【文献】
J.M. Khor et al.,Development of a Sensor Network for Dynamic Boundary Measurement in Neonatal Electrical Impedance Tomography (EIT),IFMBE Proceedings,2009年,第25/II巻,第386−389頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
並べて配置される複数の電極パッドと、当該複数の電極パッドと並列して配置される複数の歪みゲージと、を一体として貼着しながら、生体の測定対象とする部分に巻きつけられて使用される測定用ベルトと、
前記複数の電極パッドへの通電、及び、当該電極パッド間に生じる電圧信号の取得をしながら、前記測定対象とする部分の断層画像を取得するEIT測定制御部と、
前記歪みゲージを介して取得される曲率データに基づいて、前記測定対象とする部分の輪郭形状及びその大きさを推定する輪郭推定部と、
を備え、
前記輪郭推定部は、
前記曲率データに基づいて、前記歪みゲージごとの相対的な位置関係を特定する相対位置特定処理と、当該相対的な位置関係が特定された歪みゲージ間を、所定の関数曲線で結び合わせながら前記輪郭形状を特定する形状特定処理と、を実行し、
前記輪郭推定部は、前記相対位置特定処理において、
並べて配置される複数の前記歪みゲージのうち、一つ以上の前記歪みゲージを隔てた所定間隔ごとに指定される歪みゲージの位置を示す基準点の座標位置を、予め定められた初期座標値と特定する第1ステップと、
前記基準点の座標位置に対する、当該基準点が示す歪みゲージの中間に配される何れかの歪みゲージの位置を示す従属点の座標位置を示す相対座標値を、前記歪みゲージを介して取得される曲率データに基づいて算出する第2ステップと、
一の前記基準点の座標位置に対する相対座標値から座標位置が特定される第1従属点と、他の基準点の座標位置に対する相対座標値から座標位置が特定される従属点であって前記第1従属点と同一の前記歪みゲージの位置を示す第2従属点と、の座標位置が最も近くなるように、前記一の基準点及び前記他の基準点の座標位置を変更する第3ステップと、
前記第3ステップによって変更した後の前記第1従属点と前記第2従属点との中点を、前記基準点が示す歪みゲージの両隣に配される歪みゲージの位置を示す2つの従属点の座標位置と特定する第4ステップと、
を実行し、
前記輪郭推定部は、前記相対座標値を、前記基準点から前記従属点までの間に既知の間隔に配されるn個(nは2以上の整数)の座標位置Qi(1≦i≦n)それぞれにおける曲率半径Riの円弧に基づいて特定し、
前記曲率半径Riは、前記基準点に位置する歪みゲージが取得した曲率半径Raから前記従属点に位置する歪みゲージが取得した曲率半径Rbまでの間において、前記座標位置Qiと前記基準点及び前記従属点との位置関係によって特定される
EIT測定装置。
並べて配置される複数の電極パッドと、当該複数の電極パッドに沿って配置される複数の歪みゲージと、が一体として貼着された測定用ベルトを、生体の測定対象とする部分に巻きつけ、
EIT測定制御部が、前記複数の電極パッドへの通電、及び、当該電極パッド間に生じる電圧信号を取得しながら、前記測定対象とする部分の断層画像を取得し、
輪郭推定部が、前記歪みゲージを介して取得される曲率データに基づいて、前記歪みゲージごとの相対的な位置関係を特定する相対位置特定処理と、当該相対的な位置関係が特定された歪みゲージ間を、所定の関数曲線で結び合わせながら前記測定対象とする部分の輪郭形状を特定する形状特定処理と、を実行し、前記輪郭形状及びその大きさを推定し、
前記輪郭推定部は、前記相対位置特定処理において、
並べて配置される複数の前記歪みゲージのうち、一つ以上の前記歪みゲージを隔てた所定間隔ごとに指定される歪みゲージの位置を示す基準点の座標位置を、予め定められた初期座標値と特定する第1ステップと、
前記基準点の座標位置に対する、当該基準点が示す歪みゲージの中間に配される何れかの歪みゲージの位置を示す従属点の座標位置を示す相対座標値を、前記歪みゲージを介して取得される曲率データに基づいて算出する第2ステップと、
一の前記基準点の座標位置に対する相対座標値から座標位置が特定される第1従属点と、他の基準点の座標位置に対する相対座標値から座標位置が特定される従属点であって前記第1従属点と同一の前記歪みゲージの位置を示す第2従属点と、の座標位置が最も近くなるように、前記一の基準点及び前記他の基準点の座標位置を変更する第3ステップと、
前記第3ステップによって変更した後の前記第1従属点と前記第2従属点との中点を、前記基準点が示す歪みゲージの両隣に配される歪みゲージの位置を示す2つの従属点の座標位置と特定する第4ステップと、
を実行し、
前記輪郭推定部は、前記相対座標値を、前記基準点から前記従属点までの間に既知の間隔に配されるn個(nは2以上の整数)の座標位置Qi(1≦i≦n)それぞれにおける曲率半径Riの円弧に基づいて特定し、
前記曲率半径Riは、前記基準点に位置する歪みゲージが取得した曲率半径Raから前記従属点に位置する歪みゲージが取得した曲率半径Rbまでの間において、前記座標位置Qiと前記基準点及び前記従属点との位置関係によって特定される
EIT測定方法。
並べて配置される複数の電極パッドと、当該複数の電極パッドに沿って配置される複数の歪みゲージと、を一体として貼着するとともに、生体の測定対象とする部分に巻きつけられて使用される測定用ベルトと、を備えるEIT測定装置のコンピュータを、
前記複数の電極パッドへの通電、及び、当該電極パッド間に生じる電圧信号を取得しながら、前記測定対象とする部分の断層画像を取得するEIT測定制御手段、
前記歪みゲージを介して取得される曲率データに基づいて、前記測定対象とする部分の輪郭形状及びその大きさを推定する輪郭推定手段、
として機能させ、
前記輪郭推定手段は、
前記曲率データに基づいて、前記歪みゲージごとの相対的な位置関係を特定する相対位置特定処理と、当該相対的な位置関係が特定された歪みゲージ間を、所定の関数曲線で結び合わせながら前記輪郭形状を特定する形状特定処理と、を実行し、
前記輪郭推定手段は、前記相対位置特定処理において、
並べて配置される複数の前記歪みゲージのうち、一つ以上の前記歪みゲージを隔てた所定間隔ごとに指定される歪みゲージの位置を示す基準点の座標位置を、予め定められた初期座標値と特定する第1ステップと、
前記基準点の座標位置に対する、当該基準点が示す歪みゲージの中間に配される何れかの歪みゲージの位置を示す従属点の座標位置を示す相対座標値を、前記歪みゲージを介して取得される曲率データに基づいて算出する第2ステップと、
一の前記基準点の座標位置に対する相対座標値から座標位置が特定される第1従属点と、他の基準点の座標位置に対する相対座標値から座標位置が特定される従属点であって前記第1従属点と同一の前記歪みゲージの位置を示す第2従属点と、の座標位置が最も近くなるように、前記一の基準点及び前記他の基準点の座標位置を変更する第3ステップと、
前記第3ステップによって変更した後の前記第1従属点と前記第2従属点との中点を、前記基準点が示す歪みゲージの両隣に配される歪みゲージの位置を示す2つの従属点の座標位置と特定する第4ステップと、
を実行し、
前記輪郭推定手段は、前記相対座標値を、前記基準点から前記従属点までの間に既知の間隔に配されるn個(nは2以上の整数)の座標位置Qi(1≦i≦n)それぞれにおける曲率半径Riの円弧に基づいて特定し、
前記曲率半径Riは、前記基準点に位置する歪みゲージが取得した曲率半径Raから前記従属点に位置する歪みゲージが取得した曲率半径Rbまでの間において、前記座標位置Qiと前記基準点及び前記従属点との位置関係によって特定される
プログラム。
並べて配置される複数の電極パッドと、当該複数の電極パッドと並列して配置される複数の曲率センサと、を一体として貼着しながら、生体の測定対象とする部分に巻きつけられて使用される測定用ベルトと、
前記複数の電極パッドへの通電、及び、当該電極パッド間に生じる電圧信号の取得をしながら、前記測定対象とする部分の断層画像を取得するEIT測定制御部と、
前記曲率センサを介して取得される曲率データに基づいて、前記測定対象とする部分の輪郭形状及びその大きさを推定する輪郭推定部と、
を備え、
前記輪郭推定部は、
前記曲率データに基づいて、前記曲率センサごとの相対的な位置関係を特定する相対位置特定処理と、当該相対的な位置関係が特定された曲率センサ間を、所定の関数曲線で結び合わせながら前記輪郭形状を特定する形状特定処理と、を実行し、
前記輪郭推定部は、前記相対位置特定処理において、
並べて配置される複数の前記曲率センサのうち、一つ以上の前記曲率センサを隔てた所定間隔ごとに指定される曲率センサの位置を示す基準点の座標位置を、予め定められた初期座標値と特定する第1ステップと、
前記基準点の座標位置に対する、当該基準点が示す曲率センサの中間に配される何れかの曲率センサの位置を示す従属点の座標位置を示す相対座標値を、前記曲率センサを介して取得される曲率データに基づいて算出する第2ステップと、
一の前記基準点の座標位置に対する相対座標値から座標位置が特定される第1従属点と、他の基準点の座標位置に対する相対座標値から座標位置が特定される従属点であって前記第1従属点と同一の前記曲率センサの位置を示す第2従属点と、の座標位置が最も近くなるように、前記一の基準点及び前記他の基準点の座標位置を変更する第3ステップと、
前記第3ステップによって変更した後の前記第1従属点と前記第2従属点との中点を、前記基準点が示す曲率センサの両隣に配される曲率センサの位置を示す2つの従属点の座標位置と特定する第4ステップと、
を実行し、
前記輪郭推定部は、前記相対座標値を、前記基準点から前記従属点までの間に既知の間隔に配されるn個(nは2以上の整数)の座標位置Qi(1≦i≦n)それぞれにおける曲率半径Riの円弧に基づいて特定し、
前記曲率半径Riは、前記基準点に位置する曲率センサが取得した曲率半径Raから前記従属点に位置する曲率センサが取得した曲率半径Rbまでの間において、前記座標位置Qiと前記基準点及び前記従属点との位置関係によって特定される
