特許第6386087号(P6386087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386087
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】制振棚
(51)【国際特許分類】
   A47B 96/00 20060101AFI20180827BHJP
   A47B 97/00 20060101ALI20180827BHJP
   A47B 96/02 20060101ALI20180827BHJP
   A47B 96/14 20060101ALI20180827BHJP
   F16F 9/54 20060101ALI20180827BHJP
   F16F 15/023 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   A47B96/00 B
   A47B97/00 D
   A47B96/02 C
   A47B97/00 A
   A47B96/14 B
   A47B96/14 F
   F16F9/54
   F16F15/023 A
   F16F15/023 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-566127(P2016-566127)
(86)(22)【出願日】2015年12月14日
(86)【国際出願番号】JP2015084964
(87)【国際公開番号】WO2016104225
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2017年2月23日
(31)【優先権主張番号】特願2014-258607(P2014-258607)
(32)【優先日】2014年12月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関根 伸一
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 靖
(72)【発明者】
【氏名】小倉 雅則
(72)【発明者】
【氏名】井上 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】一新 賢二
(72)【発明者】
【氏名】阿部 景太
【審査官】 大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−098164(JP,A)
【文献】 特開2004−194864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 96/00、96/02、97/00
A47F 5/00− 8/02
F16F 9/32、 9/54、15/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部が上下方向の離れた位置に取り付けられるダンパと、
前記ダンパに保持されている棚部材と、
を備えており、
前記棚部材は一対の前記ダンパによって左右端部が保持されており、
一対の前記ダンパは、両端部が上下方向の離れた位置に取り付けられた状態で、上端部から下端部に伸びる軸線の方向が傾斜していることを特徴とする制振棚。
【請求項2】
一対の前記ダンパは、側方から見た側面視において、それぞれの前記ダンパの前記軸線の傾斜方向が反対であること特徴とする請求項記載の制振棚。
【請求項3】
前記ダンパは、設置面と天井、設置面と前記設置面から鉛直方向に延びた壁面、壁面と天井、設置面上に設置された物品の上面と天井、又は物品の上面と壁面に両端部が取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の制振棚。
【請求項4】
前記ダンパは、有底筒状のシリンダと、前記シリンダ内に摺動自在に挿入されたピストンと、前記シリンダの開口部を封鎖するロッドガイドと、前記ピストンに基端部が連結され、前記ロッドガイドを挿通して先端側が前記シリンダの外部へ突出したロッドとを有しており、
前記棚部材は前記シリンダに保持されていることを特徴とする請求項1又は2記載の制振棚。
【請求項5】
