【実施例1】
【0019】
各フィルタについて減衰特性をシミュレーションした。
図1(a)および
図1(b)は、それぞれフィルタA(比較例1)およびフィルタB(実施例1)の回路図である。
図1(a)に示すように、フィルタAは、直列共振器S1、並列共振器P1およびP2、並びに共振回路R21およびR22を有する。直列共振器S1は、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に直列に接続されている。並列共振器P1およびP2は、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に並列に接続されている。共振回路R21およびR22は、それぞれ並列共振器P1およびP2のグランド端子とグランドとの間に接続されている。
【0020】
共振回路R21は、インダクタL21およびキャパシタC21を有する。インダクタL21とキャパシタC21は、並列共振器P1のグランド端子とグランドとの間に電気的に接続されている。共振回路R22は、インダクタL22およびキャパシタC22を有する。インダクタL22とキャパシタC22は、並列共振器P2のグランド端子とグランドとの間に電気的に接続されている。
【0021】
図1(b)に示すように、フィルタBにおいては、共振回路R21およびR22はそれぞれインダクタL31およびL32を備える。インダクタL31は、キャパシタC21と直列に接続され、インダクタL21に並列に接続されている。インダクタL32は、キャパシタC22と直列に接続され、インダクタL22に並列に接続されている。その他の構成はフィルタAと同じであり説明を省略する。
【0022】
シミュレーションに用いたフィルタAおよびBの各インダクタおよびキャパシタのインダクタンスおよびキャパシタンスは以下である。フィルタAとして、共振回路R21のC21およびL21が異なるフィルタA1およびA2についてシミュレーションした。
フィルタA1:
共振回路R21:C21=0.85pF、L21=0.33nH
共振回路R22:C22=10pF、L22=0.32nH
フィルタA2:
共振回路R21:C21=13.45pF、L21=0.126nH
共振回路R22:C22=10pF、L22=0.32nH
フィルタB:
共振回路R21:C21=0.85pF、L21=0.33nH、L31=1.8nH
共振回路R22:C22=10pF、L22=0.32nH、L32=0.001nH
フィルタA1、A2、BのC22およびL22は同じである。フィルタA1のC21およびL21はフィルタBと同じである。フィルタA2はフィルタBと減衰極の周波数が一致するように、フィルタA1からC21およびL21を変更している。
【0023】
図2(a)および
図2(b)は、フィルタAおよびBの減衰特性を示す図である。
図2(b)は、
図2(a)より広帯域な図である。
図2(a)および
図2(b)に示すように、フィルタA1、A2およびBの通過帯域PB1は約2GHzである。フィルタA1、A2およびBの共振回路R22により約2.6GHzに減衰極AP1が形成される。フィルタA1では、共振回路R21により約5.7GHzに減衰極AP2´が形成される。フィルタA2では、共振回路R21のC21およびL21を変更したことにより、減衰極AP2´の周波数が約3.5GHzとなり減衰極AP2が形成される。フィルタBでは、共振回路R21およびR22がインダクタL31およびL32を有することにより、減衰極AP2に加え周波数が約11.5GHzの減衰極AP3が形成される。フィルタBでは、フィルタA2に比べ約4GHz以上で減衰量が大きくなる。
【0024】
フィルタBにおいて、L31を大きくすると減衰極AP1は変化しないが、減衰極AP2およびAP3は低周波数に移動する。L31を小さくすると減衰極AP1は変化しないが、減衰極AP2およびAP3は高周波数に移動する。L32を大きくすると減衰極AP2は変化しないが、減衰極AP1およびAP3は低周波数に移動する。L32を小さくすると減衰極AP2は変化しないが、減衰極AP1およびAP3は高周波数に移動する。これにより、減衰極AP1は、主に共振回路R22により形成され、減衰極AP2は、主に共振回路R21により形成されている。減衰極AP3は、主にL31およびL32により形成されていると考えられる。
【0025】
このように、フィルタBでは、フィルタA2に対し減衰極AP1およびAP2の減衰特性を変化させずに、減衰極を増やすことができる。
【0026】
図3は、フィルタC(実施例1の変形例1)の回路図である。
