(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ウレタンポリオールプレポリマーに用いたヒマシ油ポリオールの含有量が、前記表皮層を形成するポリウレタン樹脂に対して、5〜70質量%である、請求項1又は2に記載の合成皮革。
前記ウレタンポリイソシアネートプレポリマーに用いたヒマシ油ポリオールの含有量が、前記表皮層を形成するポリウレタン樹脂に対して、10〜80質量%である、請求項4又は5に記載の合成皮革。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態に係る合成皮革は、繊維質基材の一方の面に、ヒマシ油ポリオールを用いてなるウレタンポリオールプレポリマーとウレタン硬化剤の反応により生成されるポリウレタン樹脂からなる表皮層、およびポリウレタン樹脂からなる保護層が順に積層されており、前記ヒマシ油ポリオールの平均水酸基数が2.2〜5.5の範囲であることを特徴とするものである。
【0011】
図1は、一実施形態に係る合成皮革の断面構造を模式的に示したものである。この合成皮革では、繊維質基材1の一方の面に表皮層2が設けられ、更に表皮層2上に保護層3が設けられている。表皮層2は、その一部が繊維質基材1に浸透することで浸透部2Aが形成されている。
図1中、符号t1は繊維質基材1の厚さ、符号t2は表皮層2の厚さ、符号t3は保護層の厚さ、符号t4は浸透部2Aの厚さ(即ち、繊維質基材1に浸透した表皮層2の浸透厚さ)を、それぞれ示す。
【0012】
本実施形態に用いられる繊維質基材は特に限定されるものでなく、織物、編物及び不織布などの繊維質布帛、並びに、天然皮革などを挙げることができ、目的に応じて適宜選択すればよい。繊維質布帛において繊維の種類は特に限定されるものでなく、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、及び合成繊維など、従来公知の繊維を挙げることができ、これらが2種以上組み合わされていてもよい。また、繊維質布帛に、従来公知の溶剤系または水系の高分子化合物、例えば、ポリウレタン樹脂やその共重合体を塗布または含浸し、乾式凝固または湿式凝固させたものを用いることもできる。なかでも強度や加工性の点から、合成繊維からなる編物、特にポリエステル繊維からなる編物が好ましく用いられる。
【0013】
本実施形態にかかる合成皮革は、上述の繊維質基材の一方の面に、第1の樹脂層として、平均水酸基数が2.2〜5.5のヒマシ油ポリオールからなるウレタンポリオールプレポリマーとウレタン硬化剤の反応により生成されるポリウレタン樹脂からなる表皮層が積層されたものである。
【0014】
上記ウレタンポリオールプレポリマーは、分子末端に水酸基を有するウレタンプレポリマーのことである。ポリウレタン樹脂は、周知の通り、ウレタン結合(−NHCOO−)を有する高分子化合物の総称であり、一般にポリオールとポリイソシアネートを反応(架橋・硬化反応)させることによって製造される。ウレタンプレポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートの反応を適当なところで止めたものであり、主鎖中にウレタン結合を有し、ポリウレタン樹脂を生成する際の主剤として用いられる。ウレタンプレポリマーには、製造時のポリオールとポリイソシアネートの比率によって、分子末端に水酸基を有するウレタンポリオールプレポリマーと、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンポリイソシアネートプレポリマーの2つがあるが、本実施形態では、それ自身反応性がなく、開放形で取り扱うことができるという点から、ウレタンポリオールプレポリマーをポリウレタン樹脂生成時の主剤として選択して用いるものとする。ウレタンポリオールプレポリマーの分子末端に存在する水酸基が、ウレタン硬化剤として用いられるポリイソシアネートのイソシアネート基と反応してウレタン結合を生成し、ポリウレタン樹脂が得られる。
【0015】
かかるウレタンポリオールプレポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートを、ポリオールが有する水酸基が、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基に対して過剰となる条件で反応させることにより得ることができる。
【0016】
本実施形態では、ウレタンポリオールプレポリマーを製造する際にポリオールとして、ヒマシ油ポリオールが用いられる。すなわち、該ウレタンポリオールプレポリマーは、ヒマシ油ポリオールを含むポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られたものである。本実施形態でいうヒマシ油ポリオールとは、ヒマシ油(castor oil)に由来するポリオールである。
【0017】
ウレタンポリオールプレポリマーに用いるヒマシ油ポリオールは、平均水酸基数が2.2〜5.5であり、より好ましくは平均水酸基数が2.5〜3.5である。ヒマシ油ポリオールの平均水酸基数が2.2〜5.5であると、生成されるポリウレタン樹脂の結合点が多くなり、得られる合成皮革の耐低温屈曲性が良好なものとなる。ヒマシ油ポリオールの平均水酸基数が2.2以上であることにより、生成されるポリウレタン樹脂の結合点が多くなり、得られる合成皮革の耐低温屈曲性が良好なものとなる。ヒマシ油ポリオールの平均水酸基数が5.5以下であることにより、生成されるポリウレタン樹脂の結合点が多くなり過ぎることがなく、得られる合成皮革が粗硬になることを防ぐ。
【0018】
ウレタンポリオールプレポリマーの合成には、ヒマシ油ポリオールを1種用いてもよいが、ヒマシ油ポリオールを複数組み合わせて使用してもよい。複数のヒマシ油ポリオールを使用する場合、各々のヒマシ油ポリオールの平均水酸基数は、2.0〜6.0であることが好ましい。
