(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車には、トランスミッション(変速機)とデファレンシャルギヤ(差動装置)とを一体化したユニット、いわゆるトランスアクスルが多く採用されている。
【0003】
トランスミッションの一種として、ベルト式の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)が知られている。このベルト式の無段変速機をデファレンシャルギヤと一体化した構成のトランスアクスルでは、ユニットケース内に、エンジンなどの駆動源から動力がトルクコンバータを介して入力されるインプット軸と、インプット軸から動力が伝達されるプライマリ軸と、プライマリ軸と平行に設けられたセカンダリ軸と、プライマリ軸に相対回転不能に支持されたプライマリプーリと、セカンダリ軸に相対回転不能に支持されたセカンダリプーリと、プライマリプーリとセカンダリプーリとに巻き掛けられたベルトと、セカンダリ軸から動力が伝達されるアウトプット軸と、アウトプット軸の動力を左右の駆動輪に分配するデファレンシャルギヤとが収容されている。
【0004】
図5は、従来のユニットケース101を前後方向に沿った切断面で切断した断面を左側から見た断面図である。
【0005】
ユニットケース101では、インプット軸が挿通されるインプット軸挿通孔102の前上側の位置に、プライマリ軸が挿通されるプライマリ軸挿通孔103が形成されている。また、インプット軸挿通孔102の後上側かつプライマリ軸挿通孔103の後側の位置に、セカンダリ軸が挿通されるセカンダリ軸挿通孔104が形成されている。さらに、インプット軸挿通孔102の後下側かつセカンダリ軸挿通孔104の後下側の位置に、デファレンシャルギヤが収容されるデフ収容部105が形成されている。インプット軸挿通孔102の前下側かつデフ収容部105の前下側には、ユニットケース内の各部にオイルを供給するための油圧回路が形成されたバルブボディ106が配置されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
エンジンコンパートメントの前後長の短縮による車室長の拡大のため、トランスアクスルの前後長を短縮したいという要望がある。
【0008】
トランスアクスルの前後長を短縮するために、たとえば、ユニットケース101におけるデフ収容部105の位置を前下側に移動させることが考えられる。しかしながら、デフ収容部105の前下側にバルブボディ106が配置されているので、デフ収容部105を前下側に移動させるには、バルブボディ106を前側に移動させなければならず、トランスアクスルの前後長をさほど短縮することができない。
【0009】
本発明の目的は、前後長の短縮を図ることができる、トランスアクスルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、本発明に係るトランスアクスルは、駆動源から動力がトルクコンバータを介して入力されるインプット軸と、インプット軸から動力が伝達され、プライマリプーリを支持するプライマリ軸と、プライマリ軸と平行に設けられ、セカンダリプーリを支持するセカンダリ軸と、プライマリプーリとセカンダリプーリとに巻き掛けられたベルトと、セカンダリ軸と一体または別体で同一の軸線上に配置され、セカンダリ軸から動力が伝達されるアウトプット軸と、アウトプット軸の動力を左右の駆動輪に分配する差動装置と、インプット軸またはアウトプット軸上に設けられ、アウトプット軸の回転方向を前進方向とその逆方向の後進方向とに切り替える前後進切替機構と、インプット軸に対してトルクコンバータ側と反対側に配置され、駆動源からの動力で駆動されるオイルポンプと、オイルポンプの発生油圧が供給されるバルブボディとを含む。
【0011】
この構成によれば、駆動源からトルクコンバータを介してインプット軸に入力される動力は、プライマリ軸に伝達され、プライマリ軸からプライマリプーリ、ベルトおよびセカンダリプーリを介してセカンダリ軸に伝達される。セカンダリ軸の動力は、アウトプット軸を介して差動装置に伝達され、差動装置から左右の駆動輪に伝達される。
【0012】
インプット軸またはアウトプット軸上には、アウトプット軸の回転方向を前進方向とその逆方向の後進方向とに切り替える前後進切替機構が設けられている。そのため、インプット軸の回転を逆転させてプライマリ軸に伝達するためのリバースアイドラ軸を設ける必要がない。
【0013】
また、オイルポンプは、インプット軸に対してトルクコンバータと反対側に配置されている。
【0014】
