(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385940
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】エンジンモジュールの組立方法
(51)【国際特許分類】
F01L 1/04 20060101AFI20180827BHJP
B23P 21/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
F01L1/04 H
B23P21/00 303C
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-538455(P2015-538455)
(86)(22)【出願日】2013年10月25日
(65)【公表番号】特表2016-504514(P2016-504514A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】EP2013072357
(87)【国際公開番号】WO2014067860
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2016年10月21日
(31)【優先権主張番号】102012021180.5
(32)【優先日】2012年10月29日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102013107284.4
(32)【優先日】2013年7月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】308017180
【氏名又は名称】ティッセンクルップ プレスタ テックセンター アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Presta TecCenter AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーズナー,ペーター
【審査官】
首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−163833(JP,A)
【文献】
特開2008−157062(JP,A)
【文献】
特開平08−294832(JP,A)
【文献】
実開平07−035706(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/04 − 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車エンジン用モジュール(1)の組立方法であって、前記モジュール(1)が、ベアリングシート(2)を有する少なくとも1つの支持構造(3)と、前記ベアリングシート(2)に回転可能に取り付けられた少なくとも1つのカムシャフトとを具え、前記カムシャフトが、前記モジュール(1)の組立時に、少なくとも部分的に空洞のシャフトとして構成された支持シャフト(4)と、当該支持シャフト(4)の既定の接合位置(20)に連結される構成部品(5)とから構築され、前記支持シャフト(4)の空洞は、少なくとも部分的に前記接合位置(20)の下に延びており、前記構成部品(5)は前記支持シャフト(4)を受容する貫通開口(6)を有しており、前記方法が:
a)前記ベアリングシート(2)を有する前記支持構造(3)を設けるステップと、
b)前記構成部品(5)が、これらの貫通開口(6)が前記支持構造(3)のベアリングシート(2)に対して整列して配置されるように、既定の順序で前記支持シャフト(4)の上に固定される前記構成部品(5)を配置するステップと、
c)前記支持構造(3)のベアリングシート(2)と、前記構成部品(5)の貫通開口(6)とを通して前記支持シャフト(4)を押し込むステップとを具え、
前記構成部品(5)は、方法のステップb)での各場合において、最終的に構築されるカムシャフト上で想定される構成部品(5)の接合位置(20)とは一致しない仮の位置に配置され、
d)前記支持シャフト(4)が、前記ベアリングシート(2)と前記貫通開口(6)とを通して押し込まれた後に、前記接合位置(20)の領域の少なくとも一部において、前記支持シャフト(4)の外径と、対応する前記構成部品(5)の貫通開口(6)の内径とが、予め設定可能な重なる部分を有するように、前記支持シャフト(4)の直径が、前記接合位置(20)の領域の少なくとも一部において、内圧再成形の方法により拡大され、
e)前記構成部品(5)は、前記支持シャフト(4)に沿った前記構成部品(5)の軸上の移動により、および/または前記構成部品(5)に対する前記支持シャフト(4)の軸上の移動により、前記支持シャフト(4)上のこれらの各接合位置(20)に到達し、前記支持シャフト(4)に対する各構成部品(5)のそれぞれに必要な角度位置は、前記構成部品(5)の移動の前に、および/または前記支持シャフト(4)の移動の前に設定される、