【0019】
本明細書において、ヒマシ油ポリオールの平均水酸基数は、ヒマシ油ポリオール1分子当たりの水酸基の個数であり、次式により求められる。
平均水酸基数=数平均分子量×水酸基価/56100
また、複数種のヒマシ油ポリオールを組み合わせ用いる場合、次式により求められる。
【数1】
式中、nは組み合わせるヒマシ油ポリオールの種類数(2以上の整数)であり、R
iはヒマシ油ポリオールの総量を1としたときの各ヒマシ油ポリオールの割合(質量比)であり、H
iは各ヒマシ油ポリオールの平均水酸基数であり、M
iは各ヒマシ油ポリオールの数平均分子量である。
【0020】
本明細書において、水酸基価(mgKOH/g)は、JIS K0070 1992に準拠して測定される値である。また、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリエチレングリコール換算の数平均分子量(Mn)である。
【0021】
ウレタンポリオールプレポリマーに用いたヒマシ油ポリオールの含有量は、表皮層を形成するポリウレタン樹脂に対して、5〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜65質量%である。5質量%以上であると、耐久性、特に耐熱性に優れ、70質量%以下であれば、加工性が損なわれることなく、合成皮革が粗硬になることを防止する。また、該ヒマシ油ポリオールのウレタンポリオールプレポリマーに対する含有量は、5〜95質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜90質量%である。
【0022】
ウレタンポリオールプレポリマーに用いるヒマシ油ポリオールの水酸基価は115〜400mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは150〜300mgKOH/gである。水酸基価が115mgKOH/g以上であれば、ポリウレタン樹脂の重合の際、ヒマシ油ポリオールが他の成分と混ざりやすく、加工性に優れる。水酸基価が400mgKOH/g以下であれば、生成されるポリウレタン樹脂の結合点が多くなり過ぎることなく、得られる合成皮革が粗硬になることを防止する。
【0023】
ウレタンポリオールプレポリマーに用いるポリオールとしては、本実施形態の作用効果を損なわない限り、必要に応じて、上述のヒマシ油ポリオールに加えて、それ以外のポリオール、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、又はシリコーン変性ポリオールを用いてもよい。
【0024】
一方、ウレタンポリオールプレポリマーを製造する際に使用可能なポリイソシアネートは特に限定されるものでなく、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートあるいは脂環族ジイソシアネート、および4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の2量体および3量体を含むポリメリックMDIなどを挙げることができ、これらのいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、硬化反応のコントロールが容易であるという点で、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が好ましい。
【0025】
ヒマシ油ポリオールとポリイソシアネートを反応させる際の、イソシアネート基/水酸基の当量比は、0.05〜0.95であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.8である。当量比が0.05以上であることにより、プレポリマーとウレタン硬化剤を反応させる際、未反応の水酸基が残りにくく、硬化して得られるポリウレタン樹脂の物性が良好となる。また、当量比が0.95以下であることにより、プレポリマーの両末端を水酸基としやすく、プレポリマーに残存するイソシアネート基が周囲の湿気と反応することによる分子量及び粘度の増加、及びそれに起因する作業性の悪化を抑えることができる。
【0026】
ウレタンポリオールプレポリマーを製造するには、従来公知の種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、水分を除去したポリオールとポリイソシアネートを混合後、加熱してバッチ方式で反応させる方法、あるいは水分を除去したポリオールとポリイソシアネートをそれぞれ加熱して、所定の割合で押出機に投入して連続押出反応方式で反応させる方法などを採用することができる。
【0027】
かくして得られるウレタンポリオールプレポリマーの軟化温度は、20〜100℃であることが好ましく、より好ましくは40〜70℃である。軟化温度が20℃以上であることにより、硬化して得られるポリウレタン樹脂の軟化温度を高めて耐熱性、強度を向上することができる。軟化温度が100℃以下であることにより、加工に適した粘性を得るのに高温を要さず、作業性に優れる。本明細書において、軟化温度は、DSC熱分析機を用いて示差走査熱分析法により測定される。
【0028】
また、ウレタンポリオールプレポリマーは、数平均分子量が5000〜50000であることが好ましく、より好ましくは10000〜20000である。数平均分子量をこのような範囲内に設定することにより、優れた柔軟性及び機械的強度を確保できる。ウレタンポリオールプレポリマーの数平均分子量が5000以上であると、耐低温屈曲性が損なわれることを防止でき、50000以下であれば、粘度が高くなりすぎ加工性が悪くなることを防止でき、また柔軟性を保つことができる。
【0029】
