特許第6385982号(P6385982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385982
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】移載装置及び栽培システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20180827BHJP
   A01G 9/00 20180101ALI20180827BHJP
   A01G 9/02 20180101ALI20180827BHJP
   A01G 31/04 20060101ALI20180827BHJP
   A01G 31/06 20060101ALI20180827BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   B65G1/04 539A
   A01G9/00 C
   A01G9/02 B
   A01G31/04 A
   A01G31/04 B
   A01G31/06
   B65G1/04 537
   B65G1/00 533
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-104418(P2016-104418)
(22)【出願日】2016年5月25日
(65)【公開番号】特開2017-210328(P2017-210328A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2017年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】平井 達也
(72)【発明者】
【氏名】山田 尚矢
(72)【発明者】
【氏名】森 拓郎
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−199012(JP,A)
【文献】 特開平5−338713(JP,A)
【文献】 特開2000−142919(JP,A)
【文献】 特開平8−244914(JP,A)
【文献】 特開2002−274612(JP,A)
【文献】 特開2013−147343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00− 1/04
A01G 9/00− 9/08
A01G 31/00−31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦横に並設された複数の収容部を有する収容棚の間口方向及び高さ方向に沿って縦横に移動する移載ユニットを有し、該移載ユニットにより被移載物を前記収容部に対し移載する移載装置において、
前記収容部の所定位置に取り付けられており、前記移載ユニットが前記収容部に対応する位置に停止した場合の停止位置に対する所定の許容範囲に対応する大きさの被検出体と、
前記移載ユニットの所定の位置に固定されており、前記被検出体を検出する検出部と、
前記移載ユニットが前記収容部に対応する位置に停止した場合に前記検出部にて前記被検出体を検出できたか否かを判断する判断部と
を備えることを特徴とする移載装置。
【請求項2】
前記被検出体は、前記間口方向及び高さ方向のいずれにも沿い、前記大きさを持つ面を有しており、
前記検出部は、前記間口方向及び高さ方向のいずれにも直交する方向における対向面までの距離を測定する測距部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の移載装置。
【請求項3】
植物及び該植物の培地を含むパネル状の栽培ユニットを収容する収容部を縦横に複数有する栽培棚と、該栽培棚の間口方向に沿って縦横に移動する移載ユニットを有し、該移載ユニットにより前記栽培ユニットを複数の前記収容部夫々に対し移載する移載装置とを含む栽培システムにおいて、
前記栽培棚の複数の収容部の内の一部又は全部における所定位置に各取り付けられており、前記移載ユニットが前記収容部に対応する位置に停止した場合の停止位置に対する所定の許容範囲に対応する大きさの被検出体を備え、
前記移載装置は、
前記移載ユニットの所定の位置に固定されており、前記被検出体を検出する検出部と、
前記移載ユニットが前記収容部に対応する位置に停止した場合に前記検出部にて前記被検出体を検出できたか否かを判断する判断部と
を備えることを特徴とする栽培システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物工場で用いられる栽培ユニットを移載する移載装置及び該移載装置を用いる栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
生育環境を制御して植物を育てる植物工場が規模の大小を問わず増加している。その中でも大規模の植物工場では、播種、芽出し、緑化、苗選別、育苗、苗移植、生育、及び収穫等の栽培の工程における作業の自動化が進められている。
