特許第6385913号(P6385913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385913
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】グロメット
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20180827BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20180827BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   H02G3/22
   B60R16/02 622
   H01B17/58 C
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-229878(P2015-229878)
(22)【出願日】2015年11月25日
(65)【公開番号】特開2017-99168(P2017-99168A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2017年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165848
【氏名又は名称】原田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】覚張 慧一
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−193429(JP,U)
【文献】 特開2008−193793(JP,A)
【文献】 特開2008−193794(JP,A)
【文献】 特開2004−320951(JP,A)
【文献】 米国特許第7105750(US,B1)
【文献】 特開2014−057449(JP,A)
【文献】 特開平11−166669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
B60R 16/02
H01B 17/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する筐体と、前記貫通孔に挿通される電線との間に介在されるグロメットであって、
前記筐体の貫通孔に嵌合する胴部と、
前記胴部に対して筐体の一方面側に位置し、前記筐体の貫通孔よりも拡大された形状の部分を有する拡大形状部と、
を有し、
前記拡大形状部は、前記胴部と反対側の端部に向けて外形が小さくなる傾斜面を端部まで有するとともに、
前記傾斜面における前記胴部側部分、および端部側部分を除く、前記胴部側部分と、端部側部分との間の部分に、前記傾斜面よりも凹んだ凹部が形成されていることを特徴とするグロメット。
【請求項2】
請求項1のグロメットであって、
前記凹部は筐体の表面に垂直な面と、平行な面とを含むことを特徴とするグロメット。
【請求項3】
請求項1または請求項2のグロメットであって、
前記胴部における筐体の表面に平行な方向の断面形状は、1対の平行部と、両側の円弧状部とを有する形状を有し、前記凹部は、前記円弧状部に対応する前記傾斜面の部分のみに形成されていることを特徴とするグロメット。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうち何れか1項のグロメットであって、
前記拡大形状部における胴部と反対側の端部の端面に、胴部側端部の端面の位置よりも深い位置に底部を有する有底孔が形成されていることを特徴とするグロメット。
【請求項5】
請求項4のグロメットであって、
前記有底孔には、前記有底孔を複数の領域に区画するリブ部が形成されていることを特徴とするグロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通孔を有し、内部に防水が必要となる回路等が収容される筐体などと、上記貫通孔に挿通される電線との間に介在される自動車用のグロメットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用のアンテナやアンテナに接続された回路は、電線を介してラジオやカーナビゲーション装置等に接続されている。アンテナや回路を収納する筐体は、電線を通す貫通孔を有している。上記貫通孔と電線の間にグロメットを配置することで筐体の中に水や埃が入らないようになっている。このグロメットは、防水性を高めるためには、剛性を高くしたり、貫通孔とグロメットとの間の寸法をタイトにしたりすることが考えられるが、その場合、貫通孔へのグロメットの装着が困難になる。
【0003】
そこで、グロメットに、縮径容易な可撓性のカップ部を設けて、貫通孔への装着容易化を図る技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、グロメットの端部に傾斜部を形成するとともに、上記傾斜部に周方向に沿って山部と谷部とを交互に形成することによってグロメット装着時の接触抵抗の低減を図る技術も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−41359号公報
