特許第6385985号(P6385985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6385985食品包装用塗料、およびそれを利用した食品用包装容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6385985
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】食品包装用塗料、およびそれを利用した食品用包装容器
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20180827BHJP
   C09D 103/02 20060101ALI20180827BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20180827BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20180827BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20180827BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20180827BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20180827BHJP
   B65D 25/14 20060101ALI20180827BHJP
   A23L 3/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D103/02
   C09D7/61
   C09D7/65
   C09D7/20
   C09D5/14
   C09D7/63
   B65D25/14
   A23L3/00 101A
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-119298(P2016-119298)
(22)【出願日】2016年6月15日
(65)【公開番号】特開2017-222788(P2017-222788A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2017年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】592181727
【氏名又は名称】小松 秀一
(73)【特許権者】
【識別番号】503380238
【氏名又は名称】小松 和秀
(74)【代理人】
【識別番号】100083437
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 實
(72)【発明者】
【氏名】小 松 秀 一
(72)【発明者】
【氏名】小 松 和 秀
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−086334(JP,A)
【文献】 特開2008−156440(JP,A)
【文献】 特開平09−140363(JP,A)
【文献】 特開2015−013969(JP,A)
【文献】 特開2008−063277(JP,A)
【文献】 特開平09−235490(JP,A)
【文献】 米国特許第05877243(US,A)
【文献】 特開2016−140674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
A23L 3/00
B65D 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノプラチナ粒子と澱粉糖とを混合したナノプラチナ粒子・澱粉糖混合物に、粘料または増粘剤の少なくとも何れか一方の定着剤と、エチルアルコールと水とを、ナノプラチナ粒子・澱粉糖混合物と水とが1:100ないし1:2の重量比、および、粘料または増粘剤の少なくとも何れか一方の定着剤と前記水とが1:100ないし1:2の重量比、エチルアルコールと前記水とが1:100ないし1:2の重量比とするよう混合してなるものとしたことを特徴とする食品包装用塗料。
【請求項2】
ナノプラチナ粒子と、トレハロース(登録商標)またはサイクロデキストリンの少なくとも何れか一方の澱粉糖とを混合したナノプラチナ粒子・澱粉糖混合物に、粘料または増粘剤の少なくとも何れか一方の定着剤と、エチルアルコールと水とを、ナノプラチナ粒子・澱粉糖混合物と水とが1:100ないし1:2の重量比、および、粘料または増粘剤の少なくとも何れか一方の定着剤と前記水とが1:100ないし1:2の重量比、エチルアルコールと前記水とが1:100ないし1:2の重量比とするよう混合してなるものとしたことを特徴とする食品包装用塗料。
【請求項3】