EIT測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態に係るEIT測定装置を、図面を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係るEIT測定装置の全体構成を示す図である。
図1において、EIT測定装置1を示している。
【0022】
EIT測定装置1は、測定用ベルト10と、EIT測定本体部20と、から構成される。
図1に示すように、測定用ベルト10は、例えば測定対象者(生体)の胸部等、測定対象とする部分(以下、測定対象部Xと記載)に巻きつけられて使用される。測定用ベルト10は、測定回路11及び信号ケーブル19を介してEIT測定本体部20に接続されている。
測定用ベルト10は、巻きつける長さの調整が可能な構成となっており、胸部などの他、頭部や腕、脚等にも巻かれて使用されてもよい。測定用ベルト10は、後述するように、EIT測定を行うための電極パッド等が同一のフレキシブル基板に設けられており、これら電極パッド等を一体として扱うことが可能な構成となっている(例えば、特許文献、特願2010−205988参照)。
【0023】
EIT測定本体部20は、測定用ベルト10及び測定回路11を介して取得した電気信号に基づいて所定の演算処理を行い、測定対象者の測定用ベルト10が巻かれた部分(測定対象部X)の断層画像を表示する機能部である。EIT測定装置1のオペレータは、EIT測定本体部20に備えられる操作入力部を介してEIT測定のための条件等を設定したり、或いは、EIT測定本体部20に備えられるモニタ(画像表示部)を介して断層画像を認知したりすることができる。EIT測定本体部20の詳細な機能構成については後述する。
【0024】
図2は、第1の実施形態に係る測定用ベルトの機能構成を示す図である。
図2に示すように、測定用ベルト10は、帯状のフレキシブル基板14上において8個の電極パッド12A〜12Hが等間隔の距離Pで並べて配置(周期配列)される構成となっている。また、同じくフレキシブル基板14上において、当該8個の電極パッド12A〜12Hと並列して8個の歪みゲージ13A〜13Hが等間隔の距離Pで周期配列されている。
測定用ベルト10は、これら複数の電極パッド12A〜12H、及び、歪みゲージ13A〜13Hを一体として貼着しながら、測定対象者の測定対象部Xに巻きつけられて使用される。各電極パッド12A〜12Hは、測定用ベルト10が巻きつけられた際に、測定対象部Xの周囲を囲む体表面に接触される仕組みとなっている。
このような構成とすることで、EIT測定装置1のオペレータは、測定用ベルト10を測定対象部Xへ巻きつけて取り付ける作業を行うのみで測定を開始することができるので、電極パッドの取り付けの手間を大幅に削減し、EIT測定の作業効率を改善することができる。
なお、測定用ベルト10は、測定時における測定対象者の負担を軽減する等の目的で、フレキシブル基板14が、さらに非導電性のベルト状の布に覆われた態様を成していてもよい。
また、この場合において、測定用ベルト10は、上記布ベルトのうち電極パッド12A〜12Hと接する部分が導電性ゲルや導電性繊維電極で構成されるとともに、測定装置1は、電極パッド12A〜12Hと体表面との間に当該導電性ゲルまたは導電性繊維電極を介在させながらEIT測定を行ってもよい。このようにすることで、測定用ベルト10の構成を、布ベルト部分のみを取り外して洗濯あるいは廃棄できるような構成とすることができ、衛生面での使い勝手を一層向上させることができる。
また、測定用ベルト10は、歪みゲージ13A〜13Hそれぞれの裏面の同じ位置に、同じ特性のひずみゲージを有していてもよい。これら測定箇所毎の一対の歪みゲージを一つのブリッジ回路に接続する2アクティブゲージ法を用いることで、歪みゲージ13A〜13Hの温度補正自動化と高感度化、高精度化を実現することができる。
或いは、測定用ベルト10は、歪みゲージ13A〜13Hそれぞれの裏面の同じ位置に、温度センサを有していてもよい。そして測定装置1は、歪みゲージ13A〜13Hによって取得される曲率データを、当該温度センサによって取得される温度データに基づいて、曲率データの温度補正を行ってもよい。このようにすることで、歪みゲージ13A〜13Hの高感度化、高精度化を実現することができる。
【0025】
また、測定回路11は、EIT測定本体部20と、電極パッド12A〜12H及び歪みゲージ13A〜13Hと、の電気信号のやり取りを仲介する電気回路である。例えば、測定回路11には、歪みゲージ13A〜13Hにおいて出力される電気信号を増幅したり、A/D(Analog/Digital)変換したりする回路が備えられている。
【0026】
図3は、第1の実施形態に係るEIT測定本体部の機能構成を示す図である。
本実施形態に係るEIT測定本体部20は、汎用のパーソナルコンピュータ(パソコン)及び一般的な周辺機器(パソコンモニタ等)で構成される。
【0027】
図3に示すように、EIT測定本体部20は、全体の動作を司るCPU(Central Processing Unit:中央演算装置)200と、EIT測定に使用される測定用プログラム等の実行時においてCPU200のワークエリアとなるRAM(Random Access Memory)210と、各種プログラム及びEIT測定制御部201が取得した断層画像等を記憶する記憶手段としてのHDD(Hard Disk Drive)211と、を備えている。
また、操作入力部212は、例えばマウス、キーボード、タッチパネル等から構成され、オペレータによる各種操作の入力を受け付ける。画像表示部213は、液晶ディスプレイ等であって、EIT測定時において必要な情報や、取得された断層画像等を表示する。
外部インターフェイス214は、外部装置との通信を行うための通信インターフェイスであり、特に本実施形態においては、専用の通信ケーブルを介して測定用ベルト10と接続され、測定用ベルト10から種々の信号を取得する機能部である。
CPU200、RAM210、HDD211、操作入力部212、画像表示部213、外部インターフェイス214は、システムバス215を介して相互に電気的に接続されている。
【0028】
図3に示すように、CPU200は、所定の測定用プログラム実行時において、EIT測定制御部201、輪郭推定部202としての機能を発揮する。
EIT測定制御部201は、複数の電極パッド12A〜12Hへの通電、及び、当該電極パッド12A〜12H間に生じる電圧信号の取得をしながら、測定対象部Xの断層画像を取得する。
また、輪郭推定部202は、歪みゲージ13A〜13Hを介して取得される曲率データに基づいて、測定対象部Xの輪郭形状及びその大きさを推定する。
【0029】
図4は、第1の実施形態に係るEIT測定制御部の機能を説明する第1の図である。
また、
図5は、第1の実施形態に係るEIT測定制御部の機能を説明する第2の図である。
以下、
図4、
図5を参照しながら、EIT測定制御部201の機能について説明する。
図4は、測定対象部Xの例として、例えば測定対象者の胸部に測定用ベルト10が巻かれ、体表面に電極パッド12A〜12Hが接触した状態を示している。
図4に示すように、電極パッド12A〜12Hの間には電流源Iと電圧計Vが接続される構成となっており、また、EIT測定制御部201は、この電流源Iと電圧計Vを制御する機能を有している。
【0030】
EIT測定制御部201は、電流源Iを介して、電極パッド12A〜12Hのうちの一対の電極パッドの間(例えば、電極パッド12Aと電極パッド12Bの間)に所定の微弱電流を流す制御を行う。EIT測定制御部201は、一対の電極パッドに微弱電流を流す間に、電圧計Vを介して、他の電極パッド(電極パッド12C〜12H)の各々の間に生じる電位差を測定する。電流を流す電極パッドを12Bと12C、12Cと12D、・・・と順次変更しながら回転させることで、測定対象部Xの断層における抵抗率分布を取得することができる。
【0031】
EIT測定制御部201は、上記のようにして取得した測定対象とした断層面における抵抗率分布を基に、例えば、一般的な逆投影法を用いて断層画像を生成する。EIT測定制御部201は、生成した断層画像を画像表示部213に表示させることで、オペレータに断層画像を視認させる。なおEIT測定制御部201において断層画像を生成する手法は公知の技術が用いられてよい。
図5は、EIT測定制御部201が生成した断層画像の例を示している。
図5は、EIT測定制御部201によって取得された測定対象者の胸部における断層画像であり、電気インピーダンスが高い領域ほど濃い色合いで示している。
図5によれば、空気の存在によって電気インピーダンスが高く測定される肺野が、左右に存在している様子を知ることができる。
なお、EIT測定制御部201が断層画像を生成する手法としては、上述した逆投影法の他に有限要素法(Finite Element Method:FEM)を用いる手法、または、有限要素法と逆投影法を組み合わせる手法が考えられる。逆投影法を用いた場合、EIT測定制御部201は、ある状態を基準とした相対的な変化のみしか画像化することができないが、有限要素法を用いることで、断層面における絶対的な電気抵抗率[Ωm]に基づいた断層画像を形成することができる。
【0032】
図5のように取得された断層画像は、あくまで電極パッド12A〜12Hを介して取得された電気信号のみに基づいて生成されたものであり、電極パッド12A〜12Hが、実際にいかなる位置関係で配されているかを示す情報が含まれていない。すなわち、この断層画像は、電極パッド12A〜12H間の相対的な位置関係を仮想して生成されたものに過ぎない。
したがって、EIT測定制御部201が取得した断層画像は、断層画像における各座標位置と、測定対象における実際の断層面における各位置との絶対的な位置関係が特定されたものとはなっていないため、オペレータは、この断層画像に基づいて正確な診断を行うことができない。
