(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386076
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ステアリングモータの双油路構造
(51)【国際特許分類】
B62D 5/065 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
B62D5/065 B
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-559975(P2016-559975)
(86)(22)【出願日】2014年4月2日
(65)【公表番号】特表2017-511276(P2017-511276A)
(43)【公表日】2017年4月20日
(86)【国際出願番号】CN2014074600
(87)【国際公開番号】WO2015149296
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2017年3月14日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2014/074346
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516272386
【氏名又は名称】深▲せん▼市智行単軸双輪駆動技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼ 蜀剛
【審査官】
飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−067996(JP,A)
【文献】
特開2011−259590(JP,A)
【文献】
特開昭63−125481(JP,A)
【文献】
特開2006−168705(JP,A)
【文献】
米国特許第06293530(US,B1)
【文献】
特開2010−088287(JP,A)
【文献】
特開2012−245811(JP,A)
【文献】
特開平08−061422(JP,A)
【文献】
特開2006−138467(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00623764(EP,A1)
【文献】
実開昭55−007520(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D5/00−5/32
F16F7/00
F16F9/10
H02K5/24
H02K9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上蓋緩衝アセンブリ及び配油盤を備え、前記配油盤は、前記上蓋緩衝アセンブリの下方に置かれ、前記上蓋緩衝アセンブリを被せられて、密封された軸方向キャビティを形成し、前記配油盤の中に、前記軸方向キャビティと連通するように径方向に沿って配置された通油通路が設けられ、前記配油盤に給油口が設けられ、前記配油盤の中に、軸方向に沿って配置され且つ内部キャビティを有する中空柱がそれぞれ上及び下へ延伸し、前記中空柱の内壁に前記通油通路と連通する通油口が設けられ、
前記中空柱の内側に、弁コアを有する切替弁が設けられ、前記中空柱の内壁と前記切替弁の外壁により第1の径方向キャビティが形成され、前記第1の径方向キャビティの中にピンボルトが嵌め込まれており、前記第1の径方向キャビティは、前記ピンボルトにより互いに独立した前記給油口と連通する配油盤給油キャビティ及び前記軸方向キャビティと連通する配油盤排油キャビティに隔離され、
弁キャビティの側壁の上部に径方向に沿って貫通して配置された切替弁通油通路が設けられ、前記弁キャビティに、前記切替弁通油通路の軸方向の下方に径方向に沿って配置された通油孔が設けられ、
前記弁コアの上端の外壁に、前記配油盤給油キャビティ及び前記配油盤排油キャビティに連通され且つ断面が半円状となる通油環状溝が環設され、
前記弁コアの下端の外壁と前記弁キャビティの下部の側壁により第2の径方向キャビティが形成され、前記弁キャビティの下部に、前記第2の径方向キャビティと連通する排油口が設けられることを特徴とするステアリングモータの双油路構造。
【請求項2】
前記上蓋緩衝アセンブリは、上蓋及び蝶形状である弾性隔離膜を含み、前記弾性隔離膜が前記上蓋の内側の下縁に嵌め込まれて、締付部材によって前記配油盤と閉合して密封されることを特徴とする請求項1に記載のステアリングモータの双油路構造。
【請求項3】
