特許第6386070号(P6386070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386070
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】上下スライド式手動開閉扉
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/08 20060101AFI20180827BHJP
   E05C 17/02 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   B23Q11/08 Z
   E05C17/02
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-555039(P2016-555039)
(86)(22)【出願日】2014年10月24日
(86)【国際出願番号】JP2014078401
(87)【国際公開番号】WO2016063421
(87)【国際公開日】20160428
【審査請求日】2017年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】柳崎 淳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊史
(72)【発明者】
【氏名】長井 修
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭26−002306(JP,Y1)
【文献】 実公昭57−032019(JP,Y2)
【文献】 特開平6−179148(JP,A)
【文献】 実開平4−12389(JP,U)
【文献】 特開平4−315547(JP,A)
【文献】 特開2014−87898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/08,
E05C 17/02,
B61D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向にスライドして開口部の開閉を行う板状の扉部材と、
前記扉部材の左右両端部を支持する支持部により前記扉部材の上下方向のスライドを案内する支持部材と、
上昇した前記扉部材を位置決めするロック機構とを有し、
前記ロック機構は、
前記扉部材の外側面に取り付けられ、付勢部材による付勢力を外側方向に受ける、平板により形成されたロック部材を有し、
左右の幅方向両側に段差を介して張り出し、前記付勢部材の付勢力により前記支持部材に対して外側方向に押し当てられる係合部が前記ロック部材に形成され、
前記ロック部材の係合部が前記支持部から外側方向に外れて入り込むようにした受部が前記支持部材に形成されたものであることを特徴とする上下スライド式手動開閉扉。
【請求項2】
前記ロック部材は、その下端部分に上方に凹んだ取っ手用の切欠きが形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の上下スライド式手動開閉扉。
【請求項3】
前記付勢部材は、ピン結合された一対の支承板がバネ部材により開く方向に付勢力が作用するスプリング蝶番であり、前記支承板が回転軸を下にして前記扉部材と前記ロック部材に接合され、前記ロック部材の上方側が下方側より外側に位置するように傾斜したものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の上下スライド式手動開閉扉。
【請求項4】
前記受部は、前記係合部の大きさに対応して前記支持部材に形成された切欠き部分と、その切欠き部分を覆い、前記支持部の外側で前記係合部を受ける受部材とを備えるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の上下スライド式手動開閉扉。
【請求項5】
前記受部は、前記受部材が前記支持部材に形成された切欠き部分よりも上下方向に大きく、前記支持部から外側方向に外れた前記ロック部材の係合部が下方に嵌り込むようにしたものであることを特徴とする請求項4に記載の上下スライド式手動開閉扉。
【請求項6】
前記扉部材は、その下端が幅方向の左右両側に向けて下がる方向に傾斜がつけられた傾斜端であることを特徴とする請求項1に記載の上下スライド式手動開閉扉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下にスライドして開閉する扉であって、片手で開閉操作が可能な上下スライド式手動開閉扉に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械では、主軸チャックなどの加工部を覆う加工室に扉が設けられ、作業者が外側から加工室内部に対してメンテナンスや部品交換などの作業が行えるようになっている。下記特許文献1にも蝶番によって回転軸を中心に開閉する安全扉が設けられ、取っ手を引くことにより開閉が行われる。また、この従来例には、安全扉にワ−クの出し入れが可能な小扉が形成されている。