そこで、本実施形態に係るEIT測定装置1は、まず、測定用ベルト10に設けられた歪みゲージ13A〜13Hと、輪郭推定部202とにより、測定対象部Xの断層面の輪郭の形状を推定する処理を行う。そして、上述したEIT測定制御部201は、輪郭推定部202によって推定された輪郭の形状に基づいた断層画像を生成する。
【0033】
図6は、第1の実施形態に係る輪郭推定部の処理フローを示す図である。
また、
図7〜
図15は、各処理の具体的な内容を説明する第1〜第9の図である。
次に、本実施形態に係る輪郭推定部202が、測定対象部Xの断層面の輪郭形状を推定する処理を具体的に説明する。
図6に示すように、輪郭推定部202は、相対位置特定処理S1、形状特定処理S2、サイズ特定処理S3を経て、測定対象部Xの輪郭形状及び大きさを推定する。以下、各処理S1〜S3の内容について、
図6及び
図7〜
図15を参照しながら、詳細に説明する。
【0034】
(相対位置特定処理について)
まず、輪郭推定部202は、相対位置特定処理S1において、歪みゲージ13A〜13Hごとの相対的な位置関係を特定する。
具体的には、
図7に示すように、輪郭推定部202は、第1ステップS10(
図6)において、まず所定のxy座標を設定するとともに、測定用ベルト10の長手方向に沿って並べて配置される歪みゲージ13A〜13Hのうち、一つおきに指定される歪みゲージ(歪みゲージ13A、13C、13E、13G)それぞれについてのxy座標上の座標位置を仮想的に示す基準点N13A、N13C、N13E、N13Gを、所定のxy座標上に仮決めする処理を行う。
【0035】
ここで、輪郭推定部202は、上記仮決めの処理において、例えば
図7に示すように、原点Oを中心として、x軸、y軸上の上下左右に各基準点N13A、N13C、N13E、N13Gの座標位置を特定する。具体的には、輪郭推定部202は、例えば、基準点N13A〜N13Gごとに予め記憶された初期座標値をHDD211から読み出して、原点Oを中心とする座標上に設定する。ここで、例えば、基準点N13Aについての初期座標値は(0[cm]、50[cm])、N13Cの初期座標値は(-50[cm]、0[cm])、N13Eの初期座標値は(0[cm]、-50[cm])、N13Gの初期座標値は(50[cm]、0[cm])などと記憶されている。
【0036】
次に、輪郭推定部202は、第2ステップS11(
図6)において、基準点N13A〜N13Gと、各基準点N13A〜N13Gが示す歪みゲージ13A〜13G各々の両隣に配される2つの歪みゲージの位置を仮想的に示す従属点と、の相対的な位置関係を特定する。
なお、相対的な位置関係によって関連付けられた1つの基準点(例えばN13A)と、当該基準点の両隣の2つの従属点(例えばN13B1、N13H2)との組み合わせを一組の「束」と定義する。
【0037】
輪郭推定部202は、第2ステップS11において、歪みゲージ13Aの位置を示す基準点N13Aについて、測定用ベルト10が測定対象者に巻きつけられた際に歪みゲージ13Aの両隣に配される歪みゲージ13B、13Hの位置を仮想的に示す点をそれぞれ従属点N13B1、N13H2として、基準点N13Aとの相対的な位置関係を特定する。ここで、輪郭推定部202は、基準点に対する各従属点の相対的な位置関係を特定するにあたり、各歪みゲージ13A〜13Hから取得した曲率データを測定回路11より入力して参照する。
【0038】
図8は、例として、輪郭推定部202が、基準点N13Aに対する従属点N13B1の相対的な位置関係を特定する具体的な処理を示している。
まず、HDD211は、既知のデータとして、歪みゲージ13Aと歪みゲージ13Bとの間隔が距離Pであることを記憶している。そして輪郭推定部202は、HDD211を参照して、歪みゲージ13Aと歪みゲージ13Bとの間隔を示す距離Pを読み取る。また、輪郭推定部202は、歪みゲージ13Aと歪みゲージ13Bによって検出された曲率データから、各々が配される箇所における曲率半径を取得する。
ここで、歪みゲージ13Aが配される箇所における曲率半径がRa、歪みゲージ13Bが配される箇所における曲率半径がRbであったとする。
【0039】
次に、輪郭推定部202は、歪みゲージ13Aと歪みゲージ13Bとの間隔を示す距離Pに基づいて、予め設定された微小距離dPを算出する。この微小距離dPは、歪みゲージ13A〜13Hが配される間隔の距離Pをn等分(nは2以上の整数)して微小に分割したものである。そして輪郭推定部202は、基準点N13Aが配される点Q1(
図8)から、距離dPだけ従属点N13B1に近づいた点Q2の座標位置を特定する。ここで輪郭推定部202は、点Q1(=基準点N13A)における曲率半径がR1(=Ra)であることから、点Q1(=基準点N13A)と原点Oとを結ぶ直線上において、点Q1を基準とした当該曲率半径R1によって定まる中心O1を特定し、その中心O1,半径R1で定まる円弧上の点であって、点Q1から従属点N13B1の方向に微小距離dPだけ離れた点Q2の座標位置を特定する(
図8参照)。
なお、輪郭推定部202は、微小距離dPを十分に小さく設定した場合、点Q1と点Q2の間の微小距離dPを円弧の長さとしてではなく、点Q1と点Q2の直線距離と近似して点Q2の座標位置を特定する処理を行ってもよい。
【0040】
次に、輪郭推定部202は、基準点N13Aから従属点N13B1にかけて、曲率半径がRaからRbへ徐々に変化するものと仮定して、点Q2における曲率半径R2を算出する。例えば、輪郭推定部202は、距離Pをn等分して微小距離dPを設定した場合、点Q2における曲率半径R2を、R2=Ra+(Rb−Ra)/nの式により算出する。
次に、輪郭推定部202は、点Q2から微小距離dPだけ従属点N13B1に近づいた点Q3の座標位置を特定する。この点Q3の座標位置の特定において輪郭推定部202は、点Q2における曲率半径がR2であることから、点Q2と中心O1とを結ぶ直線上において、点Q2を基準とした曲率半径R2によって定まる中心O2を特定し、その中心O2,半径R2で定まる円弧上の点であって、点Q2から従属点N13B1の方向に微小距離dPだけ離れた点Q3の座標位置を特定する(
図8参照)。
【0041】
輪郭推定部202は、以上の処理を繰り返しながら、Q3、Q4、・・・と微小距離dPごとに座標位置を特定していき、微小距離dPの総和が距離Pとなったときの点Qnを従属点N13B1と決定する。なお、点Qi(1≦i≦n)における曲率半径Riを求める一般式は、Ri=Ra+(Rb−Ra)×i/nで与えられる。
以上の処理により、基準点N13Aと従属点N13B1との相対的な位置関係を示す、従属点N13B1についての相対座標値が特定される。同様に、輪郭推定部202は、従属点N13H2についての相対座標値を特定する。輪郭推定部202は、このようにして、相対的な位置関係が特定された基準点N13Aと、2つの従属点N13B1、N13H2と、を一組の束として関連付ける。
輪郭推定部202は、以上のような処理により、実際の体表面の形状を精度よく反映する仮定(歪みゲージ間の各点における曲率半径がなだらかに変化するものと仮定)のもと、基準点に対する従属点の相対的な位置関係を特定することができる。
【0042】
図9は、各基準点N13A〜N13Gと、当該基準点N13A〜N13Gに関する従属点N13B1〜N13H2と、をxy座標上に示した図である。
図9に示すように、輪郭推定部202は、基準点N13Aの座標位置(xa、ya)を基準とした相対座標値(dxb、dyb)、(dxh、dyh)から、2つの従属点N13B1、N13H2の座標位置(xb、yb)、(xh、yh)を特定する。そして輪郭推定部202は、基準点N13Aの座標位置(xa、ya)と、2つの従属点N13B1、N13H2の座標位置(xb、yb)、(xh、yh)とを、束T1の情報として関連付けてRAM210に一時的に記録する。従属点N13B1の座標位置(xb、yb)は、この段階において、xb=xa+dxb、yb=xa+dybで算出できる。
このように、束T1においては、基準点N13Aと、基準点N13Aに関連付けられた2つの従属点N13B1、N13H2の相対的な位置関係が特定されている。
同様に、輪郭推定部202は束T2の情報として、基準点N13Cの座標位置の情報と、基準点N13Cに関連付けられた2つの従属点N13D1、N13B2の各座標位置の情報とを対応付けてRAM210に一時的に記録する。
さらに、輪郭推定部202は束T3、束T4の情報として、基準点N13E、N13Gの座標位置の情報と、基準点N13E及びN13Gに関連付けられた2つの従属点N13F1、N13D2及びN13H1、N13F2の各座標位置の情報とを対応付けてRAM210に一時的に記録する。
【0043】
ここで上述したように、束T1において、従属点N13B1は、歪みゲージ13Aの隣に配される歪みゲージ13Bの位置を仮想的に示す点である。一方、束T2において、従属点N13B2は、歪みゲージ13Cの隣に配される歪みゲージ13Bの位置を仮想的に示す点である。
今、基準点の位置に対応する歪みゲージそれぞれの間に一つのみの電極パッドが存在し、体に貼着している電極パッドの数が合計8個であるとすると、異なる束(T1またはT2)に属する2つの従属点N13B1、N13B2は、同一の歪みゲージ13Bの位置を示す。したがって、この場合、2つの従属点N13B1(第1従属点)、N13B2(第2従属点)は、本来、同一の座標位置で表されるものと考えられる。
また、
図9において、束T2に属する従属点N13D1と束T3に属する従属点N13D2は、同一の歪みゲージ13Dの位置を示している。同様に、従属点N13F1とN13F2は、同一の歪みゲージ13Fの位置を示すもの、そして、従属点N13H1とN13H2は、同一の歪みゲージ13Hの位置を示している。
したがって、これらの従属点N13D1とN13D2、N13F1とN13F2、及び、N13H1とN13H2についても同様の考えが成り立つ。
【0044】
ここで、輪郭推定部202は、第3ステップS12として、束T1に含まれる従属点N13B1と、束T2に含まれる従属点であって束T1に含まれる従属点N13B1と同一の歪みゲージ13Bの位置を示す従属点N13B2と、を一致させるように、束T1、T2のそれぞれに含まれる各点(基準点、従属点)の座標位置を変更して、xy座標上における位置を移動させる処理を行う。この際、輪郭推定部202は、束T1、束T2それぞれに含まれる各基準点と各従属点の相対的な位置関係を維持したまま各点の座標位置を変更する。
