特許第6385902号(P6385902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385902
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】油冷式スクリュ圧縮機及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/12 20060101AFI20180827BHJP
   F04C 18/16 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   F04C29/12 A
   F04C18/16 F
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-160052(P2015-160052)
(22)【出願日】2015年8月14日
(65)【公開番号】特開2017-36719(P2017-36719A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2017年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】藤原 雄一
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−45323(JP,A)
【文献】 特開2014−222111(JP,A)
【文献】 特開2014−47652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/12
F04C 18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機によって駆動される圧縮機本体と、
前記電動機の回転数を変更するためのインバータと、
前記圧縮機本体の吐出口と流体的に接続された油分離回収器と、
前記油分離回収器と流体的に接続され、前記油分離回収器から放気するための放気弁と、
前記油分離回収器で油に混入し得る水分量である残存水分量を演算して求める演算部と、
前記残存水分量が目標水分量となる前記電動機の第1回転数と吐出圧力が目標圧力となる前記電動機の第2回転数とを比較して大きい方の回転数で前記電動機を駆動させるように前記インバータを制御するインバータ制御部と、前記第1回転数で前記電動機を駆動する場合に前記吐出圧力が前記目標圧力よりも高く設定された所定の放気圧力を超えている間は前記放気弁を開弁する放気弁制御部とを有する制御装置と
を備える油冷式スクリュ圧縮機。
【請求項2】
前記圧縮機本体への吸込温度を検出するための吸込温度センサと、
前記圧縮機本体への吸込圧力を検出するための吸込圧力センサと、
前記圧縮機本体からの吐出温度を検出するための吐出温度センサと、
前記圧縮機本体からの吐出圧力を検出するための吐出圧力センサと
をさらに備え
前記演算部は、少なくとも前記吸込温度、前記吸込圧力、前記吐出温度、及び前記吐出圧力に基づいて前記残存水分量を演算して求める、請求項1に記載の油冷式スクリュ圧縮機。
【請求項3】
前記残存水分量は、吸込空気の水分量と圧縮空気の水分量の差分から求められる、請求項1又は請求項2に記載の油冷式スクリュ圧縮機。
【請求項4】
前記圧縮機本体への吸込流量を検出するための吸込流量センサと、
前記圧縮機本体への吸込湿度を検出するための吸込湿度センサと
をさらに備え、
前記演算部は、前記残存水分量の演算に前記吸込流量と前記吸込湿度とを使用する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の油冷式スクリュ圧縮機。
【請求項5】
前記圧縮機本体への吸込空気量を調整するための吸込弁をさらに備え、
前記制御装置は、前記吐出圧力が所定の放気圧力を超えたとき、前記吸込弁を閉弁する吸込弁制御部をさらに備えている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の油冷式スクリュ圧縮機。
【請求項6】
油分離回収器で油に混入し得る水分量である残存水分量を演算し、
前記残存水分量が目標水分量となる圧縮機の第1回転数を計算し、
吐出圧力が目標圧力となる前記圧縮機の第2回転数を計算し、
前記第1回転数と前記第2回転数を比較して大きい方の回転数で前記圧縮機を駆動し、
前記第1回転数で前記圧縮機を駆動しているとき、前記吐出圧力が前記目標圧力よりも高く設定された所定の放気圧力を超えている間、前記圧縮機の圧縮空気を大気中に放出させる、油冷式スクリュ圧縮機の制御方法。
【請求項7】
前記残存水分量の演算は、少なくとも吸込温度、吸込圧力、吐出温度、及び吐出圧力に基づいて行われる、請求項6に記載の油冷式スクリュ圧縮機の制御方法。
【請求項8】
