(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(E)バインダとして、少なくとも1種のアクリレートポリマー、ポリウレタンポリマー、及び/又はポリエステルを含む請求項1に記載の溶剤型着色コーティング組成物。
前記透明コート材料が、バインダとして、ヒドロキシル基及び/又はカルバメート基を含む、少なくとも1種のポリウレタン樹脂、及び/又はポリアクリレート樹脂、及び/又はポリエステル樹脂、並びに架橋剤として、少なくとも1種のメラミン樹脂を含む請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
公知の溶剤型着色コーティング組成物、より具体的には、ベースコート材料として公知のものは、自動車工業において、例えば、単層、又は多層のカラー、及び/又はエフェクト塗装のために使用される。周知のように、透明コート材料がベースコート膜を覆って塗布される、多層塗装系(multicoat paint system)は、良好な性能特性を有する。しかしながら、絶えず成長する技術、及び市場の美的要求、特に自動車メーカー及びそれらの顧客の要求が、これまで達成された、技術的、及び美的水準の継続的、持続的開発を必要としている。
【0003】
具体的には、そのような多層塗装系の製造において、より少ないVOC放出を生じ、そのため、製造が、より環境に調和して行われ得るように、先行技術と比較して、より低いVOC(揮発性有機物含有量)を有する新たなコーティング組成物を提供することが必要である。VOCを低下させ得る具体的な方法は、問題となっているコーティング組成物の固形分を増加することによる。
【0004】
最近では、例えば、公知のウェット・オン・ウェット(wet-on-wet)法(例えば、着色ベースコート材料の最初の塗布、及び、このコーティング材料の、焼付け工程(baking step)なしの短時間のフラッシュオフ時間(flash-off time)に続いて、透明コート材料が、それを覆って塗布され、その後にのみ、その塗膜が一緒に焼付けられる方法)の一部としての多層塗装系の製造において、塗布可能状態(application-ready state )(噴霧粘度(spray-viscosity))で、20〜30%の間の固形物画分を有する中位固形分ベースコート系からの、35%より大きい高固形分ベースコート系への交代が、加工作業において、有意なVOCの低減を達成している。同様な成果は、高固形分透明コート(噴霧粘度で、45%まで、又はそれ以上の高固形分を有する透明コート材料)の使用によっても得られている。工業的塗装作業との関連で、固形分を、約3〜5%のみ増加することで、確実に使用されなければならず、そのため、加工において環境へ放出される、有機溶媒に関して、非常に大きな節減を達成するのに、それだけで十分である。
【0005】
しかしながら、環境への適合の側面に加えて、同時に他の技術的特性、及びコーティング組成物の、及びそれらから製造される多層塗装系の美的特性も、確かに改善されるといわないまでも、保持されていることが最も重要である。これらの特性は、例えば、引っ掻き抵抗性、耐化学性、及び耐候性を含むが、具体的には、コーティング組成物の良好な平準化性(leveling)、及び前記平滑化性を含む因子の結果として、前記多層塗装系の高級な印象(aspect)、及び非常に優れた全体的な外観も含む。
【0006】
前記着色コーティング組成物、より具体的には、そのような多層塗装系の製造に使用されるベースコート材料は、一般に、重合可能なバインダ、及び架橋剤を含む。この重合可能なバインダは、例えば、ポリマー骨格(polymeric scaffold)上に、ヒドロキシ官能基を有する。使用される架橋剤は、メラミン樹脂であることが多く、例としては、ヘキサ(メトキシメチル)メラミン(HMMM)、又は混合エーテル化を有するメラミン等のモノマー架橋樹脂である。同様に架橋剤として、例えば、遊離、又はブロック化されたポリイソシアネートが、使用される。製造プロセスにおいて、使用される透明コート材料は、ヘキサ(メトキシメチル)メラミン(HMMM)、又は混合エーテル化を有するメラミン等のモノマー架橋樹脂と、及び任意にさらなる重合可能なバインダと組み合わせて、高密度のネットワークを形成することができる、大部分は、カルバメート含有バインダ系に基づく。
【0007】
記載されたコーティング組成物、より具体的には、ベースコート、及び透明コート材料の使用を通じて、技術的優位性を有する高い固形分(低VOC)を、結果として得られる多層塗装系の非常に優れた全体の外観等の顧客の要求とが一緒に達成されている。
【0008】
しかしながら、例えば、フロントガラス(windshield)を接着させるために、そのような多層塗装系へ塗布される接着剤の接着性が、要求を満たさないことが多いという問題がある。多層塗装系、特に透明コート及びガラスシート間の接着境界は、全体の構造において、はっきりと異なる弱点を構成する。ガラスシート及び接着剤層間の接着/接合(adhesion/bonding)は、問題を引き起こさないか、又は典型的な接着材料の使用の結果として、非常に良好であるものの、透明コート膜及び接着剤層間の接着性は、特に、全体の構造において、重大な弱点である。
【0009】
フロントガラスは、典型的には、イソシアネート基を含むポリマーに基づく水分硬化性接着材料を使用して、多層塗装系でコーティングされた車体に接着される。自動車安全基準(MVSS)は、この接着剤に、フロントガラスへの、及び多層塗装系への完全な接着を示すことを要求する。当業者は、多層塗装系、特にカルバメート及びメラミンに基づき、別の面では、優れた技術的特性、及び光学的特性を有する上記のものは、シート接合接着性に関しては、はっきりと異なる弱さを示すことを知っている。したがって、自動車工業において、現状は、ほとんど、いまだに接着剤が塗布される前に、プライマーが、多層塗装系に塗布されている。多層塗装系及び接着剤間のこの種の追加のプライマーの使用は、追加の材料及び消費される時間を考慮して、かなりの余分なコストを必要とする。
【0010】
接着剤はまた、プライマーを使用することなしに、多層塗装系に直接塗布され得る(プライマーレスプロセス)。現今、プライマーレスプロセスは、だんだんと、自動車部分に使用されている;しかしながら、例えば、ベースコート及び透明コートの膜厚の、及び焼き付け時間及び焼付け温度の極めて正確な検査等の、正確な操作監視が、要求される。そのような正確な操作監視でさえ、接着剤が十分に多層塗装系に接着することを、常に保証することはできない。低い透明コートの膜厚と組合された過剰に高いベースコートの膜厚の場合、特に多層塗装系からの、シート接着材料の望まれていない剥離があり得る。したがって、例えば、記載されたベースコート材料に存在するメラミン樹脂が、多層塗装系の一部において、優れた全体の外観に、寄与することが知られているものの、それらは、それでもなお、中間膜(inter-film)の基礎に、シートの接合に使用される接着剤と、望まれていない相互作用を及ぼし、結果的に不十分な接着が生じる。これは、特にシート接合のための特性の他の優れた側面に基づいて、典型的に使用される水分硬化性のイソシアネート系接着剤に当てはまる。メラミン樹脂画分における大幅な削減、又はベースコート材料からのこれらのメラミン樹脂の除去によって、この破壊的な影響は、かなり低減され得る。しかしながら、そのような製剤は、低下した外観を示し、さらに、場合によっては顕著に減少した固形分画分でのみ製造され得る。
【0011】
一部の例では、透明コート、及び/又はベースコート材料における改良によって、多層塗装系へのシート接合接着性を適正化する試みが行なわれている。
【0012】
WO2008/021712A2は、多層塗装系の製造におけるホウ酸、又はホウ酸誘導体、及びエステルに基づく接着性添加剤の使用方法を記載する。この添加剤の、カルバメート−メラミン透明コート材料における使用方法は、シート接合接着性における改善をもたらす。
【0013】
US2003/232222A1は、同様に、中間コート(intercoat)接着性、及び/又はシート接合接着性を改善するため、多層塗装系の一方、又は両方のコートにおけるホウ酸、又はホウ酸誘導体、及びエステルに基づく接着剤の使用方法を記載する。
【0014】
WO2007/008635A1は、特別な添加剤を含むベースコート及び/又は透明コート材料が使用される多層塗装系を記載する。その添加剤は、塗装中のポリマーバインダ又は架橋剤と、ほとんどは反応しない官能基を含む。この添加剤は、塗装系の表面で、又はベースコート及び透明コート材料の間の中間境界層(interboundary layer)で、界面領域に蓄積し、シート接合接着性、又は中間コート接着性を改善させる。記載された適切な添加剤は、(メタ)アクリレートエステルに基づく、又はα−オレフィンに基づくポリマーである。その添加剤の添加はまた、平準化性、及び湿潤性に関しても優位性をもたらし、透明コートから湿潤剤及び平準化添加剤を省略することを可能とする。その添加剤は、透明コートにおいて、シート接合接着性を改善するために使用される。
【0015】
WO2006/063304A1は、中間コート接着性、又はシート接合接着性を強化する目的でのヒドロキシル官能性エポキシポリマーに基づく添加剤の使用方法を記載する。その添加剤は、透明コートにおいて、シート接合接着性を改善するために使用される。その添加剤は、クリアコート材料における官能基とは限定的にのみ反応し、塗装系の表面で界面領域に蓄積し、それにより、シート接合接着性における改善を可能とする。
【0016】
WO2008/100548A1は、カルバメート官能性ポリマー及びメラミン樹脂に基づく透明コート材料を記載する。シート接合接着性を最適化する目的で、透明コート及びベースコートの両方が、ジブチルスズジアセテート及びブチルリン酸に基づく接着促進剤を使用する。
【0017】
WO 2005/105938 A1は、OHポリエステルに、及びポリイソシアネート架橋剤に基づく透明コートを記載する。特に、シート接合接着性を最適化する目的で、低分子量のシラン含有成分が使用される。
【0018】
WO2005/046889A1は、透明コート材料だけでなく、それに塗布されるシート接合接着剤がシラン基を含む多層塗装系を記載する。しかしながら、慣例のアルキル、又はアリールリン酸触媒が、ベースコート材料に使用される場合、そのようなシラン成分の有利な効果が、大きく損なわれることが多い。ベースコート材料に、代わりとしての強酸性触媒の使用は、そのシラン成分の活性を損なう程度はそれほどではないと考えられている。アミンでブロック化された触媒(amine-blocked catalysts)と比較して、より良好な外観をもたらすので、エポキシ−イソシアネートでブロック化された触媒(epoxy-isocyanate-blocked catalysts)が好ましい。