たとえば、
図6に示されるユニットケース111では、インプット軸が挿通されるインプット軸挿通孔112の後上側の位置に、プライマリ軸が挿通されるプライマリ軸挿通孔113が形成されている。インプット軸挿通孔112の後側かつプライマリ軸挿通孔113の後下側の位置には、セカンダリ軸が挿通されるセカンダリ軸挿通孔114が形成されている。また、インプット軸挿通孔112の後下側かつセカンダリ軸挿通孔114の下側の位置には、デファレンシャルギヤを収容するデフ収容部115が形成されている。さらに、ユニットケース111では、インプット軸挿通孔112の前上側かつプライマリ軸挿通孔113の前下側の位置に、リバースアイドラ軸が挿通されるリバースアイドラ軸挿通孔116が形成され、インプット軸挿通孔112の前下側かつリバースアイドラ軸挿通孔116の下側の位置に、オイルポンプ117が配置されている。そして、デフ収容部115の前側かつオイルポンプ117の下側の位置には、オイルポンプ117の発生油圧が供給されるバルブボディ118が配置されている。
【0015】
デフ収容部115の前側にバルブボディ118が配置されているため、ユニットケース111を採用するトランスアクスルでは、デフ収容部115の位置を前側に移動させることによる前後長の短縮は困難である。すなわち、デフ収容部115の位置を前側に移動させるためには、バルブボディ118を前側に移動させる必要があり、バルブボディ118を前側に移動させると、バルブボディ118が前側に迫り出し、結局はトランスアクスルの前後長を短縮することができない。バルブボディ118の階層を増加して、バルブボディ118の平面サイズを縮小すれば、バルブボディ118が前側に迫り出すことを抑制できるが、トランスアクスルの上下長が大きくなり、トランスアクスルが搭載される車両の最低地上高が低くなる懸念がある。
【0016】
本発明に係るトランスアクスルでは、リバースアイドラ軸を設ける必要がなく、オイルポンプがインプット軸に対してトルクコンバータと反対側に配置されている。そのため、本発明を
図6に示される構成に適用した場合、リバースアイドラ軸挿通孔116およびオイルポンプ117が配置されている位置に、バルブボディ118を上下方向に延びる縦置きに配置して、デフ収容部115を前側に移動させることができる。その結果、トランスアクスルの前後長を短縮することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、トランスアクスルの前後長を短縮することができる。そのため、トランスアクスルが配設されるエンジンコンパートメントの前後長を短縮することができ、車室長を拡大することができる。その結果、車両の居住性およびスペースユーティリティを向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0020】
<トランスアクスル>
図1は、本発明の一実施形態に係るトランスアクスル1の構成を示す断面図である。なお、
図1では、断面を表すハッチングの付与が省略されている。
【0021】
トランスアクスル1は、車両に搭載されて、エンジン(図示せず)が発生するトルクを変速して駆動輪(図示せず)に伝達する変速ユニットであり、トルクコンバータ2、動力分割式無段変速機3およびデファレンシャルギヤ4を含む。トルクコンバータ2、動力分割式無段変速機3およびデファレンシャルギヤ4は、トランスアクスル1の外殻をなすユニットケース5内に収容されている。
【0022】
<トルクコンバータ>
トルクコンバータ2は、フロントカバー11、ポンプインペラ12、タービンハブ13、タービンランナ14、ロックアップ機構15およびステータ16を備えている。
【0023】
フロントカバー11は、回転軸線を中心に略円板状に延び、その外周端部が動力分割式無段変速機3側に屈曲した形状をなしている。フロントカバー11の中心部は、エンジン側に膨出している。この膨出した部分には、エンジンの発生トルク(エンジントルク)が入力される。
【0024】
ポンプインペラ12は、フロントカバー11の動力分割式無段変速機3側に配置されている。ポンプインペラ12の外周端部は、フロントカバー11の外周端部に接続され、回転軸線を中心にフロントカバー11と一体回転可能に設けられている。ポンプインペラ12の内面には、複数のブレード17が放射状に並べて配置されている。
【0025】
タービンハブ13は、フロントカバー11とポンプインペラ12との間に配置されている。
【0026】
タービンランナ14は、タービンハブ13に固定されている。タービンランナ14のポンプインペラ12との対向面には、複数のブレード18が放射状に並べて配置されている。