【0045】
図10は、輪郭推定部202が、束T1と、束T2に含まれる各点(基準点、従属点)の座標位置を変更して、同一の歪みゲージ13Bの位置を示す従属点N13B1、N13B2の座標位置を一致させる処理を示している。具体的には、
図10に示すように、輪郭推定部202は、束T1をy軸に沿って平行移動させるように座標位置を変更する処理を行う。「平行移動させるように」とは、例えば、基準点N13Aのy座標値を所定の値だけ加算または減算して座標位置を変更したときに、同時に、従属点N13B1、N13H2のy座標値についても、同一の値の加算または減算を行い、各点の相対的な位置関係を維持しながら座標位置を変更する処理を指す。ただし、本実施形態においては、従属点N13B1、N13H2の座標位置は、基準点N13Aの座標位置を基準とした相対座標値によって特定されているので、輪郭推定部202は、実質的には、基準点N13Aの座標位置のみを変更する処理を行うことで、束T1を平行移動させるように座標位置を変更する処理とすることができる。
同様に、輪郭推定部202は、束T2をx軸に沿って原点Oに平行移動させるように座標位置を変更する処理を行う。
ここで、輪郭推定部202は、束T1、T2をそれぞれy軸及びx軸に沿って平行移動させた場合に、従属点N13B1とN13B2とが重なる一致点K(
図10)の座標位置を特定する。ここで、輪郭推定部202は、従属点N13B1の現時点における座標位置が(xb1、yb1)であって、従属点N13B2の現時点における座標位置が(xb2、yb2)であった場合に、一致点Kの座標位置を(xb1、yb2)と特定する。
そして、輪郭推定部202は、各従属点N13B1と一致点Kとのy座標値についての差分(yb1−yb2)を算出し、束T1に含まれる基準点N13Aのy座標値について、差分(yb1−yb2)を減算する処理を行う。同様に、輪郭推定部202は、各従属点N13B2と一致点Kとのx座標値についての差分(xb1−xb2)を算出し、束T2に含まれる基準点N13Cのx座標値について、差分(xb1−xb2)を加算する処理を行う。
このようにして、輪郭推定部202は、従属点N13B1、N13B2の座標位置を一致させるように、各束T1、T2の座標位置を変更する。
【0046】
図11は、次いで、輪郭推定部202が束T3に含まれる各点の座標位置を変更して、同一の歪みゲージ13Dの位置を示す従属点N13D1、N13D2の位置を一致させる処理を示している。
図11に示すように、輪郭推定部202は、束T3をy軸に沿って平行移動させた際に、束T3の従属点N13D2が、束T2の従属点N13D1に最も接近するように、束T3各点の座標位置を変更する処理を行う。なお、この段階では束T2の座標位置は既に固定されているので、従属点N13D1とN13D2の座標位置は完全には一致せず、幾分の誤差を有するものとなる。
この処理の後、輪郭推定部202は、さらに、束T4をx軸に沿って平行移動させた際に、束T4の従属点N13F2が束T3の従属点N13F1に最も接近するように、束T4の各点の座標位置を変更する処理を行う。この段階では、上記と同様に、束T3の座標位置は既に固定されているので、従属点N13F1とN13F2の座標位置は完全に一致しない。また、束T4の従属点N13H1と束T1の従属点N13H2の座標位置も一致しない。
したがって、この段階では、各従属点の対、N13B1とN13B2、N13D1とN13D2、N13F1とN13F2、N13H1とN13H2、における座標位置の誤差量が不均一な状態となっている。よって、輪郭推定部202は、各従属点の対における座標位置の誤差量が均一化されるように、各束T1〜T4の座標位置を再度微調整する。例えば、輪郭推定部202は、各束T1〜T4のそれぞれについて、束T1〜T4に含まれる各点の相対的な位置関係を維持したまま微小移動を行い、当該微小移動ごとに誤差量を算出しつつ、その誤差量が均一化された時点で微小移動を停止する。
【0047】
図12は、各束T1〜T4についての平行移動が完了した直後の状態を示している。
図12に示すように、各従属点の対、N13B1とN13B2、N13D1とN13D2、N13F1とN13F2、N13H1とN13H2における誤差量が均一化されたところで、各束T1〜T4の最終的な位置が特定される。
そして、輪郭推定部202は、従属点N13B1とN13B2各々が示す座標位置の中点を算出し、ここで算出された中点の座標位置を、歪みゲージ13Bの位置を示す点N13Bとして特定する(
図6、第4ステップS13)。輪郭推定部202は、同様の処理を、他の従属点の対(N13D1とN13D2、N13F1とN13F2、N13H1とN13H2)に対しても行う。
【0048】
図13は、上述した第4ステップS13の処理が完了した直後の状態を示している。
図13に示すように、輪郭推定部202は、相対位置特定処理S1(第1ステップS10〜第3ステップS12)の処理を経て、各歪みゲージ13A〜13Hの相対的な位置関係を示す点N13A〜N13Hを、座標上において特定する。
なお
図10〜13を用いて説明した処理は、より一般的に説明すると、各束T1〜T4が示す基準点(N13A〜N13G)の座標位置それぞれを原点O方向に移動させた場合において、当該基準点と従属点との相対的な位置関係が当該移動前の相対的な位置関係を保持した状態の各束における同一の歪みゲージを示す各従属点の座標位置の距離が最も近くなるような、各束を構成する基準点と従属点の移動後の座標位置を算出する。そして、輪郭推定部202はその同一の歪みゲージを示す従属点間の中点を、当該歪みゲージの位置を示す点として特定する。
【0049】
(形状特定処理について)
本実施形態に係る輪郭推定部202は、相対位置特定処理S1を完了して、各歪みゲージ13A〜13Hの相対的な位置関係を特定した後、これらを所定の関数曲線で結び合わせながら、測定対象部Xの輪郭形状を特定する形状特定処理S2を実行する(
図6)。
【0050】
図14A、
図14Bは、形状特定処理S2の処理の具体的な内容を説明する図である。
図14Aに示すように、輪郭推定部202は、歪みゲージ13Aの位置を示す点N13Aと、歪みゲージ13Aに隣接する歪みゲージ13Bの位置を示す点N13Bとを結ぶ曲線ABを特定する。ここで輪郭推定部202が特定する曲線ABは、歪みゲージ13Aと歪みゲージ13Bの間における輪郭の形状を推定するものとなる。
【0051】
具体的には、輪郭推定部202は、点N13Aと点N13Bとの間において、曲線ABを特定する複数の補完点H1、H2、・・・を設定する処理を行う。
まず、輪郭推定部202は、点N13Aと原点Oとを結ぶ長さrAの線分と、点N13Bと原点Oとを結ぶ長さrBの線分と、が原点Oにおいて成す角度θABを特定する(
図14A参照)。
次に、輪郭推定部202は、HDD211を参照して、予め設定された微小角度dθを特定する。この微小角度dθは、角度θABを均等にm等分(mは2以上の整数)して微小に分割した角度を示している。そして、輪郭推定部202は、点N13Aと原点Oとを結ぶ線分を微小角度dθだけ傾けた直線上において補完点H1を特定する。次いで、輪郭推定部202は、さらに微小角度dθだけ傾けた直線上において補完点H2を特定する。このように、輪郭推定部202は、微小角度dθごとに特定される原点Oを通る複数の直線の各々について、補完点H1、H2、・・・を特定する(
図14A参照)(
図6、ステップS20)。
【0052】
ここで、輪郭推定部202は、補完点H1、H2、・・・の位置を、所定の関数(2次関数f(θ))に基づいて特定する。この2次関数f(θ)は、補完点H1、H2、・・・と、原点Oと、歪みゲージ13Aの位置を示す点N13Aと、が成す角度θについての関数であって、補完点H1、H2、・・・と原点Oとを結ぶ線分の長さr1、r2、・・・を解として特定する。
また、輪郭推定部202は、相対位置特定処理S1を経て点N13A、点N13Bの座標位置を特定しているので、その座標位置から点N13Aと原点Oとの距離rA、点N13Bと原点Oとの距離rBを算出する。そして、輪郭推定部202は、f(0)=rA、f(θAB)=rBとなる拘束条件を満たすように2次関数f(θ)を設定する(
図14B参照)。
【0053】
例えば、補完点H1と、原点Oと、歪みゲージ13Aの位置を示す点N13Aとの成す角度はdθである。よって、
図14Bに示すように、補完点H1と原点Oとを結ぶ線分の長さr1は、r1=f(dθ)によって算出される。同様に、補完点H2と原点Oとを結ぶ線分の長さr2は、r2=f(2×dθ)によって算出される。
輪郭推定部202は、上記処理を繰り返して、補完点H1、H2、・・・の全てについての位置を特定する(
図6、ステップS21)。
【0054】
このようにすることで、輪郭推定部202は、各補完点H1、H2、・・・を結ぶ曲線ABを特定することができる。輪郭推定部202は、同様にして、歪みゲージ13Bと歪みゲージ13Cとの間を結ぶ曲線BCなど、他の歪みゲージ間における全ての曲線を特定する。輪郭推定部202は、最終的に、歪みゲージ13A〜13Hの全てを結ぶ閉曲線、すなわち測定対象部Xの輪郭の形状を特定することができる。
【0055】
(サイズ特定処理について)
本実施形態に係る輪郭推定部202は、形状特定処理S2を完了して、測定対象となる部分の輪郭の形状を推定した後、当該輪郭の形状の大きさが現実の測定対象となる部分の大きさと一致するように、そのサイズを特定するサイズ特定処理S3を実行する(
図6)。
【0056】
具体的には、輪郭推定部202は、サイズ特定処理S3において、形状特定処理S2により推定された輪郭形状の周囲長が、別途測定された測定対象部Xの周囲長と一致するように、推定された輪郭形状を拡大または縮小する処理を行う(
図6、ステップS30)。
ここで別途測定された周囲長とは、EIT測定装置1を用いたEIT測定とは別に、例えばメジャー等を用いて実測された、測定対象部Xの周囲長である。
【0057】