上下両端部が前記ダンパと同じ相手部材に取り付けられる圧縮ばねをさらに備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の制振棚。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制振棚に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の制振棚を開示している。この制振棚は棚本体と一対のダンパ(damper)とを備えている。棚本体は4本の支柱と複数の長方形状の棚板とを有している。棚板は、4本の支柱に四隅が固定され、互いに上下に間隔を空けて設置されている。一対のダンパは、棚板の長辺方向の両端において、棚板の短辺方向に並んだ2本の支柱の間に取り付けられている。これら一対のダンパは夫々が交差するように逆方向に傾斜して配置されている。このため、この制振棚は地震等の揺れによる棚本体の歪みを抑制することができる。これによって、この制振棚は、棚本体の揺れが抑制され、棚板に載置した物の落下及び棚本体の転倒を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−42774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の制振棚は、棚本体の揺れを抑制し、棚板に載置した物の落下及び棚本体の転倒を抑制することのみが目的であるため、制振棚を設置した部屋等の揺れを抑制したり、家具等の他の物品に制振棚を取り付けることによって家具等の他の物品の揺れを抑制したりすることができない。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、棚部材に載置した物の落下を抑制しつつ、他の物品等の揺れを抑制することができる制振棚を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の制振棚はダンパと棚部材とを備えている。ダンパは両端部が上下方向に離れた位置に取り付けられる。棚部材はダンパに保持されている。
【0007】
本発明の棚部材は一対の前記ダンパによって左右端部が保持されている。また、一対の前記ダンパは、両端部が上下方向の離れた位置に取り付けられた状態で、上端部から下端部に伸びる軸線の方向が傾斜している。また、一対の前記ダンパは、側方から見た側面視において、それぞれの前記ダンパの前記軸線の傾斜方向が反対となるように取り付けられ得る。
【0008】
本発明のダンパは、設置面と天井、前記設置面と前記設置面から鉛直方向に延びた壁面、前記壁面と前記天井、前記設置面上に設置された物品の上面と天井、又は前記物品の上面と前記壁面に両端部が取り付けられ得る。
本発明の制振棚は、ダンパの上下両端部が取付けられている相手部材と同じ相手部材の間に、圧縮ばねをさらに取付けるようにしてもよい。
【0009】
本発明のダンパは、シリンダ(cylinder)、ピストン(piston)、ロッドガイド(rod guide)、及びロッド(rod)を有しており、棚部材はシリンダに保持され得る。シリンダは有底筒状である。ピストンはシリンダ内に摺動自在の挿入されている。ロッドガイドはシリンダの開口部を封鎖している。ロッドは、ピストンに基端部が連結され、ロッドガイドを挿通して先端側がシリンダの外部へ突出している。
【0010】
ここで、物品は、家具、複数の寝台を上下方向に連結したベッド(bed)、大型テレビ、冷蔵庫、書棚、ショーケース(showcase)、サーバーラック(server rack)等、地震の揺れ等によって転倒するおそれのあるものが含まれる。設置面は、建物内の床面のみならず、建物外で物品を設置する基礎面等が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1の制振棚であって、各ダンパの両端部を家具の上面と天井とに取り付けた状態を示す側面図である。
図2】実施形態1の制振棚であって、各ダンパの両端部を家具の上面と天井とに取り付けた状態を示す斜視図である。
図3】実施形態2の制振棚であって、各ダンパの両端部を家具の上面と天井とに取り付けた状態を示す斜視図である。
図4】実施形態3の制振棚であって、各ダンパの両端部を天井と床面とに取り付けた状態を示す側面図である。
図5参考例1の制振棚であって、各ダンパの両端部を天井と床面とに取り付けた状態を示す斜視図である。
図6参考例2の制振棚であって、各ダンパの両端部を家具の上面と天井とに取り付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の制振棚を具体化した実施形態1〜3、並びに参考例1及び2について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
<実施形態1>