前記残存水分量は、吸込空気の水分量と圧縮空気の水分量の差分から求められる、請求項6又は請求項7に記載の油冷式スクリュ圧縮機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油冷式スクリュ圧縮機及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却や潤滑のために油を使用する油冷式スクリュ圧縮機が知られている。油冷式スクリュ圧縮機が吸い込む空気には水分が含まれており、圧縮等により水分が析出することがある。析出した水分が潤滑油に混入すると、潤滑機能低下の原因となる。
【0003】
特許文献1には、このような水分の析出を防止するため、潤滑油に蓄積される水分量を演算し、水分量が所定下限値以上であるときに放気弁(放風弁とも言う)を開放し、油分離回収器内の空気を水分と共に外部に放出(放気)する油冷式スクリュ圧縮機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−11426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の油冷式スクリュ圧縮機は、要求圧力が低い低負荷状態において発熱量が少ないため、放気して水分を排出する運転状態になりやすく、かつ、水分を排出するのに時間を要する。また、水分を排出運転する状態の間は放気しているので油分離回収器内の圧力が低下する。さらに、このとき要求圧力が高い高負荷状態になっても、油分離回収器内の圧力が低下しているため即時に要求圧力を供給開始できない。
【0006】
本発明は、水分が油分離回収器内に蓄積することを防止すると共に、要求圧力が低い低負荷状態から要求圧力が高い高負荷状態に変化しても即時に要求圧力を供給開始できる油冷式スクリュ圧縮機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、電動機によって駆動される圧縮機本体と、前記電動機の回転数を変更するためのインバータと、前記圧縮機本体の吐出口と流体的に接続された油分離回収器と、前記油分離回収器と流体的に接続され、前記油分離回収器から放気するための放気弁と、前記油分離回収器で油に混入し得る水分量である残存水分量を演算して求める演算部と、前記残存水分量が目標水分量となる前記電動機の第1回転数と吐出圧力が目標圧力となる前記電動機の第2回転数とを比較して大きい方の回転数で前記電動機を駆動させるように前記インバータを制御するインバータ制御部と、前記第1回転数で前記電動機を駆動する場合に前記吐出圧力が前記目標圧力よりも高く設定された所定の放気圧力を超えている間は前記放気弁を開弁する放気弁制御部とを有する制御装置とを備える油冷式スクリュ圧縮機を提供する。ここで、前記残存水分量は、吸込空気の水分量と圧縮空気の水分量の差分から求められる。
【0008】
この構成によれば、残存水分量を所定の目標水分量に維持すると共に、圧縮空気の吐出圧力を目標圧力に維持できる。その結果、水分が油分離回収器内に蓄積することを防止すると共に、要求圧力が低い低負荷状態から要求圧力が高い高負荷状態に変化しても即時に要求圧力を供給開始できる。
【0009】
前記圧縮機本体への吸込温度を検出するための吸込温度センサと、前記圧縮機本体への吸込圧力を検出するための吸込圧力センサと、前記圧縮機本体からの吐出温度を検出するための吐出温度センサと、前記圧縮機本体からの吐出圧力を検出するための吐出圧力センサとをさらに備え、前記演算部は、少なくとも前記吸込温度、前記吸込圧力、前記吐出温度、及び前記吐出圧力に基づいて残存水分量を演算して求めることが好ましい。ここで、前記残存水分量は、吸込空気の水分量と圧縮空気の水分量の差分から求められる。
【0010】
吸込温度センサ、吸込圧力センサ、吐出温度センサ、及び吐出圧力センサに基づいて残存水分量を演算することで、定量的に残存水分量を算出できる。従って、より正確に残存水分量を所定の目標水分量に維持できる。
【0011】
前記圧縮機本体への吸込流量を検出するための吸込流量センサと、前記圧縮機本体への吸込湿度を検出するための吸込湿度センサとをさらに備え、前記演算部は、前記残存水分量の演算に前記吸込流量と前記吸込湿度とを使用することが好ましい。
【0012】
吸込流量センサ及び吸込湿度センサに基づいて吸込空気の水分量を演算することで、より正確に残存水分量を算出できる。
【0013】
前記圧縮機本体への吸込空気量を調整するための吸込弁をさらに備え、前記制御装置は、前記吐出圧力が所定の放気圧力を超えたとき、前記吸込弁を閉弁する吸込弁制御部をさらに備えていることが好ましい。
【0014】
放気弁と合わせて吸込弁を動作させることで、油冷式スクリュ圧縮機における過度な昇圧のより確実な防止と消費動力の低減ができる。
【0015】
