特許第6386056号(P6386056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386056
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】流量調整装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/12 20060101AFI20180827BHJP
   F24F 13/10 20060101ALI20180827BHJP
   F04D 17/04 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   F24F13/12
   F24F13/10 E
   F24F13/10 B
   F04D17/04
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-543512(P2016-543512)
(86)(22)【出願日】2014年8月19日
(86)【国際出願番号】JP2014071644
(87)【国際公開番号】WO2016027309
(87)【国際公開日】20160225
【審査請求日】2017年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000162386
【氏名又は名称】協同工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(72)【発明者】
【氏名】安澤 武芳
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−203553(JP,A)
【文献】 特開2001−153447(JP,A)
【文献】 実開平3−103951(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/12
F04D 17/04
F24F 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入口と流出口とを有するケーシングと、
前記ケーシングに回転可能として枢支された回転軸と、
前記回転軸の中心軸線を曲率中心とする円弧状をなし、支持板を介して前記回転軸に固着され、前記流入口と流出口とのいずれか一方の開口部に沿って摺動しつつ往復運動しうるようにして前記ケーシング内に配設され、かつ一移動方向に向かって拡開する流量調整口を備え、前記開口部と流量調整口との重合部分により、流通する流体の流量を制限するようにした遮蔽板と、
前記ケーシングに設けられ、前記回転軸を前記中心軸線回りに往復回動させることにより、前記遮蔽板を往復運動させる駆動手段
とを備えることを特徴とする流量調整装置。
【請求項2】
流体の流入口と流出口とを有するケーシングと、
前記流入口と流出口とのいずれか一方の開口部に沿って摺動しつつ往復運動しうるようにして前記ケーシング内に配設され、かつ先尖部が一移動方向を向く二等辺三角形とした流量調整口を備え、前記開口部と流量調整口との重合部分により、流通する流体の流量を制限するようにした遮蔽板と、
前記ケーシングに設けられ、前記遮蔽板を往復運動させる駆動手段
とを備えることを特徴とする流量調整装置。
【請求項3】
流量調整口の形状である二等辺三角形の対向辺同士を、互いに内方に突出する湾曲形状とした請求項記載の流量調整装置。
【請求項4】
遮蔽板に、複数の流量調整口を並設した請求項1〜3のいずれかに記載の流量調整装置。
【請求項5】
駆動手段を、遮蔽板を往復運動させるモータとし、このモータを、自動制御装置により制御するようにした請求項1〜のいずれかに記載の流量調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流量を調整する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流量調整装置としては、周面に多数の孔を穿設した半円筒状の整流板の内側に、整流板における半円部の中心に位置する駆動軸と、この駆動軸に取り付けられた、円弧状でかつ細長い長方形状の遮蔽板とを有するダンパを配設し、駆動軸を回動させて、遮蔽板によって、整流板の多数の孔の一部または全部を遮蔽することにより、風箱内を流通する空気の流量を調整するようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−203