特許第6385922号(P6385922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スタムフォード・ディバイセズ・リミテッドの特許一覧

特許6385922ネブライザのための開口板を製造する方法
<>
  • 特許6385922-ネブライザのための開口板を製造する方法 図000003
  • 特許6385922-ネブライザのための開口板を製造する方法 図000004
  • 特許6385922-ネブライザのための開口板を製造する方法 図000005
  • 特許6385922-ネブライザのための開口板を製造する方法 図000006
  • 特許6385922-ネブライザのための開口板を製造する方法 図000007
  • 特許6385922-ネブライザのための開口板を製造する方法 図000008
  • 特許6385922-ネブライザのための開口板を製造する方法 図000009
  • 特許6385922-ネブライザのための開口板を製造する方法 図000010
  • 特許6385922-ネブライザのための開口板を製造する方法 図000011
  • 特許6385922-ネブライザのための開口板を製造する方法 図000012
  • 特許6385922-ネブライザのための開口板を製造する方法 図000013
  • 特許6385922-ネブライザのための開口板を製造する方法 図000014
  • 特許6385922-ネブライザのための開口板を製造する方法 図000015
  • 特許6385922-ネブライザのための開口板を製造する方法 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385922
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ネブライザのための開口板を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 1/08 20060101AFI20180827BHJP
   A61M 11/00 20060101ALI20180827BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20180827BHJP
   C25D 5/02 20060101ALN20180827BHJP
   C25D 3/56 20060101ALN20180827BHJP
【FI】
   C25D1/08
   A61M11/00 300
   C25D7/00 S
   !C25D5/02 B
   !C25D3/56 F
【請求項の数】19
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-515467(P2015-515467)
(86)(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公表番号】特表2015-527481(P2015-527481A)
(43)【公表日】2015年9月17日
(86)【国際出願番号】EP2013060803
(87)【国際公開番号】WO2013186031
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2016年5月23日
(31)【優先権主張番号】61/658,054
(32)【優先日】2012年6月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513164163
【氏名又は名称】スタムフォード・ディバイセズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100117411
【弁理士】
【氏名又は名称】串田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ホーガン,ブレンダン
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−100557(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/083380(WO,A1)
【文献】 実開平05−074669(JP,U)
【文献】 特表平10−502132(JP,A)
【文献】 特表平10−513398(JP,A)
【文献】 特表2013−516266(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0081476(US,A1)
【文献】 特表平10−507243(JP,A)
【文献】 特開平05−239682(JP,A)
【文献】 国際公開第01/071065(WO,A1)
【文献】 特表2008−545525(JP,A)
【文献】 特開2002−289097(JP,A)
【文献】 特開平04−322290(JP,A)
【文献】 特開2002−166541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00−7/12