本発明の第2の態様は、油分離回収器で油に混入し得る水分量である残存水分量を演算し、前記残存水分量が目標水分量となる圧縮機の第1回転数を計算し、吐出圧力が目標圧力となる前記圧縮機の第2回転数を計算し、前記第1回転数と前記第2回転数を比較して大きい方の回転数で前記圧縮機を駆動し、前記第1回転数で前記圧縮機を駆動しているとき、前記吐出圧力が前記目標圧力よりも高く設定された所定の放気圧力を超えている間、前記圧縮機の圧縮空気を大気中に放出させる油冷式スクリュ圧縮機の制御方法を提供する。ここで、残存水分量は、少なくとも吸込温度、吸込圧力、吐出温度、及び吐出圧力に基づいて演算することが好ましい。ここで、前記残存水分量は、吸込空気の水分量と圧縮空気の水分量の差分から求められる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、油冷式スクリュ圧縮機の残存水分量を所定の目標水分量に維持すると共に、圧縮空気の圧力を目標圧力に維持できる。その結果、油分離回収器内において蓄積水分量が増加することを防止すると共に、要求圧力が低い低負荷状態から要求圧力が高い高負荷状態に変化しても即時に要求圧力を供給開始できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る油冷式スクリュ圧縮機の概略構成図。
図2図1の油冷式スクリュ圧縮機の制御装置を示すブロック図。
図3図1の油冷式スクリュ圧縮機の制御を示すフローチャート。
図4】本発明の第2実施形態に係る油冷式スクリュ圧縮機の概略構成図。
図5図4の油冷式スクリュ圧縮機の制御装置を示すブロック図。
図6】本発明の第3実施形態に係る油冷式スクリュ圧縮機の概略構成図。
図7図6の油冷式スクリュ圧縮機の制御装置を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の油冷式スクリュ圧縮機2は、空気が主に流れる空気流路4と、潤滑及び冷却に使用される油が流れる油流路6とを備える。
【0020】
空気流路4には、圧縮機本体8と、油分離回収器10と、放気弁12とが設けられている。
【0021】
圧縮機本体8は、油冷式のスクリュ型であり、第1空気配管4aを通じて吸気口8aから空気を吸気する。圧縮機本体8には、機械的にモータ(電動機)14が接続されており、モータ14を駆動することにより、内部の図示しないスクリュで空気を圧縮する。モータ14には、インバータ16が電気的に接続されており、モータ14の回転数を変更できる。圧縮機本体8は、圧縮後、圧縮空気を吐出口8bから吐出する。吐出された圧縮空気には、多量の油が含まれており、第2空気配管4bを通じて油分離回収器10に供給される。
【0022】
油分離回収器10は、油と圧縮空気を分離する。油分離回収器10は、上部に配置された油分離エレメント10aと、下部に配置された油タンク10bとを備える。油分離エレメント10aは気体と液体(圧縮空気と油)を分離する。油分離エレメント10aを通過して油を分離された圧縮空気(以降、吐出空気という)は、第3空気配管4cを通じて供給先へ供給される。第3空気配管4cの途中からは、第4空気配管4dが分岐している。第4空気配管4dは、放気弁12を介して外部に通じている。従って、放気弁12の開度を調整することにより、第4空気配管4dを通じて外部に吐出空気を放気できる。また、油分離エレメント10aで分離された油は重力により下部に配置された油タンク10bに一旦溜まり、溜められた油は油流路6に流れる。
【0023】
油流路6には、圧縮機本体8と、油分離回収器10と、油フィルタ18と、油冷却器20とが設けられている。
【0024】
油分離回収器10の油タンク10bに溜められた油は、第1油配管6aを通じて圧縮機本体8に供給され、潤滑及び冷却等に使用される。第1油配管6aには、油フィルタ18と油冷却器20とが介設されている。油フィルタ18は、油以外の不純物を除去するために設けられているフィルタである。油冷却器20は、油の温度を低下させるために設けられている。油冷却器20の種類は特に限定されず、例えば熱交換器を使用してもよい。好ましくは、電力を消費しないものを使用することで油冷式スクリュ圧縮機2の効率を向上できる。
【0025】
圧縮機本体8で潤滑や冷却に使用された油は、圧縮機本体8の吐出口8bから圧縮空気と共に吐出され、第2油配管6b(第2空気配管4b)を通じて油分離回収器10に供給される。このようにして、油は循環使用に供される。
【0026】
第1空気配管4aには、圧縮機本体8へ吸気される空気(以降、吸込空気という)の温度(以降、吸込温度Tsという)を検出するための吸込温度センサ22と、吸込空気の圧力(以降、吸込圧力Psという)を検出するための吸込圧力センサ24とが設けられている。また、第2空気配管4bには、圧縮機本体8から吐き出された圧縮空気の温度(以降、吐出温度Tdという)を検出するための吐出温度センサ26と、圧縮機本体8から吐き出された圧縮空気の圧力(以降、吐出圧力Pdという)を検出するための吐出圧力センサ28とが設けられている。吸込温度センサ22、吸込圧力センサ24、吐出温度センサ26、及び吐出圧力センサ28は、制御装置30に測定値をそれぞれ出力する。