ことを特徴とする自動車エンジン用モジュールの組立方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記支持シャフト(4)に対する各構成部品(5)の設定された角度位置は、所定の角度に前記支持シャフト(4)を回転させることにより設定されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記内圧再成形の方法に必要な圧力が、前記支持シャフト(4)の空洞(10)内で、加圧された流体により生成されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の方法において、前記内圧再成形の方法の際に、前記支持シャフト(4)の空洞(10)内の圧力が、前記支持シャフト(4)の空洞(10)内に配置されて広がる圧力要素により生成されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法において、前記支持シャフト(4)が、前記支持構造(3)のベアリングシート(2)と、前記構成部品(5)の貫通開口(6)とを通して押し込まれる前に、前記構成部品(5)の接合位置(20)の領域に少なくとも部分的に延在する少なくとも1つの構造(9)が、前記支持シャフト(4)の円周面に構成されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記支持シャフト(4)の円周面に構成された前記構造(9)は、前記支持シャフト(4)の円周面の可塑性再成形により製造されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記可塑性再成形が、ロール成形を含む材料変位のプロセスであることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法において、前記支持シャフト(4)の円周面に構成された前記構造(9)が、形状が一定の(geometry defined)切刃、および/または形状が一定でない(geometry undefined)切刃を用いた材料除去のプロセスにより製造されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記材料除去のプロセスが、形状が一定でない(geometry undefined)切刃を用いた研削加工(grinding)であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法において、前記材料除去のプロセスが、形状が一定の(geometry defined)切刃を用いた旋盤加工(turning)であることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項5に記載の方法において、前記構造(9)が材料除去のプロセスにより製造され、当該材料除去のプロセスが、浸食、レーザ、および電子ビーム加工を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項5に記載の方法において、前記構造(9)が材料付加のプロセスにより製造され、当該材料付加のプロセスが、溶接およびはんだの適用を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項5乃至12のいずれか1項に記載の方法において、前記構造(9)が、前記支持シャフト(4)が前記ベアリングシート(2)を通して押し込まれる前に、機械加工されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法において、前記支持構造(3)、および/または前記構成部品(5)の少なくともいくつかが、前記支持シャフト(4)が、前記支持構造(3)のベアリングシート(2)と、前記構成部品(5)の貫通開口(6)とを通して押し込まれる間に、および/またはその前に、加熱されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の方法において、前記支持シャフト(4)の接合位置(20)の少なくとも一部の領域が、摩擦モーメントを増加させるコーティングでコーティングされていることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車エンジン用モジュールの組立方法に関し、このモジュールは、ベアリングシートを有する少なくとも1つの支持構造と、前記ベアリングシートに回転可能に取り付けられた少なくとも1つのカムシャフトとを具え、前記カムシャフトは、モジュールの組立時に、支持シャフトと、当該支持シャフトに連結される構成部品とから構築され、前記構成部品は前記支持シャフトを受容する貫通開口を有し、以下の方法のステップであって:ベアリングシートを有する支持構造を設けるステップと;前記構成部品が、これらの貫通開口が前記支持構造のベアリングシートに対して整列して配置されるように、既定の順序で前記支持シャフトの上に固定される前記構成部品を配置するステップと;前記支持構造のベアリングシートと、前記構成部品の貫通開口とを通して前記支持シャフトを押し込むステップとを具えることを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジンの組立時の取付の複雑性を軽減するため、およびエンジンの組立時の物流と保管のコストを削減するために、既に最終的に組み立てられたモジュールが、サプライヤによって自動車製造業者の組立ラインに供給される。この種類のモジュールは、例えば、シリンダヘッドカバーと、これに取り付けられるカムシャフトとから構成される。エンジンの組立時に、このモジュールは、個々の構成部品よりもより簡単に扱うことができ、エンジンのシリンダヘッドに取り付けることができる。
【0003】
EP1155770B1は、シリンダヘッドカバーと、これに取り付けられるカムシャフトとを具えるモジュールの組立方法を開示している。記載されている組立方法では、シリンダヘッドカバーは、シャフトと、これに続くカムシャフトとによって貫通されたリードスルー(leadthroughs)が設けられている。カムのようなシャフトに固定される部品は、最終的に組み立てられたカムシャフトでのそれらの配置にしたがって、必要とされる角度方向と必要とされる軸位置に正確に配置されるように、特定のシートに配置されなければならない。構成部品とシリンダヘッドカバーが、互いに対して向きを合わせられた後に、支持シャフトがリードスルーを通して押し込まれる。カムはプレス接合によってシャフトに固定される。このプレス接合を製造するために、様々な可能性が、EP1155770B1に明記されている。これらの可能な例の一つによると、プレス接合は、力をかけてシャフトをカムの中に押し込むことで製造される。
【0004】
カムがシャフト全体にわたって押し込まれ、この工程でシャフトの表面が、かき傷および/または擦り傷で損傷することが、この方法の不利な点である。この種類の損傷は、まさにベアリングポイントの領域において非常に不利である。
【0005】
プレス接合を製造するための他の可能性がEP1155770B1に開示されており、これは、内部の高圧再成形のプロセスにより構成部品の領域において広げられたシャフトと、焼きばめ(shrink fit)によるプロセスで固定された構成部品とで構成される。この固定プロセスの1つの欠点は、カムとシャフトの間の連結の質を評価することができる情報である、製造される圧入についてと、したがってシャフト上のカムの固定についてとの利用できる情報がないことである。したがって、信頼性の高い連続生産は、困難を伴ってのみ可能となる。十分でない圧入や、損傷のあるカムは、したがって最初は気づかれないままである。
【0006】
そのうえ、EP1155770B1から既知のこの方法は、シャフトに固定される構成部品が、後に続くカムシャフトの上にこれらが配置されるのと同じように、正確にシャフトの上に押し込まれる前に、配置および配向されなければならないため、複雑であり、高額なコストを伴う。これを達成するために、構成部品をこの中に挿入できて、この中で正しい角度と位置で保持することができるような特定の支持要素が必要とされる。これらの支持要素の製造は、複雑であり費用がかかる。そのうえ、カムの角度方向は、例えばエンジンに(例えば、2気筒、4気筒に)依存するため、異なる支持要素が異なるカムシャフトに必要となり、結果としてこの方法は非常に柔軟性に欠ける。
【0007】
本発明は、支持構造とカムシャフトとを具えるモジュールの組立方法であって、この方法においては、それぞれが正しい角度位置で支持シャフトに固定される構成部品の支持と配置用に、特別に構成された装置は必要とされず、異なるエンジンの異なるカムシャフトに柔軟に用いることができる組立方法を特定する目的に基づく。
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法によって達成される。本発明による方法の有利な改良例は、従属項に特定される。
【発明の概要】
【0009】