【0019】
WO2010/121794A2は、多層塗装系のシート接合接着性を強化する目的で、メラミン樹脂に基づくベースコート材料における、少なくとも240mgKOH/gのヒドロキシル価、及び10mgKOH/gの酸価を有するポリエステルバインダの使用を記載する。
【0020】
多層塗装系におけるベースコート及び/又は透明コート材料の改良による良好なシート接合接着性を達成する種々の提案にもかかわらず。種々の工業部門、特に自動車工業の部分における高くなる要求を満たすため、さらなる最適化の必要性が存在し続ける。特に、高い固形分を有するメラミン樹脂に基づく、着色されたコーティング材料が、ベースコート材料として使用される多層系において、良好な性能特性、より具体的には良好な外観と、十分なシート接合接着性とを結びつけることは、大きな課題である。
【0021】
したがって、多層塗装系に、特に、着色コーティング組成物に透明コーティング材料が塗布されるものに使用される際に、極めて優れた外観、及び同時に非常に良好なシート接合接着性をもたらす、着色コーティング組成物の開発の必要性があった。さらに、具体的には噴霧粘度で、高い固形分等のコーティング組成物のさらなる技術的特性が、変化なしで維持されるか、むしろ改善されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[本発明の多層塗装系、及びその製造方法]
本発明の多層塗装系の構造は、好ましくは、まず第一に、プライマーが基板に塗布されているようになっている。プライマーの上に、好ましくは少なくとも1層のプライマー・サーフェーサー(primer surfacer)が配置され、且つ少なくとも1層のベースコート材料も配置され、その上に、少なくとも1層の透明コート材料が配置され、前記多層塗装系の最上層は、透明コート又は透明コート膜である。好ましくは、上記コーティング組成物の、正確に1種が使用される。ここで、ベースコートは、本発明のコーティング組成物を使用することによって製造され、言い換えれば、本発明のコーティング組成物は、好ましくはベースコート材料である。
【0037】
上記で確認された層系(coat system)は、自動車最終加工部分で、一般に使用される層系である。したがって、本発明の多層塗装系は、好ましくは多層の自動車塗装系である。
【0038】
上記からすると当然に、本発明の方法との関連で、プライマー、及びサーフェーサー(surfacer)も、好ましくはベースコート材料が塗布される前に、塗布されることになる。後述するように、前記プライマー、及び前記サーフェーサーは、好ましくはベースコート材料が塗布される前に、それぞれ別々に硬化される。本発明の方法との関連で、本発明のコーティング組成物は、いずれの場合にも、ベースコート材料として使用される。しかしながら、それは、さらに、例えばサーフェーサーとして使用されることも可能である。
【0039】
前記基板は、典型的には、プライマーと共に、例えば電着塗装(electrocoat)、さらに具体的には陰極電着塗装(cathodic electrocoat)の形態で提供される。このコーティングは、電着塗装(electrodeposition coating)、ディッピング法、ナイフコーティング法、スプレー法、ローリング法、又は同種の方法等の慣例の方法によって塗布される。前記プライマーは、好ましくは、サーフェーサー、ベースコート、及び透明コート材料が塗布される前に、少なくとも部分的に又は完全に、特に完全に硬化される。前記プライマーは、典型的には、80〜170℃の温度への、3〜30分の時間の加熱によって硬化される。
【0040】
本発明の多層塗装系は、好ましくは、金属、及び/又はプラスチック製、好ましくは金属製の基板上に、製造される。これらの基板は、当然に、変換コーティング(conversion-coated)、又はさもなければ前処理されていてもよい。例えば、金属基板は、一般に、変換コーティング、さらに具体的には、リン酸処理される。
【0041】
その後、少なくとも1種のサーフェーサー、少なくとも1種のベースコート材料、及び少なくとも1種の透明コート材料が、好ましくは、いずれの場合にも、上記材料の正確に1種が、プライマーの上に塗布される。
【0042】
サーフェーサー、ベースコート、及び透明コート材料は、例えば、ディピング法、ナイフコーティング法、スプレー法、ローリング法、又は同種の方法等の、液体コーティング組成物を塗布する慣例の方法によって、しかし、さらに具体的にはスプレー法によって、塗布される。例えば、圧縮空気スプレー法、無気スプレー法、高速回転法(high speed rotation)、静電スプレー塗布法(ESTA)等のスプレー塗布技術を、任意に例えば、ホットエアースプレー法(hot air spraying)等のホットスプレー塗布法と併用して、使用することが好ましい。ベースコート材料を、第一の塗布をESTAによって、第二の塗布を空気圧によって塗布することが、特に有利である。
【0043】
前記サーフェーサーは、好ましくは、ベースコート材料及び透明コート材料が塗布される前に少なくとも部分的に又は完全に、好ましくは完全に硬化される。前記サーフェーサーの硬化は、80〜170℃の温度への、3〜30分の時間の加熱によって、慣例的に行なわれる。塗布されたベースコート材料は、好ましくは、一般に20〜100℃未満の温度で、1〜15分の時間、短時間フラッシュオフされる(flashed off)か、又は短時間乾燥される。その後、透明コート材料が塗布される。
【0044】
前記塗布されたベースコート材料、及び前記塗布された透明コート材料は、熱的に、好ましくは一緒に硬化される。透明コート材料が、例えば、化学線硬化性である場合も、化学線への暴露による、それに続く後硬化が有る。
【0045】
硬化は、所定の静止時間後に行われてもよい。それは、30秒〜2時間、好ましくは1分〜1時間、特に1〜45分の期間を有してもよい。前記静止時間は、例えば、コーティング膜の平準化性に、及び脱気に、又は揮発性成分の蒸発に役立つ。前記静止時間は、例えば早期架橋(premature crosslinking)等のコーティング膜へのいかなる損傷又は変化を引き起こさない限り、90℃以下に上昇された温度の使用によって、及び/又は10g水/kg空気未満の低減された大気湿度によって、短縮され、及び/又は補助されてもよい。
【0046】
硬化は、典型的には、90〜160℃の温度で、5〜90分の時間で行なわれる。
【0047】
上記温度は、いずれの場合にも、コーティングされた基板の実際の温度であると理解すべきである。
【0048】
湿ったベースコート、及び湿った透明コートの乾燥、及び/又はコンディショニングのため、トンネルオーブン、放射NIR及びIRヒータ、送風機、送風トンネル等の慣例且つ公知の装置を使用する、熱的な、及び/又は対流方法を用いることが好ましい。これらの装置の構造は、互いに組み合わされてもよい。
【0049】
本発明の多層塗装系において、ベースコートは、一般に、好ましくは3〜40マイクロメートル、さらに好ましくは5〜30マイクロメートル、特に好ましくは7〜25マイクロメートルの乾燥膜厚を有する。透明コートは、一般に、好ましくは10〜60マイクロメートル、さらに好ましくは55マイクロメートル以下、さらに好ましくは45マイクロメートル以下、特に好ましくは40マイクロメートル以下の乾燥膜厚を有してもよい。25〜55マイクロメートルの範囲が特に好ましく、さらに好ましくは30〜45マイクロメートルの範囲、特に好ましくは35〜40マイクロメートルの範囲である。
【0050】
使用される前記プライマー、サーフェーサー、及び透明コート材料は、当業者に公知で、一般に市販されているコーティング材料であってもよい。透明コート材料は、(噴霧粘度で)好ましくは少なくとも45%の固形分画分を有する、好ましくは溶剤型透明コート材料である。そのような透明コートは、以下に詳細に記載される。
【0051】
次に、本発明の方法において、正確に1種のベースコート材料(本発明のコーティング組成物)、及び正確に1種の透明コート材料を試用することが好ましい。両方のコーティング膜は、一緒に硬化される(ウェット・オン・ウェット法)。
【0052】
[本発明のコーティング組成物]
[メラミン樹脂(A)]
本発明のコーティング組成物は、少なくとも1種ノメラミン樹脂を含む。メラミン樹脂は、メラミン(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン)及び、メラミンのモル当たり、最大6モルのホルムアルデヒドから形成される重縮合樹脂である。結果として得られるメチロール基は、完全に又は部分的に、1種又は種々のアルコールとエーテル化されている。メラミン樹脂は、異なるメチロール化度、及び異なるエーテル化度を有していてもよい。
【0053】
メラミン樹脂のメチロール化度は、メラミン上の可能なメチロール化部位の何個が、メチロール化されているか、すなわち、メラミン(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン)における最初のアミノ基の合計6個の水素原子の何個が、メチロール機によって置換されているかを表す。したがって、完全にメチロール化された単環メラミン樹脂は、例えば、ヘキサメチロールメラミン等、トリアジン環当たり6個のメチロール基を有する。メチロール基は、互いに独立して、エーテル化された形態で存在してもよい。
【0054】
メラミン樹脂のエーテル化度は、アルコールでエーテル化されているメラミン樹脂におけるメチロール基の画分であると理解される。完全にエーテル化されたメラミン樹脂の場合、存在する全てのメチロール基が遊離しておらず、アルコールとエーテル化される。一価、又は多価のアルコールが、エーテル化のために適切である。エーテル化のために一価のアルコールを使用することが好ましい。例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソブタノール、あるいはヘキサノールが、エーテル化のために使用され得る。例えば、メタノール及びn−ブタノールの混合物等の、種々のアルコールの混合物を使用することも可能である。
【0055】
メラミン樹脂は、モノマーの(単環の)、又はオリゴマーの(多環の)形態で存在し得る。形容辞(epithet)「単環の」又は「多環の」は、メラミン樹脂の分子当たりのトリアジン環の数に言及する。単環の完全にメチロール化され、完全にブタノールエーテル化されたメラミン樹脂の一例は、ヘキサメトキシブチルメラミンである。
