(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386077
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ステアリングモーター
(51)【国際特許分類】
B62D 5/04 20060101AFI20180827BHJP
F16F 9/10 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
B62D5/04
F16F9/10
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-559976(P2016-559976)
(86)(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公表番号】特表2017-518214(P2017-518214A)
(43)【公表日】2017年7月6日
(86)【国際出願番号】CN2014074348
(87)【国際公開番号】WO2015149209
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2017年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】516272386
【氏名又は名称】深▲せん▼市智行単軸双輪駆動技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼ 蜀剛
【審査官】
飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−061422(JP,A)
【文献】
特開昭63−125481(JP,A)
【文献】
特開2002−067996(JP,A)
【文献】
特開2011−259590(JP,A)
【文献】
特開2006−168705(JP,A)
【文献】
特開2010−088287(JP,A)
【文献】
特開2012−245811(JP,A)
【文献】
特開2006−138467(JP,A)
【文献】
実開昭55−007520(JP,U)
【文献】
米国特許第06293530(US,B1)
【文献】
欧州特許出願公開第00623764(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D5/00−5/32
F16F7/00
F16F9/10
H02K5/24
H02K9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ばね減衰弁及びオイルディストリビュータを備え、前記オイルディストリビュータが前記ばね減衰弁の下部に配置され、かつ前記ばね減衰弁に装着されることによって、内部に緩衝アセンブリが設置されるキャビティを形成し、
前記オイルディストリビュータの下部にシリンダーアセンブリが固定的に設置され、前記シリンダーアセンブリは、両端が開口されたシリンダーと、前記シリンダーの内に設けられかつ上端に開口を有する弾性オイルバッグとを備え、前記弾性オイルバッグの上端が前記シリンダーの内壁に固定して接続され、かつ前記キャビティと連通し、前記シリンダーの内に、前記シリンダーの軸方向に沿って摺動するピストンがさらに設けられ、前記ピストンが前記弾性オイルバッグの下端に接続され、
前記オイルディストリビュータの内に、径方向に沿って配置されかつ前記キャビティと連通するオイル流路が設けられ、前記ばね減衰弁の下端に、軸方向に沿って配置される中空柱が外向きに延伸し、前記中空柱に内部キャビティを有し、前記中空柱の側壁に、前記オイル流路と連通するオイル流入口が開設され、前記オイル流入口の内側エッジに、前記オイル流入口と連通する油注入溝が開設され、
前記中空柱の下端に切替弁が挿設され、前記切替弁は前記中空柱の内に軸方向に沿って移動できるバルブコアを備え、前記バルブコアはバルブステムと、前記バルブステムの上端に設けられるバルブヘッドとを備え、前記バルブヘッドの外側壁が前記内部キャビティの内壁に設けられ、前記バルブヘッドの上部に、前記オイル流入口と連通するための環状溝が環状に設けられ、前記バルブステムと前記内部キャビティの内壁との間に隙間を有し、かつ前記バルブヘッドの下端と前記バルブステムとの間に、内側へ凹みかつ前記内部キャビティを前記オイル流入口と連通させるための段差が形成されることを特徴とするステアリングモーター。
