(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記測定部によって測定された消費電力量から求まる前記ガレージ内の酸素消費量の推移と、前記給気部による前記ガレージへの外気の供給量から求まる前記ガレージ内への酸素供給量の推移と、前記ガレージの容積と、に基づいて、前記ガレージ内の酸素濃度を推定する推定部を更に備え、
前記制御部は、前記推定部によって推定された前記ガレージ内の酸素濃度が予め定められた閾値未満になった場合に、前記車両の前記発電部による発電を停止させるための処理を行う請求項1〜請求項3の何れか1項記載の給気装置。
ガレージに外気を供給する給気部と、前記ガレージに入庫した、酸素消費を伴う発電を行う発電部が搭載された車両から住宅側が電力の供給を受ける場合に、前記住宅側の消費電力量を測定する測定部と、コンピュータと、を含む給気装置の前記コンピュータを、
前記測定部によって測定された消費電力量に基づいて、前記ガレージ内の酸素濃度が所定値になるように前記給気部の作動を制御する制御部として機能させるための給気装置の制御プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、ガレージ内の排ガス濃度が所定値以下になるように制御する技術であり、燃料を燃焼させて排ガスを排出する内燃機関を搭載した車両には対応できるが、燃料電池車などのように酸素消費を伴うものの排ガスを排出せずに車両を動かすエネルギーを発生させる構成の場合に、排ガス濃度は所定値以下であるにも拘わらずガレージ内が酸素欠乏状態になる懸念があった。
【0005】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、ガレージ内が酸素欠乏状態になることを、簡単な構成で抑制できる給気装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係る給気装置は、ガレージに外気を供給する給気部と、前記ガレージに入庫した、酸素消費を伴う発電を行う発電部が搭載された車両から住宅側が電力の供給を受ける場合に、前記住宅側の消費電力量を測定する測定部と、前記測定部によって測定された消費電力量に基づいて、前記ガレージ内の酸素濃度が所定値になるように前記給気部の作動を制御する制御部と、を含んでいる。
【0007】
請求項1記載の発明では、ガレージに外気を供給する給気部を備えている。ここで、酸素消費を伴う発電を行う発電部が搭載された車両がガレージに入庫し、前記車両から住宅側が電力の供給を受ける場合、車両の発電部による酸素消費量は前記住宅側の消費電力量に比例し、ガレージ内の酸素濃度は車両の発電部による酸素消費量に応じて変化する。これに基づき、請求項1記載の発明では、住宅側の消費電力量を測定部によって測定し、制御部は、測定部によって測定された消費電力量に基づいて、ガレージ内の酸素濃度が所定値になるように給気部の作動を制御する。
【0008】
これにより、給気部の作動を制御することで、ガレージ内の酸素濃度を所定値することができる。従って、請求項1記載の発明によれば、ガレージ内が酸素欠乏状態になることを、簡単な構成で抑制することができる。なお、所定値としては、例えば大気中の酸素濃度である20.95%等の値を適用することができる。
【0009】
なお、請求項1記載の発明において、前記車両が、水素を貯蔵する水素貯蔵部が搭載され、発電部が水素貯蔵部に貯蔵された水素と酸素とを用いて発電を行う構成である場合、例えば請求項2に記載したように、車両の情報として、車両の水素貯蔵部の貯蔵水素量又は該貯蔵水素量に関連する情報と、車両の発電部の発電効率と、を記憶する記憶部を更に設け、制御部を、測定部によって測定された消費電力量と、記憶部に記憶された車両の情報と、に基づいて酸素消費量を算出し、算出した酸素消費量以上の酸素がガレージに供給されるように給気部の作動を制御するよう構成することができる。
【0010】