図3に示すように、フィルタCでは、並列共振器P1のグランド端子と共振回路R21との間のノードN1と、並列共振器P2のグランド端子と共振回路R22との間のノードN2と、の間に、共振回路R1が接続されている。共振回路R1は、ノードN1とN2との間に直列に接続されたキャパシタC1およびインダクタL1を備える。その他の構成は、フィルタA1と同じであり説明を省略する。
【0027】
シミュレーションに用いたフィルタCの各インダクタおよびキャパシタのインダクタンスおよびキャパシタンスは以下である。
フィルタC:
共振回路R21:C21=0.85pF、L21=0.33nH
共振回路R22:C22=10pF、L22=0.32nH
共振回路R1:C1=0.34pF、L1=2.1nH
フィルタCの共振回路R21およびR22の各キャパシタンスおよびインダクタンスはフィルタA1と同じである。
【0028】
図4(a)および
図4(b)は、フィルタAおよびCの減衰特性を示す図である。
図4(b)は、
図4(a)より広帯域な図である。
図4(a)および
図4(b)に示すように、フィルタCでは、フィルタA1の減衰極
AP2´が約4.4GHzの減衰極AP4と約7.8GHzの減衰極AP5の2つになる。
【0029】
フィルタCにおいて、C1を大きくすると減衰極AP1は変化しないが、減衰極AP4およびAP5は低周波数に移動する。C1を小さくすると減衰極AP1は変化しないが、減衰極AP4およびAP5は高周波数に移動する。L1を大きくすると減衰極AP1は変化しないが、減衰極
AP4および
AP5は低周波数に移動する。L1を小さくすると減衰極AP1は変化しないが、減衰極
AP4および
AP5は高周波数に移動する。これにより、減衰極
AP4および
AP5は、主に共振回路R1により形成されていると考えられる。
【0030】
このように、フィルタCでは、フィルタA1に対し、減衰極を増やすことができる。新たに形成される減衰極AP4およびAP5は減衰極
AP2´以上に急峻な減衰特性となる。
【0031】
図5は、フィルタD(実施例1の変形例2)の回路図である。
図5に示すように、フィルタDでは、並列共振器P1のグランド端子と共振回路R21との間のノードN1と、並列共振器P2のグランド端子と共振回路R22との間のノードN2と、の間に、共振回路R1が接続されている。共振回路R1は、ノードN1とN2との間に直列に接続されたキャパシタC1およびインダクタL1を備える。その他の構成は、フィルタBと同じであり説明を省略する。
【0032】
シミュレーションに用いたフィルタDの各インダクタおよびキャパシタのインダクタンスおよびキャパシタンスは以下である。
フィルタD:
共振回路R21:C21=0.85pF、L21=0.33nH、L31=1.8nH
共振回路R22:C22=10pF、L22=0.32nH、L32=0.001nH
共振回路R1:C1=0.34pF、L1=2.1nH
フィルタDの共振回路R21およびR22の各キャパシタンスおよびインダクタンスはフィルタA1と同じである。フィルタDの共振回路R1のC1およびL1はフィルタCと同じである。
【0033】
図6(a)および
図6(b)は、フィルタAおよびDの減衰特性を示す図である。
図6(b)は、
図6(a)より広帯域な図である。
図6(a)および
図6(b)に示すように、フィルタDでは、フィルタA1の減衰極
AP2´が約12.5GHzの減衰極AP3、約3.5GHzの減衰極AP4および約5.4GHzの減衰極AP5の3つになる。
【0034】
フィルタDにおいて、L31を大きくすると減衰極AP1は変化しないが、減衰極AP3からAP5は低周波数に移動する。L31を小さくすると減衰極AP1は変化しないが、減衰極AP3からAP5は高周波数に移動する。L32を大きくすると減衰極AP4は変化しないが、減衰極AP1、AP3およびAP5は低周波数に移動する。L32を小さくすると減衰極AP4は変化しないが、減衰極AP1、AP3およびAP5は高周波数に移動する。C1を大きくすると減衰極AP1は変化しないが、減衰極AP3からAP5は低周波数に移動する。C1を小さくすると減衰極AP1は変化しないが、減衰極AP3からAP5は高周波数に移動する。L1を大きくすると減衰極AP1およびAP4は変化しないが、減衰極AP3およびAP5は低周波数に移動する。L1を小さくすると減衰極AP1およびAP4は変化しないが、減衰極AP3およびAP5は高周波数に移動する。これにより、減衰極AP3からAP5は、主に共振回路R1およびインダクタL31およびL32から形成されていると考えられる。
【0035】
このように、フィルタDでは、フィルタA1に対し減衰極を2つ増やすことができる。