【0003】
例えば特許文献1には、植物及び培地を含むパネル状の栽培ユニットを収容する収容部を多数設けた栽培棚を設置し、各収容部に対する栽培ユニットの移載を、スタッカークレーンを用いた移載装置で自動的に実行するシステムが利用されている。
【0004】
スタッカークレーンを用いた物品の移載の自動化は、マテリアルハンドリングの事業分野において広く行なわれている。例えば特許文献2には部品保管設備におけるスタッカークレーンの制御が開示されている。特許文献2では特に、棚の支柱の傾き、走行装置の走行レールのうねり等に起因する走行位置のずれを抑制するため、支柱の上部を間口方向に連結する横架材上の隣り合う支柱間に対応する箇所に夫々被検出体を設け、これらの被検出体間の間隔情報に基づき、スタッカークレーンの走行位置を補正することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−036580号公報
【特許文献2】特開平11−199012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
植物工場における移載装置の場合には、特許文献2に開示されているような物品保管設備における移載装置よりも、要請される移動精度が高い。マテリアルハンドリングの分野における棚の各収容部は、物品をある程度広い面で受ければよく、スタッカークレーンに要求される移動精度は、物品が支柱に当たらない程度の精度である。これに対し、植物工場では、栽培ユニットの底部からの排水が欠かせないため、棚の収容部は栽培ユニットの底部を広い面で受けることが困難である。したがって棚の各収容部は、栽培ユニットをその縁辺部で支持するような支持構造を有しており、移載装置に高い移動精度が要求される。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、高い移動精度の要請に応え得る移載装置、及び該移載装置を用いた栽培システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る移載装置は、縦横に並設された複数の収容部を有する収容棚の間口方向及び高さ方向に沿って縦横に移動する移載ユニットを有し、該移載ユニットにより被移載物を前記収容部に対し移載する移載装置において、前記収容部の所定位置に取り付けられており、前記移載ユニットが前記収容部に対応する位置に停止した場合の停止位置に対する所定の許容範囲に対応する大きさの被検出体と、前記移載ユニットの所定の位置に固定されており、前記被検出体を検出する検出部と、前記移載ユニットが前記収容部に対応する位置に停止した場合に前記検出部にて前記被検出体を検出できたか否かを判断する判断部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る移載装置は、前記被検出体は、前記間口方向及び高さ方向のいずれにも沿い、前記大きさを持つ面を有しており、前記検出部は、前記間口方向及び高さ方向のいずれにも直交する方向における対向面までの距離を測定する測距部を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る栽培システムは、植物及び該植物の培地を含むパネル状の栽培ユニットを収容する収容部を縦横に複数有する栽培棚と、該栽培棚の間口方向に沿って縦横に移動する移載ユニットを有し、該移載ユニットにより前記栽培ユニットを複数の前記収容部夫々に対し移載する移載装置とを含む栽培システムにおいて、前記栽培棚の複数の収容部の内の一部又は全部における所定位置に各取り付けられており、前記移載ユニットが前記収容部に対応する位置に停止した場合の停止位置に対する所定の許容範囲に対応する大きさの被検出体を備え、前記移載装置は、前記移載ユニットの所定の位置に固定されており、前記被検出体を検出する検出部と、前記移載ユニットが前記収容部に対応する位置に停止した場合に前記検出部にて前記被検出体を検出できたか否かを判断する判断部とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明では、被移載物が載置されて縦横に移動する移載ユニットが収容棚の収容部に停止した場合に、収容部に取り付けられている被検出体を検出できたか否かにより、停止位置が移動精度について所定の許容範囲であるか否かが判定可能である。
【0012】
本発明では、被検出体は、間口方向及び高さ方向のいずれにも沿い、許容範囲に対応する大きさの面を有して、検出部はその間口方向及び高さ方向に直交する方向における距離を測定することにより、前記大きさの面を検出できたか否かを判断することができる。これにより、移載ユニットが収容棚の間口方向及び高さ方向のいずれにおいても適正な位置に停止したか否かを一度に判定することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明による場合、収容部に対応する適正な位置に移載ユニットが停止したか否かを判定して確認することができるから、各収容部に対する移載ユニットの移動精度を維持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態における栽培システムの模式斜視図である。