553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の流量調整装置においては、ダンパ以外に整流板を必要とし、構造が複雑になるだけでなく、整流板の内面とダンパの外面とが密接状態で摺動するように、それらの表面を高精度で曲面加工しなければ、空気漏れが生じたり、ダンパが整流板の内面に圧接して、作動不良を生じたりすることがある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、構造を簡単にしうるだけでなく、高精度の精密な加工を必要とせず、しかも流体の流量を適正に調整しうるようにした流量調整装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)流体の流入口と流出口とを有するケーシングと、前記ケーシングに回転可能として枢支された回転軸と、前記回転軸の中心軸線を曲率中心とする円弧状をなし、支持板を介して前記回転軸に固着され、前記流入口と流出口とのいずれか一方の開口部に沿って摺動しつつ往復運動しうるようにして前記ケーシング内に配設され、かつ一移動方向に向かって拡開する流量調整口を備え、前記開口部と流量調整口との重合部分により、流通する流体の流量を制限するようにした遮蔽板と、前記ケーシングに設けられ、前記回転軸を前記中心軸線回りに往復回動させることにより、前記遮蔽板を往復運動させる駆動手段とを備えるものとする。
【0007】
このような構成によると、ケーシングの流入口と流出口とのいずれか一方の開口部と遮蔽板の流量調整口との重合部分により、流通する流体の流量を制限することができるので、遮蔽板を往復運動させるだけで、流量を簡単かつ適正に制御することができ、しかも、従来の装置におけるような整流板を設ける必要がないので、構造を簡素化しうるだけでなく、高精度の精密な加工を必要とせず、容易に製造することができる。
また、回転軸を回動させるだけで、それとともに遮蔽板を回動させて、流量を簡単かつ適正に調整することができ、しかも、構造を簡素化することができる。
【0008】
(2)流体の流入口と流出口とを有するケーシングと、前記流入口と流出口とのいずれか一方の開口部に沿って摺動しつつ往復運動しうるようにして前記ケーシング内に配設され、かつ先尖部が一移動方向を向く二等辺三角形とした流量調整口を備え、前記開口部と流量調整口との重合部分により、流通する流体の流量を制限するようにした遮蔽板と、前記ケーシングに設けられ、前記遮蔽板を往復運動させる駆動手段とを備えるものとする。
【0009】
このような構成によると、ケーシングの流入口と流出口とのいずれか一方の開口部と遮蔽板の流量調整口との重合部分により、流通する流体の流量を制限することができるので、遮蔽板を往復運動させるだけで、流量を簡単かつ適正に制御することができ、しかも、従来の装置におけるような整流板を設ける必要がないので、構造を簡素化しうるだけでなく、高精度の精密な加工を必要とせず、容易に製造することができる。
また、流量を、遮蔽板の移動量に関連づけることができ、流量の制御が容易になる。
【0010】
(3)上記(2)項において、流量調整口の形状である二等辺三角形の対向辺同士を、互いに内方に突出する湾曲形状とする。
【0011】
このような構成によると、遮蔽板の移動量と流体の流量との関係を適正化することができる。
【0012】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、遮蔽板に、複数の流量調整口を並設する。
【0013】
このような構成によると、複数の流量調整口から流体が流出するので、流出する流体を整流化させることができる。
【0014】
(5)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、駆動手段を、遮蔽板を往復運動させるモータとし、このモータを、自動制御装置により制御するようにする。
【0015】
このような構成によると、遮蔽板の移動を自動的に制御することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、構造を簡単にしうるだけでなく、高精度の精密な加工を必要とすることなく、流体の流量を適正に調整しうるようにした流量調整装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の流量調整装置の一実施形態の斜視図である。
図2】同じく正面図である。
図3】同じく右側面図である。