図15は、輪郭推定部202が、推定された輪郭形状を拡大または縮小する処理の様子を示している。
輪郭推定部202は、形状特定処理S2により形状が推定された輪郭の周囲長を算出し、これを、メジャー等を用いて別途測定された測定対象部Xの周囲長と比較する。そして、推定された輪郭の周囲長と、上記実測された周囲長とが異なる場合には、推定された輪郭形状を維持したまま、全体のサイズを拡大または縮小して、推定された輪郭の周囲長と、上記実測された周囲長とが一致するように調整する。
【0058】
輪郭推定部202は、以上の処理を経て、測定対象部Xの輪郭形状及びその大きさを推定する。
【0059】
(効果)
図16は、第1の実施形態に係る輪郭推定部の処理結果を示す図である。
図16は、輪郭推定部202が上記各処理S1〜S3を経て推定した測定対象者の胸郭の輪郭形状Aと、当該胸郭について別途X線CTによって取得されたCT画像と、を重ね合わせた図を示している。
図16に示すように、輪郭推定部202が、測定用ベルト10に備えられた歪みゲージ13A〜13Hに基づいて推定した輪郭形状Aは、CT画像に示される胸郭の輪郭形状と概ね一致している。
【0060】
図17A、
図17Bは、第1の実施形態に係るEIT測定制御部による画像生成処理の例を説明する第1、第2の図である。
ここで、EIT測定制御部201が、輪郭推定部202によって推定された輪郭形状Aに基づいて断層画像を生成する具体的な手法について簡単に説明する。ここで、EIT測定制御部201が上述した有限要素法に基づいて断層画像を生成する場合を考える。
まず、EIT測定制御部201は、予めHDD211に記憶された所定のFEMモデルβ(
図17A左)を指定する。このFEMモデルβは、他の被測定者によるCT画像等に基づいて予め作成されたものであって、EIT測定における測定対象部Xと同一の部位(例えば胸部)が指定される。そして、EIT測定制御部201は、輪郭推定部202によって推定された輪郭形状Aと、指定したFEMモデルβの輪郭形状B(
図17A右)と、を重ね合わせて比較する(
図17B参照)。
【0061】
次に、EIT測定制御部201は、輪郭形状Aと、輪郭形状Bとの差分が最小となるように、輪郭形状Bを、X方向、Y方向それぞれについて一定比率で伸縮する処理を行う。具体的には、EIT測定制御部201は、輪郭形状Aを構成する各点(
図17B黒丸で示す点)の位置と、輪郭形状B上において当該黒丸で示す各点に対応する点(
図17B白丸で示す点)の位置と、の差分dLを全周囲で積分し、当該差分dLの積分値が最小となるX方向、Y方向それぞれについての伸縮比率(rx、ry)を算出する。
次いで、EIT測定制御部201は、算出された伸縮比率(rx、ry)を、最初に指定したFEMモデルβに適用し、同比率でX方向、Y方向にそれぞれ伸縮されたFEMモデルβ’を生成する。
そして、EIT測定制御部201は、電極パッド12A〜12Hを介して取得した電圧信号に対し、FEMモデルβ’についての有限要素法を適用することで、測定対象部Xの輪郭形状及び大きさに即した断層画像を取得する。
【0062】
なお、HDD211には、複数の被測定者のCT画像に基づいて作成された複数の異なるFEMモデルβ1、β2、・・・が予め記憶されていてもよい。この場合、EIT測定制御部201は、輪郭推定部202によって推定された輪郭形状Aに最も近いFEMモデルを選択する処理を行ってもよい。具体的には、EIT測定制御部201は、複数のFEMモデルβ1、β2、・・・のうち、例えば胸部において、輪郭形状Aの周囲長と一致する周囲長を有するFEMモデルβaを選択する。そして、周囲長が一致するFEMモデルβaについて、上記と同様の伸縮処理を行う。
【0063】
以上のように、EIT測定装置1を用いることで、オペレータは、測定用ベルト10を測定対象者における測定対象部Xに巻きつけるのみで、当該部分の輪郭形状を推定するとともに、推定された輪郭形状に基づいた断層画像を取得できる。
したがって、オペレータは、その断層画像と、測定対象とした部分の絶対的な位置関係を特定することができるので、測定対象ごとに形状や大きさが異なっていたとしても、当該断層画像に基づいて正確な診断を行うことができる。
【0064】
以上、第1の実施形態に係るEIT測定装置によれば、輪郭の形状や大きさが異なる種々の測定対象に対しても、簡素で、かつ、より正確な診断を行うことができる。
【0065】
なお、第1の実施形態に係るEIT測定装置1は、上述した態様に限定されることはなく、以下のように変形可能である。
【0066】
例えば、輪郭推定部202は、第3ステップS12(
図10〜
図12参照)において、束T1〜T4を平行移動させて各歪みゲージ13A〜13Hの相対的な位置関係を特定する処理は、上述した処理の内容に限定されない。
例えば、輪郭推定部202が平行移動させる束T1〜T4を動かす順番は任意であり、
図9に示す状態から
図12に示す状態へと移行することができれば、その間の処理内容は特に限定されない。
【0067】
また、輪郭推定部202は、形状特定処理S2のステップS21(
図14A、
図14B参照)において、相対的な位置関係が特定された各歪みゲージ13A〜13Hを示す点の間の輪郭を、2次関数に基づく複数の補完点をもって推定するものとした。しかし、本実施形態の変形例として、補完点の位置は、2次関数ではなく、他の関数(1次関数、3次関数等)をもって特定されるものであってもよい。また、経験則等に基づいて、複数の関数候補の中から適切な関数や必要なパラメータを適宜選択可能とする機能を有していてもよい。
【0068】
また、上述の説明によれば、EIT測定本体部20は、信号ケーブル19を介して測定用ベルト10の測定回路11に接続されている態様としている。しかし、本実施形態の他の変形例において、この態様に限定されることはない。例えば、EIT測定本体部20は、測定回路11上に実装されている態様であってもよい。
またこの場合において、EIT測定本体部20の機能が実装された測定回路11は、さらに外部機器との無線または有線通信機能を有しているとともに、取得された断層画像を、種々の端末装置(スマートフォン、タブレット型コンピュータ、小型ゲーム機等)に無線あるいは有線で送信する機能を備えていてもよい。
【0069】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係るEIT測定装置1について、図面を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同一の機能構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0070】
図18は、第2の実施形態に係る測定用ベルトの機能構成を示す図である。
なお、
図18において、図面が煩雑となるのを避けるため、電極パッド12A〜12H及び歪みゲージ13A〜13Hの表記を省略しているが、実際には、第1の実施形態と同様に、フレキシブル基板14上に周期配列された構成となっている。
図18に示すように、本実施形態に係る測定用ベルト10は、その長手方向に沿って(電極パッド12A〜12H等と並列して)、間隔αで周期配列されながら測定用ベルト10に貼着された首位長計測用電極パッド301、302、・・・、30fを備えている。
【0071】
図19は、第2の実施形態に係る周囲長測定部の機能を説明する図である。
図19に示すように、本実施形態に係るEIT測定本体部20は、さらに、周囲長測定部203を備えている。周囲長測定部203は、周囲長計測用電極パッド301〜30fを介して取得される電圧信号に基づいて、測定対象部Xの周囲長を計測する機能を有している。周囲長測定部203は、第1の実施形態におけるEIT測定制御部201、輪郭推定部202と同様に、EIT測定本体部20全体の動作を司るCPU200が、測定用プログラム実行時においてその機能を発揮する態様であってもよい。
【0072】
周囲長測定部203は、予め、測定用ベルト10に周期配列された周囲長計測用電極パッド301〜30fの間隔α(
図18)を予め把握している。そして、周囲長測定部203は、周囲長計測用電極パッド301〜30fにおける電極対ごとの電気インピーダンスを測定する。
例えば、
図19に示すような状態のとき、周囲長計測用電極パッド301と周囲長計測用電極パッドとが密接しているため、当該周囲長計測用電極パッド301、30b間の電気インピーダンスは、両電極の容量結合に基づいて低下する。他の電極パッド対である302と30cの間、303と30eの間、304と30fの間についても同様の結果となる。一方、周囲長計測用電極パッド30a、305は、他の電極パッドとの容量結合が成されないため、周囲長測定部203は、周囲長計測用電極パッド30a、305については高い電気インピーダンス値を検出する。
なお周囲長計測用電極パッドの間隔αは、必ずしも電極パッドの間隔と同じ必要はなく、間隔αを小さくすることで周囲長測定精度を向上させることができる。
【0073】
このようにして、周囲長測定部203は、周囲長計測用電極パッド301〜30fの対ごとの電気インピーダンス値の相違から、測定用ベルト10が巻きつけられて位置が重なった領域を特定し、測定対象部Xの周囲長を割り出す。
【0074】
このEIT測定装置1は、EIT測定とともに測定対象部Xの周囲長も同時に取得することが可能なので、EIT測定装置1のオペレータは、第1の実施形態において測定対象部Xの周囲長を、別途メジャーなどを用いて実測していた手間(
図6、ステップS30参照)を省くことができる。
よって、第2の実施形態に係るEIT測定装置によれば、EIT測定を行う手順を一層簡素化することができる。
【0075】
なお、測定対象者や測定対象とする部分によって周囲長が異なる場合には、例えば、電極パッド間の距離等が変更された複数の測定用ベルト10を予め用意しておき、その中から最適な長さのものを一つ選択して用いる態様であってもよい。また、測定用ベルト10に伸縮可能な機構(ゴムバンド等)を備えたものがあってもよい。
また、上述の説明において、各実施形態に係る測定用ベルト10は、電極パッド12A〜12H及び歪みゲージ13A〜13Hを長手方向に8個ずつ周期配列した構成であるとし、また、輪郭推定部202における各処理S1〜S3の内容は、歪みゲージ13A〜13Hの配列数が8個であることを前提として説明した。
