(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の車両用スライドレール装置において、上記位置設定手段は、上記アッパレールの上記逃がし支持部側の上記側壁に対する上記第2の押圧部の距離よりも、上記アッパレールの上記基準支持部側の上記側壁に対する上記第1の押圧部の距離を小さくさせる車両用スライドレール装置。
請求項1または2記載の車両用スライドレール装置において、上記位置設定手段は、上記第2の押圧部から上記アッパレールの上記逃がし支持部側の上記側壁へ向けて突出する突起部からなる車両用スライドレール装置。
請求項3記載の車両用スライドレール装置において、上記第1の押圧部と上記第2の押圧部は、上記前後方向における上記ロック解除レバーの一端部に形成されており、上記突起部は、上記第2の押圧部の上記前後方向における末端部に形成されている車両用スライドレール装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明中の方向は図中に記載した矢線方向を基準とする。図示を省略した自動車(車両)の車内床面にはスライドレール装置10が設けてあり、スライドレール装置10を構成するアッパレール30の上面にはシート(シートバックと、シートクッションを具備する)が固定してある。
【0013】
次にスライドレール装置10の詳しい構造について説明する。
図示のスライドレール装置10は右側(運転席)のシートを支持するものであり、大きな構成要素として、左右一対のレールユニット20と、左右のレールユニット20の前端部同士を接続するループハンドル60と、を具備している。
左右のレールユニット20は以下の構造である。
レールユニット20は前後一対のブラケット15を介して車内床面に対して固定した、互いに左右対称である左右一対のロアレール21を有している。ロアレール21は前後方向に延びかつ上面が開口した金属製のチャンネル材であり、略水平な底壁22と、底壁22の左右両側部から上方に延びる左右一対の外壁部23と、左右の外壁部23の上縁部から内側に延びる左右一対の天井部24と、左右の天井部24の内側縁部から下方に延びる左右一対の内壁部25と、を具備している。前後のブラケット15はロアレール21の前後両端近傍に対して2つのリベット16、17を介して固定してあり、リベット16、17の頭部16a、17aはいずれも底壁22の直上に位置している。
図4等に示すように、左右の内壁部25の上縁部(天井部24に接続する部分)は前後方向に延びる基端支持部26となっている。左右の内壁部25の下縁部には、その上端部が基端支持部26に接続する多数のロック歯27が前後方向に等間隔で並べて形成してあり、隣り合うロック歯27の間に下端が開放したロック溝28が形成してある。隣り合うロック溝28どうしのピッチ(前後間隔)はすべて同一であり、さらに各ロック溝28の前後幅も同一である。さらに左右の内壁部25の下縁部には、ロアレール21の前端近傍と後端近傍に位置する前端ストッパ29aと後端ストッパ29bが切り起こしにより形成してある。右側の前端ストッパ29aと後端ストッパ29bは右側に傾斜するように切り起こしてあり、左側の前端ストッパ29aと後端ストッパ29bは左側に傾斜するように切り起こしてある。
図19ないし
図21に示すように、ロアレール21内にはさらに、前後方向で前端ストッパ29aと後端ストッパ29bの間に位置する切り起こし部29cが形成されている。切り起こし部29cは、ロアレール21の一対の外壁部23のそれぞれにおいて底壁22に近い箇所をロアレール21の幅方向の中央側に向けて切り起こして形成されている。
【0014】
レールユニット20は、ロアレール21に対して前後方向にスライド可能なアッパレール30を有している。
アッパレール30は前後方向に延びかつ下面が開口した金属製のチャンネル材であり、断面形状が略下向きコ字形をなす基部31と、基部31の左右両側の側壁31a、31bの下縁部の長手方向の中央部を除く部分から上方に延びる立上り壁32と、該中央部から上方に延びる被ロック壁33と、を具備している。
図2、
図4、
図5等に示すように、左右の被ロック壁33の下縁部と基部31の側壁31a、31bの下縁部とに跨る部分には4つ(2つずつ)の前後動規制溝34a、34bが上向きに形成してある。
図1、
図2、
図4、
図6ないし
図13に示すように、基部31の左右の側壁31a、31bの後部には、内側に延びた後に上方に向かって延びる後方係止片(支持部)36が切り起こしにより形成してあり、左側の後方係止片36(符号36Lで示す)の上端には下向きのV字溝(基準支持部)36aが形成され、右側の後方係止片36(符号36Rで示す)の上端には下向きのU字溝(逃がし支持部)36bが形成されている。