【0056】
使用されるアミノプラスト樹脂は、塗料工業部門で典型的に使用されるアミノプラスト樹脂である。好ましい樹脂は、メタノールエーテル化、及び/又はブタノールエーテル化、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂であり、例としては、Cymel(登録商標)、Resimene(登録商標)、Maprenal(登録商標)、及びLuwipal(登録商標)、さらに好ましくはResimene(登録商標)747、及びResimene(登録商標)755の名称の下で、使用のために市販されている製品である。
【0057】
本発明のコーティング組成物におけるメラミン樹脂の量は、いずれの場合にも、前記ベースコート材料の総質量に基づいて
、8質量%〜30質量%、さらに好ましくは10質量%〜28質量%、最も好ましくは13質量%〜16質量%であり、特に有利な一実施形態においては、15質量%〜24質量%である。
【0058】
極めて良好な外観が、特に、少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも13質量%、特に好ましくは少なくとも15質量%のメラミン樹脂画分の使用によって達成される。これらの比較的高いメラミン樹脂画分と、本発明のコーティング組成物のさらなる成分、特に、変性オルガノシロキサン(modified organosiloxane)(D)との組み合わせによって、達成されるシート接合接着性は、それにもかかわらず、驚くべきことに、良好である。
【0059】
[顔料(B)]
本発明のコーティング組成物は着色されるので、少なくとも1種の顔料を含む。周知のように、顔料は、一般にコーティング組成物に使用される、粉末、及び/又は小片の形態の着色剤である。
【0060】
前記顔料は、有機、及び無機の、好ましくは無機の、色付与性の(color-imparting)、効果付与性の(effect-imparting)、色及び効果付与性の、磁気遮蔽性の、導電性の、腐食防止性の、蛍光性の、並びにリン光性の顔料からなる群から、好ましくは選択される。色、及び/又は効果付与性の顔料(色、及び/又は効果顔料)を使用することが好ましい。
【0061】
特に好ましくは、本発明の着色コーティング組成物は、少なくとも1種の効果顔料、好ましくは少なくとも1種の金属薄片顔料(metal flake pigment)を含む。効果顔料、又は複数の顔料に加えて、本発明の着色コーティング組成物は、さらに、少なくとも1種以上のさらなる顔料(例としては、色顔料である。)も含む。
【0062】
適切な効果顔料(色も付与してもよい)の例は、金属薄片顔料、特に、市販ステンレス鋼青銅、特に市販アルミニウム青銅等のアルミニウム薄片顔料、並びに例えば、真珠光沢顔料、及び干渉顔料等の非金属効果顔料、酸化鉄に基づく小片型効果顔料、又は液晶効果顔料である。さらなる詳細は、Rompp Lexikon Lacke und Druckfarben、176頁、見出し「Effektpigmente」[効果顔料] 及び380及び381頁、見出し「Metalloxid−Glimmer-Pigmente」[金属酸化物マイカ顔料]〜「Metall−pigmente」[金属顔料]を参照にする。
【0063】
アルミニウム青銅、又はアルミニウム小片顔料が、特に使用される。例えばStapa(登録商標)Metallux (Eckart製)の名称で市販されている未処理タイプ、及び例えばWO01/81483に記載され、Hydrolan(登録商標) (Eckart製)の名称で市販されている処理タイプ、特にシラン化タイプの両方が使用される。
【0064】
好ましくは、金属薄片顔料は、10〜70、特に13〜35マイクロメートルの平均粒径(D50)を有する(Cilas(機器1064)によるISO13320−1)。そのような金属薄片顔料は、好ましくは200〜2000nm、特に500〜1500nmの厚さを有する(走査型電子顕微鏡により測定)。2種の分析方法は、薄片の直径を反映する傾向がある平均粒径測定とともに、粒子の幾何学的パラメータの十分な定量を提供する。
【0065】
適切な有機の、及び/又は無機の色顔料は、典型的に塗料工業において使用される顔料である。
【0066】
適切な無機色顔料の例としては、二酸化チタン、亜鉛白、硫化亜鉛、又はリトポン等の白色顔料;カーボンブラック、鉄マンガンブラック、又はスピネルブラック等の黒色顔料;酸価クロム、酸価クロム水和物グリーン、コバルトグリーン又はウルトラマリングリーン、コバルトブルー、ウルトラマリンブルー又はマンガンブルー、ウルトラマリンバイオレット又はコバルトバイオレット及びマンガンバイオレット、レッド酸化鉄、硫セレン化カドミウム、モリブデン酸塩レッド又はウルトラマリンレッド等の有彩顔料;ブラウン酸化鉄、混合ブラウン、スピネル相及びコランダム相、又はクロムオレンジ;又はイエロー酸化鉄、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、硫化カドミウム、硫化カドミウム亜鉛、クロムイエロー、又はバナジン酸ビスマスである。
【0067】
適切な有機色顔料の例としては、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アントラキノン顔料、ベンズイミダゾール顔料、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、インダントロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、アゾメチン顔料、チオインジゴ顔料、金属錯体顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、フタロシアニン顔料、またはアニリンブラックである。
【0068】
さらなる詳細は、Rompp Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag,1998年、180及び181頁、見出し「Eisenblau−Pigmente」 [鉄青色顔料] 〜「Eisenoxidschwarz」[黒色酸化鉄]、451〜453頁、見出し「Pigmente」[顔料]〜「Pigmentvolumenkonzentration」[顔料体積濃度]、563頁、見出し「Thioindigo−Pigmente」[チオインジゴ顔料]、567頁、見出し「Titandioxid−Pigmente」[二酸化チタン顔料]、400及び467頁、見出し「Naturlich vorkommende Pigmente」[天然素材顔料]、459頁、見出し「Polycyclische Pigmente」[多環式顔料]、52頁、見出し「Azomethinpigmente」[アゾメチン顔料]、及び「Azopigmente」[アゾ顔料]、及び379頁、見出し「Metallkomplex−Pigmente」[金属錯体顔料]を参照にする。
【0069】
顔料の量は、極めて広範囲に変化してもよく、主に、確立されることになる効果の色及び/又は彩度の濃さによって、及び本発明の着色コーティング組成物における顔料の分散性によっても導かれる。顔料の画分は、いずれの場合にも、前記コーティング組成物の総質量に基づいて
、0.5質量%〜50質量%、さらに特に好ましくは0.5質量%〜40質量%、特に好ましくは1質量%〜30質量%、特に有利には2質量%〜20質量%である。
【0070】
[有機溶剤(C)]
溶剤型コーティング組成物として、本発明のコーティング組成物は、少なくとも1種の有機溶剤(C)を含む。
【0071】
適切な溶剤は、典型的に塗料工業において使用される全ての溶剤であり、例としては、アルコール、グリコールエーテル、エステル、エーテルエステル、ケトン、脂肪族及び/又は芳香族炭化水素であり、例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、3−ブトキシ−2−プロパノール、エチルエトキシプロピオネート、ブチルグリコール、ブチルグリコールアセテート、ブタノール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、グリコール酸ブチル、キシレン、トルエン、Shellsol(登録商標)T、パインオイル90/95、Solventnaphtha(登録商標)、Shellsol(登録商標)A、Solvesso、ベンジン135/180である。
【0072】
本発明のコーティング組成物における有機溶剤
の画分は、いずれの場合にも、本発明の着色コーティング組成物の総量に基づいて
、40質量%〜65質量%、さらに好ましくは少なくとも45質量%、特に少なくとも50質量%、さらに特に有利には、少なくとも55質量%である。特に好ましい範囲は、いずれの場合にも、本発明の着色コーティング組成物の総量に基づいて、40質量%〜62質量%、特に45質量%〜62質量%、特に好ましくは50質量%〜62質量%、特に有利には、55質量%〜62質量%である。前記好ましい範囲、特に、上限は、本発明のコーティング組成物が、好ましくは比較的低い有機溶剤の画分を含み、そのため、比較的低いVOCを有するという事実から認識され得る。
【0073】
さらに、本発明のコーティング組成物は、溶剤型である。溶剤型コーティング組成物は、その溶媒が、有機溶剤を含む組成物である。これは、コーティング組成物の調製の間、水は、明確に添加されないが、その代わり、水は、例えば、有機溶剤における残存水画分等の、結果としてコーティング組成物に存在する他の成分からの残存画分又は混入物としてのみ含まれることを意味する。特に、溶剤型は、水画分が、いずれの場合にも、前記コーティング組成物の総量に基づいて、2質量%未満、好ましくは1質量%未満であることを意味する。極めて特に好ましくは、前記コーティング組成物は、水を含まない。
【0074】
[オルガノシロキサン(D)]
本発明のコーティング組成物は、式(I):
【化2】
[式中;R
1=C
nH
2n(n=1〜3、好ましくは2)であり;R
2=H、又はC
mH
2m+1(m=1〜4)であり、好ましくはH、又はCH
3であり、さらに好ましくはHであり;a=0〜20、好ましくは2〜18、さらに好ましくは5〜15、特に好ましくは8〜12であり;b=0〜20、好ましくは0〜10、さらに好ましくは0〜5、特に好ましくは0であり;及びa+b=2〜40、好ましくは4〜20、さらに好ましくは6〜16、特に好ましくは8〜12である。]で表される少なくとも1種の特別なオルガノシロキサンを含む。b/a比は、好ましくは0〜0.5、特に好ましくは0〜0.25、特に好ましくは0である。前記好ましい基及び範囲は、それぞれ、他の好ましい基、及び/又は範囲との組み合わせだけでなく、それ自体、望ましいとして理解されるべきである。式(I)におけるエチレンオキシド単位及びプロピレンオキシド単位の数及び配列に関する詳細は、理解し易くするために選択されており、当然に、前記単位は、ランダムに分配されてもよく、言い換えると、具体的には、存在しているエチレンオキシド単位、及びプロピレンオキシド単位の任意の個々のブロックである必要はないことを意味していると理解されるべきである。