図4図2のIV−IV線における横断平面図である。
図5図2のV−V線における縦断側面図である。
図6】流量調整口の変形例における遮蔽板の展開図である。
図7図6に示す遮蔽板を使用した実験結果を、回転軸の回転角度と流量調整装置を通過する風量との関係をもって示す図である。
図8】駆動装置の変形例を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1図5に示すように、この流量調整装置は、後面と前面にそれぞれ流体の流入口1と流出口2とを有するケーシング3(図5)と、流入口1と流出口2とのいずれか一方、この例では、流出口2の口縁に沿って摺動しつつ往復運動しうるようにしてケーシング3内に配設され、かつ一移動方向に向かって拡開する5個の流量調整口4を備え、上記開口部2aと流量調整口4との重合部分により、流通する流体の流量を制限するようにした遮蔽板5と、ケーシング3に設けられ、遮蔽板5を往復運動させる駆動手段6とを備えている。
【0019】
ケーシング3は、前面と後面とが開口する直方体の枠状をなし、その頂壁3aの下面に、側面視において下向きの円弧面7aと、その前後の縁より起立する垂直片7b、7cとを有するガイド板7を、同じく、底壁3bの上面に、側面視において上向きの円弧面8aと、その前後の縁より垂下する垂直片8b、8cとを有するガイド板8を設けることにより、ケーシング3内に、前面と後面とが開口するほぼ横向き円筒形の空間S(図4および図5)が形成されている。なお、これらのガイド板7、8は、上下の垂直片7b、8bのみを残して、他部を省略して実施することもある。
【0020】
上下のガイド板7、8の円弧面7a、8aの後縁と、左右の側板3c、3dとによって、上記流入口1が形成され、かつ上下のガイド板7、8の円弧面7a、8aの前縁と、左右の側板3c、3dとによって、上記流出口2が形成されている。
【0021】
ケーシング3の右側板3dの外側面中央部には、ギヤボックス9が設けられ、このギヤボックス9に設けた軸受10と、ケーシング3の左側板3cの外側面に設けた軸受11とによって、左右方向を向く回転軸12が、円筒形の空間Sの中心に位置し、かつ両側板3c、3dを貫通するようにして枢支されている。
【0022】
円筒状の空間S内において、回転軸12には、互いに左右方向に離間するほぼ半円弧状をなす3枚の支持板13における円弧の中心部が固着され、この3枚の支持板13の外周部には、ほぼ半円筒状をなす遮蔽板5の内面が固着され、遮蔽板5は、支持板13および回転軸12と一体となって、回転軸12の中心軸回りに回動しうるようになっている。
【0023】
遮蔽板5の外周面の曲率半径は、回転軸12の中心軸線から流出口2の開口部2aの上下の内縁までの距離とほぼ同一か、またはわずかに小としてある。
なお、流出口2の口縁に、摺動抵抗の小さいシール部材(図示略)を設けることがある。その場合には、遮蔽板5の外周面の曲率半径は、回転軸12の中心軸からシール部材の内周面までの距離とほぼ同一とする。
【0024】
上下のガイド板7、8の円弧面7a、8aの曲率半径は、遮蔽板5の外周面の曲率半径に近づけるのが好ましいが、加工精度を高める必要をなくすためには、遮蔽板5の外周面の曲率半径よりわずかに大とするのがよい。
【0025】
遮蔽板5に設けた5個の流量調整口4は、回転軸12の中心軸線と平行に、等間隔で並設されている。
各流量調整口4の形状は、三角形の頂点である先尖部が下方を向き、互いに対向する対向辺4a、4bが上方に向かって互いに拡開し、かつ本来の底辺4cが上方に位置する倒立二等辺三角形としてある。
【0026】
駆動手段6は、図1図4に示すように、ギヤボックス9内において、回転軸12に固嵌されたウォームホイール14と、ギヤボックス9に回転自在に枢支され、ギヤボックス9より垂下し、下端に操作ハンドル15が設けられた上下方向を向く回転操作軸16と、ギヤボックス9内において、回転操作軸16に固嵌され、ウォームホイール14と噛合するウォーム17とからなっている。
【0027】
図3に示すように、ギヤボックス9の外側面には、本流量調整装置の開度を示す目盛り18が付設されており、かつギヤボックス9の外側面より外側方に突出する回転軸12の端部には、開度目盛り18を指し示す指針19が取付けられている。
【0028】
