特許第6385897号(P6385897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝デバイス&ストレージ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6385897-ディスク装置 図000002
  • 特許6385897-ディスク装置 図000003
  • 特許6385897-ディスク装置 図000004
  • 特許6385897-ディスク装置 図000005
  • 特許6385897-ディスク装置 図000006
  • 特許6385897-ディスク装置 図000007
  • 特許6385897-ディスク装置 図000008
  • 特許6385897-ディスク装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385897
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ディスク装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 21/10 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
   G11B21/10 G
   G11B21/10 R
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-139131(P2015-139131)
(22)【出願日】2015年7月10日
(65)【公開番号】特開2017-21876(P2017-21876A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2017年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 智和
【審査官】 斎藤 眞
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−213069(JP,A)
【文献】 特開2002−216443(JP,A)
【文献】 特開2011−138562(JP,A)
【文献】 特開2001−167541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ領域とサーボ領域とを有するディスク媒体と、
前記データ領域からヘッドで読み出された信号に基づいて前記ヘッドのクロストラック方向における目標位置からのオフセット量を求め、前記オフセット量に基づいて前記ヘッドを前記目標位置に近づける第1の制御を行うコントローラと、
を備え、
前記ディスク媒体は、第1のサブトラックに記録される情報と前記第1のサブトラックに隣接する第2のサブトラックに記録される情報との組み合わせにより、3つのレベルの信号を、前記第1のサブトラック及び前記第2のサブトラックを含むトラックにおける前記データ領域に記録可能であり、
前記3つのレベルは、第1のレベルと、第2のレベルと、前記第1のレベル及び前記第2のレベルの間にある第3のレベルとを含み、
前記コントローラは、前記データ領域から前記ヘッドで読み出された信号に基づいて、前記第3のレベルに対する尤度と前記第1のレベル及び前記第2のレベルに対する尤度との尤度比を求め、前記尤度比に応じて前記第1の制御を行う
ィスク装置。
【請求項2】
データ領域とサーボ領域とを有するディスク媒体と、
前記データ領域からヘッドで読み出された信号に基づいて前記ヘッドのクロストラック方向における目標位置からのオフセット量を求め、前記オフセット量に基づいて前記ヘッドを前記目標位置に近づける第1の制御を行うコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記データ領域から前記ヘッドで読み出された信号に基づいて、前記オフセット量と、前記オフセットの向きとを求め、前記オフセット量及び前記向きに基づいて前記第1の制御を行い、
前記ディスク媒体は、第1のサブトラックに記録される情報と前記第1のサブトラックに隣接する第2のサブトラックに記録される情報との組み合わせにより、3つのレベルの信号を、前記第1のサブトラック及び前記第2のサブトラックを含むトラックにおける前記データ領域に記録可能であり、
前記3つのレベルは、第1のレベルと、第2のレベルと、前記第1のレベル及び前記第2のレベルの間にある第3のレベルとを含み、
前記コントローラは、前記データ領域から前記ヘッドで読み出された信号に基づいて、前記第3のレベルに対する尤度と前記第1のレベル及び前記第2のレベルに対する尤度との尤度比を求め、前記尤度比に応じて前記オフセット量を求めるとともに、前記第3のレベルのターゲットレベルからのずれの極性を求め、前記極性に応じて前記向きを求める
ィスク装置。
【請求項3】
データ領域とサーボ領域とを有するディスク媒体と、
前記データ領域からヘッドで読み出された信号に基づいて前記ヘッドのクロストラック方向における目標位置からのオフセット量を求め、前記オフセット量に基づいて前記ヘッドを前記目標位置に近づける第1の制御を行うコントローラと、
を備え、
前記ディスク媒体は、第1のサブトラックに記録される情報と前記第1のサブトラックに隣接する第2のサブトラックに記録される情報との組み合わせにより、3つのレベルの信号を、前記第1のサブトラック及び前記第2のサブトラックを含むトラックにおける前記データ領域に記録可能であり、
前記3つのレベルは、第1のレベルと、第2のレベルと、前記第1のレベル及び前記第2のレベルの間にある第3のレベルとを含み、
前記第1のレベルは、前記第1のサブトラックに記録される第1の磁化状態と前記第2のサブトラックに記録される前記第1の磁化状態との組み合わせにより記録され、
前記第2のレベルは、前記第1のサブトラックに記録される第2の磁化状態と前記第2のサブトラックに記録される前記第2の磁化状態との組み合わせにより記録され、
前記第3のレベルは、前記第1のサブトラックに記録される前記第2の磁化状態と前記第2のサブトラックに記録される前記第1の磁化状態との組み合わせを用いずに、前記第1のサブトラックに記録される前記第1の磁化状態と前記第2のサブトラックに記録される前記第2の磁化状態との組み合わせにより記録される