【0075】
前記少なくとも1種のオルガノシロキサンの使用によって、及びそのメラミン樹脂との組み合わせによって、上記の極めて優れた性能特性、具体的には、本発明のコーティング組成物において、効果的なシート接合接着性、及び外観のバランス、並びに低VOCが達成される。
【0076】
上記の範囲の指示から、当然、ポリエーテル鎖中に、主としてエチレンオキシド単位を含み、プロピレンオキシド単位を少しだけ含むか、又は全く含まない、オルガノシロキサンの使用が好ましいということになる。プロピレンオキシド単位の使用は、原則として可能であり、個々の場合において、適切であり得るが、ポリエーテル鎖中に、主としてエチレンオキシド単位を含むか、又はポリエーテル鎖が、エチレンオキシド単位からなるそれらのオルガノシロキサンの使用によって、溶剤型コーティング組成物において、上記の特性を得ることが可能であったことは特に驚きであった。それにより存在する親水性にもかかわらず、これらのオルガノシロキサンは、溶剤型コーティング組成物における使用に、極めて優れた適合性を示す。この意味で、特に好ましいポリシロキサン(D)のために、R
1=C
2H
4であり;R
2=Hであり;a=5〜15であり;b=0であり、さらに好ましくはa=8〜12である。
【0077】
前記式(I)のオルガノシロキサンは、当業者に公知の方法によって調製され得る。そのような方法は、例えば、同様の、又は適合している構造的特徴を有するオルガノシロキサンに関連する、特許出願US3,989,688、US4,431,789、又はUS3,505,377に記載される。前記オルガノシロキサンは、例えば、商品名CoatOSil(登録商標)、及びSilwet(登録商標)(Momentive製)の下で、市販品として利用可能である。
【0078】
本発明のコーティング組成物における特別なオルガノシロキサンの量は
、0.01質量%〜3質量%、さらに好ましくは0.02質量%〜2質量%、特に好ましくは0.03質量%〜1.5質量%、具体的な一実施形態において、0.05質量%〜1質量%である。
【0079】
[さらなる成分]
少なくとも1種のメラミン樹脂(A)と同様に、本発明のコーティング組成物は、好ましくは少なくとも1種のさらなるポリマー(E)をバインダとして含む。
【0080】
適切なさらなるバインダの例としては、エチレン性不飽和モノマーのランダム、交互及び/又はブロック、直鎖及び/又は分岐、及び/又は櫛状(コ)ポリマー、又は重付加樹脂、及び/又は重縮合樹脂である。これらの用語に関して、追加の参照は、Rompp Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag,Stuttgart,New York,1998年、457頁、「Polyaddition」及び「Polyadditionsharze(Polyaddukte)」[重付加樹脂(重付加物)]、並びに463及び464頁、「Polykondensate」[重縮合体]、「Polykondensation」[重縮合]、及び「Polykondensationsharze」[重縮合樹脂]、並びに73及び74頁、「Bindemittel」[バインダ]に記載される。
【0081】
適切な(コ)ポリマーの例としては、(メタ)アクリレート(コ)ポリマー又は部分的に加水分解されたポリビニルエステル、特に(メタ)アクリレートコポリマーである。
【0082】
適切な重付加樹脂及び/又は重縮合樹脂の例としては、ポリエステル、アルキド、ポリウレタン、ポリラクトン、ポリカーボネート、ポリエーテル、エポキシ樹脂−アミン付加物、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル−ポリウレタン、ポリエーテル−ポリウレタン、又はポリエステル−ポリエーテル−ポリウレタンである。
【0083】
前記コーティング組成物は、好ましくは、ヒドロキシ官能性ポリマー(E)をバインダとして含む。
【0084】
本発明の着色コーティング組成物は、好ましくは、少なくとも1種のアクリレートポリマー、ポリウレタンポリマー、及び/又はポリエステルを、バインダ(E)として含む。極めて特に好ましくは、ポリエステル(E)がある。
【0085】
前記バインダとしてのポリマー(E)は、好ましくは、チオ、ヒドロキシル、N−メチルアミノ−N−アルコキシメチルアミノ、イミノ、カルバメート、アルファネート、及び/又はカルボキシル基、好ましくはヒドロキシル、又はカルボキシル基を含む。ヒドロキシル基が特に好ましい。これらの官能基、特にヒドロキシル基を介して、例えば、架橋が、好ましくは無水物、カルボキシル、エポキシ、ブロック化イソシアネート、ウレタン、メチロール、メチロールエーテル、シロキサン、カーボネート、アミの、ヒドロキシル及び/又はβ−ヒドロキシアルキルアミド基等の他の官能基を含む成分と生じる可能性がある。
【0086】
したがって、本発明のコーティング組成物は、好ましくは熱硬化性であり、このことは、上記の反応性官能基の化学反応によって、熱エネルギーによって可能となる、この化学反応のエネルギー活性化とともに架橋が生じる(コーティング膜の形成)可能性があることを意味する。極めて特に好ましくは、前記少なくとも1種のメラミン樹脂(A)と、前記バインダ(E)のヒドロキシル基との架橋があり、言い換えれば、本発明のコーティング組成物は、熱硬化性であり、且つ外部架橋している(externally crosslinking)。
【0087】
ある官能基を含むポリマーが、場合により同様にポリマー性の、架橋剤(架橋剤は、使用される前記有機ポリマーに存在する反応性官能基に相互補完的である反応性官能基を含む。)と称される、異なる薬剤と反応する場合、外部架橋が生じる。したがって、この点において、前記メラミン樹脂(A)は、例えば、架橋剤と称され得、メチロール基、及び/又はメチロールエーテル基を介して、ヒドロキシル官能性ポリマー(E)と架橋する。
【0088】
理解されるように、さらなる成分が存在することも可能であり、これらの成分は、一般に、当業者によって架橋剤と特定されている。例としては、遊離、及びブロック化ポリイソシアネートを含む。これらはまた、例えばメラミン樹脂と、及び/又はヒドロキシ官能性ポリマー(E)と架橋し得る。
【0089】
これは、当然、前記コーティング組成物が、比例的に自己架橋(これは相互補完的な反応性官能基が、バインダとして使用される単一のポリマー中に、既に存在することを意味する。)することも除外しない。そのような比例的な自己架橋はまた、具体的には、メチロール基、メチロールエーテル基、及び/又はN−アルコキシメチルアミノ基を含む成分の場合、言い換えれば、例えばメラミン樹脂(A)の場合にも発生する。
【0090】
例として、比例的な物理的硬化(すなわち、バインダのポリマー分子のコーティング又はルーピング(looping)の中における結合を伴う、コーティング組成物からの溶剤の喪失の結果としての膜化によるコーティング組成物の層の硬化)のような、さらなる硬化機構も同様に、当然、除外されない。
【0091】
しかしながら、前記コーティング組成物は、いずれの場合にも、メラミン樹脂(A)だけでなく、バインダとして、ヒドロキシ官能性ポリマー(E)、特にポリステル(E)の使用によって、外部架橋することが好ましい。
【0092】
上記の反応性官能基について、ポリマー(E)の官能性は、非常に広範囲に変化してもよく、具体的には、いずれの場合にも、得られるべき架橋密度によって、及び/又は使用される架橋剤の官能性によって導かれる。好ましいヒドロキシル官能性バインダ(E)の場合、例えば、特に好ましいヒドロキシ官能性アクリレートポリマー、ポリウレタンポリマー、及び/又はポリエステル、特にポリエステルの場合は、OH価は、DIN53240に従って、好ましくは15〜300、さらに好ましくは30〜250、特に好ましくは40〜200、特に好ましくは50〜150、特に55〜140mgKOH/gである。
【0093】
上記の相互補完的な官能基は、高分子化学の慣例、及び公知の方法に従って、バインダ中に取り込ませることができる。これは、例えば、相当する反応性官能基を有するモノマーを通じて、及び/又はポリマー類似反応(polymer-analogous reaction)によって行われ得る。
【0094】
適切なバインダ(E)、特に、アクリレートポリマー、ポリウレタンポリマー、及び/又はポリエステル、特に好ましくは、ポリエステルは、例えば、500〜10000g/molの数平均分子量を有するが、しかしながら、これは、より低くても、又はより高くてもよく、特により高くてもよい。重量平均分子長は、例えば、2000〜20000g/molの範囲にある。分子量は、スチレン−ジビニルベンゼンカラムの組み合わせにおいて、溶出液(1ml/分)としてTHF(+0.1%酢酸)を用いるGPC分析によって測定される。検定は、ポリスチレン標準を使用して行われる。
【0095】
同様にアクリレートポリマー(E)が含まれてもよい。アクリレートポリマーは、周知のように、(メタ)アクリレート(コ)ポリマーとも称され、語句(メタ)アクリレートは、前記ポリマーが、アクリレート及び/又はメタクリレートモノマーを含むか、又はそのようなモノマーからなるということを明確にする。
【0096】
適切なアクリレートポリマーは、これに関連して公知であり、反応性官能基(特にヒドロキシル基)を有するオレフィン性不飽和モノマーを、一般に反応性官能基を有さないモノマーと組み合わせて使用する、当業者に公知の方法によって、調製され得る。
【0097】
適切な反応性官能基を含むオレフィン性不飽和モノマーの例としては、以下の通りである:
a)分子当たり、少なくとも1種のヒドロキシル、アミノ、アルコキシメチルアミノ、カルバメート、アロファネート、又はイミノ基を有するモノマー:例えば、