ナノプラチナ粒子と澱粉糖とを適宜割合で混合したナノプラチナ粒子・澱粉糖混合物に、同ナノプラチナ粒子・澱粉糖混合物と水とが1:100ないし1:2の重量比、および、粘料または増粘剤の少なくとも何れか一方の定着剤と前記水とが1:100ないし1:2の重量比、エチルアルコールと前記水とが1:100ないし1:2の重量比、カテキンを添加するものの場合には、カテキンと前記水とが1:100ないし1:2の重量比とするよう混合してなるものとした、請求項1および2何れか一記載の食品包装用塗料。
【請求項4】
定着剤としての粘料が、アルギン酸エステル、アルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸カリウムの少なくとも何れか一つからなるものとした、請求項1ないし3何れか一記載の食品包装用塗料。
【請求項5】
定着剤としての増粘剤が、コンニャク粉、オオバコ、グァーガム、その他の澱粉類の少なくとも1種からなるものとした、請求項1ないし何れか一記載の食品包装用塗料。
【請求項6】
包装対象食品の一部または全部を包装可能な容器本体を有し、該包装対象食品を収容した場合に、同包装対象食品に接触可能に対峙する該容器本体内側壁の一部または全部に、請求項1ないし5何れか一記載の食品包装用塗料を主要成分とする塗料液を膜状に定着した滅菌塗装膜を設けてなるものとしたことを特徴とする食品用包装容器。
【請求項7】
包装対象食品の一部または全部を包装可能であって、一部または全部が透明または半透明の硬質素材製とした容器本体を有し、該包装対象食品を収容した場合に、同包装対象食品に接触可能に対峙する該容器本体内側壁の一部または全部に、請求項1ないし5何れか一記載の食品包装用塗料を主要成分とする水溶塗料液を膜状に定着した滅菌塗装膜を設けてなるものとしたことを特徴とする食品用包装容器。
【請求項8】
包装対象食品の一部または全部を包装可能であって、一部または全部が透明な軟質合成樹脂フィルム製の袋型とした容器本体を有し、該包装対象食品を収容した場合に、同包装対象食品に接触可能に対峙する該容器本体内側壁の一部または全部に、請求項1ないし5何れか一記載の食品包装用塗料を主要成分とする水溶塗料液を膜状に定着した滅菌塗装膜を設けてなるものとしたことを特徴とする食品用包装容器。
【請求項9】
包装対象食品の一部または全部を包装可能な容器本体を有し、該包装対象食品を収容した場合に、同包装対象食品に接触可能に対峙する該容器本体内側壁の一部または全部に、請求項1ないし5何れか一記載の食品包装用塗料を、水で100倍ないし1,000倍に希釈した水溶塗料液を連続膜状に定着した滅菌塗装膜を設けてなるものとしたことを特徴とする食品用包装容器。
【請求項10】
包装対象食品の一部または全部を包装可能な容器本体を有し、該包装対象食品を収容した場合に、同包装対象食品に接触可能に対峙する該容器本体内側壁の一部または全部に、請求項1ないし5何れか一記載の食品包装用塗料を、水で100倍ないし1,000倍に希釈した水溶塗料液を断続膜状に定着した滅菌塗装膜を設けてなるものとしたことを特徴とする食品用包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食品の包装技術に関連するものであり、特に、野菜や果物などの包装および保存に有効な包装用品に利用可能な包装用塗料類や、それを利用した包装用資材類、およびそれらを利用した包装用品類などを製造、提供する分野は勿論のこと、その輸送、保管、組み立ておよび設置に必要となる設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
果物や野菜を生産、輸送および販売する上で、色や形などの外観を高めると共に、できるだけ新鮮なまま顧客に届けることは極めて重要な課題であって、こうした目的のための生鮮食品類のフィルム製包装資材類は、例えば、適所に複数の通気孔を穿孔してエチレンガスの滞留を防止するようにしたものに留まらず、味覚の面でも糖度を高めてより美味しいものを提供しようとする技術の開発が多方面で進められており、例えば、下記の特許文献1(1)に提案されているものに代表されるように、合成樹脂ポリオレフィンに無機抗菌剤を単独もしくは天然物由来の抗菌物質、アロエ、カテキン、ヒノキチオール、孟宗竹から選ばれる一種を組み合せ配合、混入して成るものとした包装容器および包装用材フィルムは、それら包装容器および包装用材フィルムを構成する樹脂層に抗菌剤として無機系抗菌剤と天然物由来の抗菌剤とが単独または組み合せて含有し、従来の無機系抗菌剤を単独で使用する時より抗菌剤を多量に使用しなくても十分な抗菌作用が得られるようにしたものとなっている。
【0003】
このように有効成分を練り込んだ樹脂製包装用フィルムなどの包装用品類は、本願出願人独自の開発努力によって既に実用化の段階となっているが、実際に使用して見ると、その有効成分が混合量の1%程度しか表面に露出しておらず、有効成分の混合割合に比較して果実や野菜の鮮度維持や呈味向上などの効果が薄く、生産コストに見合った効果を得るのが困難であるという課題を残すものとなってしまっており、また、樹脂フィルムメーカーに生産を委託した場合には、大量生産が標準の生産態勢となっていて少量生産が困難となり、小ロット生産食品用の包装用品の製造などには生産コストが嵩み、必ずしも適していないという新たな問題点も抱えており、さらには、透明樹脂フィルムなどに、上述のような添加物を混合すると透明度が低下し、包装した生鮮食品類の品質を目視確認し難くなってしまったり、フィルム強度を低下させて皺や破れなどを生じ易くなってしまうという新たな制約にも対処していかなければならないことから、その活用範囲を拡大していくことがかなり難しいと考えられた。