図11に示すように、V字溝36aの前後の支持面36cは前後対称であり、下方に向かうについて互いの前後間隔が徐々に狭くなっている。
図12及び
図13に示すように、U字溝36bの前後の逃げ面36dはV字溝36aの前後の支持面36cよりも間隔が大きく、かつ、U字溝36bの底部(前後の逃げ面36dを接続する面)はV字溝36aの底部よりも下方に位置している。基部31の左右の側壁31a、31bの中央部よりやや前側に位置する部分には内向きの前方係止片37がそれぞれ切り起こしにより形成してある。
【0015】
アッパレール30の基部31の内面には、アッパレール30の剛性を高めるための金属製のインナリンフォース47が固定してある。また、左側のアッパレール30の上面には、当該アッパレール30の剛性を高めるための金属製のアッパリンフォース12が被ロック壁33と前後位置を合わせた状態で固定してある。
【0016】
レールユニット20はさらにアッパレール30に装着したロック解除レバー40と、ロックバネ(ロック部材)50と、を具備している。ロック解除レバー40は金属板をプレス成形した前後方向に延びかつ下面が開口した金属製のチャンネル材であり、左右一対の側壁41を具備している。ロック解除レバー40の前端部は、一対の側壁41の上部を上壁42で接続したコ字状断面部になっている。
図2、
図4、
図6及び
図7に示すように、ロック解除レバー40の上面には左右方向に延びる回転接触凸部43が突設してある。またロック解除レバー40の後端部には左右一対のバネ押圧片(第1の押圧部)44Lとバネ押圧片(第2の押圧部)44Rがそれぞれ突設してあり、左右の側壁41の前部(回転接触凸部43より前方に位置する部分)の下縁部には上向きのバネ掛け溝45が凹設してある。一対のバネ押圧片44L、44Rはそれぞれ、一対の側壁41の下縁を側方に向けて曲げて形成された平板状をなしている。
【0017】
ロックバネ50は単一の金属線材を曲折加工した左右対称な部材である。ロックバネ50の左右両側部の長手方向の中央部よりやや後方に位置する部分には外側に向かって略水平に延びる前後一対ずつ(計4つ)のロック部51Fとロック部51Gが形成してある。
図14に示すように、ロック部51Fとロック部51Gはそれぞれ、ロックバネ50の本体部から外側(右側のものは右側、左側のものは左側)に向かって直線的に延びる前後一対のロック片51aと、対をなすロック片51aの先端同士を接続する前後方向に延びる接続部51bとを一体的に有している。また、前後方向に並ぶ関係にあるロック部51Fとロック部51Gの互いに隣接するロック片51aは、前後方向に延びる接続部51cによって接続されている。ロックバネ50のロック部51Gより後方に位置する部分は自由状態において略水平であり、ロックバネ50のロック部51Fより前方に位置する部分は自由状態において略水平である。ロックバネ50の前端には左右一対の前端係止片52が外向き略水平に突設してある。またロックバネ50の後端部は平面視で左右方向に延びる後端係止部(被支持部)53を構成している。
【0018】
ロック解除レバー40はアッパレール30の前端開口部から略全体をアッパレール30内に収納してあり、回転接触凸部43が基部31の天井面に接触している(
図6、
図7の接触部P参照。ロック解除レバー40の上面における回転接触凸部43以外の部分と基部31の天井面の間には空間が形成されている)。
図6、
図7、
図11ないし
図13に示すようにロックバネ50は、後端係止部53を左右の後方係止片36L、36RのV字溝36aとU字溝36bに上方から挿入し(
図6の三角印を参照。
図6にはU字溝36bのみが示されているが、
図11及び
図13に示すようにV字溝36aに対しても後端係止部53が挿入される)、左右両側部のロック部51F、51Gよりやや前側に位置する部分を左右の前方係止片37にそれぞれ係止し(
図6の三角印を参照)、各ロック部51F、51Gを対応する前後動規制溝34a、34bに下方から係合し、さらに左右の前端係止片52を下方からバネ掛け溝45に係止してあり(
図6の上向き矢印を参照)、ロックバネ50の左右のロック部51Fの上面に左右のバネ押圧片44L、44Rを当接させている。より詳しくは、
図16から
