(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係るスピン処理装置1は、上面が開口するカップ体2と、このカップ体2の下に設けられた駆動モータ3と、カップ体2の内部に設けられ基板Wを把持する基板把持機構4と、前述の駆動モータ3を制御する制御装置5とを備えている。
【0018】
カップ体2は上面開口の筒状に形成されている。このカップ体2の底部の径方向中心部には貫通孔2aが形成されており、その径方向周辺部にはカップ体2内の排液を流出させるための複数本の排出管(図示せず)が周方向に所定間隔で接続されている。なお、カップ体2の上端部は全周にわたって径方向内方に向かって傾斜するように形成されている。
【0019】
駆動モータ3は、筒状の固定子3aと、この固定子3a内に回転可能に挿入された筒状の回転子3bとにより構成されており、基板把持機構4により把持された基板Wを回転させる駆動源となるモータである。この駆動モータ3は電気的に制御装置5に接続されており、制御装置5の制御に応じて駆動する。
【0020】
基板把持機構4は、
図1さらに
図2に示すように、基体となる円筒状の回転体4aと、基板Wを把持する複数(例えば、六個)のクランプ部4bと、それらのクランプ部4bを保持する回転プレート4cと、各クランプ部4bに連結する複数(例えば、六個)のスライドアーム4dと、それらのスライドアーム4dを個別にスライド移動可能に支持する軸ベース4eと、基板Wを支持する複数(例えば、六個)の基板支持部材4fと、それらの基板支持部材4fを一体に支持する支持リング4gと、各部材を覆うカバー4hとを備えている。なお、
図2では、基板W、回転プレート4c及びカバー4hの図示が省略されている。
【0021】
回転体4aは、
図1に示すように、その中心軸である回転体軸A1を前述の駆動モータ3の回転子3bの回転軸に一致させて回転子3bに固定されている。これにより、回転体4aは駆動モータ3により回転駆動されることになる。回転子3bと回転体4aの内側には、回転しない固定軸11aが駆動モータ3の下部で支持固定されて配置されている。この固定軸11aの上部には、ノズルヘッド11bが設けられており、このノズルヘッド11bには、各クランプ部4bにより把持(クランプ)された基板Wの裏面に処理液を供給するノズル12が形成されている。なお、基板Wの表面に処理液を供給するノズル(図示せず)も回転体4aの上方に設けられている。
【0022】
各クランプ部4bは、
図2に示すように、回転体軸A1を中心とする円周上に所定間隔、例えば等間隔で設置されている。これらのクランプ部4bを動作させることで、基板Wをその中心が回転体軸A1の中心に配置されるように(センタリング)把持(クランプ)する機構が実現される。
【0023】
このクランプ部4bは、
図3に示すように、クランプピン21と、そのクランプピン21を保持するピンプレート22と、そのピンプレート22の回転軸となるクランプ軸23と、そのクランプ軸23の下端に接続された傾斜リンク板24と、その傾斜リンク板24の端部に設けられた傾斜リンク軸25と、その傾斜リンク軸25に設けられた滑りブロック26とを備えている。このクランプ部4bは、回転体軸A1に対して傾斜したクランプ軸心A2を中心に回転する。なお、
図3では、回転プレート4c及びカバー4hの図示が省略されている。
【0024】
クランプピン21は、クランプ軸心A2と偏心(オフセット)してピンプレート22上に固定されており、逆テーパ状に形成されている。ピンプレート22はクランプ軸23の上端に固定されており、クランプピン21を保持する偏心回転可能な偏心回転部材として機能する。なお、全てのクランプ部4bの各クランプピン21が基板Wに接触したとき、クランプピン21とクランプ軸心A2は回転体軸A1に平行になるように、さらに、ピンプレート22は回転体軸A1に直交する平面と平行になるように形成されている。
【0025】
クランプ軸23はクランプピン21を偏心回転させるための軸であり、このクランプ軸23の下端は傾斜リンク板24の一端に固定されている。この傾斜リンク板24の他端には、傾斜リンク軸25の下端が固定されている。クランプ軸23及び傾斜リンク軸25は互いに平行にされ、傾斜リンク板24に対して直角に設けられている。なお、全てのクランプ部4bの個々のクランプ軸心A2は、回転体軸A1と一点で交わって同じ傾斜で傾くように設定されている。また、滑りブロック26は、傾斜リンク軸25を回転軸としてその傾斜リンク軸25と隙間無く回転可能に設けられている。この滑りブロック26がスライドアーム4dの先端と係合する(詳しくは、後述する)。
【0026】