また、請求項2記載の発明において、給気部としては、羽根車の回転によって外気をガレージ内に供給する構成を採用してもよい。この構成では給気部による給気量が羽根車の回転速度に比例することから、制御部は、給気部の作動制御として、例えば請求項3に記載したように、算出した酸素消費量以上の酸素がガレージに供給されるように、給気部の羽根車の回転速度を制御するよう構成することができる。これにより、制御部による制御を簡単にすることができる。
【0011】
また、ガレージに入庫した車両から電力の供給を受ける住宅側の消費電力が一定ではないことを考慮すると、請求項1〜請求項3の何れか1項記載の発明において、例えば請求項4に記載したように、ガレージ内の酸素濃度を検出する検出部を更に備え、制御部は、検出部によって検出されたガレージ内の酸素濃度が予め定められた閾値未満になった場合に、車両の発電部による発電を停止させるための処理を行うように構成してもよい。ガレージ内が酸素欠乏状態になることをより確実に防止することができる。
【0012】
また、請求項1〜請求項3の何れか1項記載の発明において、請求項5に記載したように、測定部によって測定された消費電力量から求まるガレージ内の酸素消費量の推移と、給気部によるガレージへの外気の供給量から求まるガレージ内への酸素供給量の推移と、ガレージの容積と、に基づいて、ガレージ内の酸素濃度を推定する推定部を更に備え、制御部は、推定部によって推定されたガレージ内の酸素濃度が予め定められた閾値未満になった場合に、車両の前記発電部による発電を停止させるための処理を行うように構成してもよい。この場合も、請求項4記載の発明と同様に、ガレージ内が酸素欠乏状態になることをより確実に防止することができる。また、推定手段及び制御手段は単一のコンピュータで実現できるので、請求項4記載の発明と比較して、検出部が不要になることで、構成をより簡単にすることができる。
【0013】
また、請求項1〜請求項5の何れか1項記載の発明において、前記所定値としては、例えば請求項6に記載したように、20.5%以上でかつ大気中の酸素濃度以下の値を適用することができる。
【0014】
請求項7記載の発明に係る給気装置の制御プログラムは、ガレージに外気を供給する給気部と、前記ガレージに入庫した、酸素消費を伴う発電を行う発電部が搭載された車両から住宅側が電力の供給を受ける場合に、前記住宅側の消費電力量を測定する測定部と、コンピュータと、を含む給気装置の前記コンピュータを、 前記測定部によって測定された消費電力量に基づいて、前記ガレージ内の酸素濃度が所定値になるように前記給気部の作動を制御する制御部として機能させるためのプログラムであるので、当該プログラムが前記コンピュータによって実行されることで、請求項1の発明と同様に、ガレージ内が酸素欠乏状態になることを、簡単な構成で抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明は、ガレージに入庫した、酸素消費を伴う発電を行う発電を行う発電部が搭載された車両から電力の供給を受ける住宅側の消費電力量を測定し、測定した消費電力量に基づいて、ガレージ内の酸素濃度が所定値になるように、ガレージに外気を供給する給気部の作動を制御するので、ガレージ内が酸素欠乏状態になることを、簡単な構成で抑制できる、という効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0018】
〔第1実施形態〕
図1には、ガレージ(車庫)14が一体的に設けられ、本第1実施形態に係る住宅用給電制御装置10が設置された住宅12が示されている。なお、住宅用給電制御装置10は本発明に係る給気装置としての機能を兼ね備えている。また、
図1では住宅12を戸建住宅として示しているが、ガレージ14が設けられた住宅であれば、集合住宅等であってもよい。
【0019】
図1には、ガレージ14に水素燃料電池自動車50が入庫している状態が示されている。水素燃料電池自動車50は、水素を貯蔵する水素貯蔵部52と、水素貯蔵部52に貯蔵されている水素と酸素とを用いて発電を行う発電部54と、発電部54によって発電された電力により駆動力を発生するモータ56と、住宅12側への電力の供給時に送電用ケーブル42の先端に設けられたコネクタ44(後述)が接続される接続部58と、を含んでいる。なお、水素燃料電池自動車50は請求項2に記載の車両の一例である。