小扉は、スライドレールによって昇降する昇降扉であり、取っ手を持って上下動させることにより、開閉が行われる。また、安全扉や小扉には傾斜した樋が設けられ、液滴がその樋を通って集められることによって作業床の汚れ防止が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−011034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工作機械において加工室内のメンテナンス作業などを行うような場合、片方の手に工具を持ち、もう一方の手で扉の開閉を行うような状況が多くみられる。そのため、加工室に設けられた扉は、片手でも開閉操作が可能なものであることが好ましい。通常は、前記安全扉や小扉のように取っ手が付いているため片手でも容易に開閉することができる。しかし、手前側に引いて開閉させるような前記安全扉は、外側に向けて開閉するための空間が必要になるので、狭い作業スペースでは小扉のようにスライド式の扉が好ましい。ところがスライド式扉は、開状態を維持させるため、上昇させた扉の位置を維持させるロック機構が必要になる。従って、スライド式の扉では、開閉操作に伴うロック機構の取り扱いが、片手でも容易に行えることが望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、片手による操作性が良い上下スライド式手動開閉扉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様における上下スライド式手動開閉扉は、上下方向にスライドして開口部の開閉を行う板状の扉部材と、前記扉部材の左右両端部を支持する支持部により前記扉部材の上下方向のスライドを案内する支持部材と、上昇した前記扉部材を位置決めするロック機構とを有し、前記ロック機構は、前記扉部材の外側面に取り付けられ、付勢部材による付勢力を外側方向に受ける、平板により形成されたロック部材を有し、左右の幅方向両側に段差を介して張り出し、前記付勢部材の付勢力により前記支持部材に対して外側方向に押し当てられる係合部が前記ロック部材に形成され、前記ロック部材の係合部が前記支持部から外側方向に外れて入り込むようにした受部が前記支持部材に形成されたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、支持部材に受部が形成され、扉部材にはロック部材が一体に設けられたことにより、扉部材が開けられるときには、付勢部材を備えたロック部材が自動的にロック状態になり扉部材の開状態が維持され、扉部材を閉じるときには、ロック部材の操作によってロック解除と扉部材の下降が行われるので、作業者の片手による開閉操作が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】加工機械ラインの一実施形態を示した斜視図である。
図2】工作機械の内部構造である加工モジュールを示した斜視図である。
図3】上下スライド式手動開閉扉を備えた工作機械の一部を示した斜視図である。
図4】上下スライド式手動開閉扉の部品展開斜視図である。
図5】上下スライド式手動開閉扉の開状態を示した図である。
図6】ロックプレートと扉フレームとの関係を示した図5のA−A断面図である。
図7】受部を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明に係る上下スライド式手動開閉扉の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。本実施形態では、前記従来例と同様に工作機械に設けられた上下スライド式手動開閉扉について説明する。特に、本実施形態の工作機械は、図1に示すように加工機械ライン1の一部を構成するものである。この加工機械ライン1は、基礎となるベース2の上に6台の工作機械5が搭載されている。6台の工作機械5はいずれも同じ型のNC旋盤であり、外形形状や寸法が揃えられている。そして、この加工機械ライン1には、各々の工作機械5に対してワークの受渡しを行うワーク搬送装置が設けられている。
【0010】
工作機械5は、ベース2の上に加工モジュール3(図2参照)が搭載され、その加工モジュール3による加工部分が外装カバー6によって覆われている。また、加工機械ライン1は、外装カバー6の前方側に開閉可能な前カバー7が設けられ、その前カバー7によって構成された搬送室内にワーク搬送装置が設置されている。
【0011】
ここで、図2は、工作機械5の内部構造である加工モジュール3を示した斜視図であり、加工モジュール3が台車9に載せられてベース2の後方へ引き出された状態が示されている。図には1台の加工モジュール3しか示されていないが、ベース2には2台の加工モジュール3が搭載可能である。そのため、ベース2には加工モジュール3の幅に合わせてレール201が2本ずつ設けられている。そして、加工モジュール3は車輪301を有しており、そのレール201上を自走可能な状態でベース2に搭載される。
