特許第6385955号(P6385955)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6385955タービンフレームアセンブリおよびタービンフレームアセンブリを設計する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385955
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】タービンフレームアセンブリおよびタービンフレームアセンブリを設計する方法
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/00 20060101AFI20180827BHJP
   F01D 25/30 20060101ALI20180827BHJP
   F02C 7/24 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   F02C7/00 B
   F01D25/30 B
   F02C7/00 C
   F02C7/24 A
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-550439(P2015-550439)
(86)(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公表番号】特表2016-505104(P2016-505104A)
(43)【公表日】2016年2月18日
(86)【国際出願番号】US2013074278
(87)【国際公開番号】WO2014105425
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2016年9月6日
(31)【優先権主張番号】61/747,271
(32)【優先日】2012年12月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/776,393
(32)【優先日】2013年3月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005449
【氏名又は名称】ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】イェーガー,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】スコット,ジョナサン アリエル
【審査官】 山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04321007(US,A)
【文献】 特開2009−243311(JP,A)
【文献】 米国特許第02869941(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0000223(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0132377(US,A1)
【文献】 特開平02−218824(JP,A)
【文献】 米国特許第04544420(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0221115(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/00
F01D 25/30
F02C 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン排気ケースであって、
ガスタービンエンジンの動作点より低い温度限界を有する材料から製作されるフレームであって、
外側リングと、
内側リングと、
前記外側リングおよび前記内側リングを接合する複数のストラットと、
を備えるフレームと、
前記ガスタービンエンジンの前記動作点より高い温度限界を有する材料から製作されるフェアリングであって、流路を覆うリング−ストラット−リング構造体を備えるフェアリングと、
前記フレームと前記フェアリングとの間に配設されて、前記フレームと前記フェアリングとの間の放射熱伝達を阻止するヒートシールドと、を備え、このヒートシールドは、
前記フレームの内側リングに取り付けられた第1のセグメントと、
前記フレームの外側リングおよび前記フェアリングに取り付けられた第2のセグメントと、を含み、第1のセグメントおよび第2のセグメントは、互いから離間して設けられているタービン排気ケース。
【請求項2】
前記ヒートシールドは、前記フェアリングと前記フレームとの間の全ての見通し線を遮断する、請求項1に記載のタービン排気ケース。
【請求項3】
前記ヒートシールドは、リング−ストラット−リング構造体を備える、請求項1に記載のタービン排気ケース。
【請求項4】
