(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
蒸発燃料を吸着するキャニスタと、燃料タンク内で発生した蒸発燃料をキャニスタに導くベーパ通路と、前記キャニスタを大気と連通させる大気通路と、前記キャニスタで吸着した蒸発燃料をエンジンの吸気管に導くパージ通路とを備える蒸発燃料処理装置であって、
前記キャニスタからパージ通路を通って前記エンジンの吸気管に至る気体の流れを発生させるパージポンプと、
前記パージ通路を流れる気体流量を調節する流量制御弁と、
前記パージポンプの動作時に、そのパージポンプの吐出側圧力の絶対値を入口側圧力の絶対値よりも小さくする圧力調整手段と、
を有する蒸発燃料処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した蒸発燃料処理装置では、パージ通路107に設けられたパージポンプ110を駆動させてキャニスタ102に吸着された蒸発燃料を空気により強制パージする構成である。このため、流量制御弁112より上流側のパージ通路107内の圧力が大気圧を超えることがある。パージ通路107内の圧力が大気圧を超えた状態でエンジンが停止すると、パージポンプ110が停止しても、パージ通路107と連通するキャニスタ102内の圧力が大気圧よりも高くなる。この結果、キャニスタ102内の蒸発燃料が大気通路105から大気に放散されるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、パージポンプを備える蒸発燃料処理装置において、キャニスタ内の蒸発燃料が大気通路から大気中に放散されないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。請求項1の発明は、蒸発燃料を吸着するキャニスタと、燃料タンク内で発生した蒸発燃料をキャニスタに導くベーパ通路と、前記キャニスタを大気と連通させる大気通路と、前記キャニスタで吸着した蒸発燃料をエンジンの吸気管に導くパージ通路とを備える蒸発燃料処理装置であって、前記キャニスタからパージ通路を通って前記エンジンの吸気管に至る気体の流れを発生させるパージポンプと、前記パージ通路を流れる気体流量を調節する流量制御弁と、前記パージポンプの動作時に、そのパージポンプの吐出側圧力の絶対値を入口側圧力の絶対値よりも小さくする圧力調整手段とを有する。
【0007】
本発明によると、圧力調整手段は、パージポンプの動作時に、そのパージポンプの吐出側圧力の絶対値を入口側圧力の絶対値よりも小さくする。即ち、圧力調整手段により、パージポンプの動作時に、パージポンプの吐出側における正圧の大きさをパージポンプの入口側における負圧の大きさよりも小さくできる。このため、パージポンプが停止して、パージポンプの吐出側における正圧と入口側における負圧とが打ち消し合った後、そのパージポンプの上流側、及び下流側は全体的に負圧となる。このため、パージポンプと連通しているキャニスタ内も負圧になる。この結果、キャニスタに吸着されている蒸発燃料が大気通路から大気中に放散されることがない。
【0008】
請求項2の発明によると、パージポンプは、流量制御弁の下流側でパージ通路に設置されており、圧力調整手段は、前記パージポンプの回転数を低下させる制御、又は前記エンジンの吸気管の負圧を増加させる制御、又は前記流量制御弁の開度を減少させる制御のうち少なくとも一つの制御を行なうことで、前記パージポンプの吐出側圧力の絶対値を入口側圧力の絶対値よりも小さくする。即ち、パージポンプの回転数を低下させることで、そのパージポンプの吐出側圧力(正圧)を低下させることができ、吐出側圧力の絶対値を入口側圧力の絶対値よりも小さくできる。また、エンジンの吸気管の負圧を増加させることで、その吸気管とパージ通路を介して連通するパージポンプの吐出側圧力(正圧)を低下させることができ、吐出側圧力の絶対値を入口側圧力の絶対値よりも小さくできる。また、流量制御弁の開度を減少させることで、その流量制御弁の下流側に設置されているパージポンプの入口側圧力(負圧)を増加させることができ、吐出側圧力の絶対値を入口側圧力の絶対値よりも小さくできる。
【0009】