前記配油盤の下方に、前記配油盤の下面に当接し且つ両端が開口したシリンダーと、上端が固定して接続されるように前記シリンダーの内部キャビティ内に置かれた弾性油室と、前記シリンダーの内で軸方向に移動するように前記弾性油室の下端に固定して接続されたピストンと、を含むシリンダーアセンブリが設けられることを特徴とする請求項1に記載のステアリングモータの双油路構造。
【請求項4】
前記弾性油室の上端に開口を有し、該開口のエッジが前記シリンダーに固定して接続され、前記配油盤の中に、それぞれ前記軸方向キャビティ及び前記弾性油室と連通するオリフィスが設けられることを特徴とする請求項3に記載のステアリングモータの双油路構造。
【請求項5】
前記オリフィスの孔径は前記弾性油室の上端の開口の口径より小さいことを特徴とする請求項4に記載のステアリングモータの双油路構造。
【請求項6】
前記切替弁は、前記弁キャビティの外周に覆設されるように前記配油盤の下方に置かれたコイル巻線を更に含むことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のステアリングモータの双油路構造。
【請求項7】
前記弁コアの中心に円形貫通孔が設けられ、前記弁コアの外壁に複数の開口環状溝が環設され、前記開口環状溝の内にO型シールリングが嵌め込まれることを特徴とする請求項6に記載のステアリングモータの双油路構造。
【請求項8】
前記弁コアの底端に弁尾部を有し、前記弁尾部は、下へ前記弁キャビティの底端まで延伸し、且つ前記弁尾部の内壁及び外壁に開口溝が環設され、前記開口溝の内に、下へ前記弁コアの底端から延伸した中空波形管が嵌め込まれることを特徴とする請求項6に記載のステアリングモータの双油路構造。
【請求項9】
前記中空柱の先端の内壁に深溝玉軸受けが嵌設され、前記深溝玉軸受けの内輪に中空スリーブが嵌設され、前記中空スリーブの内径は前記弁コアに設けられる円形貫通孔の内径より小さいことを特徴とする請求項8に記載のステアリングモータの双油路構造。
【請求項10】
前記中空スリーブの内に、前記中空スリーブの内壁に沿って下へ前記中空波形管に対して延出した配管ジャケットが設けられることを特徴とする請求項9に記載のステアリングモータの双油路構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動モータ油路の技術分野に関し、特にステアリングモータの双油路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車工業が絶えず発展するにつれて、自動車のステアリングシステムも急速に進歩し、電動パワーステアリングシステムが自動車のステアリングシステムの発展方向になっている。このシステムは、ステアリングモータによりステアリングパワーを直接提供するため、従来の液圧動力ステアリングシステムにおけるある必要な部材が省略されており、エネルギーも節約され、環境にも優しい。このシステムは、更に、調整が簡単で、組立が自由で、また様々な状況でもステアリングパワーを提供できるという利点を有する。
【0003】
運転手がハンドルを動かしてステアリングする場合、トルクセンサが、ステアリング・ホイールのステアリング及びトルクの大きさを検出し、電圧信号を電子制御ユニットに送る。電子制御ユニットはトルクセンサからのトルク電圧信号、回転方向及び車速信号等に基づいて、ステアリングモータコントローラに指令を出して、ステアリングモータに相応の大きさ及び方向のステアリングパワートルクを出力させ、これによって補助動力を発生させる。自動車がステアリングされない場合、電子制御ユニットは、モータコントローラに指令を出さず、電動モータは動作しない。
【0004】
現在のステアリングモータには、例えば、衝撃吸収用の給油油路、ブレーキ用の給油油路、リフト用の給油油路等の様々な油路が内蔵される。これらの油路は、一般的に、互いに離間されるように、個別に設計され組み立てられる。これにより、ステアリングモータの多くの内部空間が多すぎる個別の油路により占用されるので、ステアリングモータの内部の残された使用空間がそれに応じて小さくなる。その影響を避けるために、ステアリングモータ全体の体積を大きくすることがよくあるが、資源の無駄使いになり、また、生産コストも増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ステアリングモータの双油路構造を提供することを目的とし、従来の技術によるステアリングモータの内部に存在する各油路が、個別に設計され、ステアリングモータの大きな内部空間を占用することによって、ステアリングモータの体積が大きくなり、更に、資源の無駄使いになり、生産コストが増加するという欠陥を解決することを旨とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の提供する技術的解決手段は、ステアリングモータの双油路構造であって、