A61M 11/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料のマンドレル(20)を設けるステップと、
マスクを前記マンドレル上にカラム(21)のパターンで付着するステップであって、
前記カラムが、マンドレルの平面において、1μm〜10μmの幅寸法を有する、ステップと、
前記カラム周りの空間を電気めっき(22)するステップと、
前記マスクを取り外して、前記マスクカラムがあった所にエアロゾル形成開口を有する、電気めっき材料のウェーハを設けるステップと、 前記ウェーハを前記マンドレルから取り外すステップとを含み、
前記マスキングおよびめっきステップに続いて、ウェーハ厚さを増加させるための、マスキング(25)およびめっき(26)の少なくとも1つの後続のサイクルが行われ、
前記少なくとも1つの後続のサイクルにより、前記ウェーハを前記マンドレルから取り外すための基準、および/または開口板の動作の所望の振動数に対する基準に従って所望されるレベルまで、ウェーハ(30)厚さ全体を増加させ、
マスク取外し後、前記少なくとも1つの後続のサイクルにより、少なくともいくつかが複数のエアロゾル形成開口(33)の上にある空間(32)と、前記エアロゾル形成開口(33)のいくつかを塞ぐめっき材料(31)とを設け、
前記上にある空間(32)を設けることと前記塞ぐことが、前記開口板を通る所望の流量に従って実行される、エアロゾル形成開口板ウェーハ(30)を製造する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記カラムが5μm〜40μmの深さを有する、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記カラムがマンドレルの平面において、1mm当たり111〜2500個の密度を有する、方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法において、前記少なくとも1つの後続のサイクルにより、ウェーハ厚さ全体を45μm〜90μmとしている、方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法において、前記カラム(21)が15μm〜25μmの深さを有する、方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法において、前記カラム(21)がマンドレルの平面において、2μm〜6μmの幅寸法を有する、方法。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載の方法において、前記めっき材料(22)と特定のサイクルの前記マスク材料(21)とが実質的に全く重ならない、方法。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載の方法において、前記少なくとも1つの後続のサイクルにより、ウェーハ厚さ全体を50〜90μmまで増加させる、方法。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載の方法において、エアロゾル形成孔(51)が漏斗状に先細になるように、第1のマスキングおよびめっきが実行される、方法。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載の方法において、上にある空間(55)が漏斗状に先細になるように、後続のマスキングおよびめっきが実行される、方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法において、めっき金属がNiおよび/またはPdを含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記Niおよび/またはPdが、耐食性のために選択された濃度で表面に存在する、方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の方法において、Pdの割合が85%w/w〜93%w/wであり、実質的に残部がNiである、方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法において、前記めっき材料が、抗菌性のために選択された濃度でAgおよび/またはCuを表面に含む、方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法において、前記ウェーハをさらに加工して、エアロゾル形成デバイスに嵌め込む準備のできた開口板(40)を設けるさらなるステップを含む、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、前記ウェーハが非平面状の開口板(40)に形成される、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、前記ウェーハが、所望のエアロゾル化噴射角度に従って選択された構成を有する形状に形成される、方法。