(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386048
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】内燃エンジン用のピストンと噴射ノズルとのサブアセンブリ
(51)【国際特許分類】
F02F 3/00 20060101AFI20180827BHJP
F01M 1/08 20060101ALI20180827BHJP
F02F 3/22 20060101ALI20180827BHJP
F01P 3/08 20060101ALI20180827BHJP
F16J 1/09 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
F02F3/00 K
F01M1/08 B
F02F3/00 301Z
F02F3/22 A
F01P3/08 C
F01P3/08 B
F16J1/09
【請求項の数】12
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-535345(P2016-535345)
(86)(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公表番号】特表2016-532814(P2016-532814A)
(43)【公表日】2016年10月20日
(86)【国際出願番号】DE2014000421
(87)【国際公開番号】WO2015024551
(87)【国際公開日】20150226
【審査請求日】2017年4月21日
(31)【優先権主張番号】102013013962.7
(32)【優先日】2013年8月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャルプ ライナー
【審査官】
櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−008733(JP,U)
【文献】
特表昭56−500419(JP,A)
【文献】
特開平11−132101(JP,A)
【文献】
実開昭63−202720(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2001/0035139(US,A1)
【文献】
特表2003−502557(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/045445(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 3/00
F02F 3/22
F01M 1/08
F01P 3/08
F16J 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストン(10)と、冷却オイルジェット(31)を噴射する冷却オイル用の噴射ノズル(30)とを備えた内燃エンジン用のサブアセンブリ(100)であって、
前記ピストン(10)は、ピストンヘッド(11)と、ピストンスカート(21)とを有し、前記ピストンヘッド(11)は、下面(13a)を持つピストン冠(13)、周囲リング部(16)、及び該周囲リング部(16)において冷却オイル用の少なくとも1つの供給口(19)を持つ周囲冷却チャネル(17)を有しており、
前記ピストン(10)は、冷却オイル用の少なくとも1つの供給口(19)に関して隣接した前記ピストン冠(13)の下面(13a)に冷却オイル用のジェット分割器(25)を有し、
前記噴射ノズル(30)は、前記ジェット分割器(25)の下方に配置され且つ該ジェット分割器(25)に向けられており、
前記ジェット分割器(25)は、前記周囲冷却チャネル(17)の方向に外側を向けて配置され、中心軸(M)から始まる1つのエッジ(25a)を持つ、実質的に断面V字状を有しており、
前記噴射ノズル(30)の中心軸(A)は、前記ピストン(10)の中心軸(M)に対して鋭角(α)をなし、
前記ピストン(10)の前記ジェット分割器(25)は、上死点から下死点まで及びその逆も同様に、1回の行程動作中ごとに1度だけ、前記冷却オイルジェット(31)を横切り、
前記ジェット分割器(25)は、前記冷却オイルジェット(31)を、1回の行程動作中ごとに、前記冷却オイルジェット31のうち、前記周囲冷却チャネル(17)に導かれる部分(31b)と、前記ピストン冠(13)の下面(13a)に導かれる部分(31a)とに分割し、