上蓋緩衝アセンブリ及び配油盤を備え、前記配油盤は、前記上蓋緩衝アセンブリの下方に置かれ、前記上蓋緩衝アセンブリを被せられて、密封された軸方向キャビティを形成し、前記配油盤の中に、前記軸方向キャビティと連通するように径方向に沿って配置された通油通路が設けられ、前記配油盤に給油口が設けられ、前記配油盤の中に、軸方向に沿って配置され且つ内部キャビティを有する中空柱がそれぞれ上及び下へ延伸し、前記中空柱の内壁に前記通油通路と連通する通油口が設けられ、
前記中空柱の内側に、弁コアを有する切替弁が設けられ、前記中空柱の内壁と前記切替弁の外壁により第1の径方向キャビティが形成され、前記第1の径方向キャビティの中にピンボルトが嵌め込まれており、前記第1の径方向キャビティは、前記ピンボルトにより互いに独立した前記給油口と連通する配油盤給油キャビティ及び前記軸方向キャビティと連通する配油盤排油キャビティに隔離され、
前記弁キャビティの側壁の上部に径方向に沿って貫通して配置された切替弁通油通路が設けられ、前記弁キャビティに、前記切替弁通油通路の軸方向の下方に径方向に沿って配置された通油孔が設けられ、
前記弁コアの上端の外壁に、前記配油盤給油キャビティ及び前記配油盤排油キャビティに連通され且つ断面が半円状となる通油環状溝が環設され、
前記弁コアの下端の外壁と前記弁キャビティの下部の側壁により第2の径方向キャビティが形成され、前記弁キャビティの下部に、前記第2の径方向キャビティと連通する排油口が設けられる。
【0007】
更に、前記上蓋緩衝アセンブリは、上蓋及び蝶形状である弾性隔離膜を含み、前記弾性隔離膜が前記上蓋の内側の下縁に嵌め込まれて、締付部材によって前記配油盤と閉合して密封される。
【0008】
好ましくは、前記配油盤の下方に、前記配油盤の下面に当接し且つ両端が開口したシリンダーと、上端が固定して接続されるように前記シリンダーの内部キャビティ内に置かれた弾性油室と、前記シリンダーの内で軸方向に移動するように前記弾性油室の下端に固定して接続されたピストンと、を含むシリンダーアセンブリが設けられる。
【0009】
更に、前記弾性油室の上端に開口を有し、該開口のエッジが前記シリンダーに固定して接続され、前記配油盤の中に、それぞれ前記軸方向キャビティ及び前記弾性油室と連通するオリフィスが設けられる。
【0010】
更に、前記オリフィスの孔径は前記弾性油室の上端の開口の口径より小さい。
【0011】
好ましくは、前記切替弁は、前記弁キャビティの外周に覆設されるように前記配油盤の下方に置かれたコイル巻線を更に含む。
【0012】
更に、前記弁コアの中心に円形貫通孔が設けられ、前記弁コアの外壁に複数の開口環状溝が環設され、前記開口環状溝の内にO型シールリングが嵌め込まれる。
【0013】
更に、前記弁コアの底端に弁尾部を有し、前記弁尾部は、下へ前記弁キャビティの底端まで延伸し、且つ前記弁尾部の内壁及び外壁に開口溝が環設され、前記開口溝の内に、下へ前記弁コアの底端から延伸した中空波形管が嵌め込まれる。
【0014】
更に、前記中空柱の先端の内壁に深溝玉軸受けが嵌設され、前記深溝玉軸受けの内輪に中空スリーブが嵌設され、前記中空スリーブの内径は前記弁コアに設けられる円形貫通孔の内径より小さい。
【0015】
更に、前記中空スリーブの内に、前記中空スリーブの内壁に沿って下へ前記中空波形管に対して延出した配管ジャケットが設けられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の提供するステアリングモータの双油路構造によれば、切替弁の弁コアとその弁キャビティとの配置によって、配油盤給油キャビティから、弁コアの通油環状溝、及び配油盤排油キャビティを介して、軸方向キャビティに入る油路が形成され、配油盤給油キャビティから、切替弁の通油孔を介して、第2の径方向キャビティ、排油口に連通する別の油路が形成される。切替弁の弁コアとその弁キャビティとの配置によって、油路は互いに干渉しない2つの分支油路に分けられ、その占用する空間が小さくなり、更に、ステアリングモータの体積が小さくなり、資源やコストが節約される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例の提供する双油路構造がステアリングモータに用いられる場合の断面模式図である。
【
図3】