【0020】
一方、住宅用給電制御装置10は切替器16を備えている。切替器16は、系統電源(電力会社から供給される商用電源等)18、給受電装置40、分電盤20及び制御ECU22に各々接続されている。切替器16は、系統電源18から電力が供給される通常時には、系統電源18から供給された電力を分電盤20へ供給すると共に、分電盤20から配電された電力を給受電装置40へ供給する。
【0021】
また、本実施形態では、詳細は後述するが、系統電源18からの電力の供給が途絶えた停電時等の非常時で、ガレージ14に水素燃料電池自動車50が入庫しており、かつ水素燃料電池自動車50の接続部58に送電用ケーブル42のコネクタ44が接続されている状態で、水素燃料電池自動車50から供給された電力が給受電装置40を経由して切替器16に供給される。切替器16は、水素燃料電池自動車50から給受電装置40経由での電力の供給が開始されると、水素燃料電池自動車50からの電力の供給が開始されたことを制御ECU22に通知する。そして切替器16は、前記通知を受けた制御ECU22により、水素燃料電池自動車50から給受電装置40経由で供給された電力を分電盤20へ供給するように切り替えられる。
【0022】
分電盤20には住宅12に設置された各種の電気・電子機器が各々接続されており、分電盤20は、各種の電気・電子機器へ電力を配電する。
図1では、分電盤20に接続された電気・電子機器の一例として、住宅12の部屋24に設けられた照明機器26と、制御ECU22と、を示しているが、これに限らず、例えば部屋24に設けられたテレビ28やコンセント30等も分電盤20に接続されている(図示省略)。また、分電盤20には、住宅12における使用電力量(消費電力量)を検出するCTセンサ32が設けられている。CTセンサ32は制御ECU22に接続されている。なお、CTセンサ32は本発明における測定部の一例である。
【0023】
住宅12に設けられたガレージ14は、例えば、ガレージ14の4つの内側面のうち、車両が入出庫する入口側にはシャッタが設けられ、それ以外の3つの内側面が壁に囲まれている、等のように、入口側のシャッタを閉塞すると比較的高い密閉性を示す空間とされている。このため、ガレージ14には、ガレージ14内に外気を供給するための給気ファン(換気扇)34と、ガレージ14内の空気を住宅12外へ排出するための排気口36が設けられており、更にガレージ14内の空気の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ38も設けられている。給気ファン34及び酸素濃度センサ38は制御ECU22に接続されている。なお、給気ファン34は、羽根車34Aの回転によって外気をガレージ14内に供給する構成とされており、羽根車34Aの回転速度は制御ECU22によって制御される。また、給気ファン34は本発明における給気部(詳しくは請求項3に記載の給気部)の一例であり、酸素濃度センサ38は本発明における検出部の一例である。
【0024】
また、ガレージ14の近傍には給受電装置40が設置されている。前述のように、
図1にはガレージ14に水素燃料電池自動車50が入庫している状態が示されているが、ガレージ14には電気自動車も入庫可能とされている。なお、ここでいう電気自動車は、送電用ケーブル42のコネクタ44と接続される接続部、当該接続部を介して供給された電力により充電される車両用蓄電池、及び、当該車両用蓄電池に蓄えられた電力により駆動力を発生するモータを含む車両であればよく、内燃機関が搭載されていない二次電池式電気自動車も、内燃機関が搭載されていないプラグイン・ハイブリッド自動車も含まれる。
【0025】
給受電装置40には送電用ケーブル42の一端が接続され、送電用ケーブル42の他端にはコネクタ44が設けられている。給受電装置40は、系統電源18から電力が供給される通常時には、ガレージ14に電気自動車が入庫しており、かつ電気自動車の接続部に送電用ケーブル42のコネクタ44が接続されている状態で、系統電源18から切替器16を介して供給される電力を電気自動車の車両用蓄電池を充電するための電力(直流又は交流)へ変換して電気自動車へ供給することで、電気自動車側で車両用蓄電池の充電を行わせる。この場合、送電用ケーブル42には