【0004】
(従来の技術)
こうした理由から、本願出願人は、樹脂フィルムに直接、有効成分を塗布することはできないものかとの着想に至り、様々な思考錯誤を繰り返した末に、下記の特許文献1(2)に示しているポリフェノールとトレハロース(登録商標、以下、全て同様であって表示を省略する。)とを所定重量比で含むポレハ(登録商標、以下、全て同様であって表示を省略する。)を、ポレハと水とが所定重量比、および、アルギン酸ナトリウムを、アルギン酸ナトリウムと前記水とが所定重量比とするよう混合してなる食品包装用塗料を、包装体の少なくとも包装対象食品に接するか、または近接する適宜範囲に亘って薄膜層状に定着した呈味調整皮膜層域を設けてなる食品包装用塗料を利用した食品包装用品を既に開発済みとしており、今後、さらに鮮度維持および長期保存性能を改良したものを提供するため、鋭意技術開発を進めていこうとしている。
【0005】
こうした状況にあって、同種の技術分野を見渡すと、ポリフェノール成分を印刷インキに添加する技術が数多く開発されており、下記の特許文献1(3)に代表するように、顔料3〜70重量%を含む印刷インキ500重量部に対し、ヒノキチオールおよび/またはヒノキチオールの包接化合物を1〜1000重量部配合してなる鮮度保持用印刷インキ、該印刷インキをセロハンまたは合成樹脂フィルム上に印刷してなる青果物の鮮度保持用包装材料、並びに、該包装材料を用いる青果物の鮮度保持方法や、同特許文献1(4)のような、食品の鮮度を保持するための包装紙であって、紙または不織布に、ヒノキチオール若しくはその金属錯体またはそれらの塩を含む水溶液またはアルコール含有率20ないし60%のアルコール溶液を含浸、塗布または印刷した包装紙などが散見される。
【0006】
また、前述のポリフェノール成分以外の抗菌成分を利用した技術について幅広く見渡すと、同特許文献1(5)に示されているもののような、ナノプラチナ((登録商標、以下、全て同様であって表示を省略する)粒子を含む合成樹脂繊維から製造したフィルタネットを利用したエアフィルタ、および、該エアフィルタを備えた空気調和機や、同特許文献1(6)のように、ナノプラチナ水溶液が加えられる給水タンクと、該給水タンクから給水された水の水面に超音波の振動エネルギーを伝え、微細な霧を発生するための圧電振動子と、前記霧を空間に放出するために送風するファンとを備え、前記ナノプラチナ水溶液の白金粒子によるプラチナシールドにより除菌、消臭を行う加湿器、同特許文献1(7)および1(8)に示されるような、白金ナノコロイド(登録商標、以下、全て同様であって表示を省略する)を含有する食品添加剤、食品、および飲料などの製造に関連する技術などが開発されているが、ナノプラチナ粒子を食品包装に利用する技術に関しては未だ存在していないようである。
【0007】
前述の特許文献1(3)に示されているようなポリフェノール成分を印刷インキに添加する技術は、添加する印刷インクとして通常食品包装に使用されている印刷インクを用いているが、通常の包装用印刷は、生鮮食品に直接触れることのないフィルムや容器の外がわに施すのが一般的であり、包装容器の内側に印刷することはなく、したがって、こうした食品包装用の印刷インクにポリフェノール成分を添加する技術を、そのまま食品包装の内側面に施して生鮮食品類に直接触れることは、食品の安全性に不安を残すものとなってしまう虞があり、また、特許文献1(4)に示したものなどは、包装紙や不織布などの基材表面に対し、一般的塗料のように安定に定着可能とする成分を積極的に添加したものとはなっておらず、ヒノキチオール、金属錯体またはそれらの塩を水溶液化、またはアルコール溶液化してなるものであり、抗菌性の溶液を包装紙に長期間にわたって定着させたい場合には、包装紙や不織布がわに、溶液を安定に定着させるための細かな凹凸形状や、粘着剤を塗布するなどの前処理が必要となり、こうした定着技術を併用しなければ、より長期間の鮮度保持を実現化するのが困難であるという欠点があった。
【0008】
そして、こうした抗菌・脱臭成分の包装フィルムへの定着技術に加え、特許文献1(5)ないし特許文献1(8)に、空気の抗菌・脱臭成分や、人体の体内や肌の活性酸素を除去する成分などとして利用されているナノプラチナ粒子を、食品包装用フィルムや食品包装用容器などに、より安定するよう定着する技術については未だ開発されていない。
【特許文献1】(1)特開2003−93011号公報 (2)特開2015−86334号公報 (3)特開平6−16990号公報 (4)特開2009−29491号公報 (5)特開2011−94828号公報 (6)特開2016−40508号公報 (7)再表2009/125847号公報 (8)再表2005/023467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
(問題意識)