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の方法において、前記ウェーハが、作動するドーム状部分と、駆動装置に係合するフランジとを有する形状に形成される、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、前記ウェーハが形成前に焼きなましされる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル(または「ネブライザ」)デバイスのための開口板の製造に関する。振動する開口板が、幅広いエアロゾルデバイスで使用されており、一般的に、圧電素子により振動される振動支持部により縁の周りで支持される。また、エアロゾルデバイスは、例えばホーンからの音響信号によって動作して、開口板を通して薬剤の流れを濾過する、受動開口板または静止開口板を有することができる。
【背景技術】
【0002】
開口板は、液剤のエアロゾル送達のために使用されて、肺への薬物送達に適した、制御された液滴サイズを送達する。理想的なネブライザは、一定の正確な粒径と共に、標的領域にできるだけ効率的に薬剤を送達するように変更可能な出力速度を確保するものである。気管支および細気管支領域等の肺深部へのエアロゾルの送達には、一般的に2〜4μmの小さい再現可能な粒径が必要である。一般に、1ml/分超の出力が必要とされる。
【0003】
現在、開口板は、電気めっきおよびレーザ穿孔を含む様々な異なる手段により製造されている。電気めっきは、一般に、技術的および経済的観点から最も有利な製造方法である。米国特許第6,235,177号(Aerogen)は、めっき浴(一般的に、パラジウムおよびニッケル)中の液化した金属がウェーハ上で液体の形態から固体の形態へ移行する電着プロセスにより、ウェーハ材料がマンドレル上に構築される、電気めっきに基づく手法について記載している。材料は、マンドレル上の導電性表面に転写され、非導電性のフォトレジスト領域には転写されない。領域は、非導電性フォトレジストによりマスキングされており、金属の堆積の必要がない。図1参照。めっきプロセスの終了後、マンドレル/ウェーハアセンブリが浴から取り出され、ウェーハがマンドレルから剥がされて、次に開口板に加工される。
【0004】
しかしながら、この手法に関する問題は、孔サイズが、めっき時間と、これによるウェーハの厚さとに依存することである。プロセスは制御が困難であり得、完全に制御されない場合、図2に示すように一部の孔がほぼ閉じられるか閉鎖され、または図3に示すように大きくなりすぎ、孔のサイズに公差外の変動があり得る。また、単位面積当たりの孔の数に制限がある。さらに、この技術によれば、出力速度の増加は、通常、粒径の増加を必要とし、これは一般に望ましくないとされ得る。粒径を増加させることなく出力速度を増加させることがより望ましい。
【0005】
孔サイズの精度と単位面積当たりの孔の数との組合せは、ネブライザの出力速度と、これによる粒径分布との重要な決定要因となり得る。
【0006】
WO2011/139233(Agency for Science,Technology and Research)は、SU8材料を用いてフォトマスキングにより製造されたマイクロシーブについて記載している。
【0007】
米国特許第4844778号(Stork Veco)は、媒体を分離するための膜、およびこのような膜を組み入れた分離デバイスの製造について記載している。製造方法は、2つのステップのフォトリソグラフィ手順を含む。
【0008】
EP1199382(Citizen watch Co.Ltd.)は、第1の孔を通した露光があるために、複数のサイクルにおいて感光材料への露光があり、上部へ向かって先細になった、より深い孔を設ける、孔構造の製造方法について記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題に対処する、ネブライザのための開口板を製造する改良された方法を提供することに向けられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、導電性材料のマンドレルを設けるステップと、マスクをマンドレル上にカラムのパターンで付着するステップと、カラム周りの空間を電気めっきするステップと、マスクを取り外して、マスクカラムがあった所にエアロゾル形成孔を有する、電気めっき材料のウェーハを設けるステップとを含み、前記マスキングおよびめっきステップに続いて、ウェーハ厚さを増加させるための、マスキングおよびめっきの少なくとも1つの後続のサイクルが行われ、少なくとも1つの後続のサイクルにより、ウェーハをマンドレルから取り外すための基準、および/または開口板の動作の所望の振動数に対する基準、および/またはエアロゾル化駆動装置の物理的制約に対する基準に従って所望されるレベルまで、ウェーハ厚さ全体を増加させ、少なくとも1つの後続のサイクルにより、少なくともいくつかが複数のエアロゾル形成開口の上にある複数の空間と、複数の前記エアロゾル形成開口のいくつかを塞ぐめっき材料とを設け、少なくとも1つの後続のサイクルが、開口板を通る所望の流量に従って実行される、エアロゾル形成開口板ウェーハを製造する方法が提供される。
