【文献】
SAMUEL,J. et al.,Microporous network polymers based on cobaltphthalocyanines,Macromolecular Symposia,2009年,Vol.277,p.87-91
【文献】
EASTMOND,G.C. et al.,Synthesis of cyanodibenzo[1,4]dioxines and their derivatives by cyano-activated fluoro displacement reactions,New Journal of Chemistry,2001年,Vol.25, No.3,p.379-384
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0033】
1.フルオレン化合物
本発明のフルオレン化合物は、一般式(1):
【0035】
[式中、R
1a及びR
1bは同じか又は異なり、それぞれ置換基;R
2a、R
2b、R
2c及びR
2dは同じか又は異なり、それぞれ置換基;R
3a及びR
3bは片方が水素原子で他方がカルボキシ基又はシアノ基;R
3c及びR
3dは片方が水素原子で他方がカルボキシ基又はシアノ基;n1及びn2は同じか又は異なり、それぞれ0〜4の整数;m1及びm2は同じか又は異なり、それぞれ0〜2の整数;m3及びm4は同じか又は異なり、それぞれ0〜3の整数である。]
で表されるフルオレン化合物である。
【0036】
R
1a及びR
1bは同じか又は異なり、それぞれ置換基である。この置換基としては、後述する本発明の製造方法における反応を阻害しない置換基であれば特に制限はないが、例えば、炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等)、アルコキシ基、シクロアルコキシ基等が挙げられる。これらの置換基は、他の基で置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。
【0037】
前記一般式(1)において、基R
1a及びR
1bで示されるアルキル基としては、C
1−8アルキル基が好ましく、C
1−4アルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基等を例示できる。このアルキル基の置換基としては、例えば、後述の炭化水素基(シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等)、後述のアルコキシ基、後述のシクロアルコキシ基等の1〜4個を有し得る。
【0038】
前記一般式(1)において、基R
1a及びR
1bで示されるシクロアルキル基としては、C
5−10シクロアルキル基が好ましく、C
5−8シクロアルキル基がより好ましく、C
5−6シクロアルキル基がさらに好ましい。具体的には、シクロペンチル基、シクロへキシル基等を例示できる。このシクロアルキル基の置換基としては、例えば、前記又は後述の炭化水素基(アルキル基、アリール基、アラルキル基等)、後述のアルコキシ基、後述のシクロアルコキシ基等の1〜4個を有し得る。
【0039】
前記一般式(1)において、基R
1a及びR
1bで示されるアリール基としては、C
6−10アリール基が好ましい。具体的には、フェニル基、アルキルフェニル基(アルキル:前述したもの;o−トリル基、m−トリル基、p―トリル基等のトリル基;キシリル基等のジメチルフェニル基等)、ナフチル基等を例示できる。このアリール基の置換基としては、例えば、前記又は後述の炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基等)、後述のアルコキシ基、後述のシクロアルコキシ基等の1〜4個を有し得る。
【0040】
前記一般式(1)において、基R
1a及びR
1bで示されるアラルキル基としては、前述したアリール基と前述したアルキル基を有するC
7−14アラルキル基が好ましい。具体的には、ベンジル基、フェネチル基等が例示できる。このアラルキル基の置換基としては、例えば、前記した炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等)、後述のアルコキシ基、後述のシクロアルコキシ基等の1〜4個を有し得る。
【0041】
前記一般式(1)において、基R
1a及びR
1bで示されるアルコキシ基としては、C
1−8アルコキシ基が好ましく、C
1−6アルコキシ基がより好ましい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基等が例示できる。このアルコキシ基の置換基としては、例えば、前記した炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等)、後述のシクロアルコキシ基等の1〜4個を有し得る。
【0042】
前記一般式(1)において、基R
1a及びR
1bで示されるシクロアルコキシ基としては、C
5−10シクロアルコキシ基が好ましい。具体的には、シクロへキシルオキシ基等が例示できる。このシクロアルコキシ基の置換基としては、例えば、前記した炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等)、前記したアルコキシ基等の1〜4個を有し得る。