・酸でエステル化されるアルキレングリコールに由来する、又はα、β−オレフィン性不飽和カルボン酸と、エチレンオキシド若しくはプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとの反応によって得られるアクリル酸、メタクリル酸、又はその他のα、β−オレフィン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、特にアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、若しくはイタコン酸のヒドロキシアルキルエステル(前記ヒドロキシアルキル基は、20個以下の炭素原子を含む)であり、例えば2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシブチル、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メタクリレート、エタクリレート、クロトネート、マレエート、フマレート、若しくはイタコネート等;又は1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンジメタノール等のヒドロキシシクロアルキルエステル、又はメチルプロパンジオールモノアクリレート、モノメタクリレート、モノエタクリレート、モノクロトネート、モノマレエート、モノフマレート、若しくはモノイタコネート;例えば、ε−カプロラクトン、及びそのヒドロキシアルキル又はシクロアルキルエステル等の環状エステルの反応生成物;
・アリルアルコール等のオレフィン性不飽和アルコール;
・トリメチロールプロパンモノアリル、若しくはジアリルエーテル、又はペンタエリスリトールモノアリル、ジアリル、又はトリアリルエーテル等のポリオール;
・アクリル酸、及び/又はメタクリル酸と、分子当たり5〜18個の炭素原子を有するα−分岐モノカルボン酸の、特にVersatic(登録商標)酸のグリシジルエステルとの反応生成物、又は代わりに、その後、重合反応の間若しくは後に反応される、当量のアクリル、及び/又はメタクリル酸と、分子当たり5〜18個の炭素原子を有するα−分岐モノカルボン酸の、特にVersatic(登録商標)酸のグリシジルエステルとの反応生成物;
・アミノエチルアクリレート、アミノエチルメタクリレート、アリルアミン、又はN−メチルイミノエチルアクリレート;
・N,N−ジ(メトキシメチル)アミノエチルアクリレート若しくはメタクリレート、又はN,N−ジ(ブトキシメチル)アミノプロピルアクリレート若しくはメタクリレート;
・(メタ)アクリルアミド、N−メチル−、N−メチロール−、N,N−ジメチロール−、N−メトキシメチル−、N,N−ジ(メトキシメチル)−、N−エトキシメチル−、及び/又はN,N−ジ(エトキシエチル)−(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;
・アクリロイルオキシ−、又はメタクリロイルオキシエチル、−プロピル、若しくは−ブチルカルバメート、又はアロファネート;カルバメート基を含む適切なモノマーのさらなる例は、特許公報U.S.Pat.No.3,479,328、U.S.Pat.No.3,674,838、U.S.Pat.No.4,126,747、U.S.Pat.No.4,279,833、又はU.S.Pat.No.4,340,497に記載される。
【0098】
b)分子当たり少なくとも1種の酸基を有するモノマー:例えば、
・アクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、またはイタコン酸;
・オレフィン性不飽和スルホン酸、又はホスホン酸、又はそれらの部分エステル;
・モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルマレエート、スクシネート、またはフタレート;又は
・ビニル安息香酸(全ての異性体)、α−メチルビニル安息香酸(全ての異性体)、又はビニルベンゼンスルホン酸(全ての異性体)。
【0099】
c)アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、またはイタコン酸のグリシジルエステル、又はアリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー。
【0100】
比較的高い官能性である上記種類のモノマーは、一般に使用されていないか、又は少量でのみ使用される。本発明の目的のため、比較的高い官能性のモノマーの少量は、コポリマーの、特に(メタ)アクリレートコポリマーの架橋、又はゲル化を引き起こさない量を意味する。
【0101】
反応性官能基を有さないオレフィン性不飽和モノマーの適切な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、又は他のα、β−オレフィン性不飽和カルボン酸のアルキルエステル、ビニル芳香族化合物、及びこれらのモノマーの混合物を含む。
【0102】
同様にポリマー(E)として使用され得るポリウレタンポリマーは、例えば、当業者に公知の方法において:
・好ましくは10000〜20000g/molの数平均分子量を有する、ポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリオールからなる群から選択される少なくとも1種のポリオール、及び
・少なくとも1種のポリイソシアネート、及び
・任意に、分子内に少なくとも1個のイソシアネート反応性官能基、及び少なくとも1個の(潜在的に)アニオン性基を含む少なくとも1種の化合物、
・任意に、少なくとも1個のイソシアネート反応性官能基を含む少なくとも1種のさらなる化合物、及び
・任意に、分子内にヒドロキシル、及び/又はアミノ基を含み、60〜600g/molの数平均分子量を有する少なくとも1種の化合物
を反応することによって得られる。
【0103】
この種類のポリウレタンポリマーは、例えば、ヨーロッパ特許出願EP228003、及びEP574417に記載される。
【0104】
この種類のポリウレタンポリマーは、例えば、イソシアネート成分として、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2−イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン2,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート、1,4−又は1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−又は1,3−又は1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、2,4−又は2,6−ジイソシアナト−1−メチルシクロヘキサン、Henkelによって、商品名DDI1410の下で販売されている二量体脂肪酸由来のジイソシアネート、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,7−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルヘプタン、又は1−イソシアナト−2−(3−イソシアナトプロピル)シクロヘキサン、又はテトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、又はこれらのポリイソシアネートの混合物、好ましくはテトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、及び/又はイソホロンジイソシアネート、好ましくはイソホロンジイソシアネート等の、塗料工業部門において典型的に使用されるイソシアネートを使用して得られる。
【0105】
ヒドロキシル及び/又はアミノ基を有する鎖延長剤として、トリメチロールプロパン、及びジエタノールアミンを使用することが好ましい。
【0106】
同様に適切なポリウレタン樹脂(E)は、当業者に工程の方法において、ポリウレタン樹脂の存在下で、エチレン性不飽和モノマーを重合させることによって得られる、アクリル化ポリウレタン樹脂として知られるものである。この場合、二重結合を有さないポリウレタン樹脂、及び/又は二重結合を有するポリウレタン樹脂を使用することが可能である。
【0107】
バインダとして、ペンダント及び/又は末端二重結合を有するアクリル化ポリウレタン樹脂、特にペンダント及び/又は末端エテニルアリーレン基を有するものを使用することも可能である。
【0108】
ペンダント及び/又は末端二重結合を有するアクリル化ポリウレタン樹脂は、少なくとも1個の遊離イソシアネート基を含むポリウレタンプレポリマーと、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合及び1個のNCO−反応性基、特にヒドロキシル基又はアミノ基を有する化合物との反応によって得られてもよい。
【0109】
ペンダント及び/又は末端二重結合を有するアクリル化ポリウレタン樹脂はまた、少なくとも1個のNCO−反応性基、特に少なくとも1個のヒドロキシル基又はアミノ基を含むポリウレタンプレポリマーと、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合及び1個の遊離イソシアネート基を有する化合物との反応によって得られてもよい。
【0110】
また、ペンダント及び/又は末端二重結合を有するアクリル化ポリウレタン樹脂の存在下で、オレフィン性不飽和モノマーを重合させることによって得られるグラフトコポリマーも、バインダ(E)として有用である。
【0111】
特に、少なくとも1種の共重合されたオレフィン性不飽和モノマーの疎水性核(core)、及び少なくとも1種の親水性アクリル化ポリウレタンの親水性殻(shell)を含むグラフトコポリマーが使用される。しかしながら、少なくとも1種の疎水性アクリル化ポリウレタンの疎水性核、及び少なくとも1種の共重合されたオレフィン性不飽和モノマーの親水性殻を含むグラフトコポリマーも、適切である。
【0112】
適切なアクリル化ポリウレタン樹脂及びそれらから調製されたグラフトコポリマーも、例えばWO 01/25307、5頁14行〜45頁4行、及びEP−B−787 159、2頁27行〜7頁13行に記載される。
【0113】
同様に、ポリマー(E)として適切で、本発明の関連で好ましいポリエステルは、飽和していても、又は不飽和でもよく、特に飽和していてもよい。この種のポリエステル、及びそれらの調製、並びにこの調製に使用され得る成分も、当業者に公知であり、例えば、EP−B−787 159に記載される。
【0114】