図21に示すように、各ロック部51F、51Gのうちロック片51aが前後動規制溝34a、34bに挿入され、ロック状態ではさらにロック片51aがロック溝28に挿入される。各ロック片51aの一部は、ロック溝28と前後動規制溝34a、34bを貫通してアッパレール30の基部31の内側(一対の側壁31a、31bの間の空間)に突出しており、この基部31内へのロック片51aの突出端部が接続部51cによって接続される。バネ押圧片44L、44Rは、ロック片51aのうち基部31内に挿入された部分と接続部51cとに対して当接可能である。ロック片51aはさらにロック溝28と前後動規制溝34a、34bを貫通して被ロック壁33の外側にも突出しており、この被ロック壁33の外側への突出端部が接続部51bによって接続される。このようにしてアッパレール30及びロック解除レバー40に取り付けられたロックバネ50は、弾性変形して上向きの付勢力(弾性力)を発生する(
図6の上向き矢印を参照)。この付勢力によってロック解除レバー40の回転接触凸部43が基部31の天井部に押しつけられ、ロック解除レバー40は天井部と回転接触凸部43の接触部Pを中心にして回転接触凸部43回りに(左右方向の仮想回転軸回りに)回転可能となり、ロック解除レバー40の前端部(上壁42)に上向きの外力を掛けないときロック解除レバー40は
図6に示すロック位置に保持される。ロック解除レバー40がロック位置にあるとき、ロックバネ50のロック部51F、51Gが対応するロック溝28に係合する(
図5に実線で描かれたロック部51F、51Gと、
図19ないし
図21に実線で描かれたロック部51Fを参照)。さらに、ロックバネ50が弾性変形することにより発生する付勢力の一部の分力が、後端係止部53の周辺部(
図6の三角印部分)を下向きに付勢する付勢力となり、この分力が後端係止部53をV字溝36aとU字溝36bの下端側に移動付勢する。すると、後端係止部53が所定の上下位置に達したときに、後端係止部53の前後二カ所が前後のV字溝36aの支持面36cの双方に接触し、該付勢力によってこの接触状態が維持される(
図11参照)。一方、U字溝36bは、後端係止部53に対するクリアランスがV字溝36aよりも大きくなっている(
図12、
図13参照)。
【0019】
一方、ロックバネ50の付勢力に抗してロック解除レバー40の前端部(上壁42)に上向きの外力を掛けるとロック解除レバー40は
図7に示すアンロック位置まで回転する。すると、
図7に示すようにロック解除レバー40のバネ押圧片44L、44Rがロックバネ50を下方に押し下げるので、ロックバネ50が後方係止片36の支持を受ける後端係止部53と前方係止片37の支持を受ける部分とを支点として下方に弾性変形し、各ロック部51F、51Gが対応するロック溝28から下方に脱出する(
図5に仮想線で描かれたロック部51F、51Gと、
図19ないし
図21に仮想線で描かれたロック部51Fを参照)。
【0020】
一体化したアッパレール30、ロック解除レバー40及びロックバネ50を、ロアレール21の前端開口又は後端開口からロアレール21の内部に挿入することによりアッセンブリすると、
図3に示すようにアッパレール30の立上り壁32及び被ロック壁33が外壁部23と内壁部25の間に形成された空間に入り込み(被ロック壁33については
図19ないし
図21を参照)、さらに当該空間に配設したリテーナ55に回転可能に支持された複数のベアリングボール56が立上り壁32の外面と外壁部23の内面にそれぞれ回転可能に接触するので、アッパレール30(及び、ロック解除レバー40、ロックバネ50)はロアレール21に対して前後方向にスライド可能となる。即ちアッパレール30は、左右の被ロック壁33の前端面が前端ストッパ29aに当接する前端位置と、左右の被ロック壁33の後端面が後端ストッパ29bに当接する後端位置(
図1の位置)の間をスライド可能である。ロアレール21の切り起こし部29c(
図19ないし
図21)がリテーナ55の延長上に位置しており、切り起こし部29cによってリテーナ55とベアリングボール56の前後方向のスライドが制限される。
【0021】
ロック解除レバー40が
図6のロック位置に位置するときは、ロックバネ50の上面にバネ押圧片44L、44Rが上方から当接し、かつ、
図5、
図19ないし
図21の実線で示すように各ロック部51F、51Gが対応する前後動規制溝34a、34b及びロック溝28に下方から係合するので、アッパレール30のロアレール21に対するスライドは規制される。一方、ロック解除レバー40を
図7のアンロック位置まで回転させてバネ押圧片44L、44Rが下方に移動すると、
図5、
図19ないし
図21の仮想線(一点鎖線)で示すように、バネ押圧片44L、44Rによる押圧力を受けた各ロック部51F、51Gが、係合していたロック溝28から下方に脱出するので、アッパレール30はロアレール21に対してスライド可能となる。
【0022】