【0036】
次に、共振回路R21を共振器に置き換えた場合についてシミュレーションした。
図7(a)および
図7(b)は、それぞれ並列腕AおよびBの回路図である。
図7(a)に示すように、並列腕Aは、フィルタBの並列共振器P1を有する並列腕である。
図7(b)に示すように、並列腕Bは、共振回路R21´を有する。共振回路R21´は、インダクタL31を有さず、インダクタL21に直列にキャパシタC31が接続されている。共振回路R21´は、弾性波共振器の等価回路に相当する。その他の構成は並列腕Aと同じであり、説明を省略する。
【0037】
シミュレーションに用いた並列腕AおよびBの各インダクタおよびキャパシタのインダクタンスおよびキャパシタンスは以下である。
並列腕A:
共振回路R21:C21=0.85pF、L21=0.33nH、L31=1.8nH
並列腕B:
共振回路R21´:C21=0.85pF、L21=0.8nH、C31=10.3pF
【0038】
図8(a)および
図8(b)は、並列腕AおよびBの減衰特性を示す図である。
図8(b)は、
図8(a)より広帯域な図である。
図8(a)および
図8(b)に示すように、並列腕AおよびBともに、約1.8GHzに並列共振器P1に起因する減衰極AP0および約3.6GHzに共振回路R21およびR21´に起因した減衰極AP2が形成されている。並列腕Aでは、約10.5GHzに減衰極AP3が形成されている。並列腕Aにおける減衰極AP2の減衰特性は、並列腕Bに比べ急峻である。
【0039】
このように、並列腕Bは並列腕Aに比べ形成される減衰極が少ない。また、減衰極の減衰特性が緩い。これにより、フィルタBの共振回路R21を弾性波共振器に置き換えても、フィルタBのように減衰極を増やすことができない。
【0040】
図9(a)から
図10(b)は、実施例1の別の変形例に係るフィルタEからIを示す回路図である。
図9(a)に示すように、フィルタにおいては、フィルタDに比べ、共振回路R21およびR22は設けられていない。その他の構成はフィルタDと同じであり、説明を省略する。フィルタEのように、共振回路R21およびR22の少なくとも1つは設けられていなくてもよい。
【0041】
図9(b)に示すように、フィルタFにおいては、フィルタDに比べ、共振回路R21およびR22が共振回路R21´およびR22´に置き換わっている。共振回路R21´およびR22´では、それぞれインダクタL31およびL32が設けられておらず、キャパシタC31およびC32がインダクタL21およびL22に直列に接続されている。その他の構成はフィルタDと同じであり、説明を省略する。フィルタFのように、共振回路R21およびR22の少なくとも1つは共振回路R21´およびR22´でもよい。
【0042】
図9(c)に示すように、フィルタGにおいては、フィルタDに比べ、共振回路R22にインダクタL32が設けられていない。その他の構成はフィルタDと同じであり、説明を省略する。フィルタGのように、共振回路R21およびR22の少なくとも1つにおいてインダクタL31およびL32は設けられていなくてもよい。
【0043】
図10(a)に示すように、フィルタHにおいては、フィルタDに比べ、共振回路R1にインダクタL1が設けられていない。その他の構成はフィルタDと同じであり、説明を省略する。フィルタHのように、共振回路R1にインダクタL1は設けられていなくてもよい。
【0044】
図10(b)に示すように、フィルタIにおいては、フィルタDに比べ、共振回路R1にキャパシタC1が設けられていない。その他の構成はフィルタDと同じであり、説明を省略する。フィルタIのように、共振回路R1にキャパシタC1は設けられていなくてもよい。
【0045】
実施例1によれば、フィルタCからGのように、インダクタL1(第1インダクタ)は、ノードN1とN2間に直列に接続されている。キャパシタC1(第1キャパシタ)は、ノードN1とN2間に、インダクタL1と直列に接続されている。これにより、通過特性を劣化させることなく、減衰特性の急峻な減衰極を形成することができる。
【0046】
直列共振器S1は複数設けられていてもよい。また、並列共振器P1およびP2は3以上設けられていてもよい。直列共振器S1および並列共振器P1からP2は、例えば弾性波表面共振器、弾性波境界波共振器、ラブ波共振器および圧電薄膜共振器等の弾性波共振器とすることができる。
【0047】