図1の矢印A方向に電流が流れる。
【0026】
また、給受電装置40は、系統電源18からの電力の供給が途絶えた停電時等の非常時には、ガレージ14に水素燃料電池自動車50が入庫しており、水素燃料電池自動車50の接続部58に送電用ケーブル42のコネクタ44が接続されている状態で、水素燃料電池自動車50から送電用ケーブル42を経由して電力が供給されると、供給された電力を切替器16側へ供給する。この場合、送電用ケーブル42には
図1の矢印B方向に電流が流れる。これにより、切替器16が前述のように切り替わることで、水素燃料電池自動車50から供給された電力が分電盤20を介して住宅12側に供給され、住宅12側で消費される。
【0027】
制御ECU22はマイクロコンピュータから成り、CPU22A、ROMやRAM等から成るメモリ22B、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等から成る不揮発性の記憶部22Cを備えている。記憶部22Cには、ガレージ14に入庫される水素燃料電池自動車50に関する情報(車両情報46)が予め記憶されている。車両情報46には、水素燃料電池自動車50の水素貯蔵部52の容量(水素貯蔵部52に貯蔵可能な水素量H)を表す水素量情報と、水素燃料電池自動車50の発電部54における発電効率ηを表す発電効率情報が含まれる。また、記憶部22CにはCPU22Aが後述する給気量制御処理を行うための給気量制御プログラム48もインストールされている。
【0028】
なお、制御ECU22は本発明における制御部の一例であり、給気量制御プログラム48は本発明に係る給気装置の制御プログラムの一例であり、記憶部22Cは請求項2に記載の記憶部の一例である。
【0029】
次に本実施形態の作用を説明する。本実施形態では、系統電源18からの電力の供給が途絶えた停電時等の非常時に、ユーザ(例えば住宅12の居住者)は、ガレージ14に水素燃料電池自動車50が入庫していなければ、ガレージ14に水素燃料電池自動車50を入庫させた後に、水素燃料電池自動車50の接続部58に送電用ケーブル42のコネクタ44を接続し、水素燃料電池自動車50の発電部54による発電を開始させると共に、発電部54による発電で発生した電力を接続部58を介して外部に供給させる操作を行う。
【0030】
上記の操作に伴い、水素燃料電池自動車50の発電部54による発電で発生した電力が、接続部58、コネクタ44、送電用ケーブル42、給受電装置40を経由して切替器16に供給され、切替器16は、水素燃料電池自動車50からの電力の供給が開始された場合及び水素燃料電池自動車50からの電力の供給が終了された場合に制御ECU22に通知する。制御ECU22は、水素燃料電池自動車50からの電力の供給が開始されたことが切替器16から通知されると、CPU22Aが給気量制御プログラム48を実行することで、
図2に示す給気量制御処理を行う。
【0031】
給気量制御処理のステップ100において、制御ECU22は、水素燃料電池自動車50の発電部54による発電で発生した電力が分電盤20(住宅12側)へ供給されるように切替器16を切替える。これにより、住宅12に設置された各種の電気・電子機器が、水素燃料電池自動車50から切替器16、分電盤20を経由して供給された電力によって作動可能な状態となる。
【0032】
次のステップ102において、制御ECU22は、記憶部22Cから水素燃料電池自動車50の車両情報46(水素量H及び発電効率ηを含む情報)を読み出す。またステップ104において、制御ECU22は、住宅12側の現在の使用電力量EをCTセンサ32によって測定させる。そして、ステップ106において、制御ECU22は、ステップ104で測定された住宅12側の現在の使用電力量Eと、ステップ102で記憶部22Cから読み出した水素燃料電池自動車50の車両情報46(水素量H及び発電効率η)と、に基づいて、水素燃料電池自動車50の発電部54による発電に伴う1時間当たりの酸素消費量C