このクランプ部4bでは、ピンプレート22がクランプ軸23を回転中心として閉方向(本実施形態では、時計回りとする)に回転すると、ピンプレート22上のクランプピン21が偏心回転し、各基板支持部材4fにより支持されている基板Wの外周面に当接する。他のクランプ部4bでも同じようにクランプピン21が基板Wの外周面に当接し、各クランプピン21により基板Wを回転体軸A1の中心にセンタリングしつつ把持する。一方、ピンプレート22がクランプ軸23を回転中心として開方向(本実施形態では、反時計回りとする)に回転すると、ピンプレート22上のクランプピン21が前述と逆方向に偏心回転し、基板Wの外周面から離れる。他のクランプ部4bでも同じようにクランプピン21が基板Wの外周面から離れ、把持状態の基板Wが開放されることになる。
【0027】
回転プレート4cは、
図1に示すように、回転体4aに固定されて一体となっており、各クランプ部4bを保持して回転体4aと共に回転する。この回転プレート4cが回転体4aの回転により回転体4aと一緒に回転するため、各クランプ部4bも回転体軸A1を中心として回転することになる。
【0028】
この回転プレート4cには、クランプ部4bのクランプ軸23を回転可能に支持する軸支持部31がクランプ部4bの個数に合わせて複数設けられており、さらに、基板支持部材4fが挿入される貫通孔32が基板支持部材4fの個数に合わせて複数形成されている。各軸支持部31は、前述の各クランプ部4bの設置位置に合わせて、回転体軸A1を中心とする円周上に等間隔で形成されており、同様に、各貫通孔32も回転体軸A1を中心とする円周上に等間隔で形成されている。
【0029】
各スライドアーム4dは、
図2に示すように、回転体軸A1を中心とする回転方向に等間隔で並べられている。これらのスライドアーム4dは、回転体軸A1を中心とする円周の接線方向にスライド移動することによって、各クランプ部4bを回転させる機構として機能する。
【0030】
スライドアーム4dは、
図3に示すように、先端部に滑りブロック26に係合する溝部41を有している。この溝部41は、回転体軸A1とクランプ軸心A2とがつくる平面と平行な二つの平面を有するU字形状の溝である。溝部41には、傾斜リンク軸25を軸にした滑りブロック26が移動可能にかつ隙間無く配置されている。このスライドアーム4dは、回転体軸A1に直交する方向にスライド移動することで、滑りブロック26を介して傾斜リンク軸25をクランプ軸心A2周りに溝部41と平行を保ったまま旋回移動させ、さらに、傾斜リンク板24を介してクランプ軸23を回してピンプレート22を回転させる。
【0031】
軸ベース4eは、
図2に示すように、回転体4aに固定されて一体となっており、各スライドアーム4dをスライド移動可能に支持して回転体4aと共に回転する。この軸ベース4eには、
図2さらに
図3に示すように、スライドアーム4dを直線移動させるスライド軸51がスライドアーム4dの個数に合わせて設けられている。これらのスライド軸51は、軸ベース4eの周方向に等間隔に並べられてその軸ベース4eに固定されており、回転体軸A1及びクランプ軸心A2のいずれにも直角になるように設けられている。なお、前述のスライドアーム4dは、スライド軸51周りに回転しないように形成されている。
【0032】
各基板支持部材4fは、
図2に示すように、回転体軸A1を中心とする円周上に所定間隔、例えば等間隔で位置付けられ、支持リング4gの上面に設けられている。この基板支持部材4fは、上端部で基板Wを支持する部材であり、基板Wを支持する支持面は径方向内方に向かって徐々に低くなるように傾斜している。なお、基板支持部材4fは、
図1に示すように、回転プレート4cの貫通孔32に挿入されて設けられている。
【0033】
基板支持部材4fの支持面(傾斜面)は、
図4に示すように、各クランプ部4bの個々のクランプピン21が円盤状の基板Wを把持したとき、各クランプ軸心A2が交わる点B1を中心にして基板端を含む球面B2又はその球面B2に接する平面の形状になっている。例えば、回転体軸A1とクランプ軸心A2とが作る平面に基板支持部材4fの上面又はエッジを回転体軸A1周りに回転投影すると、上面又はエッジがクランプ軸心A2と直交するように各基板支持部材4fの配置が行われている。なお、
図4では、手前側の二本の基板支持部材4fの図示が省略されている。
【0034】
これにより、基板Wが各基板支持部材4fの個々の支持面により傾いた状態で支持されていた場合でも、各クランプ部4bの個々のクランプピン21により把持される際、基板Wは各基板支持部材4fの個々の支持面に沿って移動するため、各クランプピン21により確実に基板Wを把持することができる。