本発明による方法の1つの利点は、カムやセンサホイールのような、支持シャフトに固定される構成部品が、支持シャフトが押し込まれる前に、単に仮配置されることである。すなわち、これらが配置される支持シャフトの軸上の位置は、最終的に構成されたカムシャフトにおいて想定されるこれらの構成部品の軸上の位置とは一致しない。したがって、これらの構成部品は、支持シャフトに対するこれらの角度位置に関して、正確に配向させる必要がない。本発明による方法では、支持シャフトを押し込む前の構成部品の正確な配向は、これによって完全に省くことが可能であり、そのため構成部品の支持装置に課される要件はかなり低い。
【0010】
本発明による方法では、支持シャフトが、支持構造のベアリングシートと、構成部品の貫通開口との中に押し込まれた後に、支持シャフトの直径が拡幅することによって拡大される。拡幅によって規定される支持シャフトの直径と、構成部品の貫通開口の直径とは、支持シャフトと構成部品との重なる部分を規定し、これにより、それぞれの接合位置に押し込まれた後の構成部品によって伝達することができるトルクを決定する。支持シャフトの直径の拡幅時には、構成部品はまだ仮の位置にあり、接合位置に設けられていない。
【0011】
直径を拡幅する構成のために、少なくとも部分的に空洞のシャフトとして構成された支持シャフトに内圧再成形が施され、前記支持シャフトは、少なくとも部分的に接合位置において弾性的かつ塑性的に変形して、こうして直径の拡幅が生成される。内圧再成形は、例えば、支持シャフトの空洞内に導入されて加圧された流体によって実行される。一方で、直径の増加は、マンドレルなどのような、支持シャフト内に広がる圧力要素によっても実現することができる。マンドレルを広げるのは、機械的にまたは液圧によって実行することができる。支持シャフトの直径を拡幅する作業は、順番に、または同時に構成することができる。先行技術は、既に内圧再成形のための多様な装置と方法を記載しており(例えば、DE10134840A1、DE19821807C2)、その結果、可能な装置と方法とのさらなる説明は、ここでは省かれる。
【0012】
内圧再成形によって直径の増加を生じさせることの利点は、支持シャフトの周りの半径方向の場所的な要求が低いことにある。単に、支持シャフト内の対応する空洞へのアクセスが必要とされる。通例では、空洞はカムシャフトの端部側に向かって開いており、したがって、流体や圧力媒体を空洞内に簡単に導入することができる。広げることができるマンドレルなどによる内圧再成形の場合、流体の漏出に対するシーリングをさらに省くことが可能であり、これはさらにコストを削減する。内圧再成形時に、少なくとも直径が増加する領域において、半径方向に支持シャフトを支持またはガイドすることが、利点となりうる。直径の増加の構成は、このように改良された方法で制御することができ、支持シャフトに対して、およびベアリングシートに対して同一中心の直径の増加を確実にすることができる。
【0013】
本発明による方法では、構成部品は、支持シャフトに沿って軸方向に移動させることができ、それぞれの場合でこれらに割りあてられた支持シャフトの増加した直径の上に圧接可能である。一方で、支持シャフトを軸方向に移動させることと、各構成部品に割りあてられた増加した直径の一部を、構成部品の貫通開口内へと押すことも可能である。
【0014】
支持シャフトに対する各個々の構成部品のそれぞれの角度位置は、支持シャフトが、所定の角度で各構成部品に対して回転するという理由により、簡単に設定することができ、その結果、支持シャフトに対する構成部品の相対的に必要な角度位置が達成される。支持シャフト上のカムの配置と配向を確実にするのに必要な、異なるカムシャフトごとの各場合において必要とされる特定の支持装置を用いることなく、異なるエンジンごとに大きく異なるカムシャフトを具える異なるモジュールが、本発明にかかる方法によって構築される。異なるカムシャフトを有するモジュールが、安価で簡単な方法で、異なるエンジンやその変形例のエンジン用に、本発明にかかる方法によって、およびモジュールにおいてカムシャフトに固定される構成部品が、支持シャフトに対して異なる角度位置で配置されているものとまったく同じ組立装置によって製造される。
【0015】
前記支持構造は、例えば、ベアリングブロック、ベアリングフレーム、または1以上のカムシャフト用のベアリングシートを有するシリンダヘッドカバーである。互いのベアリングブロックの間の連結は、非ポジティブ、ポジティブなロック、および/または一体に接合する方法で実行することができる。ベアリングシートが互いに連結される位置は、通常、シリンダヘッド、および/またはシリンダヘッドに配置される構成部品に依存して固定される。支持構造のベアリングシートと支持シャフトの直径は、モジュールが最終的に組み立てられた状態で、支持構造のベアリングシートが、カムシャフトとともに滑り軸受を形成するように、寸法を決めることができる。このために、支持シャフトは、研削や旋盤のような材料除去の機械加工の前か直後に、滑り軸受の構成に必要とされる直径を既に有するように構成することができる。特に、研削および/または旋盤のプロセスは、表面の質を向上させるため、または滑り軸受用に設けられる支持シャフト領域の領域内の粗さを低減させるために有利である。