【0011】
一部の実施形態では、全サイクルのすべてのマスクを共に取り外すことができるが、他の実施形態では、1つのサイクルのマスクをマスキングおよびめっきの後続のサイクル前に取り外すことができ、その場合、後続のめっきが下方の孔のいくつかを少なくとも部分的に埋める可能性が高くなる。
【0012】
一実施形態では、カラムが5μm〜40μm、好ましくは15μm〜25μmの深さを有する。一部の実施形態では、カラムがマンドレルの平面において、1μm〜10μm、好ましくは2μm〜6μmの幅寸法を有する。
【0013】
一実施形態では、めっき材料がカラムの上部と実質的に同じ高さになるまで、電気めっきが継続される。
【0014】
一実施形態では、めっき材料とマスク材料とが実質的に全く重ならない。一実施形態では、少なくとも1つの後続のサイクルにより、ウェーハ厚さ全体を50μm超、好ましくは58μm超まで増加させる。一実施形態では、後続のサイクルまたは後続の各サイクルにおける閉塞の程度が、開口板の所望の機械的特性のために選択される。
【0015】
一実施形態では、エアロゾル形成孔が漏斗状に先細になるように、第1のマスキングおよびめっきが実行される。
【0016】
一実施形態では、上にある空間が漏斗状に先細になるように、後続のマスキングおよびめっきが実行される。
【0017】
一実施形態では、めっき金属がNiおよび/またはPdを含む。一実施形態では、Niおよび/またはPdが、耐食性のために選択された濃度で表面に存在する。一実施形態では、Pdの割合が85%w/w〜93%w/w、好ましくは約89%であり、実質的に残部がNiである。一実施形態では、めっき材料が、抗菌性のために選択された濃度でAgおよび/またはCuを表面に含む。
【0018】
一実施形態では、方法が、ウェーハをさらに加工して、エアロゾル形成デバイスに嵌め込む準備のできた開口板を設けるさらなるステップを含む。一実施形態では、ウェーハが非平面状の開口板に形成される。一実施形態では、ウェーハが、所望のエアロゾル化噴射角度に従って選択された構成を有する形状に形成される。一実施形態では、ウェーハが、作動するドーム状部分と、駆動装置に係合するフランジとを有する形状に形成される。一実施形態では、ウェーハが形成前に焼きなましされる。
【0019】
別の態様では、本発明は、いずれかの実施形態において上記で定義された方法で形成される、金属の本体を備えた開口板ウェーハを提供する。
【0020】
さらなる態様において、本発明は、いずれかの実施形態において上記で定義された方法により形成される開口板を提供する。
【0021】
別の態様では、本発明は、エアロゾル形成貫通孔を有するフォトリソグラフィめっき金属の下部層と、空間を有するフォトリソグラフィめっき金属の少なくとも1つの上部層とを備え、前記空間が複数のエアロゾル形成貫通孔の上にあり、大孔当たりのエアロゾル形成孔のサイズおよび数が所望のエアロゾル流量に関連する、開口板ウェーハを提供する。
【0022】
一実施形態では、上部層が下部層の孔のいくつかを塞ぐ。
【0023】
一実施形態では、すべての層の金属が同一である。
【0024】
一実施形態では、めっき金属がNiおよび/またはPdを含む。一実施形態では、Niおよび/またはPdが、耐食性のために選択された濃度で表面に存在する。
【0025】
一実施形態では、Pdの割合が85%w/w〜93%w/w、好ましくは約89%であり、実質的に残部がNiである。一実施形態では、めっき金属が、抗菌性のために選択された濃度でAgおよび/またはCuを表面に含む。
【0026】
別の態様では、本発明は、いずれかの実施形態において上記で定義されたウェーハを備えた開口板を提供する。
【0027】
別の態様では、本発明は、いずれかの実施形態において上記で定義された開口板と、板に係合して、エアロゾルを形成するための所望の振動数で板を振動させる駆動装置とを備えた、エアロゾル形成デバイスを提供する。
【0028】
別の態様では、本発明は、いずれかの実施形態において上記で定義された開口板と、受動開口板の使用のための開口板の支持部と、開口板を通る液体の波動を生じさせるように構成されたホーンとを備えた、エアロゾル形成デバイスを提供する。
【0029】
本発明は、添付図面を参照して、例としてのみ提示される、以下のいくつかの実施形態の説明からより明確に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】上記の先行技術プロセスの概略を説明する横断面図である。
図2】上記の先行技術プロセスの概略を説明する横断面図である。
図3】上記の先行技術プロセスの概略を説明する横断面図である。
図4図4(a)は、方法の第1の段階についてのマスキングおよびめっきステップを示す横断面図である。 図4(b)は、方法の第1の段階についてのマスキングおよびめっきステップを示す横断面図である。
図5】この段階についてのウェーハの部分平面図である。