上述したとおり、従前までに提案のある各種抗菌・脱臭成分などを印刷インキに添加する技術は、印刷インキの食品安全性を確保しなければ、包装フィルムの食品類に直接接触する面に定着させて使用するのが困難なものであり、また、定着性の弱い抗菌性の溶液を塗布した包装紙類などは、さらに、長期間に渡る鮮度保持を実現化するのが難しいという問題を抱えており、また、ナノプラチナ粒子を利用した印刷インキ、およびそれを利用した食品包装用フィルムや食品包装用容器などは未だ存在していないという現状に着目した本願発明者兼出願人は、これまで開発済みとしてきた食品包装用塗料における抗菌成分について、さらに、長期間に渡って滅菌効果が得られる成分を探し求めると共に、塗装や印刷に際し、より安定した定着性能が得られ、しかも食品に直接接触しても高い安全性を確保できる粘料や、増粘剤などの利用を模索し、それらの成分を様々な組み合わせで試作し、実験を繰り返す中に、食品安全性を確保しつつ、一段と長期間に渡って食品の鮮度を維持可能とする食品包装用塗料、および、それを利用した食品用包装容器を実現可能とするための構成につき、更なる改善の必要性を痛感するに至ったものである。
【0010】
(発明の目的)
そこで、この発明は、抗菌、防黴、防臭などの性能を格段に高め、しかもその有効期間を大幅に延長し、食品類の鮮度を保持する性能を一段と高めることができる新たな食品用包装技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造の食品包装用塗料、およびそれを利用した新規な構造の食品用包装容器を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の食品包装用塗料は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、ナノプラチナ粒子と澱粉糖とを混合したナノプラチナ粒子・澱粉糖混合物に、粘料または増粘剤の少なくとも何れか一方の定着剤と、エチルアルコールと水とを、ナノプラチナ粒子・澱粉糖混合物と水とが1:100ないし1:2の重量比、および、粘料または増粘剤の少なくとも何れか一方の定着剤と前記水とが1:100ないし1:2の重量比、エチルアルコールと前記水とが1:100ないし1:2の重量比とするよう混合してなるものとした構成を要旨とする食品包装用塗料である。
【0012】
この基本的な構成からなる食品包装用塗料は、その表現を変えて示すならば、ナノプラチナ粒子と、トレハロース(登録商標)またはサイクロデキストリンの少なくとも何れか一方の澱粉糖とを混合したナノプラチナ粒子・澱粉糖混合物に、粘料または増粘剤の少なくとも何れか一方の定着剤と、エチルアルコールと水とを、ナノプラチナ粒子・澱粉糖混合物と水とが1:100ないし1:2の重量比、および、粘料または増粘剤の少なくとも何れか一方の定着剤と前記水とが1:100ないし1:2の重量比、エチルアルコールと前記水とが1:100ないし1:2の重量比とするよう混合してなるものとした構成からなる食品包装用塗料となる。
【0013】
(関連する発明)
前記した食品包装用塗料に関連し、この発明には、それを利用した食品用包装容器も包含している。
即ち、包装対象食品の一部または全部を包装可能な容器本体を有し、該包装対象食品を収容した場合に、同包装対象食品に接触可能に対峙する該容器本体内側壁の一部または全部に、この発明の基本をなす前記何れか記載の食品包装用塗料を主要成分とする塗料液を膜状に定着した滅菌塗装膜を設けてなるものとした構成を要旨とする食品用包装容器である。
【発明の効果】
【0014】
以上のとおり、この発明の食品包装用塗料によれば、従前までのものとは違い、前記したとおりの固有の特徴ある構成から、当該ナノプラチナ粒子・澱粉糖混合物による格段に秀でた滅菌効果を長期におよび発揮できるものとなり、収穫後の果実や野菜などの生鮮食品類を、その外的美観や輸送性、陳列性などが高まるよう包装すると共に、包装後の果実や野菜など包装対象物の酸化傷害を防ぐ上、糖度を向上させて収穫後に品質を高めることができる新たな包装技術を提供することができ、特に、ナノプラチナ粒子・澱粉糖混合物を水と混合することにより、給水性や吸湿性、適度な表面粗さや凹凸などを有するような様々な物品などに対し、各種印刷技術やスタンプ技術、吹き付け塗装技術、刷毛塗り塗装技術などを利用して印刷または塗装することができ、しかも当該ナノプラチナ粒子・澱粉糖混合物に定着剤を添加したから、当該食品包装用塗料を主要成分とする水溶塗料液を、食品用包装容器の容器本体内側壁に膜状に確りと定着させることができ、従来品に比較し、生鮮食料品の鮮度をより長期間維持するでき、保存期間中に渡って格段に秀でた防黴、防菌、防臭、鮮度保持効果を達成させることになるという大きな特徴が得られる。
【0015】