図2】栽培棚の収容部の拡大斜視図である。
図3】栽培棚の収容部の拡大正面図である。
図4】移載装置の正面図である。
図5】移載装置の側面図である。
図6】移載装置の制御部の構成を示すブロック図である。
図7】制御部による処理手順を示すフローチャートである。
図8】レーザセンサによる距離の計測の概要を示す説明図である。
図9】ドグとレーザセンサからのレーザ光のビーム径との大きさを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、以下の実施の形態では、本発明に係る移載装置を植物工場における植物及び培地を含む栽培ユニットの移載に適用した例を挙げて説明する。
【0016】
本実施の形態にて植物工場は、栽培の各工程の内、苗移植後の生育工程において、植物の苗が移植された栽培ユニットを収容する栽培棚と、該栽培棚に対し栽培ユニットを自動的に移載する装置とを含む栽培システムを用いる。
【0017】
図1は、本実施の形態における栽培システム100の模式斜視図である。以下の説明では、図1中の矢符により示す上下、左右及び前後を使用する。本実施の形態における栽培システム100は、栽培棚1及び移載装置2を含む。栽培棚1は、栽培ユニットを上下方向に複数収容可能な多段棚を左右方向に複数並設して構成される。ここで栽培ユニットは、複数の孔が縦横に設けられた矩形状パネル(図4,5参照)の各孔に、栽培対象の植物の苗が植えられた培地が埋められている栽培パネルを1つ又は複数、底部に開口を有するフレームに並べた状態で保持したものである。移載装置2は、栽培棚1の間口方向(左右方向)及び高さ方向(上下方向)に移動する移載ユニットを有し、該移載ユニットを用いて他所から栽培ユニットを栽培棚1の各収容部へ載置又は各収容部から取り出す装置である。
【0018】
栽培棚1は、骨組みとなるフレーム11と、栽培ユニットを受けるガイドレール12と、収容している各栽培ユニットの下部に、常時供給される培養液の流れを形成するための樋13と、該樋13を支持する樋受14及び支持部15とを備える。フレーム11をガイドレール12、樋13、及び樋受14によって仕切ることにより栽培棚1の各収容部を構成している。
【0019】
図2は、栽培棚1の収容部の拡大斜視図であり、図3は、栽培棚1の収容部の拡大正面図である。図1図3を参照して栽培棚1について説明する。
【0020】
フレーム11は、左右一対の支柱の上部を横梁で連結してなる門型のフレーム部材を前後方向に複数並べ、これらのフレーム部材の上部を縦梁により連結して構成されている。そしてガイドレール12は、これらのフレーム部材を前後方向に連結するようにして床面に対して平行に、左右の支柱夫々の内側に設けられている。なおガイドレール12は、上下方向に所定の間隔を空けて複数(図1では11組)設けられており、しかも左右で同じ高さとなるように設けられている。ガイドレール12は角型パイプであり、各面には長さ方向にリブが設けられている。
【0021】
樋受14は、短冊状の板材であり、その長手方向の一縁辺の複数箇所に矩形状の切り欠きを有する。そして樋受14は、フレーム部材の支柱間に、前記切り欠きを有する縁辺側が上向きとなるように左右方向に架け渡されている。樋受14は、左右同じ高さに設けられている複数のガイドレール12の下面に対して夫々位置決めされている。
【0022】
樋13は断面コの字状の形状を有し例えば樹脂製である。樋13は前後方向において対応する樋受14の切り欠き上に、フレーム11の前後方向の全長に亘って、床面に平行に架け渡されている。なお樋13は、フレーム11から前方及び後方に適長突き出すように架設されている。図1から図3に示されている例では、樋13は8本であるが本数又は形状は限定されないことは勿論である。樋13は収容部の幅に概ね等しい幅を有して各収容部に対し1本設けられている構成としてもよい。
【0023】
支持部15は、フレーム11の最前方の支柱から前方に突き出るように設けられており、樋13の前方の突き出し部を支持している。同様にして後方側においても支持部15(図示せず)が最後方の支柱から後方に突き出るように設けられており、樋13の後方の突き出し部を支持している。支持部15には、その突出長さの略半分の位置に前後方向に垂直な面を有するドグ16が取り付けられている。なおドグ16の大きさは例えば15mm×15mmである。
【0024】
栽培棚1は、上述のようなフレーム11、ガイドレール12、樋13、樋受14及び支持部15を含む1組の多段棚を左右方向に並設して構成される。その大きさは例えば、多段棚が夫々、幅(左右方向)が1400mm、高さ(上下方向)が7500mm、奥行き(前後方向)20000mmである。栽培棚1は、このような多段棚を、所定間隔を設けて例えば20組、幅36000mmに亘って並設されて構成される。なお栽培棚1が設置される植物工場の床面は、後方向に向けて僅かな傾斜を有しており、これにより樋13における培養液の流れを促すようにしてあるとよい。