実施形態1の制振棚は、図1及び図2に示すように、一対のダンパ10と棚部材である2枚の棚板40とを備えている。各ダンパ10は家具1の上面1Uと天井Cとに両端部が取り付けられている。つまり、各ダンパ10は両端部が上下方向に離れた位置に取り付けられている。家具1は床面(図示せず)から鉛直方向に延びる壁面Wに背面1Bを対向させて床面上に設置されている。家具1は、直方体形状であり、正面1Fに図示しない扉や引き出し等を有し、内部に衣類や装身具等を収納することができる。家具1は、水平断面形状が左右方向(図1において奥行き方向)に長い長方形状である。この家具1は、制振棚が取り付けられていない場合、地震の揺れ等によって、前方向(図1において右方向)に傾いて転倒するおそれがある。
【0014】
各ダンパ10は、シリンダ11、図示しないロッドガイド、図示しないピストン、ロッド13、第1ベース部20、及び第2ベース部30を有している。シリンダ11は有底筒状である。シリンダ11は外周面の2カ所に棚板40を保持する保持部14を設けている。これら2個の保持部14はシリンダの軸線に平行な直線上に間隔を空けて位置している。各保持部14は、ダンパ10の軸線が所定の角度で傾斜した状態にダンパ10の両端部を家具1の上面1Uと天井Cとに取り付けると、棚板40の上面が水平方向に広がるように棚板40を保持するように形成されている。
【0015】
ロッドガイドはシリンダ11の開口部を封鎖している。ピストンはシリンダ11内に摺動自在に挿入されている。ロッド13は、基端部がピストンに連結され、ロッドガイドを挿通して先端側がシリンダ11の外部へ突出している。シリンダ11は作動油及び圧縮ガスが封入されている。ダンパ10は、長さが収縮してシリンダ11に封入された圧縮ガスが圧縮されると、長さが伸長する方向に圧縮ガスの膨張力が付与される。
【0016】
第1ベース部20は第1基盤21と第1連結部23とを有している。第1基盤21は、平板状であり、家具1の上面1Uに面接触する第1当接面21Aを具備している。第1当接面21Aは長方形状である。第1連結部23は、平板状であり、第1ベース部20が家具1の上面1Uに取り付けられた状態で、第1基盤21の表面(第1当接面21Aの反対側の面)21Bに連続して上方に突出している。より詳しくは、第1連結部23は、第1基盤21の短手方向の中央部において長手方向に延びており、第1ベース部20が家具1の上面1Uに取り付けられた状態で、上辺が長手方向の両端部から中央部に向けて上昇するように傾斜し、長手方向の中央部において上方に突出した第1凸部25を具備している。第1凸部25は両側面からこれら側面に対して直交する同一直線上に円柱状の第1軸部27が延びている。
【0017】
シリンダ11は第1ベース部20の第1凸部25を挟み込むように形成した一対の平板状のシリンダ側連結部12を基端部に有している。各シリンダ側連結部12は先端部の外縁形状が半円形である。また、各シリンダ側連結部12はシリンダ11の軸線に対して直交する同一直線上に貫通孔12Aが設けられている。シリンダ11は、一対のシリンダ側連結部12の夫々に設けられた貫通孔12Aに第1凸部25の両側面から延びた第1軸部27の両端部を抜け止め状態で挿入し、第1ベース部20に対して第1軸部27を中心に回動自在に連結されている。
【0018】
第2ベース部30は第2基盤31と第2連結部33とを有している。第2基盤31は、平板状であり、天井Cに面接触する第2当接面31Aを具備している。第2当接面31Aは長方形状である。第2連結部33は、平板状であり、第2ベース部30が天井Cに取り付けられた状態で、第2基盤31の表面(第2当接面31Aの反対側の面)31Bに連続して下方に突出している。より詳しくは、第2連結部33は、第2基盤31の短手方向の中央部において長手方向に延びており、第2ベース部30が天井Cに取り付けられた状態で、下面が長手方向の両端部から中央部に向けて下降するように傾斜し、長手方向の中央部において下方に突出した第2凸部35を具備している。第2凸部35は両側面からこれら側面に対して直交する同一直線上に円柱状の第2軸部37が延びている。
【0019】
ロッド13は第2ベース部30の第2凸部35を挟み込むように形成した一対の平板状のロッド側連結部15を先端部に有している。各ロッド側連結部15は先端部の外縁形状が半円形である。また、各ロッド側連結部15はロッド13の軸線に対して直交する同一直線上に貫通孔15Aが設けられている。ロッド13は、一対のロッド側連結部15の夫々に設けられた貫通孔15Aに第2凸部35の両側面から延びた第2軸部37の両端部を抜け止め状態で挿入し、第2ベース部30に対して第2軸部37を中心に回動自在に連結されている。
【0020】
各ダンパ10は伸長動作時に発生する減衰力が収縮動作時に発生する減衰力よりも小さい圧効きダンパである。ここで、ダンパ10の伸長動作とは、シリンダ11からロッド13の突出長さ及びダンパ10の長さが長くなっていく動作を意味する。また、ダンパ10の収縮動作とは、シリンダ11からロッド13の突出長さ及びダンパ10の長さが短くなっていく動作を意味する。