【0035】
支持リング4gは、
図2に示すように、円環状に等間隔に並ぶ各基板支持部材4fを支持するリングである。この支持リング4gは回転体軸A1を中心として昇降可能に設けられており、リング内を円筒状の回転体4aが貫通することになる。このような支持リング4gにより各基板支持部材4fは一体となり、同時に昇降可能となる。
【0036】
カバー4hは、
図1に示すように、下面開口のケース状に形成されており、回転体4aの回転と共に回転する前述の各部を覆って乱流の発生を防止する部材である。このカバー4hには、ノズルヘッド11bのノズル12から吐出された処理液を上部に通過させるための開口部61と、各クランプ部4bの個々のピンプレート22の上面を露出させる複数の開口部62と、各基板支持部材4fが通過する複数の貫通孔63とが形成されている。なお、各貫通孔63は、それぞれ基板支持部材4fの先端部、すなわち支持面(傾斜面)を有する先端部を収納可能なサイズに形成されている。
【0037】
ここで、前述の各クランプ部4b、各スライドアーム4d及び各基板支持部材4fなどの部材は、回転体軸A1に対して軸対象に配置されており、駆動モータ3に偏心負荷が作用しない構造になっている。
【0038】
次に、各スライドアーム4dをスライド移動させる移動機構について
図5を参照して説明する。なお、
図5では、基板W、回転プレート4c及びカバー4hの図示が省略されている。
【0039】
図5に示すように、各スライドアーム4dの下面には、それぞれ同期移動ピン42が設けられている。これらの同期移動ピン42の高さは回転体軸A1の軸周りに交互に異なっており、高さが異なる二種類の同期移動ピン42が存在している。すなわち、第1の高さを有する第1の同期移動ピン42と、その第1の高さより高い第2の高さを有する第2の同期移動ピン42とが回転体軸A1の軸周りに交互に存在している(第1の高さ<第2の高さ)。
【0040】
第1の高さを有する三つの同期移動ピン42は、回転体軸A1を回転軸として回転する第1の同期移動リング43に係合し、また、第2の高さを有する三つの同期移動ピン42は、回転体軸A1を回転軸として回転する第2の同期移動リング44に係合する。なお、同期移動ピン42としては、固定のピンを用いているが、これに限るものではなく、その他にも、例えば、回転するピンを設けるようにしても良い。
【0041】
前述の第1の同期移動リング43及び第2の同期移動リング44は上下二段に配置されており、回転体4aの軸周りに回転可能に設けられている。第1の同期移動リング43は、第1の高さを有する同期移動ピン42を挟み込むように接触する複数のピン接触部43aを有しており、同様に、第2の同期移動リング44も、第2の高さを有する同期移動ピン42を挟み込むように接触する複数のピン接触部44aを有している。
【0042】
これらの第1の同期移動リング43及び第2の同期移動リング44が回転すると、それらに係合する各同期移動ピン42が同期して回転体軸A1の軸周りに移動し、それらの同期移動ピン42につながる各スライドアーム4dがスライド軸51に沿って平行移動する。これに応じて、前述のように各クランプ部4bの個々のクランプピン21がクランプ軸23を回転中心として偏心回転する。
【0043】
このとき、第1の同期移動リング43及び第2の同期移動リング44の回転方向が反時計回りC1(基板Wの表面から見て)であると、各クランプピン21の回転方向が閉方向(時計回りC2)となり、各クランプピン21は基板Wを回転体軸A1の中心にセンタリングしつつ把持することになる。一方、第1の同期移動リング43及び第2の同期移動リング44の回転方向が時計回りC2であると、各クランプピン21の回転方向も開方向(反時計回りC1)となり、各クランプピン21は基板Wの把持状態を開放することになる。なお、第1の同期移動リング43と第2の同期移動リング44は必ずしも一緒に回転する必要は無く、どちらか一方を回転させれば基板Wを把持(クランプ)することが可能である。
【0044】
ここで、回転体4aの回転中に基板Wを確実に把持しておくことが必要であるため、第1の同期移動リング43及び第2の同期移動リング44は、全てのクランプ部4bの各クランプピン21を閉じる方向として、反時計回りC1にバネを用いて付勢されている。したがって、基板Wの把持を開放するときのみ、前述の方向と逆の方向、すなわち時計回りC2に第1の同期移動リング43及び第2の同期移動リングを回転させることになる。
【0045】