前記ヒートシールドは、前記フレームの温度限界よりも高い温度限界を有する材料から製作される、請求項1に記載のタービン排気ケース。
【請求項5】
前記フレームは、CA−6NM合金から製作される、請求項1に記載のタービン排気ケース。
【請求項6】
前記ヒートシールドは、インコネル625合金から製作される、請求項1に記載のタービン排気ケース。
【請求項7】
前記フェアリングは、インコネル625合金から製作される、請求項1に記載のタービン排気ケース。
【請求項8】
前記フレームは、CA−6NM合金から製造され
前記複数のストラットは、前記外側リングと前記内側リングとの間に荷重経路を画定する、請求項1に記載のタービン排気ケース。
【請求項9】
前記フェアリングのリング−ストラット−リング構造体は、前記荷重経路内に流路を画定する、請求項8に記載のタービン排気ケース。
【請求項10】
前記ヒートシールドおよび前記フレームは、CA−6NM合金よりも、高い温度限界を有する材料から製作される、請求項に記載のタービン排気ケース。
【請求項11】
前記ヒートシールドは、前記フレームから前記フェアリングに向けて発生し得る全ての放射熱に対する障壁を形成する、請求項に記載のタービン排気ケース。
【請求項12】
請求項1に記載のタービン排気ケースを設計するための方法であって、
ガスタービンエンジンのエンジン動作点の温度成分を求めることと、
前記温度成分に耐え得ないフレーム材料を選択することと、
前記温度成分に耐え得るフェアリング材料を選択することと、
前記動作点での前記フェアリングと前記フレームとの間の温度勾配を求めることと、
前記温度勾配に耐え得る遮蔽温度限界を有するヒートシールド材料を選択することと、
前記ヒートシールド材料を用いて、前記フレームと前記フェアリングとの間に配設されて、前記フレームと前記フェアリングとの間の放射熱伝達を阻止する前記ヒートシールドを構築することと、
を含む、方法。
【請求項13】
フレーム材料は、前記温度成分に耐え得る材料より安価である理由から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記フレームの耐用寿命に亘る前記フレームの修理コストは、前記温度成分に耐え得る材料から製造されるフレームの初期コストより安価である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記フレーム材料は、CA−6NM合金である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記温度成分は、前記ガスタービンエンジンの最高動作温度と時間との関数である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記フレームと前記フェアリングとの間の全ての見通し線を遮断するヒートシールドを構築することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ガスタービンエンジンの荷重支持ケースに関する。より詳細には、本開示は、荷重支持構造フレームを熱曝露から保護するためのシステムを設計するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タービン排気ケース(TEC)は、通常、ガスタービンエンジンの最後端部自体を支持するフレーム構造を備える。航空機用途では、エンジンを航空機機体に搭載するためにTECを利用し得る。産業用ガスタービン用途では、TECはガスタービンエンジンを発電機に結合するために利用され得る。一般的なTECは、低圧タービンの外径ケースに結合する外側リングと、エンジン内に軸系を支持するようにエンジン中心線を包囲する内側リングと、これらの内側および外側リングを接続する複数のストラットとを備える。そのため、TECは、一般的に、種々の種類の荷重を受けるため、TECが構造上強靱で堅固であることが要求される。ガスタービンエンジンの燃焼器から排出される高温ガス流内のTECの配置により、TECのフレーム構造を、高温ガスの衝突に長期間に亘り耐え得るフェアリングで遮蔽することが一般に望ましい。フェアリングは、加えて、リング−ストラット−リング構成を採用しており、ストラットはフレームストラットを包囲するために中空である。そのようなフェアリングは、ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイションに譲渡された、マイヤーズらに対する米国特許第4、993、918号に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