【0016】
本発明による方法の一つの改良例では、支持シャフトが、支持構造のベアリングシートと構成部品の貫通開口とを通して押し込まれる前に、構成部品の接合位置に少なくとも部分的に配置された少なくとも1つの構造が、支持シャフトの円周面に構成される。本発明による方法のこの変形例の1つの利点は、前記構造が直径が拡幅する領域に少なくとも部分的に位置しており、前記構造は、支持シャフトと構成部品のリードスルー開口との重なる部分の構成のために利用することができることである。その結果、構成部品の固定は、簡単にかつ個別に作用させて適合させることができる。したがって、例えば、構成部品と支持シャフトとの重なる部分は、個々に構成部品に適合させることができ、支持シャフトに固定するときの、構成部品の許容できない伸長と、これによるその損傷とを回避することができる。
【0017】
本発明による方法のさらなる好適な実施例では、前記構造が、前記支持シャフトのシェルの可塑性再成形によって製造される。可塑性再成形のプロセスは、例えば、ロール成形、ローレット切(knurling)、混連(kneading)、または圧縮などの材料変位のプロセスである。
【0018】
本発明による方法のさらなる改良例によると、前記支持シャフトの円周面に構成された前記構造は、幾何学的に画定された、または幾何学的に未画定の切刃を用いた材料除去のプロセスによって製造することができる。幾何学的に画定された切刃を用いた材料除去のプロセスは、例えば、旋盤やフライス加工(milling)である。幾何学的に未画定の切刃を用いた材料除去プロセスの典型例のプロセスは、例えば、研削およびホーニング加工(honing)である。
【0019】
さらなる例示的な実施例では、前記構造は例えば、レーザや電子ビーム加工、浸食やエッチングのような、熱または化学的除去によって構成される。
【0020】
スプラインが前記構成部品のリードスルー開口に有利に構成されており、前記構成部品が増加した直径に押し込まれたときに、スプラインが前記構造に食い込むことができる。このようにして、支持シャフトと構成部品との間のポジティブなロック連結は、非ポジティブの連結に加えて構成されている。
【0021】
前記構造を製造するために、様々なプロセスが、本発明による方法の一改良例を互いに組み合わせて適用される。したがって、例えば、ロール成形された部分は次の方法のステップで再研削することができ、こうしてロール成形された領域の直径は既定のサイズにすることができる。
【0022】
上述の本発明の改良例では、少なくともいくつかの前記構成部品および/または前記支持構造は、前記支持シャフトが前記支持構造や前記構成部品の開口を通して押し込まれる前に、および/またはその間に加熱することができ、その結果、前記貫通開口の直径、および/または前記ベアリングシートの直径が拡大し、前記支持シャフトを押し込むステップと、したがってこの組立とがかなり簡略化される。
【0023】
さらに、記載した方法の利点は、直径の拡幅や前記構造での前記構成部品の圧力は、力のセンサによって監視され、力変位の図に記録することができる点である。したがって、それぞれの圧力連結をモジュールの組立時に監視することができ、前記構成部品と支持シャフトとの間の連結の質を記録することができる。一連の適した製造の質は、このようにして確保することができる。不十分な強度や、不十分な連結の質を有する連結は、力変位の図を介して検知することができる。この種の欠陥を有するカムシャフトは却下され、その結果これらは出荷されない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以下の文章において、本発明は、原則的に概略図を用いてより具体的に説明される。
【0025】
【
図2】
図2は、支持シャフトに固定される構成部品を示す。
【
図3a】
図3aは、方法のステップの概略図を示し、支持シャフトが、支持構造のベアリングシートと、支持シャフトに固定される構成部品の貫通開口とを通して押し込まれている。
【
図3b】
図3bは、支持シャフトが押し込まれた後の、モジュールを形成する構成部品の概略図を示す。
【
図3c】
図3cは、拡幅された直径部分と、ここに割り当てられる構成部品とを有する支持シャフトを示す。
【
図3d】
図3dは、接合した構成部品の概略図を示す。
【
図3e】
図3eは、支持シャフト4に固定された2つの構成部品の概略図を示す。
【
図4】
図4は、接合プロセスの本発明による改良例の概略図を示す。
【
図5b】