請求項3の発明によると、パージポンプは、流量制御弁の上流側でパージ通路に設置されており、 圧力調整手段は、前記パージポンプの回転数を低下させる制御、又は前記エンジンの吸気管の負圧を増加させる制御、又は前記流量制御弁の開度を増加させる制御のうち少なくとも一つの制御を行なうことで、前記パージポンプの吐出側圧力の絶対値を入口側圧力の絶対値よりも小さくする。ここで、前記流量制御弁の開度を増加させて流量制御弁の圧損を小さくすると、流量制御弁の上流側でエンジンの吸気管の負圧の影響を受け易くなる。これにより、流量制御弁の上流側に設けられたパージポンプの吐出側圧力(正圧)が低下するようになる。この結果、パージポンプの吐出側圧力の絶対値を入口側圧力の絶対値よりも小さくできる。
【0010】
請求項4の発明によると、パージポンプの吐出側圧力の絶対値と入口側圧力の絶対値との差は、前記パージポンプの回転数と、エンジンの吸気管の圧力と、流量制御弁の開度とに基づいて作成されたマップにより推定される。これにより、パージポンプの吐出側と入口側とに圧力センサが不要になり、コスト低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、パージポンプを備える蒸発燃料処理装置において、キャニスタ内の蒸発燃料が大気通路から大気中に放散されるような不具合が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態1に係る蒸発燃料処理装置の全体構成図である。
【
図2】前記蒸発燃料処理装置のシステム構成図である。
【
図3】前記蒸発燃料処理装置のパージ通路における上流から下流までの圧力変化を表す模式図(バージポンプ停止時)である。
【
図4】前記蒸発燃料処理装置のパージ通路における上流から下流までの圧力変化を表す模式図(バージポンプ運転時)である。
【
図5】前記蒸発燃料処理装置における制御フローチャートである。
【
図6】前記蒸発燃料処理装置のパージ通路における上流から下流までの圧力変化を表す模式図(圧力調整手段が動作時)である。
【
図7】前記蒸発燃料処理装置のパージ通路における上流から下流までの圧力変化を表す模式図(圧力調整手段が動作時)である。
【
図8】前記蒸発燃料処理装置のパージ通路における上流から下流までの圧力変化を表す模式図(圧力調整手段が動作時)である。
【
図9】変更例に係る蒸発燃料処理装置のシステム構成図である。
【
図10】本発明の実施形態2に係る蒸発燃料処理装置のシステム構成図である。
【
図11】前記蒸発燃料処理装置のパージ通路における上流から下流までの圧力変化を表す模式図(バージポンプ停止時)である。
【
図12】前記蒸発燃料処理装置のパージ通路における上流から下流までの圧力変化を表す模式図(バージポンプ運転時)である。
【
図13】前記蒸発燃料処理装置のパージ通路における上流から下流までの圧力変化を表す模式図(圧力調整手段が動作時)である。
【
図14】前記蒸発燃料処理装置のパージ通路における上流から下流までの圧力変化を表す模式図(圧力調整手段が動作時)である。
【
図15】前記蒸発燃料処理装置のパージ通路における上流から下流までの圧力変化を表す模式図(圧力調整手段が動作時)である。
【
図16】パージポンプの吐出側圧力P1の絶対値│P1│と入口側圧力P2の絶対値│P2│との差と、パージポンプの回転数と、吸気管の圧力と、流量制御弁の開度との関係を表すマップ図である。
【
図17】変更例に係る蒸発燃料処理装置のシステム構成図である。
【
図18】従来の蒸発燃料処理装置のシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
以下、
図1から
図9に基づいて本発明の実施形態1に係る蒸発燃料処理装置20の説明を行なう。本実施形態の蒸発燃料処理装置20は、
図1に示すように、車両のエンジンシステム10に設けられており、車両の燃料タンク15内で発生した蒸発燃料が外部に漏れ出ないようにするための装置である。
【0014】
<蒸発燃料処理装置20の構造概要について>
蒸発燃料処理装置20は、
図1、
