特許第6385835号(P6385835)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6385835陽極酸化皮膜を有する金属材料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385835
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】陽極酸化皮膜を有する金属材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 11/18 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
   C25D11/18 313
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-15360(P2015-15360)
(22)【出願日】2015年1月29日
(65)【公開番号】特開2016-138326(P2016-138326A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 成昭
(72)【発明者】
【氏名】林 智幸
(72)【発明者】
【氏名】津田 伸也
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−201753(JP,A)
【文献】 特表2014−521842(JP,A)
【文献】 特開2010−275571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 11/00−11/38
H01H 1/00− 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に陽極酸化皮膜表面に突出する突部を形成し、この突部の先端部を除去して先端面陽極酸化皮膜が除去された平坦面としてあることを特徴とする陽極酸化皮膜を有する金属材料の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽極酸化皮膜を有する金属材料に関する。
【背景技術】
【0002】
図3に示すように、陽極酸化皮膜51を有する金属材料53と鉄等の導電性を有する金属材料55を用いて枠体等を構成する場合、陽極酸化皮膜51を有する金属材料53と導電性金属材料55との間で導電性を確保したい場合がある。
従来、このような導電性を図るために、陽極酸化皮膜51を有する金属材料53に導電性金属からなる皿ビス57を埋め込んで、陽極酸化皮膜51を有する金属材料53に導通部を形成し、皿ビス57の頭57aに導電性金属材料55を接触させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、皿ビスの頭を導電性金属材料に接触させる場合には、皿ビスの頭が陽極酸化皮膜を有する金属材料に陥没する等の接触不良による導電不良が生じたり、皿ビスの取り付けにより導電性を図るためのコストが増加するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、導電性金属材料を接触して配置した場合に導電性金属材料との間で、導電不良を防止できると共に導電性を図るためのコストを低減できる陽極酸化皮膜を有する金属材料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、表面に陽極酸化皮膜表面に突出する突部を形成し、この突部の先端部を除去して先端面陽極酸化皮膜が除去された平坦面としてあることを特徴とする陽極酸化皮膜を有する金属材料の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、突部の先端面は、陽極酸化皮膜を除去してあるから、この先端面に導電性金属材料を接触させることで2つの金属材料間で導電を図ることができる。
導電性金属材料との接触面(突部の先端面)は、陽極酸化皮膜を有する金属材料の表面から突出し且つ平坦面としてあるから、導電性金属材料との接触を確実にでき、導通不良を防止できる。
従来用いていた皿ビス等の取り付けが不要なので、導電性を図るための加工コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態にかかる陽極酸化皮膜を有する金属材料を用いたサーバーラックの図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)に示すA部の拡大図、(c)は(b)に示す横枠材を外した状態を示す分解斜視図であり、(d)は(c)に示すB−B断面図である。
図2図1に示す陽極酸化皮膜を有する金属材料の製造工程を示す図であり、Aは第一工程、Bは第二工程、Cは第三工程、Dは完成した状態を示し、各工程及び完成状態の図において(a)は断面図であり、(b)は正面図である。