ウレタンポリオールプレポリマーには、必要に応じて、硬化して得られるポリウレタン樹脂の物性を損なわない範囲内で、ウレタン化触媒、シランカップリング剤、充填剤、チキソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、難燃剤、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、染料、顔料、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、中空発泡体、結晶水含有化合物、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤、防藻剤、顔料分散剤、不活性気体、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤などの任意成分を、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0030】
ウレタンポリオールプレポリマーと反応させるウレタン硬化剤としては、ポリイソシアネートが用いられる。具体的には、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート、カルボジイミド基を含むポリイソシアネート、アルファネート基を含むポリイソシアネート、イソシアヌレート基を含むポリイソシアネートなどを挙げることができ、これらのいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも硬化反応のコントロールが容易であるという点では4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が好ましく、硬化して得られるポリウレタン樹脂の黄変が少ないという点では脂肪族ポリイソシアネートが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートがより好ましい。
【0031】
本実施形態においては、ウレタン硬化剤として、上述のポリイソシアネート以外に、ポリオールとポリイソシアネートを、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基が、ポリオールが有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることにより得られる化合物であるウレタンポリイソシアネートプレポリマーを用いることができる。
【0032】
ウレタン硬化剤として用いられるウレタンポリイソシアネートプレポリマーを製造する際に使用可能なポリオールやポリイソシアネートは特に限定されるものでない。例えば、上述したウレタンポリオールプレポリマーの製造に用いられるものと同様のポリオールやポリイソシアネートを挙げることができ、これらのいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、ポリオールとしては、環境負荷の観点から、ヒマシ油ポリオールが好ましく、耐加水分解性の点からポリエーテルポリオールまたはポリカーボネートポリオールが好ましく、難燃性、耐光性および耐熱性の点からポリカーボネートポリオールがより好ましい。また、ポリイソシアネートとしては、硬化反応のコントロールが容易であるという点で、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が好ましい。
【0033】
一実施形態に係るウレタン硬化剤は、ヒマシ油ポリオールを用いてなるウレタンポリイソシアネートプレポリマーである。ウレタン硬化剤にもヒマシ油ポリオールを含ませることにより、植物由来成分の材料比率が向上するとともに、風合いを向上させることができる。ウレタンポリイソシアネートプレポリマーに用いるヒマシ油ポリオールは、耐低温屈曲性と風合いの両立という観点から、平均水酸基数が1.8〜2.1の範囲内であることが好ましい。
【0034】
ウレタンポリイソシアネートプレポリマーに用いたヒマシ油ポリオールの含有量は、表皮層を形成するポリウレタン樹脂に対して、10〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜70質量%である。10質量%以上とすることにより低温屈曲性を向上することができ、80質量%以下とすることにより風合いを向上することができる。また、該ヒマシ油ポリオールのウレタンイソシアネートプレポリマーに対する含有量は、10〜75質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜70質量%である。
【0035】
ポリオールとポリイソシアネートを反応させてウレタンポリイソシアネートプレポリマーを製造する際の、イソシアネート基/水酸基の当量比は1.1〜50であることが好ましく、より好ましくは3〜15である。当量比が1.1以上であると、プレポリマーの両末端がイソシアネート基となり、ウレタン硬化剤としての働きが不十分となることを防ぐ。当量比が50以下であれば、硬化して得られるポリウレタン樹脂の柔軟性が悪くなることを防止できる。
【0036】
本実施形態における表皮層は、上述のウレタンポリオールプレポリマーと上述のウレタン硬化剤の反応により生成されるポリウレタン樹脂からなる。ウレタンポリオールプレポリマーとウレタン硬化剤を反応させる際の、ウレタン硬化剤のイソシアネート基/プレポリマーの水酸基の当量比は0.95〜2.0であることが好ましく、より好ましくは1.1〜1.3である。当量比が0.95以上であると、未反応のプレポリマーが残り難く、硬化して得られるポリウレタン樹脂の物性が不良となることを防ぐ。当量比が2.0以下であれば、硬化反応が進みすぎることを防止し触感や風合いが粗硬になることを防ぐ。このとき、ウレタンポリオールプレポリマー100質量部に対するウレタン硬化剤の使用量は、プレポリマーやウレタン硬化剤の分子量にもよるが、通常30〜120質量部、好ましくは40〜100質量部である。