前述の第1の同期移動リング43は、円筒状に形成された円筒部43bを有しており、この円筒面には、回転体軸A1の軸方向に延びるスパイラル状の溝43b1が形成されている。このスパイラル状の溝43b1には昇降ピン45Aが接するように挿入されており、この昇降ピン45Aは昇降ブロック46Aに回転自在に設けられている。この昇降ブロック46Aは、回転体4aに形成された第1の回転体溝4a1に嵌め込む形で、回転体軸A1の軸方向に移動可能に設けられている。昇降ブロック46Aには、連結部材(図示せず)を介して第1の昇降リング47Aが取り付けられている。なお、スパイラル状の溝43b1は、第1の昇降リング47Aの昇降移動、すなわち回転体軸A1の軸方向の昇降移動を、昇降ピン45Aを介して第1の同期移動リング43の回転移動に変換するための溝である。
【0046】
第2の同期移動リング44も、第1の同期移動リング43と同様に、円筒状に形成された円筒部44bを有しており、この円筒面には、回転体軸A1の軸方向に延びるスパイラル状の溝44b1が形成されている。このスパイラル状の溝44b1には昇降ピン45Bが接するように挿入されており、この昇降ピン45Bは昇降ブロック46Bに回転自在に設けられている。この昇降ブロック46Bは、回転体4aに形成された第2の回転体溝4a2に嵌め込む形で、回転体軸A1の軸方向に移動可能に設けられている。この昇降ブロック46Bには、連結部材48を介して第2の昇降リング47Bが取り付けられている。なお、スパイラル状の溝44b1も、前述の溝43b1と同様、第2の昇降リング47Bの昇降移動、すなわち回転体軸A1の軸方向の昇降移動を、昇降ピン45Bを介して第2の同期移動リング44の回転移動に変換するための溝である。
【0047】
次に、このような二つの昇降リング47A、47Bを昇降させる昇降機構及び前述の支持リング4gを昇降させる昇降機構について
図6を参照して説明する。なお、
図6では、回転プレート4c及びカバー4hの図示が省略されている。
【0048】
図6に示すように、二つの昇降リング47A、47Bを昇降させる昇降機構として、第1の昇降リング47Aを昇降させる第1の昇降シリンダ71と、第2の昇降リング47Bを昇降させる第2の昇降シリンダ72とが設けられている。これらの第1の昇降シリンダ71及び第2の昇降シリンダ72としては、例えば、エアシリンダを用いることが可能である。なお、第1の昇降シリンダ71又は第2の昇降シリンダ72が昇降リングを昇降させる昇降部として機能する。
【0049】
第1の昇降シリンダ71は、シリンダ本体71aと、そのシリンダ本体71aにより昇降する昇降アーム71bと、その昇降アーム71bの先端に取り付けられたカムフォロア71cとを有している。このカムフォロア71cが上昇して第1の昇降リング47Aに接触し、その第1の昇降リング47Aを回転体軸A1の軸方向(延伸方向)に押し上げることで、第1の昇降リング47Aは上昇する。なお、シリンダ本体71aは装置架台(図示せず)に固定されている。
【0050】
第2の昇降シリンダ72も、第1の昇降シリンダ71と同様に、シリンダ本体72aと、そのシリンダ本体72aにより昇降する昇降アーム72bと、その昇降アーム72bの先端に取り付けられたカムフォロア72cとを有している。このカムフォロア72cが上昇して第2の昇降リング47Bに接触し、その第2の昇降リング47Bを回転体軸A1の軸方向(延伸方向)に押し上げることで、第2の昇降リング47Bは上昇する。なお、シリンダ本体72aも装置架台(図示せず)に固定されている。
【0051】
このような第1の昇降シリンダ71及び第2の昇降シリンダ72が昇降すると、第1の昇降リング47A及び第2の昇降リング47Bが昇降し、それら第1の昇降リング47A及び第2の昇降リング47Bにつながっている第1の同期移動リング43及び第2の同期移動リング44が回転する。このとき、第1の昇降リング47A及び第2の昇降リング47Bが下降すると、第1の同期移動リング43及び第2の同期移動リング44はバネによる付勢力により反時計回りC1に回転する。一方、第1の昇降リング47A及び第2の昇降リング47Bが上昇すると、第1の同期移動リング43及び第2の同期移動リング44は時計回りC2に回転する。
【0052】
ここで、各昇降シリンダ71、72の最下降時には、各カムフォロア71c、72cは、回転体4aと共に回転する各昇降リング47A、47Bに接触せずにそれらの昇降リング47A、47Bから離れている。これにより、回転体
4aの回転時、各昇降リング47A、47Bは各カムフォロア71c、72cに接触せずに回転することが可能となり、スムーズな回転を実現することができる。
【0053】
また、支持リング4gを昇降させる昇降機構としては、支持リング4gを介して各基板支持部材4fをクランプ高さまで上昇させるクランプ高さシリンダ73と、支持リング4gを介して各基板支持部材4fを移載高さまで上昇させる移載高さシリンダ74とが設けられている。なお、クランプ高さシリンダ73又は移載高さシリンダ74が支持リング4gを昇降させる昇降部として機能する。