図6図6(a)は、第2のマスキングおよびめっき段階を示す横断面図である。 図6(b)は、第2のマスキングおよびめっき段階を示す横断面図である。
図7】第2のマスキングおよびめっき段階を示す平面図である。
図8】レジスト除去後の横断面図である。
図9】最終の開口板形状を形成するための打ち抜き後のウェーハを示す図である。
図10】開口板の動作を示す、粒径対流量のプロット図である。
図11図11(a)は、孔が先細である第2の実施形態についての、図4(a)に相当する図である。 図11(b)は、孔が先細である第2の実施形態についての、図4(b)に相当する図である。
図12】孔が先細である第2の実施形態についての、図5に相当する図である。
図13図13(a)は、第2の実施形態についての、図6(a)に相当する図である。 図13(b)は、第2の実施形態についての、図6(b)に相当する図である。
図14】フォトレジストマスクの除去後の、1つの上部大孔の領域の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図4(a)を参照すると、マンドレル20には、製造される開口板の孔または細孔の寸法を有する垂直カラムのパターンに、フォトレジスト21が付着される。カラムの高さは、好ましくは5μm〜40μm、より好ましくは5μm〜30μm、最も好ましくは15μm〜25μmである。直径は、好ましくは1μm〜10μm、最も好ましくは約2μm〜6μmである。このマスクパターンにより、エアロゾル粒径を画定する開口をもたらす。先行技術と比較すると、開口は、単位面積当たりの数がはるかに大きく、20倍の増加が可能であるため、1mm当たり最大2500個の孔を有する。
【0032】
図4(b)および図5を参照すると、カラム21の周りの空間に金属22が電着している。
【0033】
図6(a)に示すように、いくつかの第1のカラム21の領域を含む、はるかに大きい(幅および高さが大きい)カラムの第2のフォトレジストマスク25がさらに付着される。第2のめっき層の孔の直径は、20μm〜400μm、より好ましくは40μm〜150μmである。より大きい流量を確保するためには、この直径が範囲の上限で作製され、より小さい流量を確保するためには、この直径が範囲の下限で作製されて、第1の層のより小さい開口の多くを閉じる。
【0034】
図6(b)および図7を参照すると、フォトレジスト25の周りの空間がめっきされて、マンドレル20にウェーハ本体26を設ける。フォトレジスト21、25がレジスト除去装置により取り除かれ、洗い流されると、図8に示すように、めっき材料22、26は、大きい上部開口32と小さい下部開口33とを有する開口板素材またはマスク30の形状になる。本実施形態では、すべてのレジスト21、25が共に除去されるが、マスキングおよびめっきの後続のサイクルの前にレジスト21を除去してもよいことが想定される。この場合、後続のめっきが、エアロゾル形成開口のいくつかを少なくとも部分的に埋める可能性が高い。
【0035】
図9に示すように、ウェーハ30が円板に打ち抜かれ、ドーム状に形成されて、最終製品の開口板40をもたらす。
【0036】
この段階で、所望の噴射角度を呈するように、かつ/または駆動制御装置のために最適な固有振動数を設定するように、ドーム直径を選択することができる。ドーム形状は漏斗効果をもたらし、ドーム状板の特定の形状は噴射特性に影響する。
【0037】
代替実施形態では、開口板がドーム状ではなく、平面のままであり、受動板ネブライザ等のデバイスにおける使用に適している。このタイプのネブライザでは、ソノトロード(sonotrode)またはホーンが、板の上の薬剤に接触して配置される。圧電素子により、トランスデューサホーンを高速移動させて、開口板に対して薬剤の波動を生じさせることにより、薬剤の流れが板を通って濾過されて、エアロゾルとして出口側へ流れるようにする。
【0038】
本発明の開口板製造の利点の大部分は、振動デバイスまたは受動デバイスに適用可能である。
【0039】
より詳細には、マンドレル20が、標的孔寸法に等しいカラム高さおよび幅を有するフォトレジスト21で被覆される。この被覆および後続の紫外線(UV)発生により、フォトレジストのカラム21がマンドレル20上に立ったままになるようにする。これらのカラムは、所要の直径を有し、剛性によって支持する高さを有する。カラムの直径が10μm未満、好ましくは6μm未満にすぎないため、先行技術よりも多くのカラム、およびこれによる単位面積当たりの孔を得ることができる。先行技術の電気めっき手法よりも20倍多い孔があり得ることが期待される。これにより、開口面積、およびこれによるネブライザ出力の割合を実質的に増加させる可能性が生じる。
【0040】
