(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385923
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ガラス用のサーモクロミック層、サーモクロミックコーティング、ガラス、サーモクロミック層の製造方法、サーモクロミックコーティングの製造方法およびサーモクロミック層の使用方法
(51)【国際特許分類】
C03C 17/34 20060101AFI20180827BHJP
H01L 31/048 20140101ALI20180827BHJP
C03C 17/245 20060101ALI20180827BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20180827BHJP
B65D 23/08 20060101ALN20180827BHJP
【FI】
C03C17/34 Z
H01L31/04 560
C03C17/245 A
E06B5/00 C
!B65D23/08 Z
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-517749(P2015-517749)
(86)(22)【出願日】2013年6月19日
(65)【公表番号】特表2015-527958(P2015-527958A)
(43)【公表日】2015年9月24日
(86)【国際出願番号】EP2013062770
(87)【国際公開番号】WO2013189996
(87)【国際公開日】20131227
【審査請求日】2016年6月17日
(31)【優先権主張番号】102012012219.5
(32)【優先日】2012年6月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508159123
【氏名又は名称】ユストゥス−リービッヒ−ウニヴェルジテート・ギーセン
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ カー. マイヤー
(72)【発明者】
【氏名】アンゲリカ ポリティー
(72)【発明者】
【氏名】マルク コンスタンチン ディートリッヒ
【審査官】
増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−516813(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0260123(US,A1)
【文献】
特開昭62−277485(JP,A)
【文献】
MLYUKA, N. R. et al.,Mg doping of thermochromic VO2 films enhances the optical transmittance and decreases the metal-insulator transition temperature,Applied Physics Letters,2009年,95, 171909 (2009)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00−23/00
C09K 9/00− 9/02
E06B 5/00− 5/20
B65D 23/00−25/56
H01L 31/02−31/0256
31/0352−31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化バナジウム層(16)を含み、前記二酸化バナジウム層(16)が、アルカリ土類金属のカルシウム、バリウムおよびストロンチウムを個別にまたは組み合わせてドープされていることを特徴とする、ガラス(12)用のサーモクロミック層。
【請求項2】
前記アルカリ土類金属は、カルシウムであることを特徴とする、請求項1に記載のサーモクロミック層。
【請求項3】
前記二酸化バナジウム層(16)が、タングステンおよびフッ素、あるいはいずれか一方でドープすることを特徴とする、請求項1または2に記載のサーモクロミック層。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のサーモクロミック層と、シード層(14)および被覆層(18)の少なくとも一方とが積層されているサーモクロミックコーティング。
【請求項5】
前記シード層(14)が、二酸化チタンおよび酸化ケイ素(酸化シリコン)からなるグループから選択された化合物を含むことを特徴とする、請求項4に記載のサーモクロミックコーティング。
【請求項6】
前記被覆層(18)が、酸窒化アルミニウム、硫酸亜鉛、酸化亜鉛および硫化亜鉛からなるグループから選択された化合物を含むことを特徴とする、請求項4または5に記載のサーモクロミックコーティング。
【請求項7】
請求項1に記載のサーモクロミック層で被覆されたガラス。
【請求項8】
二酸化バナジウムに、アルカリ土類金属のカルシウム、バリウムおよびストロンチウムを個別にまたは組み合わせてドープするサーモクロミック層の製造方法。
【請求項9】
基板の表面に、シード層(14)、アルカリ土類金属のカルシウム、バリウムおよびストロンチウムを個別にまたは組み合わせてドープした二酸化バナジウム層(16)、被覆層(18)の各層を高周波‐陰極スパッタリング法、またはDCスパッタリングによって成膜するサーモクロミックコーティングの製造方法。
【請求項10】