ィスク装置。
【請求項4】
データ領域とサーボ領域とを有するディスク媒体と、
前記データ領域からヘッドで読み出された信号に基づいて前記ヘッドのクロストラック方向における目標位置からのオフセット量を求め、前記オフセット量に基づいて前記ヘッドを前記目標位置に近づける第1の制御を行うコントローラと、
を備え、
前記ディスク媒体は、第1のサブトラックに記録される情報と前記第1のサブトラックに隣接する第2のサブトラックに記録される情報との組み合わせにより、3つのレベルの信号を、前記第1のサブトラック及び前記第2のサブトラックを含むトラックにおける前記データ領域に記録可能であり、
前記3つのレベルは、第1のレベルと、第2のレベルと、前記第1のレベル及び前記第2のレベルの間にある第3のレベルとを含み、
前記コントローラは、第1の時刻において前記第3のレベルに対する尤度と前記第1のレベル及び前記第2のレベルに対する尤度との第1の尤度比を求め、前記第1の時刻より後の第2の時刻において前記第3のレベルに対する尤度と前記第1のレベル及び前記第2のレベルに対する尤度との第2の尤度比を求め、前記第1の尤度比と前記第2の尤度比との大小関係に基づいて、前記第1の制御を行う
ィスク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク装置などのディスク装置では、ディスク媒体に格納するデータを高密度化させる傾向にある。これに伴い、ディスク媒体のトラックピッチが狭くなる傾向にある。トラックピッチが狭いディスク媒体に対してヘッドでデータの読み出しを行う際、ヘッドのクロストラック方向の位置を、より正確に制御することが望まれる。ヘッドの位置決め制御は、周方向に点在するサーボ情報に基づいて実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第8988814号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの実施形態は、ヘッドの位置をクロストラック方向に正確に制御できるディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態によれば、ディスク媒体とコントローラとを有するディスク装置が提供される。ディスク媒体は、データ領域とサーボ領域とを有する。コントローラは、データ領域からヘッドで読み出された信号に基づいて、ヘッドのクロストラック方向における目標位置からのオフセット量を求める。コントローラは、オフセット量に基づいて、第1の制御を行う。第1の制御は、ヘッドを目標位置に近づける制御である。ディスク媒体は、第1のサブトラックに記録される情報と第2のサブトラックに記録される情報との組み合わせにより、3つのレベルの信号を、トラックにおけるデータ領域に記録可能である。第2のサブトラックは、第1のサブトラックに隣接するサブトラックである。トラックは、第1のサブトラック及び第2のサブトラックを含む。3つのレベルは、第1のレベルと第2のレベルと第3のレベルとを含む。第3のレベルは、第1のレベル及び第2のレベルの間のレベルである。コントローラは、データ領域からヘッドで読み出された信号に基づいて、第3のレベルに対する尤度と第1のレベル及び第2のレベルに対する尤度との尤度比を求め、尤度比に応じて第1の制御を行う。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態にかかるディスク装置の構成を示す図。
図2】実施形態におけるトラックの記録磁化状態を示す図。
図3】実施形態における記録ヘッド及び再生ヘッドの制御位置を示す図。
図4】実施形態における再生ヘッドの位置とリード信号との関係を示す図。
図5】実施形態におけるコントローラの構成を示す図。
図6】実施形態における再生ヘッドのオフセット量と尤度比との関係を示す図。
図7】実施形態におけるコントローラの動作を示すフローチャート。
図8】実施形態の変形例におけるコントローラの動作を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかるディスク装置を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0008】
(実施形態)
実施形態にかかるディスク装置1について図1を用いて説明する。図1は、ディスク装置1の構成を示す図である。
【0009】
ディスク装置1は、ディスク媒体11を有し、ホスト40からの要求に応じてディスク媒体11に情報を記録する。ディスク装置1は、例えば、磁気ディスク装置、光磁気ディスク装置などである。以下では、ディスク装置1が磁気ディスク装置である場合について例示するが、本実施形態は他の装置にも適用可能である。
【0010】
ディスク装置1は、例えば、ヘッド22を介してディスク媒体11に情報を記録し、ヘッド22を介してディスク媒体11から信号を読み出す。具体的には、ディスク装置1は、ディスク媒体11、スピンドルモータ12、モータドライバ21、ヘッド22、アクチュエータアーム15、ボイスコイルモータ(VCM)16、ランプ13、ヘッドアンプ24、リードライトチャネル(RWC)25、ハードディスクコントローラ(HDC)23、バッファメモリ29、及び制御部26を備える。
【0011】
ディスク媒体11は、スピンドルモータ12により、回転軸を中心に所定の回転速度で回転される。スピンドルモータ12の回転は、モータドライバ21により駆動される。ディスク媒体11は、例えば、磁気ディスク又は光磁気ディスクなどであってもよい。ディスク媒体11は、例えば、垂直磁気記録層を有する記録媒体である。例えば、ディスク媒体11の表裏面には、ディスク媒体11の中心付近から放射方向に延びる複数のサーボ領域が規定される。サーボ領域は円周方向に等間隔で配置され得る。例えば、サーボ領域にはサーボパターンを含むサーボ情報が記録されている。また、サーボパターンにより、ディスク媒体11の表裏面には、ディスク媒体11の中心付近から同心円状に複数のトラックが規定される。各トラックにおいて、複数のサーボ領域の間には、ユーザデータが記録されるデータ領域が設けられている。すなわち、各トラックでは、その1周において、サーボ領域とデータ領域とが交互に繰り返し配置されている。