【請求項2】
前記緩衝アセンブリは、前記キャビティの内に順次積層して設置される弾性体、スペーサリング及び弾性隔膜を備え、かつ前記弾性隔膜のエッジが前記キャビティの内壁に締め付けられることによって密閉を形成することを特徴とする請求項1に記載のステアリングモーター。
【請求項3】
前記オイルディストリビュータの下端に、前記弾性オイルバッグの上端に対向して配置され、かつ前記キャビティ及び前記弾性オイルバッグとそれぞれ連通する制限オリフィスが設けられることを特徴とする請求項1に記載のステアリングモーター。
【請求項4】
前記制限オリフィスの孔径が前記弾性オイルバッグの上端開口の口径より小さいことを特徴とする請求項3に記載のステアリングモーター。
【請求項5】
前記切替弁は、前記中空柱の頂部外側に配置される磁性鋼と、前記バルブステムの底端に固定して接続されるばねと、前記中空柱の外周に嵌設されるスリーブと、前記スリーブの外周に嵌設される巻線コイルとをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のステアリングモーター。
【請求項6】
前記バルブステムの底端にバルブエンドを有し、前記バルブエンドの外側壁が前記スリーブの内壁に設けられ、かつ前記バルブエンドに、前記スリーブと連通するオイル流入溝が開設されることを特徴とする請求項5に記載のステアリングモーター。
【請求項7】
前記スリーブの底端に接続管が固定して接続され、前記ばねが前記接続管の内に配置され、かつ前記接続管が前記オイル流入溝を介して前記スリーブと連通することを特徴とする請求項6に記載のステアリングモーター。
【請求項8】
前記接続管の底端に波形弾性チューブが連通されることを特徴とする請求項7に記載のステアリングモーター。
【請求項9】
前記オイルディストリビュータの下部に、円周方向に配置される複数の前記シリンダーアセンブリを備えることを特徴とする請求項1に記載のステアリングモーター。
【請求項10】
前記ばね減衰弁が蝶形状を呈し、前記オイルディストリビュータが締結具を介して前記ばね減衰弁に装着され密閉されることを特徴とする請求項9に記載のステアリングモーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モーター構造の技術分野に関し、特にステアリングモーターに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業の継続的な発展に伴い、自動車のステアリングシステムも急速に進歩し、電動パワーステアリングシステムが自動車のステアリングシステムの発展方向になっている。このシステムは、ステアリングモーターでステアリングパワーを直接提供するため、従来の油圧パワーステアリングシステムに必要ないくつかの部品を省略し、エネルギーを節約する上、環境を保護する。さらに、このシステムは、調整しやすく、柔軟に組み立て可能で、かつ様々な状況でステアリングパワーを提供することができるという特徴を有する。
【0003】
運転手がステアリングホイールを動かしてステアリングするとき、トルクセンサーはステアリングホイールのステアリング及びトルクの大きさを検出し、電圧信号を電子制御部に送る。電子制御部がトルクセンサーからのトルク電圧信号、回転方向及び車速信号などに基づき、ステアリングモーターコントローラに命令を出すことによって、ステアリングモーターが対応する大きさと方向のステアリングパワートルクを出力し、これにより補助動力を発生させる。自動車がステアリングされないとき、電子制御部はモーターコントローラに命令を出さず、モーターは動作しない。
【0004】
自動車が悪路を走行するとき、自動車全体がステアリングモーターに継続的な振動を加えるので、悪路によるステアリングモーターの振動の影響を克服するため、ステアリングモーターの内部に減衰システムが設置される。従来の減衰システムでは、通常、炭素ブラシと集電リングが用いられ、ステアリングモーターが振動する場合、減衰システムは連続的に振動を緩衝するように動作する。これにより、炭素ブラシと集電リングが摩擦し続け、摩擦により摩耗かつ破損する。また、減衰システムは、温度にも敏感で、温度変化により損傷しやすく、ステアリングモーターの安定性及び寿命に深刻な影響を及ぼす。
【0005】