問題となっているポリマーは、特に、多価有機ポリオール、及び多塩基有機カルボン酸を使用して調製されるポリマーである。これらのポリオール、及びポリカルボン酸は、エステル化によって、言い換えれば縮合反応によって、互いに結合される。一致して、前記ポリエステルは、一般に、重縮合樹脂の群に割り当てられる。使用される種類、官能性及び比率、並びに出発成分の比率に応じて、例えば直鎖、又は分岐の生成物が得られる。直鎖の生成物が、主に二官能性の出発成分(ジオール、ジカルボン酸)を使用する場合に形成されるのに対して、例えば、高い官能性(OH官能性では、これは2より大きい分子当たりのOH基の数である)は、分岐を生成する。当然、調製の間、例えば、モノカルボン酸等の単官能性成分の比例的な使用をすることも可能である。ポリエステルの調製のため、周知のように、対応する有機カルボン酸の代わりに、又は同様に、カルボン酸無水物、特にジカルボン酸無水物を使用することも可能である。同様に、ヒドロキシカルボン酸、又はヒドロキシカルボン酸から、分子内エステル化によって得られるラクトンの使用による調製が可能である。
【0115】
適切なジオールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ネオペンチルグリコール等のグリコール、及び1,4−ジメチロールシクロヘキサン、又は2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等の他のジオールである。
【0116】
適切な比較的高い官能性(2より大きいOH官能性)のアルコールは、例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、及びペンタエリスリトールである。
【0117】
ポリエステルの酸成分は、一般に、2〜44個、好ましくは4〜36個の炭素原子を有するジカルボン酸又はその無水物を含む。適切な酸は、例えば、o−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、ヘキサクロロヘプタンジカルボン酸、テトラクロロフタル酸、及び/又は二量体化脂肪酸である。これらの酸の代わりに、存在する場合は、それらの無水物を使用することも可能である。さらに、3個以上のカルボキシル基を有する比較的高い官能性のカルボン酸(及び/又は対応する無水物)(例としては無水トリメリット酸である。)、を使用することが可能である。比例的に、例えば、不飽和脂肪酸等のモノカルボン酸が使用されることが多い。
【0118】
使用され得るヒドロキシカルボン酸は、例えば、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシデカン酸、及び/又は12−ヒドロキシステアリン酸である。使用され得るラクトンは、例えば、それ自体公知である、β−、γ−、δ−、及びε−ラクトンであり、特にε−カプロラクトンである。
【0119】
上記のモノマー化合物と同様に、例えば、既にポリマー形態である出発生成物、例えば、ジオールとして、それ自体公知であり、ラクトンと、二価アルコールとの反応によって得られるポリエステルジオールを使用することも可能である。
【0120】
上記のバインダとして好ましいポリマー(E)、言い換えれば、アクリレートポリマー、ポリウレタンポリマー、及び/又はポリエステルは、それ自体、又は互いに組み合わせて、本発明のコーティング組成物において使用され得る。
【0121】
アクリレートポリマー、ポリウレタンポリマー、及び/又はポリエステル(E)に加えて、バインダとして、さらなるポリマーを使用することも可能である。着色塗料、特にベースコート材料において自動車工業部分に慣例的に使用される対応するバインダは、当業者に公知であり、当業者に容易に選択され得る。
【0122】
一例として、部分的に加水分解されたポリビニルエステルは、さらなるエチレン性不飽和モノマーのランダム、交互及び/又はブロック化、直鎖及び/又は分岐、及び/又は櫛状(コ)ポリマーとして挙げられる。さらなる重付加樹脂及び重縮合樹脂の例は、アルキド、ポリラクトン、ポリカーボネート、ポリエーテル、エポキシ樹脂−アミン付加物、ポリウレア、ポリアミド、又はポリイミドである。
【0123】
さらなるバインダ(E)、特にアクリレートポリマー、ポリウレタンポリマー、及び/又はポリエステル、特に好ましくはポリエステルの量は、いずれの場合にも、本発明のコーティング組成物の総量に基づいて、好ましくは6質量%〜30質量%、さらに好ましくは8質量%〜25質量%、特に好ましくは10質量%〜20質量%、具体的な一実施形態において、12質量%〜18質量%である。
【0124】
本発明のコーティング組成物において、有利には、ポリマー微粒子(M)を使用することも可能である。適切なポリマー微粒子は、例えば、EP−A−480959、3頁36行〜4頁35行、WO96/24619、WO99/42529、EP−B−1173491、EP−B−1185568、WO03/089487、WO03/089477、WO01/72909、及びWO99/42531に記載される。前記ポリマー微粒子は、具体的には、平準化性、蒸発挙動、及び透明コート材料による初期溶解性に対する状態を調製するために使用され得る。適切なポリマー微粒子は、典型的には、2000〜100000g/molの数平均分子量を有する。分子量は、スチレン−ジビニルベンゼンカラムの組み合わせにおいて、溶出液(1ml/分)としてTHF(+0.1%酢酸)を用いるGPC分析によって測定される。検定は、ポリスチレン標準を使用して行われる。
【0125】
適切なポリマー微粒子はまた、典型的には、ISO13320−1に従って、0.01〜10μm、特に0.01〜5μm、特に好ましくは0.02〜2μmの平均粒子径を有する。
【0126】
使用されるポリマー微粒子は、特に好ましくは、前記架橋剤の官能基と反応することができる反応性官能基を含む。具体的には、ポリマー微粒子は、ヒドロキシル基を含む。この場合、前記ポリマー微粒子は、好ましくはDIN53240に従って、5〜150mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。ヒドロキシル含有ポリマー微粒子は、例えば、WO01/72909に記載される。
【0127】
架橋ポリマー微粒子は、例えば、
(a)分子当たり1個のエチレン性不飽和基を含むエチレン性不飽和モノマー、又はそのようなモノマーの混合物、及び
(b)分子当たり少なくとも2個のエチレン性不飽和基を含むエチレン性不飽和モノマー、又はそのようなモノマーの混合物:
の混合物を、任意に乳化剤の存在下で、又は任意に担体樹脂、好ましくはポリエステルの存在下で、水相で重合させ、その後、この方法で得られた水性ポリマー微粒子を、有機溶剤又は有機溶剤の混合物中へ移動することによって得られる。
【0128】
イオン性及び/又は極性基、好ましくはヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を含む成分を使用して調製されているポリマー微粒子が好ましい。成分(a)及び(b)は、一般に、1質量%〜20質量%、好ましくは3質量%〜15質量%のイオン性及び/又は極性基を含むべきである。
【0129】
十分に架橋されたポリマー微粒子を得るためには、一般に、成分(a)のmol当たり、0.25〜1.2mol、好ましくは0.3〜1molの成分(b)を使用することで十分である。
【0130】
別の方法として、前記コーティング祖背汚物において使用されるポリマー微粒子(M)は、有機相で直接調製されてもよい。
【0131】
使用されるポリマー微粒子は、好ましくは、例えば、
(c)分子当たり少なくとも1個の反応性基を含むエチレン性不飽和モノマー(M1)、又はそのようなモノマー(M1)の混合物、及び
(d)任意に、分子当たり少なくとも1個の(G1)ではない反応性基(G2)を含むエチレン性不飽和モノマー(M2)、又はそのようなモノマー(M2)の混合物、及び
(e)任意に、さらなるエチレン性不飽和モノマー(M3)、又はそのようなモノマー(M3)の混合物:
の混合物を、任意に担体樹脂、好ましくはポリエステルの存在下で、有機溶剤中で重合させることによって得られる。
【0132】
適切なモノマー(M1)の例は、反応性基として、ヒドロキシル基、カルバメート基、アミノ基、アルコキシメチルアミノ基、アロファネート基、又はイミノ基、特にヒドロキシル基を含むモノマーである。
【0133】
ここで反応性基(G1)を有するモノマー(M1)は、第一の化合物が、反応性基、及び少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を含み、並びに他の化合物が、第一の化合物の反応性基と反応性の基、及び任意にエチレン性不飽和二重結合を含む、2種の化合物を反応することによって調製されてもよい。
【0134】
適切なモノマー(M2)の例は、カルボキシル基を含むモノマーである。
【0135】
適切なモノマー(M3)は、典型的に使用される、いわゆる普通のモノマー(natural monomer)、すなわち反応性基を含まないエチレン性不飽和モノマーである。
【0136】
上記から、当然、ポリマー微粒子もまた、特にメラミン樹脂との外部架橋によって、同様に膜形成に寄与し得るポリマーを含む。したがって、これらは、同様にバインダ成分である。しかしながら、いずれにしてもそれらの粒子特性、特に上記の通り測定可能な粒径がある理由で、本発明の目的のため、それらは、バインダ(E)から切り離して考えられる。これは、当然、バインダ(E)が、ある溶剤中で、同様に、凝集粒子、及び/又は微粒子を形成する可能性を除外しない。
【0137】
ポリマー微粒子(M)は、本発明のコーティング組成物において、いずれの場合にもベースコート材料の総質量に基づいて、例えば、3質量%〜30質量%、特に4質量%〜20質量%の量で使用され得る。
【0138】
上記の成分に加えて、本発明のコーティング組成物は、慣例の、及び公知の助剤、及び添加剤を、いずれの場合にも、典型的な量で、各コーティング組成物の総質量に基づいて、好ましくは、0.5質量%〜40質量%、さらに好ましくは0.5質量%〜30質量%、特に0.5質量%〜15質量%で含んでもよい。
【0139】
適切な助剤、及び添加剤の例は、有機及び無機のフィラー、例としては、タルク又はヒュームドシリカ、及び/又は、例えば、酸化防止剤、脱気剤、湿潤剤、触媒、分散剤、乳化剤、フロー制御剤、増粘剤、垂れ防止剤、チキソトロピック剤等のレオロジー助剤、ワックス、スリップ添加剤、反応性希釈剤、フリー・フロー助剤、乾燥剤、殺生物剤、基板のぬれ性を向上させる添加剤、表面平滑性を向上させる添加剤、艶消し剤、ラジカル捕捉剤、光安定剤、好ましくは上記370nm未満に吸収極大を有するUV吸収剤及び/又はHALS、腐食防止剤、難燃剤、又は重合禁止剤等のさらなる慣例の助剤及び添加剤であり、書籍「Lackadditive」[コーティング用添加剤];Johan Bieleman,Wiley−VCH,Weinheim, New York,1998年に詳細に記載される。好ましい助剤、及び添加剤は、レオロジー助剤、脱気剤、湿潤剤、分散剤、UV吸収剤、及びラジカル捕捉剤である。特に好ましい助剤、及び添加剤は、UV吸収剤、及び湿潤剤であり、さらに、フィラーの中では、ヒュームドシリカが好ましい。