【0037】
表皮層のポリウレタン樹脂の軟化温度は130〜240℃であることが好ましく、より好ましくは140〜200℃である。軟化温度が130℃以上であると、耐熱性、強度が良好である。軟化温度が240℃以下であると、合成皮革の触感や風合いが粗硬になることを防止する。
【0038】
表皮層のポリウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)は、−40〜30℃であることが好ましく、より好ましくは−30〜20℃である。Tgが−40℃以上であると、常温で柔らかくなりすぎず、製品にしわが入りやすくなることを防ぎ、耐摩耗性が損なわれることを防ぐ。Tgが30℃以下であれば、風合いが粗硬になったり、耐屈曲性が損なわれたりすることを防ぐ。本明細書において、Tgは、DSC熱分析機を用いて示差走査熱分析法により測定される。
【0039】
表皮層を形成するポリウレタン樹脂には、必要に応じて、ポリウレタン樹脂の物性を損なわない範囲内で、ウレタン化触媒、シランカップリング剤、充填剤、チキソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、染料、顔料、難燃剤、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、中空発泡体、結晶水含有化合物、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤、防藻剤、顔料分散剤、不活性気体、ブロッキング防止剤、及び加水分解防止剤などの任意成分を、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、工程負荷の軽減や合成皮革の物性向上のために、ウレタン化触媒を用いることが好ましい。
【0040】
ポリウレタン樹脂からなる表皮層は、イソシアネート基が大気中の水分と反応することで発生する炭酸ガスによって多孔質層となる。表皮層の厚さt2は50〜350μmであることが好ましく、より好ましくは100〜200μmである。厚さt2が50μm以上であると、耐摩耗性が不良となることを抑え、厚さが350μm以下であれば、触感や風合いが粗硬になることを防止する。
【0041】
図1に示すように、繊維質基材1の一方の面に積層された表皮層2は、その一部が繊維質基材1に浸透している。繊維質基材1に浸透した表皮層2の浸透厚さ(即ち、浸透部2Aの厚さ)t4は、繊維質基材1の厚さt1の2〜70%であることが好ましく、5〜40%であることがより好ましい。この浸透厚さの割合、即ち、((t4/t1)×100)が2%以上であると、得られる合成皮革において、車両内装用途であっても十分な強度が得られる。また、この割合が70%以下であれば、得られる合成皮革の風合いが硬くなることを防止できる。
【0042】
本実施形態に係る合成皮革は、繊維質基材の一方の面に積層されたポリウレタン樹脂からなる表皮層の表面に、さらに、第2の樹脂層として、ポリウレタン樹脂からなる保護層が積層されたものである。これにより、合成皮革の耐摩耗性が向上する。なお、かかる保護層は、表皮層の表面に形成されて当該表皮層を保護する最外層としての樹脂層の総称をいい、少なくとも一層の樹脂層からなるが、同一または異なる組成の2層以上の樹脂層からなることができる。
【0043】
保護層の形成に用いられるポリウレタン樹脂は特に限定されるものでなく、例えば、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、及びポリカーボネート系ポリウレタン樹脂などを挙げることができ、これらのいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、難燃性、耐久性および耐光性の点からポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が好ましい。また、ポリウレタン樹脂の形態は、無溶剤系(無溶媒系)、ホットメルト系、溶剤系、水系を問わず、さらには、一液型、二液硬化型を問わず使用可能であり、その目的と用途に応じて適宜選択すればよい。
【0044】
保護層のポリウレタン樹脂には、必要に応じて、ポリウレタン樹脂の物性を損なわない範囲内で、ウレタン化触媒、シランカップリング剤、充填剤、チキソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、染料、顔料、難燃剤、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、中空発泡体、結晶水含有化合物、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤、防藻剤、顔料分散剤、不活性気体、ブロッキング防止剤、及び加水分解防止剤などの任意成分を、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0045】
保護層の厚さt3は10〜150μmであることが好ましく、より好ましくは20〜80μmである。厚さt3が10μm以上であると、均一に保護層を形成することができ、厚さt3が150μm以下であれば、合成皮革の触感や風合いが粗硬になることを防止することができる。
【0046】
次に、本実施形態に係る合成皮革の製造方法について説明する。
【0047】