【0027】
ロックアップ機構15は、ロックアップピストン21およびダンパ機構22を備えている。
【0028】
ロックアップピストン21は、略円環板状をなし、その内周端部がタービンハブ13に外嵌されて、フロントカバー11とタービンランナ14との間に位置している。ロックアップピストン21に対してタービンランナ14側の係合側油室23の油圧がフロントカバー11側の解放側油室24の油圧よりも高いと、その差圧により、ロックアップピストン21がフロントカバー11側に移動する。そして、ロックアップピストン21がフロントカバー11に押し付けられると、ポンプインペラ12とタービンランナ14とが直結(ロックアップオン)される。逆に、解放側油室24の油圧が係合側油室23の油圧よりも高いと、その差圧により、ロックアップピストン21がタービンランナ14側に移動する。ロックアップピストン21がフロントカバー11から離間した状態では、ポンプインペラ12とタービンランナ14との直結が解除(ロックアップオフ)される。
【0029】
ダンパ機構22は、ポンプインペラ12とタービンランナ14との直結時にエンジンからの振動を減衰するための機構である。具体的には、ダンパ機構22は、ロックアップピストン21に支持されるリテーニングプレート25と、リテーニングプレート25に支持されるスプリング26と、スプリング26を介して回転方向にリテーニングプレート25と弾性的に連結されるドリブンプレート27と、スプリング26の外周を取り囲む外周部材28とを備えている。フロントカバー11に入力される振動は、リテーニングプレート25とドリブンプレート27との間でスプリング26が圧縮および復元を繰り返すことによって減衰される。
【0030】
ステータ16は、ポンプインペラ12とタービンランナ14との間に配置されている。
【0031】
ロックアップオフの状態において、エンジントルクによりポンプインペラ12が回転すると、ポンプインペラ12からタービンランナ14に向かうオイルの流れが生じる。このオイルの流れがタービンランナ14のブレード18で受けられて、タービンランナ14が回転する。このとき、トルクコンバータ2の増幅作用が生じ、タービンランナ14には、エンジントルクよりも大きなトルクが発生する。
【0032】
<動力分割式無段変速機>
動力分割式無段変速機3は、トルクコンバータ2から入力される動力をデファレンシャルギヤ4に伝達する。動力分割式無段変速機3は、インプット軸41、アウトプット軸42、無段変速機構43、逆転ギヤ機構44、遊星歯車機構45、スプリットドライブギヤ46およびスプリットドリブンギヤ47を備えている。
【0033】
インプット軸41は、中空軸に形成されている。インプット軸41は、トルクコンバータ2の回転軸線上を延び、トルクコンバータ2に挿通されている。インプット軸41のエンジン側の端部には、タービンハブ13がスプライン嵌合されている。これにより、インプット軸41は、タービンハブ13と一体回転し、さらには、そのタービンハブ13に対して固定されたタービンランナ14およびロックアップ機構15と一体回転する。
【0034】
インプット軸41に対してトルクコンバータ2のフロントカバー11と反対側には、オイルポンプ6が配置されている。
【0035】
アウトプット軸42は、インプット軸41と平行に設けられている。アウトプット軸42には、出力ギヤ48が一体に形成されている。出力ギヤ48は、デファレンシャルギヤ4(デファレンシャルギヤ4の入力ギヤ)と噛合している。
【0036】
無段変速機構43は、公知のベルト式の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)と同様の構成を有している。具体的には、無段変速機構43は、プライマリ軸51と、プライマリ軸51と平行に設けられたセカンダリ軸52と、プライマリ軸51に相対回転不能に支持されたプライマリプーリ53と、セカンダリ軸52に相対回転不能に支持されたセカンダリプーリ54と、プライマリプーリ53とセカンダリプーリ54とに巻き掛けられたベルト55とを備えている。
【0037】
プライマリプーリ53は、プライマリ軸51に固定された固定シーブ61と、固定シーブ61にベルト55を挟んで対向配置され、プライマリ軸51にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ(プライマリシーブ)62とを備えている。可動シーブ62に対して固定シーブ61と反対側には、プライマリ軸51に固定されたシリンダ63が設けられ、可動シーブ62とシリンダ63との間に、ピストン室(油室)64が形成されている。