【0012】
ヘッド22は、それに備わる記録ヘッド22aおよび再生ヘッド22bにより、ディスク媒体11に対してデータの書き込みや読み出しを行う。また、ヘッド22は、アクチュエータアーム15の先端にあって、モータドライバ21によって駆動されるVCM16により、ディスク媒体11の半径方向(トラック幅方向)に沿って移動される。ディスク媒体11の回転が停止しているときなどは、ヘッド22は、ランプ13上に退避される。
【0013】
ヘッドアンプ24は、ヘッド22がディスク媒体11から読み取った信号を増幅して出力し、RWC25に供給する。また、ヘッドアンプ24は、RWC25から供給された、ディスク媒体11にデータを書き込むための信号を増幅して、ヘッド22に供給する。
【0014】
HDC23は、I/Fバスを介してホスト40との間で行われるデータの送受信の制御や、バッファメモリ29の制御、ならびに、記録データに対するデータの誤り訂正処理などを行う。バッファメモリ29は、ホスト40との間で送受信されるデータのキャッシュとして用いられる。バッファメモリ29は、ディスク媒体11から読み出されるデータ、ディスク媒体11に書き込むデータ、又はディスク媒体11から読み出される制御用ファームウェアを、一時記憶するためなどに用いられる。
【0015】
RWC25は、HDC23から供給される、ディスク媒体11に書き込むためのデータをコード変調してヘッドアンプ24に供給する。また、RWC25は、ディスク媒体11から読み取られヘッドアンプ24から供給された信号をコード復調してデジタルデータとしてHDC23へ出力する。
【0016】
制御部26には、動作用メモリ27(例えば、SRAM:Static Random Access Memory)、不揮発性メモリ28(例えば、Flash ROM:Flash Read Only Memory)および一時記憶用のバッファメモリ29(例えば、SDRAM:Syncronous Dynamic Random Access Memory)が接続されている。制御部26は、不揮発性メモリ28およびディスク媒体11に予め記憶されたファームウェア(プログラムデータ)に従って、このディスク装置1の全体的な制御を行う。制御部26は、例えば、CPUである。ファームウェアは、初期ファームウェアおよび通常動作に用いる制御用ファームウェアである。起動時に最初に実行される初期ファームウェアは、例えば、不揮発性メモリ28に記憶されている。制御用ファームウェアには、後述するように、コントローラ30(図5参照)の機能の一部が含まれていてもよい。また、通常動作に用いる制御用ファームウェアは、ディスク媒体11に記録されており、初期ファームウェアに従った制御により、ディスク媒体11から一旦バッファメモリ29に読み出され、その後動作用メモリ27に格納される。
【0017】
なお、RWC25、制御部26、及びHDC23を含む構成をコントローラ30と見なすこともできる。
【0018】
磁気ディスク装置などのディスク装置1では、ディスク媒体11上の磁化方向で情報ビットの値を表すので、ディスク媒体11上の記録密度を高めるとシンボル間干渉が生じて再生信号の品質が劣化することがある。例えば、磁化方向により「D1」(第1の方向に磁化された状態)、「D2」(第1の方向と逆の第2の方向に磁化された状態)の2値を磁化情報としてディスク媒体11に記録する情報記録方式がある。この情報記録方式では、再生信号の品質の劣化抑制と情報の記録密度の向上とを両立させることが困難である。
【0019】
本実施の形態では、ディスク媒体11に対して、+1、0、−1の3つの信号レベルを記録可能に構成する。3値の記録シンボルをディスク媒体11に記録することで、1シンボルあたりの情報量を増加させる。これにより、シンボル間の記録ピッチを大きくしながらディスク媒体11へ記録可能な情報量を増加させることができるので、シンボル間干渉を抑制しながら記録密度を向上させることができる。
【0020】
すなわち、1記録シンボルにおける記録状態を3レベル(+1、0、−1)で扱うことによって、1記録シンボルに記録できる実質情報ビット数を増加させることができる。例えば、3レベルの磁化状態を実現する方法のひとつとして、図2に示すように、単一の再生トラックTR1内に、2つのサブトラックSTR1,STR2を更に設ける。図2は、トラックTR1の記録磁化状態を示す図である。例えば、各サブトラックSTR1,STR2において、第1の方向に磁化された状態を「D1」(図2で密度の濃いハッチングで示された状態)で表し、第1の方向と逆の第2の方向に磁化された状態を「D2」(図2で密度の薄いハッチングで示された状態)で表す。このとき、クロストラック方向に並ぶ2つのサブトラックSTR1,STR2の2値の記録状態を(D1、D1)=+1、(D2、D1)=0、(D2、D2)=−1とすることで3レベルを表現する方法が考えられる。すなわち、ディスク媒体11は、サブトラックSTR1に記録される磁化情報とサブトラックSTR2に記録される磁化情報との組み合わせにより、3つのレベルの信号をトラックTR1におけるデータ領域に記録可能である。トラックTR1は、記録シンボルに対する1つのトラックとみなすこともできる。なお、他にも3レベルの不飽和記録を行なう方法なども考えられる。
【0021】
データ領域への図2に示すような磁化情報の書き込みは、例えば、図3の3Aに示すような瓦記録方式で実現することができる。図3は、記録ヘッド22a及び再生ヘッド22bの制御位置を示す図である。すなわち、1つの記録ヘッド22aを用いて磁化情報を2回に分けてディスク媒体11に記録する。図3の3Aの例では、1回目の記録において、1つの記録ヘッド22aで磁化情報「D1」「D2」「D2」を2つのサブトラックSTR1,STR2に同時に書き込む。2回目の記録において、1つの記録ヘッド22aを1サブトラック幅分STR2側にシフトさせ、1つの記録ヘッド22aで磁化情報「D1」「D1」「D1」をサブトラックSTR2に書き込む。これにより、図2に示すような(D1、D1)=+1、(D2、D1)=0、(D2、D1)=0のシンボルが順にディスク媒体11に記録される。
【0022】