【0054】
クランプ高さシリンダ73は、シリンダ本体73aと、そのシリンダ本体73aにより昇降する昇降アーム73bと、その昇降アーム73bの先端に取り付けられたカムフォロア73cとを有している。このカムフォロア73cが上昇して支持リング4gに接触し、その支持リング4gを回転体軸A1の軸方向(延伸方向)に押し上げることで、支持リング4g上の各基板支持部材4fをクランプ高さまで上昇させる。なお、シリンダ本体73aは装置架台(図示せず)に固定されている。
【0055】
移載高さシリンダ74も、クランプ高さシリンダ73と同様に、シリンダ本体74aと、そのシリンダ本体74aにより昇降する昇降アーム74bと、その昇降アーム74bの先端に取り付けられたカムフォロア74cとを有している。このカムフォロア74cが上昇して支持リング4gに接触し、その支持リング4gを回転体軸A1の軸方向(延伸方向)に押し上げることで、支持リング4g上の各基板支持部材4fを移載高さまで上昇させる。なお、シリンダ本体74aも装置架台(図示せず)に固定されている。
【0056】
ここで、クランプ高さシリンダ73だけが上昇した場合には、各基板支持部材4fは基板Wをクランプするクランプ高さに位置決めされ、移載高さシリンダ74だけが上昇した場合には、各基板支持部材4fは基板搬送用ロボットなどが基板交換する移載高さに位置決めされる。さらに、両方のシリンダ73、74が最下降している場合には、各基板支持部材4fの先端はカバー4h上面の高さまで下降しており、各基板支持部材4fはカバー4h内に収納されている。
【0057】
また、各シリンダ73、74の最下降時には、各カムフォロア73c、74cは、回転体4aと共に回転する支持リング4gに接触せずにその支持リング4gから離れている。これにより、回転体
4aの回転時、支持リング4gは各カムフォロア73c、74cに接触せずに回転することが可能となるため、スムーズな回転を実現することができる。
【0058】
前述の四台のシリンダ動作の組合せにより、各クランプ部4bによるクランプ及び各基板支持部材4fの昇降、例えば、把持基板開放高さから基板搬送高さ(移載高さ)への各基板支持部材4fの上昇、逆に、基板搬送高さからの基板把持高さ(クランプ高さ)への各基板支持部材4fの下降、さらに、各基板支持部材4fの収納(退避)を行うことができる。
【0059】
また、第1の昇降リング47Aとの隙間を測定する第1のリング隙間測定センサ75と、第2の昇降リング47Bとの隙間を測定する第2のリング隙間測定センサ76とが設けられている。これらの第1のリング隙間測定センサ75及び第2のリング隙間測定センサ76は、シリンダ同様に装置架台(図示せず)に固定されている。第1のリング隙間測定センサ75及び第2のリング隙間測定センサ76としては、例えば、近接センサを用いることが可能である。なお、第1のリング隙間測定センサ75又は第2のリング隙間測定センサ76は昇降リングの高さを検出するセンサとして機能する。
【0060】
第1の昇降シリンダ71の最下降時には、カムフォロア71cは第1の昇降リング47Aと接触しないため、第1の昇降リング47Aは、各クランプ部4bの個々のクランプピン21が基板Wを正常に把持したときと基板Wを正常に把持できなかったときとで、異なる高さで停止することになる。なお、第2の昇降シリンダ72の最下降時も同様であり、第2の昇降リング47Bも異なる高さで停止することになる。
【0061】
このため、各リング隙間測定センサ75、76によりリング停止高さを測定することによって、各クランプ部4bにより基板Wを正常に把持しているか否かを確認することができる。例えば、測定したリングとの隙間、すなわちリング停止高さが所定範囲内でなければ、基板Wを正常に把持していないと判断する。このように各リング隙間測定センサ75、76により基板Wをクランプするときのリング隙間を測定することによって、正しくクランプしたことを確認することが可能となり、次の動作に移行することができる。
【0062】
したがって、第1のリング隙間測定センサ75及び第2のリング隙間測定センサ76は、制御装置5に電気的に接続されており、測定した結果、すなわち測定値を制御装置5に入力する。制御装置5は判断部5aを有しており(
図1参照)、その判断部5aは前述の測定結果に応じて各クランプ部4bによる基板Wの把持が正常であるか否かを判断し、基板Wの把持が正常であると判断すると、次の動作を行い、基板Wの把持が正常でないと判断すると、動作を中止する。このとき、基板Wの把持が正常でない旨を利用者に報知するようにしもて良い。