【0043】
これらのなかでも、基R
1a及びR
1bとしては、得ようとするフルオレン化合物の要求特性等に応じて適宜設定することが好ましい。
【0044】
なお、n1が複数(2〜4の整数)である場合、複数の基R
1aは同じでもよいし、互いに異なっていてもよい。同様に、n2が複数(2〜4の整数)である場合、複数の基R
1bは同じでもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0045】
また、異なるベンゼン環に置換した基R
1aと基R
1bとは同じでもよいし、互いに異なっていてもよい。また、基R
1a及びR
1bの結合位置(置換位置)は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2位、7位等の少なくとも1つが挙げられる。
【0046】
前記一般式(1)において、基R
1a及びR
1bの置換数であるn1及びn2は同じでも異なっていてもよいが、それぞれ0〜4の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0又は1がさらに好ましく、0が特に好ましい。
【0047】
R
2a〜R
2dは同じか又は異なり、それぞれ置換基である。この置換基としては、後述する本発明の製造方法における反応を阻害しない置換基であれば特に制限はないが、例えば、炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等)、アルコキシ基、シクロアルコキシ基等が挙げられる。これらの置換基は、他の基で置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。これら置換基(炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等)、アルコキシ基、シクロアルコキシ基等)は、上記したものが例示できる。
【0048】
なお、m1が複数(2)である場合、複数の基R
2aは同じでもよいし、互いに異なっていてもよい。同様に、m2が複数(2)である場合、複数の基R
2bは同じでもよいし、互いに異なっていてもよい。また、m3が複数(2又は3)である場合、複数の基R
2cは同じでもよいし、互いに異なっていてもよい。さらに、m4が複数(2又は3)である場合、複数の基R
2dは同じでもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0049】
また、異なるベンゼン環に置換した基R
2a〜R
2dは、同じでもよいし、互いに異なっていてもよい。また、基R
2a〜R
2dの結合位置(置換位置)は、特に限定されず、例えば、ジベンゾ[1,4]ジオキシン環の1位、2位、4位、6位、9位等の少なくとも1つが挙げられる(フルオレン環とは通常3位で結合する)。
【0050】
前記一般式(1)において、基R
2a及びR
2bの置換数であるm1及びm2は同じでも異なっていてもよいが、それぞれ0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0051】
前記一般式(1)において、基R
2c及びR
2dの置換数であるm3及びm4は同じでも異なっていてもよいが、それぞれ0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0又は1がさらに好ましく、0が特に好ましい。
【0052】
R
3a及びR
3bは片方が水素原子で他方がカルボキシ基又はシアノ基である。このため、本発明では、リニアなポリマーをより形成しやすいため、高分子重合体を合成するための単量体化合物として好適である。R
3c及びR
3dも同様の理由により、片方を水素原子とし、他方をカルボキシ基又はシアノ基とする。
【0053】
上記のような条件を満たす本発明のフルオレン化合物の好ましい態様としては、R
3a及びR
3bの片方が水素原子で他方がシアノ基であり、且つ、R
3c及びR
3dの片方が水素原子で他方がシアノ基であるフルオレン化合物として、一般式(1A):
【0055】
[式中、R
1a、R
1b、R
2a、R
2b、R
2c、R
2d、n1、n2、m1、m2、m3及びm4は前記に同じ;R
3a1及びR
3b1は片方が水素原子で他方がシアノ基;R
3c1及びR
3d1は片方が水素原子で他方がシアノ基である。]
で示されるフルオレン化合物が好ましく、一般式(1A1):
【0057】
[式中、R
3a1、R
3b1、R
3c1及びR
3d1は前記に同じである。]
で示されるフルオレン化合物がより好ましい。
【0058】
この一般式(1A1)で示されるフルオレン化合物には、合成条件等によって、
【0060】
等の同位体が含まれ得る。また、合成条件等によっては、これらの同位体の混合物として得られ得る。
【0061】
一方、上記のような条件を満たす本発明のフルオレン化合物の他の好ましい態様としては、R
3a及びR
3bの片方が水素原子で他方がカルボキシ基であり、且つ、R
3c及びR
3dの片方が水素原子で他方がカルボキシ基であるフルオレン化合物として、一般式(1B):
【0063】
[式中、R
1a、R
1b、R
2a、R
2b、R
2c、R
2d、n1、n2、m1、m2、m3及びm4は前記に同じ;R
3a2及びR
3b2は片方が水素原子で他方がカルボキシ基;R