しかし、他の実施形態に係るEIT測定装置1は、例えば、電極パッド及び歪みゲージを16個または32個備える態様としてもよい。例えば測定用ベルト10が伸縮可能な機構を備えていない場合には、測定対象部Xの大きさによって予め測定用ベルト10に複数設けられた電極パッド12A〜12Hや歪みゲージ13A〜13Hのうち測定対象部Xの体表面に接触する電極パッド12A〜12Hや、これに並列して配置される歪みゲージ13A〜13Hの数が変化することが考えられる。
このような態様の場合、例えば、輪郭推定部202は、測定用ベルト10上の周期配列において一つ以上の歪みゲージを隔てた所定間隔ごとに指定される歪みゲージの位置を示す、予め定められた基準点の座標位置を、HDD211から読み取り、その読み取った座標位置を初期座標値と特定する(第1ステップS10)。
そして、当該基準点の座標位置に対する、当該基準点が示す歪みゲージの中間に配される何れかの歪みゲージの位置を示す従属点の座標位置を特定する相対座標値を、歪みゲージを介して取得した曲率データに基づいて算出する(第2ステップS11)。
以下、第1の実施形態で説明した第3ステップS12及び第4ステップS13を行うことで、各歪みゲージの相対的な位置関係を特定することができる。
【0076】
<第3の実施形態>
上述したように、第1の実施形態に係る相対位置特定処理S1では、一つおきに指定される歪みゲージ(歪みゲージ13A、13C、13E、13G(
図2))のxy座標上における仮想位置を仮決めする際、EIT測定装置1は、基準点N13A、N13E、及び、基準点N13C、N13Gを、それぞれ、互いに直交するx軸上及びy軸上に配する(
図7参照)。すなわち、第1の実施形態に係るEIT装置1は、測定用ベルト10が測定対象部Xに巻かれる際、当該測定用ベルト10上に周期配列される歪みゲージのうちの4つ(歪みゲージ13A、13C、13E、13G)は、常に、互いに直交する軸(x軸、y軸)上に配されることを前提として計算を行っている。
【0077】
しかしながら、測定用ベルト10に周期配列される歪みゲージ13A〜13Hの周期間隔(距離P)は固定であるのに対し、測定対象部Xの周の長さは、測定対象者の体格によって変化する。したがって、必ずしも、歪みゲージ13A〜13Hのうちの一部が互いに直交する軸上に配されるとは限らない。したがって、第1の実施形態に係るEIT測定装置1は、歪みゲージの一部が互いに直交する軸上に存在しない場合、形状の推定結果に誤差を生じさせる可能性がある。
【0078】
これに対し、第3の実施形態に係るEIT測定装置1は、歪みゲージの一部が互いに直交する軸上に存在しない場合であっても、輪郭形状を精度よく推定することができる。
【0079】
以下、図面を参照しながら、第3の実施形態に係るEIT測定装置1について詳細に説明する。
【0080】
図20は、第3の実施形態に係る測定用ベルトの機能構成を示す図である。
図20に示すように、測定用ベルト10は、帯状のフレキシブル基板14上において、16個の歪みゲージ13A〜13Pが等間隔の距離Pで周期配列されている。なお、
図20においては、図面が煩雑となるのを避けるため、測定回路11及び電極パッド12A〜12Hの表記を省略しているが、実際には、第1の実施形態と同様に設けられている。
【0081】
以下の説明においては、測定対象物Xとして胸囲L1の胸部に測定用ベルト10を巻き付ける場合を説明する。ここで、胸囲L1は、測定用ベルト10の一端に配される歪みゲージ13Aから他方の端部に配される歪みゲージ13Pまでの長さよりも短い長さとする(
図20参照)。
【0082】
図21は、第3の実施形態に係る測定用ベルトが巻かれた状態を示す図である。
図21に示すように、測定用ベルト10は、当該測定用ベルト10の端部に配される歪みゲージ13Aを測定対象物Xの胸部の中心(胸骨体)に合わせながら巻き付けられている。この場合、各歪みゲージ13A〜13Pごとの間隔(距離P)の整数倍(本実施形態では16倍)が胸囲L1に一致しないため、測定対象物X(測定対象者)の前後方向の対称軸にx軸を、左右方向の対称軸にy軸を定義した場合に、歪みゲージ13A以外の歪みゲージがx軸上、y軸上からずれた位置に配される。
したがって、第1の実施形態に係るEIT測定装置1のように、歪みゲージのうちの4つが、常に、互いに直交するx軸及びy軸上に配されることを前提として輪郭(胸郭)の推定処理を行うと誤差が生じてしまう。
そこで、本実施形態に係る輪郭推定部202は、このような場合であっても、高精度で測定対象物Xの輪郭を推定可能とすべく以下の処理を実行する。
【0083】
図22は、第3の実施形態に係る輪郭推定部の機能を説明する図である。
本実施形態に係るEIT装置1を扱うオペレータは、まず、測定用ベルト10の一端側に配された歪みゲージ(本実施形態では、歪みゲージ13A)を第1基点αとして、測定対象物X(測定対象者)の胸部の中心(胸骨体上)に配する。
次に、オペレータは、測定用ベルト10における第1基点αを測定対象物Xの胸骨体上に固定したまま、当該測定用ベルト10を測定対象物Xに巻き付ける。
【0084】
上述したように、測定対象物Xの胸囲L1が距離Pの整数倍に一致しない場合、各歪みゲージ13A〜13Pは、測定対象物Xに対して非対称に配される。したがって、
図22に示すように、測定対象物Xの背中の中心(背骨突起)には、歪みゲージが配されない。そこで、オペレータは、測定対象物Xの背骨突起の位置に一致する測定用ベルト10上の位置を第2基点βとして特定する。具体的には、オペレータは、各歪みゲージ13A〜13Pのうち、測定対象物Xの背骨突起を間に配する歪みゲージの対を特定する(本実施形態では、歪みゲージ13Hと歪みゲージ13I)。更に、オペレータは、当該歪みゲージ(歪みゲージ13H)から測定対象物Xの背骨突起(第2基点β)までの距離P1Aを計測する。
【0085】
次いで、オペレータは、測定用ベルト10を測定対象物Xに巻き付けて一周させたときに、測定用ベルト10の他端側において、測定対象物Xに接触する歪みゲージの中で第1基点αに最も近い歪みゲージ(本実施形態では、歪みゲージ13O)の位置を特定する。具体的には、オペレータは、歪みゲージ13Oから第1基点αまでの距離P1Bを計測する。これにより、測定用ベルト10上における各歪みゲージ13A〜13Oと、別途規定された第1基点α及び第2基点βと、の位置関係を特定することができる。
なお、この場合、測定用ベルト10の他端側の余りの部分に配される歪みゲージ13Pは、輪郭の形状の推定処理には用いられない。
【0086】
本実施形態に係るEIT測定装置1の輪郭推定部202は、オペレータが計測した歪みゲージ13Hから第2基点βまでの距離P1Aと、歪みゲージ13Oから第1基点αまでの距離P1Bと、の入力を受け付ける。オペレータは、EIT測定装置1の操作入力部212を操作して、EIT測定装置1に対し、歪みゲージ識別情報(歪みゲージ13H、歪みゲージ13Oを特定する情報)及び計測した距離P1A、距離P1Bを示す情報を入力する。
【0087】
図23〜
図27は、第3の実施形態に係る輪郭推定部の処理の具体的な内容を説明する第1〜第5の図である。
次に、本実施形態に係る輪郭推定部202が、測定対象部Xの断層面の輪郭形状を推定する処理を具体的に説明する。
【0088】
(相対位置特定処理について)
第1の実施形態と同様に、輪郭推定部202は、相対位置特定処理S1において、歪みゲージ13A〜13Oごとの相対的な位置関係を特定する。
具体的には、
図23に示すように、輪郭推定部202は、第1ステップS10(
図6)において、まず所定のxy座標を設定するとともに、第1基点αに配される歪みゲージ13Aがy軸上に配されるものとして、当該歪みゲージ13Aについてのxy座標上の座標位置を示す基準点N13Aを、xy座標上に仮決めする。
【0089】
次に、輪郭推定部202は、第2基点βに配される歪みゲージに対応するxy座標上の基準点を仮決めする。ここで、第2基点β上には、実際には歪みゲージは存在しない(
図22参照)。したがって、輪郭推定部202は、仮想の歪みゲージ13Qが第2基点βに存在するものとみなして、当該仮想の歪みゲージ13Qの位置を示す基準点N13Qをy軸上に仮決めする。即ち、第1基準点α上に配される歪みゲージ13Aと第2基点β上に(仮想的に)配される歪みゲージ13Qとは、共に、測定対象物Xの前後方向の対称軸、即ち、胸骨体及び背骨突起を結ぶ対称軸上に配される。したがって、輪郭推定部202は、基準点N13A及び基準点N13Qが測定対象物Xの前後方向の対称軸に相当する軸(y軸)に存在するものとしてxy座標上の位置の仮決めを行う。
【0090】
このように、本実施形態に係る輪郭推定部202は、相対位置特定処理S1の第1ステップS10において、まず、複数の歪みゲージ13A〜13Pのうち、測定対象物Xの対称軸(胸骨体及び背骨突起を結ぶ軸)上に配される歪みゲージ13Aを示す基準点の座標位置を、予め定められた初期座標値と特定する。また、輪郭推定部202は、測定対象物Xに巻かれた測定用ベルト10の、測定対象物Xの上記対称軸上に配される位置(第2基点β)に歪みゲージが配されない場合において、当該第2基点β上に仮想の歪みゲージ13Qが配されているものとみなして、相対位置特定処理S1を実行する。
【0091】
ここで、輪郭推定部202は、原点Oを中心として、y軸上の上下に基準点N13A、N13Qの座標位置を特定する。具体的には、輪郭推定部202は、基準点N13A、N13Qごとに予め記憶された初期座標値をHDD211から読み出して、原点Oを中心とする座標上に設定する。例えば、HDD211において、基準点N13Aについての初期座標値は(0[cm]、50[cm])、N13Qの初期座標値は(0[cm]、-50[cm])などと記憶されている。
【0092】
次に、輪郭推定部202は、第2ステップS11(
図6)において、基準点N13A、N13Qと、基準点N13A、N13Qに対応する歪みゲージ13A、13Q各々の両隣に配される2つの歪みゲージのxy座標上における位置を示す従属点と、の相対的な位置関係を特定する。