図1における配油盤の部分拡大模式図である。
【
図4】
図1における切替弁の部分拡大模式図である。
【
図5】
図1におけるA-A方向に沿った切断模式図である。
【
図6】
図1におけるB-B方向に沿った切断模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の目的、技術的解決手段及び利点をより明らかにするために、以下、図面及び実施例を結合させて本発明をより詳細に説明する。ここで説明される具体的な実施例は本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明を限定するためのものではないことを理解すべきである。
【0019】
以下、具体的な実施例に合わせて、本発明が達成されることを詳しく説明する。
【0020】
図1〜6は、本発明の提供する好ましい実施例の一つを示す。
【0021】
本実施例では、ステアリングモータの内部に設けられるステアリングモータの双油路構造を提供する。ステアリングモータの双油路構造は、上蓋緩衝アセンブリ1及び配油盤2を備え、配油盤2は、上蓋緩衝アセンブリ1の下方に設けられ、上蓋緩衝アセンブリ1と閉合して、密封された軸方向キャビティ4を形成する。配油盤2の中には、軸方向に沿って配置され且つ内部キャビティを有する中空柱21がそれぞれ上及び下へ延伸すると同時に、給油口22、及び径方向に沿って配置された通油通路23が設けられる。中空柱21の内壁に通油通路23と連通する通油口が設けられており、通油通路23は、通油口を介して中空柱21の内部キャビティと連通し、また軸方向キャビティ4とも連通する。中空柱21の内側に、弁コア31及び弁キャビティ32を有する切替弁3が設けられる。中空柱21の内壁と弁キャビティ32の外壁により第1の径方向キャビティが形成され、この第1の径方向キャビティの中にピンボルト7が嵌め込まれており、第1の径方向キャビティは、ピンボルト7により互いに独立した給油口22と連通する配油盤給油キャビティ24及び軸方向キャビティ4と連通する配油盤排油キャビティ25に隔離される。弁キャビティ32の側壁の上部に径方向に沿って貫通して配置された切替弁通油通路33が設けられ、切替弁通油通路33の軸方向の下方に径方向に沿って配置された通油孔34が設けられる。また、弁コア31の外壁の上部に、それぞれ配油盤給油キャビティ24及び配油盤排油キャビティ25に連通され且つ断面が半円状となる通油環状溝35が環設される。弁コア31の下端の外壁と弁キャビティ32の下部の内壁との間に第2の径方向キャビティ36が形成され、弁キャビティ32の下部に、第2の径方向キャビティ36と連通する排油口37が設けられる。
【0022】
上述したように、配油盤給油キャビティ24、切替弁通油通路33、通油環状溝35、配油盤排油キャビティ25、及び軸方向キャビティ4を連通させることによって、ステアリングモータの液圧衝撃吸収システムの給油やリフト給油のための油路が構成され、配油盤給油キャビティ24、通油孔34、第2の径方向キャビティ36、及び排油口37を連通させることによって、ステアリングモータのブレーキ給油のための別の油路が構成される。弁コア31の弁キャビティ32内での上下移動、及び通油環状溝35及び複数のO型シールリング38と弁キャビティ32の内壁との配置によって、上記2つの油路の切替が互いに干渉することなく達成される。
【0023】
上記の双油路構造をステアリングモータに適用する場合、下記の利点を有する。
【0024】
上蓋緩衝アセンブリ1と配油盤2を閉合することによって、密封された軸方向キャビティ4を形成し、また、軸方向キャビティ4と連通する配油盤排油キャビティ25、切替弁通油通路33は、通油環状溝35を介して配油盤給油キャビティ24と連通する。第2の径方向キャビティ36は、通油孔34、配油盤給油キャビティ24と連通し、及び排油口37と連通する。弁コア31の弁キャビティ32での上下移動、及び通油環状溝35及び複数のO形シールリング38と弁キャビティ32の内壁との配置によって、前述の2つの油路の切替が互いに干渉することなく達成される。上述の設計により2つの油路の占用する空間が小さくなり、更にステアリングモータの体積が小さくなり、資源やコストが節約される。
【0025】
本実施例において、上蓋緩衝アセンブリ1は、上蓋11及び弾性隔離膜12を含む。弾性隔離膜12は蝶形状である。弾性隔離膜12は上蓋11の内側の下縁に嵌め込まれ、締め付けられて密封される。配油盤2の構造と上蓋緩衝アセンブリ1の構造とは対応して整合し、両者が閉合されて締付部材によって密封接続される。もちろん、他の実施例において、具体的な状況や実際の要求に応じて、上蓋緩衝アセンブリ1及び上記配油盤2は、他の形状の構造であってもよい。