上記のようにアッセンブリされた左右一対のレールユニット20は、右側のロアレール21が左側のロアレール21よりも短くなっている点を除いて基本的に共通の構成を有しており、該一対のレールユニット20を互いに平行にしかつ互いの前後位置を合わせた上で(アッパレール30のロアレール21に対するスライド位置も一致させる)、アッパレール30の上面にシート(図示略)のシートクッションが固定される。さらに各レールユニット20のロアレール21がブラケット15を介して車両床面に固定される。
【0023】
また、左右一対のレールユニット20のロック解除レバー40に対してループハンドル60を接続する。金属製のループハンドル60は、左右方向に延びる操作部61と、操作部61の左右両端部から外側に向かって傾斜しながら延びる一対の傾斜部と、各傾斜部の左右両端部からそれぞれ下向きに延びる下向き部61aと、左右の下向き部61aの下端から後方に向かって延びる一対の後端接続部62、63と、を具備している。
図2に示すように、後端接続部62、63はそれぞれ角筒状の断面形状を有している。
【0024】
ループハンドル60は、左右の後端接続部62、63をロック解除レバー40の前端部の内部空間(一対の側壁41と上壁42に囲まれる空間)に対して前方から挿入することにより、ロック解除レバー40の前端部に対して接続してある。ロック解除レバー40に接続されたループハンドル60は、後端接続部62、63を介して上方向への回転力をロック解除レバー40に伝えることができる。
【0025】
続いてスライドレール装置10の動作について説明する。
ループハンドル60に対して外力を与えないロック状態のときは、ロック解除レバー40がロック位置に位置し、ロックバネ50のロック部51F、51Gがロアレール21のロック溝28内に位置するので、アッパレール30のロアレール21に対する前後方向へのスライド動作が規制される。このとき、ロック部51F、51Gとロック溝28の係合によって、ロックバネ50とロアレール21の間における前後方向のがたつきは発生していない。また、ロックバネ50の後端係止部53が、アッパレール30に形成した後方係止片36LのV字溝36aに対して前後動が規制された状態で係合しているので、ロックバネ50とアッパレール30の間においても前後方向のがたは発生していない。そのためロック状態において、着座による荷重によってアッパレール30に対して前後方向の移動力が掛かっても、アッパレール30及びロアレール21がロックバネ50に対して前後に移動して後端係止部53と後方係止片36の間やロック部51F、51Gとロック溝28の間で異音が発生することはない。
【0026】
ロック解除レバー40がロック位置に位置するときに、乗客が手で操作部61を掴んでループハンドル60全体を上方に回転させると、ロック解除レバー40が後端接続部62、63と一緒に上方に回転する。するとロック位置に位置していたロック解除レバー40がアンロック位置(
図7参照)まで回転し、ロック部51F、51Gがロアレール21のロック溝28から下方に脱出するので、ロアレール21に対するスライドが規制されていたアッパレール30がロアレール21に対してスライド可能となる。このロック解除操作時には、ロックバネ50の弾性変形で生ずる付勢力の一部の分力によって、V字溝36a内の後端係止部53が前後の支持面36cに対してさらに押し付けられる。
【0027】
以上のスライドレール装置10では、スライドロック機構を構成するロックバネ50をアッパレール30に対して精度良く支持することができ、かつロック解除レバー40によるロック解除動作を確実に行わせることが可能である。その詳細を説明する。以下の説明では、左右一対のレールユニット20のうち、右側(前方から見て左側)のレールユニット20をアウタ側、左側(前方から見て右側)のレールユニット20をインナ側と定義する。
【0028】
前述のように、アッパレール30の左側の後方係止片36Lに形成したV字溝36aの前後の支持面36cに対してロックバネ50の後端係止部53が係合することによって、該後端係止部53の前後位置及び上下位置が決められ、アッパレール30に対するロックバネ50の前後のがたつきが規制される(
図11)。後端係止部53はさらにアッパレール30の右側の後方係止片36RのU字溝36bにも挿入されているが、U字溝36bは、V字溝36aよりも前後方向の幅が広く、かつ下方向にも深く形成されているため、後端係止部53に対するクリアランスがV字溝36aよりも大きくなっている(
図12、