【0021】
ダンパ10の減衰力が発生するメカニズムは、周知の構造であるため、図示を省略して説明する。シリンダ11は、内部がピストンによって、ロッド13の基端部が収納されているロッド側圧力室と、反ロッド側圧力室とに仕切られている。ピストンは両圧力室間を連通させる絞り弁であるオリフィス(orifice)が形成されている。オリフィスは、ダンパ10の伸縮動作に伴うロッド側圧力室と反ロッド側圧力室との間の作動油の流れに抵抗を付与して減衰力を発生する減衰力発生部として機能する。また、ピストンは逆止弁を介して両圧力室間を連通する連通路が形成されている。逆止弁は、ロッド側圧力室から反ロッド側圧力室への作動油の流れを許容し、その逆の流れを阻止する。このため、ダンパ10は、伸長動作時、ロッド側圧力室から反ロッド側圧力室への作動油の流路経路が、オリフィスと連通路の2経路になる。一方、ダンパ10は、収縮動作時、反ロッド側圧力室からロッド側圧力室への作動油の流路経路がオリフィスのみとなる。このため、ダンパ10は伸長動作時に発生する減衰力が収縮動作時に発生する減衰力よりも小さくなる。
【0022】
各棚板40は、平板状であり、かつ左右方向に長い長方形状である。各棚板40は左右端部である短辺部が各ダンパ10のシリンダ11に設けられた保持部14に保持されている。各ダンパ10の軸線が所定の角度で傾斜した状態になるように、各第1ベース部20を家具1の上面1Uに取り付け、各第2ベース部30を天井Cに取り付ける。つまり、各第1ベース部20を家具1の背面1B側の上面1Uに取り付け、各第2ベース部30を第1ベース部20よりも家具1の正面1F側の天井Cに取り付ける。すると、各ダンパ10は上端部から下端部に伸びる軸線の方向が家具1の背面1B方向に下り傾斜して平行に伸びた状態になり、各棚板40は、互いに上下に間隔を空けて、上面41が水平方向に広がった状態に保持される。
【0023】
この制振棚は、各第1ベース部20の第1当接面21Aを家具1の上面1Uに面接触させて載置し、シリンダ11内に封入した圧縮ガスの膨張力によって最も伸長した各ダンパ10を縮小させながら各第2ベース部30の第2当接面31Aを天井Cに面接触させて、家具1の上面1Uと天井Cとに取り付ける。このように、制振棚の各ダンパ10の両端部を家具1の上面1Uと天井Cとに取り付けることができる。そして、地震等の揺れが発生すると、制振棚は、ダンパ10が収縮し、ダンパ10の減衰力によって揺れを減衰することができる。つまり、この制振棚は、左右端部をダンパ10に保持された棚板40の揺れを抑制し、棚板40に載置した物の落下を抑制することができる。この制振棚はシリンダ11に設けられた保持部14に棚板40を保持している。このため、地震等の揺れによってダンパ10が伸縮する際、シリンダ11に対してロッド13が進退するため、シリンダ11の変位が少なく、棚板40の高さ方向の位置変動を少なくすることができる。このため、この制振棚は地震等の揺れによって棚板40に載置した物の落下を抑制することができる。
【0024】
また、この制振棚は、各ダンパ10の第1ベース部20が取り付けられた家具1が地震等の揺れによって受ける力をダンパ10の減衰力によって減衰し、家具1の揺れを抑制することができる。つまり、この制振棚は地震等の揺れによって家具1が傾く力を減衰して家具1の転倒を防止することができる。
【0025】
したがって、実施形態1の制振棚は、棚板40に載置した物の落下を抑制しつつ、家具1の揺れを抑制して家具1の転倒を防止することができる。
【0026】
<実施形態2>
実施形態2の制振棚は、図3に示すように、各ダンパ10の下り傾斜した上端部から下端部に伸びる軸線の傾斜方向が、側方から見た側面視において反対である点が実施形態1と相違する。実施形態1と同様な構成は同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0027】
この制振棚は、一対のダンパ10と棚部材である2枚の棚板240とを備えている。各棚板240は左右端部である短辺部が各ダンパ10のシリンダ11に設けられた保持部14に保持されている。各棚板240は、互いに上下に間隔をあけて、上面241が水平方向に広がっている。各ダンパ10は、上端部から下端部に伸びる軸線が、上方から見た平面視において反対方向に伸びるように、各第1ベース部20を家具1の上面1Uに取り付け、各第2ベース部30を天井Cに取り付ける。つまり、各棚板240の左端部を保持するダンパ10は、第1ベース部20を家具1の背面1B側の上面1Uに取り付け、第2ベース部30を第1ベース部20よりも家具1の正面1F側の天井Cに取り付ける。一方、各棚板240の右端部を保持するダンパ10は、第1ベース部20を家具1の正面1F側の上面1Uに取り付け、第2ベース部30を第1ベース部20よりも家具1の背面1B側の天井Cに取り付ける。ここで、左右は、制振棚が家具1と天井Cとの間に取り付けられた状態で、家具1の正面1F側から見た左右をいう。