図2に示すように、キャニスタ22と、そのキャニスタ22に接続されたベーパ通路24、大気通路28、及びパージ通路26とを備えている。キャニスタ22は、燃料タンク15内で発生した蒸発燃料を吸着する装置であり、そのキャニスタ22の容器内部に吸着材としての活性炭(図示省略)が装填されている。ベーパ通路24は、燃料タンク15内の蒸発燃料をキャニスタ22に導く通路であり、そのベーパ通路24の一端部(上流側端部)が燃料タンク15内の気層部と連通されている。また、ベーパ通路24の他端部(下流側端部)がキャニスタ22内と連通されている。大気通路28は、キャニスタ22を大気と連通させる通路であり、基端部側がキャニスタ22に接続されており、先端側が燃料タンク15の給油口15hの近傍位置で大気開放されている。ここで、大気通路28の途中には、エアフィルタ28aが介装されている。
【0015】
パージ通路26は、キャニスタ22で吸着した蒸発燃料をエンジン14の吸気管16に導くための通路であり、そのパージ通路26の一端部(上流側端部)がキャニスタ22内と連通されている。そして、パージ通路26の他端部(下流側端部)がエンジン14の吸気管16におけるスロットルバルブ17よりも下流側通路部と連通されている。パージ通路26には、上流側に流量制御弁26v、下流側にパージポンプ26pが設置されており、そのパージポンプ26pの吐出側と入口側とに第1圧力センサ26sと第2圧力センサ26yとがそれぞれ設けられている。パージポンプ26pは、エンジン14の運転中にキャニスタ22からパージ通路26を通ってエンジン14の吸気管16に至る気体の流れを発生させるポンプであり、エンジンコントロールユニット19(以下、ECU19という)からの信号に基づいて動作する。第1圧力センサ26sと第2圧力センサ26yとはパージポンプ26pの吐出側と入口側との圧力を検出するセンサであり、圧力検出信号をECU19に伝送する。流量制御弁26vは、パージポンプ26pの動作時にパージ通路26を流れる気体の流量を調節する制御弁であり、ECU19からの信号に基づいて動作する。
【0016】
<蒸発燃料処理装置20の動作概要について>
車両のエンジン14の停止中は、流量制御弁26vが閉弁してパージ通路26が遮断されている。さらに、パージポンプ26pが停止している。このため、燃料タンク15内で発生した蒸発燃料がベーパ通路24によりキャニスタ22に導かれ、その蒸発燃料がキャニスタ内の吸着材に吸着されるようになる。次に、エンジン14が駆動されると、所定のパージ条件が成立する場合に、ECU19がキャニスタ22の吸着材に吸着されている蒸発燃料をパージさせる制御を実行する。
【0017】
即ち、この制御では、パージポンプ26pが駆動されるとともに、流量制御弁26vが開弁制御される。これにより、パージポンプ26pの入口側(上流側)で生じた負圧がパージ通路26を介してキャニスタ22内に作用し、キャニスタ22内が負圧になる。これにより、キャニスタ22内に大気通路28から空気が流入するようになる。さらに、キャニスタ22内に燃料タンク15内の気体が流入して、燃料タンク15の圧抜きが行なわれる。キャニスタ22内に流入した空気等は吸着材に吸着されている蒸発燃料をパージし、その蒸発燃料と共にパージ通路26、流量制御弁26vを通ってパージポンプ26pに導かれる。そして、蒸発燃料を含む空気等がパージポンプ26pで加圧され、パージ通路26の下流端からエンジン14の吸気管16に供給される。即ち、キャニスタ22の吸着材から離脱した蒸発燃料は空気と共にエンジン14の吸気管16に導かれて、エンジン14内で燃焼される。ここで、ECU19に基づいて流量制御弁26vの開度調整が行なわれることで、エンジン14に供給される混合気の空燃比が制御される。
【0018】
<パージ通路26内の圧力について>
次に、
図3、
図4に基づいて、エンジン14の駆動中に、流量制御弁26vが所定開度で開いている場合のパージ通路26内の圧力について説明する。ここで、
図3、
図4等では、横軸にパージ通路26における吸気管16からの距離を表している。即ち、横軸の左端がパージ通路26と吸気管16との接続位置であり、横軸の右方向がパージ通路26の上流側を表している。また、縦軸には、パージ通路26内の圧力を表している。パージポンプ26pが停止しているときは、
図3に示すように、パージポンプ26pの吐出側で正圧が発生していないため、パージ通路26内の圧力はエンジン14の吸気管16内の負圧による影響で負圧となる。なお、流量制御弁26vの上流側と下流側間には、流量制御弁26vの圧損による差圧が生じている。この状態で、パージポンプ26pが運転されると、