太陽電池(太陽光発電)、ソーラーコレクター(太陽熱集熱器)用の、請求項1に記載のサーモクロミック層の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーモクロミックガラスのコーティングおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
そのようなサーモクロミックガラスのコーティングはIR、VIS、UV(赤外、可視光、紫外)等の温度によって変化する電磁波透過率を備えており、建築物内の温度に影響を与え、エネルギーを節約するために、ガラス窓やガラスファサード用のコーティングとして建築分野において使用される。
【0003】
特許文献1には、アルカリ金属ドーピング方法を用いた、二酸化バナジウムVO
2によるガラスのコーティングについて説明されている。二酸化バナジウムの相転移は約68℃である。この温度を上回ると金属相となり、主に赤外線のスペクトル領域(500〜2000nm)で電磁波を反射する。この68℃未満では半導体相となり、赤外線を通過させる。これはサーモクロミック効果と呼ばれる。
【0004】
相転移温度は、タングステンをドープすることによって低下させることが可能である。可視光に対する透過率は悪化するが、これはフッ素ドーピングによって増大することが可能である。しかしながら、フッ素ドープを行った場合は、切り換え特性が悪化する。
【0005】
二酸化バナジウムは、ブロンズ色をしている。この色は可視光用のフィルタとして機能するため、特に不利となる。それによって電磁波の可視範囲の透過性が極めて制限される。この発色は、層の厚さによっても、その他の層によっても防止することが不可能であるため、上記の文献は解決策とはなり得ない。
【0006】
特許文献2では、二酸化バナジウムを、灰色の三酸化バナジウムV
2O
3に還元することが提案されている。三酸化バナジウムV
2O
3は168Kで相転移をするため、サーモクロミックガラスコーティングとしての使用には適さない。相応しい相転移範囲は、373K〜300Kである。
【0007】
両方の文献において、二酸化バナジウム層は、CVD(化学気相堆積)法によって成膜される。600℃以上の堆積温度では二酸化バナジウムの結晶格子に効果的なフッ素の組み込みが不可能なため、ガス状のフッ素ドーピングは不利である。また一方では、低温度(400℃未満)では、貧弱な切り換え特性を示す二酸化バナジウムの非晶質層のみ、堆積することが可能である。したがって、二酸化バナジウムの結晶層を生成することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許第69910322T2号明細書
【特許文献2】独国特許第3347918C2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来技術の欠点を排除し、回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、発明によって、二酸化バナジウムを含むことを特徴とするガラスコーティングによって達成される。この二酸化バナジウムの層のドープには、好ましくは、タングステンおよびフッ素、またはいずれか一方を用いる。二酸化バナジウムの変色は、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類元素を個別に用いて、あるいはこれらの組み合わせによるドープによって達成される。この二酸化バナジウム層とアルカリ土類元素のドープは、二酸化バナジウムに直接、あるいはタングステン、フッ素、あるいはその他の元素(典型元素第1族に属する:Li、Na、K、Rb、Csなどのアルカリ金属、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、P、As、Sb、Biなどの典型元素第3、第4、第5族および、Mg、Ca、Sr、Baを除く遷移金属)のドープによって達成される。
【0011】
タングステンとカルシウムの同時ドーピングでは、上述の二つの効果による相乗効果が達成されることが見出された。一方では、そのように製造された層では、タングステンの取り込みに起因して、スイッチング温度TCが室温の領域に低下するという結果をもたらす。また、その方法によって製造されたコーティングにおいてカルシウムの組み込みは、とりわけ可視スペクトル範囲において光透過率を高める原因となり、その際、光吸収端がブルーシフトする。このようなコーティングの外観は、カルシウム濃度の増加に伴い、ブロンズから無彩色へと変化する。
【0012】
本発明において、サーモクロミック層のタングステン濃度は、0.01〜3.0原子%であり、好ましくは、0.4〜2.6原子%である。
【0013】
Ba、Sr、Caは、好ましくはカルシウムからなるアルカリ土類金属群の濃度は、0.01〜15原子%であり、好ましくは1.0〜10.0原子%である。
【0014】
フッ素濃度は0.01〜2.0原子%であり、好ましくは0.5〜1.5原子%の範囲である。二酸化バナジウム層の厚さは、10〜300nmであり、好ましくは40〜100nmの厚さを有する。
【0015】
ガラスおよび二酸化バナジウム層の間に、低温(<400℃)でも二酸化バナジウム層の結晶化を促進するシード層を設けることが望ましい。これには二酸化チタン、または、酸化ケイ素、好ましくは、二酸化チタンを用いて行われる。シード層(中間層も)は、5〜200nmの厚さを有し、好ましくは、10〜70nmの範囲である。
【0016】