【0028】
このように、各第1ベース部20及び各第2ベース部30を取付けるため、各ダンパ10に保持される各棚板240の左側の短辺部と右側の短辺部において、各ダンパ10のシリンダ11に設けられた保持部14に保持される位置が異なっている。つまり、上側に位置する棚板240は、左側の短辺部において、前後方向の略中央部がシリンダ11の保持部14に保持され、右側の短辺部において、後側がシリンダ11の保持部14に保持されている。また、下側に位置する棚板240は、左側の短辺部において、前後方向の略中央部がシリンダ11の保持部14に保持され、右側の短辺部において、前側がシリンダ11の保持部14に保持されている。
【0029】
この制振棚は、各第1ベース部20の第1当接面21Aを家具1の上面1Uに面接触させて載置し、シリンダ11内に封入した圧縮ガスの膨張力によって最も伸長した各ダンパ10を縮小させながら各第2ベース部30の第2当接面31Aを天井Cに面接触させて、家具1の上面1Uと天井Cとに取り付ける。このように、制振棚の各ダンパ10の両端部を家具1の上面1Uと天井Cとに取り付けることができる。そして、地震等の揺れが発生すると、制振棚は、ダンパ10が収縮し、ダンパ10の減衰力によって揺れを減衰することができる。つまり、この制振棚は、左右端部をダンパ10に保持された棚板240の揺れを抑制し、棚板240に載置した物の落下を抑制することができる。この制振棚はシリンダ11に設けられた保持部14に棚板240を保持している。このため、地震等の揺れによってダンパ10が伸縮する際、シリンダ11に対してロッド13が進退するため、シリンダ11の変位が少なく、棚板240の高さ方向の位置変動を少なくすることができる。このため、この制振棚は地震等の揺れによって棚板240に載置した物の落下を抑制することができる。
【0030】
また、この制振棚は、各ダンパ10の第1ベース部20が取り付けられた家具1が地震等の揺れによって受ける力をダンパの減衰力によって減衰し、家具1の揺れを抑制することができる。詳しくは、家具1が正面1F側に傾くと、各棚板240の左端部を保持するダンパ10が収縮して減衰力を発揮する。また、家具1が背面1B側に傾くと、各棚板240の右端部を保持するダンパが収縮して減衰力を発揮する。このように、この制振棚は地震等の揺れによって家具1が傾く力を減衰して家具1の転倒を防止することができる。
【0031】
したがって、実施形態2の制振棚は、棚板240に載置した物の落下を抑制しつつ、家具1の揺れを抑制して家具1の転倒を防止することができる。
【0032】
<実施形態3>
実施形態3の制振棚は、図4に示すように、一対のダンパ110と棚部材である3枚の棚板140とを備えている。この制振棚は、各ダンパ110及び棚板140の大きさが実施形態1及び2のそれらよりも大きく、各ダンパ110は両端部が床面Fと天井Cとに取り付けられている点が実施形態1及び2と相違する。実施形態1及び2と同様の構成は同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0033】
この制振棚は各シリンダ111の外周面の3カ所に棚板140を保持する保持部114が設けられている。これら3個の保持部114は各シリンダ111の軸線に平行な直線上に等間隔を空けて位置している。各ダンパ110は、軸線が所定の角度で傾斜した状態にダンパ110の第1ベース部120を床面Fに取り付け、第2ベース部130を天井Cに取り付ける。つまり、第1ベース部120が床面Fに取り付けられた位置と、第2ベース部130が天井Cに取り付けられた位置とは、水平方向で離れており、各ダンパ110は上端部から下端部に伸びる軸線の方向が下り傾斜して平行に伸びた状態になる。この状態で、各保持部114は各棚板140の上面141が水平方向に広がるように各棚板140を保持するように形成されている。
【0034】