図5bは、本発明にかかる接合プロセスの前の、支持シャフトの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、ベアリングシート2と、ベアリングシート2に回転可能に構成され取付られているカムシャフトとを有する支持構造3を具える、自動車エンジン用のモジュール1を示す。構築されたカムシャフトは、その上に構成部品5が固定される空洞のシャフトとして構成された支持シャフト4を具える。支持構造3は、例えば、1以上のカムシャフトを取り付けるためのベアリングブロックである。複数のベアリングブロックがある場合、例えば
図1に示すように、破線を用いて示されている連結要素12を用いて、これらは互いに連結することができる。連結要素12は、ベアリングブロックとともに一体に構成されても、個別の構成要素として構成されてもよい。連結要素12が個別の要素である場合、これはベアリングブロックに、ポジティブなロック、非ポジティブ、および/または一体に接合する方法で連結することができる。次いでベアリングフレームが製造される。ベアリングフレームの1つの可能な構成は、シリンダヘッドカバーであり、つまり、ベアリングフレームとシリンダヘッドカバーが、1つの構造単位を形成する。支持構造3やベアリングフレームは、自動車エンジンのシリンダヘッド(図示せず)に固定することができる。
【0027】
支持シャフト4は直径D1を有し、モジュールの組立状態で、支持構造3のベアリングシート2とともに滑り軸受を形成する。ベアリングシート2は、直径DLを有する。滑り軸受が、支持シャフト4の表面の質を向上させるために、および/または支持シャフト4の既定の直径D1を得るために、支持シャフト4は、好適にはより大きな直径から始めて機械加工することができる。好適な機械加工のプロセスは、例えば、研削、ホーニング加工、または旋盤である。支持シャフトの上に固定される構成部品5は、例えば、カムやセンサホイールなどである。図面は例示としてカムの固定を示しており、他の構成部品も同じように固定することが可能である。構成部品5は、
図2に示すように、直径DBTと、貫通開口6の領域における幅Aとを有する貫通開口6を具える。
図3を参照すると、構成部品の貫通開口6は、支持シャフト4の直径D1よりも大きいか、又は同じ大きさであり、その結果、構成部品5を支持シャフト4の上に通すことができ、または後で押し込むことができる。支持シャフト4が、ベアリングシート2とともに滑り軸受を構成するためには、支持シャフト4の直径とベアリングシート2の直径とが、互いに適合しなくてはならない。
【0028】
本発明による方法において、支持構造3と構成部品5は、構成部品5が両ベアリングシート2の間に既定の順序で配置され、構成部品の貫通開口6が支持構造3のベアリングシート2とともに互いに一直線に並ぶように設置される。互いの間での構成部品5の角度方向と、支持シャフト4に対するこれらのそれぞれの角度方向は、ここではまだ考慮しなくてもよい。構成部品は、好適には、自身の重量の結果として支持装置にこれらが確実に受けられるように配向される。構成部品5が互いの間で配置された配列は、完成したカムシャフト上の構成部品5の配列と一致する。構成部品5の軸上の位置は、最終的に構築されるカムシャフト上で想定される構成部品5の軸上の位置、または接合位置20とは一致しない。カムは、したがって所定の軸上の位置に仮配置されている。支持シャフト4は、支持構造3のベアリング開口2と、構成部品5の貫通開口6と一直線に並ぶように配向され、これらを通して押し込まれる(
図3a参照)。
【0029】
支持シャフト4が、支持構造3のベアリングシート2と、構成部品5の貫通開口6とを通して押し込まれるときに、支持シャフト4は、端部側で機能するランス(図示せず)によって案内されてもよい。支持シャフト4の貫通を実現するために、支持シャフト4を冷却することができ、および/または、支持構造3および/または少なくとも構成部品5のいくつかを加熱することができる。支持シャフト4の冷却の結果、その直径は縮小し、一方で構成部品5や支持構造3の加熱により、貫通開口6の直径DBTや、ベアリング開口2の直径DLの直径は増大する。支持シャフト4が押し込まれた後に、温度の均等化が行われる。構成部品5が、ここで支持シャフト4の上に仮配置されているが、接合位置20にまだ固定されていない(
図3b)。
【0030】
図3cは、次の方法のステップである、接合位置20の領域において直径を拡幅するステップの結果を示す。
図3cに示すように、支持シャフト4の直径D1は、支持シャフト4の軸上の接合位置20で少なくとも部分的に増幅し、構成部品5はこの接合位置20において固定される。構成部品5により伝達することができるトルクは、増幅した直径7と、構成部品5の貫通開口6とが重なる部分に依存するため、直径7に必要な増幅のサイズは、最終的に組み立てられる構成部品5により伝達されるトルクによって決定される。