図4に示すように、パージポンプ26pの吐出側が正圧(P1>0kPa)となり、パージポンプ26pの入口側が負圧(P2<0kPa)となる。
【0019】
即ち、上記したように、パージ通路26の流量制御弁26vを通ってパージポンプ26pに導かれた蒸発燃料を含む空気等がパージポンプ26pで加圧され、パージ通路26の下流側端部からエンジン14の吸気管16に供給される。このとき、エンジン14の吸気管16内の負圧がパージポンプ26pの吐出側に加わったとしても、パージポンプ26pの近傍ではパージ通路26内の圧力が正圧になる。そして、
図4に示すように、パージポンプ26pの吐出側圧力P1(正圧)の絶対値│P1│がパージポンプ26pの入口側圧力P2(負圧)の絶対値│P2│よりも大きい状態で、エンジン14、及びパージポンプ26pが停止すると、パージポンプ26pの吐出側圧力P1(正圧)と入口側圧力P2(負圧)とが打ち消し合った後、パージ通路26内の圧力が正圧となる。これにより、パージ通路26と連通するキャニスタ22内の圧力が正圧となる。この結果、キャニスタ22内の蒸発燃料が大気通路28から外部に放散されるおそれがある。これを防止するため、ECU19では、メモリに格納されているプログラムに基づいて、
図5のフローチャートに示す処理が実行される。
【0020】
即ち、パージポンプ26pの運転中(
図5 ステップS101 YES)、パージポンプ26pの吐出側圧力P1が正圧(P1>0kPa)の場合には(ステップS102 YES)、ステップS103でパージポンプ26pの吐出側圧力P1の絶対値│P1│と入口側圧力P2の絶対値│P2│とが比較される。そして、絶対値│P1│>絶対値│P2│の場合には(ステップS103 YES)、ステップS104で絶対値│P1│を絶対値│P2│より小さくする圧力調整制御(後記する)が行なわれる。また、絶対値│P1│<絶対値│P2│の場合には(ステップS103 NO)、処理を終了する。絶対値│P1│<絶対値│P2│の場合は、パージポンプ26pにおける吐出側圧力P1の正圧の大きさがパージポンプ26pにおける入口側圧力P2の負圧の大きさよりも小さくなる。これにより、エンジン14、及びパージポンプ26pが停止すると、吐出側圧力P1(正圧)と入口側圧力P2(負圧)とが打ち消し合った後、パージ通路26内の圧力が負圧となる。これにより、パージ通路26と連通するキャニスタ22内の圧力が負圧となる。この結果、キャニスタ22内の蒸発燃料が大気通路28から外部に放散されることがなくなる。
【0021】
<圧力調整制御について>
圧力調整制御は、上記したように、パージポンプ26pの吐出側圧力P1の絶対値│P1│がパージポンプ26pの入口側圧力の絶対値│P2│よりも大きくなった場合に実施される(
図5 ステップS104)。圧力調整制御としては、パージポンプ26pの回転数Nを低下させる制御、流量制御弁26vの弁開度を減少させる制御、あるいはエンジン14の吸気管16の負圧を増加させる制御が行なわれる。
【0022】
パージポンプ26pの回転数Nを低下させる制御では、
図6に示すように、ECU19はパージポンプ26pの駆動用モータに印加する電圧を低下させる制御を行なう。これにより、駆動用モータの回転数が低下し、パージポンプ26pの回転数Nが低下するようになる。パージポンプ26pの回転数Nが低下すると、
図6の実線に示すように、パージポンプ26pの吐出側圧力P1が低下するため、絶対値│P1│が小さくなる。また、パージポンプ26pの入口側では負圧が若干減少して、絶対値│P2│が小さくなるが、結果的には絶対値│P2│>絶対値│P1│となる。
【0023】
また、ECU19が流量制御弁26vの弁開度を減少させる制御を行なうと、
図7に示すように、流量制御弁26vにおける圧損が大きくなり、気体が流量制御弁26vを通過し難くなる。これにより、流量制御弁26vの下流側に設けられたパージポンプ26pの入口側の負圧が増大する。即ち、パージポンプ26pの入口側圧力P2の絶対値│P2│が増加する。そして、これに伴いパージポンプ26pの吐出側圧力P1の絶対値│P1│が減少する。この結果、絶対値│P2│>絶対値│P1│となる。