【0025】
そして栽培棚1の各収容部の内部には、光源が設けられている(図示せず)。なお光源は、白色発光ダイオード又は蛍光灯を下方に向けて吊り下げて構成される。
【0026】
次に、このような栽培棚1の各収容部に対して栽培ユニットを移載する移載装置2について説明する。図4は、移載装置2の正面図であり、図5は側面図である。なお図4,5における符号40は、移載装置2により移載される栽培ユニットの矩形状パネル40(植えられている植物は図示せず)を示している。図1及び図4図5を参照して移載装置2について詳細を説明する。
【0027】
移載装置2は、スタッカークレーンを用いて構成される。具体的には、フレーム21、走行レール22、走行ガイド23、走行台24、昇降ガイド25、昇降ベルト26、移載ユニット28、及び配電部29を備える。
【0028】
フレーム21は、栽培棚1の最も手前の支柱と左右方向に並ぶように固定された複数の支柱と、該支柱よりも後方の適正な位置に固定された後方側の支柱と、支柱間を上部で左右方向に連結する横梁と、前後の支柱間を連結する縦梁とで構成される。複数の支柱は、栽培棚1を構成する複数の多段棚間の隙間に夫々位置するように立設されており、横梁は栽培棚1を左右方向に跨ぐようにして設けられている。そしてフレーム21の縦梁は、前方に適長延出している。走行ガイド23及び配電部29はこの縦梁の延出端に架設されている。
【0029】
床面には走行レール22が、走行ガイド23に平行となるようにして敷設されている。走行レール22上には、駆動車輪を介して走行台24が支持されている。走行台24には、直立する2本の昇降ガイド25、昇降ベルト(チェーン)26、及び移載ユニット28が設置されている。2本の昇降ガイド25は走行台24上に固定されていると共に上部で連結されており、該連結部は走行ガイド23にガイド輪を介して支持されている。走行台24は、走行台24に設けられている走行モータの駆動力によって駆動車輪を回転させることにより、走行レール22及び走行ガイド23に案内されて左右方向に移動する。
【0030】
移載ユニット28は、2本の昇降ガイド25間に横架指示され、昇降ベルト26の一端に連結されている。昇降ベルト26は、移載ユニット28から上方に延び、昇降ガイド25の上部で折り返されて走行台24に設置された昇降モータに連結されている。移載ユニット28は昇降モータによって昇降ベルト26が送られることで、昇降ガイド25に案内されて上下方向に移動する。
【0031】
なお配電部29は、走行台24に設置される各構成部への電力及び信号を供給するケーブルを収容している。昇降ガイド25には、移載装置2の各構成部に電力及び信号を供給する各ケーブルが配設されており、走行台24が走行レール22上のいずれの位置にあっても、移載ユニット28がいずれの高さにあっても前記ケーブルが配電部29と接触するように接続機構が設けてある。
【0032】
移載ユニット28にはチャックユニットが固設されており、該チャックユニットが栽培ユニットの矩形状パネル40の前縁を把持した状態で前後に移動する。これにより図5に示すように、栽培ユニットの矩形状パネル40は、後方縁が後方に突出して栽培棚1のガイドレール12へ到達し得る。
【0033】
移載ユニット28の側部であって、チャックユニットの両側に対応する箇所には、レーザセンサ285が取り付けられている。レーザセンサ285は、赤色半導体レーザ及びCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor )センサを有したセンサユニットである。レーザセンサ285は直方体形状の筐体を有して、該筐体の一面に、レーザの出射口及びその反射光を受光するCMOSセンサの受光部が設けられている。レーザセンサ285は、出射させた赤外レーザ光の反射光が受光部にて検出されるまでの時間から距離を測定するタイムオブフライト方式の距離センサである。またレーザセンサ285は、赤外レーザ光を斜めに出射させ、その反射光の受光位置の所定位置からの変位により特定される基準距離からの変化により、距離を計測するセンサであってもよい。レーザセンサ285から出射されるビーム径は約5mmである。
【0034】
レーザセンサ285は、その出射口及び受光部が設けられた一面が後方向を向くようにして取り付けられる。これによりレーザセンサ285は、該一面に対向する面までの前後方向における距離を測定する。
【0035】
このように構成される移載装置2の栽培棚1に対する栽培ユニットの移載制御について説明する。図6は、移載装置2の制御部30の構成を示すブロック図である。移載装置2は走行台24のカバー内部に、制御部30を備えている。制御部30はPLC(Programmable Logic Controller )を用いる。制御部30は記憶部301を備え、走行モータ、昇降モータ、及び移載ユニット28と接続されている。
【0036】