さらに、現在のステアリングモーター内には、減衰給油に用いられる油路、ブレーキ給油に用いられる油路、リフト給油に用いられる油路など様々な油路が設けられることが多い。これらの油路はいずれも個別に設計され、かつ個別に組み立てられるため、各油路同士が互いに分離されている。これにより、油路がステアリングモーターの多くの空間を占有し、ステアリングモーターの構造を複雑化させ、資源が浪費される上、生産コストが増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術において、ステアリングモーターに存在する下記の欠陥を解決するために、ステアリングモーターを提供することにある。
【0007】
1)ステアリングモーターの内部の各油路は、個別に設計されることによって大きな内部空間を占有し、ステアリングモーターの構造を複雑化させ、かつ体積を増加させ、さらに資源の浪費、生産コストの増加をもたらす。
【0008】
2)さらに、ステアリングモーターの内部のシリンダーアセンブリ内において、一部の部品は継続的な摩擦により構造が摩耗かつ破損し、また温度変化により構造が損傷するので、ステアリングモーターの安定性及び寿命に影響を及ぼす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によって提供される技術的解決手段は、次の通りである。ステアリングモーターであって、
ばね減衰弁及びオイルディストリビュータを備え、前記オイルディストリビュータが前記ばね減衰弁の下部に配置され、かつ前記ばね減衰弁に装着されることによって、内部に緩衝アセンブリが設置されるキャビティを形成し、
前記オイルディストリビュータの下部にシリンダーアセンブリが固定的に設置され、前記シリンダーアセンブリは、両端が開口されたシリンダーと、前記シリンダーの内に設けられかつ上端に開口を有する弾性オイルバッグとを備え、前記弾性オイルバッグの上端が前記シリンダーの内壁に固定して接続され、かつ前記キャビティと連通し、前記シリンダーの内に、前記シリンダーの軸方向に沿って摺動するピストンがさらに設けられ、前記ピストンが前記弾性オイルバッグの下端に接続され、
前記オイルディストリビュータの内に、径方向に沿って配置されかつ前記キャビティと連通するオイル流路が設けられ、前記ばね減衰弁の下端に、軸方向に沿って配置される中空柱が外向きに延伸し、前記中空柱に内部キャビティを有し、前記中空柱の側壁に、前記オイル流路と連通するオイル流入口が開設され、前記オイル流入口の内側エッジに、前記オイル流入口と連通する油注入溝が開設され、
前記中空柱の下端に切替弁が挿設され、前記切替弁は前記中空柱の内に軸方向に沿って移動できるバルブコアを備え、前記バルブコアはバルブステムと、前記バルブステムの上端に設けられるバルブヘッドとを備え、前記バルブヘッドの外側壁が前記内部キャビティの内壁に設けられ、前記バルブヘッドの上部に、前記オイル流入口と連通するための環状溝が環状に設けられ、前記バルブステムと前記内部キャビティの内壁との間に隙間を有し、かつ前記バルブヘッドの下端と前記バルブステムとの間に、内側へ凹みかつ前記内部キャビティを前記オイル流入口と連通させるための段差が形成される。
【0010】
好ましくは、前記緩衝アセンブリは、前記キャビティの内に順次積層して設置される弾性体、スペーサリング及び弾性隔膜を備え、かつ前記弾性隔膜のエッジが前記キャビティの内壁に締め付けられることによって密閉を形成する。
【0011】
さらに、前記オイルディストリビュータの下端に、前記弾性オイルバッグの上端に対向して配置され、かつ前記キャビティ及び前記弾性オイルバッグとそれぞれ連通する制限オリフィスが設けられる。
【0012】
さらに、前記制限オリフィスの孔径が前記弾性オイルバッグの上端開口の口径より小さい。
【0013】
好ましくは、前記切替弁は、前記中空柱の頂部外側に配置される磁性鋼と、前記バルブステムの底端に固定して接続されるばねと、前記中空柱の外周に嵌設されるスリーブと、前記スリーブの外周に嵌設される巻線コイルとをさらに備える。
【0014】
好ましくは、前記バルブステムの底端にバルブエンドを有し、前記バルブエンドの外側壁が前記スリーブの内壁に設けられ、かつ前記バルブエンドに、前記スリーブと連通するオイル流入溝が開設される。
【0015】
さらに、前記スリーブの底端に接続管が固定して接続され、前記ばねが前記接続管の内に配置され、かつ前記接続管が前記オイル流入溝を介して前記スリーブと連通する。
【0016】