【0024】
また、ECU19がエンジン14の吸気管16の負圧を増加させる制御を行なうと、
図8に示すように、その吸気管16と連通するパージ通路26内の負圧も増加する。これにより、パージポンプ26pの吐出側圧力P1の絶対値│P1│が減少し、パージポンプ26pの入口側圧力P2の絶対値│P2│が増加するようになる。この結果、絶対値│P2│>絶対値│P1│となる。ここで、エンジン14の吸気管16の負圧を増加させる制御としては、排気再循環システム(EGR)における排気ガスの循環量を減少させたり、排気ガスの循環タイミングを変えること、あるいはエンジン14の回転数を増加することが行なわれる。ここで、圧力調整制御としては、パージポンプ26pの回転数Nを低下させる制御、流量制御弁26vの弁開度を減少させる制御、あるいはエンジン14の吸気管16の負圧を増加させる制御のいずれか一つを行なっても良いし、いずれかの制御を組み合わせて行なっても良い。また、上記した三つの制御を同時に行なっても良い。即ち、ECU19の圧力調整制御が本発明の圧力調整手段に相当する。
【0025】
<本実施形態に係る蒸発燃料処理装置20の長所>
本実施形態に係る蒸発燃料処理装置20によると、ECU19の圧力調整制御(圧力調整手段)により、パージポンプ26pの動作時に、そのパージポンプ26pの吐出側圧力P1の絶対値│P1│を入口側圧力P2の絶対値│P2│よりも小さくすることができる。即ち、パージポンプ26pの動作時に、パージポンプ26pの吐出側における正圧の大きさをパージポンプの入口側における負圧の大きさよりも小さくできる。このため、パージポンプ26pの停止時に、パージポンプ26pの吐出側における正圧と入口側における負圧とが打ち消し合った後、そのパージポンプ26pの上流側、及び下流側は全体的に負圧となる。このため、パージポンプ26pと連通しているキャニスタ22内も負圧になる。この結果、キャニスタ22に吸着されている蒸発燃料が大気通路28から大気中に放散されることがなくなる。
【0026】
<変更例>
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、過給器を有しないエンジン14における蒸発燃料処理装置20について例示したが、
図9に示すように、過給器を備えるエンジン14の蒸発燃料処理装置20に本発明を適用することも可能である。この場合、パージポンプ26pの下流側では、パージ通路26が第1通路261と第2通路262とに分岐されており、第1通路261がスロットルバルブの下流側で吸気管16と接続されている。また、第2通路262が過給器の上流側で吸気管16と接続されている。そして、第1通路261に第1逆止弁261vが装着されており、第2通路262に第2逆止弁262vが装着されている。上記構成により、過給器が駆動されると、スロットルバルブの下流側の吸気管16内の圧力が正圧になり、第1通路261の第1逆止弁261vが閉鎖される。これにより、パージポンプ26pから吐出された気体は、第2通路262の第2逆止弁262vを通過して過給器の上流側の吸気管16に導かれる。また、過給器が停止しているときは、パージポンプ26pから吐出された気体は、吸気管16内の負圧の影響が大きい第1通路261の第1逆止弁261vを通ってスロットルバルブの下流側に導かれる。なお、第1逆止弁261v、第2逆止弁262vの代わりに、第1電磁弁、第2電磁弁を使用し、第1電磁弁、第2電磁弁がそれぞれ第1逆止弁261v、第2逆止弁262vと同様に開閉動作するように、ECU19により第1電磁弁、第2電磁弁を開閉制御することも可能である。
【0027】
[実施形態2]
次に、
図10から
図15に基づいて本発明の実施形態2に係る蒸発燃料処理装置40の説明を行なう。本実施形態の蒸発燃料処理装置40は、
図10に示すように、実施形態1における蒸発燃料処理装置20のパージポンプ26pの下流側に流量制御弁26vを配置したものであり、その他の構成については実施形態1の蒸発燃料処理装置20と同様である。即ち、本実施形態に係る蒸発燃料処理装置40では、エンジン14の吸気管16とパージポンプ26p間のパージ通路26に流量制御弁26vが設置されている。
【0028】
このため、
図11、
図12に示すように、流量制御弁26vの下流側では、パージ通路26内の圧力は、パージポンプ26pの停止中(
