特許第6386042号(P6386042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386042
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】リニアモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/02 20060101AFI20180827BHJP
   H02K 9/04 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   H02K41/02 Z
   H02K9/04 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-527588(P2016-527588)
(86)(22)【出願日】2014年6月13日
(86)【国際出願番号】JP2014065724
(87)【国際公開番号】WO2015189979
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2017年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】山田 修平
【審査官】 上野 力
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−238238(JP,A)
【文献】 特開平11−206099(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/145086(WO,A1)
【文献】 特開2010−172071(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/040913(WO,A1)
【文献】 特開2003−309963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/02
H02K 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線的に延びる固定子に沿って可動子を直線駆動するリニアモータにおいて、
前記可動子の放熱面側に放熱部材を配設すると共に、該放熱部材の表面に沿って空気を流して排気する冷却ファンを該放熱部材の表面側に配設し、
前記可動子の側面に、前記冷却ファンの排気作用によって空気を吸い込んで該可動子の側面に沿って流して前記放熱部材へ導く導風ダクトを配設したリニアモータであって、
前記導風ダクトは、前記可動子の側面と前記放熱部材の側面の両方を覆うように配設され、該導風ダクトの両端の開口をそれぞれ第1の空気吸込み口と第2の空気吸込み口とし、前記冷却ファンの排気作用によって前記第1の空気吸込み口から吸い込まれて前記可動子の側面に沿って流れる空気の流れと前記第2の空気吸込み口から吸い込まれた空気の流れとが該放熱部材の側面付近で衝突することで、該空気の流れ方向が該放熱部材の中央部に向かう方向に曲がるように構成されていることを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
前記導風ダクトは、断面コ字状に形成され、該導風ダクトと前記可動子の側面とによって断面四角形状の空気流路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記放熱部材は、放熱プレートの表面側に複数のフィンを平行に形成した放熱フィンであり、該放熱プレートの裏面が前記可動子の放熱面と重ね合わされ、且つ、各フィン間の空隙の端が前記導風ダクト内の空気流路とつながるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記導風ダクトは、前記可動子の移動方向の前後両側面にそれぞれ該可動子の移動方向の前後両側面と前記放熱部材の両側面の両方を覆うように配設されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のリニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動子を放熱させる放熱構造を改良したリニアモータに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来のリニアモータの放熱構造としては、例えば、特許文献1(特開2012−44867号公報)に記載されているように、リニアモータの可動子に放熱フィンを設けると共に、直線的に延びる固定子に沿って移動する可動子の放熱フィンの移動空間全体を覆うように導風ダクトを固定子に沿って設け、該導風ダクトの両端部にファンを設けて、該ファンの回転により該導風ダクト内に空気の流れを生じさせて可動子の放熱フィンの放熱を促進させるようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−44867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の放熱構造では、放熱フィンの移動空間全体を覆うように導風ダクトを固定子に沿って設けるため、導風ダクトが大型化してリニアモータの大型化につながるという欠点がある。