【0026】
本実施例において、配油盤2の下方に、シリンダーアセンブリ5が設けられる。シリンダーアセンブリ5は、シリンダー51と、弾性油室52と、ピストン53と、を含む。シリンダー51は、両端が開口した中空柱状構造であり、上端が配油盤2の下面に当接する。弾性油室52とピストン53はシリンダー51の中に設けられる。弾性油室52は、上端が開口した嚢状の弾性隔離膜であり、そのエッジがピストン53の上端に固定して接続される。ピストン53は、シリンダー51の内で軸方向に移動することができる。
【0027】
弾性油室52の上端の開口のエッジがシリンダー51の上端の開口の内壁に固定して接続されることによって、シリンダー51の端部の開口が密封される。また、弾性油室52の開口が配油盤2を介して軸方向キャビティ4と密封連通することによって、油路が構成される。
【0028】
配油盤2の底面にオリフィス26が設けられる。このオリフィス26は弾性油室52の上端の開口に対向するように設けられる。このように、弾性油室52がこのオリフィス26によって軸方向キャビティ4と密封連通することになる。もちろん、他の実施例において、弾性油室52は、例えば、管路による連通、或は通路による連通等のような他の形態によって、軸方向キャビティ4と密封連通してもよい。
【0029】
また、オリフィス26の孔径は弾性油室52の開口の口径より小さい。弾性油室52がピストン53により圧迫される場合、その中の油液は押されてオリフィス26を介して軸方向キャビティ4に入る。このオリフィス26は、これにより減衰緩衝の作用を果たす。もちろん、これは単に緩衝の形態の1つであり、他の実施例において、他の緩衝形態を採用してもよい。
【0030】
本実施例において、切替弁3として、電磁切替弁が採用される。この切替弁3は、コイル巻線39を更に含む。具体的には、コイル巻線39は、弁キャビティ32の軸方向位置決めフランジが設けられる外壁に覆設されるように、中空柱21の下方及び弁キャビティ32の外壁の位置決めフランジの上方に位置する。もちろん、他の実施例において、実際の状況や要求に応じて、他のタイプの切替弁を採用してもよい。
【0031】
弁コア31の中心に円形貫通孔が設けられ、弁コア31の外壁に複数の開口環状溝が環設され、各開口環状溝内にO型シールリング38が嵌め込まれる。
【0032】
初期状態では、通油環状溝35と通油通路23とがずらされて、切替弁通油通路33が弁コア31の外壁により塞がれており、この場合、第2の径方向キャビティ36が通油孔34を介して配油盤給油キャビティ24と連通し、つまり配油盤給油キャビティ24と第2の径方向キャビティ36により形成された油路が通路となり、且つ配油盤給油キャビティ24、軸方向キャビティ4と弾性油室52により形成された油路が遮断されることになる。コイル巻線39に給電されると、弁コア31全体が下へ移動し、通油環状溝35と通油通路33とが、位置を合わせて連通し、弁コア31の下部の錐面のO型シールリング38が弁キャビティ32の下部の円錐面に押し込まれ、つまり第2の径方向キャビティ36が塞がれる。このように、配油盤給油キャビティ24、軸方向キャビティ4と弾性油室52により形成された油路が通路となると同時に、配油盤給油キャビティ24と第2の径方向キャビティ36により形成された油路が遮断されることになる。切替弁3の方向切替作用により、互いに干渉することなく2つの油路の切替が達成される。
【0033】
本実施例において、弁コア31の底端に弁尾部を有する。弁尾部は、下に向かって弁キャビティ32の底端へ延出し、且つその内壁及び外壁に、円周方向において貫通する開口溝が設けられる。この開口溝内に、下に向かって弁コア31の底端から延出した中空波形管6が嵌め込まれる。
【0034】
中空柱21の先端の内壁に深溝玉軸受け8が嵌設される。深溝玉軸受け8の内輪に中空スリーブ9が嵌設される。弁コア31の中に、その上下を貫通した円状貫通孔が設けられる。中空スリーブ9の内径は円状貫通孔の内径より小さい。他の実施例において、中空柱21の内壁の先端に、他のタイプの軸受けが嵌設されてもよい。
【0035】
具体的には、中空スリーブ9内に配管ジャケット10が設けられる。配管ジャケット10が中空スリーブ9の内壁に沿って下へ弁コア31の底端に対して延出し、中空波形管6内に伸びる。中空波形管6及び中空スリーブ9は、配管ジャケット10に対して支持及び位置決めの作用を果たす。本実施例において、配管ジャケット10は、手ブレーキ線を覆設することに用いられる。もちろん、他の実施例において、手ブレーキ線は他の形態によって敷設されてもよく、配管ジャケット10は他の配線の敷設に用いられてもよい。