本実施形態に係る製造方法は、平均水酸基数が2.2〜5.5のヒマシ油ポリオールを含むポリオールとポリイソシアネートとを反応させてウレタンポリオールプレポリマーを合成する工程と、得られたウレタンポリオールプレポリマーとウレタン硬化剤の反応により生成されるポリウレタン樹脂からなる表皮層を繊維質基材の一方の面に形成する工程と、ポリウレタン樹脂からなる保護層を表皮層上に形成する工程を含む。ウレタンポリオールプレポリマーの合成方法について上述した通りであるため、それ以降の積層工程について以下に説明する。積層工程としては、例えば、次の方法(1)〜(3)が挙げられる。
【0048】
(1)前記ウレタンポリオールプレポリマーとウレタン硬化剤とを混合してなるプレポリマー組成物を繊維質基材に塗布し、該プレポリマー組成物が粘稠性を有する状態のうちに、離型性基材に貼り合わせ、エージング処理して表皮層を形成する。次いで、離型性基材を剥離し、露出する表皮層表面にポリウレタン樹脂を含む組成物を塗布し、必要により、熱処理、エージング処理して保護層を形成する。
【0049】
(2)前記ウレタンポリオールプレポリマーとウレタン硬化剤とを混合してなるプレポリマー組成物を離型性基材に塗布し、該プレポリマー組成物が粘稠性を有する状態のうちに、繊維質基材に貼り合わせ、エージング処理して表皮層を形成する。次いで、離型性基材を剥離し、露出する表皮層表面にポリウレタン樹脂を含む組成物を塗布し、必要により、熱処理、エージング処理して保護層を形成する。
【0050】
(3)離型性基材にポリウレタン樹脂を含む組成物を塗布し、必要により、熱処理、エージング処理して保護層を形成する。次いで、保護層表面に、前記ウレタンポリオールプレポリマーとウレタン硬化剤とを混合してなるプレポリマー組成物を塗布し、該プレポリマー組成物が粘稠性を有する状態のうちに、繊維質基材に貼り合わせ、エージング処理して表皮層を形成する。その後に離型性基材を剥離する。
【0051】
上述した(1)〜(3)のなかでも、保護層の厚さを容易に調整可能で、且つ均一な層形成が可能であることから、(3)の方法が好ましい。以下、(3)の方法に沿って説明するが、樹脂の塗布方法や熱処理など各種の説明事項は、基本的に(1)および(2)の方法を採用する場合にも共通する事項である。
【0052】
保護層を形成するために、ポリウレタン樹脂組成物を離型性基材に塗布する方法としては、従来公知の種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、リバースロールコーター、スプレーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター、T−ダイコーターなどの装置を用いた方法を挙げることができる。なかでも、均一な薄膜層の形成が可能であるという点で、ナイフコーターまたはコンマコーターによる塗布が好ましい。ポリウレタン樹脂組成物の塗布厚さは、所望する保護層の厚さに応じて適宜設定すればよい。
【0053】
本実施形態に用いられる離型性基材は特に限定されるものでなく、ポリウレタン樹脂に対して離型性を有する基材、あるいは離型処理を施した基材であればよく、例えば、離型紙、離型処理布、撥水処理布、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂などからなるオレフィンシートまたはフィルム、フッ素樹脂シートまたはフィルム、離型紙付きプラスチックフィルムなどを挙げることができる。離型性基材は凹凸模様を有していてもよく、このような離型性基材を用いることにより、合成皮革の表面に意匠性を付与することができる。
【0054】
上記塗布後に、必要により熱処理を行う。熱処理は、ポリウレタン樹脂組成物中の溶媒を蒸発させ、樹脂を乾燥させるために行われる。また、熱処理によって架橋反応を起こす架橋剤を用いる場合や、二液硬化型の樹脂を用いる場合にあっては、反応を促進し、十分な強度を有する皮膜を形成するために行われる。熱処理温度は50〜150℃であることが好ましく、より好ましくは60〜120℃である。熱処理温度が50℃以上であると、短時間で熱処理ができ、工程負荷が大きくなることを抑え、樹脂の架橋が十分になされ耐摩耗性が良好になる。熱処理温度が150℃以下であれば、合成皮革の風合いが粗硬になることを防止する。また、熱処理時間は2〜20分間であることが好ましく、より好ましくは2〜10分間である。熱処理時間が2分間以上であると、樹脂の架橋が十分になされ耐摩耗性が不良となることを防止する。熱処理時間が20分間以下であれば、加工速度が遅くならず工程負荷が大きくなることを抑える。なお、ポリウレタン樹脂として、ホットメルト系の樹脂を用いる場合には、加熱溶融した樹脂組成物を離型性基材に塗布した後、冷却することにより層を形成することができ、熱処理は不要である。
【0055】
さらに、必要によりエージング処理を行い、上述の反応を完結させる。かくして、離型性基材上に保護層が形成される。
【0056】
次いで、平均水酸基数が2.2〜5.5のヒマシ油ポリオールからなるウレタンポリオールプレポリマーと、ウレタン硬化剤とを混合し、プレポリマー組成物を調製する。プレポリマー組成物を調整する際には、ウレタンポリオールプレポリマーを加熱溶融状態にすることが好ましい。
【0057】
ウレタンポリオールプレポリマーの加熱溶融温度は、ウレタンポリオールプレポリマーの軟化温度よりも好ましくは10〜80℃、より好ましくは20〜60℃高い温度に設定する。加熱溶融温度をプレポリマーの軟化温度より10℃以上高い温度とすることで、プレポリマーの粘度を下げて、塗布時の作業性を向上することができる。また、プレポリマーの軟化温度に対する加熱溶融温度の差を80℃以下とすることにより、硬化反応をコントロールすることができる。加熱溶融温度は通常、30〜150℃、好ましくは40〜120℃の範囲で設定する。なお、プレポリマーの加熱溶融は、温度制御可能な原料タンクにて行われる。
【0058】
加熱溶融状態にあるウレタンポリオールプレポリマーとウレタン硬化剤との混合には、加熱保温できる構造のミキシングヘッドが用いられ、両者を所定の割合で混合、撹拌した後、塗布装置に供給される。