しかも、放熱フィンのみが導風ダクト内に収容され、可動子が導風ダクトの外側に配置されているため、可動子は、専ら、放熱フィンを通して空気に放熱することでしか冷却されず、導風ダクトの内側を流れる空気を可動子に接触させて該可動子を空冷することはできず、その分、放熱性能向上の効果が低くならざるを得なかった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、可動子の放熱構造を小型化しつつ可動子の放熱性能を向上できるリニアモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、直線的に延びる固定子に沿って可動子を直線駆動するリニアモータにおいて、前記可動子の放熱面側に放熱部材を配設すると共に、該放熱部材の表面に沿って空気を流して排気する冷却ファンを該放熱部材の表面側に配設し、前記可動子の側面に、前記冷却ファンの排気作用によって空気を吸い込んで該可動子の側面に沿って流して前記放熱部材へ導く導風ダクトを配設したことを第1の特徴とし、更に、前記導風ダクトは、前記可動子の側面と前記放熱部材の側面の両方を覆うように配設され、該導風ダクトの両端の開口をそれぞれ第1の空気吸込み口と第2の空気吸込み口とし、前記冷却ファンの排気作用によって前記第1の空気吸込み口から吸い込まれて前記可動子の側面に沿って流れる空気の流れと前記第2の空気吸込み口から吸い込まれた空気の流れとが該放熱部材の側面付近で衝突することで、該空気の流れ方向が該放熱部材の中央部に向かう方向に曲がるように構成されていることを第2の特徴とするものである。
【0007】
この構成では、冷却ファンによって導風ダクト内に吸い込んだ空気を可動子の側面に沿って流して放熱部材へ導くようにしているため、可動子の側面に沿って流れる空気によって可動子の側面を空冷することができ、この空冷作用と放熱部材による放熱作用とによって可動子を効率良く放熱させることができ、可動子の放熱性能を向上できる。しかも、導風ダクトを可動子の側面に沿って設けるだけで良いため、前記特許文献1のように放熱フィンの移動空間全体を覆うように導風ダクトを固定子に沿って設ける構造と比べて、導風ダクトのサイズを大幅に小さくできると共に、上述した放熱性能向上の効果によって放熱部材や冷却ファンの小型化も可能となり、可動子の放熱構造を全体的に小型化することができる。
【0008】
ところで、導風ダクト内を流れる空気は可動子の側面に沿って流れるため、導風ダクトによって空気を可動子の側面から放熱部材へ導いても、その空気が可動子の側面の延長方向である放熱部材の側面付近を流れやすくなり、放熱部材の中央部へ向かう空気の流れが少なくなってしまう可能性がある。
【0009】
この対策として、導風ダクトを可動子の側面と放熱部材の側面の両方を覆うように配設し、該導風ダクトの両端の開口をそれぞれ第1の空気吸込み口と第2の空気吸込み口とし、前記冷却ファンの排気作用によって前記第1の空気吸込み口から吸い込まれて前記可動子の側面に沿って流れる空気の流れと前記第2の空気吸込み口から吸い込まれた空気の流れとが該放熱部材の側面付近で衝突することで、該空気の流れ方向が該放熱部材の中央部に向かう方向に曲がるように構成すると良い。このようにすれば、導風ダクトによって放熱部材の側面へ導いた空気の流れを放熱部材の中央部へ向かわせることができ、放熱部材全体を空気で効率良く冷却して放熱性能を向上させることができる。
【0010】
この場合、導風ダクトを断面コ字状に形成し、該導風ダクトと可動子の側面とによって断面四角形状の空気流路を形成するようにすると良い。このようにすれば、導風ダクト内において可動子の側面に沿って流れる空気の流れを該導風ダクトの幅方向に均一化することができ、可動子の側面全体を空気でほぼ均等に効率良く冷却することができる。
【0011】