より高温のエンジン動作温度で達成されるエンジンの効率増大により、高温に耐え得るTECを有することが望ましい。しかし、性能を犠牲にすることなくTECについての費用を最小化することもまた望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、タービン排気ケース等の、構造ケースアセンブリを対象とする。タービン排気ケースは、フレームと、フェアリングと、ヒートシールドとを備える。フレームは、ガスタービンエンジンの動作点より低い温度限界を有する材料から製作される。フレームは、外側リングと、内側リングと、外側リングおよび内側リングの間の荷重経路を画定する外側リングおよび内側リングを接合する複数のストラットとを備える。フェアリングは、ガスタービンエンジンの動作点より高い温度限界を有する材料から製作される。フェアリングは、流路を覆うリング−ストラット−リング構造体を備える。ヒートシールドは、フレームとフェアリングとの間に配設されて、フレームとフェアリングとの間の放射熱伝達を阻止する。一実施形態では、ヒートシールドは、フェアリングとフレームとの間の全ての見通し線を遮断する。別の実施形態では、フレームは、CA−6NM合金から製作される。
【0005】
別の実施形態では、本開示は、フレームとフェアリングとの間に配設されるヒートシールドを含むケース構造体を設計するための方法を対象とする。本方法は、ガスタービンエンジンのエンジン動作点の温度成分を求めることを含む。温度成分に耐え得ないフレーム材料が選択される。温度成分に耐え得るフェアリング材料が選択される。動作点でのフェアリングとフレームとの間の温度勾配が求められる。温度勾配に耐え得る遮蔽温度限界を有するヒートシールド材料が選択される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】タービン排気ケースを有する産業用ガスタービンエンジンの側断面概略図である。
図2A】リング−ストラット−リングフェアリングをリング−ストラット−リングフレームと共に組み立てたタービン排気ケースの斜視図である。
図2B図2Aのタービン排気ケースの分解図であり、フレームおよびフェアリングを示す。
図3図2Aのタービン排気ケースの断面図であり、フレームにより画定される流路を覆うフェアリングを示す。
図4図3のタービン排気ケースの断面図であり、フレームとフェアリングとの間の全ての見通し線を遮断するヒートシールドを示す。
図5】フレーム、フェアリング、およびヒートシールドを含むタービン排気ケースを設計する方法を図解するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、ガスタービンエンジン10の部分側断面概略図である。図示した実施形態では、ガスタービンエンジン10は、図1に示すように、中心長手軸または軸方向エンジン中心軸12を中心に周方向に配設された産業用ガスタービンエンジンである。ガスタービンエンジン10は、前部から後部への順番に、低圧圧縮機部16、高圧圧縮機部18、燃焼機部20、高圧タービン部22、および低圧タービン部24を含む。一部の実施形態では、動力タービン部26は、低圧タービン24の後方に配設されたフリータービン部である。
【0008】
ガスタービンの技術分野で周知のように、流入する外気30は、低圧および高圧圧縮機部16および18で加圧空気32になる。燃料は、燃焼機部20で加圧空気32と混合し、ここで燃焼される。一旦燃焼されると、燃焼ガス34が、高圧および低圧タービン部22および24を通過しながら、また動力タービン部26を通過しながらそれぞれ膨張する。高圧および低圧タービン部22および24は、高圧および低圧ロータ軸36および38をそれぞれ駆動し、これらが燃焼ガス34の流れに応じて回転し、それにより取り付けられた高圧および低圧圧縮機部18および16を回転させる。動力タービン部26は、例えば、発電機、ポンプ、または変速装置(図示せず)を駆動し得る。
【0009】
低圧タービン排気ケース(LPTEC)40は、低圧タービン部24と動力タービン部26との間に位置付けられる。LPTEC40は、低圧タービン部24からの排気ガス用の流路を画定し、当該排気ガスは動力タービン26へ移送される。LPTEC40は、動力タービン部26に対する結合箇所を提供するように、ガスタービンエンジン10のための支持構造も提供する。LPTEC40は、そのため、堅固で構造上強靱である。本開示は、一般に、LPTEC40内のフェアリングとフレームとの間のヒートシールドの配置に関する。
【0010】
図1が、産業用ガスタービンエンジンの種々の部分および基本的動作の基本的理解および概要を提供することが理解される。本願が、航空宇宙用途のものも含む、あらゆる種類のガスタービンエンジンに適用可能であることが、当業者に明らかになるであろう。同様に、本開示はLPTEC40に関して説明されるが、本開示は、中間ケース、中間タービンフレーム等の、ガスタービンエンジンの他の構成部品にも適用可能である。
【0011】