Oを演算する。
【0033】
1時間当たりの酸素消費量C
Oは次の(1)式で求めることができる。
C
O=C・E/G …(1)
なお、Gは、水素燃料電池自動車50の発電部54が水素量Hの水素を用いて発電効率ηで発電を行った場合の発電総電力量であり、発電総電力量Gは水素量Hと発電効率ηから一意に求まる(G=f(H,η))。また、Cは、水素燃料電池自動車50の発電部54が水素量Hの水素を用いて発電を行った場合の酸素総消費量であり、酸素総消費量Cは水素量Hから一意に求まる(C=f(H))。
【0034】
一例として、水素量H=5kg、発電効率η=0.4である場合、発電総電力量G=67kwh、酸素総消費量C=28m
3となり、住宅12側の現在の使用電力量E=1.0kwhであるとすると、1時間当たりの酸素消費量C
O=0.42m
3/hになる。
【0035】
次のステップ108において、制御ECU22は、ステップ106で演算した1時間当たりの酸素消費量C
Oから、給気ファン34による1時間当たりの給気量Vを演算する。1時間当たりの給気量Vは次の(2)式で求まる。
V=C
O/0.2095 …(2)
但し、0.2095は大気中の酸素濃度(=20.95%)である。一例として、1時間当たりの酸素消費量C
O=0.42m
3/hであるとすると、給気量V=1.99m
3/hになる。
【0036】
次のステップ110において、制御ECU22は、給気量Vに基づいて給気ファン34の羽根車34Aの回転速度を制御する。本実施形態に係る給気ファン34は、羽根車の回転によって外気をガレージ14内に供給する構成であり、この構成では給気ファン34による給気量が羽根車34Aの回転速度に比例することから、上記の制御は、羽根車34Aを給気量Vに比例した回転速度で回転させる、という簡単な制御で実現できる。上述したステップ104〜ステップ110が繰り返されることで、水素燃料電池自動車50の発電部54の発電に伴ってガレージ14内で消費された酸素量とほぼ等しい量の酸素が給気ファン34によってガレージ14内に供給されるように、給気ファン34によるガレージ14内への給気量Vが制御されることになる。
【0037】
次のステップ112において、制御ECU22は、ガレージ14内の酸素濃度を酸素濃度センサ38によって測定させる。そしてステップ114において、制御ECU22は、酸素濃度センサ38によって測定されたガレージ14内の酸素濃度が20.5%以上か否か判定する。ステップ112の判定が肯定された場合はステップ116へ移行し、制御ECU22は、水素燃料電池自動車50からの電力の供給が終了されたことが切替器16から通知されたか否かに基づいて、水素燃料電池自動車50から住宅12側への電力供給が終了したか否か判定する。
【0038】
ステップ116の判定が否定された場合はステップ104に戻り、ステップ104〜ステップ116を繰り返す。例えば、水素燃料電池自動車50の水素貯蔵部52に貯蔵されていた水素を全て消費した等により、水素燃料電池自動車50から住宅12側への電力供給が終了した場合には、ステップ116の判定が肯定されて給気量制御処理を終了する。
【0039】
一方、前述のステップ104〜ステップ110は、水素燃料電池自動車50の発電部54の発電に伴ってガレージ14内で消費された酸素量とほぼ等しい量の酸素を給気ファン34によってガレージ14内に供給しているので、ガレージ14内の酸素濃度は原理的には大気中の酸素濃度である20.95%(本発明における所定値の一例)のまま維持される筈である。しかし、現実にはガレージ14内の酸素濃度は、例えば給気量制御の誤差等を原因として変動することがあり、閾値である20.5%未満に低下する場合も生じ得る。
【0040】
ガレージ14内の酸素濃度が20.5%未満に低下した場合には、ステップ114の判定が否定されてステップ118へ移行し、ステップ118において、制御ECU22は、水素燃料電池自動車50の発電部54の発電を停止させるための処理を実行し、給気量制御処理を終了する。発電を停止させるための処理としては、例えば、水素燃料電池自動車50による発電の停止を要請するメッセージをディスプレイに表示する処理や、水素燃料電池自動車50による発電の停止を要請する音声を出力する処理等が挙げられる。これにより、水素燃料電池自動車50による発電を停止させる操作がユーザによって行われることになる。