次に、直立したカラム21の形状の選択的に現像されたフォトレジストを有するマンドレル20が、めっき浴に入れられ、次いで、金属を含む電着プロセスを通して、一般的に液体のパラジウムニッケル(PdNi)が表面に付与される。カラムの高さに到達したら、めっき作業が停止される。フォトレジストのカラムの高さにちょうど到達したときにめっきが停止されるので、オーバーめっきは許容されない。めっき溶液が、所望の開口板寸法および振動数等の動作パラメータに合わせて選択される。Pdの割合は、約85%〜93%w/wであってよく、一実施形態では約89%w/wであり、残部が実質的にすべてNiである。めっき構造は、好ましくは、例えば0.2μm〜2.0μmの粒径を持つ、細かくランダムな等軸粒微細構造を有する。電着分野の当業者は、両方のめっき段階についてのめっき条件を状況に合わせてどのように選択すればよいかを理解するであろう。以下の文献:米国特許第4628165号、米国特許第6235117号、米国特許出願第2007023547号、米国特許出願第2001013554号、WO2009/042187、およびLu S.Y.,Li J.F.,Zhou Y.H.,”Grain refinement in the solidification of undercooled Ni−Pd alloys”.Journal of Crystal Growth 309(2007)103−111、Sept 14 2007の内容全体が参照により組み込まれる。一般に、パラジウムおよびニッケルを含む大部分の電気めっき溶液が有効であり、或いはニッケルのみ、または実際にはリンおよびニッケル(14:86)または白金も有効である。耐食性を与えるために、非パラジウムウェーハに、PdNiにおいて表面でめっき(0.5〜5.0μm厚、好ましくは1.0〜3.0μm厚)することができる。これはまた、小さい開口が望ましい場合には、孔サイズを小さくする。
【0041】
めっき浴から取り出されるとき、ウェーハ厚さは、カラムの高さに応じて、一般的に5〜40μmである。この時点でウェーハを剥がすと、先行技術の標準の60μm厚と比較して非常に薄いウェーハとなる。この厚さのウェーハは剛性がなく、加工が非常に困難で、人工呼吸器に組み込まれることもある既存の電子制御駆動装置が使用可能になるような最新技術に相当する固有振動数を達成するために、ネブライザコアの機械製作を複雑に、費用をかけて変更する必要がある。異なる駆動制御装置の使用は、関連する費用のために、市場で受け入れられるには大きな経済的障壁となる。
【0042】
この問題は、めっきされたマンドレルを第2のフォトレジスト堆積プロセスに加えることによって克服される。一実施形態では、フォトレジスト厚さが、ウェーハ厚さ全体を約60μm(先行技術のウェーハ厚さと同様)にするのに必要とされるものに等しい深さに配置される。第2のマスク高さは、好ましくは、多くの適用について40〜50μmである。次いで、より大きいカラムがめっきされた表面に立つことができるように、フォトレジストが現像される。カラムは、一般的に、40〜100μmの直径を有するが、これより大きくても小さくてもよい。第2のめっきから追加の高さがあることによって、マンドレルからの取外しを助けるが、重要なのは、これによって、先行技術の開口板厚さに相当する特定の厚さも達成して、最終製品の開口板40を市販されている既存の制御装置により電気的に駆動できるようにすることである。これにより、エアロゾルを発生させるための正しい振動を達成するように適合する固有振動数が生じる。一般に、第2のめっき段階は、剛性、可撓性、および曲げ強さについて、ネブライザへの適用により適した厚さをもたらす。別の態様は、第2のめっきがより小さい孔のいくつかを塞ぐことによって、流量の制御が向上することである。したがって、第2のマスキングおよびめっき段階を使用して、所望の流量に従って最終製品の開口板を「調整」することができる。また、開口板を小バッチ間で迅速に変化させることができるため、幅広く異なって調整された板が可能になる。
【0043】
その後、エッチングまたはレーザ切断等の後続のプロセスのいずれかの助けなしで、ウェーハが基板から慎重に剥がされる。このように剥離が容易であることは、ただでさえ脆弱なウェーハにさらなる機械的応力を加えることがないという利点を有する。次いで、ウェーハは、計測検査前に、フォトレジスト除去装置内で洗浄され洗い流される。
【0044】
開口板素材またはマスク30において、孔33は第1のめっき層に等しい深さを有し、最終ウェーハ厚さは、両方のめっき層の合計に等しくなる。図8および図9参照。その後、焼きなまし、打ち抜き、およびドーム形成の準備ができて、図9に示す振動板40を形成する。
【0045】
ある適用についての膜特性を向上させるためにさらなるステップがあってもよい。例えば、膜は、銅、銀、パラジウム、白金、および/またはPdNi合金等の耐食材料でオーバーめっきされた電鋳Ni基板材料からなるものであってよい。銅および銀が抗菌性を有しており、有利である。
【0046】
放出される液滴のサイズを画定する複数のエアロゾル形成貫通孔を持つ電鋳金属の第1の層と、エアロゾル形成孔の上方により大きい直径の孔または空間を持ち、めっき材料が第1の層の孔のいくつかを塞ぐ、同様の、または同様でない電鋳材料の第2の上部層とを有する開口板を、本発明が提供することが理解されよう。
【0047】