好ましくは、前記接続管の底端に波形弾性チューブが連通される。
【0017】
好ましくは、前記ステアリングモーターは、前記オイルディストリビュータの下部に、円周方向に配置される複数の前記シリンダーアセンブリを備える。
【0018】
さらに、前記ばね減衰弁が蝶形状を呈し、前記オイルディストリビュータが締結具を介して前記ばね減衰弁に装着され密閉される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によって提供されるステアリングモーターは、油路が組み合わされて設計されることにより、構造が簡略化され、さらに弾性オイルバッグを用いるため、減衰機構の摩擦や摩耗を低減し、ステアリングモーターの耐用年数が延び、コストが削減される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る実施例によって提供されるステアリングモーターの断面模式図である。
【
図6】本発明に係る実施例によって提供されるステアリングモーターにおけるばね減衰弁とオイルディストリビュータの組立の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の目的、技術的解決策及び利点をより明確にするために、以下、添付図面及び実施例を併せて、本発明についてさらに詳細に説明する。本明細書に記載の具体的な実施例は、単に本発明を説明するために使用され、本発明を限定するものではないことを理解すべきである。
【0022】
以下、具体的な実施例と併せて本発明の実現について詳細に説明する。
【0023】
図1〜6は、本発明によって提供される好ましい実施例を示す。
【0024】
本実施例はステアリングモーターを提供する。ステアリングモーターは、ばね減衰弁1及びオイルディストリビュータ2を備え、オイルディストリビュータ2がばね減衰弁1の下部に配置され、かつばね減衰弁1にオイルディストリビュータ2が装着されることによって密閉されたキャビティ6を形成する。キャビティ6内に、液体油と組み合わせることにより振動を緩衝するための緩衝アセンブリ4が設置される。
【0025】
オイルディストリビュータ2の上端に、一端が開口されたオイル流路21がその径方向に沿って設けられ、オイル流路21がキャビティ6と連通する。ばね減衰弁1の下端に、その軸方向に沿って配置される中空柱11が外向きに延伸し、中空柱11に内部キャビティを有し、かつその外端に開口が設置され、かつ、中空柱11の側壁に、貫通するオイル流入口12が開設される。オイル流入口12がオイル流路21と連通し、オイル流入口12の内側エッジに、それと連通する油注入溝13が開設される。
【0026】
中空柱11の下端に切替弁3が挿設され、切替弁3は中空柱11の内部キャビティ内にその軸方向に沿って移動できるバルブコア32を備える。ここで、バルブコア32はバルブステム323と、バルブステム323の上端に設けられるバルブヘッド324とを備える。バルブヘッド324の外側壁が中空柱11の内部キャビティの内壁に設けられ、バルブヘッド324にオイル流路21と連通する環状溝321が環状に設けられる。バルブステム323と中空柱11の内部キャビティの内壁との間に隙間を有し、かつ、バルブヘッド324の下端とバルブステム323との間に、内側へ凹み、かつ油注入溝13、オイル流入口12を中空柱11の内部キャビティと連通させるための段差が形成される。
【0027】
上記のように、オイル流路21とオイル流入口12及びキャビティ6とが連通することによって、ステアリングモーターの油圧減衰システムに給油するための1本の油路が構成される。オイル流路21とオイル流入口12、油注入溝13及び中空柱11の内部キャビティとが連通することによって、ステアリングモーターのブレーキ給油及びリフト給油のためのもう1本の油路が構成される。切替弁3のバルブコア32が中空柱11の内部キャビティ内で上下移動し、かつオイル流入口12及び油注入溝13と組み合わさることによって、上記2本の油路の干渉のない切り替えが達成される。
【0028】