なお、本実施形態に係る輪郭推定部202は、上記相対的な位置関係によって関連付けられた1つの基準点(例えば、基準点N13A)と、当該基準点の両側に、直列に連続して配される従属点(例えば、N13B1、N13C1、N13D1・・・等)との組み合わせを一組の「束」と定義する。
【0093】
ここで、歪みゲージ13Aの両側に隣接して配される歪みゲージは、歪みゲージ13Bと、歪みゲージ13Oである(
図21、
図22参照)。この場合において、輪郭推定部202は、基準点N13Aの位置(xa、ya)を基準とした歪みゲージ13Bの相対的な位置を示す従属点を従属点N13B1、基準点N13Aの位置を基準とした歪みゲージ13Oの相対的な位置を示す従属点を従属点N13O1として、各従属点N13B1、N13O1のxy座標上の位置を特定する。
また、仮想の歪みゲージ13Qの両側に隣接して配される歪みゲージは、歪みゲージ13Hと、歪みゲージ13Iである(
図21、
図22参照)。この場合において、輪郭推定部202は、基準点N13Qの位置(xq、yq)を基準とした歪みゲージ13Hの相対的な位置を示す従属点を従属点N13H2、基準点N13Qの位置を基準とした歪みゲージ13Iの相対的な位置を示す従属点を従属点N13I2として、各従属点N13H2、N13I2のxy座標上の位置を特定する。
【0094】
本実施形態に係る輪郭推定部202による、基準点N13A、N13Qに対する各従属点の相対的な位置関係を特定する処理については、第1の実施形態と同様である(
図8参照)。
ただし、輪郭推定部202は、基準点N13Aに対する従属点N13O1の相対的位置を特定する場合においては、基準点N13Aから従属点N13O1までの距離が、オペレータによって入力された距離P1B(<距離P)であることを利用する。具体的には、輪郭推定部202は、
図8において、基準点N13Aからの微小距離dPの積算量が距離P1Bとなった地点を従属点N13O1とする。なお、輪郭推定部202は、基準点N13Aに対する従属点N13B1の相対的位置を特定する場合は、基準点N13Aから基準点N13B1までの距離が距離Pであることを利用する。
【0095】
同様に、輪郭推定部202は、基準点N13Qから従属点N13H2までの距離がオペレータによって入力された距離P1A(<距離P)であることを利用して、従属点N13H2との相対的位置を特定する。具体的には、輪郭推定部202は、
図8において、基準点N13Qからの微小距離dPの積算量が距離P1Aとなった地点を従属点N13H2とする。
更に、輪郭推定部202は、基準点N13Qから従属点N13I2までの距離が距離(P−P1A)であることを利用して、従属点N13I2との相対的位置を特定する。具体的には、輪郭推定部202は、
図8において、基準点N13Qからの微小距離dPの積算量が距離(P−P1A)となった地点を従属点N13I2とする。
なお、上記の場合において、本実施形態に係る輪郭推定部202は、第2基点βに配される仮想の歪みゲージ13Qにより取得される曲率がゼロ(曲率半径が無限大)であると仮定した上で、基準点N13Qに対する従属点N13H2、N13I2の相対的位置を特定する。
【0096】
図24は、以上の処理によって、輪郭推定部202が、基準点N13A、N13Qを基準として、当該基準点N13A、N13Qに隣接する各従属点の位置を特定した状態を示している。
図24に示すように、輪郭推定部202は、基準点N13Aの位置(xa、ya)を基準とした従属点N13B1の相対的な位置(xb、yb)、及び、従属点N13O1の相対的な位置(xo、yo)を特定する。同様に、輪郭推定部202は、基準点N13Qの位置(xq、yq)を基準とした従属点N13H2の相対的な位置(xh、yh)、及び、従属点N13I2の相対的な位置(xi、yi)を特定する。
【0097】
さらに、本実施形態に係る輪郭推定部202は、
図8に示す処理を繰り返して、各従属点に更に従属する従属点の位置を特定する。例えば、輪郭推定部202は、従属点N13B1の位置(xb、yb)を基準として、当該従属点N13B1に隣接する従属点N13C1(歪みゲージ13Cに対応する従属点)の位置(xc、yc)を特定する。同様に、輪郭推定部202は、従属点N13O1の位置(xo、yo)を基準として、当該従属点N13O1に隣接する従属点N13N1(歪みゲージ13Nに対応する従属点)の位置(xn、yn)を特定する。
輪郭推定部202は、上記処理を繰り返して、基準点N13Aの一方側において直列に従属する従属点N13B1〜N13E1の各々の位置、及び、基準点N13Aの他方側において直列に従属する従属点N13L1〜N13O1の各々の位置を特定する。これにより、基準点N13Aを中心とした束T1の位置が仮決めされる(
図25参照)。
【0098】
同様に、輪郭推定部202は、従属点N13H2の位置(xh、yh)を基準として、当該従属点N13H2に隣接する従属点N13G2(歪みゲージ13Gに対応する従属点)の位置(xg、yg)を特定する。同様に、輪郭推定部202は、従属点N13I2の位置(xi、yi)を基準として、当該従属点N13I2に隣接する従属点N13J2(歪みゲージ13Jに対応する従属点)の位置(xj、yj)を特定する。
輪郭推定部202は、上記処理を繰り返して、基準点N13Qの一方側において直列に従属する従属点N13D2〜N13H2の各々の位置、及び、基準点N13Qの他方側において直列に従属する従属点N13I2〜N13M2の各々の位置を特定する。これにより、基準点N13Qを中心とした束T2の位置が仮決めされる(
図25参照)。
【0099】
ここで上述したように、束T1に属する従属点N13D1、N13E1は、それぞれ、測定用ベルト10上に配された歪みゲージ13D、歪みゲージ13Eの位置を仮想的に示す点である。一方、束T2に属する従属点N13D2、N13E2も、それぞれ、測定用ベルト10上に配された歪みゲージの13D、歪みゲージ13Eの位置を仮想的に示す点である。
つまり、異なる束(T1またはT2)に属する2つの従属点N13D1、N13D2は、同一の歪みゲージ13Dの位置を示す。また、異なる束に属する2つの従属点N13E1、N13E2は、同一の歪みゲージ13Eの位置を示す。同様に、異なる束に属する2つの従属点N13L1、N13L2は、同一の歪みゲージ13Lの位置を示す。そして、異なる束に属する2つの従属点N13M1、N13M2は、同一の歪みゲージ13Mの位置を示す。
【0100】
したがって、この場合、従属点N13D1と従属点N13D2、従属点N13E1と従属点N13E2、従属点N13L1と従属点N13L2、従属点N13M1と従属点N13M2は、それぞれ、同一の座標位置で表されるべきものと考えられる。
【0101】
よって、輪郭推定部202は、第3ステップS12(
図6)において、束T1に含まれる従属点N13D1、N13E1、N13L1、N13M1の各々の位置と、束T2に含まれる従属点N13D2、N13E2、N13L2、N13M2の各々の位置と、が一致するように、束T1、T2のそれぞれに含まれる各点(基準点及び従属点)の座標位置を変更して、xy座標上における位置を移動させる処理を行う。この際、輪郭推定部202は、束T1、束T2それぞれに含まれる各基準点と各従属点の相対的な位置関係を維持したまま各点の座標位置を変更(平行移動)する。
【0102】
図26は、輪郭推定部202が、束T1と、束T2に含まれる各点(基準点、従属点)の座標位置を平行移動する処理を示している。
このとき、輪郭推定部202は、同一の歪みゲージ13Dの位置を示す従属点N13D1、N13D2、同一の歪みゲージ13Eの位置を示す従属点N13E1、N13E2、同一の歪みゲージ13Lの位置を示す従属点N13L1、N13L2、同一の歪みゲージ13Mの位置を示す従属点N13M1、N13M2の各々の座標位置の誤差の合計が最も小さくなる位置に移動する。
【0103】
具体的には、輪郭推定部202は、束T1をy軸に沿って−y方向に平行移動させるように座標位置を変更する処理を行う。ここで、輪郭推定部202は、束T1の基準点N13Aの座標(xa、ya)を座標(xa、ya’)に変更する(ya>ya’)。同様に、輪郭推定部202は、束T2をy軸に沿って+y方向に平行移動させるように座標位置を変更する処理を行う。ここで、輪郭推定部202は、束T2の基準点N13Qの座標(xq、yq)を座標(xq、yq’)に変更する(yq<yq’)。
図26に示すように、束T1と束T2とがオーバーラップする領域に属する各従属点の対であるN13D1とN13D2、N13E1とN13E2、N13L1とN13L2、N13M1とN13M2における位置の誤差の合計が最小となるところで、各束T1、T2の最終的な位置が特定される。
【0104】
次いで、輪郭推定部202は、同一の歪みゲージを示す束T1、束T2の各々に属する従属点間の中点を、当該歪みゲージの位置を示す点として特定する(ステップS13(
図6))。
図27は、上述した第4ステップS13の処理が完了した直後の状態を示している。なお、
図27において、従属点N13B〜N13Oは、それぞれ、歪みゲージ13B〜13Oに対応するxy座標上の位置を示している。ここで、従属点N13B、N13C、N13N、N13Oは、それぞれ、束T1に属していた従属点N13B1、N13C1、N13N1、N13O1の位置と同一の位置とされる。また、従属点N13F、N13G、N13H、N13I、N13J、N13Kは、それぞれ、束T2に属していた従属点N13F2、N13G2、N13H2、N13I2、N13J2、N13K2と同一の位置とされる。そして、束T1と束T2とがオーバーラップする領域に属する従属点N13D、N13E、N13L、N13Mは、それぞれ、束T1、T2の各々に属する従属点N13D1、N13D2、従属点N13E1、N13E2、従属点N13L1、N13L2、従属点N13M1、N13M2の中点の位置とされる。
輪郭推定部202は、以上の第1ステップS10〜第4ステップS13の処理を経て、15個の歪みゲージ13A〜13O(及び仮想の歪みゲージ13Q)のxy座標上における位置を特定する。
【0105】