加えて、アルギン酸エステル、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸カリウムの少なくとも何れか一つからなる粘料、および、コンニャク粉、オオバコ、グァーガム、その他の澱粉類の少なくとも1種からなる増粘剤の少なくとも何れか一つの定着剤を含有するものとしたから、従前までであれば、合成樹脂製フィルムなどのように表面が平滑で柔軟性を有する物品に印刷した場合、乾燥後に印刷層が剥離・脱落してしまうという難点を有していたものが、それらを大幅に改善して格段に秀でた定着安定性を得ることができる上に、調湿機能や保湿機能をも付加することができ、従前までであれば得られなかった鮮度維持機能、糖度調整機能および呈味向上などといった機能が格段に秀でてなる印刷物や塗装品などを、より巾広く提供できるようになるという新たな効果を奏するものとなる。
【0016】
加えて、一部または全部が透明または半透明の硬質素材製とした容器本体を有するもの、および、一部または全部が透明な軟質合成樹脂フィルム製の袋型とした容器本体を有するものなど、様々な当該食品包装用塗料成分を含む滅菌塗装膜を安定して定着させたものとすることができるから、多種多様の食品用包装容器に採用することができるものとなり、しかも食品包装用塗料を、水で100倍ないし1,000倍に希釈した水溶塗料液を連続膜状に定着した滅菌塗装膜を設けてなるものとすることにより、容器本体内側壁をより確実に滅菌すると共に、長期的な鮮度維持効果を一段と確実に達成するものとなり、また、同水溶塗料液を断続膜状に定着した滅菌塗装膜を設けてなるものは、連続膜状に定着した滅菌塗装膜に比較して、容器本体内側壁からの大規模な剥離を、より確実に防止できるものとなってその定着力を格段に向上できる上、断続膜の形状が、半透明の模様状に表示されるものとなって、滅菌塗装膜の存在をより鮮明に視覚化することができるから、食品用包装容器の有効成分の存在を宣伝、アピールする効果を得るものとなり、外観的美観を高めて、誰もが一目で確認することができるから、誤使用を確実に防止し、確認作業を簡単にして生産効率を格段に高めることができるだけでなく、利用者および消費者がその効果を円滑に理解することができるものとなる上、市場における当該食品用包装容器類、およびそれを利用した包装食品の付加価値を高めると共に、断続膜状に散在する滅菌塗装膜間に、容器本体の透明部分が残るから覗き窓となって、容器本体内の包装対象食品の品質を簡単、確実に目視確認することができるという利便性を兼ね備えたものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
ナノプラチナ粒子・澱粉糖混合物は、抗菌性を有して包装対象食品の防黴、防菌、防臭、酸化防止、鮮度保持、および、抗菌性を有して包装対象食品の保存性を高めると共に、包装対象食品の糖度を調整して呈味を向上する機能を担い、下記ナノプラチナ粒子および澱粉糖を適宜割合に混合してなるものとしなければならない。
【0018】
ナノプラチナ粒子は、包装対象食品の食品安全性を確保しつつ、抗菌性を有して包装対象食品の防黴、防菌、防臭、酸化防止、鮮度保持の機能を担うものであり、高純度の白金を微粒子化してなるものであり、プラチナをナノメートル(10億分の1メートル)サイズの超微粒子としたプラチナ微粒子とすべきであり、例えば1ないし20ナノメートルのプラチナ微粒子とすることができ、表現を変えて示すならば、白金ナノコロイドやプラチナナノコロイドに置き換えることが可能であり、後述する実施例にも示すが、株式会社エブリウエアー製のものとするのが望ましい。
【0019】
澱粉糖は、抗菌性を有して包装対象食品の保存性を高め、包装対象食品の糖度を調整して呈味を向上可能とする機能を担い、澱粉由来の天然糖質成分としなければならず、例えば、後述する実施例にも示しているように、トレハロースまたはサイクロデキストリンの少なくとも何れか一方とするのが望ましく、トレハロースは、抗菌性を有して包装対象食品の保存性を高めると共に、包装対象食品の糖度を調整して呈味を向上する機能を担い、2つのα−グルコースが1,1−グリコシド結合してできた二糖の一種であるということができ、澱粉から大量生産可能な株式会社林原製のものを利用するのが望ましく、3種類の異性体、α,α体、α,β体およびβ,β体の何れであってもよい。
【0020】
定着剤としての粘料または増粘剤は、この発明の食品包装用塗料が包装対象食品に接触または近接した場合においても、食品としての安全性を確保可能なものとする上、この発明の食品包装用塗料を対象容器本体に対し、より安定に定着可能とする機能を担っており、誤って食品と共に飲食してしまった場合にも充分な安全性を確保可能な素材製のものとしなければならず、例えば、粘料は、後述する実施例にも示すように、アルギン酸エステル、アルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸カリウムの少なくとも1つとすることができ、特に、アルギン酸エステルとすることにより、より強い定着力を安定して得られるものとすることができ、また、増粘剤は、コンニャク粉、オオバコ、グァーガム、その他の澱粉類などの中の何れか1種か、または、それら何れかの組み合わせなどからなるものとすることが可能である。
【0021】
水は、この発明の食品包装用塗料を塗装や印刷などに適した濃度の水溶液とする機能を担い、食品としての安全を確保可能な程度に充分な品質および衛生を確保したものとしなければならず、例えば飲料用となる上水道水や、それに準ずる衛生管理を行うか、それ以上の水質を確保し、食品としても安全な水としなければならない。