あるいは、データ領域への磁化情報の書き込みは、例えば、図3の3Bに示すような記録方式で実現することができる。すなわち、2つの記録ヘッド22a−1,22a−2を用いて磁化情報をディスク媒体11に記録する。すなわち、2つの記録ヘッド22a−1,22a−2で磁化情報(D1、D1)を2つのサブトラックSTR1,STR2に同時に書き込む。その後、(D2、D1)、(D2、D1)についても同様に2つのサブトラックSTR1,STR2に同時に書き込む。これにより、図2に示すような(D1、D1)=+1、(D2、D1)=0、(D2、D1)=0のシンボルが順にディスク媒体11に記録される。
【0023】
データ領域からの図2に示すような磁化情報の読み出しは、例えば、図3の3Cに示すような再生方式で実現することができる。すなわち、1つの再生ヘッド22bを用いて磁化情報を2つのサブトラックSTR1,STR2から同時に読み出す。これにより、図2に示すような(D1、D1)=+1、(D2、D1)=0、(D2、D1)=0の各シンボルの記録領域からその値に応じた信号が順に再生できる。
【0024】
あるいは、データ領域からの磁化情報の読み出しは、例えば、図3の3Dに示すような再生方式で実現することができる。すなわち、2つの再生ヘッド22b−1,22b−2を用いて磁化情報を2つのサブトラックSTR1,STR2から同時に読み出す。そして、コントローラ30は、各再生ヘッド22b−1,22b−2で読み出された信号を合成する。これにより、図2に示すような(D1、D1)=+1、(D2、D1)=0、(D2、D1)=0の各シンボルの記録領域からその値に応じた信号が順に再生できる。
【0025】
例えば、図3の3A又は3Bに示す記録方式では、ディスク媒体11に格納するデータを高密度化させるために、各サブトラックSTR1,STR2のトラックピッチが狭くなる傾向にある。トラックピッチが狭い各サブトラックSTR1,STR2に対して再生ヘッド22bでデータ領域からの磁化情報の読み出しを行う際、再生ヘッド22bの位置をクロストラック方向に正確に制御することが望まれる。例えば、図3の3Cに示す再生方式では、サブトラックSTR1とサブトラックSTR2との境界近傍の位置に再生ヘッド22bを正確に位置決めすることが望まれる。例えば、図3の3Dに示す再生方式では、サブトラックSTR1のトラック中心とサブトラックSTR2のトラック中心とのそれぞれの位置に再生ヘッド22b−1,22b−2を正確に位置決めすることが望まれる。
【0026】
例えば、再生ヘッド22bの位置決め制御は、サーボ領域から読み出されたサーボ情報を用いて行うことができる。すなわち、コントローラ30は、サーボ領域からサーボ情報を読み出させ、読み出されたサーボ情報に基づいて再生ヘッド22bのクロストラック方向における目標位置からのオフセット量を求める。そして、コントローラ30は、そのオフセット量に基づいて再生ヘッド22bを目標位置に近づける制御を行う。すなわち、コントローラ30は、そのオフセット量にゲインを施して、オフセット量をキャンセルさせるための再生ヘッド22bの駆動量を求め、その駆動量に従い再生ヘッド22bのクロストラック方向における位置を補正する制御(オフセット補正制御)を行う。
【0027】
しかし、例えば、図3の3Cに示す再生方式では、目標位置に対するオフセットマージンが記録シンボルの1トラック幅に比べて非常に小さいことがある。図4の4Aに示すように、値「+1」のシンボルを再生する場合、再生信号が値「+1」に応じたレベル範囲LR1に収まる読み出し位置のマージン(リードマージン)がトラックTR1の幅に対応した大きさLM1を有している。図4は、再生ヘッド22bの位置とリード信号との関係を示す図である。図4の4Cに示すように、値「−1」のシンボルを再生する場合、再生信号が値「−1」に応じたレベル範囲LR3に収まる読み出し位置のマージン(リードマージン)がトラックTR1の幅に対応した大きさLM3を有している。
【0028】
一方、図4の4Bに示すように、値「0」のシンボルを再生する場合、再生信号が値「0」に応じたレベル範囲LR2に収まる読み出し位置のマージン(リードマージン)がトラックTR1の幅よりも非常に小さい大きさLM2を有している。そのため、サーボ領域とサーボ領域との間のデータ領域から情報を読み出している期間であっても、再生ヘッド22bをクロストラック方向における目標位置に正確に位置決め制御することが望まれる。
【0029】
そこで、本実施形態では、ディスク装置1において、各サブトラックのデータ領域から再生ヘッド22bで読み出された信号に基づいて再生ヘッド22bのクロストラック方向における目標位置からのオフセット量が求められる。ディスク装置1は、そのオフセット量に基づいて再生ヘッド22bを目標位置に近づける制御を行うことで、データ領域から情報を読み出している期間における再生ヘッド22bの位置決め精度の向上を図る。以下では、ディスク装置1の記録方式が図3の3Aに示す記録方式(瓦記録方式)でありディスク装置1の再生方式が図3の3Cに示す再生方式である場合について例示するが、本実施形態は他の記録再生方式にも適用可能である。
【0030】
具体的には、再生ヘッド22bの位置が、記録シンボルがあるトラックTR1のトラックセンター(サブトラックSTR1とサブトラックSTR2との境界近傍の位置)からずれた場合、3値における“0”レベルはリードマージンが小さく再生品質の劣化が発生しやすい(図4の4B参照)。一方で、“±1”レベルはある程度リードマージンが大きいため、再生ヘッド22bの位置が記録シンボルのトラックTR1のトラックセンターからずれても、“0”レベルほど極端に劣化しにくい(図4の4A,4C参照)。
【0031】
これにより、畳み込み復号時の“0”レベルの確からしさの尤度と“±1”レベルの確からしさの尤度との比(尤度比)は、記録シンボルのトラックTR1のトラックセンターからずれると大きく劣化することが予想される。すなわち、コントローラ30は、尤度比の劣化量を低減するようにフィードバック制御をすることで、リード時におけるオフセット補正制御が可能となる。
【0032】
例えば、コントローラ30は、次の数式1〜4に示されるような“0”レベルのエラーの尤度と“±1”レベルのエラーの尤度とを用いる。
“0”レベルのエラーの尤度=1−(“0”レベルの確からしさの尤度)
・・・数式1