【0012】
加工機械ライン1は、図1に示すように工作機械5同士が近接していても、加工モジュール3を前方へ引き出すことが可能であるため、各工作機械5についてメンテナンスや工具の交換等を行うことができる。そして、工作機械5は、外装カバー6の内部に図3に示すような内部カバー8が設けられ、加工モジュール3の主軸チャック315やタレット316(図2参照)などによる加工部が覆われている。図3は、工作機械5の一部を示した斜視図であるが、加工モジュールやワーク搬送装置は省略されている。
【0013】
工作機械5の内部カバー8には側壁に作業扉10が設けられ、この作業扉10を開くことによりメンテナンスや部品交換などの作業を行うことが可能になる。そして、この作業扉10が本実施形態で説明する上下スライド式手動開閉扉である。作業扉10は、内部カバー8の側壁と同程度の厚みになるように薄型構造をなし、内部に配置される加工モジュール3の加工スペースを侵食することなく、また、外側に配置される外装カバー6との隙間が極めて小さくなるように構成されている。すなわち作業扉10は、加工室の容積を確保しながら外装カバー6の幅寸法を小さくすることに寄与する構成がとられている。
【0014】
図4は、作業扉10の部品展開斜視図であり、図5は、作業扉10の開状態を示した図である。作業扉10は、長方形の内側フレーム11とそれよりも大きい同じく長方形の外側フレーム12とが重ねられ、両フレーム11,12の間の隙間であるガイド部分42に対し、扉部材13がスライド可能に取り付けられている。この作業扉10は、扉部材13が下から上に引き上げられて開くものであり、開口部14が加工モジュール3の主軸チャック314の位置に対応するように形成されている。そこで内側フレーム11は、下半分に扉部材13の大きさに合わせた四角形の開口孔111が形成され、外側フレーム12は、扉部材13が昇降する範囲に相当する大きな開口孔125が形成されている。
【0015】
扉部材13は、扉フレーム15と扉プレート16およびロックプレート17が一体に組み付けられている。扉フレーム15は、第1フレーム31と第2フレーム32とが重ねられ、ネジ止めして一体に形成されたものである。ただし、第2フレーム32は、枠部321と上端部322とを備え、その間に段差が形成されている。よって、第1フレーム31に対して、上端部322は直接重ねられているが、枠部321はスペーサを介して重ねられている。そして、扉プレート16が第1フレーム31と第2フレーム32とに挟み込まれ、扉フレーム15と一体になって板状の扉部材13が構成されている。
【0016】
また、扉フレーム15は、第2フレーム32の下端部分の中央に、薄型ブロックの取っ手33が接合されている。作業扉10を開けるときは、作業者が取っ手33に指を掛けて扉部材13を引き上げることによって行われる。そして、扉部材13は、開口部14を開けるように上昇した後は、その位置に止まって開状態が維持されなければならない。そこで作業扉10には、開状態を維持するためのロック機構が設けられている。図6は、ロック機構を構成するロックプレート17について示した図5のA−A断面図である。
【0017】
作業扉10におけるロック機構は、扉フレーム15にロックプレート17が取り付けられ、外側フレーム12には、ロックプレート17をロック状態で支持する受部18が設けられている。ロックプレート17は、扉フレーム15の上端部322が位置する部分に取り付けられるものであり、第2フレーム32の横幅寸法に合わせて形成された横長の平らな板材である。上端部322には幅方向の2か所にスプリング蝶番35が溶接され、そのスプリング蝶番35に対してロックプレート17が溶接されている。
【0018】
スプリング蝶番35は、図6に示すように、ピン結合された一対の支承板351,352が不図示のコイルスプリングによって開く方向に付勢力が作用するものである。そのスプリング蝶番35が、回転軸353を下にして支承板351,352の間隔が上方に広がるようにして取り付けられている。そのため、垂直な姿勢の第2フレーム32(扉フレーム15)に対し、ロックプレート17は図6(A)に示すように回転軸353を支点にして傾いており、特に上端側が作業扉10の外側(第2フレーム32から離れる方向)に向けて広がるように付勢されている。
【0019】
更にロックプレート17は、上端が幅方向両側に延長するようにして張り出した係合部171が形成されている。係合部171は、第2フレーム32側すなわち扉部材13の裏側方向に折り曲げられた段差部172を介して形成されている。そしてこの係合部171は、内側フレーム11と外側フレーム12との間のガイド部分42に挿入される。そのため、通常時のロックプレート17は、その係合部171がスプリング蝶番35の付勢力により外側フレーム12に対して内側から押し当てられているため、傾きが制限されて図6(B)に示すような垂直姿勢となっている。
【0020】