【特許文献2】特開2015−15869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のようにグロメットに可撓性のカップ部を設ける場合には、グロメットが大型化し、金型の制作費も高くなりがちである。
【0006】
また、特許文献2のようにグロメットの傾斜部に周方向に沿って山部と谷部とを交互に形成するためには、金型が複雑化しがちであり、やはり、金型の制作費が高くなりがちである。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、グロメットによる防水性(密閉性)を高めつつ、グロメットの貫通孔への装着性を高め、しかも小型化し製造コストの低減を容易にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、
貫通孔を有する筐体と、前記貫通孔に挿通される電線との間に介在されるグロメットであって、
前記筐体の貫通孔に嵌合する胴部と、
前記胴部に対して筐体の一方面側に位置し、前記筐体の貫通孔よりも拡大された形状の部分を有する拡大形状部と、
を有し、
前記拡大形状部は、前記胴部と反対側の端部に向けて外形が小さくなる傾斜面を有するとともに、
前記傾斜面における前記胴部側部分と、端部側部分との間の部分に、前記傾斜面よりも凹んだ凹部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
これにより、拡大形状部の傾斜面に凹部が形成されていることによって、凹部以外の部分が収縮しやすくなり、グロメットを貫通孔に挿入するのが容易になる。しかも、凹部が、傾斜面における胴部側部分と、端部側部分との間の部分に位置するように形成されることによって、貫通孔への挿入開始時に端部側部分の一部が貫通孔に引っかかったりしにくくできるとともに、拡大形状部における胴部側端部付近及び端部付近の剛性を高め、貫通孔への挿入後に、拡大形状部の胴部側部分を貫通孔の周囲に確実に押し付けて防水性を高めることなども容易にできる。
【0010】
第2の発明は、
第1の発明のグロメットであって、
前記凹部は筐体の表面に垂直な面と、平行な面とを含むことを特徴とする。
【0011】
これにより、グロメットの成形を容易にできる。
【0012】
第3の発明は、
第1または第2の発明のグロメットであって、
前記胴部における筐体の表面に平行な方向の断面形状は、1対の平行部と、両側の円弧状部とを有する形状を有し、前記凹部は、前記円弧状部に対応する前記傾斜面の部分のみに形成されていることを特徴とする。
【0013】
これにより、グロメットを前記1対の平行部に沿った方向に縮めてパネルの貫通孔に挿入することが、より容易にできる。
【0014】
第4の発明は、
第1から第3の発明のうち何れか1つのグロメットであって、
前記拡大形状部における胴部と反対側の端部の端面に、胴部側端部の端面の位置よりも深い位置に底部を有する有底孔が形成されていることを特徴とする。
【0015】
これにより、グロメットをパネル部材の貫通孔に挿入する際に、より収縮させやすくなり、貫通孔への挿入が容易になる。
【0016】
第5の発明は、
第4の発明のグロメットであって、
前記有底孔には、前記有底孔を複数の領域に区画するリブ部が形成されていることを特徴とする。
【0017】
これにより、拡大形状部における胴部と反対側の端部の端面の強度を保つことが容易にできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、グロメットによる防水性を高めつつ、グロメットの貫通孔への装着性を高め、しかも製造コストを低減することも容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】グロメットの構成を示す正面図である。
図2】グロメットの構成を示す側面図である。
図3図1のIII−III断面図である。
図4】グロメットの構成を示す平面図である。
図5】グロメットの構成を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
自動車用のグロメット100は、例えば図1図2に示すように筐体201に形成された貫通孔202に装着され、図示しない電線と接続された同じく図示しない回路等の防水性を保ちつつ上記電線を挿通させ得るようになっている(なお、図1図2においては便宜上、グロメット100と筐体201との間の隙間が誇張されて描かれている。)。
【0022】
グロメット100には、上記筐体201の貫通孔202に嵌まり込む胴部110と、貫通孔202よりも拡大された形状を有し筐体201を両面側から挟み込む形に形成された拡大形状部120およびフランジ形状部130が設けられている。上記拡大形状部120、胴部110、およびフランジ形状部130にかけて、電線が挿通される電線挿通孔140(図3図5)が設けられている。
【0023】
グロメット100の胴部110は、貫通孔202に対応する断面形状、すなわち、図3に示すように、1対の平行部111・111と、両側の円弧状部112・112とで囲まれる形状を有している。
【0024】