並列共振器が3以上設けられている場合、インダクタL1およびキャパシタC1は、複数の並列共振器のうち少なくとも2つの並列共振器とグランドとの間にそれぞれ位置する少なくとも2つのノード間に接続されていればよい。すなわち、共振回路R1は複数設けられていてもよい。また、複数の並列共振器の一部の並列共振器がノードN1またはN2において共通に接続されていてもよい。
【0048】
また、インダクタL21およびL22(第2インダクタ)は、それぞれノードN1およびN2とグランドとの間に直列に接続されている。キャパシタC21およびC22(第2キャパシタ)は、ノードN1およびN2とグランドとの間にインダクタL21およびL22と並列に接続されている。これにより、
図4(a)および
図4(b)のフィルタCのように、減衰特性の急峻な減衰極を複数形成することができる。
【0049】
共振回路R21およびR22は、いずれか一方のみ設けられていてもよい。共振回路R21およびR22はいずれも設けられていてもよい。すなわち、共振回路R1が接続されるノードのうち少なくとも1つのノードとグランドとの間に、インダクタL21およびL22並びにキャパシタC21およびC22が接続されていればよい。
【0050】
減衰極を多く形成するため、共振回路R21およびR22は、両方設けられていることが好ましい。すなわち、共振回路R1が接続されるノードのそれぞれのノードとグランドとの間に、インダクタL21およびL22並びにキャパシタC21およびC22が接続されていることが好ましい。
【0051】
さらに、インダクタL31およびL32は、それぞれノードN1およびN2とグランドとの間にインダクタL21およびL22と並列に、かつキャパシタC21およびC22と直列に接続されている。これにより、
図6(a)および
図6(b)のフィルタDのように、減衰特性の急峻な減衰極をさらに多く形成することができる。
【0052】
インダクタL31および
L32は、共振回路R1が接続されるノードのうち少なくとも1つのノードとグランドとの間に接続されていればよい。また、インダクタL31および
L32は、共振回路R1が接続されるノードのそれぞれのノードとグランドとの間に接続されていることが好ましい。
【0053】
また、フィルタB、HおよびIのように、インダクタL1およびキャパシタC1の少なくとも一方は設けられておらず、インダクタL31およびL32が設けられていてもよい。これにより、
図2(a)および
図2(b)のフィルタBのように、減衰特性の急峻な減衰極を複数形成することができる。
【実施例2】
【0054】
実施例2は、バンド2(送信帯域:1850−1910GHz、受信帯域:1930−1990GHz)の送信フィルタの例である。
図11(a)は、実施例2に係る送信フィルタを有するデュプレクサを示すブロック図であり、
図11(b)は、実施例2に係る送信フィルタの回路図である。
【0055】
図11(a)に示すように、アンテナ端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ80が接続され、アンテナ端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ82が接続されている。送信フィルタ80は、送信端子Txから入力した信号のうち送信帯域の信号をアンテナ端子Antに出力する。受信フィルタ82は、アンテナ端子Antに入力した信号のうち受信帯域の信号を受信端子Rxに出力する。
【0056】
図11(b)に示すように、送信フィルタ80において、送信端子Txとアンテナ端子Antとの間に直列共振器S1からS4が直列に接続され、並列共振器P1からP3が並列に接続されている。直列共振器S2およびS4はそれぞれ2分割および3分割されている。並列共振器P1およびP2は共通にノードN1に接続されている。その他の構成はフィルタDと同じであり説明を省略する。
【0057】
図12は、実施例2に係るラダー型フィルタの断面図である。
図12に示すように、フィルタチップ20および21およびチップ部品22が配線基板10上に搭載されている。配線基板10はマザーボード29上に搭載されている。フィルタチップ20には、直列共振器S1からS4および並列共振器P1からP3が形成されている。直列共振器S1からS4および並列共振器P1からP3は、弾性表面波共振器である。配線基板10は、複数の層11から17が積層し形成されている。複数の層11から17は、樹脂またはセラミックからなる絶縁層である。層11
から17の上面および下面には金属層が形成されている。また、層11
から17を貫通する貫通電極が形成されている。配線基板10の上面にはパッド24が形成されている。パッド24には、半田または金バンプ23を用いフィルタチップ20および21がフリップチップマウントされている。パッド24にはチップ部品22が搭載されている。配線基板10の下面にはフットパッド26が形成されている。マザーボード29の上面に形成されたパッド28とフットパッド26とは半田27を用い接続されている。