【0041】
なお、発電を停止させるための処理は、上記に限定されるものではなく、住宅用給電制御装置10の構成は若干複雑化するが、水素燃料電池自動車50と通信する機能を設け、水素燃料電池自動車50に対して発電の停止を指示する信号を送信することで、水素燃料電池自動車50による発電を停止させるようにしてもよい。
【0042】
〔第2実施形態〕
次に本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0043】
図3には本第2実施形態に係る住宅用給電制御装置70が設置された住宅12が示されている。住宅用給電制御装置70は、第1実施形態で説明した住宅用給電制御装置10と比較して、酸素濃度センサ38が省略されている点でのみ相違している。
【0044】
次に
図4を参照し、本第2実施形態に係る給気量制御処理について、第1実施形態で説明した給気量制御処理と異なる部分についてのみ説明する。
【0045】
本第2実施形態に係る給気量制御処理では、ステップ108で給気ファン34による1時間当たりの給気量Vを演算した後に、次のステップ130において、制御ECU22は、まず、ステップ106で繰り返し演算された1時間当たりの酸素消費量C
Oを、水素燃料電池自動車50で発電が開始されてから現時刻t迄の期間に亘って積算する。この積算結果は、1時間当たりの酸素消費量C
Oを前記期間に亘って積分した結果に相当し、前記期間におけるガレージ14内での酸素の総消費量を表しているので、以下、時刻tまでの酸素消費量Ctと称する。時刻tまでの酸素消費量Ctは請求項5に記載の酸素消費量の推移の一例である。
【0046】
また、制御ECU22は、ステップ108で繰り返し演算された1時間当たりの給気量Vを次の(3)式に従って1時間当たりの酸素供給量S
0に各々換算し、換算した1時間当たりの酸素供給量S
0を、水素燃料電池自動車50で発電が開始されてから現時刻t迄の期間に亘って積算する。
S
0=0.2095・V …(3)
この積算結果は、1時間当たりの酸素供給量S
0を前記期間に亘って積分した結果に相当し、前記期間におけるガレージ14への酸素の総供給量を表しているので、以下、時刻tまでの酸素総供給量Stと称する。酸素総供給量Stは請求項5に記載の酸素供給量の推移の一例である。
【0047】
そして、制御ECU22は、上記の演算で得られた時刻tまでの酸素消費量Ct、時刻tまでの酸素総供給量St及びガレージ14の容積Mに基づいて、次の(4)式に従いガレージ14内における現在の酸素濃度Dtを推定演算する。
Dt=((0.2095・M)+St−Ct)/M …(4)
上記の演算により、第1実施形態で説明した酸素濃度センサ38を用いることなく、ガレージ14内の現在の酸素濃度Dtを求めることができる。
【0048】
なお、ステップ130の処理は、本発明における推定部による処理の一例であり、本第2実施形態において、制御ECU22は本発明における推定部の一例である。
【0049】
次のステップ132において、制御ECU22は、ステップ132で推定演算した現在の酸素濃度Dtと予め設定された目標酸素濃度D
REF(例えばD
REF=0.2095)との偏差に応じて、先のステップ108で演算した給気量Vを補正することで、給気ファン34による1時間当たりの給気量V
Xを演算する(次の(5)式参照)。
V
X=V+ΔV=V+α(Dt−D
0) …(5)
但し、ΔVは給気量Vに対する補正値であり、αは比例定数である。
【0050】
現在の酸素濃度Dtと目標酸素濃度D
REFとの偏差と、給気量補正値ΔVと、の関係の一例を
図5に示す。
図5に一例を示すように、給気量補正値ΔVは、現在の酸素濃度Dtと目標酸素濃度D
REFとの偏差が大きくなるに従って値が大きくなる(給気量V
Xが大きくなる)ように定めることができる。なお、給気量補正値ΔVは、現在の酸素濃度Dtと目標酸素濃度D
REFとの偏差の変化に対して、