“+1”レベルのエラーの尤度=1−(“+1”レベルの確からしさの尤度)
・・・数式2
“−1”レベルのエラーの尤度=1−(“−1”レベルの確からしさの尤度)
・・・数式3
“±1” レベルのエラーの尤度={(“+1”レベルのエラーの尤度)+(“−1”レベルのエラーの尤度)}/2・・・数式4
【0033】
そして、コントローラ30は、次の数式5に示されるような、“0”レベルのエラーの尤度と“±1”レベルのエラーの尤度との尤度比(エラーの尤度比)を求める。
(エラーの尤度比)=(“0”レベルのエラーの尤度)/(“±1”レベルのエラーの尤度)・・・数式5
【0034】
コントローラ30は、エラーの尤度比が0に近づくようにフィードバック制御をすることで、再生ヘッド22bを目標位置に近づける制御を行う。
【0035】
また、コントローラ30は、尤度比(エラーの尤度比)に応じてオフセット量の絶対値は推定できるが、どちらにオフセットしているかは推定が困難である。そのため、コントローラ30は、3値のシンボルを記録する際に2つのサブトラックにライトする磁化情報に偏りを持たせる。たとえば、コントローラ30は、図2に示すように、“0”レベルの信号を、(サブトラックSTR1の磁化状態,サブトラックSTR2の磁化状態)=(D2、D1)とすることで記録し、逆の組み合わせ(サブトラックSTR1の磁化状態,サブトラックSTR2の磁化状態)=(D1、D2)を用いないようにする。これにより、コントローラ30は、“0”レベルの信号のターゲットレベルからのずれ方向(±)をモニターすることで、オフセットの向きの推定も可能となる。
【0036】
すなわち、コントローラ30は、各サブトラックSTR1,STR2におけるデータ領域から読み出した信号に基づいて、エラーの尤度比をもとめることができる。それとともに、コントローラ30は、“0”レベルの信号のターゲットレベルからのずれ方向からオフセットの向きを求めることができる。すなわち、コントローラ30は、再生ヘッド22bがどちらのサブトラック側にどの程度ずれたかを推定できる。コントローラ30は、尤度比(エラーの尤度比)に適切なゲインを付加して位置決め信号にフィードバックを行うことで、再生ヘッド22bの位置補正量を求めることができる。
【0037】
より具体的には、コントローラ30は、図5に示すように、等化器31、オフセット量推定器32、及びVCMコントローラ33を有する。図5は、コントローラ30の構成を示す図である。なお、図5に示すコントローラ30は、機能的な構成であり、ハードウェア的に(例えば、システムオンチップとして)実装されていてもよい。
【0038】
例えば、等化器31及びオフセット量推定器32がRWC25内にハードウェア的に実装され、VCMコントローラ33が制御部26内にハードウェア的に実装されてもよい。あるいは、例えば、等化器31がRWC25内にハードウェア的に実装され、オフセット量推定器32がRWC25及び制御部26とは別チップとして構成され、VCMコントローラ33が制御部26内にハードウェア的に実装されてもよい。
【0039】
あるいは、図5に示すコントローラ30は、制御部26等においてソフトウェア的に(例えば、制御部26等により動作用メモリ27等に一括して又は処理の進行に応じて順次に展開される機能モジュールとして)実装されていてもよい。
【0040】
あるいは、図5に示すコントローラ30は、一部の機能がハードディスクコントローラ31等においてハードウェア的に実装され、残りの機能が制御部26等においてソフトウェア的に実装されていてもよい。
【0041】
コントローラ30では、データ復号時の情報の確からしさ(尤度情報)に基づいて、トラッキングのずれを推定し、これを補正する。
【0042】
例えば、等化器31は、ディスク媒体11から再生ヘッド22bで読み出された信号をヘッドアンプ24経由で受ける。等化器31は、受けた信号(アナログ信号)をA/D変換し、A/D変換後の信号(デジタル信号)を所定のPRターゲット(ターゲットレベル)へ等化する。等化器31は、デジタル信号に対して、所定の時間間隔でサンプリングを行い、各サンプル点について信号が“0”レベルである確からしさの尤度と“+1”レベルの確からしさの尤度と“−1”レベルの確からしさの尤度とをそれぞれ求める。
【0043】
オフセット量推定器32は、“0”レベルである確からしさの尤度と“+1”レベルの確からしさの尤度と“−1”レベルの確からしさの尤度とのそれぞれを等化器31から受ける。オフセット量推定器32は、これらの尤度に基づき、再生ヘッド22bの目標位置からオフセット量とオフセットの向きとを求める。
【0044】
例えば、瓦記録方式による3値のシンボルの記録(0、±1)を考えた場合、“±1”レベルは2つのサブトラックSTR1,STR2の記録磁化の方向が一致しているため(図2参照)、再生ヘッド22bの位置がクロストラック方向に十分なリードマージンを持っている(図4の4A,4C参照)。これにより、多少のリードオフセット変動が発生しても再生出力はそれほど変化しない。一方で、“0”レベルの場合は、2つのサブトラックSTR1,STR2で記録磁化の方向が異なるため、オフトラック変動が発生し再生ヘッド22bの位置が目標位置(サブトラックSTR1,STR2の境界近傍の位置)からずれるとどちらかのトラックの記録磁化の方向に再生信号が偏ってしまい、再生信号振幅が大きく変動してしまう可能性がある(図4の4B参照)。このことは、言い換えると、3値のシンボルの記録において、“0”レベルの再生信号は“±1”レベルの再生信号に比べてリードオフセット変動の影響を強く受ける(リードオフセットに対して再生信号品質の劣化が大きい)ことを意味している。従って、逆に、“0”レベルと“±1”レベルの再生信号品質の差に対応した尤度比(エラーの尤度比)をモニターすることでどの程度オフセットしているかの量(リードオフセット量)を推定することができることが意味される。
【0045】