図13)。つまり、アッパレール30の左右一対の後方係止片36L、36Rのうち、V字溝36aを有する後方係止片36Lが後端係止部53のがたつきを抑える基準の支持部となり、U字溝36bを有する後方係止片36Rは、後方係止片36Lによる支持に干渉しない余裕を持って後端係止部53を支持する逃がし機能を備えた支持部となる。
図8ないし
図10と
図14以降において、各レールユニット20のうち後方係止片36Lが設けられている側(着座状態における左側、前方から見て右側)を「基準側」、後方係止片36Rが設けられている側(着座状態における右側、前方から見て左側)を「逃がし側」としている。
【0029】
このように個々のアッパレール30の左右の後方係止片36を非対称な構成としたことにより、後方係止片36L(V字溝36a)側でロックバネ50の後端係止部53を確実に移動規制させつつ、後方係止片36R(U字溝36b)側におけるクリアランスによって、部品の精度誤差等を吸収することができる。その結果、アッパレール30内でのロックバネ50のがたつきを抑えつつ、ロックバネ50の組み付け作業性も向上する。
【0030】
但し、U字溝36bを有する後方係止片36Rの側に大きなクリアランスを持たせているため、ロックバネ50の後端係止部53において、後方係止片36Lに係合する基準側よりも後方係止片36Rに係合している逃がし側を低くする傾きを生じる可能性がある。特に、逃がし側に偏った力でロックバネ50が下方へ押圧されると、このような傾きが生じやすくなる。
図14ないし
図22は、このような逃がし側に偏った力でロックバネ50を押圧することを防ぐ構成とした実施形態を示しており、
図23ないし
図25は、ロックバネ50に対する傾き防止対策を施していない比較例を示している。
【0031】
図14ないし
図18に示すように、本実施形態のロック解除レバー40は、左右一対のバネ押圧片44L、44Rのうち逃がし側に位置するバネ押圧片44Rからさらに側方(アッパレール30の側壁31bに近づく方向)へ突出する突起部(位置設定手段)46を有している。突起部46は、ロック解除レバー40の長手方向のうちバネ押圧片44Rの末端部(前後方向における後端部)付近の一部範囲に形成されている。ロック解除レバー40では、突起部46を除いた左右一対のバネ押圧片44L、44Rが、一対の側壁41から略等間隔の位置にある幅方向の中心C1(
図15ないし
図18に一点鎖線で示す)に関して略対称(略等幅)に形成されているが、突起部46を設けたことにより後端部で基準側と逃がし側が非対称な構成になる。つまり、ロック解除レバー40において、幅方向の中心C1から基準側のバネ押圧片44Lの側面までの距離よりも、幅方向の中心C1から逃がし側の突起部46の側面までの距離が大きくなっている。ロック解除レバー40の後端部における基準側のバネ押圧片44Lの側面から逃がし側の突起部46の側面までの幅W1(
図15)は、アッパレール30の基部31の左右一対の側壁31a、31bの間隔W2(
図16ないし
図18)よりも小さく、ロック解除レバー40の後端部は左右方向に所定のクリアランスをもって一対の側壁31a、31bの間に挿入される。
【0032】
図16は、アッパレール30の左右一対の側壁31a、31bに対するロック解除レバー40の後端部の左右のクリアランスが略均等である状態を示している。即ち、基準側のバネ押圧片44Lの側面から基準側の側壁31aまでの間隔と、逃がし側の突起部46の側面から逃がし側の側壁31bまでの間隔が略等しい状態にある。このとき、ロック解除レバー40の幅方向の中心C1は、アッパレール30の幅方向の中心C2(左右一対の側壁31a、31bから略等間隔の位置にある幅方向の中心)に対して基準側にオフセットしている。これに応じて基準側と逃がし側でバネ押圧片44L、44Rとロックバネ50の重なる領域が異なっており、基準側のバネ押圧部44Lの方が逃がし側のバネ押圧部44Rよりもアッパレール20の幅方向の外側(幅方向の中心C2から離れた位置)でロックバネ50と重なる。このときの左右のバネ押圧片44L、44Rとロックバネ50の重なり領域M1、M2を
図16にハッチングを付して示した。
図16から分かるように、基準側の重なり領域M1は、ロック部51Fのロック片51aのうちアッパレール30の側壁31aに近い部分にあり、逃がし側の重なり領域M2は、側壁31bから離れてアッパレール30の幅方向の中心C2側にずれた位置(ロック片51aと接続部51cの境界付近)に位置している。なお、
図5などに示すように、ロックバネ50を構成する金属線材は円形状または楕円状の断面形状であるため、実際のロック解除動作に際しては、ロックバネ50に対してバネ押圧片44L、44Rが重なり領域M1、M2の全体で面接触するのではなく、ロックバネ50を構成する金属線材の延設方向に沿う線状の領域で接触する。