【0038】
セカンダリプーリ54は、セカンダリ軸52に固定された固定シーブ65と、固定シーブ65にベルト55を挟んで対向配置され、セカンダリ軸52にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ(セカンダリシーブ)66とを備えている。可動シーブ66に対して固定シーブ65と反対側には、セカンダリ軸52に固定されたシリンダ67が設けられ、可動シーブ66とシリンダ67との間に、ピストン室(油室)68が形成されている。回転軸線方向において、固定シーブ65と可動シーブ66との位置関係は、プライマリプーリ53の固定シーブ61と可動シーブ62との位置関係と逆転している。
【0039】
無段変速機構43では、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54の各ピストン室64,68に供給される油圧が制御されて、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54の各溝幅が変更されることにより、プライマリプーリ53とセカンダリプーリ54とのプーリ比が連続的に無段階で変更される。
【0040】
具体的には、プーリ比が小さくされるときには、プライマリプーリ53のピストン室64に供給される油圧が上げられる。これにより、プライマリプーリ53の可動シーブ62が固定シーブ61側に移動し、固定シーブ61と可動シーブ62との間隔(溝幅)が小さくなる。これに伴い、プライマリプーリ53に対するベルト55の巻きかけ径が大きくなり、セカンダリプーリ54の固定シーブ65と可動シーブ66との間隔(溝幅)が大きくなる。その結果、プライマリプーリ53とセカンダリプーリ54とのプーリ比が小さくなる。
【0041】
プーリ比が大きくされるときには、プライマリプーリ53のピストン室64に供給される油圧が下げられる。これにより、ベルト55に対するセカンダリプーリ54の推力がベルト55に対するプライマリプーリ53の推力よりも大きくなり、セカンダリプーリ54の固定シーブ65と可動シーブ66との間隔が小さくなるとともに、固定シーブ61と可動シーブ62との間隔が大きくなる。その結果、プライマリプーリ53とセカンダリプーリ54とのプーリ比が大きくなる。
【0042】
一方、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54の推力は、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54とベルト55との間で滑りが生じない大きさを必要とする。そのため、インプット軸41に入力されるトルクの大きさに応じた推力が得られるよう、セカンダリプーリ54のピストン室68に供給される油圧が制御される。
【0043】
逆転ギヤ機構44は、インプット軸41に入力される動力を逆転かつ減速させてプライマリ軸51に伝達する構成である。具体的には、逆転ギヤ機構44は、インプット軸41と一体に形成されたインプット軸ギヤ71と、インプット軸ギヤ71よりも大径で歯数が多く、プライマリ軸51にスプライン嵌合により回転軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されて、インプット軸ギヤ71と噛合するプライマリ軸ギヤ72とを含む。
【0044】
遊星歯車機構45は、サンギヤ81、キャリア82およびリングギヤ83を備えている。サンギヤ81は、セカンダリ軸52にスプライン嵌合により回転軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されている。キャリア82は、アウトプット軸42に相対回転可能に外嵌されている。キャリア82は、複数個のピニオンギヤ84を回転可能に支持している。複数個のピニオンギヤ84は、円周上に配置され、サンギヤ81と噛合している。リングギヤ83は、複数個のピニオンギヤ84を一括して取り囲む円環状を有し、各ピニオンギヤ84にセカンダリ軸52の回転径方向の外側から噛合している。また、リングギヤ83は、アウトプット軸42に固定され、リングギヤ83は、アウトプット軸42と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。
【0045】
スプリットドライブギヤ46は、インプット軸41に相対回転可能に外嵌されている。
【0046】