【0036】
上記は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するためのものではなく、本発明の精神及び原則の内においてなされたあらゆる変更、等価取替及び改良等は、本発明の保護範囲に含まれるはずである。
【0037】
(付記)
(付記1)
上蓋緩衝アセンブリ及び配油盤を備え、前記配油盤は、前記上蓋緩衝アセンブリの下方に置かれ、前記上蓋緩衝アセンブリを被せられて、密封された軸方向キャビティを形成し、前記配油盤の中に、前記軸方向キャビティと連通するように径方向に沿って配置された通油通路が設けられ、前記配油盤に給油口が設けられ、前記配油盤の中に、軸方向に沿って配置され且つ内部キャビティを有する中空柱がそれぞれ上及び下へ延伸し、前記中空柱の内壁に前記通油通路と連通する通油口が設けられ、
前記中空柱の内側に、弁コアを有する切替弁が設けられ、前記中空柱の内壁と前記切替弁の外壁により第1の径方向キャビティが形成され、前記第1の径方向キャビティの中にピンボルトが嵌め込まれており、前記第1の径方向キャビティは、前記ピンボルトにより互いに独立した前記給油口と連通する配油盤給油キャビティ及び前記軸方向キャビティと連通する配油盤排油キャビティに隔離され、
弁キャビティの側壁の上部に径方向に沿って貫通して配置された切替弁通油通路が設けられ、前記弁キャビティに、前記切替弁通油通路の軸方向の下方に径方向に沿って配置された通油孔が設けられ、
前記弁コアの上端の外壁に、前記配油盤給油キャビティ及び前記配油盤排油キャビティに連通され且つ断面が半円状となる通油環状溝が環設され、
前記弁コアの下端の外壁と前記弁キャビティの下部の側壁により第2の径方向キャビティが形成され、前記弁キャビティの下部に、前記第2の径方向キャビティと連通する排油口が設けられることを特徴とするステアリングモータの双油路構造。
【0038】
(付記2)
前記上蓋緩衝アセンブリは、上蓋及び蝶形状である弾性隔離膜を含み、前記弾性隔離膜が前記上蓋の内側の下縁に嵌め込まれて、締付部材によって前記配油盤と閉合して密封されることを特徴とする付記1に記載のステアリングモータの双油路構造。
【0039】
(付記3)
前記配油盤の下方に、前記配油盤の下面に当接し且つ両端が開口したシリンダーと、上端が固定して接続されるように前記シリンダーの内部キャビティ内に置かれた弾性油室と、前記シリンダーの内で軸方向に移動するように前記弾性油室の下端に固定して接続されたピストンと、を含むシリンダーアセンブリが設けられることを特徴とする付記1に記載のステアリングモータの双油路構造。
【0040】
(付記4)
前記弾性油室の上端に開口を有し、該開口のエッジが前記シリンダーに固定して接続され、前記配油盤の中に、それぞれ前記軸方向キャビティ及び前記弾性油室と連通するオリフィスが設けられることを特徴とする付記3に記載のステアリングモータの双油路構造。
【0041】
(付記5)
前記オリフィスの孔径は前記弾性油室の上端の開口の口径より小さいことを特徴とする付記4に記載のステアリングモータの双油路構造。
【0042】
(付記6)
前記切替弁は、前記弁キャビティの外周に覆設されるように前記配油盤の下方に置かれたコイル巻線を更に含むことを特徴とする付記1乃至5の何れか1つに記載のステアリングモータの双油路構造。
【0043】
(付記7)
前記弁コアの中心に円形貫通孔が設けられ、前記弁コアの外壁に複数の開口環状溝が環設され、前記開口環状溝の内にO型シールリングが嵌め込まれることを特徴とする付記6に記載のステアリングモータの双油路構造。
【0044】
(付記8)
前記弁コアの底端に弁尾部を有し、前記弁尾部は、下へ前記弁キャビティの底端まで延伸し、且つ前記弁尾部の内壁及び外壁に開口溝が環設され、前記開口溝の内に、下へ前記弁コアの底端から延伸した中空波形管が嵌め込まれることを特徴とする付記6に記載のステアリングモータの双油路構造。
【0045】
(付記9)
前記中空柱の先端の内壁に深溝玉軸受けが嵌設され、前記深溝玉軸受けの内輪に中空スリーブが嵌設され、前記中空スリーブの内径は前記弁コアに設けられる円形貫通孔の内径より小さいことを特徴とする付記8に記載のステアリングモータの双油路構造。
【0046】
(付記10)
前記中空スリーブの内に、前記中空スリーブの内壁に沿って下へ前記中空波形管に対して延出した配管ジャケットが設けられることを特徴とする付記9に記載のステアリングモータの双油路構造。