グロメット100の拡大形状部120は、胴部110と反対側の端部123に向けて外形が小さくなる傾斜面121を有している。傾斜面121における胴部側部分と、端部側部分との間の部分には、筐体201の表面に垂直な垂直面122aと、平行な平行面122bとを含み、傾斜面121よりも凹んだ例えば8つの凹部122が形成されている。上記凹部122における、筐体201の表面に平行な方向での配置は、例えば図4に示すように、傾斜面121の円弧状部分のみに位置するように設定されている。
【0025】
また、拡大形状部120の端部123における電線挿通孔140・140の間には、有底孔125が形成されている。上記有底孔125は、例えば4つのリブ部125aによって、3角形状の4つの領域125bに区画されている。また、有底孔125の深さは、拡大形状部120の胴部側端部124付近、具体的には例えば胴部側端部124から数ミリ胴部110側に位置するように設定されている。
【0026】
上記のように、拡大形状部120の傾斜面121に凹部122が形成されていることによって、凹部122以外の部分が収縮しやすくなり、グロメット100を筐体201の貫通孔202に挿入するのが容易になる。しかも、凹部122が、傾斜面121における胴部側部分と、端部側部分との間の部分、すなわち、図1において、凹部122の上端が拡大形状部120の端部123よりも下方で、下端が胴部側端部124よりも上方に位置するように形成されているので、貫通孔202への挿入開始時に端部側部分の一部が貫通孔202に引っかかったりしにくくできるとともに、拡大形状部120における胴部側端部124付近及び端部123付近の剛性を高めることができる。さらに胴部側端部124付近の剛性が確保されることにより、貫通孔202への挿入後に、拡大形状部120の胴部側部分を筐体201の貫通孔202の周囲に確実に押し付けて防水性を高めることなども容易にできる。
【0027】
さらに、特許文献1または特許文献2のような複雑な形状に形成する場合に比べて、グロメット100を成形するための型を容易に作製することができる。特に、凹部122が、筐体201に垂直な垂直面122aと、平行な平行面122bとを含むように形成されることによって、凹部122の垂直面122aが、傾斜面121と同様に傾斜も持つ場合などに比べて、一層、グロメット100の成形を容易にできる。また、凹部122を傾斜面121全長に亘って形成する場合に比べて、拡大形状部120が貫通孔202から抜けやすくなってしまうのを防止することも容易にできる。ここで、上記垂直面122aおよび平行面122bにおける垂直、水平の語は、例えばグロメット100の成形において必要とされる程度の勾配を有する場合を含む実質的な垂直、水平を意味する。
【0028】
また、凹部122が、胴部110の円弧状部112・112に対応する傾斜面121の部分だけに形成されていることによって、グロメット100を胴部110の平行部111に沿った方向に縮めて筐体201の貫通孔202に挿入することが、より容易にできる。
【0029】
また、拡大形状部120の端部123に、胴部側端部124の端面の位置よりも深い位置に底部125cを有する有底孔125が形成されていることによって、グロメット100を筐体201の貫通孔202に挿入する際に、より収縮させやすくなり、貫通孔202への挿入が容易になる。
【0030】
また、有底孔125に、複数の領域125bに区画するリブ部125aが形成されていることによって、やはり、有底孔125により高まった挿入時の柔軟性を保持しつつ、剛性を高めて挿入後の防水性を高めることが容易にできる。
【0031】
また、上記のように4つの有底孔の3角形状の底辺に対向する頂点が、楕円形の端部123の中心点に向かっている場合には、拡大形状部120を収縮させやすくすることが容易になる。また、上記のようなリブ部125aは、電線挿通孔140の間に設けられることで、電線挿通孔140に必要な面積を十分確保しつつ、端部123の面の強度を保つのに役立たせることもできる。
【0032】
(その他の事項)
なお、上記の例では、拡大形状部120の傾斜面121に合計で8つの凹部122が形成される例を示したが、これに限らず、グロメット100の大きさや精度、材質、挿入容易性、防水性などを考慮して種々設定すればよい。
【0033】
また、拡大形状部120の端部123に形成された有底孔125は、リブ部125aによって3角形状の4つの領域125bに区画されている例を示したが、これに限らず、例えば4角形状の4つの領域に田の字状に区画するリブ部が設けられたり、5角形以上の外形形状の有底孔に放射状のリブ部が設けられたりしてもよい。
【0034】
また、有底孔125の底部125cの深さは、拡大形状部120の胴部側端部124の位置よりも浅い位置に底部125c(図1)が位置するように設定されてもよく、グロメットの剛性と収縮性を両立できる有底形状である限り、種々の位置の深さに設定されればよい。
【0035】
また、電線挿通孔140の数も、2つに限らず、1つや3つ以上設けられてもよい。
【符号の説明】
【0036】
100 グロメット
110 胴部
111 平行部
112 円弧状部
120 拡大形状部
121 傾斜面
122 凹部
122a 垂直面
122b 平行面
123 端部
124 胴部側端部
125 有底孔
125a リブ部
125b 領域
125c 底部
130 フランジ形状部
140 電線挿通孔
201 筐体
202 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5