リードオフセット量の推定方法としては、例えば、3値レベルそれぞれの尤度情報を用いるものが考えられる。上記の再生信号品質を尤度に置き換えると、“0”レベルと“±1”レベルとの尤度比がリードオフセット量に対応すると考えることができる。この尤度情報は直接再生信号品質に対応している点や、リアルタイムにオフセット補正フィードバックを行うためのレイテンシーを抑えるためという観点から畳み込み(Viterbi)復号後の尤度情報を用いるのが望ましい。例えば、尤度比は、連続する“0”レベルのエラーの尤度と“±1”レベルのエラーの尤度との尤度比をそのまま用いる(連続するビット間でオフセット量は変化せず一定であると考える)ことができる。あるいは、尤度比は、連続する“0”レベルのエラーの尤度と“±1”レベルのエラーの尤度との尤度比をウィンドウ区間(例えば、クロストラック方向に数十〜数百ビット幅を有する区間)内で平均化することができる。
【0046】
例えば、オフセット量推定器32は、尤度比計算回路32a、極性計算回路32b、乗算器32c、及び乗算器32dを有する。尤度比計算回路32aは、“0”レベルである確からしさの尤度と“+1”レベルの確からしさの尤度と“−1”レベルの確からしさの尤度とのそれぞれを等化器31から受ける。尤度比計算回路32aは、上記の数式1〜5に従い、“0”レベルに対するエラーの尤度と“±1”レベルに対するエラーの尤度との尤度比(エラーの尤度比)を求める。尤度比計算回路32aは、求められた尤度比を乗算器32cへ出力する。
【0047】
図6には、リードオフセット量を変化させた場合に尤度比計算回路32aで計算される尤度比(エラーの尤度比)を示している。図6は、再生ヘッド22bの目標位置からのオフセット量と尤度比との関係を示す図である。期待されるとおり、再生ヘッド22bが3値のトラックの中心(サブトラックの境界)からずれるとエラーの尤度比が増加していく(すなわち、確からしさの尤度比が劣化していく)様子が確認できる。
【0048】
尤度比によりリードオフセット量の絶対値の推定は可能であるが、オフセットの向き(どちらのサブトラック側にオフセットしたのか)は判断が困難である。そのため、コントローラ30は、2つのサブトラックで“0”レベルのシンボルを記録する際の規則に偏りを持たせている。具体的には、図2に示すように“0”レベルのシンボルを記録する場合は、必ずサブトラックSTR1側が「D2」、サブトラックSTR2側が「D1」の組み合わせとするように定める。これにより、再生ヘッド22bのオフセットの向きと、リードオフセット時の“0”レベルの畳み込み符号ターゲットレベルからのずれとを、一対一に対応させることができる。
【0049】
このため、極性計算回路32bは、“0”レベルのターゲットレベルからのずれの極性を求め、その極性に応じて、再生ヘッド22bのオフセットの向きを求める。極性計算回路32bは、向きを示す符号(+又は−)を乗算器32cへ出力する。
【0050】
乗算器32cは、エラーの尤度比を尤度比計算回路32aから受け、向きを示す符号(+又は−)を極性計算回路32bから受ける。乗算器32cは、エラーの尤度比に向きを示す符号(+又は−)を乗算して、エラーの尤度比に向きの情報を付加する。乗算器32cは、乗算結果を乗算器32dへ出力する。
【0051】
乗算器32dは、乗算器32cから受けた乗算結果(向きの情報が付加されたエラーの尤度比)に、ゲインを乗算して、再生ヘッド22bの位置補正量を求める。ゲインは、エラーの尤度比をオフセット量に換算する大きさと、オフセットの向きに対してオフセットをキャンセルする向きに変える極性とを有する。乗算器32dは、再生ヘッド22bの位置補正量をVCMコントローラ33へ供給する。VCMコントローラ33は、再生ヘッド22bの位置補正量に従って、ヘッド22を径方向に移動させるようにモータドライバ21経由でVCM16を制御する。
【0052】
すなわち、コントローラ30は、尤度比とターゲットレベルからのずれ方向との2つの情報を用いることで、リードオフセットの極性および絶対値を共に推定してリードオフセット補正を行うことが可能となる。
【0053】
例えば、コントローラ30は、図7に示すように、リード時におけるオフセット補正制御を行うことができる。図7は、コントローラ30の動作を示すフローチャートである。
【0054】
ディスク媒体11における各トラックでは、その1周において、サーボ領域とデータ領域とが交互に繰り返し複数回配置されている。例えば、各トラックには、互いに隣接するサーボ領域とデータ領域とを含むサーボセクター領域がN個(Nは2以上の整数)配置されている。各サーボセクター領域のサーボ領域に記録されたサーボ情報は、そのサーボセクター領域の識別情報(サーボセクター番号)を含む。
【0055】
コントローラ30は、再生ヘッド22bでサーボ領域からサーボ情報を読み込んだ場合に、サーボ情報に基づいて、現在のサーボセクター番号を特定する(S1)。現在のサーボセクター番号は、例えば、0〜Nのいずれかの番号である。
【0056】
また、コントローラ30は、サーボ領域から読み出されたサーボ情報を用いて、再生ヘッド22bの位置決め制御を行う(S2)。すなわち、コントローラ30は、サーボ領域から読み出されたサーボ情報に基づいて再生ヘッド22bのクロストラック方向における目標位置(例えば、サブトラックSTR1,STR2間の境界位置)からのオフセット量を求める。そして、コントローラ30は、そのオフセット量に基づいて再生ヘッド22bを目標位置に近づける制御を行う。すなわち、コントローラ30は、そのオフセット量にゲインを施して、オフセット量をキャンセルさせるための再生ヘッド22bの駆動量を求め、その駆動量に従い再生ヘッド22bのクロストラック方向における位置を補正する制御(オフセット補正制御)を行う。
【0057】
次に、コントローラ30は、データ領域のリード動作を開始する(S3)。すなわち、コントローラ30は、現在のサーボセクター領域のデータ領域内にM個(Mは2以上の整数)のウィンドウ区間を設定し、ウィンドウ区間とその識別情報(ウィンドウ番号)とが対応付けられた設定情報を保持する。ウィンドウ区間は、任意に設定可能であるが、例えば、ダウントラック方向に数十〜数百ビット幅を有する区間(数十〜数百個のシンボルが記録された区間)で設定することができる(図2参照)。コントローラ30は、設定情報に基づいて、現在のウィンドウ番号を特定する(S4)。現在のウィンドウ番号は、例えば、0〜Mのいずれかの番号である。
【0058】