【0140】
前記コーティング組成物の固形分は
、35%〜60%、さらに好ましくは最大55%、特に最大50%、特に有利には最大45%である。特に好ましい範囲は、38%〜60%、特に38%〜55%、特に好ましくは38%〜50%、特に有利には38%〜45%である。
【0141】
別段の指示がない限り、本発明の目的のため、固形分は、DIN ISO3251に従って、1.0gの最初の試料質量で、例えば、1.0gの本発明のコーティング組成物で、125℃の温度で、60分間の試験期間をかけて測定される。
【0142】
このテスト方法は、同様に、例えば、全体の組成物の比率として、コーティング組成物の異なる成分の画分を測定するために使用される。したがって、例えば、前記コーティング組成物に添加されるポリマー(E)のバインダ分散系の固形分が、全体の成分におけるこのポリマー(E)の比率を確定するために、それに応じて測定され得る。
【0143】
上記条件下で、言い換えれば、上記固形分で、好ましい本発明の着色コーティング組成物は、Ford 3 cupにおいて、23℃で、16s〜35s、さらに好ましくは20〜28sのフロー時間の粘度を有する。本発明の目的のため、この範囲の粘度は、噴霧粘度(加工粘度)と称される。周知のように、コーティング組成物は、噴霧粘度で、すなわち、具体的には、それらが高過ぎない粘度を有する、存在する条件下で、塗布される。このことは、噴霧粘度の設定が、噴霧技術による全ての塗料を塗布することができるため、及び完全な、均一なコーティングが、コーティングされる基板上に形成することができることを確保するために、重要であることを意味する。本発明のコーティング組成物は、環境的に有害な有機溶剤で、さらに希釈する必要が無いように、噴霧粘度で、高い固形分を有することが、特に有利である。したがって、固形分について、好ましい範囲、特に下限は、塗布可能状態において、本発明のコーティング組成物が、比較的高い固形分(高固形分系)、及びそのために、比較的低VOCを有するという事実から、確認され得る。
【0144】
[本発明の多層塗装系を製造するためのさらなるコーティング組成物]
[透明コート]
上記の通り、本発明の多層塗装系は、本発明のコーティング組成物を、ベースコートとして使用し、その後、透明コート材料を、ベースコート膜に、好ましくは、まだ未硬化のベースコート膜に(ウェット・オン・ウェット)塗布することによって製造される。したがって、この方法においては、本発明の多層塗装系が、少なくとも1層のべースコート、及び少なくとも1層の透明コートを含んで得られる。好ましくは、正確に1層の各層が存在する。
【0145】
本発明の多層塗装系の透明コートを製造するために適切な透明コート材料は、典型的に使用され、メラミン樹脂を含む透明コーティング組成物である。例として、透明コーティング組成物の固形分に基づいて、20質量%未満のメラミン樹脂画分を有する透明コート材料が適切である。これらは、一成分組成物として、又は二成分若しくは多成分コーティング組成物として処方されてもよい、水性、又は溶剤含有の透明コーティング組成物である。さらに、粉体スラリー透明コートをまた、適切である。溶剤型透明コートが、好ましく、言い換えれば、少なくとも1種の有機溶剤を含むものである(「溶剤型」の規定に関して、上記参照)。
【0146】
適切な透明コーティング組成物は、例えば、WO03/050194A1、US2008/076868A1、及びWO06/063304A1に記載される。カルバメート基を含む透明コーティング組成物、すなわち、バインダとして、カルバメート官能性のポリマーを含む透明コート材料を使用することが好ましい。
【0147】
透明コーティング組成物(透明コート)は、好ましくは、噴霧粘度で、少なくとも45%、少なくとも47%の固形分を有し、かつ溶剤型である(噴霧粘度、及び固形分に関して、上記参照)。
【0148】
使用される透明コーティング組成物は、熱的、及び/又は特にUV照射による等の放射線による、硬化性であってもよい。
【0149】
透明コーティング組成物は、慣例的に、官能基を有する少なくとも1種のバインダ、及び前記バインダの官能基と相補的な官能性を有する少なくとも1種の架橋剤も含む。そのような相補的な官能基の例としては、例えば、いずれの場合にも、以下の互いに相補的なコンビ(duo)(a/b):(カルボキシル/エポキシ)、(アミン又はチオール又はヒドロキシル/ブロック化、又は遊離イソシアネート、又はアルコキシル化アミノ基、又はエステル交換性基)、((メタ)アクリロイル/CH−酸性、又はアミン、又はヒドロキシル、又はチオール)、(カルバメート/アルコキシル化アミノ基)、及び((メタ)アクリロイル/(メタ)アクリロイル)である。
【0150】
相当する架橋剤と組み合わせて、特にイソシアネート、アミノプラスト樹脂、及び/又は無水物と組み合わせて、好ましくは、ヒドロキシル、アミノ、カルバメート、カルボキシル、(メタ)アクリロイル基、及び/又はチオール基を有する、ポリウレタン樹脂、及び/又はポリアクリレート樹脂、及び/又はポリエステル樹脂に基づく溶剤含有透明コーティング組成物を使用することが好ましい。したがって、そのような系は、熱硬化性で、且つ外部架橋性である。
【0151】
熱硬化性で、かつ外部架橋性である、少なくとも45%、好ましくは少なくとも47%の固形分を有する溶剤型一成分透明コート材料が、特に好ましく使用される。これに関連して、ポリウレタン樹脂、及び/又はポリアクリレート樹脂、及び/又はポリエステル、特にヒドロキシル基、及び/又はカルバメート機を含むこれらのバインダが、バインダとして好ましく使用される。これらのバインダと組み合わせて、架橋剤として、既に上述した通り、メチロール基、特にメチロールエーテル基を有する、メラミン樹脂が、好ましく使用される。
【0152】
バインダ及び架橋剤の他に、前記透明コート材料は、書籍「Lackadditive」Johan Bieleman著,Wiley−VCH,Weinheim, New York,1998年に詳細に記載されるような、例えば、架橋触媒、消泡剤、接着促進剤、基板のぬれ性を向上させる添加剤、表面平滑性を向上させる添加剤、艶消し剤、光安定剤、好ましくは370nm未満に吸収極大を有するUV吸収剤及び/又はHALS、腐食防止剤、殺生物剤、難燃剤、又は重合禁止剤等の慣例の助剤及び添加剤を含む。
【0153】
具体的な一実施形態において、透明コート材料はまた、オルガノシロキサン(D)を含む。透明コート材料の特別なオルガノシロキサンの含有量は、好ましくは0.01質量%〜4質量%、特に0.05質量%〜3質量%、特に好ましくは0.1質量%〜2.5質量%である。しかしながら、透明コートにおいて、前記オルガノシロキサンを使用する必要が無いことが、本発明の特に有利な点である。透明コートにおけるその使用は、ある場合においては、適切であり得るが、外観、及びシート接合接着性に関する特性の極めて優れた側面は、その使用なしであっても、達成される。
【0154】
本発明の多層塗装系を製造するために、同様に使用され得る、さらなるコーティング組成物、特にプライマー、及びサーフェーサーは、これに関連して当業者に公知のコーティング組成物であり、一般に市販されている。
【0155】
[本発明の多層コーティング系の製造]
前記多層コーティング系を製造するため、接着剤層、特に水分硬化性のイソシアネート系接着剤の層が、本発明の多層塗装系に塗布される。上記の通り、本発明の多層塗装系は、極めて優れたシート接合接着性を有し、これは前記接着剤が、前記多層塗装系に、非常に良く接着することを意味する。接着剤層は、前記多層塗装系の最上層を形成する透明コート上に直接位置する。したがって、塗布された接着剤層の場合、多層塗装系と接着剤層との間に、接着プライマーの中間コートは特にない。
【0156】
接着剤層は、水分硬化性のイソシアネート系接着剤を、直接、すなわち、さらなる中間コート無しで、硬化し、冷却した多層塗装系の最上層の透明コート膜に塗布することによって製造される。水分硬化性のイソシアネート系接着剤は、例えば、スプレー法等の慣例の、適切な方法によって、0.1〜5mmの慣例の接着剤層の厚さで、塗布され得る。
【0157】
適切な接着剤は、例えば、特許明細書US5,852,137に記載される。フロントガラスの接合のために典型的に使用される水分硬化性のイソシアネート系接着剤が、特に適切である。そのような接着剤は、例えば「Betaseal(登録商標)」の名称で、Dow Automotiveから商業的に入手され得る。水分硬化性のイソシアネート系接着剤(ポリウレタン接着剤)は、一般に、一成分接着剤として、又は二成分接着剤として使用され得る。水分硬化性のイソシアネート系一成分接着剤を使用することが、特に好ましい。
【0158】
これに続いて、その後、ガラスシートが、多層コーティング系に接合され得、したがって、言い換えれば、本発明に従う使用方法が、行われ得る。
【0159】
「接合(bonding)」は、本発明の多層コーティング系による、前記基板上への、又は基板へのガラスシートの長期間の固定を意味するものである。
【0160】
考えられるガラスシートは、全ての慣例、公知のガラスシートを含む。前記ガラスシートは、好ましくはフロントガラスである。
【0161】
本発明に従う使用方法の工程(3)(ガラスシートの、前記接着剤層への貼り付け、及びその後の、接着剤の硬化)、は、以下のように実施される:清浄なガラスシートを、新たに塗布された接着剤層に貼り付け、固定し、押圧する。接着剤は、大気の湿度が十分な場合に、室温で硬化され得る。接着剤の硬化は、例えば、50%の相対湿度の大気湿度で、25℃の温度、72時間に渡って行われ得る。
【0162】
本発明は、以下の本文の実施例を使用して、さらに説明される。
【実施例】
【0163】
1.本発明、及び比較例のベースコート材料の調製
本発明のベースコート材料1、並びに比較例のベースコート材料C−2、及びC−3を以下のように調製した。
【0164】
1.1 バインダとしてのポリエステル(E)の調製