【0027】
制御装置30は、シーケンサ等のハードウェアと、それに実装されたソフトウェアにより構築されている。制御装置30は、個々のセンサ22〜28の測定値に基づいて、インバータ16及び放気弁12を制御する。
【0028】
図2に示すように、制御装置30は、インバータ制御部32と、放気弁制御部34と、演算部36とを備える。インバータ制御部32は、インバータ16を制御してモータ14の回転数を調整する。放気弁制御部34は、放気弁12を制御して供給先への供給圧力を調整する。演算部36は、吸込温度センサ22、吸込圧力センサ24、吐出温度センサ26、及び吐出圧力センサ28から受けた測定値に基づいて以下の式(1)から式(4)のように残存水分量Dr乃至は蓄積水分量Dを計算する。
【0029】
【数1】
【0030】
【数2】
【0031】
【数3】
【0032】
【数4】
【0033】
ここで上記式(1)から式(4)中の各変数について説明する。変数Dsは、第1空気配管4aから圧縮機本体8に吸気される吸込空気の水分量(以降、吸込水分量という)を表す。変数Qsは、第1空気配管4aにおける吸込空気の流量(以降、吸込流量という)を表し、吸込温度Ts及び吸込圧力Psに基づいて過去のデータから推定される値である。変数Hsは、吸込温度Tsに対応する飽和水蒸気圧である。変数Msは、第1空気配管4aにおける吸込空気の湿度(以降、吸込湿度という)を表し、吸込温度Ts及び吸込圧力Psに基づいて過去のデータから推定される値である。変数Ddは、第2空気配管4bを通じて圧縮機本体8から吐出される単位体積当りの圧縮空気の水分量(以降、吐出水分量という)を表す。変数Hdは、吐出温度Tdに対応する飽和水蒸気圧である。変数Drは、吸込水分量と吐出水分量の差分であり、油に混入する水分量、言い換えると油分離回収器10で油に混入し得る水分量(以降、残存水分量という)を表す。変数Dは、油に混入する水分量Drを蓄積した量(以降、蓄積水分量という)である。
【0034】
次に図3を参照して本実施形態の制御フローについて説明する。本実施形態の油冷式スクリュ圧縮機2は、起動後(ステップS3−1)、インバータ制御部32によりモータ14の第1回転数と第2回転数のうち高い方の回転数でインバータ16を制御する(ステップS3−2)。ここで、第1回転数は、残存水分量Drが目標水分量となるモータ14の回転数である。目標水分量は、例えばゼロに設定し、即ち油に水分が混入して実質的に蓄積しないように設定してもよい。第2回転数は、吐出圧力Pdが目標圧力となるモータ14の回転数である。目標圧力は、供給先から要求される要求圧力に応じて設定される。
【0035】
インバータ制御部32により第1回転数が選択されると、残存水分量Drを本実施形態の目標水分量であるゼロに追従するようにモータ14の回転数が制御される(ステップS3−3)。このとき、吐出圧力Pdが放気圧力よりも高いか否かを判断する(ステップS3−4)。吐出圧力Pdが放気圧力よりも高い場合は、放気弁制御部34により放気弁12を開いて放気し減圧する(ステップS3−5)。そうでない場合は放気を行わない。そして再びインバータ制御部32によりモータ14の第1回転数と第2回転数のうち高い方の回転数でインバータ16を制御し(ステップS3−2)、これらの処理を繰り返す。ここで、放気圧力とは、目標圧力付近での放気弁12の頻繁な開閉動作を防ぐために、目標圧力よりも若干高く設定される圧力のことである。
【0036】
インバータ制御部32により第2回転数が選択されると、吐出圧力Pdが目標圧力に追従するように制御される(ステップS3−6)。この場合、吐出圧力は目標圧力を上回ることがないため放気は必要ない。そして再びインバータ制御部32によりモータ14の第1回転数と第2回転数のうち高い方の回転数でインバータ16を制御し(ステップS3−2)、これらの処理を繰り返す。
【0037】
このように、残存水分量Drを所定の目標水分量に維持すると共に、油分離回収器10の圧力を目標圧力に維持できる。その結果、水分が油分離回収器10内に蓄積することを防止すると共に、要求圧力が低い低負荷状態から要求圧力が高い高負荷状態に変化しても即時に要求圧力を供給開始できる。
【0038】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態の油冷式スクリュ圧縮機2の概略構成図を示している。本実施形態の油冷式スクリュ圧縮機2は、第1空気配管4aに吸込流量センサ38及び吸込湿度センサ40が設けられたことに関する以外は図1の第1実施形態と実質的に同様である。従って、図1に示した構成と同様の部分については説明を省略する。
【0039】