図2Aは、フレーム42、環状マウウント44、およびフェアリング46を含む、低圧タービン排気ケース(LPTEC)40の斜視図を示す。図2Aと併行して検討する図2Bは、LPTEC40の分解図を示し、フェアリング46とフレーム42との間に配設された環状マウウント44を示している。フレーム42は、外側リング48、内側リング50、およびストラット52を含む。フェアリング46は、外側リング54、内側リング56、およびベーン58を含む。
【0012】
フレーム42は、外側リング48と内側リング50との間に荷重経路を画定するリング−ストラット−リング構造体を備える。フェアリング46は、フレーム42内に搭載されたリング−ストラット−リング構造体を含み、ガス路を画定して、フレーム42を高温曝露から保護する。一実施形態では、フェアリング46はフレーム42の周囲に構築され得、別の実施形態では、フレーム42はフェアリング46内に構築される。
【0013】
フレーム42は、ガスタービンエンジン10(図1)のステータ構成部品を備え、当該ステータ構成部品は通常は、低圧タービン部24と動力タービン部26との間に搭載される。図示した実施形態では、フレーム42の外側リング48は円錐形に成形され、内側リング50は円筒形に成形される。外側リング48は、ストラット52を介して内側リング50に接続される。外側リング48、内側リング50、およびストラット52は、ガスタービンエンジン10(図1)を通る荷重経路の部分を形成する。具体的には、外側リング48は、低圧タービン部24と動力タービン部26(図1)との間に、荷重経路の半径方向外側境界を画定する。
【0014】
フェアリング46は、フレーム42内の外側リング48と内側リング50との間に配設され、環状流路を形成するように適合される。フェアリング46の外側リング54と内側リング56とは、一般に円錐形を有し、ベーン58により互いに接続され、これらはリング54および56を接合するためのストラットとして機能する。外側リング54、内側リング56、およびベーン58は、フレーム42を通るガス流路を形成する。具体的には、ベーン58はストラット52を包み、一方で外側リング54および内側リング56は、外側リング48の内向き(図1の中心軸12に向かう)表面と、内側リング50の外向き表面とをそれぞれ覆う。
【0015】
一実施形態では、環状マウウント44は、フレーム42とフェアリング46との間に挿入され、フレーム42内でのフェアリング46の周方向回転を防止するように構成される。一実施形態では、環状マウウント44は、全周鋸壁状のストップリングを含み、当該ストップリングは外側リング48の軸方向端部に取り付けられるように適合される。フェアリング46は、フレーム42内に設置されるときに環状マウウント44に係合する。フェアリング46および環状マウウント44は、スロット62およびラグ68等の、一致する歪み防止特徴を有し、それらは互いに係合して、フレーム42に対するフェアリング46の周方向の動きを防止する。具体的には、ラグ68は軸方向にスロット62に延在し、フェアリング46の周方向回転を防止する一方、フレーム42に対するフェアリング46の半径方向および軸方向の動きは許容する。
【0016】
図3に関して詳細に説明するように、フレーム42は、エンジン10内に荷重支持経路構造(図1)を提供するように設計され、かつ強靱でコスト効果の高い材料で作られる。フェアリング46は、燃焼ガス34の直接の衝突に耐えるように設計され、より高価な熱抵抗材料で製作される。ヒートシールドは、図4に関して後で検討するように、フレーム42とフェアリング46との間に位置付けられ得、かつフェアリング46からの放射熱に対してフレーム42を保護する。
【0017】
図3は、環状マウウント44を利用してフレーム42内に設置されたフェアリング46を有するLPTEC40の断面図を示し、これには回転防止フランジ60およびラグ62を含む。フレーム42は、外側リング48、内側リング50、ストラット52、および皿穴64を含む。フェアリング46は、外側リング54、内側リング56、およびベーン58を含む。外側リング54は、スロット68を有する回転防止フランジ66を含む。LPTEC40は、締結具70、締結具72、およびマウントリング74を更に備える。
【0018】
フレーム42は、リング−ストラット−リング構造体を備え、この場合ストラット52は外側リング48と内側リング50とに接続される。フレーム42は、フランジ77等の、他の特徴も含み、低圧タービン部24、動力タービン部26または排気ノズル等の、ガスタービンエンジン10(図1)構成部品へのフレーム42の搭載を可能にしている。フェアリング46は、フレーム42を通る流路を覆う薄肉リング−ストラット−リング構造体を備える。具体的には、外側リング54および内側リング56は、燃焼ガス34(図1)のTEC40を通る実際の環状流路の境界を画定する。ベーン58は、環状流路に断続的に割り込んで、フレーム42のストラット52を保護する。
【0019】