【0063】
ここで、前述のクランプ関連動作と駆動モータ3による回転動作は独立であるため、クランプ関連動作中にも駆動モータ3の低速回転を開始することが可能である。また、基板Wを回転させてプロセス処理を行っている場合でも、第1の昇降リング47A又は第2の昇降リング47Bのどちらか一方を上昇させることで、各クランプ部4bの合計六本のクランプピン21のうち三本を開放することができる。その後、第1の昇降リング47A又は第2の昇降リング47Bを下降させたとき、六本のクランプピン21が正しく基板Wを把持していることをセンサで確認することができる。また、基板Wを正しく把持している場合のみ、各昇降リング47A、47Bの一方を上昇し、一方の三本のクランプピン21を開放するようにすれば、処理中の基板クランプミスによる基板放出などの異常発生を未然に防ぐことが可能となるので、安全性の向上を図ることができる。
【0064】
次に、前述のスピン処理装置1のスピン処理動作(スピン処理方法)について説明する。
【0065】
このスピン処理動作では、各基板支持部材4fにより基板Wを支持する工程と、各基板支持部材4fにより支持された基板Wをクランプ高さに移動させる工程と、クランプ高さに位置した基板Wを各クランプ部4bにより把持する工程と、各クランプ部4bにより把持された基板Wから各基板支持部材4fを退避させる工程と、各基板支持部材4fが基板Wから退避した状態で、各クランプ部4bにより把持された基板Wを回転体
4aの回転により回転させて処理する工程と、処理済の基板Wの把持状態を開放する工程と、処理済みの基板Wを移載高さまで移動させる工程とが存在している。
【0066】
各基板支持部材4fにより基板Wを支持する工程では、各基板支持部材4fが移載高さ(基板搬送高さ)に位置しており(
図1参照)、各クランプ部4bの個々のクランプピン21は開放位置に位置している。この状態で、基板Wが各基板支持部材4fの支持面(傾斜面)上にロボット装置のハンドなどにより載置される。なお、このとき、支持リング4gが移載高さシリンダ74により回転体軸A1の軸方向に押し上げられ、各基板支持部材4fが移載高さまで上昇している。また、第1の昇降リング47A及び第2の昇降リング47Bは第1の昇降シリンダ71及び第2の昇降シリンダ72により押し上げられ、第1の同期移動リング43及び第2の同期移動リング44は時計回りC2に回転している。この回転状態により、各スライドアーム4dを介して、各クランプ部4bの各々のクランプピン21が開方向(反時計回りC1)に偏心回転して停止している。
【0067】
次いで、基板Wをクランプ高さに移動させる工程では、クランプ高さシリンダ73が上昇し、移載高さシリンダ74が下降する。これに応じて、支持リング4gは回転体軸A1の軸方向に下降し、クランプ高さシリンダ73のカムフォロア74cに当接して停止する。これにより、各基板支持部材4fはクランプ高さ(基板把持高さ)に位置することになる。
【0068】
次に、基板Wを各クランプ部4bにより把持する工程では、前述の状態で、第1の昇降シリンダ71及び第2の昇降シリンダ72が下降し、第1の昇降リング47A及び第2の昇降リング47Bが下がると、第1の同期移動リング43及び第2の同期移動リング44がバネによる付勢力によって反時計回りC1に回転する。この回転動作により、それらに係合する各同期移動ピン42が同期して回転体軸A1の軸周りに移動し、それぞれのスライドアーム4dがスライド軸51に沿って平行移動する。これに応じて、各クランプ部4bの個々のクランプピン21が閉方向(時計回りC2)に偏心回転し、各基板支持部材4fにより支持されている基板Wの外周面に当接し、基板Wを回転体軸A1の中心にセンタリングしつつ把持する。
【0069】
その後、基板Wから各基板支持部材4fを退避させる工程では、前述のように各クランプ部4bにより基板Wが把持されると、クランプ高さシリンダ73が下降し、支持リング4gが回転体軸A1の軸方向に下降して最下降位置に停止する。これにより、各基板支持部材4fの先端部はカバー4hの各貫通孔63内に位置し、カバー4h内に収納される。
【0070】
次に、基板Wを回転させて処理する工程では、駆動モータ3により回転体4aが回転され、基板Wの上面及び下面の両面(表裏)に洗浄液が供給される。洗浄液が所定時間供給されると、その供給が停止され、次に、回転体4aは洗浄液供給時よりも高い速度で回転する。これにより、基板Wの上下面に付着した洗浄液は高速回転により発生する遠心力及び気流によって基板Wの径方向外方へ流れ、その外周縁から飛散する。基板Wの周縁部から飛散した洗浄液はカップ体2の内周面に衝突し、その底部に接続された複数の排出管から吸引されて排出される。なお、この乾燥時、基板Wの上下面の各中央部に気体を噴射するユニット(図示せず)が設けられている。このユニットは気体の噴射により基板Wの上下面の各中央部に残留する処理液を径方向外方へ押し流す。