【0033】
図16のアッパレール30とロック解除レバー40とロックバネ50の位置関係でロック解除操作を行った場合を
図19に示す。
図19に実線で示すロックバネ50の左右のロック部51Fは、ロック解除レバー40がロック位置にあるときの状態である。ロック解除レバー40をアンロック位置まで回転させると、左右のバネ押圧片44L、44Rが各ロック部51Fを押圧し、各ロック部51Fは仮想線(一点鎖線)で示す位置まで移動してロック溝28から離脱したロック解除状態になる。基準側のロック部51Fに対しては、ロック部51Fの幅方向の中央に近い(アッパレール30の外側に近い)重なり領域M1(
図16参照)がバネ押圧片44Lによって押圧されるので、ロック部51Fの幅方向の端部に近い(アッパレール30の中心C2に近い)重なり領域M2(
図16参照)がバネ押圧片44Rによって押圧される逃がし側のロック部51Fに比べて、効率良くロック解除方向(下方向)の力が伝えられる。その結果、ロックバネ50の後端係止部53は、基準側に位置するV字溝36aへの挿入部分を下方(即ちV字溝36aが狭くなる方向)に押し付けて前後の支持面36cに押圧させる一方で、後端係止部53とU字溝36bの底部との間には
図22のような所定のクリアランスが確保され、後端係止部53がそれ以上U字溝36bの底部側に進むことがない。そのため、ロックバネ50が大きな傾きを生じることなく、左右のロック部51Fが略水平に維持されながらアンロック方向に移動する(
図19)。
【0034】
図17は、アッパレール30の左右一対の側壁31a、31bに対するロック解除レバー40の後端部のクリアランスが、基準側で小さくなり、逃がし側で大きくなった状態を示している。即ち、
図16の状態に比べて、基準側のバネ押圧片44Lの側面と側壁31aの間隔が小さくなり、逃がし側の突起部46の側面と側壁31bの間隔が大きくなっている。このとき、ロック解除レバー40の幅方向の中心C1は、アッパレール30の幅方向の中心C2に対する基準側へのオフセット量を
図16の状態よりも大きくさせており、これに応じてバネ押圧片44L、44Rとロックバネ50の重なり領域M1、M2の位置が変化している。詳しくは、基準側の重なり領域M1は、ロック部51Fのうち接続部51cから離れる方向にずれてロック片51aの中央に近づき(側壁31aに近接し)、逃がし側の重なり領域M2は、ロック部51Fにおいて接続部51cに近づく方向にずれている。そのため、ロック解除操作を行ってバネ押圧片44L、44Rがロックバネ50を押圧するときには、
図16の状態よりもさらに基準側の重なり領域M1での効率的な力の伝達が行われるようになる。但し、逃がし側の重なり領域M2においてもバネ押圧片44Rとロックバネ50の接触は維持されるため、逃がし側のロック部51Fに対してバネ押圧片44Rによる押圧量が不足してロック解除不良になることはない。よって、前述した
図16の位置関係でのロック解除時と同様に、
図19に仮想線(一点鎖線)で示すように左右のロック部51Fを略水平に維持してアンロック方向に確実に移動させることができる。
【0035】
図18は、
図17とは逆に、アッパレール30の左右一対の側壁31a、31bに対するロック解除レバー40の後端部のクリアランスが、基準側で大きくなり、逃がし側で小さくなった状態を示している。即ち、
図16の状態に比べて、基準側のバネ押圧片44Lの側面と側壁31aの間隔が大きくなり、逃がし側の突起部46の側面と側壁31bの間隔が小さくなっている。このとき、アッパレール30の幅方向の中心C2に対するロック解除レバー40の幅方向の中心C1のオフセット量が
図16の状態よりも小さくなっており、これに応じて、バネ押圧片44L、44Rとロックバネ50の重なり領域M1、M2の位置が変化している。詳しくは、基準側の重なり領域M1は、ロック部51Fのうち接続部51c側に近づいて(側壁31aから離れて)、逃がし側の重なり領域M2は、ロック部51Fにおいて接続部51cから離れる方向(側壁31bに近づく方向)にずれている。
【0036】
アッパレール30に対してロック解除レバー40の後端部が
図18のように逃がし側に偏った状態でロック解除操作を行った場合を
図20と
図21に示す。
図20はロック解除レバー40の後端部が逃がし側へ向けて途中まで偏った状態を示し、
図21はロック解除レバー40の後端部が逃がし側へ最大に偏った状態(突起部46が逃がし側の側壁31bに当接してそれ以上の逃がし側への移動が規制される状態)を示している。
図20と
図21のいずれの状態も、ロック解除レバー40の後端部の左右に均等なクリアランスがある