また、ロックプレート17は、下端中央部分が所定の幅にわたって切り欠かれ、上方側に凹んだ取っ手部173が形成されている。従って、扉部材13の開閉操作には、取っ手33だけでなく取っ手部173も使用される。ただし、この取っ手部173はロック解除を伴った閉操作に使用される目的で形成されたものである。例えば、作業者が取っ手部173に中指と人差し指或いは薬指も掛けることにより扉部材13全体を支え、その状態でロックプレート17を親指で押さえ付ける。この押さえ付けにより、ロックプレート17は図6に示す(A)のロック状態から(B)のアンロック状態へと姿勢が変化する。
【0021】
次に、ロックプレート17をロック状態にして支持する受部18は、外側フレーム12の開口孔125の上方角部に設けられている。この位置は、扉部材13が上昇した作業扉10の全開時に、ロックプレート17の係合部171が到達する位置である。ここで図7は、受部18を示した斜視図である。受部18は、切欠き部371を有する凹形状の受板37に、切欠き部371を塞ぐようにカバー板38が接合されて一体に形成され、受板37が外側フレーム12に対してネジ止めされている。
【0022】
外側フレーム12は、受部18が位置する開口孔125の上方角部に切欠き部121が形成され、この切欠き部121を囲むように受板37が配置され、更に外側からカバー板38によって塞がれている。外側フレーム12の切欠き部121は、ロックプレート17の係合部171が通る大きさで形成されている。そして、切欠き部121より受板37の切欠き部371の方が大きいため、切欠き部121の下方側に、外側フレーム12、受板37およびカバー板38によって囲まれた空間が受溝181として形成されている。この受溝181は、切欠き部121を通ったロックプレート17の係合部171が嵌り込むようにしたものである。よって、扉部材13は、ロックプレート17がこの受部18によって支持されることで、図5に示すようにロックされた開状態が維持されることとなる。

【0023】
ところで作業扉10では、開状態の開口部14から作業者が手を入れて所定の作業が行われるが、このとき上昇した扉部材13から落ちる液滴が問題であった。すなわち、内部カバー8で囲まれた加工室内は、加工中、供給されたクーラント液が飛び散って作業扉10の裏面に大量に付着している。そこで扉部材13が開けられると、裏面に付いたクーラント液が開口部14に落ちてくるため、開口部14から手を入れて作業を行う作業者にとって非常に煩わしいものであった。そこで本実施形態では、扉部材13の裏面を伝って落ちる液滴の進路を左右両側に導くようにした傾斜端311が形成されている。傾斜端311は、第1フレーム31の下端に形成されたものであり、中央部分から幅方向の左右両側に向けて下降するように傾斜している。その傾斜角度は例えば5〜10°程度である。
【0024】
続いて、作業扉10は、以下のようにして組み付けられる。すなわち、内部カバー8の側壁には開口部が形成され、その開口部を塞ぐようにして作業扉10が取り付けられる。作業扉10の組み立てには、扉部材13を挟み込むようにして内側フレーム11と外側フレーム12とが重ねられて一体に固定される。このとき、内側フレーム11には周縁部分に裏板が溶接され、その裏板にはネジ穴が形成されている。そして、内側フレーム11の周縁部に形成された貫通孔に裏側からボルト41が通され、前記裏板のネジ穴に締め付けられる。このとき内側フレーム11と外側フレーム12との間には、外側フレーム12の裏板によって隙間であるガイド部分42が形成される。
【0025】
外側フレーム12の周縁部分には、重ねられた内側フレーム11の外側の位置に滴形の取付孔122が複数形成されている。一方、内部カバー8の側壁には、取付孔122と対応する位置に取付ネジ43が固定されている。そのため、組み立てられた作業扉10は、取付孔122に取付ネジ43のヘッド部分を通すことにより簡単に内部カバー8への取り付けが行われる。
【0026】
こうして組み付けられた作業扉10は、このガイド部分42に扉部材13の第1フレーム31が入り込んでいる。扉部材13は、第1フレーム31が内側フレーム11と外側フレーム12により、幅方向の両端部が厚さ方向に挟まれるようにしてガイドされ、上下方向へのスライドが可能である。扉部材13は、第1フレーム31だけではなく、ロックプレート17の係合部171も内側フレーム11と外側フレーム12との隙間であるガイド部分42に挿入されている。このときロックプレート17は、スプリング蝶番35によって外側に付勢されているため、係合部171が常に外側フレーム12へと押し当てられている。また、スプリング蝶番35の付勢力は扉部材13にも作用し、扉部材13のがたつき防止にもなっている。
【0027】
次に、作業扉10を開ける場合には、作業者は扉部材13の取っ手33に指を掛けて上方へ引き上げる。扉部材13は上方へとスライドし、全開状態になったところでロックプレート17の係合部171が受部18に達する。係合部171は、それまで外側フレーム12側に押し当てられていたが、受部18に達したところで切欠き部121によってガイド部分42から外れ、受溝181へと入り込む。このときロックプレート171は、図6(A)に示すように前傾姿勢に変位している。そして、作業者が扉部材13の支えを外す際、扉部材13が下がることで係合部171が受溝181に落とし込まれてロック状態となる。扉部材13は、このロックプレート17を介して吊られるようにして開状態が維持される。