撹拌器、電気抵抗加熱、温度計、ポールリングで充填され、上部に温度計が装備された充填カラム、蒸留ブリッジ(distillation bridge)、凝縮器、及びレシーバーを有する2Lの四つ口フラスコに、81.0質量部の1,6−ヘキサンジオール、108.0質量部のネオペンチルグリコール、28.0質量部のグリセロール、38.0質量部のトリメチロールプロパン、99.0質量部のアジピン酸、157.0質量部の無水フタル酸、及び125.0質量部のイソフタル酸を入れる。反応混合物は、撹拌しながら、160℃に急速に加熱し、30分間160℃で保持する。温度を、160℃から、カラム上部の温度が103℃を超えないような速度で、1.5時間の間に190℃に上昇させる。その後、前記バッチを150℃に冷却し、63.0質量部のCardura E10P、及び7.0質量部のキシレンを添加し、その後、加熱し、165℃で1時間保持する。その後、前記バッチを230℃に加熱し、酸価が、10mgKOH/g(DIN ISO2114:2002−06に従って測定する)のレベル未満に下がるまで、230℃で保持する。さらに、エポキシ変性ポリエステルを、冷却し、238.0質量部の溶剤ナフサ155/185、24.0質量部の1−メトキシプロピルアセテート、及び35.0質量部のエチルエトキシプロピオネートの混合物で、希釈する。その結果、65%濃度のバインダ溶液(固形分)が得られる。結果として得られるエポキシ変性ポリエステルは、いずれの場合にも固形分に基づいて、8mgKOH/gの酸価、及び102mgKOH/gのOH価を有する。重量平均分子量は、14500g/molである。
【0165】
1.2 ポリマー微粒子の調製
まず第一に、担体樹脂を調製する:反応器中に、5.762質量部のキシレン、5.762質量部のトルエン、及び0.179質量部のメタンスルホン酸を導入し、104℃に加熱する。その後、80.615質量部の12−ヒドロキシステアリン酸を、反応器に流し込み、前記バッチを、環流で、171℃で沸騰させ、反応の水を除去する。反応は、酸価が35に達するときに終了する。冷却後、固形物を溶剤ナフサで80質量部に調節する。
【0166】
次に実際のポリマー微粒子を調製する:反応器中に、43.2質量部の溶剤ナフサ、0.08質量部のN,N−ジメチルココサミン(N,N-dimethylcocosamine)、及び1.0質量部の酢酸エチルを導入し、104℃に加熱する。反応器を、69kPa(0.69bar)下に置き、同時に、2時間の間に、27.6質量部のメチルメタクリレート、3.8質量部の2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、0.8質量部のグリシジルメタクリレート、12.8質量部の上記の担体樹脂、1.5質量部のメタクリル酸、及び1.5質量部のオクチルメルカプタンからなるモノマー混合物、並びに2.3質量部のtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、及び5.1質量部の溶剤ナフサからなる開始剤混合物を反応器に入れる。その後、前記バッチを、上記温度及び圧力で、3時間保持し、それを冷却した後、溶剤ナフサで固形物41.0%に調節する。
【0167】
本発明のベースコート材料1(B−1)及び比較例のベースコート材料C−2及びC−3を製造するため、表1に記載された成分を記載された量(質量部)で混合し、結果として得られた混合物を均質にした。塗布粘度(噴霧粘度)の設定のため、いずれの場合にも、酢酸ブチル(5質量部)をさらに添加した。表1はまた、使用した成分の固形分(SC)、顔料含有量(PC)、有機溶剤含有量(OS)、及びバインダ含有量(BC)、並びに結果として得られたベースコート材料の固形分及び粘度も示す。
【0168】
【表1】
【0169】
Resimene755:Ineos製メラミン樹脂
触媒:Nacure5225(King Industries製)
アルミニウム顔料:Metalux Alu(Eckart製)
オルガノシロキサン(D):使用された製品は、市販品Silwet L−7608(Momentive製)であった。
【0170】
全てのベースコート材料は、39%の固形分を有し、Ford 3 cupにおいて、23℃で、26sのフロー時間の粘度を有する。噴霧粘度での塗料中のメラミン樹脂の比率は、いずれの場合にも組成物全体に基づいて、C−2においては11質量%、C−3、及びB−1においては16質量%である。
【0171】
2.比較例、及び本発明の多層塗装系MC−1〜MC−4、並びにMI−1及びMI−2の製造
性能特性を、まず、30×20cmの寸法を有する試験パネル上に、慣例、公知の方法で、ベースコート材料B−1、C−2、及びC−3を使用して、多層塗装系を製造することによって試験した。
【0172】
これを行なうため、陰極電着塗装した鋼鉄試験パネルを、慣例の市販ポリエステル系グレイサーフェーサー(BASF Coatings AG製)でコーティングし、その後、結果として得られたサーフェーサー膜を20℃、65%の相対湿度で5分間フラッシュオフし、強制空気オーブン中で、165℃の基板温度で、5分間焼付けした。
【0173】
試験パネルを20℃に冷却した後、ベースコート材料B−1、C−2、及びC−3を、自動化されたESTAスプレー塗布によって、その後の硬化後に、17〜19マイクロメートルの乾燥膜厚を得られるように塗布した。続いて、ベースコート膜を、5分間フラッシュオフし、次に、溶剤含有、任意にオルガノシロキサン変性(以下参照)、高固形分一成分透明コート材料(BASF Coatings GmbH製)で、その後の硬化後に、37〜39マイクロメートルの乾燥膜厚を得られるようにコーティングした。その後、5分間のフラッシュオフ静止時間を続け、その後、前記ベースコート膜、及びそれらを覆って塗布された透明コート膜を一緒に、140℃の基板温度で10分間焼付けした。この結果、比較例、及び本発明の多層塗装系MC−1〜MC−4(比較例)、並びにMI−1及びMI−2(本発明)が得られた。
【0174】
使用した透明コート材料は、噴霧粘度(Ford 3 cupにおいて、23℃で、26sのフロー時間)で、48%固形分を有する。これは、カルバメート官能性アクリレートバインダ、及びメラミン樹脂(Resimene747)架橋剤を含む透明コート材料である。オリジナルのBASF Coatings GmbH透明コートを使用して製造した多層塗装系(CC標準)だけでなく、透明コートが2質量%のオルガノシロキサン(D)(Silwet L−7608)で混合、又は変性されている多層塗装系(CC(D))も製造した。
【0175】
表2は、多層塗装系を製造する際に使用されたベースコートおよび透明コート材料の概要を示す。
【0176】
【表2】
【0177】
3.性能調査
3.1 外観
まず最初に、製造された多層塗装系の全体の外観を調査した。測定は、「Wave Scan DOI」 機器(Byk/Gardner製)を用いて行なった。測定パラメータは、上記機器の測定値LU(光沢;艶の評価)、SH(鮮明さ;画像の明白性の評価)、及びOP(オレンジ皮様;平準化性の評価)を使用して計算され、したがって、前記コーティングの全体の光学的品質、又は概観の測定を表す、CF値である(CF=0.50×OP+0.35×SH+0.15×LU)。CF値が高いほど、外観が高品位である。
【0178】
3.2 シート接合接着性
さらに、シート接合接着性(これは、接着剤材料及び多層塗装系の間を接合する接着剤の品質である。)を試験した。
【0179】
この目的のため、室温(25℃)で24時間保存後に、各多層塗装系MC−1〜MC−4、並びにMI−1及びMI−2の完全な透明コート膜を覆って、水分硬化性のイソシアネート系接着剤(Betaseal(登録商標)1858−1、Dow Automotive製)を、長手方向にストリップ形成して塗布した。前記接着剤を、50%大気湿度、及び25℃で、72時間硬化した。接着剤の硬化に続いて、クイック−ナイフ試験(quick-knife test)を行なう。この試験のため、硬化した接着剤組成物のストリップを、一短辺で(すなわち、ストリップの2端部の内の1端部で)、基板と平行に、接着剤層の範囲内で約5cmの幅に切り込みを入れ、それにより、基板上に硬化した接着剤材料の手でつかめる上部末端、及び、約5cm長で、相応により薄い接着剤の下側層を形成する。その後、手でつかめる末端を、接着剤材料のストリップが連続している方向に、引っ張り、それにより、接着剤層の範囲内で前に作製した切り込みを引き続いて伸ばす。この引っ張り除去と同時に、相応により薄い、接着剤の層に、基板に至るまで(すなわち、透明コート膜の表面に至るまで)、接着剤材料のストリップに垂直に、ナイフでの切断を、約12mm毎に行う。前記切断は、いずれの場合にも、既に除去された接着剤ストリップの一部が、まだ当初の接着剤ストリップの一部と交わる、すぐ前の部分で行なう。接着剤層が、前記層の範囲内で、言い換えれば、基板と平行に、最初の切断に理想的に沿って、完全に裂ける場合、シート接合接着性は、許容範囲であるか、又は非常に良好である。その理由は、この場合、シート接合接着性(これは、透明コート膜と接着剤との間の接着性である)が、接着剤層の範囲内の接着力(いずれの場合も十分である)よりも、大きいからである。しかしながら、少なくとも比例的な層間剥離が、接着剤層/透明コート膜の界面であれば、この界面での接合力は、明らかに低下しているか、又は不十分である。
【0180】
具体的な評価基準:
1:0%の接着剤層の範囲内での裂け目領域(非常に劣ったシート接合)
2:約25%の接着剤層の範囲内での裂け目領域(劣ったシート接合)
3:約50%の接着剤層の範囲内での裂け目領域(まだ不十分なシート接合)
4:75%の接着剤層の範囲内での裂け目領域(良好なシート接合)
5:100%の接着剤層の範囲内での裂け目領域(非常に良好なシート接合)
表3は、種々の多層塗装系及び多層コーティング系のための、外観及びシート接合接着性の結果を示す。
【0181】
【表3】
【0182】
前記結果は、本発明に従う系が、極めて優れた外観と、非常に良好なシート接合接着性とを兼ね備えることを明確に示す。標準系と比較すると、特に、いずれの場合にも後者では、特性の1種が、他の特性を犠牲にして、受け入れられないことが認められる。良好、又は少なくとも非常に劣っていないシート接合接着性が、劣った外観と調和して、達成される(ベースコート材料C−2におけるメラミン樹脂の低画分)、或いは、劣ったシート接合接着性(ベースコート材料C−3におけるメラミン樹脂の高画分)が、良好な外観と調和して得られる。驚くべきことに、ベースコート材料におけるオルガノシロキサン(D)の使用により、上記の特性の間に、優れたバランスが得られる。これは、特に、いずれの場合にも、それらの間の唯一の相違点が、ベースコート材料へのオルガノシロキサンの添加である、系MC−2とMI−1、及びMC−4とMI−2との比較から明らかである。さらに驚くべきことは、接着剤層と直接接触していない、ベースコート材料への前記添加の結果として、透明コートへの添加によるよりも、実質的にさらに有利な効果が、達成され得ることであった。