マウントリング74は、フェアリング46の内側リング56から延出し、フレーム42の内側リング50の軸方向端部に係合する。マウントリング74は、第2の締結具72(図3には1つのみ示す)を介して接続される。締結具72は、フレーム42に対して、フェアリング46の軸方向前部の軸方向、半径方向、および周方向の制約を提供する。したがって、フェアリング46は、第1の位置でのフレーム42への固定接続を有する(即ち、フレーム42に対して半径方向、軸方向、および周方向に制約される)。フランジ60、ラグ62、フランジ66、およびスロット68は係合して、軸方向および半径方向の膨張を許容するが、周方向の回転は防止するフェアリング46のための浮遊接続を提供する。
【0020】
フェアリング46は、燃焼ガス34(図1)からの熱へのフレーム42の曝露を防止するように設計される。しかし、使用する材料によっては、フェアリング46が存在していても、フレーム42の温度は、フレーム42の材料に望ましいレベルを超えて上昇し得る。特に、フェアリング46からの放射熱は、フレーム42へ到達し得る。本開示では、ヒートシールドをフレーム42とフェアリング46との間に搭載して、フェアリング46とフレーム42との間の熱伝達を阻止し、それによりフレーム42を所望温度に維持する。具体的には、ヒートシールドは、フレーム42とフェアリング46との間の全ての見通し線(line−of−site)を遮断して、放射熱伝達を制限する。そのため、フレーム42は、フェアリング46とヒートシールドとにより熱的に保護されるコスト効率の良い材料で製作し得る。
【0021】
図4は、図3のLPTEC40の断面図であり、すべり継手82および固定接合84を用いてフェアリング46に結合されたヒートシールド80を示している。ヒートシールド80は、それが外側ヒートシールドセグメント80A、前方ヒートシールドセグメント80B、後方ヒートシールドセグメント80C、ならびに内側ヒートシールドセグメント80Dおよび80Eを備えるように、分割される。フレーム42およびフェアリング46は、図1〜3に関して説明したような構成部品および要素を含むので、同様の参照符号を図4にも用いる。ヒートシールド80は、フレーム42とフェアリング46との間に位置付けられて、フェアリング46を通過するガスの熱がフレーム42に放射するのを阻止する。ヒートシールド80は、種々の接合部でフレーム42とフェアリング46とに結合される複数の薄肉体を備える。
【0022】
外側ヒートシールドセグメント80Aは、フェアリング46の外側リング54とフレーム42の外側リング48との間に位置付けられる円錐形薄板を備える。外側ヒートシールドセグメント80Aは開口部を含み、ストラット52が貫通することを可能にする。外側ヒートシールドセグメント80Aは、締結具70を用いてフレーム42に接合される。締結具70は、環状マウウント44がフレーム42に接合される接合部で、ヒートシールド80内の内孔を貫通して外側リング48内のねじ内孔内へ通される。したがって、外側ヒートシールドセグメント80Aは、締結具70を介して半径方向、軸方向、および周方向に固定される。外側ヒートシールドセグメント80Aは、締結具70ではなくねじ締結具を用いて、ボス86でフェアリング46に固定してもよい。
【0023】
後方ヒートシールドセグメント80Cは、接合部88で外側ヒートシールドセグメント80Aに接合される。後方ヒートシールドセグメント80Cは、接合部90で内側ヒートシールドセグメント80Eにも接合される。後方ヒートシールドセグメント80Cは、ストラット52を部分的に包み込むように周方向に弓形の(例えば、[U字」形の)薄板金属体を備える。接合部88および90は、機械的な、溶接またはろう付けによる接合部である。他の実施形態では、後方ヒートシールドセグメント80Cは、外側ヒートシールドセグメント80Aおよび内側ヒートシールドセグメント80Eと一体に形成され得る。別の実施形態では、前方および後方ヒートシールドはベーンに取り付けられて、外側および内側ヒートシールドからは拘束を受けない。
【0024】
内側ヒートシールドセグメント80Dは、フェアリング46の内側リング56とフレーム42の内側リング50との間に位置付けられる環状薄板を備える。内側ヒートシールドセグメント80Dはその周囲に沿って弓形の開口部を含み、ストラット52が貫通することを可能にする。具体的には、内側ヒートシールドセグメント80Dは、その後縁に沿うU字形切欠きを含む。内側ヒートシールドセグメント80Dは、締結具72およびフランジ92を用いて、フレーム42に接合され、フランジ92は、内側ヒートシールドセグメント80Dに接合されかつそれから半径方向内側に延在する。締結具72は、ヒートシールド80内の内孔を貫通して内側リング50のねじ内孔内に通される。したがって、内側ヒートシールドセグメント80Dは、一端部で締結具72を介して半径方向、軸方向および周方向に固定され、対向端部で片持梁状とされる。
【0025】
