することができる。一方、セラミックス繊維49の径が0.5μm以上であれば、セラミックス繊維49の分散は保たれ、セラミックス繊維49により空隙が形成できるため、空隙中に発泡ガラスやセラミック粒子を充填することができる。
【0067】
さらに、セラミックス繊維49の長さは、10μm〜1000μmであることが好ましい。セラミックス繊維49の長さが10μm以上であれば、繊維同士の交差部分も湾曲できるため、セラミックス繊維49は圧縮変形でき、シール特性が低下することを抑制することができる。一方、セラミックス繊維49の長さが1000μm以下の場合には、セラミックス繊維49は均一に分散することができ、セラミックス繊維49の空隙中に発泡ガラスやセラミック粒子などを充填することができる。
【0068】
電気化学セル14の上に、金属繊維48およびセラミックス繊維49を積層して所定の厚さの繊維層を形成することにより、電気化学セル14の一方の面に第1集電体15が形成され、電気化学セル14の他方の面に第2集電体16が形成される。
【0069】
また、
図2または
図3に示されるように、本実施形態において、第1集電体15および第2集電体16は、これらの積層方向の外側に設けられた一対のセパレータ17で挟み込まれている。一対のセパレータ17の端部に複数の穴28が設けられ、これらの穴28にボルトが差し込まれ、ボルトとボルトに取り付けられるナットによって、一対のセパレータ17は互いに近づく方向に締め付けられる。
【0070】
セパレータ17は、それぞれの電極への反応ガス(酸化剤、還元剤、または水蒸気)の供給と、電極全面からの均等な集電との機能を有する。そのため、セパレータ17は、それぞれの電極に反応ガスを供給するため、それぞれの電極との接触面に所定の間隔で貫通酸素流路31および貫通燃料流路32を有している。貫通酸素流路31および貫通燃料流路32は、それぞれ対向する辺に沿って延びる領域がセパレータ17の板厚方向に貫通した空間である。
【0071】
また、セパレータ17は、一方の表面に、酸素極22に酸化剤(例えば空気)を供給するため、一対の貫通酸素流路31の間に溝状酸素流路33を有している。また、セパレータ17は、溝状酸素流路33が形成されている面とは反対側のセパレータ17の表面に、水素極23に還元剤(例えば水素)または水蒸気を供給するため、一対の貫通燃料流路32の間に溝状燃料流路34を有している。溝状酸素流路33は、溝状燃料流路34と直交する向きにセパレータ17に形成されている。これら溝状酸素流路33、溝状燃料流路34は、それぞれ酸素極22または水素極23と連通するガス空間を形成している。溝状酸素流路33には、酸素が供給され、酸素は溝状酸素流路33を通って酸素極22に供給される。また、溝状燃料流路34には、水素または水蒸気が供給され、水素または水蒸気は溝状燃料流路34を通って水素極23に供給される。なお、電気化学セル14電気分解を行う際には、水蒸気のみ供給され、酸素は供給されない。
【0072】
また、セパレータ17は、電極全面からの均等な集電を行うため、一般的に導電性の材料で板状に形成され、電気化学セル14は、第1集電体15、第2集電体16およびセパレータ17により電気的に接続されている。セパレータ17は、溝状酸素流路33、または溝状燃料流路34以外で酸素極22、または水素極23に接する部分を介して酸素極22、または水素極23に密着している。そして、このセパレータ17を介して、電気化学セル14に外部から電力が供給され、または電気化学セル14から外部に電力が供給される。
【0073】
また、セパレータ17の電極側の面には、後述するガスシール部35と接する部分にカバー層(図示せず)を設け、ガスシール部35との接触面を平坦にすることが好ましい。
【0074】
第1集電体15または第2集電体16と、酸素極22または水素極23の電極面との密着性は、電気化学セル14とセパレータ17および第1集電体15または第2集電体16とを、複数のボルトで上下から締め付けることにより確保される。
【0075】
また、セルホルダー19は、水素極23および第2集電体16の端部を固定する機能を有する。セルホルダー19は、水素極23および第2集電体16の周囲を囲うように設けられ、水素極23および第2集電体16は、セルホルダー19の凹部19aにはめ込まれて固定される。セルホルダー19は、金属またはセラミックスなどで形成される。また、セルホルダー19は、例えば電気化学セル14とほぼ同じ厚みを有している。
【0076】