本実施形態では、第1空気配管4aに、圧縮機本体8への吸込流量Qsを検出するための吸込流量センサ38と、圧縮機本体8への吸込湿度Msを検出するための吸込湿度センサ40とが設けられている。吸込流量センサ38及び吸込湿度センサ40は、制御装置30に測定値をそれぞれ出力する。
【0040】
図5に示すように、本実施形態の演算部36は、吸込流量センサ38、吸込湿度センサ40、吸込温度センサ22、吸込圧力センサ24、吐出温度センサ26、及び吐出圧力センサ28からの測定値に基づいて上記式(1)から式(3)のように残存水分量Drを計算する。
【0041】
上記式(1)から式(4)の変数のうち、吸込流量Qs及び吸込湿度Msは、第1実施形態と異なり、吸込流量センサ38及び吸込湿度センサ40で測定した実測値を使用する。従って、より正確な残存水分量Dr乃至は蓄積水分量Dを算出できる。
【0042】
本実施形態の制御フローについては、図3に示す第1実施形態の制御フローと同一である。
【0043】
(第3実施形態)
図6は、第2実施形態の油冷式スクリュ圧縮機2の概略構成図を示している。本実施形態の油冷式スクリュ圧縮機2は、第1空気配管4aに吸込弁42が追加されたことに関する以外は図1の第1実施形態と実質的に同様である。従って、図1に示した構成と同様の部分については説明を省略する。
【0044】
本実施形態では、第1空気配管4aに、圧縮機本体8への空気の供給量を調整するための吸込弁42が設けられている。また、制御装置30は、吐出圧力Pdが所定の放気圧力を超えたとき、閉じるように吸込弁42を制御する吸込弁制御部44をさらに備える。本実施形態の放気弁制御部34は、吐出圧力Pdが所定の放気圧力を超えたとき、開放するように放気弁12を制御する。
【0045】
本実施形態では、制御フローについては、図3に示す第1実施形態の制御フローと概略同一であるが、ステップS3−5において放気弁12により放気すると共に吸込弁42も同時に閉じる。このように放気弁12を開くとともに吸込弁42を閉じることで、油冷式スクリュ圧縮機2における異常昇圧のより確実な防止と消費動力の低減ができる。
【0046】
この発明の具体的な実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、上記第1から第3実施形態で記載した内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。また、吸込温度センサ22、吸込圧力センサ24、吐出温度センサ26、吐出圧力センサ28、吸込流量センサ38、および吸込湿度センサ40の各々は、空気流路4における何れかの空気配管4a〜4dだけでなく、センサそれぞれで同等の測定値を得られる他所に設置してもよい。
【0047】
また、残存水分量は、圧縮機本体8が吸い込む1m当たりのガス中の水分の量(吸込水分量)および圧縮機本体8が飽和状態で吐き出す1m当たりのガスに随伴し、流出してゆく水分の量(吐出水分量)の差分であればよく、上記実施形態以外の演算で求めてもよい。たとえば、残存水分量Wrは、次の数式5および6で求められる吸込水分量Wsと吐出水分量Wdの差分(Wr=Ws−Wd)から求めることができる。
【0048】
圧縮機本体8の吸込みガスが、吸込空気である場合、吸込温度をTs(℃)、吸込湿度でMs(%)とすると、吸込水分量Ws(kg/m3)は次式で表される。
【0049】
【数5】
【0050】
ここでHs(=Ms÷100×Hs')は水蒸気分圧(mmHg)を表し、Hs’(=10^{8.884-2224.4÷(273+Ts)})は飽和水蒸気圧(mmHg)を表す。ただし、「10^X」は10のX乗(=10X)を意味する。
【0051】
次に、圧縮空気の圧力、即ち吐出圧力をPd(kg/cm2G)、圧縮空気の温度、即ち吐出温度をTd(℃)とすると、吐出水分量Wd(kg/m3)は次式で表される。
【0052】
【数6】
【0053】
ここでHd(=100÷100×Hd'=Hd')は水蒸気分圧(mmHg)を表し、Hd’(=10^{8.884-2224.4÷(273+Td)})は飽和水蒸気圧(mmHg)を表す。
【符号の説明】
【0054】
2 油冷式スクリュ圧縮機
4 空気流路
4a 第1空気配管
4b 第2空気配管
4c 第3空気配管
4d 第4空気配管
6 油流路
6a 第1油配管
6b 第2油配管
8 圧縮機本体
8a 吸気口
8b 吐出口
10 油分離回収器
10a 油分離エレメント
10b 油タンク
12 放気弁
14 モータ
16 インバータ
18 油フィルタ
20 油冷却器
22 吸込温度センサ
24 吸込圧力センサ
26 吐出温度センサ
28 吐出圧力センサ
30 制御装置
32 インバータ制御部
34 放気弁制御部
36 演算部
38 吸込流量センサ
40 吸込湿度センサ
42 吸込弁
44 吸込弁制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7