図11参照)、あるいはパージポンプ26pの運転中(
図12参照)に係わらず、エンジン14の吸気管16内の負圧の影響を受けて常に負圧となる。しかし、パージポンプ26pの運転中、流量制御弁26vの上流側では、
図12に示すように、パージポンプ26pの吐出側圧力P1の絶対値│P1│が入口側圧力P2の絶対値│P2│よりも大きくなる場合がある。このときには、上記した圧力調整制御が行なわれる。圧力調整制御としては、パージポンプ26pの回転数Nを低下させる制御、流量制御弁26vの弁開度を増加させる制御、あるいはエンジン14の吸気管16の負圧を増加させる制御が行なわれる。ここで、パージポンプ26pの回転数Nを低下させる制御(
図13参照)、及びエンジン14の吸気管16の負圧を増加させる制御(
図15参照)は、実施形態1で説明した内容と同様であるため、説明を省略する。
【0029】
ECU19が流量制御弁26vの弁開度を増加させる制御を行なうと、
図14に示すように、流量制御弁26vにおける圧損が小さくなり、流量制御弁26vの上流側で吸気管16内の負圧の影響を受け易くなる。これにより、流量制御弁26vの上流側に設けられたパージポンプ26pの吐出側圧力P1が低下するようになる。即ち、パージポンプ26pの吐出側圧力P1の絶対値│P1│が小さくなる。この結果、絶対値│P1│<絶対値│P2│となる。これにより、エンジン14、及びパージポンプ26pが停止すると、吐出側圧力P1(正圧)と入口側圧力P2(負圧)とが打ち消し合った後、パージ通路26内の圧力が負圧となる。この結果、キャニスタ22内の蒸発燃料が大気通路28から外部に放散されることがなくなる。
【0030】
<変更例>
ここで、実施形態1、2では、パージポンプ26pの吐出側と入口側とに圧力センサ26s,26yを設け、圧力センサ26s,26yにより吐出側圧力P1と入口側圧力P2とを検知する例を示した。しかし、
図16に示すように、パージポンプ26pの回転数Nと、エンジン14の吸気管16の圧力(負圧)と、流量制御弁26vの開度(%)との関係を表すマップを予め作成しておき、前記マップから絶対値│P1│と絶対値│P2│との差(│P2│−│P1│)を推定することも可能である。即ち、│P2│−│P1│>0であれば、絶対値│P1│<絶対値│P2│となり、パージポンプ26pの停止後、パージ通路26、及びそのパージ通路26と連通するキャニスタ22内は負圧になる。
【0031】
例えば、
図16において、流量制御弁26vの開度(%)が一定の場合、エンジン14の吸気管16内の負圧が−Pe2(kPa)のときには、パージポンプ26pの回転数をN1からN2まで低下させることで、│P2│−│P1│>0にすることができる。また、パージポンプ26pの回転数をN1に保持した状態で、エンジン14の吸気管16内の負圧を−Pe3(kPa)まで増加させることで、│P2│−│P1│>0にすることができる。さらに、エンジン14の吸気管16内の負圧が減少して−Pe1(kPa)になった場合には、パージポンプ26pの回転数をN3まで低下させることで、│P2│−│P1│>0にすることができる。このように、
図16に示すマップを使用することで、圧力センサ26s,26yを省略することができ、コスト低減を図ることができる。
【0032】
ここで、
図16では、流量制御弁26vの開度(%)が一定で、パージポンプ26pの回転数Nとエンジン14の吸気管16内の負圧との関係から│P2│−│P1│>0を推定するマップを例示した。しかし、例えば、吸気管16内の負圧が一定で、パージポンプ26pの回転数Nと流量制御弁26vの開度(%)との関係から│P2│−│P1│>0を推定するマップを作成することも可能である。また、実施形態2では、過給器を有しないエンジン14における蒸発燃料処理装置40について例示したが、
図17に示すように、過給器を備えるエンジン14の蒸発燃料処理装置40に本発明を適用することも可能である。また、実施形態1、2では、
図1、
図2、及び
図10に示すように、パージ通路26とベーパ通路24とをキャニスタ22を介して連通させる例を示した。しかし、
図2、
図10の点線に示すように、パージ通路26とベーパ通路24とを直接的に接続する構成でも可能である。