電気化学セルスタッ10は、セパレータ17とセルホルダー19との間に、単セル13のガスシール性を確保するためのガスシール部35を備えている。ガスシール部35は、絶縁材料を用いて形成することができる。セルホルダー19が金属製である場合でも、第1集電体15と第2集電体16との間の絶縁性を確保することができる。一般に、小単位セルスタック11の広い領域をガラスで一体にシールする場合には、小単位セルスタック11や熱交換器12など電気化学セルスタック10を構成する部材との熱膨張差、位置ずれによる歪、欠陥などが累積してシールが破損する可能性が高い。ガスシール部35を形成する材料としてガラスを用いることで、小単位セルスタック11毎にガラスにより一体化し、小単位セルスタック11同士の間に適度なスライドや変形ができるようにさせることで、電気化学セルスタック10の全体として、シール破損に対するロバスト性を向上させることができる。
【0077】
また、ガラスとしては、ガラス転位温度が800℃以上のガラスを用いることができる。ガラスは、スタックの運転温度領域が800℃程度であるため、少なくとも800℃で固体の結晶化ガラスを用いることが、長期間、耐久性を有するという観点から好ましい。このようなガラスとして、例えば、珪酸ソーダ、または硼珪酸ガラスなどを用いることができる。
【0078】
また、ガスシール部35は、上記ガラスと、無機系材料とを併用したものを用いることができる。無機系材料としては、イットリア安定化ジルコニア、アルミナなどのセラミックスを、さらに、ガスシール部35に含有させてもよい。ガスシール部35中のこのような無機系材料の含有量は、例えば5〜20wt%である。
【0079】
ガスシール部35は、固体電解質膜21の全体の幅のうち酸素極22と接触しない酸素極22の幅と、セルホルダー19の幅とを合わせた幅の接着面を有する。
【0080】
ガスシール部35は、ガスシール性を確保するためは、ガスシール部35の厚さは、0.2〜1.0mmとするのが好ましい。
【0081】
ガスシール部35は、セパレータ17やセルホルダー19との接着が確実に行われるように、セパレータ17およびセルホルダー19の適切な場所にガラス溜まりの溝を形成することが好ましい。
【0082】
また、本実施形態では、
図11に示されるように、小単位セルスタック11毎にセパレータ17の端部17aに、貫通酸素流路31および貫通燃料流路32を塞がない範囲でガスシール部35を設けている。貫通酸素流路31および貫通燃料流路32を塞がない範囲で端部17aにガスシール部35を設けることにより、ガスシール部35のシール部分の強度を向上させると共にガスシール性を向上させることができる。
【0083】
また、本実施形態においては、単セル13が、端部におけるガスシール性を確保しつつ酸素極22と酸素極側のセパレータ17、および水素極23と水素極側のセパレータ17との電気的接触を確保するため、電気化学セル14の酸素極22と固体電解質膜21と水素極23と第1集電体15と第2集電体16との厚さの和は、セルホルダー19の厚さと2つのガスシール部35の厚さの和とほぼ同じとすることが好ましく、より好ましくは、両者の差が、0.1mm以下であることが好ましい。なお、電気化学セルスタック10の組み立て時にボルトを締め付ける際、ガスシール部35と第1集電体15および第2集電体16とが圧力に応じて収縮し、ガスシール性と電気的接触の確保するため、ある程度のロバスト性を与えることが好ましい。
【0084】
更に、
図12に示されるように、電気化学セル14とセルホルダー19との間に充填材50を設けることが好ましい。電気化学セル14とセルホルダー19との間に充填材50を設けることで、電気化学セル14の端部の凹凸が大きい場合でも、電気化学セル14の端部から反応ガスが漏洩するのを抑制することができる。
【0085】
充填材50の材料としては、運転温度付近で溶融するガラスや、前記ガラスに運転温度においてガラスや周辺部材との反応や溶融を生じないセラミックスの粉末またはガラスの粉末を混合したものを用いることができる。セラミックスの粉末またはガラスの粉末の平均粒子径は、1μm以下であることが好ましい。
【0086】
(熱交換器)
熱交換器12は、板状に形成され、小単位セルスタック11同士の間に設けられている。熱交換器12は、小単位セルスタック11と熱交換するものであり、単セル13における発電に伴って生じる熱の熱交換器12への回収、または単セル13における電気分解時に小単位セルスタック11への熱の供給を行うものである。熱交換器12は、その内部に熱輸送媒体ガス51が通る熱輸送管52を備えている。熱輸送媒体ガス51としては、例えば、窒素(N
2)、二酸化炭素(CO
2)またはヘリウム(He)などが用いられる。
【0087】
熱輸送管52は、
図13に示されるように、熱交換器12内に蛇行して設けられている。このような構造とすることで、熱輸送管52に熱輸送媒体ガス51を循環させることにより、熱輸送管52の伝熱面積を大きくすることができる。