操作ハンドル15を回転させることにより、ウォーム17とウォームホイール14とを介して、回転軸12と遮蔽板5とを、一体として、図1に示すように、遮蔽板5における流量調整口4の底辺4cが、上方のガイド板7における円弧面7aの前縁に近接するようにして、流量調整口4の大部分が流出口2に露呈する全開位置と、すべての流量調整口4が流出口2に全く露呈することがない全閉位置との間に亘って回動させることができ、かつその開度は、開度目盛り18と指針19により示される。
【0029】
遮蔽板5が、全開位置から全閉位置までの範囲を超えて回動するのを防止するため、ケーシング3における左右の側板3c、3dのいずれか一方または両方に、支持板13の縁に当接するようにしたストッパを設けたり、ギヤボックス9内に、回転軸12の回動範囲を規制するストッパを設けたりするのがよい(いずれも図示略)。
【0030】
以上のような構成とした本発明の流量調整装置によると、ケーシング3の流出口2の開口部2aと遮蔽板5の流量調整口4との重合部分により、流通する流体の流量を規制することができるので、遮蔽板5を往復運動させるだけで、流量を簡単かつ適正に制御することができる。しかも、従来の装置における整流板のような特殊な部材を設ける必要がないので、構造を簡素化しうるだけでなく、高精度の精密な加工を必要とせず、容易に製造することができる。
【0031】
図6は、流量調整口4の形状の変形例を示す。この例では、ほぼ倒立二等辺三角形をなす流量調整口4における左右の対向辺4a、4bを、中央部が互いに内方に突出する円弧状、または放物線状の湾曲形状としてある。
【0032】
流量調整口4の形状を図6に示すものとして実験を行ったときの結果を、図7に示してある。
図7において、横軸は回転軸12の回転角度、縦軸は流量調整装置を通過する風量(CMH)を示す。切目線A1は、実験結果1を、直線A0は、切目線A1に近似する理想直線を、1点鎖線B1は、実験結果1とは初期の風速を異ならせた実験結果2を、直線B0は、1点鎖線B1に近似する理想直線を示す。
【0033】
この図7から明らかなように、切目線A1、および1点鎖線B1は、ともに理想直線A0、B0に近似し、通過風量が回転軸12の回転角度に対して、ほぼ直線的に比例して増減することが判る。
このように、回転軸12の回転角度に対して、通過風量がほぼ直線的に比例して増減することにより、自動制御が容易となる。
【0034】
図8は、駆動手段20を、上述の回転操作ハンドル15による手動操作式の駆動手段6に代えて、モータ駆動式のもとした変形例を示す。
図8に示すように、この駆動手段20は、上述の左右の側板3c、3dのいずれか一方の外側面の設けた箱状のギヤボックス21内において、回転軸12に固嵌されたウォームホイール22と、このウォームホイール22と歯合するウォーム23と、このウォーム23の軸23aを回転させるモータ24および減速機構25とからなっている。
【0035】
モータ24はパルスモータとし、ウォーム23の軸23a、ひいては回転軸12を、減速機構25を介して正確に回転させることができるようにしてある。
【0036】
このモータ24を、空調装置全体の自動制御装置(図示略)により制御することによって、この流量調整装置の開度を自動制御することができる。
【0037】
上記実施形態は、本発明の流量調整装置を、空調装置における風量調整装置に適用したものであるが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような変形した態様での実施が可能である。
(1) 本発明の流量調整装置を、工場等において使用する水またはその他の液体の流量調整装置に適用する。
(2) 各流量調整口4の対向辺4a、4bの形状を、上方または下方に向かって、漸次拡大する階段状とする。
(3) 遮蔽板5に設ける流量調整口4の数を、1または複数とする。実用上は、5〜7個とするのが好ましい。
(4) ケーシング3の流体の流入口1を、遮蔽板5により開閉するようにする。
【符号の説明】
【0038】
S 空間
1 流入口
2 流出口
3 ケーシング
3a頂壁
3b底壁
3c左側板
3b右側板
4 流量調整口
4a、4b 対向辺
4c 底辺
5 遮蔽板
6 駆動手段
7、8 ガイド板
7a、8a 円弧面
7b、7c、8b、8c 垂直片
9 ギヤボックス
10、11 軸受
12 回転軸
13 支持板
14 ウォームホイール
15 操作ハンドル
16 回転操作軸
17 ウォーム
18 開度目盛り
19 指針
20 駆動手段
21 ギヤボックス
22 ウォームホイール
23 ウォーム
23a軸
24 モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8