オイルディストリビュータ2の下部にシリンダーアセンブリ5が固定的に設置される。シリンダーアセンブリ5はシリンダー51、弾性オイルバッグ52及びピストン53を備え、シリンダー51の両端に開口を有し、シリンダーの上端開口がオイルディストリビュータ2の下面に当接され、弾性オイルバッグ52とピストン53はいずれもシリンダー51内に設置される。弾性オイルバッグ52は上端が開口されたバッグ状弾性隔膜であり、かつ弾性オイルバッグ52の上端開口のエッジがシリンダー51の上端開口の内壁に固定して接続されることによりシリンダー51の上端開口との密閉を形成し、かつ、弾性オイルバッグ52の上端開口がキャビティ6と連通する。さらに、ピストン53は弾性オイルバッグ52の下端に固定して接続され、シリンダー51内において、シリンダー51の内部キャビティの軸方向に沿って摺動することができる。
【0029】
ステアリングモーターが振動するとき、ピストン53はステアリングモーターの振動によってシリンダー51内で上下摺動し、その摺動により弾性オイルバッグ52の引き伸ばし又は圧縮を牽引する。弾性オイルバッグ52が圧縮される場合、弾性オイルバッグ52内にある液体油がキャビティ6内に流れ込むまで押圧され、次に液体油が緩衝アセンブリ4を圧縮することによって弾性変形が発生し、振動の緩衝が実現される。弾性オイルバッグ52が引き伸ばされる場合、キャビティ6内の液体油が弾性オイルバッグ52内に逆流し、緩衝アセンブリ4の変形が回復する。
【0030】
上記のステアリングモーターは下記の特徴を有する。
【0031】
1)ばね減衰弁1にオイルディストリビュータ2が装着されることによって密閉されたキャビティ6が形成され、キャビティ6はオイル流路21と連通する。オイルディストリビュータ2の下部に、オイル流入口12が設けられる中空柱11が突出する。中空柱11がオイル流入口12を介してオイル流路21と連通し、かつ中空柱11の内部キャビティ内に切替弁3が挿設され、バルブコア32の中空柱11の内部キャビティ内での移動によって、オイル流路21が互いに干渉しない2つの分岐油路に分割される。この設計により、2本の油路の占有空間が減少し、ステアリングモーターの構造が簡略化され、資源が節約され、コストが削減される。
【0032】
2)ばね減衰弁1にオイルディストリビュータ2が装着されることによって密閉されたキャビティ6が形成され、キャビティ6内に緩衝アセンブリ4が設置される。オイルディストリビュータ2の下部に、キャビティ6とドッキングされるシリンダーアセンブリ5が設置され、かつシリンダーアセンブリ5内の弾性オイルバッグ52がキャビティ6と密閉連通する。これにより、弾性オイルバッグ42は、従来の油圧減衰機構におけるシリンダーアセンブリ5の部材が摩耗しやすく、かつ温度に敏感であるという欠陥を克服し、ステアリングモーターの耐用年数を延長し、コストを削減する。
【0033】
本実施例では、緩衝アセンブリ4の設置の目的は、その弾性変形によって緩衝減衰を達成することである。緩衝アセンブリ4はキャビティ6内に上から下へ順次積層して設置される弾性体41、スペーサリング42及び弾性隔膜43を備え、かつ、弾性隔膜43のエッジがキャビティ6の内壁に固定して接続されかつ密封を形成する。これにより、弾性体41とスペーサリング42が弾性隔膜43によってキャビティ6の内壁と弾性隔膜43で形成されたチャンバー内に密封される。ここで、弾性体41とスペーサリング42はこのチャンバー内で移動可能である。勿論、他の実施例では、実際の状況及び必要に応じて、緩衝アセンブリ4の各アセンブリは他の順序で設置されてもよく、かつ緩衝アセンブリ4はさらに他の形態の緩衝構造であってもよい。
【0034】
オイルディストリビュータ2の底面に、弾性オイルバッグ52の上端開口に対向して設置される制限オリフィス22が開設される。これにより、弾性オイルバッグ52が制限オリフィス22を介してキャビティ6と連通する。勿論、他の実施例では、弾性オイルバッグ52はパイプ連通、又は通路連通など、他の手段によってキャビティ6と密閉連通してもよい。
【0035】
また、制限オリフィス22の孔径が弾性オイルバッグ52の上端開口の口径より小さい。これにより、弾性オイルバッグ52がピストン53に圧迫される場合、その内部にある液体油が押圧されることにより制限オリフィス22を通してキャビティ6内に進み、制限オリフィス22は制限緩衝の役割を果たす。勿論、これは緩衝の一形態に過ぎず、他の実施例では、実際の状況に応じて、他の緩衝形態を用いてもよい。
【0036】
本実施例では、切替弁3として電磁切替弁を用い、切替弁3は磁性鋼31、スリーブ33、巻線コイル34及びばね35をさらに備える。具体的には、磁性鋼31が中空柱11の頂部外側に固定的に設置され、スリーブ33が中空柱11の底端の外周に嵌設される。巻線コイル34がスリーブ33の外周に嵌設され、ばね35がバルブコア32のバルブステム323の底端に固定して接続される。勿論、他の実施例では、実際の状況及び必要に応じて、他のタイプの切替弁を用いてもよい。