第1ベース部120は第1基盤121と第1連結部123とを有している。第1基盤121は、平板状であり、床面Fに面接触する第1当接面121Aを具備している。第1当接面121Aは長方形状である。第1連結部123は、平板状であり、第1ベース部120が床面Fに取り付けられた状態で、第1基盤121の表面(第1当接面121Aの反対側の面)121Bに連続して上方に突出している。より詳しくは、第1連結部123は、第1基盤121の短手方向の中央部において長手方向に延びており、第1ベース部120が床面Fに取り付けられた状態で、上面が長手方向の両端部から中央部に向けて上昇するように傾斜している。第1連結部123は長手方向の中央部の両側面からこれら側面に対して直交する同一直線上に円柱状の第1軸部127が延びている。シリンダ111は、一対のシリンダ側連結部112の夫々に設けられた貫通孔112Aに第1連結部123の両側面から延びた第1軸部127の両端部を抜け止め状態で挿入し、第1ベース部120に対して第1軸部127を中心に回動自在に連結されている。
【0035】
第2ベース部130は第2基盤131と第2連結部133とを有している。第2基盤131は、平板状であり、天井Cに面接触する第2当接面131Aを具備している。第2当接面131Aは長方形状である。第2連結部133は、平板状であり、第2ベース部130が天井に取り付けられた状態で、第2基盤131の表面(第2当接面131Aの反対側の面)131Bに連続して下方に突出している。より詳しくは、第2連結部133は、第2基盤131の短手方向の中央部において長手方向に延びており、第2ベース部130が天井Cに取り付けられた状態で、下面が長手方向の両端部から中央部に向けて下降するように傾斜している。第2連結部133は長手方向の中央部の両側面からこれら側面に対して直交する同一直線上に円柱状の第2軸部137が延びている。ロッド113は、一対のロッド側連結部115の夫々に設けられた貫通孔115Aに第2連結部133の両側面から延びた第2軸部137の両端部を抜け止め状態で挿入し、第2ベース部130に対して第2軸部137を中心に回動自在に連結されている。
【0036】
各棚板140は、平板状であり、かつ左右方向に長い長方形状である。各棚板140は左右端部である短辺部が各ダンパ110のシリンダ111に設けられた保持部114に保持されている。前述したように、各ダンパ110の軸線が所定の角度で傾斜し、平行に伸びた状態になるように、第1ベース部120を床面Fに取り付け、第2ベース部130を天井Cに取り付けると、各棚板140は、互いに上下に等間隔を空けて、上面141が水平方向に広がった状態に保持される。
【0037】
この制振棚は、各第1ベース部120の第1当接面121Aを床面Fに面接触させて載置し、シリンダ111内に封入した圧縮ガスの膨張力によって最も伸長した状態の各ダンパ110を縮小させながら各第2ベース部130の第2当接面131Aを天井Cに面接触させて、床面Fと天井Cとに取り付ける。このように、制振棚の各ダンパ110の両端部を床面Fと天井Cとに取り付けることができる。そして、地震等の揺れが発生すると、制振棚は、各ダンパ110が収縮し、ダンパ110の減衰力によって揺れを減衰することができる。つまり、この制振棚は、左右端部をダンパ110に保持された棚板140の揺れを抑制し、棚板140に載置した物の落下を抑制することができる。この制振棚はシリンダ111に設けられた保持部114に棚板140を保持している。このため、地震等の揺れによってダンパ110が伸縮する際、シリンダ111に対してロッド113が進退するため、シリンダ111の変位が少なく、棚板140の高さ方向の位置変動を少なくすることができる。このため、この制振棚は地震等の揺れによって棚板140に載置した物の落下を抑制することができる。
【0038】
また、この制振棚は、ダンパ110が取り付けられた床面Fと天井Cとを有する部屋が地震等の揺れによって受ける力をダンパ110の減衰力によって減衰し、部屋の揺れを抑制することができる。
【0039】
したがって、実施形態3の制振棚は、棚板140に載置した物の落下を抑制しつつ、部屋の揺れを抑制することができる。
【0040】
参考例1
参考例1の制振棚は、図5に示すように、1個のダンパ310で棚部材である2枚の棚板340を保持している点が実施形態3と相違する。実施形態3と同様の構成は同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0041】