WまたはF、あるいはBa、Sr、Caを含む一つのアルカリ金属と同時ドープした二酸化バナジウム層、あるいは、Wまたは、FおよびBa、Sr、Caからなる群のアルカリ土類金属と同時ドープした二酸化バナジウム層の薄膜堆積後の酸化(postoxidation)は、被覆層によって防止することが可能である。したがって被覆層には、酸窒化アルミニウム、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛の単体と組み合わせが適用される。この被覆層は、光透過率をさらに向上させることによって、反射防止層として機能する。
【0017】
被覆層の厚さは10〜300nm、好ましくは40〜100nmの場合、有利であることが確認された。
【0018】
層の作製方法
バナジウム層は、スパッタリングによって、好ましくは、高周波または無線周波数で、陰極スパッタリング、あるいは、DCスパッタリングによって成膜される。この他、CVD法、PVD法、ゾルゲル法による被覆が可能であり、プラズマの援用によっても実施できる。元素の供給源としてのターゲットには、バナジウム、タングステン、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の元素の酸化物又はフッ化物を、単独で、または組み合わせて使用する。アルゴンと酸素の雰囲気中でスパッタリングを用いることにより、媒体となるガラスへの元素の伝導が可能となる。その際、アルゴンガスと酸素の質量流量比は、好ましくは5.7:1.4の範囲である。
【0019】
さらなるガス状フッ素ドープでは、テトラフルオロメタン(CF
4)、または、トリフルオロメタン(CHF
3)をアルゴンガスに添加する。アルゴンガス、酸素、およびCF
4の質量流量比は、好ましくは5.7:1.4:0.3の範囲である。CHF
3等の他のフッ素化剤を添加する場合も、同様の条件が適用される。
【0020】
また、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウムなどのフッ素化元素が基質として使用される。フッ素化された元素とフッ素含有ガスの使用は、同様に、実施形態である。
【0021】
室温から400℃までの堆積温度で、ガラスは、まずシード層としての二酸化チタン層を堆積した後、ドーピングによって二酸化バナジウム層を成膜する。
【0022】
ドープした二酸化バナジウム層には、好ましくは反射防止層として形成される被覆層が設けられている。
【0023】
サーモクロミック層は、ガラス(窓ガラス、ガラス管、コップ等)、プラスチック、織物、太陽電池(太陽光発電)、ソーラーコレクター(太陽熱集熱器)等に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の窓ガラスのためのサーモクロミックコーティングの基本構成を示す図である。
【
図2】a)Ca、b)W、c)WおよびCaで、ドープ処理したサーモクロミック二酸化バナジウム層の、波長によって異なる透過スペクトルを示した説明図である。
【
図3】異なる濃度のCaでドープ処理した、サーモクロミック二酸化バナジウム層の、波長によって異なる透過スペクトルを示した説明図である。
【
図4】二酸化バナジウムベース上での、異なるサーモクロミックコーティングの、スイッチング温度および、吸収端(バンドギャップ)を示す表である。
【
図5】波長によって異なる、Baでドープした、Srでドープした、およびドープ処理していない二酸化バナジウム層の透過率スペクトルを表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態を以下に説明する。その際、下記に記述されるすべての好ましい実施形態には、単独および組み合わせの実施形態が含まれる。
【実施例】
【0026】
図1は、本発明のサーモクロミックコーティング10の基本構造を示し、窓ガラス12への適用方法を示した説明図である。それによれば、酸化チタン層14がガラス基板12上に、反応性高周波スパッタリング、または高周波(RF)スパッタリングによって堆積される。このように成膜された酸化チタン層は、ガラス基板12にシード層を形成する。
【0027】
酸化チタンのスパッタリング中の高周波発生器の出力は、好ましくは、100〜600W(1.2〜7.4W/cm
2)の範囲で、最も好ましくは300W(3.7W/cm
2)である。堆積温度は、好ましくは、室温〜600℃の範囲で、最も好ましくは、約300℃である。
【0028】
さらに、二酸化バナジウム層が、タングステンまたはカルシウムを含んだ酸化バナジウムターゲットによって、または、バナジウムターゲットによって、二酸化チタン層上に、反応性高周波スパッタリング、または高周波(RF)スパッタリングで堆積される。二酸化バナジウム層(16)は、サーモクロミック層である。この層は、Caが3.3%、Wが0.2%、Fが0.3%含まれ、残りの成分はVO
2であった。あるいは、この層には、Ca8.9%、W0.4%、その他VO
2が含まれる。さらに、Ca8.9%とその他VO
2の層が形成された。さらに、Sr約9%と残りVO
2の層が形成された。さらに、Ba約9%と残りVO
2の層が形成された。
【0029】
堆積温度は、好ましくは100〜600℃の範囲で、最も好ましくは、約400℃であるのに対し、高周波発生器のスパッタリング時の出力は、ドープした二酸化バナジウム層の堆積時は、好ましくは、100〜600W(1.2〜7.4W/cm
2)の範囲で、最も好ましくは、300W(3.7W/cm
2に相当)である。
【0030】
フッ素およびBa、Sr、Caを含む群の、一つのアルカリ土類金属と同時ドープした、二酸化バナジウム層、または、タングステンおよびBa、Sr、Caを含む群中の、一つのアルカリ土類金属と同時ドープした、二酸化バナジウム層は、以下の好ましい化学式を含む。式中、Mは当該アルカリ土類金属を表す:
a) V
1−X−YW
XM
YO
2
b) V
1−YM
YO
2−ZF
Z
【0031】
あるいは、フッ素、タングステンおよび、Ba、Sr、Caを含む群中の、一つのアルカリ土類金属とともに3回ドープした二酸化バナジウム層が成形される。
c) V
1−X−YW
XM
YO
2−ZF
Z
【0032】
他元素によってドーピング法を用いた場合、式と重量比は異なる。
【0033】
サーモクロミック性ドープ二酸化バナジウム層16の上には、引き続き、同様に高周波スパッタリングによって堆積された被覆層、あるいは、好ましくは硫化亜鉛から成る、被覆層18が形成される。硫化亜鉛、酸化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、窒化アルミニウム、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、またはこれらを含む化合物が使用される。この被覆層18はサーモクロミック層16に対する再酸化防止層となり、反射防止層として、とりわけ、可視スペクトル領域において、光透過率を高める。
【0034】
堆積温度は室温〜最高400℃の範囲で、最も好ましいのは室温であるのに対し、高周波発生器のスパッタリング時の出力は、硫化亜鉛被覆層の堆積では、好ましくは、100〜600W(1.2〜7.4W/cm
2に相当)の範囲で、最も好ましくは、200W(2.5W/cm
2に相当)である。
【0035】
図2は、カルシウムでドープした、あるいはカルシウムとタングステンで同時ドープした、高周波陰極スパッタリング装置で、ガラスに二酸化チタン層14および反射防止層なしで堆積された、二酸化バナジウム層16の、周波数によって異なる透過率を示す。さらに、比較するために、タングステンのみでドープした二酸化バナジウム層の図が示されている。これらの層は、約600℃(フッ素ドープなし)の堆積温度で形成された。また、3層で、20℃で低温相が、100℃で高温相が確認される。カルシウムのみでドープした層は、タングステンのみでドープした層の300〜2500nmの範囲に対して、明らかに高い透過率を有する。さらに、カルシウムおよびタングステンで同時ドーピングした層は、300〜2500nmの範囲で、カルシウムでドープした層よりもより低い透過率を有しているが、タングステンのみでドープした層よりも高い透過率を示している。とりわけ、低温相と高温相との透過率の差は、他の層と比較してはるかに大きい。
【0036】
図3は、異なるカルシウム濃度でドープした、高周波陰極スパッタリング装置で、厚さ20nmの酸化チタン中間層14を含み、反射防止層なしで堆積される、二酸化バナジウム層16の波長ごとの透過率を表す。これらの層は、約400℃の堆積温度で形成された。曲線を比較すると、両相の透過率は、とりわけ1000〜2500nmの領域で、カルシウム濃度が高まるにつれて、大きくなっていることに気付く。さらに、カルシウム濃度の増加に伴って、吸収端のブルーシフトがみられるが、それによって層の色調がブロンズ色から無彩色に変化する。
【0037】
図4は、吸収端(バンドギャップ)と、測定される元素濃度および、様々なサーモクロミック層の低温相(20℃で測定)および高温相(100℃で測定)の分光透過率を含む、スイッチング温度を表す表であり、その際、
図2で測定された層同様の成膜条件が適用された。
【0038】
表に示されるように、タングステン、カルシウムで同時ドープを行う際、相乗効果が表れる。すなわち、同時ドープした層には、とりわけ、タングステンによる低温へのスイッチング温度のずれ、ならびにカルシウムの添加による高エネルギーおよび、低波長へのずれが生じている。
【0039】
図5は、高周波陰極スパッタリング装置で、酸化チタン中間層14、および、反射防止コーティングなしでガラスに堆積される、ストロンチウムとバリウムで個別にドープした、および、ドープしていない二酸化バナジウム層16の波長ごとの透過率を表す図である。これらの層は、約650℃の堆積温度で形成された。測定されたバリウムおよび、ストロンチウム濃度は、約9原子%である。
【0040】
図2のカルシウムでドープした層と比較して、ストロンチウムとバリウムでドープした層は、
図5同様の切り換え特性を示す。
図5のドープ処理されていない二酸化バナジウム層の場合、300〜2500nmの範囲の透過性ははるかに高く、吸収端は高めのエネルギー、あるいは低波長にて始まる。
【0041】
透過率の増大は、とりわけ、青色スペクトルの範囲において、サーモクロミックコーティングの外見が、周知の従来技術による、フッ素、またはタングステンのみでドープされた二酸化バナジウム層に対し、はるかに改善され、また、タングステンとフッ素を同時に取り込むことによって、スイッチング温度が室温の範囲に変化する。
図3で示されるように、本発明によるサーモクロミックコーティング層の透過率は、タングステンのみと、ドープ処理された二酸化バナジウム層とを比較すると、高温相においても確かに高まるが、高温相と低温層の透過率の差はほぼ同じであるか、サンプルCa48(
図4参照)では、むしろ増大する。
【0042】
織物、あるいは、プラスチックは、約100℃〜200℃の温度でドープ処理した二酸化バナジウムによってコーティングされる。十分に良好な二酸化バナジウムの結晶性を達成し、それによってサーモクロミック効果がドープ処理された二酸化バナジウム層をシード層に形成することができる。その際、スパッタリングの他、PVDやゾルゲル法を使用することが出来る。ゾルゲル法では、可能な限り、均一な層の厚さに注意すべきである。