【0031】
構成部品5が、増幅した直径7の上に圧されたり押し込まれる前に、または構成部品に割り当てられた増幅した直径7が、構成部品5の貫通開口6の中に押し込まれる前に、支持シャフト4に対する構成部品5の所望の角度位置は、支持シャフト4の回転によってセットされる。これが、
図3cの矢印10に示されている。矢印11は、次に構成部品5を押し込む方向を示している。同様の方法で、さらなる構成部品5の押し込みが行われる。ここでも支持シャフト4に対する構成部品5の所望の角度位置は、各構成部品5が増幅した直径7の上に押し込まれる前に、単に支持シャフト4を回転させる非常に簡単な方法によってセットされる。
【0032】
図3dは、支持シャフト4の増幅した直径7の上に押し込まれたり圧された構成部品5を示す。
【0033】
図3eは、それぞれ既定の角度位置で支持シャフト4に固定された2つの構成部品5の概要を示し、ここでこれらは互いに異なるように配置されている。明確にするため、構成部品5の接合位置における拡幅した直径部分は、
図3eでは示されていない。
【0034】
本発明による方法の一改良例では、接合位置20に少なくとも部分的に配置された構造9が構成されている(
図4)。増幅した直径7を構成した後で、この構造9は、増幅した直径7と構成部品5の貫通開口6とが重なる部分に貢献し、またはこの重なる部分を形成する。
【0035】
この構造は、混連、ロール成形、またはローレット切のような、可塑性および材料の変位プロセスによって製造することができる。図示された例示的な実施例では、構造9はロール成形によって製造されている。
【0036】
一方で、この構造は、幾何学的に画定された、または幾何学的に未画定の切刃を用いる材料除去プロセスによっても製造することが可能である。例えば、旋盤は幾何学的に画定された切刃を用いるプロセスとして好適であり、例えば、研削は幾何学的に未画定の切刃を用いるプロセスとして好適である。
【0037】
さらに、一方で、材料除去プロセスは、浸食、またはレーザや電子ビーム加工などによっても可能である。
【0038】
支持シャフト4は、ベアリングシート2とともに滑り軸受を構成するので、支持シャフト4、または構造9の上やこれにより製造される支持シャフト4の直径は、支持シャフト4または構造9が、支持構造3のベアリングシート2と、構成部品5の貫通開口6とを通して押し込まれることができるような寸法であることを必要とする。構造9の領域での支持シャフト4の外径は、したがって、ベアリングシート2の直径により影響を受けたり規定される。必要な直径の条件を得るために、構造9は、支持シャフト4がベアリングシート2の中に押し込まれる前に機械加工することができ、対応する直径を設定することができる。この種の後続での機械加工は、例えば、研削や旋盤により実行することができる。
【0039】
一方で、構造9が構成される領域の支持シャフト4の直径は、
図5aに示すように、滑り軸受の領域における支持シャフト4の直径D1よりも小さい直径D2を有することも考えられる。この領域に直径D2を具えて構成された構造9は、したがって、直径D1を変えることなく、支持シャフト4の全体の直径D1のより大きな部分に貢献することができる。構成部品5は、構造9や増幅した直径7の上に押し込まれたときに、改良された方法でより大きな程度、材料を変位させることができるので、支持シャフト4の拡幅の後で、この種類の構造は、構成部品5とのより大きなポジティブなロック連結をなすことができ、よってより高い伝達可能なトルクが可能となる。特に、溶接やはんだの適用のような材料を付加するプロセスも、ここで構造9を構成するために使用することができる。しかしながら、支持シャフト4は、この改良例においても、ベアリングシート2と貫通開口6とを通して押し込むことが可能でなければならない。これを達成するために、この改良例においては、構造9を後で機械加工することも可能である。
図5bは、こうして、構造9の構成後に、領域20が直径D1に研削された支持シャフト4を示す。
【0040】
構成部品5の貫通開口6には、スプライン(図示せず)のような、貫通開口6の直径を減少させる突出部が有利に設けてある。これらの突出部は、有利に、貫通開口6の円周にわたって均一に分布しており、加えて、支持シャフト4や構造9よりも高い硬度を有する。次いで構成部品5のスプラインは、増幅した直径7や構造9に食い込むことができ、非ポジティブおよびポジティブのロック連結の組合せを製造する。構成部品5により伝達することができるトルクは、非ポジティブとポジティブのロック連結により増大する。
【0041】
さらに、亜鉛のような摩擦モーメントを増大させるコーティングで、接合位置20の少なくとも一部の領域において支持シャフト4をコーティングすることが、有利であると分かっている。