【0022】
この発明の食品包装用塗料は、様々な個体形状を呈する物体に対して印刷、塗装、塗布などの工程を経て付着、定着可能となり、包装対象食品に対して、所望の保存効果を達成可能とする機能を担うものであり、フィルム素材、合成樹脂素材、金属素材、非金属素材、複合素材、電子部品、自動車関連、木素材、石材、建材、その他、様々な塗装、印刷などの用途に使用可能なものとすることができる外、全ての成分を食品に制限し、衛生管理を徹底したものとすれば食品や、薬品に対して直接印刷や塗装を行うことができるものとすることができ、ナノプラチナ粒子に、澱粉糖を混合したナノプラチナ粒子・澱粉糖混合物に、粘料または増粘剤の少なくとも何れか一方の定着剤と、水とエチルアルコールとを適量ずつ混合してなるものとしなければならず、ナノプラチナ粒子と、トレハロース(登録商標)またはサイクロデキストリンの少なくとも何れか一方の澱粉糖とを混合したナノプラチナ粒子・澱粉糖混合物に、粘料または増粘剤の少なくとも何れか一方の定着剤と、水とエチルアルコールとを適量ずつ混合してなるものとすることが可能である。
【0023】
この発明の食品包装用塗料におけるナノプラチナ粒子濃度は、0.1ppmないし1,000ppmとすることが可能であり、より経済的且つ効果的な抗菌、消臭、抗酸化などの作用を得ようとするならば、最終的な塗装利用段階において、様々な溶液によって希釈する場合にあっても0.01ppmないし250ppm、望ましくは0.25ppmないし20ppmとするのが良い。
【0024】
この発明の食品用包装容器の容器本体は、包装対象食品の一部または全部を包装可能とする機能を担っていて、包装用紙、包装用フィルム、包装用箱、包装用トレー、包装容器、包装袋などといった様々なものとすることができ、未加工または半加工シート状の包装素材体を加工したり、組み立てたりしてなるものということができ、より具体的には、樹脂フィルム、不織布、ヒートロン(登録商標)、和紙、スパンボンド(登録商標)、ロール和紙、段ボール、板紙、紙トレー、OP・PETトレー容器、発泡スチロール容器、食品容器、容器部品、スペーサー、緩衝材などとすることができ、防雲OPP、OPP、片面ヒートシールタイプOP、両面ヒートシールタイプOPなどの樹脂フィルム、バリアNY、バリアPET、PET、AL、CPP、PP、PE、ラミネートフィルム、強化ポリなどのフィルム、または、それらの多層フィルム、ウレタン、スポンジなどのフルーツキャップ(商品名:緩衝材)、その他、様々な包装用品の本体部分であるということができ、また、食品以外の包装用品や、一般には包装用に頻繁には利用しない素材体や、全く包装用に利用されない素材体なども利用可能であって、例えるならば、布、木材、金属、皮革、ゴム、ゲル、石、貝殻、植物の葉、植物繊維、天然繊維、合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、その他のあらゆる素材体とすることができ、さらに、表現を変えると、容器本体の完成前段階の未加工または半加工の素材体であるということができ、フィルム、シート、テープ、紐、リボン、袋、箱、トレー、カップ、バケツ、ポット、蓋、その他の各種性状の素材体とすることが可能である。
【0025】
この発明の食品用包装容器を製造する技術分野で使用する印刷機は、様々な包装対象食品の一部または全部を包装可能な包装用資材および容器本体の適宜範囲に印刷可能とするものであり、具体的には、グラビア印刷機、オフセット枚葉印刷機、オフセット輪転印刷機、フレキソ印刷機、活版印刷機、スクリーン印刷機、シール印刷機、デジタル印刷機、オンデマンド印刷機、各種プリンター、その他、目的と利便性および利用可能性に応じて適宜、印刷機を選択して利用することが可能となり、刷毛塗り機能やスタンプ機能、吹き付け塗装機能などを有する様々な塗装機械や工業用ロボットなどに置き換えることができるという利便性を兼備する。
【0026】
包装対象食品は、食品用包装容器によって包装した生鮮食品全般ということができ、より具体的には、野菜、根菜、果物、穀物、それらやその他の加工食品類ということができ、より具体的には、例えば、茄子、トマト、苺、ネギ、小松菜、ほうれん草、ブロッコリー、モロヘイヤ、アスパラガス、枝豆、その他殆ど全ての野菜、ゴボウ、ジャガイモ、長いも、その他殆ど全ての根菜、サクランボ、ラ・フランス、和梨、バナナ、林檎、桃、葡萄、その他、殆ど全ての果物、玄米、白米、麦、大豆、小豆、その他の穀類、肉、魚介類、および、カット野菜、カット果物、サラダ、惣菜、オードブル、弁当、サンドイッチ、調理パン、菓子、その他、殆ど全ての加工食品や調理食品、お茶、コーヒーなどの原料および加工食品類などということができ、さらにまた、食品以外の、鮮度を保持する必要のある有機物や薬品類、酸化や劣化の防止を要する無機物など様々な物品に置き換えて、それら全てを包装の対象物とすることができる。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする
【図面の簡単な説明】
【0027】