3c2及びR
3d2は片方が水素原子で他方がカルボキシ基である。]
で示されるフルオレン化合物が好ましく、一般式(1B1):
【0065】
[式中、R
3a2、R
3b2、R
3c2及びR
3d2は前記に同じである。]
で示されるフルオレン化合物がより好ましい。
【0066】
この一般式(1B1)で示されるフルオレン化合物には、合成条件等によって、
【0068】
等の同位体が含まれ得る。また、合成条件等によっては、これらの同位体の混合物として得られ得る。
【0069】
上記した本発明のフルオレン化合物のうち、両末端がカルボキシ基である一般式(1B)で示される化合物は、樹脂添加剤、化学中間体、高分子重合体(ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、アクリル樹脂等のカルボン酸を重合成分とする重合体等)を合成するための単量体化合物として使用することができる。また、必要に応じて誘導体化(例えば、エステル化等)して、各種用途に用いることができる。
【0070】
一方、上記した本発明のフルオレン化合物のうち、両末端がシアノ基である一般式(1A)で示される化合物は、一般式(1B)で示される化合物の合成中間体となり得る。
【0071】
したがって、本発明のフルオレン化合物は、いずれの場合であっても、高分子重合体を合成するための単量体化合物又はその合成中間体として、様々な物性を有する新規高分子重合体を導くために非常に有用である。
【0072】
本発明のフルオレン化合物は、高耐熱性等の特性を有している。例えば、本発明のフルオレン化合物のガラス転移温度(Tg)は、例えば、220〜260℃、好ましくは230〜250℃とし得る。このため、本発明のフルオレン化合物(特に一般式(1B)で示される化合物)は、高分子重合体(ポリエステル、ポリアミド等)の合成に使用した場合に、得られる高分子重合体の耐熱性等の物性を向上させることが期待される。
【0073】
2.フルオレン化合物の製造方法
本発明のフルオレン化合物は、例えば、以下の反応式:
【0075】
[式中、R
1a、R
1b、R
2a、R
2b、R
2c、R
2d、R
3a1、R
3b1、R
3c1、R
3d1、R
3a2、R
3b2、R
3c2、R
3d2、n1、n2、m1、m2、m3及びm4は前記に同じ;X
1及びX
2は同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子である。]
で示される経路に沿って合成することができる。
【0076】
[化合物(1A)の合成]
一般式(2)において、R
1a、R
1b、R
2c、R
2d、n1、n2、m3及びm4は前記説明したものを採用することができる。好ましい具体例も同様である。
【0077】
このような一般式(2)で示される化合物としては、例えば、
【0079】
で示される化合物等を使用でき、公知又は市販の化合物を使用することができる。一般式(2)で示される化合物は、例えば、特開2001−206862号公報に記載された方法にしたがって合成することができる。
【0080】
一般式(3)において、R
2a、R
3a1、R
3b1及びm1は前記説明したものを採用することができる。好ましい具体例も同様である。
【0081】
一般式(3)において、X
1及びX
2はハロゲン原子であり、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、好ましくはフッ素原子である。なお、X
1及びX
2は同一でも異なっていてもよいが、同一であるほうが、反応が容易である。
【0082】
このような一般式(3)で示される化合物としては、例えば、
【0084】
等を使用することができ、公知又は市販の化合物を使用することができる。
【0085】
一般式(3)で示される化合物の使用量は、一般式(2)で示される化合物1モルに対して、通常、0.7〜10モルが好ましく、1.7〜5モルがより好ましい。
【0086】
反応は、塩基の存在下で行うことが好ましい。使用される塩基としては、特に制限されないが、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム等のアルカリ土類金属塩;カルシウムハイドライド(CaH
2)等のアルカリ土類金属水素化物、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン等のアミン類等が挙げられる。これらのなかでも、反応性の観点から、アルカリ土類金属塩が好ましく、炭酸カルシウムがより好ましい。これらの塩基は、単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0087】
塩基の使用量は、一般式(2)で示される化合物に対して過剰量とすることが、収率の観点から好ましい。具体的には、塩基の使用量は、一般式(2)で示される化合物1モルに対して、通常、0.1〜100モルが好ましく、1〜10モルがより好ましい。
【0088】
一般式(2)で表される化合物、一般式(3)で示される化合物、及び塩基は、一度に加えてもよいが、複数回にわたって段階的に加えてもよい。
【0089】
本反応は、通常、溶媒の存在下で行われ得る。使用できる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、反応性の観点から、アミド系溶媒が好ましく、ジメチルホルムアミドがより好ましい。