スプリットドリブンギヤ47は、遊星歯車機構45のキャリア82と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。スプリットドリブンギヤ47は、スプリットドライブギヤ46よりも小径に形成され、スプリットドライブギヤ46よりも少ない歯数を有している。
【0047】
また、動力分割式無段変速機3は、クラッチC1,C2およびブレーキB1を備えている。
【0048】
クラッチC1は、インプット軸41とスプリットドライブギヤ46とを直結(一体回転可能に結合)する係合状態と、その直結を解除する解放状態とに切り替えられる。
【0049】
クラッチC2は、遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とを直結(一体回転可能に結合)する係合状態と、その直結を解除する解放状態とに切り替えられる。
【0050】
ブレーキB1は、遊星歯車機構45のキャリア82を制動する係合状態と、キャリア82の回転を許容する解放状態とに切り替えられる。
【0051】
<変速モード>
図2は、車両の前進時および後進時におけるクラッチC1,C2およびブレーキB1の状態を示す図である。
図2において、「○」は、クラッチC1,C2およびブレーキB1が係合状態であることを示している。「×」は、クラッチC1,C2およびブレーキB1が解放状態であることを示している。
図3は、遊星歯車機構45のサンギヤ81、キャリア82およびリングギヤ83の回転数(回転速度)の関係を示す共線図である。
【0052】
動力分割式無段変速機3は、前進レンジにおける変速モードとして、ベルトモードおよびスプリットモードを有している。
【0053】
ベルトモードでは、
図2に示されるように、クラッチC1およびブレーキB1が解放され、クラッチC2が係合される。これにより、スプリットドライブギヤ46がインプット軸41から切り離され、遊星歯車機構45のキャリア82がフリー(自由回転状態)になり、遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とが直結される。
【0054】
インプット軸41に入力される動力は、逆転ギヤ機構44により逆転かつ減速されて、無段変速機構43のプライマリ軸51に伝達され、プライマリ軸51およびプライマリプーリ53を回転させる。プライマリプーリ53の回転は、ベルト55を介して、セカンダリプーリ54に伝達され、セカンダリプーリ54およびセカンダリ軸52を回転させる。遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とが直結されているので、セカンダリ軸52と一体となって、サンギヤ81、リングギヤ83およびアウトプット軸42が回転する。したがって、ベルトモードでは、
図3に示されるように、動力分割式無段変速機3の変速比(ユニット変速比)がプーリ比と一致する。
【0055】
スプリットモードでは、
図2に示されるように、クラッチC1が係合され、クラッチC2およびブレーキB1が解放される。これにより、インプット軸41とスプリットドライブギヤ46とが直結され、遊星歯車機構45のキャリア82がフリーになり、遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とが切り離される。
【0056】
インプット軸41に入力される動力は、逆転ギヤ機構44により逆転かつ減速されて、無段変速機構43のプライマリ軸51に伝達され、プライマリ軸51からプライマリプーリ53、ベルト55およびセカンダリプーリ54を介してセカンダリ軸52に伝達され、遊星歯車機構45のサンギヤ81に伝達される。一方、インプット軸41に入力される動力は、スプリットドライブギヤ46からスプリットドリブンギヤ47を介して遊星歯車機構45のキャリア82に増速されて伝達される。
【0057】
スプリットドライブギヤ46とスプリットドリブンギヤ47とのギヤ比は一定で不変(固定)であるので、スプリットモードでは、インプット軸41に入力される動力が一定であれば、遊星歯車機構45のキャリア82の回転が一定速度に保持される。そのため、プーリ比が上げられると、遊星歯車機構45のサンギヤ81の回転数が下がるので、
図3に破線で示されるように、遊星歯車機構45のリングギヤ83(アウトプット軸42)の回転数が上がる。その結果、スプリットモードでは、プーリ比が大きいほど、無段変速機構43の変速比が小さくなる。
【0058】
ベルトモードおよびスプリットモードにおけるアウトプット軸42の回転は、出力ギヤ48を介して、デファレンシャルギヤ4に伝達される。これにより、車両のドライブシャフト7,8が前進方向に回転する。