図面は、この発明の食品包装用塗料、およびそれを利用した食品用包装容器の技術的思想を具現化した代表的な幾つかの実施例を示すものである。
図1】食品包装用塗料の製造工程および素材構成を示すブロック図である。
図2】食品包装用塗料の吹き付け塗装工程を示す斜視図である。
図3】食品包装用塗料の印刷工程を示す正面図である。
図4】この発明の食品用包装容器を示す三面図である。
図5】この発明の食品用包装容器を示す斜視図である。
図6】食品用包装容器の他の例を示す正面図および平面図である。
【実施例1】
【0028】
図1に示す事例は、ナノプラチナ粒子2と、トレハロース(登録商標)またはサイクロデキストリンの少なくとも何れか一方の澱粉糖3とを混合したナノプラチナ粒子・澱粉糖混合物Pに、粘料40または増粘剤41の少なくとも何れか一方の定着剤4と、水5と、エチルアルコール7とを適量ずつ混合してなるものとした、この発明の食品包装用塗料1における代表的な一実施例を示してある。
【0029】
図1からも明確なように、この発明の食品包装用塗料1は、高純度の白金を、例えば1ないし10ナノメートルの超微細粒子に加工し、コロイド膜を剥がしたものであり、食品添加物として認可されているナノプラチナ粒子2(株式会社エブリウエアー製)と、トレハロース(登録商標)またはサイクロデキストリンの少なくとも何れか一方の澱粉糖3とを適宜割合で混合したナノプラチナ粒子・澱粉糖混合物Pとし、同ナノプラチナ粒子・澱粉糖混合物Pと水5とが、1:100ないし1:2の重量比、および、アルギン酸エステル、アルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸カリウムの少なくとも何れか一つからなるものとした粘料40、または、コンニャク粉、オオバコ、グァーガム、その他の澱粉類の少なくとも1種からなるものとした増粘剤41の少なくとも何れか一方の定着剤4と前記水5とが、1:100ないし1:2の重量比、エチルアルコール7と前記水5とが、1:100ないし1:2の重量比、カテキン6を添加するものの場合には、カテキン6と前記水5とが、1:100ないし1:2の重量比とするよう混合してなるものであり、当該食品包装用塗料1の、ナノプラチナ粒子2濃度は、例えば10ppmないし1,000ppmに設定したものとすることができる。
【0030】
(実施例1の作用・効果)
以上のとおりの構成からなるこの発明の食品包装用塗料1は、図2ないし図6に示すように、包装対象食品の一部または全部を包装可能な容器本体80を有し、該包装対象食品を収容した場合に、同包装対象食品に接触可能に対峙する該容器本体80内側壁81の一部または全部に滅菌塗装膜11を設けてなる、この発明の食品用包装容器8の製造に用いることが可能である。
以下に、この発明の食品用包装容器8の製造工程および包装利用過程を示しながら、当該食品用包装容器8の構造について明示して行くこととする。
【0031】
図2に示すように、一部または全部が透明または半透明の硬質合成樹脂製の容器本体80を有し、包装対象食品(図示せず)を収容した場合に、同包装対象食品に接触可能に対峙する該容器本体80内側壁81の一部または全部に、当該食品包装用塗料1を、水5で100倍ないし1,000倍に希釈し、ナノプラチナ粒子2濃度を0.001ppmないし20ppm、望ましくは0.25ppmないし10ppmとした水溶塗料液10を吹き付け塗装し、連続膜状に定着した滅菌塗装膜11を設けてなるものとした食品用包装容器8を製造することが可能である。
【0032】
また、図3ないし図5に示すように、一部または全部が透明な軟質合成樹脂フィルム製の袋型の食品用包装容器8容器本体80の素材となる包装用フィルム84は、包装対象食品に接触可能に対峙する該容器本体80内側壁81となる面の一部または全部に対し、当該食品包装用塗料1を、水5で100倍ないし1,000倍に希釈し、ナノプラチナ粒子2濃度を0.001ppmないし20ppm、望ましくは0.25ppmないし10ppmとした水溶塗料液10を、グラビア印刷機9により、破線形の断続膜状に定着した滅菌塗装膜11とするよう印刷したものとした上、三方シール自動製袋機(図示せず)に、該包装用フィルム84を供給し、図4および図5に示すように、表面の内側壁81に滅菌塗装膜11が、上下適宜間隔を隔てた複数本の破線状に配するよう製袋してなり、図4中の側面図の背面内側壁83に破線縞で示す範囲のみに滅菌塗装膜11を設けたものとすることができる外、該背面内側壁83に加えて、同図4中の側面図の前面内側壁82にも、細い一点鎖線縞で示す範囲に同じ滅菌塗装膜11を設けたものとすることが可能であり、下端有底、且つ上部適所に持ち手孔付きの食品用包装容器8としての三方シール袋8や、図6に示すような、上端寄り適所にチャックシール85付きとした食品用包装容器8としての三方シール袋8を製造することが可能である。
【0033】
当該水溶塗料液10のナノプラチナ粒子2濃度を、例えば0.5ppmに設定した場合には、ナノプラチナ粒子2の過剰な使用を抑制し、この発明の食品包装用塗料1を、より経済的に生産することが可能となる上、格段に優れた消臭、除菌、抗菌、抗酸化作用など幅広い効果を得ることができるものとなる。