【0059】
離型性基材上に形成された保護層表面にプレポリマー組成物を塗布する方法としては、従来公知の種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、スプレーコーター、ロールコーター、ナイフコーター、コンマコーターまたはT−ダイコーターなどの装置を用いた方法を挙げることができる。なかでも均一な薄膜層の形成が可能であるという点で、ナイフコーターまたはコンマコーターによる塗布が好ましい。
【0060】
プレポリマー組成物の塗布厚さは25〜300μmであることが好ましく、より好ましくは50〜200μmである。塗布厚さをこの範囲に設定することにより、塗布厚さの好ましくは1.1〜2.0倍、より好ましくは1.2〜1.5倍の厚さを有する表皮層を得ることができ、好ましくは50〜350μm、より好ましくは100〜200μmの厚さt2を有する表皮層となる。
【0061】
プレポリマー組成物を離型性基材に塗布した後、好ましくは熱処理を行う。ウレタンポリオールプレポリマーとウレタン硬化剤の硬化反応は常温で進行するため、熱処理は必ずしも要さない。しかし、熱処理により硬化反応が促進されるため、生産効率の点では熱処理を行うことが好ましい。
【0062】
このときの熱処理温度としては、選択するプレポリマーやウレタン硬化剤、任意で用いられる添加剤、塗布厚などによって適宜選択可能であるが、90〜150℃であることが好ましく、より好ましくは100〜130℃である。熱処理温度を90℃以上とすることにより、熱処理を行うことによる反応促進効果を高めることができる。熱処理温度が150℃以下であることにより、硬化反応をコントロールして加工安定性に優れる。また、熱処理時間は30秒間〜5分間であることが好ましく、より好ましくは1〜3分間である。熱処理時間が30秒間以上であれば、熱処理を行うことによる反応促進効果が得られる。熱処理時間が5分間以下であれば、硬化反応の進みすぎを抑えて繊維質基材との接着性を向上することができる。
【0063】
次いで、プレポリマー組成物(その一部は硬化反応が進み、ポリウレタン樹脂となっている)が粘稠性を有する状態のうちに、繊維質基材に貼り合わせ、室温まで冷却し、エージング処理することにより、表皮層が形成される。
【0064】
表皮層を形成するためのプレポリマー組成物は、繊維質基材の厚さに対し2〜70%の割合で浸透させることが好ましく、5〜40%であることがより好ましい。割合が2%以上であると、得られる合成皮革において、車両内装用途であっても十分な強度が得られ、割合が70%以下であれば、得られる合成皮革の風合いが硬くなることを防止する。
【0065】
ウレタンポリオールプレポリマーとウレタン硬化剤の反応速度は、選択するプレポリマーやウレタン硬化剤、任意で用いられる添加剤(特にウレタン化触媒)の種類や量によって大きく変動するため、選択する条件によってエージング処理条件を適宜設定すればよいが、通常、室温で1日〜1週間程度行われる。この過程で、プレポリマーとウレタン硬化剤の硬化反応が完結する。硬化反応が未完結であると、耐摩耗性などの物性が不良となる虞がある。硬化後に離型性基材を剥離することにより、本実施形態の合成皮革を得ることができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。実施例中の「部」は質量基準であるものとする。また、得られた合成皮革の評価は以下の方法に従い行った。
【0067】
[耐低温屈曲性]
幅50mm、長さ120mmの大きさの試験片を、タテ方向(長手方向)、ヨコ方向(幅方向)それぞれ1枚採取した。試験片は表面が外側になるように幅方向に半分に折り曲げ、50mm間隔でデマッチャ試験機FT−1521(株式会社上島製作所製)に取り付けた。温度−10℃、ストローク15mm、速度100回/分の条件下にて30000回屈曲試験を実施した後、試験片の表面の状態を確認し下記基準に従って判定した。割れの長さはタテヨコの平均値とした。
(判定基準)
優:割れが発生していない
良:長さ1mm未満の割れ発生
不良:長さ1mm以上の割れ発生
【0068】
[風合い]
風合い評価の指標として剛軟度を測定し、下記の基準に従って判定した。なお、剛軟度の測定は、JIS L1096−1999 8.19.1 A法(45度カンチレバー法)に準拠した。また、試験片としては、幅25mm、長さ200mmの大きさで、タテ方向およびヨコ方向からそれぞれ1枚採取したものを用いた。剛軟度の値はタテヨコの平均値とした。
(判定基準)
優:剛軟度が60mm未満
良:剛軟度が60mm以上、80mm以下
不良:剛軟度が80mmを超える
【0069】
ウレタンプレポリマーを以下の製造例に従い製造した。
[製造例1] 平均水酸基数3.0のヒマシ油ポリオール
60℃に保温した1リットルの4ツ口フラスコに、平均水酸基数3.0で水酸基価200KOHmg/gのヒマシ油ポリオール(URIC H−52、伊藤製油株式会社製)を100部入れて撹拌した後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を13部入れてイソシアネート基が無くなるまで80℃にて撹拌し(当量比(イソシアネート基/水酸基)は0.30)、ウレタンポリオールプレポリマーを得た。
【0070】
[製造例2] 平均水酸基数2.8のヒマシ油ポリオール
60℃に保温した1リットルの4ツ口フラスコに、平均水酸基数3.0で水酸基価200KOHmg/gのヒマシ油ポリオール(URIC H−52、伊藤製油株式会社製)を80部、平均水酸基数2.0で水酸基価160KOHmg/gのヒマシ油ポリオール(HS 2G−160R、豊国製油株式会社製)を20部入れて撹拌した後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を12部入れてイソシアネート基が無くなるまで80℃にて撹拌し(当量比(イソシアネート基/水酸基)は0.29)、ウレタンポリオールプレポリマーを得た。