【0071】
その後、処理済の基板Wの把持状態を開放する工程では、まず、クランプ高さシリンダ73により支持リング4gが回転体軸A1の軸方向に押し上げられ、各基板支持部材4fはクランプ高さまで上昇する。次に、その状態で、第1の昇降シリンダ71及び第2の昇降シリンダ72により第1の昇降リング47A及び第2の昇降リング47Bが押し上げられ、第1の同期移動リング43及び第2の同期移動リング44が時計回りC2に回転する。この回転動作により、それらに係合する各同期移動ピン42が同期して回転体軸A1の軸周りに移動し、それぞれのスライドアーム4dがスライド軸51に沿って平行移動する。これに応じて、各クランプ部4bの個々のクランプピン21が開方向(反時計回りC1)に偏心回転し、基板Wの外周面から離れて基板Wを開放する。このクランプから開放された基板Wは各基板支持部材4fにより支持される。
【0072】
最後に、処理済みの基板Wを移載高さまで移動させる工程では、移載高さシリンダ74により支持リング4gが回転体軸A1の軸方向に押し上げられ、基板Wを支持している各基板支持部材4fは移載高さまで上昇する。その後、各基板支持部材4fの支持面(傾斜面)上の基板Wがロボット装置のハンドなどにより搬送される。このとき、搬送用のロボット装置は基板Wの下面とカバー4hとの間にハンドを挿入し、そのハンドにより基板Wの下面を支持して搬送する。
【0073】
このようなスピン処理工程では、二つの昇降リング47A、47Bをそれぞれ下降させると、一本ずつ間を開けた三本のクランプピン21を同期させて、各基板支持部材4fに載った基板Wを中央に位置決めしながら把持することができる。六本のクランプピン21は三つで一組となり、二つの三爪クランプとして機能する。また、逆に、昇降リング47A、47Bのどちらかを上昇させると、三本のクランプピン21を開くことができる。
【0074】
さらに、二組の基板クランプ機構を独立に、しかも、基板回転機構とも独立して駆動することができる。これにより、基板
把持時には、二つの昇降リング47A、47Bを
下降させて基板Wを把持したら、各昇降リング47A、47Bの高さ位置を確認すれば、基板Wの把持が正常に完了しているかを確認することができる。また、基板Wの回転中でも、各昇降リング47A、47Bの片方を上昇させれば、六箇所のクランプピン21の三本を開くことができる。特に、基板Wを把持する状態を維持しつつ交互に三本のクランプピン21を開放することによって、処理液におけるピン影響を低減することができる。なお、各シリンダがカムフォロアを有しているため、回転している昇降リング47A、47Bにカムフォロアが接触しても、駆動モータ3に回転負荷を与えることを抑止することができる。
【0075】
また、
図7に示すように、各クランプ部4bにより基板Wをクランプした位置で、クランプ部4bの重心点Gとクランプピン21は、回転体軸A1とクランプ軸心A2とを含む回転軸面M1を挟む両側に位置するように設定されている。これにより、回転体4aが回転した場合、重心点Gに作用する遠心力Fにより、クランプピン21が基板Wを把持する力をアシストすることになる。このようにクランプ部4bの把持機構を遠心力Fに対して閉じる側に重心配置しておけば、高速回転時に三つのクランプ部4b、すなわち三本のクランプピン21により基板Wを把持しても、その把持力を静止時なみに上げることが可能となるので、把持を安定して行うことができる。
【0076】
なお、前述の実施形態では、一本のクランプピン21を用いているが、これに限るものではなく、
図8に示すように、例えば、二本のクランプピン21を用いるようにしても良く、その数は限定されない。これらのクランプピン21は、基板Wを把持するときにそれらの間隔が基板Wの外周面の切り欠き部(例えば、ノッチ)N1の幅(切り欠き幅)以上で基板Wの外周面に接触するように設けられている。これにより、把持対象の基板Wの切り欠き部N1に、二本の内の一本の
クランプピン21が入ったとしても、もう一本の