【0088】
熱交換器12の材料には、高い熱伝導性、耐電解質性、耐熱性などが要求されることから、例えば、ステンレスなどが使用される。
【0089】
小単位セルスタック11同士の間に熱交換器12が設けられているため、小単位セルスタック11ごとに熱交換を行われる。これにより、電気化学セルスタック10は、小単位セルスタック11内の温度分布を容易に制御でき、スタック全体の熱交換効率を高く調整制御することができる。
【0090】
また、熱交換器12は、その内部に熱輸送管52を蛇行して設け、熱輸送媒体ガス51との伝熱面積を大きくしているため、単セル13との限られた接触面から熱の入出を効率的に行うことができ、電気化学セルスタック10をコンパクトにすることができる。
【0091】
また、熱交換器12は、その内部に熱輸送管52を備える以外に、熱交換器12内部にガス流路を形成できる方法であれば他の方法を用いてもよい。
【0092】
なお、熱交換器12は、小単位セルスタック11同士の間に限らず、小単位セルスタック11の上端または下端など一方の端部にも設けられてもよい。
【0093】
また、電気化学セルスタック10は、小単位セルスタック11と熱交換器12との間に金属箔(緩衝部)55を備えている。金属箔55の材料としては、SUSなどが用いられる。金属箔55は、塑性変形により発生応力を緩和することができるため、小単位セルスタック11と熱交換器12との間に金属箔55を設けることで、小単位セルスタック11と熱交換器12との間の熱抵抗を低減させることができると共に、小単位セルスタック11の変形に対する許容量が増大し、スタック全体としてロバスト性が向上し、ガスシール部35の破損を抑制することができる。
【0094】
なお、本実施形態では、小単位セルスタック11と熱交換器12との間に金属箔55を設けているが、小単位セルスタック11と熱交換器12とを直接積層させてもよい。
【0095】
このような電気化学セルスタック10において、発電時には、外部のガス供給手段から、酸化剤(例えば空気)を電気化学セルスタック10に供給する。この酸化剤は、貫通酸素流路31を通って溝状酸素流路33に送られる。溝状酸素流路33に到達した酸化剤は、第1集電体15を通って、酸素極22に接することになる。
【0096】
一方、外部のガス供給手段から、還元剤(例えば水素)を電気化学セルスタック10に供給する。この還元剤は、貫通燃料流路32を通って溝状燃料流路34に送られる。溝状燃料流路34に到達した還元剤は、第2集電体16を通って、水素極23に供給される。
【0097】
このようにして、酸素極22に酸化剤、水素極23に還元剤が供給されることにより電気化学セル14で電流が生じ、発電する。電気化学セル14で生じた電流は第2集電体16を通って電気化学セルスタック10と接続される外部負荷に流れ、消費される。
【0098】
また、電気分解時には、酸化剤は供給せず、還元剤の代わりに水蒸気を貫通燃料流路32に供給する。水蒸気は貫通燃料流路32から供給溝状燃料流路34に送られ、第2集電体16を通って、水素極23に供給される。水素極23に水蒸気が供給されることにより電気化学セル14で水蒸気が電気分解されて、水素と酸素が発生する。
【0099】
このように、電気化学セルスタック10は、小単位セルスタック11同士の間に熱交換器12を設けているため、小単位セルスタック11ごとに熱交換を行うことができる。このような構成とすることにより、電気化学セルスタック10は、スタック内の複数の単セル13の温度分布を制御することが容易となり、電気分解セルスタック10を固体電解質膜21が有効に機能する温度範囲内で長期間安定して使用することができる。
【0100】
例えば、電気化学セルスタックが小単位セルスタック11間に熱交換器12を配置していない構造である場合には、
図14に示されるように、電気化学セルスタック内に積層された単セルの上下方向において単セルの温度分布は大きくなり、スタック全体での効率が低下する傾向にある。これに対し、電気化学セルスタック10は、小単位セルスタック11同士の間に熱交換器12を設けることでスタック内に積層された複数の単セル13の温度分布を容易に制御することができる。このため、電気化学セルスタック10は、
図15に示されるように、スタック内に積層された複数の単セル13のすべての温度を、酸素イオンが固体電解質膜21を有効に通過できる温度範囲内にすることができるため、電気化学セルスタック10全体の運転効率を向上させることができる。
【0101】