また、放熱部材は、どの様な形状のものを使用しても良いが、放熱プレートの表面側に複数のフィンを平行に形成した放熱フィンを使用する場合は、放熱プレートの裏面を可動子の放熱面に重ね合わせ、且つ、各フィン間の空隙の端を導風ダクト内の空気流路とつなげるように構成すると良い。このようにすれば、導風ダクトによって放熱フィンへ導いた空気を放熱フィンの各フィン間の空隙に沿ってスムーズに流すことができ、可動子から放熱フィンに伝達された熱を各フィンから空気に効率良く放散させることができる。
【0012】
本発明は、可動子の1つの側面のみに導風ダクトを配設した構成としても良いが、前記可動子の移動方向の前後両側面に、それぞれ導風ダクトを該可動子の移動方向の前後両側面と放熱部材の両側面の両方を覆うように配設すると良い。このようにすれば、可動子の3面を効率良く冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本発明の実施例1を示すリニアモータの可動子及びその放熱構造を示す斜視図である。
図2図2は導風ダクトを取り外して示す可動子の斜視図である。
図3図3は実施例1の放熱構造の空気の流れを説明する断面図である。
図4図4は実施例2の放熱構造の空気の流れを説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した2つの実施例1,2を説明する。
本発明の実施例1を図1乃至図3に基づいて説明する。
【0015】
図1及び図2に示すように、リニアモータは、直線的に延びる固定子11と、該固定子11に沿って直線駆動される可動子12とから構成されている。固定子11は、図示はしないが、直線的に延びるコアに複数の永久磁石を交互に異極となるようにリニアに等ピッチで配列して構成され、この固定子11の永久磁石の配列に沿って可動子12が移動するようになっている。可動子12には、駆動対象物(図示せず)が取り付けられ、該可動子12を直線駆動することで、該可動子12と一体的に駆動対象物が直線的に移動するようになっている。
【0016】
図3に示すように、可動子12は、複数のティース13を所定間隔でリニアに配列すると共に、各ティース13にそれぞれコイル14を装着し、これら全体を固定枠15で連結固定して一体化した構成となっている。隣接するコイル14間には、該コイル14で発生した熱を後述する放熱フィン21に伝達するヒートパイプ等の高熱伝導部材16が挟み込まれ、可動子12の放熱面12a(図3参照)に高熱伝導部材16の先端が露出している。
【0017】
可動子12の放熱面12a側には、放熱部材である放熱フィン21が配設されている。放熱フィン21は、アルミニウム等の高熱伝導性材料により放熱プレート22の表面側に複数のフィン23(薄板)を平行に形成したものであり、該放熱プレート22の裏面が可動子12の放熱面12aに重ね合わされ、該放熱プレート22の裏面に高熱伝導部材16の先端が密着している。放熱フィン21の表面側には、該放熱フィン21の表面に沿って空気を流して排気する冷却ファン24が配設され、可動子12と放熱フィン21及び冷却ファン24が固定子11に沿って一体的に移動するようになっている。
【0018】
可動子12の移動方向の前後両側面には、それぞれ導風ダクト25が該可動子12の移動方向の前後両側面と放熱フィン21の両側面の両方を覆うように配設されている。各導風ダクト25は、偏平な断面コ字状に形成され、その両端の開口をそれぞれ第1の空気吸込み口26(図3参照)と第2の空気吸込み口27としている。第1の空気吸込み口26は、可動子12の側面のうちの放熱フィン21とは反対側の端に位置し、第2の空気吸込み口27は、冷却ファン24の側面と放熱フィン21の側面との間の境目付近に位置している。尚、導風ダクト25を冷却ファン24側に延長して、該導風ダクト25が冷却ファン24の側面の一部又は前部を覆って第2の空気吸込み口27が冷却ファン24側に張り出した構成としても良い。
【0019】
図3に示すように、冷却ファン24の排気作用によって導風ダクト25の第1の空気吸込み口26から吸い込まれて可動子12の側面に沿って放熱フィン21側(図3の上向き)に流れる空気の流れと第2の空気吸込み口27から導風ダクト25内に図3の下向きに吸い込まれた空気の流れとが該放熱フィン21の側面付近で衝突することで、該空気の流れ方向が該放熱フィン21の中央部に向かう方向に曲がるように構成されている。そして、放熱フィン21の各フィン23間の空隙の両端が両導風ダクト25内の空気流路とつながるように該放熱フィン21が配置されている。
【0020】