【0090】
本反応は、不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス)下で行うことが好ましいが、減圧下に行ってもよい。反応温度は、通常、50〜200℃、好ましくは80〜180℃とし得る。反応時間は、反応が十分に進行する程度とすればよい。
【0091】
反応終了後の反応混合物には、一般式(1A)で示されるフルオレン化合物以外に、溶媒、塩基、未反応成分等が含まれていることがある。そのため、一般式(1A)で示されるフルオレン化合物は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により反応後の反応混合物から分離精製してもよい。なお、本発明の反応は理想的(定量的)に進行しやすいため、濾過等による分離でも十分に高純度であるが、さらに純度を高めるため、蒸留や再結晶等の精製を行ってもよい。また、本反応に引き続いて一般式(1B)で示されるフルオレン化合物の合成を行う場合には、上記分離精製を行わなくてもよい。
【0092】
[化合物(1B)の合成]
一般式(1A)で示される本発明のフルオレン化合物を用いて、一般式(1B)で示される本発明のフルオレン化合物を合成する際の加水分解条件としては、特に制限されないが、強酸又は強塩基の存在下で行うことが好ましい。
【0093】
使用できる酸としては、特に制限されないが、強酸であることが好ましく、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸、強酸性イオン交換樹脂等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
使用できる塩基としては、特に制限されないが、強塩基であることが好ましく、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物;リチウムハイドライド(LiH)、ナトリウムハイドライド(NaH)等のアルカリ金属水素化物;メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等のアルキルリチウム;フェニルリチウム等のアリールリチウム等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
これらのなかでは、反応性の観点から、塩基が好ましく、アルカリ金属水酸化物がより好ましく、水酸化カリウムがさらに好ましい。
【0096】
強酸又は強塩基の使用量は、反応性の観点から、一般式(1A)で示される化合物1モルに対して、通常、0.1〜100モルが好ましく、1〜20モルがより好ましい。
【0097】
本反応は、通常、溶媒の存在下で行われ得る。使用できる溶媒としては、一般式(1A)で示される化合物を加水分解させる水の他、有機溶媒も使用できる。有機溶媒としては、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒;塩化メチル、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等のアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、反応性の観点から、アルコール系溶媒が好ましく、2−メトキシエタノールがより好ましい。
【0098】
本反応は、不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス)下で行うことが好ましいが、減圧下に行ってもよい。反応温度は、通常、50〜200℃、好ましくは80〜180℃とし得る。反応時間は、反応が十分に進行する程度とすればよい。
【0099】
反応終了後の反応混合物には、一般式(1B)で示されるフルオレン化合物以外に、溶媒、強酸若しくは強塩基、未反応成分等が含まれていることがある。そのため、一般式(1B)で示されるフルオレン化合物は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により反応後の反応混合物から分離精製してもよい。なお、本発明の反応は理想的(定量的)に進行しやすいため、濾過等による分離でも十分に高純度であるが、さらに純度を高めるため、蒸留や再結晶等の精製を行ってもよい。
【実施例】
【0100】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0101】
なお、以下の実施例において、各種物性の測定及び評価は以下の方法により行った。
【0102】
[ガラス転移温度]
示差走査熱量計(DSC;エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、EXSTAR DSC6200)を用い、窒素雰囲気下で、ガラス転移温度を測定した。
【0103】
[HPLC条件]
使用機器:ジーエルサイエンス 7400シリーズ
検出機 :PDA Detector GL7452A λ=254nm
カラム :関東化学(株) Mightsil 4.6×150mm RP−18 GP
溶出液 :アセトニトリル:水=6:4
流速 :1ml/分。
【0104】
[
1H−NMR]
使用機器:日本電子(株) 400MHz FT−NMR ECX−400