前記冷却オイルジェット(31)は、上死点の場合と下死点の場合とに、通過したジェット分割器(25)により導かれて、周囲冷却チャネル(17)に直接に入り、
上死点と下死点との間の中間の行程位置において、前記冷却オイルジェット(31)は、前記ジェット分割器(25)に当たることを特徴とするサブアセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載のサブアセンブリにおいて、
前記ジェット分割器(25)は、前記ピストンヘッド(11)と一部品により構成されていることを特徴とするサブアセンブリ。
【請求項3】
請求項1に記載のサブアセンブリにおいて、
前記ジェット分割器(25)は、前記ピストンヘッド(11)と固定して連結された分割部品として構成されていることを特徴とするサブアセンブリ。
【請求項4】
請求項1に記載のサブアセンブリにおいて、
前記ジェット分割器(25)は、第1ガイド面(26)と第2ガイド面(27)とを有しており、
前記第1ガイド面(26)は、前記周囲冷却チャネル(17)に割り当てられ、且つ、前記第2ガイド面(27)は、前記ピストン冠(13)の前記下面(13a)に割り当てられていることを特徴とするサブアセンブリ。
【請求項5】
請求項4に記載のサブアセンブリにおいて、
前記第1ガイド面(26)は、前記周囲冷却チャネル(17)の内面(17a)と連続的に併合されていることを特徴とするサブアセンブリ。
【請求項6】
請求項4に記載のサブアセンブリにおいて、
前記第2ガイド面(27)は、前記ピストン冠(13)の前記下面(13a)と連続的に併合されていることを特徴とするサブアセンブリ。
【請求項7】
請求項1に記載のサブアセンブリにおいて、
前記ピストン(10)は、単一部品ピストンとして構成されていることを特徴とするサブアセンブリ。
【請求項8】
請求項1に記載のサブアセンブリにおいて、
前記ピストン(10)は、互いに連結された2つ又はそれ以上の部品から構成されていることを特徴とするサブアセンブリ。
【請求項9】
請求項1に記載のサブアセンブリにおいて、
前記ピストン(10)は、箱型ピストンとして構成されていることを特徴とするサブアセンブリ。
【請求項10】
請求項1に記載のサブアセンブリにおいて、
前記ピストン(10)の前記周囲冷却チャネル(17)は、閉鎖された冷却チャネルとして構成されていることを特徴とするサブアセンブリ。
【請求項11】
請求項1に記載のサブアセンブリにおいて、
前記ピストン(10)の前記周囲冷却チャネル(17)は、底部に向かって開放され、且つ、閉鎖エレメント(18)によって閉鎖された冷却チャネルとして構成されていることを特徴とするサブアセンブリ。
【請求項12】
請求項11に記載のサブアセンブリにおいて、
前記ピストン(10)は、前記ピストンスカート(21)と熱的に分離されていることを特徴とするサブアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンと冷却オイル用の噴射ノズルとを備えた内燃エンジン用のサブアセンブリに関し、ピストンはピストンヘッドとピストンスカートとを有し、ピストンヘッドは、下面を持つピストン冠、周囲リング部、及び該周囲リング部において冷却オイル用の少なくとも1つの供給口を持つ周囲冷却チャネルを有し、噴射ノズルはピストンスカートの下方に設けられている。
【背景技術】
【0002】
通常タイプのサブアセンブリは、噴射冷却を伴うピストンであり、すなわち、ピストンが、冷却チャネル内の冷却オイル用の少なくとも1つの供給口の方向へのピストンスカート側の端部から冷却オイルの噴射によって冷却される。冷却オイルは、周囲冷却チャネル内に貫通し、それ自体知られているように、特に、ピストンヘッドの領域でピストンを冷却する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現代のピストンにおいては、その高い熱負荷のために、「ドーム」として知られる、ピストン冠の下面も冷却することが要求されている。この目的のため、独国特許出願公開第102006056011号明細書には、一方の噴射ノズルが冷却オイルを周囲冷却チャネルに供給するのに役立ち、他方の噴射ノズルがピストン冠の下面を冷却するのに役立つ2つの冷却オイル用噴射ノズルを設ける構成が提案されている。