【0058】
図13(a)から
図16(b)は、配線基板の各層の平面図である。
図13(a)から
図16(a)は、それぞれ層11から17の上面を示す。
図16(b)は、層17の下面を上から透視した図である。各層11から17の上面および下面には、金属層30が形成されている。各層11から17を貫通する貫通電極32が形成されている。金属層30に上から接続する貫通電極32を円内の上向きの三角▲で示し、下から接続する貫通電極32を円内の下向きの三角▼で示す。金属層30に上および下から接続する貫通電極32を円内のひし形◆で示す。金属層30および貫通電極32は、金層または銅層等の金属層により形成されている。なお、送信フィルタ80に接続する金属層30以外の金属層30は図示を簡略化している。
【0059】
図13(a)に示すように、層11の上面にフィルタチップ20、21およびチップ部品22が搭載されている。金属層30により、送信パッドPtx、アンテナパッドPant、グランドパッドG1およびG2、並びにグランド配線Gndが形成されている。送信パッドPtx、アンテナパッドPant、グランドパッドG1およびG2は、
図12のパッド24に相当し、それぞれフィルタチップ20のうち
図11(b)の送信端子Tx、アンテナ端子Ant、ノードN1およびN2に相当するパッドに接続されている。グランド配線Gndはグランド電位が供給される配線である。チップ部品22はチップコンデンサであり、キャパシタC22に相当する。金属層30によりインダクタL32の一部が形成されている。
図13(b)に示すように、層12の上面には、金属層30によりグランド配線Gndが形成されている。
【0060】
図14(a)に示すように、層13の上面には、金属層30によりインダクタL1、L22およびL31の一部、キャパシタC1およびC21の電極、並びにグランド配線Gndが形成されている。
図14(b)に示すように、層14の上面には、金属層30によりインダクタL1、L21およびL22の一部、キャパシタC1の電極が形成されている。
図15(a)および
図15(b)に示すように、層15および16の上面には、金属層30によりインダクタL1の一部、キャパシタC1の電極および並びにグランド配線Gndが形成されている。
【0061】
図16(a)に示すように、層17の上面には、金属層30によりグランド配線Gndが形成されている。
図16(b)に示すように、層17の下面には、金属層30により、
図12のフットパッド26に相当する送信フットパッドFtx、アンテナフットパッドFantおよびグランドフットパッドFgndが形成されている。
【0062】
実施例2に係るラダー型フィルタの減衰特性をシミュレーションした。シミュレーションに用いた各インダクタおよびキャパシタのインダクタンスおよびキャパシタンスは以下である。
共振回路R1:C1=0.75pF、L1=1.0nH
共振回路R21:C21=1.2pF、L21=0.33nH、L31=1.3nH
共振回路R22:C21=10pF、L21=0.15nH、L31=0.001nH
比較例2として、共振回路R1、インダクタL31およびL32を設けないラダー型フィルタについてもシミュレーションした。
【0063】
図17は、実施例2および比較例2に係るラダー型フィルタの減衰特性を示す図である。
図17に示すように、実施例2では、通過帯域PB1の高周波側に減衰極AP6からAP8を形成できる。減衰極AP6からAP8は、それぞれ無線LAN(Local Area Network)、通過帯域の2倍波および通過帯域の3倍波に対応する。このように、任意の周波数に複数の減衰極を形成できる。
【0064】
実施例2に係るラダー型フィルタを送信フィルタ80とし、バンド2用の受信フィルタ82を用いたデュプレクサについてシミュレーションした。
図18(a)から
図18(c)は、実施例2および比較例2のデュプレクサ特性を示す図である。
図18(a)は通帯域付近の通過特性を示し、
図18(b)は送信端子Txから受信端子Rxへのアイソレーション特性を示し、
図18(c)は、通過帯域近傍の送信フィルタの通過特性を示す。
【0065】
図18(a)から
図18(c)に示すように、実施例2の通過帯域近傍の通過特性およびアイソレーション特性は比較例2とほとんど同程度である。
【0066】