コントローラ30は、現在のウィンドウ区間について、上記の数式5に示すようなエラーの尤度比Rを計算する(S5)。すなわち、コントローラ30は、現在のウィンドウ区間から再生ヘッド22bで読み出された信号に基づいて、“0”レベルに対する確からしさの尤度と“+1”レベルに対する確からしさの尤度と“−1”レベルに対する確からしさの尤度とをそれぞれ求める。コントローラ30は、上記の数式1〜4に従い、“0”レベルに対するエラーの尤度と“±1”レベルに対するエラーの尤度とをそれぞれ求める。コントローラ30は、上記の数式5に従い、“0”レベルに対するエラーの尤度と“±1”レベルに対するエラーの尤度との尤度比(エラーの尤度比R)を求める。例えば、コントローラ30は、エラーの尤度比Rをウィンドウ区間内における複数の時刻のそれぞれで計算した結果を平均化する。
【0059】
コントローラ30は、エラーの尤度比Rが閾値Rth以上であるか否かを判断する(S6)。閾値Rthは、再生ヘッド22bの目標位置からのオフセット量が許容範囲を外れる位置を基準に定めることができる(図6参照)。
【0060】
例えば、サーボ直後のデータセクタ先頭(ウィンドウ番号=0)のウィンドウ区間はおおむね3値のシンボルのトラック中心に位置決めできていると考えられるので、このウィンドウ区間で計算された尤度比(エラーの尤度比R)又はその尤度比にマージンを加算した値を閾値Rthとして用いることができる。あるいは、閾値Rthは、再生ヘッド22bの目標位置からのオフセット量が許容範囲を外れる位置に対応したエラーの尤度比Rの値として、予め実験的に決定されていてもよい。閾値Rthは、予め校正しておくことができる。
【0061】
コントローラ30は、エラーの尤度比Rが閾値Rth以上である場合(S6でYes)、オフセット補正制御(S7〜S9)を行い、エラーの尤度比Rが閾値Rth未満である場合(S6でNo)、オフセット補正制御を行わない(処理をS10へ進める)。
【0062】
例えば、コントローラ30は、エラーの尤度比Rが閾値Rth以上である場合(S6でYes)、“0”レベルの信号のターゲットレベルからのずれの極性を求め、その極性に応じてオフセットの向きを求める(S7)。また、コントローラ30は、エラーの尤度比Rにゲインを施して、再生ヘッド22bのクロストラック方向における目標位置からのオフセット量を求める。ゲインは、エラーの尤度比をオフセット量に換算する大きさと、オフセットの向きに対してオフセットをキャンセルする向きに変える極性とを有する。エラーの尤度比をオフセット量に換算する大きさは、予め実験的に決定することができる。ゲインは、予め校正しておくことができる。
【0063】
そして、コントローラ30は、そのオフセット量をキャンセルするような再生ヘッド22bの駆動量(オフセット補正量)を計算する(S8)。コントローラ30は、オフセット補正量に従いVCMコントローラ33(図5参照)を動作させ、モータドライバ21及びVCM16経由で再生ヘッド22bを目標位置に近づけるフィードバック制御(FB補正)を行う(S9)。
【0064】
コントローラ30は、S9が完了したら、あるいは、エラーの尤度比Rが閾値Rth未満である場合(S6でNo)、現在のウィンドウ区間がデータ領域内の最後(ウィンドウ番号=M)のウィンドウ区間であるか否かを判断する(S10)。コントローラ30は、現在のウィンドウ区間が最後のウィンドウ区間でなければ(S10でNo)、ウィンドウ番号をインクリメントして、処理をS4に戻す。
【0065】
コントローラ30は、現在のウィンドウ区間が最後のウィンドウ区間であれば(S10でYes)、現在のサーボセクター領域がトラック内の最後(サーボセクター番号=N)のサーボセクター領域であるか否かを判断する(S11)。コントローラ30は、現在のサーボセクター領域が最後のサーボセクター領域でなければ(S11でNo)、サーボセクター番号をインクリメントして、処理をS1に戻す。
【0066】
コントローラ30は、現在のサーボセクター領域が最後のサーボセクター領域であれば(S11でYes)、現在のトラックについてのリード処理を終了する。コントローラ30は、異なるトラックのリード処理についても、S1〜S11と同様の処理を行うことができる。
【0067】
このように、コントローラ30は、瓦記録方式による3値のシンボルの再生時に、リードセンター位置を“0”レベルと“±1”レベルとの尤度情報の差に基づいて補正することにより、適正リード位置での復号を可能にする。
【0068】
以上のように、実施形態では、ディスク装置1において、コントローラ30が、データ領域から再生ヘッド22bで読み出された信号に基づいて再生ヘッド22bのクロストラック方向における目標位置からのオフセット量とオフセットの向きとをそれぞれ求め、これらに基づいて、再生ヘッド22bを目標位置に近づけるオフセット補正制御を行う。これにより、データ領域から情報を読み出している期間において(例えば、リアルタイムに)、再生ヘッド22bの位置決め精度を向上できる。
【0069】
また、実施形態では、ディスク媒体11において、互いに隣接するサブトラックSTR1,STR2に記録される磁化情報(D1又はD2)により、3つのレベル、例えば“+1”レベル、“−1”レベル、“0”レベルが、サブトラックSTR1,STR2を含むトラックTR1のデータ領域に記録される。コントローラ30は、データ領域から再生ヘッド22bで読み出された信号に基づいて、“0”レベルに対するエラーの尤度と“±1”レベルに対するエラーの尤度との尤度比を求める。コントローラ30は、尤度比が閾値以上である場合、オフセット補正制御を行い、尤度比が閾値未満である場合、オフセット補正制御を行わない。これにより、再生ヘッドの目標位置からのオフセット量が許容範囲を超えたことに応じてオフセット補正制御を行うことができる。
【0070】
また、実施形態では、ディスク媒体11に記録される3つのレベル、例えば“+1”レベル、“−1”レベル、“0”レベルのうち、“0”レベルのシンボルを記録する際に2つのサブトラックにライトする磁化情報に偏りを持たせる。“0”レベルの信号を、(サブトラックSTR1の磁化状態,サブトラックSTR2の磁化状態)=(D2、D1)として記録し、逆の組み合わせ(サブトラックSTR1の磁化状態,サブトラックSTR2の磁化状態)=(D1、D2)を用いないようにする。これにより、コントローラ30は、“0”レベルの信号のターゲットレベルからのずれの極性を求め、その極性に応じて再生ヘッド22bのオフセットの向きを求めることができるので、再生ヘッド22bをオフセット補正させるべき向きを正確に求めることができる。なお、磁化情報に偏りを持たせることができれば、磁化状態は逆でもよい。すなわち、“0”レベルの信号を、(サブトラックSTR1の磁化状態,サブトラックSTR2の磁化状態)=(D1、D2)として記録し、逆の組み合わせ(サブトラックSTR1の磁化状態,サブトラックSTR2の磁化状態)=(D2、D1)を用いないようにしてもよい。