また、電気化学セルスタック10は、セパレータ17とセルホルダー19との間に、ガスシール部35を備えることにより、単セル13のガスシール性を向上させることができる。
【0102】
さらに、電気化学セルスタック10は、小単位セルスタック11と熱交換器12との間に金属箔55を設けることにより、小単位セルスタック11の変形に対する許容量が増大し、スタック全体としてロバスト性を向上させ、ガスシール部35の破損を抑制することができる。
【0103】
なお、本実施形態においては、固体電解質膜21、水素極23および水素極多孔質基材24をセルホルダー19の凹部19aに嵌めているが、
図16に示されるように、水素極23および水素極多孔質基材24の端部をセル端部カバー56で被覆して凹部19aに嵌めるようにしてもよい。セル端部カバー56は、電気化学セル14に供給される反応ガスや周辺部材と運転条件で反応しない安定な金属、ガラス、またはセラミックスなどを用いて形成することができる。凹部19aにセル端部カバー56を介して水素極23および水素極多孔質基材24を固定することにより、端面の平坦度や厚みの均一性をより厳密に調整することができるため、ガスシール性に対する電気化学セル14の端部の平坦度や厚みの影響を抑制して、より高いロバスト性を付与することができる。
【0104】
また、
図17に示されるように、固体電解質膜21、水素極23および水素極多孔質基材24の端部とセルホルダー19との間にシール層57を設けるようにしてもよい。固体電解質膜21、水素極23および水素極多孔質基材24とセル端部カバー56との間にシール層57を設けることにより、固体電解質膜21、水素極23および水素極多孔質基材24とセルホルダー19との間のガスシール性を更に高めることができる。
【0105】
また、本実施形態においては、
図18に示されるように、絶縁性を有する強度補助部58をガスシール部35の外部に設けるようにしてもよい。これにより、電気化学セル14の内部との絶縁性を保ちつつ、さらに長期に亘ってガスシール性を保つことができると共に、さらに電気化学セルスタック10の強度の向上を図ることができる。
【0106】
また、本実施形態においては、電気化学セルスタック10は、セパレータ17に貫通酸素流路31、貫通燃料流路32を設け、セパレータ17の内部に反応ガスのガス導入路を配置する内部マニホールド方式である場合について説明したが、これに限定されない。例えば、溝状酸素流路33および溝状燃料流路34をセパレータ17の端部まで延長して、セパレータ17の外側に別体として貫通酸素流路31および貫通燃料流路32を設け、貫通酸素流路31と溝状酸素流路33とを連結し、貫通燃料流路32と溝状燃料流路34とを連結して、反応ガスを流通させる外部マニホールド方式である場合でも同様に適用することができる。
【0107】
このように、電気化学セルスタック10は、水を電気分解して水素の製造を行う固体酸化物型電解セル(SOEC)、または水素を燃料として発電を行う固体酸化物型燃料電池(SOFC)として有効に用いることができるため、電気化学セルスタック10を固体酸化物型電解セルおよび固体酸化物型燃料電池として用いることで、固体酸化物型電解セルと固体酸化物型燃料電池とを組合せた電力システムとして有効に用いることができる。
【0108】
[第2の実施形態]
<電力システム>
本実施形態による電力システムは、水蒸気を電気分解する固体酸化物型電解セルと、還元剤および酸化剤を用いて発電する固体酸化物型燃料電池と、固体酸化物型燃料電池で発生する熱を固体酸化物型電解セルに供給する熱循環ラインとを具備してなり、固体酸化物電解セルおよび固体酸化物型燃料電池が、上記第1の実施形態による電気化学セルスタックを含んでなる。本実施形態においては、電力システムが、水素電力貯蔵システムとして使用される場合について説明する。そのため、本実施形態においては、還元剤として水素を使用し、酸化剤として酸素を使用する。
【0109】
図18は、本実施形態による電力システムの構成を簡略に示す図である。
図18に示されるように、電力システム(水素電力貯蔵システム)60は、固体酸化物型電解セル(SOEC)61と、固体酸化物型燃料電池(SOFC)62と、水素貯蔵部(還元剤貯蔵部)63と、酸素貯蔵部(酸化剤貯蔵部)64と、蓄熱部65と、熱循環ラインL11とを有する。なお、本実施形態においては、固体酸化物型電解セル61と固体酸化物型燃料電池62とは、上記第1の実施形態による電気化学セルスタック10が使用される。
【0110】
固体酸化物型電解セル61の小単位セルスタック11に、外部から給水ラインL12を介して水蒸気を供給する。固体酸化物型電解セル61において、給水ラインL12を通って供給された水蒸気を、外部から供給される電力を用いて、酸素および水素に電気分解する。