クランプピン21が基板Wの外周面を把持することができ、決定されるセンタリング位置が基板Wの切り欠き部N1の影響を受けることを抑えることが可能となるので、正確なセンタリングを実行することができる。なお、クランプピン21を基板Wと面接触するような平面や円筒面などの曲面構造にするようにしても良い。この場合でも、同様の効果を得ることができる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態によれば、各基板支持部材4fを同期させて昇降させる昇降機構が設けられている。したがって、各クランプ部4bにより基板Wが把持されると、各基板支持部材4fは昇降機構により下降して退避し、その後、基板Wの処理が行われる。これにより、基板Wの処理中、各基板支持部材4fは基板Wから十分に離間し、処理液や気流の流れを邪魔することが無くなるので、基板Wの均一な処理を実現することができる。
【0078】
また、昇降機構として、各基板支持部材4fを支持する支持リング4gと、その支持リング4gを昇降させる昇降部としての各シリンダ73、74とを用いることによって、簡略な構成で昇降機構を構築することができる。
【0079】
また、回転機構として、回転体4aの回転軸に直交する方向に移動可能に設けられ、各クランプ部4bの個々のクランプピン21を回転させるための複数のスライドアーム4dと、回転体4aの回転軸を中心として回転可能に設けられ、各スライドアーム4dを同期させて回転体4aの回転軸に直交する方向に移動させる各同期移動リング43、44とを用いることによって、簡略な構成で回転機構を構築することができる。
【0080】
また、各スライドアーム4dは各々同期移動ピン42を有しており、第1の同期移動リング43は、回転体4aの回転軸を中心とした回転により、同期移動ピン42に接触する複数のピン接触部43aを有している。また、第2の同期移動リング44も同様に複数のピン接触部44aを有している。これにより、簡略な構成で各スライドアーム4dを同期させて回転体4aの回転軸に直交する方向に移動させることができる。
【0081】
また、第1の同期移動リング43は、回転体4aの回転軸の軸方向に延びるスパイラル状の溝43b1が形成された円筒部43bを有しており、回転機構は、溝43b1に挿入されてその溝43b1に沿って移動可能な昇降ピン45Aと、回転体4aの回転軸を中心としてその回転軸の軸方向に移動可能に設けられ、昇降ピン45Aに連結された昇降リング47Aと、その昇降リング47Aを昇降させる昇降部としての第1の昇降シリンダ71とを具備している。これにより、昇降移動が回転移動に変換されるので、簡略な構成で第1の同期移動リング43を回転させることができる。なお、第2の同期移動リング44でも同様な構成により同じ効果を得ることができる。
【0082】
また、第1の昇降リング47Aの高さを検出するセンサとしての第1のリング隙間測定センサ75と、その第1のリング隙間測定センサ75により検出された第1の昇降リング47Aの高さに応じて各クランプ部4bの個々のクランプピン21による基板Wの把持が正常であるか否かを判断する判断部5aとを設けることによって、基板Wのクランプが不十分である状態で処理を実行して発生する不具合を防止することができる。また、第2のリング隙間測定センサ76でも同様な構成により同じ効果を得ることができる。
【0083】
また、三つで一組となる各クランプピン21が基板Wを処理する処理中に組ごとに交互に基板Wを把持する場合には、基板Wを把持する状態を維持しつつ、交互に三本のクランプピン21を開放するが可能となるので、基板Wの外周面に処理液が供給され、処理ムラの発生を抑えることができる。詳しくは、クランプピン21に把持されている基板Wの外周面が一時的に解放される状態になるため、処理液がピンにより滞留することが無くなり、処理ムラを防止することができる。
【0084】
また、二本のクランプピン21が基板Wを把持するときにそれらの間隔が基板Wの外周面の切り欠き部N1の幅以上で基板Wの外周面に接触するようにピンプレート22に設けられた場合には、把持対象の基板Wが切り欠き部N1付きの半導体ウエハである場合でも、各クランプピン21の把持により決定されるセンタリング位置が基板Wの切り欠き部N1の影響を受けることを抑えることが可能となるので、正確なセンタリングを実行することができる。
【0085】
なお、前述の実施形態では、基板Wとして、円形のウエハのような円板状の基板に対して処理を行っているが、基板Wの形状は限定されるものではなく、例えば、基板Wとして、液晶パネルのような矩形板状のガラス基板に対して処理を行っても良い。この場合にも、少なくとも三本のクランプピン21が必要であるが、基板Wの把持の安定性向上のためには、四本のクランプピン21を設けることが好ましい。また、四本のクランプピン21を二組設けた場合には、前述と同様に、処理中に組ごとに交互に基板Wを把持することも可能である。
【0086】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。