種々の実施形態において、第2の層が、液滴サイズを形成する第1の層の所定数の孔が露光されるように選択された直径を持ついくつかの孔または空間を有し、これにより、有効な孔の数を決定して、時間単位当たりのエアロゾル化される液体量を画定する。
【0048】
両方の層の孔のサイズおよび数を独立して変化させて、先行技術のめっき画定技術では不可能な、所望の範囲の液滴サイズおよび流量分布を達成することができる。
【0049】
本発明が、先行技術と比較して、単位面積当たりの孔の数がはるかに大きくなる可能性をもたらすことも理解されよう。例えば、20倍の増加が可能であるため、1mm当たり最大2500個の孔を有する。
【0050】
また、種々の実施形態において、第2の層は、第1の層のエアロゾル形成孔のいくつかを少なくとも完全にまたは部分的に埋めるため、両方の層の機械的固定を形成して、耐用期間の要件の達成を助ける。
【0051】
以下は、直径5mmの開口板(AP)についての異なる孔構成の例の表である。
【0052】
【表1】
【0053】
本発明の有利な態様として、以下が挙げられる。
(i)単位面積当たりの孔の数を大きくすることができる、
(ii)より小さく、直径方向により正確な孔サイズが可能である、
(iii)市販されている既存のウェーハと同様の厚さであり、既存の制御装置の正確な振動数に適合してエアロゾル発生器を作動させるために、ネブライザを再設計するという面倒な必要を軽減する、
(iv)2つのめっき層またはめっきステップしか必要でない、
(v)ウェーハをマンドレル基板から慎重に剥がすことが依然として容易である、
(vi)既存の電子制御装置を使用して、固有振動数が適合するときに開口板を駆動することができ、同様の開口板厚さが達成された、
(vii)より小さく、より制御可能な粒径(2〜4μm)を得ることができる、
(viii)より大きい流量(0.5〜2.5ml/分、より一般的には0.75〜1.5ml/分)を達成することができる、
(ix)記載した先行技術と比較して、互いにより独立した流量および粒径を達成することができる(一般的に、先行技術では、流量の増加が、通常、粒径の増加を必要とし、また逆も同様である)。これらの利点を図10のプロット図に示す。
【0054】
図11〜14を参照すると、第2の実施形態において、加工は前記実施形態とほぼ同一である。しかしながら、この場合、フォトレジストカラムの組の両方が先細であり、これによる孔が先細になって、エアロゾル流体の流れを向上させる。マンドレル50、第1のマスクカラム51、および第1のマスクカラム51間のめっき52がある。第2のマスクは先細のカラム55を備え、カラム55間の空間が金属56でめっきされる。マスクの張出しの下に十分なめっきが確実にあるようにするために、より細心の注意がめっきステップに必要である。図14は、この場合、フォトレジストの除去後の平面図である。PdNi本体56/52のそれぞれの上部大穴65に対していくつかの小孔61があることが見て取れる。上部孔65は、小孔61まで漏斗の効果を有し、それ自体、漏斗状になっている。
【0055】
本発明は、説明した実施形態に限定されるものではなく、構成および詳細を変更することができる。例えば、ウェーハをマンドレルから取り外すことができる場合に、第1の段階で達成される必要なウェーハ深さのため、または使用可能な改良されたウェーハ取外し技術のため、マスキングおよびめっきの第2のサイクルが必要でなくてもよいことが想定される。加えて、第3の層を付着して、開口板にさらなる機械的剛性を与えてもよい。また、前記実施形態においては、層が同一の金属からなる。しかしながら、層が異なっていてもよく、実際には、それぞれの孔形成層内の金属が、異なる金属のサブ層を含んでいてもよいことが想定される。例えば、より高い耐食性および/またはある親水性もしくは疎水性のために、一方または両方の表面の組成が異なっていてもよい。また、上部の1〜5μmまたは1〜3μmの表面層について、さらなるめっきステップがあってもよい。
以上説明したように、本発明は以下の形態を有する。
[形態1]
導電性材料のマンドレル(20)を設けるステップと、
マスクを前記マンドレル上にカラム(21)のパターンで付着するステップと、
前記カラム周りの空間を電気めっき(22)するステップと、
前記マスクを取り外して、前記マスクカラムがあった所にエアロゾル形成孔を有する、電気めっき材料のウェーハを設けるステップとを含み、
前記マスキングおよびめっきステップに続いて、ウェーハ厚さを増加させるための、マスキング(25)およびめっき(26)の少なくとも1つの後続のサイクルが行われ、
前記少なくとも1つの後続のサイクルにより、前記ウェーハを前記マンドレルから取り外すための基準、および/または開口板の動作の所望の振動数に対する基準、および/またはエアロゾル化駆動装置の物理的制約に対する基準に従って所望されるレベルまで、ウェーハ(30)厚さ全体を増加させ、
マスク取外し後、前記少なくとも1つの後続のサイクルにより、少なくともいくつかが複数のエアロゾル形成開口(3)の上にある空間(32)と、前記エアロゾル形成開口(33)のいくつかを塞ぐめっき材料(31)とを設け、