この制振棚は、ダンパ310のシリンダ311の軸線に沿って離れた2か所の同一外周円上の外周面から左右方向に伸びる二対の保持部314が設けられている。各棚板340は、左右方向に長い平板状であり、左右両端が円弧状に形成されている。各棚板340は中央部にダンパ310のシリンダ311の外径よりも大きい内径を有する円形状の貫通孔342が形成されている。シリンダ311の各保持部314は、シリンダ311を各棚板340の貫通孔342に挿通させた状態で、貫通孔342の内周縁から各棚板340を挟み込んで各棚板340を保持する。ダンパ310は、軸線が所定の角度で傾斜した状態にダンパ310の第1ベース部120を床面Fに取り付け、第2ベース部130を天井(図示せず)に取り付ける。つまり、第1ベース部120が床面Fに取り付けられた位置と、第2ベース部130が天井に取り付けられた位置とは、水平方向で離れており、ダンパ310は上端部から下端部に伸びる軸線の方向が下り傾斜して伸びた状態になる。この状態で、各保持部314は各棚板340の上面341が水平方向に広がるように各棚板340を保持するように形成されている。
【0042】
この制振棚は、第1ベース部120の第1当接面121Aを床面Fに面接触させて載置し、シリンダ311内に封入した圧縮ガスの膨張力によって最も伸長した状態のダンパ310を縮小させながら第2ベース部130の第2当接面131Aを天井に面接触させて、床面Fと天井とに取り付ける。このように、制振棚のダンパ310の両端部を床面Fと天井とに取り付けることができる。そして、地震等の揺れが発生すると、制振棚は、ダンパ310が収縮し、ダンパ310の減衰力によって揺れを減衰することができる。つまり、この制振棚は、ダンパ310に保持された棚板340の揺れを抑制し、棚板340に載置した物の落下を抑制することができる。この制振棚はシリンダ311に設けられた保持部314に棚板340を保持している。このため、地震等の揺れによってダンパ310が伸縮する際、シリンダ311に対してロッド113が進退するため、シリンダ311の変位が少なく、棚板340の高さ方向の位置変動を少なくすることができる。このため、この制振棚は地震等の揺れによって棚板340に載置した物の落下を抑制することができる。
【0043】
また、この制振棚は、ダンパ310が取り付けられた床面Fと天井とを有する部屋が地震等の揺れによって受ける力をダンパ310の減衰力によって減衰し、部屋の揺れを抑制することができる。
【0044】
したがって、参考例1の制振棚は、棚板340に載置した物の落下を抑制しつつ、部屋の揺れを抑制することができる。
【0045】
参考例2
参考例2の制振棚は、図6に示すように、実施形態1と同じ構造の1本のダンパ10と、1本の付勢部材410とを備えている。付勢部材410は、シリンダ411と、シリンダ411から上方へ突出したロッド413とを備えている。シリンダ411内におけるロッド413より下方の空間には、圧縮コイルバネ414が収容されている。圧縮コイルバネ414は、ロッド413を伸長方向へ付勢している。圧縮コイルバネ414は、シリンダ411、ロッド413、第1ベース部20及び第2ベース部30を介すことにより、ダンパ10と同じ相手部材(家具1の上面1Uと、天井C)に取り付けられている。付勢部材410が収縮すると、圧縮コイルバネ414の弾性伸長力により、ロッド413に伸長力が付与される。実施形態1と同様の構成は同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0046】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態1〜に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態1〜では、平板状の棚板を棚部材としたが、棚部材を他の形態にしてもよい。
(2)実施形態1〜では、棚板を2枚又は3枚備えていたが、棚板を1枚又は4枚以上備えていてもよい。
(3)実施形態1及び2では、ダンパの両端部を家具の上面と天井とに取り付けたが、ダンパの両端部を家具の上面と壁面とに取り付けてもよい。
(4)実施形態3では、ダンパの両端部を床面と天井とに取り付けたが、ダンパの両端部を壁面と天井とに取り付けたり、床面と壁面とに取り付けたりしてもよい。
(5)実施形態1〜では、ダンパが圧効きダンパであったが、両効きダンパ、伸効きダンパであってもよい。
(6)実施形態1〜では、シリンダに棚板を保持したが、ロッドに棚板を保持してもよい。
(7)参考例2の圧縮コイルバネを備えた付勢部材を付加する構成は、実施形態1〜3にも適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
10,110,310…ダンパ、11,111,311…シリンダ、13,113…ロッド、40,140,240,340…棚板(棚部材)、410…付勢部材、414…圧縮コイルバネ、1…家具(物品)、1U…(家具の)上面、C…天井、W…壁面、F…床面(設置面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6