制御部30は走行モータ、昇降モータへ制御信号を出力すると共に、各モータの出力軸に取り付けられているロータリーエンコーダからの出力パルスを入力する。モータに減速機が取り付けられている場合には、ロータリーエンコーダは減速機の出力軸に取り付けられていてもよい。制御部30は、各ロータリーエンコーダからの出力パルス数を計測することによって走行台24の走行レール22上の位置、移載ユニット28の昇降ガイド25上の位置を特定することができる。制御部30は、その位置情報に基づいて走行台24の走行及び移載ユニット28の昇降、即ち栽培ユニットの左右方向及び上下方向における移動を制御する。
【0037】
記憶部301は、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体を用い、制御部30から読み書きが可能である。記憶部301には予め、栽培棚1の各収容部に対して移載ユニット28が停止すべき位置(走行台車の走行停止位置、及び移載ユニット28の昇降停止位置)が記憶されてある。なお走行停止位置及び昇降停止位置は夫々、走行用及び昇降用のモータ夫々に取り付けられたロータリーエンコーダの出力パルス数として記憶されている。制御部30は、走行及び昇降中の夫々の出力パルスを計数し、停止位置として記憶されている出力パルス数に合致した場合に走行及び昇降を停止する。
【0038】
そして制御部30は、レーザセンサ285による計測を指示する信号(起動信号)を出力し、レーザセンサ285から出力される計測結果を示す信号を入力する。
【0039】
このように構成される移載装置2が、図1に示すように栽培棚1の前方及び後方に各1つ、栽培棚1を挟んで対向するようにして設けられ、栽培システム100が構成される。このように構成される栽培システム100では、前方における移載装置2がまず、図示しない他所に載置されている栽培ユニット(図示せず)を移載ユニット28に取り込む。移載装置2は、走行台24を栽培棚1の間口方向(左右方向)に走行させつつ移載ユニット28を昇降させ、栽培棚1の収容部に対応する位置で停止させる。停止位置において移載装置2は、栽培ユニットを前後方向に移動させ、栽培ユニットの矩形状パネル40の両側辺部をガイドレール12上に沿わせるようにして載置する。栽培システム100では、栽培棚1の全収容部に対する栽培ユニットの載置処理を1日に1〜2回行なう。これにより、各収容部に載置された栽培ユニットは、後方へ少しずつ押し込まれ、20〜30日後に最後方に達する。後方側に設けられている移載装置2は同様にして、栽培棚1の全収容部からの栽培ユニットの取出処理を1日に1〜2回行なっている。後方側の移載装置2は、取り出した栽培ユニットを次の工程(例えば収穫)に対応する載置所へ搬送する。
【0040】
上述したように、栽培棚1はフレーム部材を左右方向に20台並設させて構成されており、上下方向に11段の計220個の収容部を有している。このように大規模な構成では、栽培棚1のフレーム11及び移載装置2のフレーム21はいずれも、僅かに傾く可能性があり、また走行レール22のうねりが存在する可能性がある。しかも、上述したように、前後方向に栽培ユニットが少しずつ押し込まれる仕組としているため、経時的に傾斜等が変化する可能性がある。その上更に、栽培ユニットの収容に際しては、栽培ユニットの側辺部をガイドレール12に沿わせる必要があり、移載ユニット28の停止位置に要請される精度は比較的高い。
【0041】
そこで本実施の形態では、上述の移載ユニット28のレーザセンサ285と栽培棚1の支持部15に設けられているドグ16を用い、栽培棚1の各収容部に対応する移載装置1の停止位置が許容範囲にあるか否かを判定する。このレーザセンサ285とドグ16とを用いた許容範囲にあるか否かの判定について、移載装置2の収容部への移動制御と合わせて説明する。図7は、制御部30による処理手順を示すフローチャートである。
【0042】
まず第1に、制御部30は、栽培棚1の収容部から1つ選択する(ステップS1)。収容部の選択は栽培棚1の端から順に選択するとよい。
【0043】
第2に制御部30は、記憶部301のLUTから、選択した収容部に対応する走行停止位置及び昇降停止位置を読み出す(ステップS2)。
【0044】
次に制御部30は、ロータリーエンコーダからの出力パルスを計数しながら移動し(ステップS3)、読み出した位置に対応する出力パルス数にて走行台車の走行、及び移載ユニット28の昇降を停止させる(ステップS4)。
【0045】
停止位置において制御部30は、レーザセンサ285を起動させて距離の計測結果を取得する(ステップS5)。
【0046】
図8は、レーザセンサ285による距離の計測の概要を示す説明図である。図8は、栽培棚1の収容部と該収容部に対して停止した移載ユニット28との位置関係を拡大して示す斜視図である。レーザセンサ285は、移載ユニット28が栽培ユニットを適切にガイドレール12に収める適正位置にあるときに、図8に示すように栽培棚1の支持部15の小さなドグ16へ、出射光が当たるように位置決めされてある。レーザセンサ285とドグ16との距離は所定の距離に設計されており、移載ユニット28が適正位置から許容範囲内にあるときのみにこの所定の距離を測定することができる。