なお、相対位置特定処理S1以降の処理である形状特定処理S2、サイズ特定処理S3については、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0106】
(効果)
以上のように、第3の実施形態に係る輪郭推定部202は、相対位置特定処理S1の第1ステップS10において、複数の歪みゲージ13A〜13Pのうち、測定対象物Xの対称軸(胸骨体と背骨突起を結ぶ軸)上の所定位置(第1基点α)に配される歪みゲージ13Aの座標位置を予め定められた初期座標値と特定する。そして、この場合における初期座標値は、上記測定対象物Xの対称軸に対応する軸(y軸)上の所定位置とされる。
これにより、当該歪みゲージ13Aが測定対象物Xの対称軸に対応する軸上に配されることを拘束条件として相対位置特定処理S1を実行する際に、精度よく輪郭の推定を行うことができる。
【0107】
また、第3の実施形態に係る輪郭推定部202は、測定対象物Xに巻き付けられた測定用ベルト10上の、当該測定対象物Xの対称軸上に配される位置(第2基点β)に歪みゲージが配されない場合において、当該測定対象物Xの対称軸上に配される位置に仮想の歪みゲージ13Qが配されているものとみなして、相対位置特定処理S1を実行する。即ち、輪郭推定部202は、測定対象物Xの対称軸上の位置(第2基点β)に配される仮想の歪みゲージ13Q(基準点N13Q)の座標位置を予め定められた初期座標値と特定する。そして、この場合における初期座標値も、測定対象物Xの対称軸に対応する軸(y軸)上の所定位置とされる。
このようにすることで、輪郭推定部202は、当該仮想の歪みゲージ13Qが測定対象物Xの対称軸に対応する軸上に配されることを拘束条件として相対位置特定処理S1を実行する。これにより、測定用ベルト10を測定対象物Xに巻き付けた場合に、測定対象物Xの対称軸上に歪みゲージが配されていない場合であっても、精度よく輪郭の推定を行うことができる。
【0108】
さらに、輪郭推定部202は、巻き付けられた測定用ベルト10上に配される複数の歪みゲージ13A〜13Pの、第1基点α、第2基点βとの距離(距離P1A、P1B)を別途取得する。これを用いることで、輪郭推定部202は、第2ステップS11において、基準点N13A、N13Qの座標位置に対する各従属点の座標位置を示す相対座標値(例えば、基準点N13Qに対する従属点N13H2、N13I2の相対座標値)を、精度よく算出することができる。
【0109】
以上、第3の実施形態に係るEIT測定装置1について詳しく説明したが、本実施形態に係るEIT測定装置1の具体的な態様は、上述のものに限定されることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を加えることは可能である。
【0110】
図28は、第3の実施形態の変形例に係る測定用ベルトが巻かれた状態を示す図である。
図28は、測定対象物Xとして胸囲L2の胸部に測定用ベルト10を巻き付けた場合を示している。ここで、胸囲L2は、測定用ベルト10の一端に配される歪みゲージ13Aから他方の端部に配される歪みゲージ13Pまでの長さよりも長い長さである。
この場合も、測定用ベルト10は、当該測定用ベルト10の端部に配される歪みゲージ13Aを測定対象物Xの胸部の中心(胸骨体)に合わせながら巻き付けられている。また、この場合、各歪みゲージ13A〜13Pごとの間隔(距離P)の整数倍(本実施形態では16倍)が胸囲L2に一致しないため、測定対象物X(測定対象者)の前後方向の対称軸にx軸を、左右方向の対称軸にy軸を定義した場合に、歪みゲージ13A以外の歪みゲージがx軸上、y軸上からずれた位置に配される。
したがって、第1の実施形態に係るEIT測定装置1のように、歪みゲージのうちの4つが、常に、互いに直交するx軸及びy軸上に配されることを前提として輪郭(胸郭)の推定処理を行うと誤差が生じてしまう。
【0111】
この場合も、オペレータは、測定対象物Xの背骨突起の位置に一致する測定用ベルト10上の位置を第2基点βとして特定する。具体的には、オペレータは、各歪みゲージ13A〜13Pのうち、測定対象物Xの背骨突起を間に配する歪みゲージの対を特定する(本実施形態では、歪みゲージ13Iと歪みゲージ13J)。更に、オペレータは、当該歪みゲージ(歪みゲージ13I)から測定対象物Xの背骨突起(第2基点β)までの距離P1Aを計測する。
【0112】
次いで、オペレータは、測定用ベルト10を測定対象物Xに巻き付けて一周させたときに、測定用ベルト10の他端側において、測定対象物Xに接触する歪みゲージの中で第1基点αに最も近い歪みゲージ(本実施形態では、歪みゲージ13P)の位置を特定する。具体的には、オペレータは、歪みゲージ13Pから第1基点αまでの距離P1Bを計測する。これにより、測定用ベルト10上における各歪みゲージ13A〜13Pと、別途規定された第1基点α及び第2基点βと、の位置関係を特定することができる。
【0113】
以降は、第3の実施形態で説明した処理と同様の処理を実行することで測定対象物Xの輪郭の形状を推定することができる。
【0114】
したがって、測定対象物Xの胸囲(胸囲L2)が大きい場合であっても、一つの測定用ベルト10で対応することができる。これにより、測定対象物X(測定対象者)の体格に合わせて、複数種類の測定用ベルトを用意する必要がないため、装置のコストを低減することができる。
【0115】
また、第3の実施形態に係るEIT測定装置1は、オペレータ自身が、第1基点α、第2基点βから、隣接する歪みゲージまでの距離(距離P1A、P1B)を計測するものとして説明した。
しかし、第3の実施形態の変形例に係るEIT測定装置1は、上記距離P1A、P1Bを自動で取得する態様としてもよい。
【0116】
例えば、当該変形例に係るEIT測定装置1は、測定用ベルト10上に、歪みゲージ13A〜13Pが配される間隔(距離P)よりも密な間隔で周期配列される電極パッドを備えていてもよい。この場合、EIT測定装置1は、当該周期配列される電極パッド間の各々に生じる電気インピーダンスを取得する。
EIT測定装置1は、測定対象物Xに巻き付けられた測定用ベルト10が、当該測定対象物Xと密接する範囲を、当該周期配列される電極パッド間に生じる電気インピーダンスの変化に基づいて検出する。ここで、上記電極パッド間のインピーダンスは、当該電極パッドに対し、生体である測定対象物Xが密接しているか否かに応じて変化する。
これにより、EIT測定装置1は、測定対象物Xに密接する電極パッドと歪みゲージ13A〜13Pとの相対的な位置関係に基づいて、一端側の歪みゲージ(歪みゲージ13A)に隣接して配される他端側の歪みゲージ、及び、当該他端側の歪みゲージとの距離P1Bを自動的に特定することができる。
【0117】
更に、EIT測定装置1は、周期配列される上記電極パッドのうち、測定対象物Xの背骨突起部分に配される電極パッド間に生じる特有の電気インピーダンスを検出して、測定用ベルト10上における第2基点βの位置を特定してもよい。ここで、測定対象物Xの背骨突起部分では、上記電極パッドと生体内の骨とが密接するため、測定対象物Xの他の部分に接する電極パッド間とは異なる特有の電気インピーダンスを示す。これにより、EIT測定装置1は、第2基点βの位置及び当該第2基点βに隣接する歪みゲージ、及び、当該歪みゲージとの距離P1Aを自動的に特定することができる。
【0118】
また、第3の実施形態に係るEIT測定装置1は、第2基点βに配される仮想の歪みゲージ13Qにより取得される曲率がゼロであると仮定した上で、基準点N13Qに対する従属点N13H2、N13I2の相対的位置を特定するものとして説明したが、他の実施形態に係るEIT測定装置1は、この態様に限定されない。例えば、EIT測定装置1は、従属点N13I2と従属点N13H2との間を微小距離dPで分割するとともに、同従属点間に配される基準点N13Qに対応する位置における曲率を、歪みゲージ13I、13Hの各々が取得した曲率(実測値)を用いて補間することで求めてもよい。
【0119】
なお、第1〜第3の実施形態及びその変形例に係るEIT測定装置1は、測定用ベルト10上に周期配列された「歪みゲージ」(歪みゲージ13A〜13P)から取得される曲率データに基づいて、測定対象物Xの輪郭の形状を精度よく推定する旨を説明したが、「歪みゲージ」は、当該歪みゲージの各々が配される位置における曲率データを取得するための一態様に過ぎない。上述の各実施形態に係るEIT測定装置1は、曲率データを取得するために必ずしも歪みゲージを用いる必要はなく、曲率データを取得可能な他の曲率センサを用いても構わない。曲率センサの一態様としては、例えば、導電性インクを応用した曲率センサ等が挙げられる。この導電性インクを用いた曲率センサは、湾曲自在な基板の表面に塗布(プリント)された導電性インクが当該基板の湾曲に伴って伸長又は圧縮されることで、当該導電性インクの電気抵抗が変化することを利用して作製される。
【0120】
また、第1〜第3の実施形態及びその変形例に係るEIT測定装置1は、測定用ベルト10において、電極パッド12A、12B、・・・、及び、歪みゲージ13A、13B、・・・がいずれも等間隔(間隔P)で周期配列されているものとして説明したが、他の実施形態に係るEIT測定装置1において、電極パッド12A、12B、・・・、歪みゲージ13A、13B、・・・は必ずしも周期配列されなくともよい。即ち、他の実施形態に係るEIT測定装置1は、電極パッド12A、12B、・・・、及び、歪みゲージ13A、13B、・・・の各々の間隔が既知でさえあれば、互いに異なる間隔で配置されていてもよい。
【0121】
また、上述の説明において、各実施形態に係るEIT測定本体部20は、上述した通り、内部にコンピュータシステムを有している。そして、上述したEIT測定本体部20の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)または半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0122】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。