前方ヒートシールドセグメント80Bは、接合部94で内側ヒートシールドセグメント80Dに接合される。前方ヒートシールドセグメント80Bは、ストラット52を部分的に包み込むように周方向に弓形の(例えば、「U字」形の)薄板金属体を備える。そのため、前方ヒートシールドセグメント80Bは、後方ヒートシールドセグメント80Cと一致または重複するように構成され、ストラット52を完全に包み込む。前方ヒートシールドセグメント80Bは、ストラット52の横に沿ってフェアリング46のベーン58内部で片持梁状になるように接合部94から延在する。しかし、前方ヒートシールドセグメント80Bは、外側ヒートシールドセグメント80Aに接合してもよい。接合部94は、機械的な、溶接によるまたはろう付けによる接合部を含み得る。他の実施形態では、前方ヒートシールドセグメント80Bは、内側ヒートシールドセグメント80Dと一体に形成され得る。
【0026】
内側ヒートシールドセグメント80Eは、フェアリング46の内側リング56とフレーム42の内側リング50との間に位置付けられる円錐形薄板を含む。内側ヒートシールドセグメント80Eは、その周囲に沿う弓形の開口部を含み、ストラット52が貫通することを可能にする。具体的には、内側ヒートシールドセグメント80Eは、その前縁に沿うU字形切欠きを含む。内側ヒートシールドセグメント80Eは、支持された端部96Aと支持されない端部96Bとの間に延在する。したがって、フレーム42での締結具70および72により提供される位置以外の追加の位置で、ヒートシールド80を据えつけるのが望ましくなる。すべり継手82および固定接合84は、ヒートシールド80をフェアリング46に結合する機械的リンク機構を提供する。すべり継手82はアンカー98を含み、支持されない端部96Bに限定された程度の動きを提供する。固定接合84は、締結具102を用いて、パッド100でフェアリング46に堅固に固定され、支持された端部96Aの全ての程度の動きを制限する。他の実施形態では、内側ヒートシールドセグメント80Eの支持されない端部は、内側ヒートシールドセグメント80Dと接合されまたは一体化され得る。
【0027】
開示した実施形態では、ヒートシールド80を複数のセグメントに分割して、LPTEC40への組立を容易にしている。前方ヒートシールドセグメント80Bは、外側ヒートシールドセグメント80Aから分離され、内側ヒートシールドセグメント80Dおよび80Eは互いに分離される。他の実施形態では、内側ヒートシールドセグメント80Dおよび80Eは、互いに接合される。ヒートシールド80の構造の種々の例が、いずれもユナイテッド テクノロジーズ コーポレイションに譲渡されかつ参照により本明細書に組み込まれる、エム.バドニックへの米国仮特許出願第61/747、237号およびエム.バドニックらへの米国仮特許出願第61/747、239号に見出される。他の実施形態では、ヒートシールド80は、ヒートシールド80の支持されない端部または別個のセグメントが存在しないように、完全に溶接された本体である。
【0028】
任意の実施形態で、ヒートシールド80は、フェアリング46とフレーム42との間に障害物を形成する。フェアリング46から発生する放射熱は、フレーム42への到達を阻止される。放射熱は、直接遮断されるか、あるいはヒートシールド80が存在しない場合よりも、より長いまたはより遠回りの経路を進まざるを得ない。一実施形態では、ヒートシールド80は、全ての放射熱がフェアリング46からフレーム42へ通過するのを阻止するように、フレーム42とヒートシールド46との間の全ての見通し線を遮断する。即ち、フレーム42上の任意の視座から、フェアリング46の視認性がヒートシールド80により全方向で遮られる。ヒートシールド80の存在により、LPTEC40の設計をより柔軟にし得る。具体的には、フレーム42は、低い温度限界を有する材料から製作、製造、または作製されてもよく、これにより一般的により安価な材料が提供される。
【0029】
図5は、フレーム42、フェアリング46およびヒートシールド80を含むLPTEC40を設計する方法を図解するフローチャートである。ブロック200で、エンジン10の動作パラメータを求める。ブロック210からの入力を用いて、動作条件に対するエンジン動作成分を求める。入力には、離陸、巡航、および着陸等の、種々の動作条件に対する最高エンジン動作温度および予想動作時間等の係数が含まれる。ブロック220で、フレーム42のための材料が選択される。ブロック230からの入力を用いて、所望の強度、重量、コスト、および性能上の利点を提供する材料を選択する。
【0030】