【0037】
初期状態では、バルブコア32が磁性鋼31に吸着され、バルブヘッド324の外壁の環状溝321が中空柱11のオイル流入口12とずれており、オイル流入口12がバルブヘッド324により閉鎖されている。この場合、油注入溝13がオイル流入口12とオイル流路21と連通し、すなわち、オイル流路21と中空柱11の内部キャビティにより形成された油路によって通路を構成し、かつオイル流路21とキャビティ6及び弾性オイルバッグ52により形成された油路がブロックされる。巻線コイル34に通電されると、バルブコア32全体が下へ移動し、バルブステム323がばね35を圧縮し、バルブヘッド324の外壁の環状溝321がオイル流入口12と位置を合わせて連通し、油注入溝13がバルブヘッド324の下端の外壁によりブロックされる。これにより、オイル流路21とキャビティ6及び弾性オイルバッグ52により形成された油路が通路を構成するとともに、オイル流路21と中空柱11の内部キャビティにより形成された油路がブロックされる。このように、切替弁3の切り替えによって2本の経路の切り替えが達成され、かつ互いに干渉しない。
【0038】
オイルディストリビュータ2の中央に丸穴23が開設され、ばね減衰弁1にオイルディストリビュータ2が装着される場合、ばね減衰弁1の中央部の中空柱11が丸穴23内に挿入されることにより嵌合され、かつ、中空柱11の下端外周に嵌着されるスリーブ33の上端も丸穴23内に挿入される。
【0039】
図4に示すように、本実施例では、バルブステム323の底端にバルブエンド325を有し、バルブエンド325の外側壁がスリーブ33の内壁に設けられる。バルブエンド325の外側壁に、スリーブ33と連通するオイル流入溝322が開設される。
【0040】
具体的には、スリーブ33の底端に接続管7が固定して接続され、ばね35が接続管7の内部に設置され、かつ、接続管7の開口がバルブステム325及びスリーブ33により密閉される。これにより、バルブエンド325のオイル流入溝322を介し、接続管7とスリーブ33とが連通する。勿論、他の実施例では、スリーブ33と接続管7は他の手段によって連通してもよい。
【0041】
本実施例では、接続管7の底端に中空の波形弾性チューブ8が密閉連通される。これにより、オイル流路21と中空柱11、スリーブ33、接続管7及び波形弾性チューブ8とが通路を構成し、この通路をステアリングモーターブレーキに給油する油路及びステアリングモーターリフトに給油する油路とする。
【0042】
本実施例では、ステアリングモーター内に複数組のシリンダーアセンブリ5が設置される。各組のシリンダーアセンブリ5は全てオイルディストリビュータ2の下部に設置され、各組のシリンダーアセンブリ5の上端がいずれもオイルディストリビュータ2の下面に当接される。当然に、各組のシリンダーアセンブリ5内の弾性オイルバッグ52は対応する制限オリフィス22を介してキャビティ6と連通する。さらに、各組のシリンダーアセンブリ5はステアリングモーター内部に円周方向に配置される。勿論、他の実施例では、シリンダーアセンブリ5の数を具体的な状況に応じて決定することができ、かつ、各組のシリンダーアセンブリ5は他の形態で分布してもよい。
【0043】
本実施例では、ばね減衰弁1が蝶形状を呈し、当然に、オイルディストリビュータ2の構造がばね減衰弁1の構造と対応して整合し、ばね減衰弁1とオイルディストリビュータ2は締結具によって密閉接続される。勿論、他の実施例では、具体的な状況と実際の必要に応じて、ばね減衰弁1とオイルディストリビュータ2は他の形態の構造であってもよい。
【0044】
さらに、従来のステアリングモーターの内部には、多くの場合、収容溝を開設することによって送油管とケーブルを収容溝内に配置するので、ステアリングモーターが動作するとき、送油管とケーブルが継続的な回転により収容溝の溝壁と摩擦し、摩耗しやすい。本実施例によって提供されるステアリングモーター内部では、各送油管とケーブルを吊り下げて設置することにより、ステアリングモーターが動作するとき、送油管とケーブルが往復揺動する。これにより、摩擦による損傷現象が回避され、コストが削減される。
【0045】