図5に示すように線形に変化することに限られるものではなく、前記偏差が大きくなるに従って値が大きくなる変化であれば非線形の変化であってもよい。
【0051】
次のステップ134において、制御ECU22は、ステップ132で演算した給気ファン34による1時間当たりの給気量V
Xに基づいて、給気ファン34の羽根車34Aの回転速度を制御する。上述した処理が繰り返されることで、ガレージ14内の現在の酸素濃度Dtが目標酸素濃度D
REFに一致するように、給気ファン34によるガレージ14内への給気量V
Xが制御される。また、何らかの原因で現在の酸素濃度Dtが目標酸素濃度D
REFと相違した場合は、現在の酸素濃度Dtと目標酸素濃度D
REFとの偏差が大きくなるに従って値が大きくなるように定めた給気量補正値ΔVによって給気量Vを補正するので、現在の酸素濃度Dtが目標酸素濃度D
REFに速やかに一致するように、給気ファン34によるガレージ14内への給気量V
Xが制御されることになる。
【0052】
なお、第1実施形態及び第2実施形態では、ガレージ14内の酸素濃度が大気中の酸素濃度(=20.95%)に一致するように、給気ファン34によるガレージ14内への給気量Vを制御しているが、本発明において、ガレージ14内の目標酸素濃度(本発明における所定値)は上記数値に限られるものではなく、大気中の酸素濃度(=20.95%)と建築基準法で定められた値(=20.5%)の間の任意の値を適用可能である。また、本発明における閾値としても、建築基準法で定められた酸素濃度20.5%以外の値を適用してもよい。
【0053】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、水素燃料電池自動車50の発電部54の発電に伴ってガレージ14内で消費された酸素量とほぼ等しい量の酸素が給気ファン34によってガレージ14内に供給されるように、給気ファン34によるガレージ14内への給気量Vを制御する態様を説明したが、これに限定されるものではなく、ガレージ14内で消費された酸素量よりも多い量の酸素が給気ファン34によってガレージ14内に供給されるように、給気ファン34によるガレージ14内への給気量Vを制御するようにしてもよい。
【0054】
また、上記では本発明に係る給気装置としての機能を兼ね備えた住宅用給電制御装置10が、ガレージ14が一体的に設けられた住宅12に設置された態様を説明したが、これに限定されるものではなく、本発明に係る給気装置は、住宅12とガレージ14と間隔を空けて別に設けられた態様に適用することも可能である。
【0055】
更に、上記では住宅用給電制御装置10が水素燃料電池自動車50と通信を行わない態様を主に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、住宅用給電制御装置10が車両との通信を行う態様も本発明の権利範囲に含まれる。
【0056】
また、上記では本発明における「車両の水素貯蔵部の貯蔵水素量の情報」の一例としての水素量情報を含む車両情報46が記憶部22Cに記憶された態様を説明したが、これに限定されるものではなく、「車両の水素貯蔵部の貯蔵水素量に関連する情報」の一例として、水素燃料電池自動車50の発電総電力量G等を含む車両情報が記憶部22Cに記憶されていてもよい。水素量Hは発電総電力量Gと発電効率ηから算出可能である。
【0057】
また、上記では本発明に係る「酸素消費を伴う発電を行う発電部が搭載された車両」の一例として水素燃料電池自動車50を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、アルコール燃料電池自動車等の他の構成の車両であってもよい。
【0058】
更に、上記ではなお、本発明に係る給気装置の制御プログラムの一例である給気量制御プログラム48が記憶部22Cに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、本発明に係る給気装置の制御プログラムは、CD−ROMやDVD−ROM、メモリカード等の記録媒体に記録されている形態で提供することも可能である。