【0059】
後進レンジでは、リバースモードとなり、
図2に示されるように、クラッチC1,C2が係合され、ブレーキB1が解放される。これにより、スプリットドライブギヤ46がインプット軸41から切り離され、遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とが切り離され、遊星歯車機構45のキャリア82が制動される。
【0060】
インプット軸41に入力される動力は、逆転ギヤ機構44により逆転かつ減速されて、無段変速機構43のプライマリ軸51に伝達され、プライマリ軸51からプライマリプーリ53、ベルト55およびセカンダリプーリ54を介してセカンダリ軸52に伝達され、セカンダリ軸52と一体に、遊星歯車機構45のサンギヤ81を回転させる。遊星歯車機構45のキャリア82が制動されているので、サンギヤ81が回転すると、遊星歯車機構45のリングギヤ83がサンギヤ81と逆方向に回転する。このリングギヤ83の回転方向は、前進時(ベルトモードおよびスプリットモード)におけるリングギヤ83の回転方向である前進方向と逆方向の後進方向となる。そして、リングギヤ83と一体に、アウトプット軸42が回転する。アウトプット軸42の回転は、出力ギヤ48を介して、デファレンシャルギヤ4に伝達される。これにより、車両のドライブシャフト7,8が後進方向に回転する。
【0061】
<レイアウト>
図4は、ユニットケース5を前後方向に沿った切断面で切断した断面を左側から見た断面図である。
【0062】
ユニットケース5では、インプット軸41が挿通されるインプット軸挿通孔91の後上側の位置に、プライマリ軸51が挿通されるプライマリ軸挿通孔92が形成されている。また、インプット軸挿通孔91およびプライマリ軸挿通孔92の後下側の位置に、セカンダリ軸52が挿通されるセカンダリ軸挿通孔93が形成されている。さらに、インプット軸挿通孔91の後下側かつセカンダリ軸挿通孔93の前下側の位置に、デファレンシャルギヤ4が収容されるデフ収容部94が形成されている。インプット軸挿通孔91、プライマリ軸挿通孔92、セカンダリ軸挿通孔93およびデフ収容部94の前側には、オイルポンプ6の発生油圧が供給されるバルブボディ95が上下方向に延びる縦置きで配置されている。バルブボディ95には、ユニットケース5内の各部にオイルを供給するための油圧回路が形成されている。
【0063】
<作用効果>
以上のように、エンジンからトルクコンバータ2を介してインプット軸41に入力される動力は、プライマリ軸51に伝達され、プライマリ軸51からプライマリプーリ53、ベルト55およびセカンダリプーリ54を介してセカンダリ軸52に伝達される。セカンダリ軸52の動力は、アウトプット軸42を介してデファレンシャルギヤ4に伝達され、デファレンシャルギヤ4から左右の駆動輪に伝達される。
【0064】
インプット軸41またはアウトプット軸42上には、アウトプット軸42の回転方向を前進方向と逆転方向とに切り替える遊星歯車機構45およびブレーキB1が設けられている。そのため、トランスアクスル1では、インプット軸41の回転を逆転させてプライマリ軸51に伝達するためのリバースアイドラ軸を設ける必要がない。
【0065】
また、オイルポンプ6は、インプット軸41に対してトルクコンバータ2と反対側に配置されている。
【0066】
トランスアクスル1では、リバースアイドラ軸を設ける必要がなく、オイルポンプ6がインプット軸41に対してトルクコンバータ2と反対側に配置されているので、ユニットケース5の前端部に、バルブボディ95を上下方向に延びる縦置きで配置することができる。これにより、トランスアクスル1の前後長の短縮を図ることができる。そのため、トランスアクスル1が配設される車両のエンジンコンパートメントの前後長を短縮することができ、車室長を拡大することができる。その結果、車両の居住性およびスペースユーティリティを向上することができる。
【0067】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0068】
たとえば、トランスアクスル1では、動力分割式無段変速機3が備えられているが、本発明は、動力分割式無段変速機3を備えるトランスアクスル1に限らず、公知のベルト式の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)を備えるトランスアクスル(変速ユニット)に広く適用可能である。
【0069】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。