【0004】
本発明は、技術的に簡単で且つ信頼性が高い噴射冷却を実現できるような、通常タイプのピストンを創出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的は、ピストンが、冷却オイル用の少なくとも1つの供給口に関して隣接したピストン冠の下面に冷却オイル用のジェット分割器を有しており、また、噴射ノズルが、該ジェット分割器の下方に配置され且つ該ジェット分割器に向けられているということによって実現される。
【0006】
本発明により提供されるジェット分割器は、単一に設けられた噴射ノズルによって出射される冷却オイルジェットの一部を、ピストン冠の下面の方向を標的とするように少なくとも一時的に向けられる。これに対し、冷却オイルジェットの残部は、周囲冷却チャネルに入り込む。従って、本発明に係るサブアセンブリは、信頼性が高い噴射冷却のための技術的に簡単な解を示す。
【0007】
有利な展開は、従属項から生じる。
【0008】
噴射ノズルの中心軸がピストンの中心軸に対して平行に向いているならば、ジェット分割器は、エンジンの作動中の全行程動作中に周囲冷却チャネルに導かれる部分ジェットと、ピストン冠の下面に向けられる部分ジェットとに、冷却オイルジェットを分割する。
【0009】
特に好ましい一つの展開は、噴射ノズルの中心軸がピストンの中心軸に対して鋭角をなすことである。この噴射ノズルの斜めの位置は、エンジンの作動中にピストンが上死点又は下死点に位置する場合に、冷却オイルジェットの全体を周囲冷却チャネルに導かせる。一方、冷却オイルジェットの分割は、ピストンの行程のほぼ中間領域で生じる。その結果、本発明により提供されるジェット分割器は、ピストンの上昇行程及び下降行程ごとにそれぞれ正確に1度だけ冷却オイルジェットを横切り、且つ、それぞれの場合に、周囲冷却チャネルに導かれるオイルジェットの一部と、ピストン冠の下面に向けられるオイルジェットの一部とに、冷却オイルジェットを分割する。
【0010】
ジェット分割器は、好都合にも、周囲冷却チャネル方向に外側を向けて配置され、中心軸から始まる1つのエッジを持つ、実質的に断面V字状を有している。
【0011】
本発明により提供されるジェット分割器は、ピストンヘッドと一品により構成されていてもよく、また、ピストンヘッドと固定して連結された分割部品として構成されていてもよい。
【0012】
ジェット分割器は、特に好ましくは、第1ガイド面と第2ガイド面とを有している。第1ガイド面は、周囲冷却チャネルに割り当てられ、第2ガイド面は、ピストン冠の下面に割り当てられる。ここで、第1ガイド面が周囲冷却チャネルの内面と連続的に併合され、及び/又は第2ガイド面がピストン冠の下面と連続的に併合されるのであれば、特に有利である。このようにすれば、特に、ピストン冠の下面の冷却が信頼性良く実現される。
【0013】
本発明に係るサブアセンブリは、全てのタイプのピストンに実現可能である。特に、単一部品ピストン、互いに連結された2つ又はそれ以上の部品からなるピストン、箱型ピストン、閉じた周囲冷却チャネルを持つピストン、及び底部に向かって開放され且つ閉鎖エレメントによって閉鎖された周囲冷却チャネルを持つピストン、特にピストンスカートと熱的に分離されたピストンである。
【0014】
本発明に係る1つの例示的な実施形態は、添付の図面を用いた以下の本文により詳細に説明される。ここで、図面は縮尺を表さない概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は本発明の一例示的実施形態に係るサブアセンブリのためのピストンを示す断面図である。
【
図2】
図2は
図1の矢印Pの方向におけるピストンの下側を示す底面図である。
【
図3a】
図3aはエンジン作動中のピストンの行程において、
図1に示すピストンを伴った本発明の一例示的実施形態に係るサブアセンブリを示す図である。
【
図3b】
図3bはエンジン作動中のピストンの行程において、
図1に示すピストンを伴った本発明の一例示的実施形態に係るサブアセンブリを示す図である。
【
図3c】
図3cはエンジン作動中のピストンの行程において、
図1に示すピストンを伴った本発明の一例示的実施形態に係るサブアセンブリを示す図である。
【
図4】
図4は
図3bに示す一行程動作中の
図1によるピストンを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び