上記は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の精神と原則内において行われる修正、等価置換および改善などのいずれも、本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【0046】
(付記)
(付記1)
ばね減衰弁及びオイルディストリビュータを備え、前記オイルディストリビュータが前記ばね減衰弁の下部に配置され、かつ前記ばね減衰弁に装着されることによって、内部に緩衝アセンブリが設置されるキャビティを形成し、
前記オイルディストリビュータの下部にシリンダーアセンブリが固定的に設置され、前記シリンダーアセンブリは、両端が開口されたシリンダーと、前記シリンダーの内に設けられかつ上端に開口を有する弾性オイルバッグとを備え、前記弾性オイルバッグの上端が前記シリンダーの内壁に固定して接続され、かつ前記キャビティと連通し、前記シリンダーの内に、前記シリンダーの軸方向に沿って摺動するピストンがさらに設けられ、前記ピストンが前記弾性オイルバッグの下端に接続され、
前記オイルディストリビュータの内に、径方向に沿って配置されかつ前記キャビティと連通するオイル流路が設けられ、前記ばね減衰弁の下端に、軸方向に沿って配置される中空柱が外向きに延伸し、前記中空柱に内部キャビティを有し、前記中空柱の側壁に、前記オイル流路と連通するオイル流入口が開設され、前記オイル流入口の内側エッジに、前記オイル流入口と連通する油注入溝が開設され、
前記中空柱の下端に切替弁が挿設され、前記切替弁は前記中空柱の内に軸方向に沿って移動できるバルブコアを備え、前記バルブコアはバルブステムと、前記バルブステムの上端に設けられるバルブヘッドとを備え、前記バルブヘッドの外側壁が前記内部キャビティの内壁に設けられ、前記バルブヘッドの上部に、前記オイル流入口と連通するための環状溝が環状に設けられ、前記バルブステムと前記内部キャビティの内壁との間に隙間を有し、かつ前記バルブヘッドの下端と前記バルブステムとの間に、内側へ凹みかつ前記内部キャビティを前記オイル流入口と連通させるための段差が形成されることを特徴とするステアリングモーター。
【0047】
(付記2)
前記緩衝アセンブリは、前記キャビティの内に順次積層して設置される弾性体、スペーサリング及び弾性隔膜を備え、かつ前記弾性隔膜のエッジが前記キャビティの内壁に締め付けられることによって密閉を形成することを特徴とする付記1に記載のステアリングモーター。
【0048】
(付記3)
前記オイルディストリビュータの下端に、前記弾性オイルバッグの上端に対向して配置され、かつ前記キャビティ及び前記弾性オイルバッグとそれぞれ連通する制限オリフィスが設けられることを特徴とする付記1に記載のステアリングモーター。
【0049】
(付記4)
前記制限オリフィスの孔径が前記弾性オイルバッグの上端開口の口径より小さいことを特徴とする付記3に記載のステアリングモーター。
【0050】
(付記5)
前記切替弁は、前記中空柱の頂部外側に配置される磁性鋼と、前記バルブステムの底端に固定して接続されるばねと、前記中空柱の外周に嵌設されるスリーブと、前記スリーブの外周に嵌設される巻線コイルとをさらに備えることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1つに記載のステアリングモーター。
【0051】
(付記6)
前記バルブステムの底端にバルブエンドを有し、前記バルブエンドの外側壁が前記スリーブの内壁に設けられ、かつ前記バルブエンドに、前記スリーブと連通するオイル流入溝が開設されることを特徴とする付記5に記載のステアリングモーター。
【0052】
(付記7)
前記スリーブの底端に接続管が固定して接続され、前記ばねが前記接続管の内に配置され、かつ前記接続管が前記オイル流入溝を介して前記スリーブと連通することを特徴とする付記6に記載のステアリングモーター。
【0053】
(付記8)
前記接続管の底端に波形弾性チューブが連通されることを特徴とする付記7に記載のステアリングモーター。
【0054】
(付記9)
前記オイルディストリビュータの下部に、円周方向に配置される複数の前記シリンダーアセンブリを備えることを特徴とする付記1に記載のステアリングモーター。
【0055】
(付記10)
前記ばね減衰弁が蝶形状を呈し、前記オイルディストリビュータが締結具を介して前記ばね減衰弁に装着され密閉されることを特徴とする付記9に記載のステアリングモーター。