図3】従来の陽極酸化皮膜を有する金属材料と導電性金属材料との導電部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、添付図面の図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の実施の形態にかかる陽極酸化皮膜を有する金属材料(以下、単に「酸化皮膜金属材」という)は、アルミニウム基材の表面を陽極酸化皮膜処理したアルミニウム材である。
図1(a)に示すように、本発明の実施の形態にかかる酸化皮膜金属材を用いたサーバーラック3は、縦枠材5と、横枠材7とで直方体形状に枠組みしてあり、各縦枠材5に本発明にかかる酸化皮膜金属材を用いており、各横枠材7は鉄材(導電性金属材料)である。
図1(b)(c)に示すように、縦枠材5は、アルミニウム製の中空形材であり、サーバーラック3の隣りの縦枠材5側に向けて突設した突設片5aが長手方向に形成してある。この縦枠材5は、陽極酸化皮膜処理がしてあり、アルミニウム基材12の表面に陽極酸化皮膜13(図1(d)参照)を有している。
突設片5aの下端部には横枠材7を重ねてねじ9で固定してある。同様に突設片5aの上端部でも横枠材7重ねてねじ9で固定してある(図示せず)。
図1(c)(d)に示すように、突設片5aは、横枠材7を重ねる表面に突部11を形成してあり、この突部11の先端面11aは、陽極酸化皮膜13を除去した平坦面としてあり、アルミニウム基材12が露出している。本実施の形態では、突部11は上下2箇所に設けている。
【0010】
次に、陽極酸化皮膜13を除去した突部11の製造方法について説明する。
図2のAに示すように、第1工程で、縦枠材5において、アルミニウム基材12の表面に陽極酸化皮膜13を生成する。陽極酸化皮膜13は、アルミニウム基材12を陽極として電気化学的反応により表面に生成する。
次に、図2のBに示すように、第2工程で、縦枠材5の突設片5aに突部11を形成する。この第2工程では、ポンチ15を突設片5aの裏面に押し当ててプレスし、半抜き加工する。これにより、図2のCに示すように、突設片5aの表面側に突設する突部11を形成する。
その後、図2のC(a)に示すように、第3工程で、刃物17を突設片5aの表面に沿ってスライドして、突部11の先端部11bを除去する。
これにより、図2のD(a)(b)に示すように、突部11の先端面11aは、陽極酸化皮膜が除去された平坦面となる。
【0011】
図1(b)に示すように、上述したように製造した各縦枠材5の突設片5aに各横枠材7を当ててねじ9で固定して、図1(a)に示すようにサーバーラック3を組み立てる。
図1(d)に示すように、縦枠材5の突設片5aの突部11には横枠材7の表面を当接して導電部とするが、突部11の先端面11aは陽極酸化皮膜13を除去した面としてあるので、この先端面に横枠材(導電性金属材料)7を接触させることで縦枠材5と横枠材7との2つの金属材料間で導電を図ることができる。
突部11の先端面11aは、縦枠材5の突設片5aの表面から突出し且つ平坦面としてあるから、横枠材(導電性金属材料)7との接触を確実にでき、導通不良を防止できる。
従来用いていた皿ビス等の取り付けが不要なので、導電性を図るための加工コストを低減できる。
【0012】
突部11の先端面11aは、図2に示すように、陽極酸化皮膜を形成した縦枠材5の突設片5aにポンチ15によるプレスで突部11を形成した後、先端部11bを切除するだけで平坦に形成されるものであるから、少ない工数で且つ簡単な工程で、陽極酸化皮膜13を除去した突部11を容易に形成できる。
図1(c)(d)に示すように、突設片5aには、2つの突部11を形成しているので、横枠材7との接触を安定にできる。また、突設片5aは、2つの突部11により2箇所で導電を図ることができ、確実な導電ができる。
【0013】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
例えば、本発明にかかる陽極酸化皮膜13を有する金属材料は、アルミニウ材に限らず、マグネシウム材であっても良く、陽極酸化皮膜を有する金属材料の材質は限定されない。また、突部11の陽極酸化皮膜13を除去する方法は、切除だけでなく切削や研磨等であっても良く、突部11の先端面11aを平坦に加工できれば良い。
本発明にかかる陽極酸化皮膜13を有する金属材料は、サーバーラック3の縦枠材5に用いることに限らず、横枠材7として用い、縦枠材5に鉄材を用いても良いし、各縦枠材5に用いることに限らず、任意の一つの枠材に用いて、他の枠材を鉄材としても良い。
また、本発明にかかる陽極酸化皮膜を有する金属材料は、サーバーラック3に限らず、導電性金属材料との間で導電を図るものであれば、什器やパチンコ台等の遊戯機器の枠材として用いるものであっても良いし、枠材に限らず、導電性金属材料どうしを導電して連結する連結材として用いても良い。
陽極酸化皮膜を有する金属材料が接触して導電を図る導電性金属材料としては、鉄材に限らず、銅、亜鉛、錫等であっても良い。また、導電性金属材料には、塗料等による皮膜が形成してある場合には、陽極酸化皮膜を有する金属材料と接触する部分については塗料等の皮膜を除去して用いる。
【符号の説明】
【0014】
3 サーバーラック
5 縦枠材(陽極酸化皮膜を有する金属材料)
7 横枠材(導電性金属材料)
11 突部
11a 先端面
13 陽極酸化皮膜
図1
図2
図3