【0071】
また、実施形態では、コントローラ30は、サーボ領域から読み出されたサーボ情報に基づいて再生ヘッド22bの目標位置からのオフセットを補正する制御を行った後に、データ領域から読み出された信号に基づいて再生ヘッド22bの目標位置からのオフセットを補正する制御を行う。これにより、コントローラ30が再生ヘッド22bのオフセット補正を2段階で行うことができるので、データ領域から情報を読み出している期間における再生ヘッド22bの位置決め精度を容易に向上できる。
【0072】
なお、ディスク装置1の再生方式が図3の3Dに示す再生方式である場合、サブトラックSTR1とサブトラックSTR2との境界位置を求めるとともに、その境界位置を起点として各サブトラックSTR1,STR2のトラック中心に位置決めすることができる。これにより、ディスク装置1の再生方式が図3の3Dに示す再生方式である場合にも、再生ヘッド22bを目標位置(各サブトラックのトラック中心)に近づけるオフセット補正制御を高精度の行うことができ、再生ヘッド22bの位置決め精度を向上できる。
【0073】
また、コントローラ30は、オフセット補正制御を行うか否かの判断を行う指標として、エラーの尤度比に代えて、“0”レベルに対する確からしさの尤度と“±1”レベルに対する確からしさの尤度とのそれぞれがスレッショルドレベルLthを下回る回数の比を用いてもよい。すなわち、コントローラ30は、第1のカウンタ、第2のカウンタ、第3のカウンタ(図示せず)を有する。第1のカウンタは、ウィンドウ区間内で“0”レベルの確からしさの尤度がスレッショルドレベルLthを下回る回数をカウントアップする。第2のカウンタは、ウィンドウ区間内で“+1”レベルの確からしさの尤度がスレッショルドレベルLthを下回る回数をカウントアップする。第3のカウンタは、ウィンドウ区間内で“−1”レベルの確からしさの尤度がスレッショルドレベルLthを下回る回数をカウントアップする。第1〜第3のカウンタのそれぞれは、例えば、図8に破線で囲って示されたタイミングでカウント値をカウントアップする。図8は、コントローラ30の動作(カウント動作)を示す図である。
【0074】
例えば、コントローラ30は、次の数式6〜9に示されるような“0”レベルのエラー回数と“±1”レベルのエラー回数とを用いる。
“0”レベルのエラー回数=(第1のカウンタのカウント値)・・・数式6
“+1”レベルのエラー回数=(第2のカウンタのカウント値)・・・数式7
“−1”レベルのエラーの尤度=(第3のカウンタのカウント値)・・・数式8
“±1” レベルのエラー回数={(“+1”レベルのエラー回数)+(“−1”レベルのエラーの尤度)}/2・・・数式9
【0075】
そして、コントローラ30は、次の数式10に示されるような、“0”レベルのエラー回数と“±1”レベルのエラー回数との回数比(エラーの回数比)を求める。
(エラーの回数比)=(“0”レベルのエラー回数)/(“±1”レベルのエラー回数)・・・数式10
【0076】
例えば、コントローラ30は、図7に示す動作の説明において、「尤度」を「回数」に置き換え、「尤度比」を「回数比」を置き換えたことに相当する動作を行う。
【0077】
このように、“0”レベルのエラー回数と“±1”レベルのエラー回数との回数比を用いてオフセット補正制御を行うか否かの判断を行うことで、位置決め制御の応答速度や局所的な記録品質の影響を受けにくいオフセット補正制御を実現可能である。
【0078】
あるいは、実施形態では、尤度比が閾値以上であることに応じてオフセット補正制御を行う場合が例示されているが、尤度比の基準(閾値Rth)を定めない方法も可能である。すなわち、コントローラ30は、“0”レベルに対するエラーの尤度と“±1”レベルに対するエラーの尤度との尤度比を第1の時刻について求める。コントローラ30は、“0”レベルに対するエラーの尤度と“±1”レベルに対するエラーの尤度との尤度比を第1の時刻より後の第2の時刻について求める。コントローラ30は、第1の時刻の尤度比と第2の時刻の尤度比との大小関係に基づいて、オフセット補正制御を行う。コントローラ30は、第2の時刻の尤度比が第1の時刻の尤度比より大きい場合、オフセット補正制御を行い、第2の時刻の尤度比が第1の時刻の尤度比以下である場合、オフセット補正制御を行わない。
【0079】
例えば、図7に示す動作において、コントローラ30は、現在のウィンドウ区間について、上記の数式5に示すようなエラーの尤度比Rを計算したら(S5)、エラーの尤度比Rを現在のウィンドウ区間の識別情報に関連付けて保持しておく。そして、コントローラ30は、エラーの尤度比Rが閾値Rth以上であるか否かを判断する代わりに、現在のウィンドウ区間のエラーの尤度比Rが直前のウィンドウ区間のエラーの尤度比R’以上であるか否かを判断する(S6)。
【0080】
コントローラ30は、エラーの尤度比Rがエラーの尤度比R’以上である場合(S6でYes)、オフセット補正制御(S7〜S9)を行い、エラーの尤度比Rがエラーの尤度比R’未満である場合(S6でNo)、オフセット補正制御を行わない(処理をS10へ進める)。
【0081】
このように、ウィンドウ区間単位で尤度比の時系列変化をモニターし、現在のウィンドウ区間の尤度比が直前のウィンドウ区間の尤度比より劣化した場合に、リードオフセット量が許容範囲を超えた可能性が高いものとしてオフセット位置補正を行うことも可能である。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1 ディスク装置、11 ディスク媒体、30 コントローラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8