図16の状態よりも、逃がし側のロック部51Fの中央寄り(アッパレール30の幅方向の外側寄り)に逃がし側の重なり領域M2が位置すると共に、基準側のロック部51Fの端部寄り(アッパレール30の幅方向の中心寄り)に基準側の重なり領域M1が位置するので、ロック解除レバー40をアンロック位置まで回転させたときに、左右のバネ押圧片44L、44Rによる左右のロック部51Fへの押圧のバランスが均等に近くなる。そのため、ロックバネ50の後端係止部53において、U字溝36b内に位置する逃がし側部分が、U字溝36b内で
図16の状態に比べてわずかに下方に移動する。つまり、後端係止部53が、
図22に示す略水平な状態よりもわずかに逃がし側を下方に下げた傾き状態になる。その結果、
図20や
図21に示すように、基準側のロック部51Fに比して逃がし側のロック部51Fが下方に位置するようにロックバネ50に傾きが生じる。ロック解除レバー40の後端部が逃がし側へ最大に偏った状態である
図21の方が、ロックバネ50の傾き量が大きくなっている。但し、
図18から分かるように、ロック解除レバー40の後端部が逃がし側へ偏った状態でも、基準側の重なり領域M1と逃がし側の重なり領域M2がアッパレール30の幅方向中心C2に関して略対称な関係に留まっており、重なり領域M1よりも重なり領域M2の方が効率的にロック部51Fを押圧するような位置関係にはならないため、ロックバネ50が過度に傾いてしまうおそれがない。例えば、
図21に示すロックバネ50の傾き状態でも、ロック部51Fがロアレール21内の切り起こし部29cに対して干渉する位置まで達しないので、ロック解除操作に支障が生じるおそれがない。
【0037】
図16ないし
図18から分かるように、ロック解除レバー40の突起部46は、ロック解除レバー40の左右方向への偏りに影響されずに常にロックバネ50とは重ならない位置(ロック片50aと異なる前後方向位置)にあるため、ロック解除レバー40をアンロック位置に回転させたときに、突起部46から逃がし側のロック部51Fに対して押圧力が作用してしまうおそれがない。また、逃がし側へのロック解除レバー40の偏りが最大になる状態では、ロック解除レバー40の長手方向の末端部に設けた突起部46がアッパレール30の側壁31bに当接することで、アッパレール30の幅方向におけるロック解除レバー40の位置を高精度に安定させる効果も得られる。
【0038】
図23と
図24に示す比較例のロック解除レバー40’は、先に説明した実施形態の突起部46に相当する部位を有しておらず、左右のバネ押圧片44L’、44R’を含むロック解除レバー40’の後端部が幅方向の中心C1’(
図23)に関して対称な構成になっている点が異なる。それ以外の構成は先に説明した実施形態と共通している。
【0039】
比較例のロック解除レバー40’の後端部は、アッパレール30の一対の側壁31a、31bの間に左右方向へのクリアランスをもって挿入されている。
図23は、このクリアランスの範囲内で、ロック解除レバー40’の後端部が逃がし側の側壁31bに接近する方向に偏った状態を示している。ロック解除レバー40’の偏りの結果、基準側でのロックバネ50’のロック部51F’とバネ押圧片44L’の重なり領域M1’が、ロック片51aと接続部51cの境界付近に位置しているのに対し、逃がし側でのロックバネ50’のロック部51F’とバネ押圧片44R’の重なり領域M2’は、重なり領域M1’よりもロック片51aの中央寄り(アッパレール30の幅方向の外側寄り)に位置している。即ち、基準側のバネ押圧片44L’よりも逃がし側のバネ押圧片44R’の方がロック部51F’を効率的に押圧する位置関係になっている。そのため、この状態でロック解除操作を行うと、逃がし側のバネ押圧片44R’がロックバネ50’を下方に強く押圧し、ロックバネ50’の後端係止部53’(
図25)においてU字溝36b内に位置する逃がし側部分が強く押圧力を受けることになり、U字溝36bに対する後端係止部53’のクリアランスの分、
図24と
図25に示すように逃がし側部分を低くする大きな傾きがロックバネ50’に生じてしまう。
図24は、ロック解除レバー40’の後端部が逃がし側へ最大に(逃がし側のバネ押圧片44R’が側壁31bに接触するまで)偏った状態でロック解除操作を行った結果、後端係止部53’がU字溝36bの底部に当接する最大傾き位置までロックバネ50’が傾いてしまったとき(
図25)のロック部51F’の位置を仮想線(一点鎖線)で示している。