【0071】
[製造例3] 平均水酸基数2.2のヒマシ油ポリオール
60℃に保温した1リットルの4ツ口フラスコに、平均水酸基数3.0で水酸基価200KOHmg/gのヒマシ油ポリオール(URIC H−52、伊藤製油株式会社製)を20部、平均水酸基数2.0で水酸基価122KOHmg/gのヒマシ油ポリオール(URIC Y−332、伊藤製油株式会社製)を80部入れて撹拌した後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を12部入れてイソシアネート基が無くなるまで80℃にて撹拌し(当量比(イソシアネート基/水酸基)は0.36)、ウレタンポリオールプレポリマーを得た。
【0072】
[製造例4] 平均水酸基数4.0のヒマシ油ポリオール
60℃に保温した1リットルの4ツ口フラスコに、平均水酸基数4.0で水酸基価255KOHmg/gのヒマシ油ポリオール(HS PPE−12H、豊国製油株式会社製)を100部入れて撹拌した後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を17部入れてイソシアネート基が無くなるまで80℃にて撹拌し(当量比(イソシアネート基/水酸基)は0.30)、ウレタンポリオールプレポリマーを得た。
【0073】
[製造例5] 平均水酸基数5.5のヒマシ油ポリオール
60℃に保温した1リットルの4ツ口フラスコに、平均水酸基数5.5で水酸基価160KOHmg/gのヒマシ油ポリオール(POLYCASTOR#10、伊藤製油株式会社製)を100部入れて撹拌した後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を11部入れてイソシアネート基が無くなるまで80℃にて撹拌し(当量比(イソシアネート基/水酸基)は0.29)、ウレタンポリオールプレポリマーを得た。
【0074】
[製造例6] 平均水酸基数2.0のヒマシ油ポリオール
60℃に保温した1リットルの4ツ口フラスコに、平均水酸基数2.0で水酸基価120KOHmg/gのヒマシ油ポリオール(HS 2G−120、豊国製油株式会社製)を50部、平均水酸基数2.0で水酸基価160KOHmg/gのヒマシ油ポリオール(HS 2G−160R、豊国製油株式会社製)を50部入れて撹拌した後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を8部入れてイソシアネート基が無くなるまで80℃にて撹拌し(当量比(イソシアネート基/水酸基)は0.30)、ウレタンポリオールプレポリマーを得た。
【0075】
[製造例7] ウレタン硬化剤
60℃に保温した1リットルの4ツ口フラスコに、平均水酸基数2.0で水酸基価120KOHmg/gのヒマシ油ポリオール(HS 2G−120、豊国製油株式会社製)を50部、平均水酸基数2.0で水酸基価160KOHmg/gのヒマシ油ポリオール(HS 2G−160R、豊国製油株式会社製)を50部入れて撹拌した後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を123部入れて水酸基が無くなるまで80℃にて撹拌し(当量比(イソシアネート基/水酸基)は4.55)、ウレタンポリイソシアネートプレポリマーを得た。
【0076】
[製造例8] ウレタン硬化剤
60℃に保温した1リットルの4ツ口フラスコに、平均水酸基数2.0で水酸基価112KOHmg/gのポリエーテルポリオール(PTMG1000、三菱化学株式会社製)を100部入れて撹拌した後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を114部入れて水酸基が無くなるまで80℃にて撹拌し(当量比(イソシアネート基/水酸基)は4.56)、ウレタンポリイソシアネートプレポリマーを得た。
【0077】
[実施例1]
処方1
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂 100部
(クリスボンNY−331、DIC株式会社製)
ジメチルホルムアミド(DMF) 40部
カーボンブラック顔料 15部
(DIALAC BLACK L−1770S、DIC株式会社製)
架橋剤 2部
(バーノックDN950、DIC株式会社製)
粘度を2000cps(23℃)に調整した。
【0078】
上述の処方1に従い調製したポリウレタン樹脂組成物を、シボ調の凹凸模様を有する離型紙(R−51、リンテック株式会社製)に、コンマコーターにて厚さが200μmになるようにシート状に塗布し、乾燥機にて100℃で2分間熱処理して、厚さ40μmの保護層を形成した。
【0079】
処方2
製造例1のウレタンポリオールプレポリマー 100部
製造例7のウレタンポリイソシアネートプレポリマー 70部
カーボンブラック顔料 2部
(ポリトンブラック、DIC株式会社製)
アミン系ウレタン化触媒 1部
(TOYOCAT−DT、TOSOH株式会社製)
【0080】
処方2のプレポリマー組成物の調製方法は次の通り。60℃に加熱溶融したウレタンポリオールプレポリマーに、カーボンブラック顔料、アミン系ウレタン化触媒を添加し撹拌、分散させた。次いで、40℃に加熱溶融したウレタンポリイソシアネートプレポリマーを添加し撹拌した後、直ちに、塗布操作に供した。当量比(ウレタン硬化剤のイソシアネート基/プレポリマーの水酸基)は1.1であった。
【0081】
上述の処方2に従い調製したプレポリマー組成物を、離型紙上に形成された保護層表面に、コンマコーターにて厚さが140μmとなるようにシート状に塗布した。乾燥機にて120℃で2分間熱処理後、該プレポリマー組成物が粘稠性を有する状態のうちにポリエステルトリコット布(厚さ=0.8mm)に貼り合わせ、マングルにて49N/cm