ブロック240で、フレーム42に関する支出を低減するために、エンジン10の動作成分に耐え得ない材料を意図的に選択する。一般的には、公知の超合金等の、ガスタービンエンジンに使用される材料のコストは、材料が耐えることができる最高温度と不釣り合いに増大する。したがって、より安価な材料を有することが望ましい。材料がブロック200のエンジン動作パラメータに耐え得る場合、別のより安価で、エンジン動作パラメータに耐え得ない材料を、ブロック230で選択する。選択した材料がエンジン動作温度に合致し得ない場合、その材料はフレーム42のための使用候補である。一実施形態では、フレーム42は、クボタ メタル コーポレイションから市販されているCA−6NM合金から製造される。
【0031】
ブロック250で、フェアリング46のための材料が選択される。上述したように、フェアリング46がガスタービンエンジン10からのガスの直接の衝突に耐えることが望ましい。したがって、ブロック200で求められた動作パラメータを超える温度限界を有し得るフェアリング46が選択される。一実施形態では、フェアリング46は、スペシャル メタルズ コーポレイションから市販されているインコネル(登録商標)625合金から製造される。
【0032】
ブロック260で、ブロック200で求められた動作パラメータにおいて、フレーム42とフェアリング46との間の予想温度勾配を求める。この温度勾配は、フレーム42とフェアリング46との間に設置された時にエンジン10の動作時にフレームが曝露される温度を示す。したがって、ブロック270で、フレーム42が温度勾配に耐え得るか否かが判断される。フレーム42が温度勾配に耐え得る場合、それはフレーム42がより安価な材料から製作され得ることを示す。
【0033】
フレーム42に、より高価なフレーム合金よりもコストを依然節約しながらフレーム42の温度限界を増大させるコーティングを単に提供することは、実現可能ではない。具体的には、公知の断熱コーティングの適用は、フレーム42のためのコスト効率の良い基材料の温度限界を超える温度を必要とし得る。加えて、フレーム42とフェアリング46との間で、低圧圧縮機部16(図1)から等、増大させた量の冷却空気を流すことにより、フレーム42に過冷却を提供することは実際的でない。そのような方法は、ガスタービンエンジン10において大きな性能および効率の不利益を課する。したがって、そのような解決法は望ましくない。したがって、ブロック270でフレーム42が温度勾配に耐え得る場合には、ブロック220で別のより安価な材料がフレーム42のために選択され得る。
【0034】
ブロック270でフレーム42が温度勾配に耐え得ない場合、ブロック280でヒートシールド用の材料を選択する。ブロック260で求められた温度勾配は、フレーム42とフェアリング46との間に設置された時にヒートシールド80が曝露される温度を示す。ブロック280で、温度勾配に耐え得るヒートシールド80の材料が選択される。一実施形態では、スペシャル メタルズ コーポレイションから市販されているインコネル(登録商標)625から製造される。
【0035】
ステップ290で、フレーム42とフェアリング46との間の全ての見通し線を遮断して、全ての放射熱伝達を遮りフレーム42の熱曝露を低減する、ヒートシールド80を設計する。ステップ300で、フレーム42の材料をチェックして、ヒートシールド80の存在を想定の下に、フレーム42とフェアリング46との間の温度勾配に耐え得るかを判断する。フレーム42が温度勾配に耐え得ない場合には、より高い温度限界を用いてステップ220で新たなフレーム材料が選択されなければならない。フレーム42が温度勾配に耐え得れば、ブロック320でフレーム42の寿命コストが求められる。
【0036】
ブロック320で、ブロック330からの入力を用いて、フレーム42に対し選択された材料がチェックされて、フレーム42の長期修理コストが、ブロック220で選択された材料の短期のコスト節減を上回らないかを検証する。例えば、ブロック200で求められた動作パラメータにおいて、選択された材料について予想される全寿命が求められる。フレーム42の全寿命には、寿命内で予測されるフレーム42の修理または改修処理の総数と、各処理のコストとが含まれる。
【0037】
ブロック340で、選択されたより安価な材料でのフレーム42の全寿命が、ブロック200で選択された動作成分に耐え得る温度限界を有するより高価な材料から製造された場合のフレーム42の全寿命と比較される。全ての修理および改修処理を含むより安価な材料から製作されたフレーム42の総数が、より高価な材料の単一フレームのコストより安価である場合は、ブロック350で当該材料がフレーム42を造るために使用され得る。ブロック220で選択されたフレーム42のための材料が長期のコスト節減を提供しない場合、別のより安価な材料がブロック220で選択される。
【0038】
本開示の方法に従って設計されたLPTEC40は、フレーム42のためのより高価な超合金の使用に勝る際だったコスト節減を提供する。上述したように、フレーム42の初期材料コストおよびそれに関連する修理コストは、ヒートシールドを用いずにエンジン10の温度に耐え得る仮想のフレームのコストより少ない。ヒートシールド80の使用により、エンジン10は他の性能上の利点を実現可能になる。例えば、ヒートシールドを有さないLPTEC設計とは対照的に、より少ない冷却空気をフェアリング46とフレーム42との間に提供し得る。