【0028】
一方、作業扉10を閉じる場合には、作業者がロックプレート17の取っ手部173に指を掛け、そのロックプレート17を介して扉部材13を持ち上げる。よって、扉部材13は、係合部171が受溝181から外側フレーム12の切欠き部121の位置まで上昇する。更に作業者が扉部材13を持ち上げたままでロックプレート17を内側フレーム11側へ押え込むことにより、スプリング蝶番35の付勢力に抗してロックプレート17が図6(B)に示す垂直な姿勢に変位し、係合部171がガイド部分42へと戻される。これによりロックが解除される。そして、作業者がロックプレート17を介して支えている扉部材13を下降させることにより、扉部材13が下方へとスライドして作業扉10が閉状態に戻される。
【0029】
よって、本実施形態によれば、外側フレーム12に受部18を形成し、扉部材13にロックプレート17を一体に設けたことにより、扉部材13が開けられるときには、スプリング蝶番35を備えたロックプレート17が自動的にロック状態になり、扉部材13の開状態が維持され、扉部材13を閉じるときには、ロックプレート17の操作によってロック解除と扉部材13の下降が行われる。従って、作業扉10は、作業者の片手による開閉操作が可能である。
【0030】
また、作業扉10のロック機構は、取っ手部173に指を掛けて扉部材13全体を支えたままロックプレート17を押してロックを解除させ、閉じるための下降を行うことができ、片手での操作が非常に行い易い。具体的には、ロックプレート17に、指を掛ける下端の取っ手部173があり、スプリング蝶番35によって中間高さに回転軸353があり、外側に開いた上端部分の押し込み箇所があるため、ロックプレート17を支えた作業者による自然な手の動作によって行うことができる。更に、作業扉10のロック機構は、ロックプレート17が、スプリング蝶番35に接合された板材であり、受部18も、切欠き部121の形成された外側フレーム12に受板37及びカバー板38が固定したものであることから、前記効果が部品点数を少なくした簡易な構成によって達成されている。
【0031】
作業扉10は、ロックプレート17がスプリング蝶番35によって扉部材13の外側に取り付けられた構造であるが、図6(A)に示すように扉部材13の厚さ方向にロックプレート17が僅かに飛び出しているだけである。また、受部18を構成する受板37及びカバー板38も薄型部材であり、外側フレーム12に対する突き出し箇所が極めて僅かである。よって、作用扉10は、内部カバー8の側壁に対しても突き出し箇所がほとんど無い平らな構造であるといえる。そのため、内部カバー8の外側において極めて近い位置に外装カバー6を配置させることができ、工作機械5の幅方向のサイズを小さくすることに寄与している。更に、本実施形態の作業扉10は、扉部材13の傾斜端311により開口部14に液滴が落ちることを防止でき、作業が行い易くなる。
【0032】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では工作機械5の作業扉10を示して説明したが、上下スライド式手動開閉扉は様々なものに適応可能であり、工作機械に限定されるわけではない。
また、前記実施形態では受部18に受溝181が形成されているが、係合部171がガイド部分42から外れることでロック状態になるため、受板37の切欠き部371を切欠き部121と同じ大きさにして受溝181の無い構成であってもよい。
【0033】
また、前記実施形態では、扉部材13を全開させた位置に対応して受部18が形成されているが、一か所だけではなく複数個所に形成するようにしてもよい。
また、ロック部材はロックプレート17以外の、例えばフレームによって形成されたものであってもよい。そして、ロック部材は、扉部材13に対してスプリング蝶番35ではなく、蝶番とバネ部材とを別部材にして扉部材13に取り付けるようにしてもよい。
【0034】
また、例えば、扉部材13が上下逆転した状態で取り付けられ、受部18が外側フレーム12の高さ方向の中間位置に配置されるような構造であってもよい。
また、取っ手部173は、片手でロックプレート17を操作できるようにするためのものある。そのため、操作が同様に行えるのであれば別構成であってもよい。例えば、扉フレーム15の下方にある取っ手33をロックプレート17の直下にも同じように配置させてもよい。
【符号の説明】
【0035】
5…工作機械 6…外装カバー 3…加工モジュール 8…内部カバー 10…作業扉 11…内側フレーム 12…外側フレーム 13…扉部材 14…開口部 17…ロックプレート 18…受部 35…スプリング蝶番 42…ガイド部分 171…係合部









図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7