前記少なくとも1つの後続のサイクルが、前記開口板を通る所望の流量に従って実行される、エアロゾル形成開口板ウェーハ(30)を製造する方法。
[形態2]
前記カラム(21)が5μm〜40μm、好ましくは15μm〜25μmの深さを有する、形態1に記載の方法。
[形態3]
前記カラム(21)がマンドレルの平面において、1μm〜10μm、好ましくは2μm〜6μmの幅寸法を有する、形態1または2に記載の方法。
[形態4]
めっき材料が前記カラム(21)の上部と実質的に同じ高さになるまで前記電気めっきが継続される、形態1〜3のいずれか一項に記載の方法。
[形態5]
前記めっき材料(22)と前記マスク材料(21)とが実質的に全く重ならない、形態1〜4のいずれか一項に記載の方法。
[形態6]
前記少なくとも1つの後続のサイクルにより、ウェーハ厚さ全体を50μm超、好ましくは58μm超まで増加させる、形態1〜5のいずれか一項に記載の方法。
[形態7]
後続のサイクルまたは後続の各サイクルにおける閉塞の程度が、前記開口板の所望の機械的特性のために選択される、形態1〜6のいずれか一項に記載の方法。
[形態8]
エアロゾル形成孔(51)が漏斗状に先細になるように、第1のマスキングおよびめっきが実行される、形態1〜7のいずれか一項に記載の方法。
[形態9]
上にある空間(55)が漏斗状に先細になるように、後続のマスキングおよびめっきが実行される、形態1〜8のいずれか一項に記載の方法。
[形態10]
めっき金属がNiおよび/またはPdを含む、形態1〜9のいずれか一項に記載の方法。
[形態11]
前記Niおよび/またはPdが、耐食性のために選択された濃度で表面に存在する、形態10に記載の方法。
[形態12]
Pdの割合が85%w/w〜93%w/w、好ましくは約89%であり、実質的に残部がNiである、形態10または11に記載の方法。
[形態13]
前記めっき材料が、抗菌性のために選択された濃度でAgおよび/またはCuを表面に含む、形態1〜12のいずれか一項に記載の方法。
[形態14]
前記ウェーハをさらに加工して、エアロゾル形成デバイスに嵌め込む準備のできた開口板(40)を設けるさらなるステップを含む、形態1〜13のいずれか一項に記載の方法。
[形態15]
前記ウェーハが非平面状の開口板(40)に形成される、形態14に記載の方法。
[形態16]
前記ウェーハが、所望のエアロゾル化噴射角度に従って選択された構成を有する形状に形成される、形態15に記載の方法。
[形態17]
前記ウェーハが、作動するドーム状部分と、駆動装置に係合するフランジとを有する形状に形成される、形態15または16に記載の方法。
[形態18]
前記ウェーハが形成前に焼きなましされる、形態17に記載の方法。
[形態19]
形態1〜18のいずれか一項に記載の方法で形成される、金属の本体を備えた開口板ウェーハ。
[形態20]
形態14〜19のいずれか一項に記載の方法により形成される開口板。
[形態21]
形態20に記載の開口板と、前記板に係合して、エアロゾルを形成するための所望の振動数で前記板を振動させる駆動装置とを備えた、エアロゾル形成デバイス。
[形態22]
形態20に記載の開口板と、受動板の使用のための前記開口板の支持部と、前記開口板を通る液体の波動を生じさせて液滴を形成するように構成されたホーンとを備えた、エアロゾル形成デバイス。
[形態23]
エアロゾル形成貫通孔(33)を有するフォトリソグラフィめっき金属の下部層(31)と、空間(32)を有するフォトリソグラフィめっき金属(31)の少なくとも1つの上部層とを備え、前記空間が複数のエアロゾル形成貫通孔(33)の上にあり、大孔当たりのエアロゾル形成孔のサイズおよび数が所望のエアロゾル流量に関連する、開口板ウェーハ(30)。
[形態24]
前記上部層が前記下部層の前記孔(33)のいくつかを塞ぐ、形態23に記載の開口板ウェーハ。
[形態25]
すべての層の金属が同一である、形態23または24に記載の開口板ウェーハ。
[形態26]
前記めっき金属がNiおよび/またはPdを含む、形態23〜25のいずれか一項に記載の開口板ウェーハ。
[形態27]
前記Niおよび/またはPdが、耐食性のために選択された濃度で表面に存在する、形態26に記載の開口板ウェーハ。
[形態28]
Pdの割合が85%w/w〜93%w/w、好ましくは約89%であり、実質的に残部がNiである、形態27に記載の開口板ウェーハ。
[形態29]
前記めっき金属が、抗菌性のために選択された濃度でAgおよび/またはCuを表面に含む、形態23〜28のいずれか一項に記載の開口板ウェーハ。
[形態30]
形態23〜29のいずれか一項に記載のウェーハを備えた開口板。
[形態31]
形態30に記載の開口板と、前記板に係合して、エアロゾルを形成するための所望の振動数で前記板を振動させる駆動装置とを備えた、エアロゾル形成デバイス。
[形態32]
形態30に記載の開口板と、受動開口板の使用のための開口板の支持部と、前記開口板を通る液体の波動を生じさせるように構成されたホーンとを備えた、エアロゾル形成デバイス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14