可能な実施形態の検討
以下に、本発明の可能な実施形態の非排他的な説明を行う。
【0039】
タービン排気ケースであって、ガスタービンエンジンの動作点より低い温度限界を有する材料から製作されるフレームであって、外側リングと、内側リングと、外側リングおよび内側リングを接合する複数のストラットとを備えるフレームと、ガスタービンエンジンの動作点より高い温度限界を有する材料から製作されるフェアリングであって、流路を覆うリング−ストラット−リング構造体を備えるフェアリングと、フレームとフェアリングとの間に配設されて、フレームとフェアリングとの間の放射熱伝達を阻止するヒートシールドと、を備える、タービン排気ケース。
【0040】
上記のタービン排気ケースは、追加的におよび/または代替的に、以下の特徴、構成および/または追加の構成要素のうちのいずれか1つ以上を、任意選択的に含み得る。
【0041】
ヒートシールドが、前記フェアリングと前記フレームとの間の全ての見通し線を遮断する。
【0042】
前記ヒートシールドが、リング−ストラット−リング構造体を備える。
【0043】
前記ヒートシールドが、前記フレームの温度限界よりも高い温度限界を有する材料から製作される。
【0044】
前記フレームが、CA−6NM合金から製作される。
【0045】
前記ヒートシールドが、インコネル625合金から製作される。
【0046】
前記フェアリングが、インコネル625合金から製作される。
【0047】
タービン構造ケースであって、CA−6NM合金から製造されるフレームを備え、前記フレームは、外側リングと、内側リングと、外側リングと内側リングを接合して、外側リングと内側リングとの間に荷重経路を画定する複数のストラットと、
を備えるタービン構造ケース。
【0048】
上記のタービン排気ケースは、追加的におよび/または代替的に、以下の特徴、構成および/または追加の構成要素のうちのいずれか1つ以上を、任意選択的に含み得る。
【0049】
フェアリングが、荷重経路内に流路を画定するリング−ストラット−リング構造体を備える。
【0050】
ヒートシールドが、フレームとフェアリングとの間に配設されて、フレームとフェアリングとの間の熱伝達を阻止する。
【0051】
ヒートシールドおよびフレームが、CA−6NM合金よりも、高い温度限界を有する材料から製作される。
【0052】
ヒートシールドが、フェアリングとフレームとの間の全ての見通し線を遮断する。
【0053】
ヒートシールドが、フレームからフェアリングに向けて発生し得る全ての放射熱に対する障壁を形成する。
【0054】
フレームとフェアリングとの間に配設されるヒートシールドを含むケース構造体を設計するための方法であって、ガスタービンエンジンのエンジン動作点の温度成分を求めることと、温度成分に耐え得ないフレーム材料を選択することと、温度成分に耐え得るフェアリング材料を選択することと、動作点でのフェアリングとフレームとの間の温度勾配を求めることと、温度勾配に耐え得る遮蔽温度限界を有するヒートシールド材料を選択することと、を含む、方法。
【0055】
上記の方法は、追加的におよび/または代替的に、以下の特徴、ステップ、構成および/または追加の構成要素のうちのいずれか1つ以上を、任意選択的に含み得る。
【0056】
フレーム材料が、温度成分に耐え得る材料より安価である理由から選択される。
【0057】
フレームの耐用寿命に亘るフレームの修理コストが、温度成分に耐え得る材料から製造されるフレームの初期コストより安価である。
【0058】
フレーム材料が、CA−6NM合金である。
【0059】
温度成分が、ガスタービンエンジンの最高動作温度と時間との関数である。
【0060】
フレームとフェアリングとの間の全ての見通し線を遮断するヒートシールドを構築する。
【0061】
ヒートシールドが、フレームからフェアリングに向けて発生する全ての放射熱に対する障壁を形成する。
【0062】
本発明を例示の実施形態(複数可)に関して説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく種々の変更を行うことができ、また均等物をその要素に代えて置換できることを当業者ならば理解するであろう。加えて、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、多くの修正を行って特定の状況または材料を本発明の教示に適合させてもよい。したがって、本発明は、開示される特定の実施形態(複数可)に限定されず、本発明は、添付の特許請求の範囲内に収まる全ての実施形態を含むことが意図されている。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5