このように、実施例2では、比較例2に対し通過帯域近傍の通過特性及びアイソレーション特性の劣化をともなうことなく、急峻な減衰極を複数形成することができる。
【0067】
共振回路R1、R21およびR22のインダクタの少なくとも1つは、配線基板10内の金属層30を用い形成することができる。共振回路R1、R21およびR22のキャパシタの少なくとも1つは、配線基板10内の層を挟む金属層30を用いた電極を用い形成することができる。共振回路R1、R21およびR22のインダクタおよびキャパシタの少なくとも1つは、配線基板10上に搭載されたチップインダクタまたはチップコンデンサにより形成してもよい。このように、共振回路R1、R21およびR22のインダクタおよびキャパシタの少なくとも1つは配線基板10に搭載されたチップ部品とすることができる。また共振回路R1、R21およびR22のインダクタおよびキャパシタの少なくとも1つは配線基板10内に形成することができる。
【0068】
図19は、実施例2の変形例1に係るラダー型フィルタの回路図である。ラダー型フィルタ86および88が設けられている。ラダー型フィルタ86および88は、それぞれバンド2およびバンド4(送信帯域:1710−1755GHz、受信帯域:2100−2155GHz)用送信フィルタである。ラダー型フィルタ86および88の回路は、実施例2と同じである。ラダー型フィルタ86のノードN2とラダー型フィルタ88のノードN1との間に共振回路R4が接続されている。ラダー型フィルタ86のノードN1とラダー型フィルタ88のノードN2との間に共振回路R5が接続されている。ラダー型フィルタ86のノードN1とラダー型フィルタ88のノードN1との間に共振回路R6が接続されている。ラダー型フィルタ86のノードN2とラダー型フィルタ88のノードN2との間に共振回路R7が接続されている。共振回路R4は直列に接続されたキャパシタC4およびインダクタL4を有する。共振回路R5は直列に接続されたキャパシタC5およびインダクタL5を有する。共振回路R6は直列に接続されたキャパシタC6およびインダクタL6を有する。共振回路R7は直列に接続されたキャパシタC7およびインダクタL7を有する。
【0069】
実施例2の変形例1に係るラダー型フィルタの減衰特性をシミュレーションした。シミュレーションに用いたラダー型フィルタ86の各インダクタおよびキャパシタは以下である。
共振回路R1:C1=0.073pF、L1=0.28nH
共振回路R4:C4=0.053pF、L4=1.36nH
共振回路R5:C5=0.022pF、L5=0.75nH
共振回路R6:C6=0.06pF、L6=2.4nH
共振回路R7:C7=2.65pF、L7=0.19nH
共振回路R21:C21=2.45pF、L21=0.82nH、L31=0.43nH
共振回路R22:C21=74pF、L21=0.3nH、L31=1.67nH
【0070】
比較例3として、共振回路R1、R4−R7、インダクタL31およびL32を設けないラダー型フィルタについてもシミュレーションした。
【0071】
図20(a)および
図20(b)は、実施例2の変形例1および比較例3に係るラダー型フィルタの減衰特性を示す図である。
図20(a)および
図20(b)は、それぞれバンド2用のラダー型フィルタ86およびバンド4用のラダー型フィルタ88の減衰特性である。
図20(a)に示すように、ラダー型フィルタ86の減衰特性は実施例2と同様である。実施例2の変形例1では、無線LAN、通過帯域の2倍波、3倍波に相当する周波数に減衰極が形成される。
図20(b)に示すように、実施例2の変形例1では、5GHzと5.5GHzに2つの減衰極が形成されている。これにより、4.5GHzから6GHzの減衰量が大きくなっている。この周波数帯域は、通過帯域の3倍波、無線LANおよびIMS(Industry Science Medical)バンドで用いられる周波数に対応する。また、比較例3に比べ通過帯域の低周波数側における減衰特性が改善している。
【0072】
図21は、実施例2の変形例2に係るラダー型フィルタの回路図である。
図21に示すように、共振回路R6およびR7が設けられていない。その他の構成は実施例2の変形例1と同じであり説明を省略する。
【0073】
実施例2の変形例1および2によれば、ラダー型フィルタ86の並列共振器とグランドとの間のノードとラダー型フィルタ88の並列共振器とグランドとの間のノードとの間に、共振回路R4からR7の少なくとも1つを設けることもできる。
【0074】
図11(a)のデュプレクサの送信フィルタ80および受信フィルタ82の少なくとも1つに実施例1、2およびその変形例のラダー型フィルタを用いることができる。