【0047】
上述したように、ドグ16は15mm×15mm、レーザセンサ285から出射されるレーザ光のビーム径は5mmである。図9は、ドグ16とレーザセンサ285からのレーザ光のビーム径との大きさを示す説明図である。図9に示すように、レーザ光がドグ16の範囲内に当たる場合、即ち、左右方向及び上下方向において移載ユニット28の停止位置がプラスマイナス5mmの範囲内にある場合のみ、レーザセンサ285により所定の距離を測定することができるようにしてある。なおプラスマイナス5mmの範囲は、停止位置の許容精度よりも少し小さい。
【0048】
そこで制御部30は、レーザセンサ285から取得した計測結果に基づき、ドグ16を検出できたか否かを判断する(ステップS6)。計測結果が所定の距離である場合のみ、制御部30はドグ16を検出できたと判断し(S6:YES)、制御部30は停止位置が許容範囲内であると判定する(ステップS7)。
【0049】
ドグ16が検出されて停止位置が許容範囲内であると判定された場合、制御部30は、移載ユニット28による栽培ユニットの収容部への移載処理を実行する(ステップS8)。そして制御部30は全収容部に対して処理を行なったか否かを判断する(ステップS9)。
【0050】
ステップS9において全収容部に対しては処理を行なっていないと判断された場合(S9:NO)、制御部30は処理をステップS1へ戻して次の収容部を選択し、選択した収容部に対してステップS2〜S8の処理、即ち走行停止位置及び昇降停止位置の読み出し、移動、停止、計測及び判定、収容処理を行なう。なお、ステップS5〜S7の処理は、全収容部に対して行なう必要はない。例えば制御部30は、走行台24を左右方向において停止させる都度1回、即ち複数段の収容部の内の一箇所のみに対して確認を行なうようにしてもよい。また、栽培棚1の全収容部に対する上述の載置処理を1日に1〜2回行なうので、その回毎、つまり1日に1〜2回、栽培棚1の全収容部の内、任意の一箇所の収容部について制御部30はステップS5〜S7の処理によって確認を行なうようにしてもよい。
【0051】
ステップS9において全収容部に対して処理を行なったと判断された場合(S9:YES)、制御部30は、処理を終了する。
【0052】
なおステップS6にてドグ16を検出できないと判断された場合(S6:NO)、制御部30は、停止位置が許容範囲外であると判定する(ステップS10)。この場合制御部30は、移動及び停止制御にエラーが発生したことを音声若しくは光の出力、電子メール発信等によって管理者へ通知して記録し(ステップS11)、栽培棚1の各収容部への栽培ユニットの移載制御を中止し(ステップS12)、処理を終了する。
【0053】
ステップS10にて許容範囲内でないと判定された収容部に対する停止位置については、別途他の方法によって補正が行なわれるとよい。このような処理手順により、適切にガイドレール12に栽培ユニットを載置できない場所に移載ユニット28が停止したにも拘わらず載置処理を行なって栽培ユニットが不適切な角度でガイドレール12に掛止されたり、栽培ユニットが落下したりする不具合を防止することができる。
【0054】
このように記憶部301に予め記憶されている走行停止位置及び昇降停止位置に基づいて移載ユニット28を停止させた場合に、適正位置に対して許容範囲内であるか否かを各収容部について判定確認することにより、移載ユニット28の移動精度を高めて維持することができる。具体的には、本実施の形態における大規模な栽培棚1に対しても、上述したようなプラスマイナス5mmの範囲の高い移動精度を維持することができる。しかも、前後方向における距離により、ドグ16を検出できるか否かを判断するため、適正位置に対して許容範囲内にあるか否かの確認を、左右方向及び上下方向に対して一度に実行することができる。
【0055】
栽培棚1の後方側に設置されている移載装置2においても、各収容部に対応する停止位置が適正位置から許容範囲内であるか否かの判定を行なう。これにより、栽培ユニットの取出を行なう移載装置2においても移載ユニット28は、栽培ユニットをガイドレール12から精度よく引き出すことができる。
【0056】
なお本発明に係る移載装置は、植物工場における栽培ユニットの移載のみならず、マテリアルハンドリングにおける物品の棚への移載にも適用可能である。
【0057】
なお、上述のように開示された本実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
1 栽培棚
11 フレーム
12 ガイドレール
15 支持部
16 ドグ(被検出体)
2 移載装置
21 フレーム
22 走行レール
23 走行ガイド
24 走行台
25 昇降ガイド
28 移載ユニット
285 レーザセンサ(検出部)
30 制御部(判定部、判断部)
301 記憶部
40 矩形状パネル(栽培ユニット)
図1
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