図2は、本発明におけるサブアセンブリ100のための一例示的実施形態に係るピストン10を表している。ピストン10は、単一部品のキャスト若しくは鍛造ピストンでもよく、又は複数部品を組み立てた組立ピストンでもよい。ピストン10は、鉄系材料及び/又は軽合金材料から製造されてもよい。
【0017】
図1及び
図2は、周囲冷却チャネル17を有する単一部品箱型ピストン10を例として表している。周囲冷却チャネル17は、底部に向かって開放され、且つ、分離閉鎖エレメント18によってその一部が閉鎖され、また、ピストンスカート21とは、熱的に分離されている。
【0018】
ピストン10は、燃焼ボウル14、周囲燃焼ランド15、及びピストンリング(図示せず)を収容するリング溝を伴う周囲リング部16を持つピストン冠13を含むピストンヘッド11を有している。周囲冷却チャネル17は、周囲リング部16と同等の高さに設けられており、該周囲冷却チャネル17は、底部に向かって開放され、且つ、冷却オイルのための少なくとも1つの供給口19を持つ分離閉鎖エレメント18によって閉鎖されている。
【0019】
さらに、本例示的実施形態に係るピストン10は、ガジオンピン(図示せず)を収容するピストンボス22及びボス孔23を持つ、熱的に分離されたピストンスカート21を有している。ピストンボス22は、ピストンヘッド11に対するボスアタッチメントを介して、それ自体知られるように連結されている。ピストンボス22は、滑り面24a、24bを介して互いに連結されている。
【0020】
ピストン10の内部において、ピストン冠13は、ジェット分割器25と共に本発明により提供される下面13aを有している。ジェット分割器25は、冷却オイルのための少なくとも1つの供給口19に近接して配設されており、本例示的実施形態においては、実質的に断面V字状を有している。ジェット分割器25のエッジ25aは、ピストン10における中心軸Mから開始して、周囲冷却チャネル17の方向の外側に向けて配置されている。
【0021】
本例示的実施形態において、ジェット分割器25は、ピストン冠13の下面13aと共に1個の部品で構成されており、且つ、冷却オイルのための第1ガイド面26及び第2ガイド面27を有している。本例示的実施形態においては、第1ガイド面26は、周囲冷却チャネル17の内壁17aと実質的に連続して併合されている。また、本例示的実施形態においては、第2ガイド面27は、ピストン冠13の下面13aと実質的に連続して併合されている。
【0022】
図3a〜
図3c及び
図4は、
図1及び
図2に示したピストン10と、冷却オイルジェット31が出る冷却オイル用の噴射ノズル30とを伴ったエンジンの作動中の異なるステージにおける、本発明に係るサブアセンブリ100を表している。ここで、
図3aは上死点での状況を示し、一方、
図3cは下死点での状況を示している。
図3bは、上死点と下死点との間の中間の行程位置における状況を表している。噴射ノズル30は、ジェット分割器25に向けられるように、クランクケース内に固定して配設されている。
【0023】
本例示的実施形態において、噴射ノズル30の中心軸は、ピストン10の中心軸に対して鋭角αをなすように配置される。その結果、ピストン10は、上死点から下死点まで及びその逆も同様、1回の行程動作中ごとに1度だけ、冷却オイルジェット31を横切る。冷却オイルジェット31は、上死点の場合と下死点の場合とに周囲冷却チャネル17に直接に入る。該冷却オイルジェット31は、通り過ぎたジェット分割器25により導かれる。冷却オイルジェット31は、上死点と下死点との比較的に中間の行程位置において、ジェット分割器25に当たる。その結果、
図4の部分拡大図に示すように、冷却オイルジェット31の一部31aは、ピストン冠13の下面13aの方向、すなわちドームとして知られる方向に向けられ、一方、冷却オイルジェット31の残部31bは、周囲冷却チャネル17に入り続ける。このように、ピストン冠13の下面13aの冷却が最適化される。
【0024】
図4に示すように、噴射ノズル30の中心軸Aが、ピストン10の中心軸Mと平行となるように配設されてもよいことは言うまでもない。この場合、冷却オイルジェット31は、ピストン10の行程動作のフェーズごとに、2つの部分ジェット31a、31bに分割される。部分ジェット31aは、ピストン冠13の下面13aに向けられ、部分ジェット31bは、周囲冷却チャネル17に向けられる。