【0111】
なお、固体酸化物型電解セル61に供給される水蒸気は、例えば、800℃程度にまで昇温した後に固体酸化物型電解セル61に供給され、固体酸化物型電解セル61で電気分解されるため、ほとんどが気相の状態である。
【0112】
また、固体酸化物型電解セル61に外部から供給される電力として、例えば、太陽光発電、風力発電、または水力発電など自然エネルギーを用いて得られた電力を使用することができる。
【0113】
固体酸化物型電解セル61で生じた水素は、水素貯蔵部63に供給されて貯蔵され、固体酸化物型電解セル61で生じた酸素は、酸素貯蔵部64に供給されて貯蔵される。
【0114】
また、固体酸化物型電解セル61の熱交換器12に供給された熱は、小単位セルスタック11との熱交換に使用された後、放出される。
【0115】
水素貯蔵部63に貯蔵された水素、酸素貯蔵部64に貯蔵された酸素は、固体酸化物型燃料電池62の小単位セルスタック11に供給される。
【0116】
固体酸化物型燃料電池62の小単位セルスタック11では、水素貯蔵部63から供給された水素、酸素貯蔵部64から供給された酸素を用いて発電する。
【0117】
また、固体酸化物型電解セル61の熱交換器12には、外部の熱源から熱が熱交換器12に供給され、小単位セルスタック11と熱交換して加熱される。熱交換器12で熱交換後の熱は、固体酸化物型電解セル61と固体酸化物型燃料電池62とを連結する熱循環ラインL11に排出される。熱交換器12から排出された熱は、熱循環ラインL11を通って、蓄熱部65に供給され、蓄熱部65に蓄熱される。
【0118】
蓄熱部65は、例えば、蓄熱容器(図示せず)に、蓄熱材を封入した、炭化ケイ素焼結体などのセラミックス材の複数のカプセル(図示せず)を収容したものなどを用いることができる。蓄熱材としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、フッ化リチウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムなどの潜熱蓄熱材が用いられる。蓄熱容器は、カプセルのまわりを流れる媒体の流路を形成する。
【0119】
蓄熱部65に蓄熱された熱は、熱循環ラインL11を通って、固体酸化物型電解セル61の熱交換器12に供給され、小単位セルスタック11との熱交換に使用された後、放出される。
【0120】
このように、電力システム60は、固体酸化物型電解セル61、固体酸化物型燃料電池62、および熱循環ラインL11を備えている。このシステムでは、固体酸化物型燃料電池62で発電すると共に、固体酸化物型燃料電池62で生じた熱を固体酸化物型電解セル61で電気分解時に熱交換器12に供給する熱源として蓄熱部65に蓄熱することができる。固体酸化物型燃料電池62において生じる発電は発熱反応であり、固体酸化物型電解セル61において生じる電気分解は吸熱反応である。そのため、電力システム60によれば、固体酸化物型燃料電池62においてそれぞれの小単位セルスタック11で生じた熱を熱交換器12を介して外部に排出して蓄熱部65で蓄熱し、蓄熱部65で蓄熱された熱を固体酸化物型電解セル61のそれぞれの熱交換器12に供給することにより、固体酸化物型燃料電池62の小単位セルスタック11で発電時に生じた反応熱を再度利用することができるため、電力システム60の全体のエネルギー効率を向上させることができる。
【0121】
なお、本実施形態においては、水素貯蔵部63および酸素貯蔵部64を設け、固体酸化物型燃料電池62に供給される水素および酸素は、水素貯蔵部63および酸素貯蔵部64に貯蔵される水素および酸素を用いているが、外部から供給される水素および酸素を用いてもよい。
【0122】
また、本実施形態においては、蓄熱部65を設け、固体酸化物型燃料電池62から排出される熱を蓄熱しているが、蓄熱することなく固体酸化物型電解セル61に直接供給するようにしてもよい。
【0123】
なお、本実施形態においては、電力システムが水素電力貯蔵システムである場合について説明したが、これに限定されるものではなく、電力システムは、燃料源として他の燃料を使用する電力システムに適用することもできる。また、還元剤として水素、酸化剤として酸素に限定されず、還元剤としては水素を含むガス、酸化剤としては酸素を含むガスであれば使用することができる。
【0124】
以上説明した実施形態によれば、固体電解質膜が有効に機能する温度範囲内で長期間安定して使用することができる。
【0125】
以上の通り、本発明による実施形態を説明したが、上記の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。