溶媒 :ジメチルスルホキシド(DMSO)−d
6。
【0105】
[熱重量減少測定条件]
使用機器:エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)TG/DTA6200
昇温プログラム:30℃−520℃ 10℃/分。
【0106】
実施例1:9,9−ビス(シアノジベンゾ[1,4]ジオキシン−2−イル)フルオレンの合成
68.58%ビスカテコールフルオレン(BCAF)2.00g(3.59mmol)のイソプロピルアルコール(IPA)溶液、3,4−ジフルオロベンゾニトリル1.77g(12.74mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)20mLに溶解した。この溶液に炭酸カリウム4.00g(28.94mmol)を加え、アルゴン雰囲気下バス温140℃で3時間加熱撹拌した。BCAF及び3,4−ジフルオロベンゾニトリルの消失をHPLCにて確認した。反応液に水を加え生じた沈澱を濾集した。沈澱をトルエンに溶解して2回水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥後、濾過し濾液を減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶出液:トルエン)で精製し、主生成物1.2gを得た。主生成物は、9,9−ビス(シアノベンゾ[1,4]ジオキシン−2−イル)フルオレン(BCNDF)と考えられた(収率57.6%)。なお、実施例1で得られたBCNDFは、
【0107】
【化19】
【0108】
の混合物と考えられる。
FD−MS
m/z=580に分子イオン観測(分子量580.59)。
【0109】
実施例2:9,9−ビス(カルボキシジベンゾ[1,4]ジオキシン−2−イル)フルオレンの合成
実施例1で得たBCNDF0.83g(1.43mmol)を2−メトキシエタノール10mLに溶解した。水酸化カリウム1.01g(18.0mmol)を水1mLに溶解し、BCNDF溶液に加えた。バス温140℃で2時間加熱撹拌した。約30分後からアンモニア臭がした。放冷後水を加え、約1mol/Lの塩酸で中和した後、酢酸エチルで抽出した。有機層を2回水洗し硫酸マグネシウムで乾燥後、濾過し濾液を減圧濃縮した。得られた固体をアセトン-水から再結晶(再沈澱)した。白色固体の9,9−ビス(シアノベンゾ[1,4]ジオキシン−2−イル)フルオレン(BCDF)を0.83g得た(収率93.8%)。なお、実施例2で得られたBCDFは、
【0110】
【化20】
【0111】
の混合物と考えられる。また、融点は243℃であった。
1H−NMR(DMSO−d
6)
ppm:8.0(2H)、7.5(10H)、7.0(4H)、6.8(4H)
FD−MS
m/z=618に分子イオン観測(分子量618.59)。
【0112】
実施例3:9,9−ビス(シアノジベンゾ[1,4]ジオキシン−2−イル)フルオレンの合成
3,4−ジフルオロベンゾニトリル1.77g(12.74mmol)を1.23g(8.8mmol)使用した他は、実施例1と同様にして9,9−ビス(シアノベンゾ[1,4]ジオキシン−2−イル)フルオレン(BCNDF)を1.63g得た。収率は78.3%であった。
【0113】
実施例4:9,9−ビス(シアノジベンゾ[1,4]ジオキシン−2−イル)フルオレンの合成
68.58%ビスカテコールフルオレン(BCAF)20.67g(37.1mmol)のイソプロピルアルコール(IPA)溶液、3,4−ジクロロベンゾニトリル12.95g(75.3mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100mLに溶解した。この溶液に炭酸カリウム20.39g(147mmol)を加え、アルゴン雰囲気下バス温140℃で17時間加熱撹拌した。反応液をロータリーエバポレータでできるだけ減圧濃縮した。残渣に水を加え沈澱を濾集した。得られた沈澱を60℃で17時間温風乾燥した後さらに60℃で6時間減圧乾燥した。得られた固体とトルエンに加熱溶解し、不溶分を濾過した。濾液を減圧濃縮し、得られた残渣を溶出液トルエンのシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、主生成物17.0gを得た。主生成物は、9,9−ビス(シアノベンゾ[1,4]ジオキシン−2−イル)フルオレン(BCNDF)と考えられた(収率79.0%)。
【0114】
実施例5:9,9−ビス(カルボキシジベンゾ[1,4]ジオキシン−2−イル)フルオレンの合成
BCNDF0.83g(1.43mmol)に代えてBCNDFを1.20g(2.07mmol)、2−メトキシエタノール10mLに代えて2−エトキシエタノールを12ml、水酸化カリウム1.01g(18mmol)に代えて水酸化ナトリウムを1.14g(28.5mmol)使用し、バス温120℃で5時間加熱撹拌した他は、実施例2と同様にして、白色固体の9,9−ビス(カルボキシベンゾ[1,4]ジオキシン−2−イル)フルオレン(BCDF)を1.22g得た(収率99%)。
【0115】
また、実施例2及び5で得たBCDFの熱重量減少を測定したところ、重量が5%減少する際の加熱温度は427℃、10%減少する温度は451℃、20%減少する温度は479℃であった。