以上のように構成したリニアモータにおいては、固定子11に沿って可動子12を駆動する際に可動子12のコイル14に通電するため、コイル14が発熱する。このコイル14で発生した熱は、高熱伝導部材16を伝導して放熱フィン21に伝達される。可動子12の駆動時等、可動子12の冷却が必要な期間には、冷却ファン24を駆動して放熱フィン21側から空気を吸い込んで外部に排出する。この冷却ファン24の排気作用によって導風ダクト25の第1の空気吸込み口26から吸い込まれて可動子12の側面に沿って放熱フィン21側(図3の上向き)に流れる空気の流れと第2の空気吸込み口27から導風ダクト25内に図3の下向きに吸い込まれた空気の流れとが該放熱フィン21の側面付近で衝突することで、該空気の流れ方向が該放熱フィン21の中央部に向かう方向に曲がる。これにより、導風ダクト25によって放熱フィン21へ導いた空気を放熱フィン21の各フィン23間の空隙に沿ってスムーズに流すことができ、可動子12から高熱伝導部材16を介して放熱フィン21に伝達された熱を各フィン23から空気に効率良く放散させることができる。
【0021】
しかも、冷却ファン24によって可動子12の側面に沿って流した空気を放熱フィン21へ導くようにしているため、導風ダクト25内を流れる空気によって可動子12の側面を冷却(空冷)することができ、この空冷作用と放熱フィン21による放熱作用とによって可動子12を効率良く放熱させることができ、可動子12の放熱性能を向上できる。しかも、導風ダクト25を可動子12の側面に沿って設けるだけで良いため、前記特許文献1のように放熱フィンの移動空間全体を覆うように導風ダクトを固定子に沿って設ける構造と比べて、導風ダクト25のサイズを大幅に小さくできると共に、上述した放熱性能向上の効果によって放熱フィン21や冷却ファン24の小型化も可能となり、可動子12の放熱構造を全体的に小型化できる。
【0022】
しかも、本実施例1では、導風ダクト25を偏平な断面コ字状に形成し、該導風ダクト25と可動子12の側面とによって断面四角形状の空気流路を形成するようにしたので、導風ダクト25内において可動子12の側面に沿って流れる空気の流れを該導風ダクト25の幅方向に均一化することができ、可動子12の側面全体を空気でほぼ均等に効率良く冷却することができる。但し、導風ダクト25の形状は、断面コ字状に限定されず、例えば、断面アーチ状等であっても良い。
【0023】
一方、図4に示す本発明の実施例2では、導風ダクト25の両端のうち、放熱フィン21側の端(上記実施例1の第2の空気吸込み口27)を閉鎖し、放熱フィン21とは反対側の端に位置する第1の空気吸込み口26のみを設けた構成としている。その他の構成は上記実施例1と同じである。
【0024】
本実施例2でも、冷却ファン24の排気作用によって導風ダクト25の第1の空気吸込み口26から吸い込まれた空気が可動子12の側面に沿って放熱フィン21側(図4の上向き)に流れるが、前記実施例1とは異なり、導風ダクト25の放熱フィン21側の端に第2の空気吸込み口27が設けられていないため、導風ダクト25によって可動子12の側面から放熱フィン21へ導いた空気がそのまま可動子12の側面の延長方向である放熱フィン21の側面付近を流れやすくなり、放熱フィン21の中央部へ向かう空気の流れが少なくなってしまう可能性がある。
【0025】
その点、前記実施例1では、導風ダクト25の放熱フィン21側の端に第2の空気吸込み口27が設けられているため、第1の空気吸込み口26から吸い込まれて可動子12の側面に沿って流れる空気の流れと第2の空気吸込み口27から吸い込まれた空気の流れとを放放熱フィン21の側面付近で衝突させて該空気の流れ方向を該放熱フィン21の中央部に向かう方向に曲げることができる。これにより、導風ダクト25によって放熱フィン21の側面へ導いた空気の流れを放熱フィン21の中央部へ向かわせることができ、放熱フィン21全体を空気で効率良く冷却して放熱性能を向上させることができる。
【0026】
尚、上記実施例1,2では、可動子12の移動方向の前後両側面に、それぞれ導風ダクト25を配設して、2つの導風ダクト25と放熱フィン21によって可動子12の3面を効率良く冷却できるように構成したが、可動子12の1つの側面のみに導風ダクト25を設けた構成としても良く、或は、可動子12の3つ以上の面(但し固定子11と対向する面及び駆動対象物を取り付ける面を除く)に導風ダクト25を配設した構成としても良い。
【0027】
また、放熱フィン21は、放熱プレート22の表面側に複数のフィン23(薄板)を平行に形成したものに限定されず、放熱プレートの表面側に複数の棒状の突起を格子状に形成したものを用いても良く、或は、板状又はブロック状のヒートシンクを放熱部材として用いても良い。
【符号の説明】
【0028】
11…固定子、12…可動子、12a…放熱面、14…コイル、16…高熱伝導部材、21…放熱フィン(放熱部材)、22…放熱プレート、23…フィン、24…冷却ファン、25…導風ダクト、26…第1の空気吸込み口、27…第2の空気吸込み口
図1
図2
図3
図4