【0034】
ナノプラチナ粒子2の食品用包装容器8への利用によって得られると予想される、包装対象食品の保存性能向上および食品の呈味改善などの様々な効果については現在鋭意試験中であり、現時点においては、白金ナノ粒子を含む純水ミストの吸引による生体への影響を評価した試験結果のみ示すことができる。
【0035】
白金ナノ粒子を含んだ純水のナノミストを下記の条件下にて、ddyマウスに吸引させ、エーテル深麻酔下、血液を採取し、腎臓機能の指標である血漿中クレアチニン濃度、肝臓機能の指標である血漿中ALT活性を測定し、腎臓、肝臓に対する急性毒性を評価し、さらに、エーテル深麻酔下における放血による安楽死後、肺を摘出し、組織標本を作製することにより肺に対する急性毒性を病理学的に評価し、表1および表2に示すような結果を得た。
【0036】
【表1】
【表2】
【0037】
試験条件
・測定環境 室温25.5℃ 湿度43%(容器初期環境)
・ミスト発生装置 白金ナノ粒子を含むナノミスト発生装置
・運転時間 30,60日間:連続運転
・ミスト発生量 0.5ml/hour ミストユニット×3連タイプ=1.5ml/hour
・白金ナノ粒子濃度 100μg/m・(100ppm)
・白金溶媒 超純水
・白金ナノ粒子径 1〜50nm
試験設備
・アクリル製容器 500×500×500mm
・ミスト発生装置 ナノミスト発生装置
・白金ナノ粒子濃度を100μg/m・に調整したナノ粒子水
【0038】
試験要領
白金ナノ粒子を含んだ純水をタンクに充填させたナノミスト発生装置を、アクリル製容器内に対して白金ナノ粒子水をナノミストとして供給するよう接続し、該アクリル製容器内にマウスを搬入した上、該アクリル製容器内に白金ナノ粒子水のナノミストを放出するよう、該ナノミスト発生装置を連続運転した。

・血漿中クレアチニン濃度は、クレアチニンテストワコー(Wako)を用いて測定してある。
・血漿中ALT活性は、トランスアミナーゼテストワコー(Wako)を用いて測定してある。
【0039】
表1に示すように、未処理群と白金ナノ粒子ナノミスト群との間に有意差は認められず、腎臓に対する急性毒性はないものと考えられ、また、表2に示すように、未処理群と白金ナノ粒子ナノミスト群との間に有意差は認められないことから、肝臓に対する急性毒性はないものと考えられという結論を得た。
【0040】
さらに、肺組織標本の病理組織ガク的検査により、肺急性毒性を検証した結果、未処理マウス、白金ナノ粒子ナノミスト・マウス共に、気管支、細気管支、肺胞、血管などに全く異常を認めず、肺組織に対する急性毒性はないものと考えられる。
【0041】
表3および表4に示すように、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析計)による臓器内白金量分析の結果を見ると、マウスによっては、肺において微量の白金粒子が検出された。
このような試験結果によると、白金ナノ粒子のミストによる吸引は、肺、腎臓、肝臓における急性毒性は認められず、また、試験期間中のマウスの体重変化についても、未処理群および白金ナノ粒子ミスト群の両群に有意差は見られず、また、白金ナノ粒子ミスト吸引による体内動態試験では、肺にナノレベルの微量な白金が検出されたが、肺に対する急性毒性を示す結果は求められていないから、生体への安全性に問題は無いと考えられる。また、肺への蓄積性および慢性毒性については、さらに長期的に試験を継続しなければ判断することができないが、食品添加物としての認可を受けたナノプラチナ粒子であり、容易にイオン化せず化学的に安定しているから、生体への悪影響は極めて低いものと考えられる。
【0042】
【表3】
【表4】
【0043】
(結 び)
叙述の如く、この発明の食品包装用塗料、およびそれを利用した食品用包装容器は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からの包装技術に比較して、防黴、防菌、防臭、酸化防止性能を格段に高め、生鮮食品などの鮮度維持期間を大幅に長期化することができる上、効率的且つ低廉に生産および提供可能なものとし、遥かに経済的なものとすることができるから、鮮度および品質管理を重視する農産物生産者、食品流通業界および食品販売業界はもとより、これまで店頭に陳列されている間に鮮度が低下してしまい、購入後、短期間の中に消費しなければ、新鮮な食品を味わうことができなかった消費者においても、格段の長期保存と、外観向上および呈味改善とを達成できる高機能が高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
【符号の説明】
【0044】
1 食品包装用塗料
10 同 塗料液
11 同 滅菌塗装膜
P ナノプラチナ粒子・澱粉糖混合物
2 ナノプラチナ粒子
3 澱粉糖
4 定着剤
40 同 粘料
41 同 増粘剤
5 水
6 カテキン
7 エチルアルコール
8 食品用包装容器
80 同 容器本体
81 同 内側壁
82 同 前面内側壁
83 同 背面内側壁
84 同 包装用フィルム
85 同 チャックシール
9 グラビア印刷機

図1
図2
図3
図4
図5
図6