図24から分かる通り、ロックバネ50’の最大傾き位置では、低い位置にある逃がし側のロック部51F’が、ロアレール21内の切り起こし部29cやロアレール21の本体部分(底壁22と外壁部23の境界付近)と干渉する状態になってしまい、ロック解除不良となったり、レールユニット20の円滑な動作が妨げられたりするおそれがある。また、ロックバネ50’が逃がし側を低くする方向に傾くと基準側が相対的に高くなるため、ロック解除操作時に、傾きで高くなった側のロック部51F’がロック溝28との係合を解除するタイミングが遅れたり、ロック解除のための操作量が大きくなったりするという不具合も生じる。
【0040】
これに対して本発明を適用した前述の実施形態では、ロック解除レバー40に設けた突起部46によってアッパレール30の側壁31bへのバネ押圧片44Rの近接を規制し、ロック解除レバー40がアッパレール30の基部31に対してクリアランスに応じた左右方向の可動域のいずれの位置にある場合でも、少なくとも基準側のバネ押圧片44Lが逃がし側のバネ押圧片44Rを下回らない効率(下方向への押圧力)でロックバネ50を押圧するように構成しているため、基準側のV字溝36aに対してロックバネ50の後端係止部53を確実に押し付けることができ、比較例のロックバネ50’のような逃がし側への過大な傾きを防止できる。この効果は、ロック解除レバー40の片側のバネ押圧片44Rに突起部46を形成するという簡単かつ安価な構成で得ることができる。
【0041】
図9に示すように、突起部46を備えたロック解除レバー40を左右のレールユニット20の両方に共通仕様で用いると、いずれのレールユニット20でも前述したロックバネ50の傾き防止効果を得られると共に、部品の共通化によるコスト低減を図ることができるので好ましい。但し、左右のレールユニット20のうち片側で特にロックバネ50の傾きが生じやすい場合などにおいて、当該一方のレールユニット20のみに突起部46を備えたロック解除レバー40を用いることも可能である。
【0042】
本発明は、以上に説明した図示実施形態に限定されるものではなく、様々な変形を施しながら実施可能である。例えば、図示実施形態では、ロック解除レバー40に突起部46を設けることで一対のバネ押圧片44L、44Rの左右方向の位置設定を行っているが、突起部46に相当する突出部を、突起部46に対向するアッパレール30の側壁31bに形成することも可能である。この変形例は、アッパレール30内に形成した位置設定用の突出部が、スライドレール装置10においてアッパレール30内に位置する他の構成要素(例えば、パワースライド装置を有するシートの場合はスライド用の駆動機構など)と干渉しないことが前提となる。
【0043】
また、図示実施形態では、バネ押圧片44Rの前後方向の一部範囲を突出させて突起部46を形成しているが、バネ押圧片44Rの全域で側方への突出量を大きくさせて突起部46相当の部位を形成することも可能である。但し、この場合、側方への突起部がバネ押圧片44Rと同様にロック部51Fのロック片50aを押圧可能な形状(バネ押圧片44Rと面一の形状)になっていると、逃がし側でのロック片50aに対する重なり領域M2をアッパレール30の外側に向けて拡大したことになり、比較例のようにロックバネ50の傾きを誘発させる押圧力が作用してしまうおそれがある。よって、バネ押圧片44Rから外側に延長した部位のうち、
図16のように平面視してロック片50aと重なる領域については、ロック片50aに押圧力を伝えない形状(例えばバネ押圧片44Rの板面に対して斜め上方へ向けて曲げられた形状)にすることが好ましい。
【0044】
図示実施形態では、ロックバネ50の後端係止部53をV字溝36aとU字溝36bで支持しているが、ロックバネ50の前後移動や傾きを規制する基準支持部をV字溝以外の形態とし、基準支持部よりも大きいクリアランスでロックバネ50を支持する逃がし支持部をU字溝以外の形態としてもよい。また、アッパレール30におけるロックバネ50の支持は、後方係止片36や前方係止片37のような切り起こし部以外の構成で行うことも可能である。
【0045】
また、図示実施形態のスライドロック機構は、ロック部51F、51Gを有するロックバネ50が自身の付勢力でロック状態を維持するタイプであるが、ロック部を有するロック部材と、該ロック部材をロック方向に付勢する付勢手段とが別体であるタイプのスライドロック機構にも適用が可能である。
【0046】
また、図示実施形態では、ループハンドル60の角筒状の後端接続部62、63を、ロック解除レバー40の下向きコ字状の前端部に係合させて、ループハンドル60からロック解除レバー40にロック解除操作力を伝えているが、これ以外の構成でロック解除レバー40に対してロック解除操作力を伝えることも可能である。