2の荷重で圧締した。温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で1日間エージング処理して、厚さ150μmの表皮層を形成し、離型紙を剥離して合成皮革を得た。繊維質基材の厚さに対する、浸透したプレポリマー組成物の厚さ(すなわち、表皮層の浸透厚さ)の割合は、16%であり、表皮層を構成するポリウレタン樹脂の軟化温度は200℃、Tgは−5℃であった。
【0082】
[実施例2]
処方2を下記処方3に変更した以外は、全て実施例1と同様にして、合成皮革を得た。繊維質基材の厚さに対する、浸透したプレポリマー組成物の厚さ(表皮層の浸透厚さ)の割合は、16%であり、表皮層を構成するポリウレタン樹脂の軟化温度は180℃、Tgは−5℃であった。なお、当量比(ウレタン硬化剤のイソシアネート基/プレポリマーの水酸基)は1.1であった。
【0083】
処方3
製造例2のウレタンポリオールプレポリマー 100部
製造例7のウレタンポリイソシアネートプレポリマー 60部
カーボンブラック顔料 2部
(ポリトンブラック、DIC株式会社製)
アミン系ウレタン化触媒 1部
(TOYOCAT−DT、TOSOH株式会社製)
【0084】
[実施例3]
処方2を下記処方4に変更した以外は、全て実施例1と同様にして、合成皮革を得た。繊維質基材の厚さに対する、浸透したプレポリマー組成物の厚さ(表皮層の浸透厚さ)の割合は、16%であり、表皮層を構成するポリウレタン樹脂の軟化温度は180℃、Tgは−5℃であった。なお、当量比(ウレタン硬化剤のイソシアネート基/プレポリマーの水酸基)は1.1であった。
【0085】
処方4
製造例3のウレタンポリオールプレポリマー 100部
製造例7のウレタンポリイソシアネートプレポリマー 63部
カーボンブラック顔料 2部
(ポリトンブラック、DIC株式会社製)
アミン系ウレタン化触媒 1部
(TOYOCAT−DT、TOSOH株式会社製)
【0086】
[実施例4]
処方2を下記処方5に変更した以外は、全て実施例1と同様にして、合成皮革を得た。繊維質基材の厚さに対する、浸透したプレポリマー組成物の厚さ(表皮層の浸透厚さ)の割合は、16%であり、表皮層を構成するポリウレタン樹脂の軟化温度は200℃、Tgは0℃であった。なお、当量比(ウレタン硬化剤のイソシアネート基/プレポリマーの水酸基)は1.1であった。
【0087】
処方5
製造例4のウレタンポリオールプレポリマー 100部
製造例7のウレタンポリイソシアネートプレポリマー 92部
カーボンブラック顔料 2部
(ポリトンブラック、DIC株式会社製)
アミン系ウレタン化触媒 1部
(TOYOCAT−DT、TOSOH株式会社製)
【0088】
[実施例5]
処方2を下記処方6に変更した以外は、全て実施例1と同様にして、合成皮革を得た。繊維質基材の厚さに対する、浸透したプレポリマー組成物の厚さ(表皮層の浸透厚さ)の割合は、16%であり、表皮層を構成するポリウレタン樹脂の軟化温度は210℃、Tgは5℃であった。なお、当量比(ウレタン硬化剤のイソシアネート基/プレポリマーの水酸基)は1.1であった。
【0089】
処方6
製造例5のウレタンポリオールプレポリマー 100部
製造例7のウレタンポリイソシアネートプレポリマー 64部
カーボンブラック顔料 2部
(ポリトンブラック、DIC株式会社製)
アミン系ウレタン化触媒 1部
(TOYOCAT−DT、TOSOH株式会社製)
【0090】
[実施例6]
処方2にて調製したプレポリマー組成物を保護層表面に、塗布量を厚さが205μmとなるように変更し、塗布した後の熱処理を、120℃で2分間に変更し、ポリエステルトリコット布に貼り合わせる際の荷重を、78.4N/cm
2に変更し、厚さ350μmの表皮層を形成した以外は、全て実施例1と同様にして、合成皮革を得た。繊維質基材の厚さに対する、浸透したプレポリマー組成物の厚さ(表皮層の浸透厚さ)の割合は、44%であり、表皮層を構成するポリウレタン樹脂の軟化温度は200℃、Tgは−5℃であった。
【0091】
[実施例7]
処方2を下記処方7に変更した以外は、すべて実施例1と同様にして、合成皮革を得た。繊維質基材の厚さに対する、浸透したプレポリマー組成物の厚さ(表皮層の浸透厚さ)の割合は、16%であり、表皮層を構成するポリウレタン樹脂の軟化温度は200℃、Tgは−15℃であった。なお、当量比(ウレタン硬化剤のイソシアネート基/プレポリマーの水酸基)は1.1であった。
【0092】
処方7
製造例1のウレタンポリオールプレポリマー 100部
製造例8のウレタンポリイソシアネートプレポリマー 79部
カーボンブラック顔料 2部
(ポリトンブラック、DIC株式会社製)
アミン系ウレタン化触媒 1部
(TOYOCAT−DT、TOSOH株式会社製)
【0093】
[比較例1]
処方2を下記処方8に変更した以外は、全て実施例1と同様にして、合成皮革を得た。繊維質基材の厚さに対する、浸透したプレポリマー組成物の厚さ(表皮層の浸透厚さ)の割合は、16%であり、表皮層を構成するポリウレタン樹脂の軟化温度は160℃、Tgは0℃であった。なお、当量比(ウレタン硬化剤のイソシアネート基/プレポリマーの水酸基)は1.1であった。
【0094】
処方8
製造例6のウレタンポリオールプレポリマー 100部
製造例7のウレタンポリイソシアネートプレポリマー 48部
カーボンブラック顔料 2部
(ポリトンブラック、DIC株式会社製)
アミン系ウレタン化触媒 1部
(TOYOCAT−DT、TOSOH株式会社製)
【0095】
実施例、比較例によって得られた合成皮革に対し、前述した項目について評価を行い、それらの結果を表1に示した。この結果から、実施例1〜7は、耐低温屈曲性と風合いが良好であることが分かる。
【0096】
【表1】