(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したようなシリコーンブランケットを使用したグラビアオフセット印刷機においては、当該シリコーンブランケット上に受け渡された前記インキの凝集力を上昇させることができるため、当該インキを基材へすべて転写させることが容易にできるようになっている。すなわち、前記版胴の前記凹版から前記ブランケット胴の前記シリコーンブランケット上に受け渡された前記インキは、溶剤が当該シリコーンブランケット上から揮発したり、当該シリコーンブランケット中へ浸透したりすることにより、生乾きのような状態になって凝集力が増大するのである。
【0006】
ここで、前記シリコーンブランケット上に受け渡された前記インキが適切な凝集状態となるのに要する時間は、当該シリコーンブランケット上に受け渡された当該インキの体積に対する表面積の割合に比例する。例えば、10μmの線幅の配線パターンの絵柄と100μmの線幅の配線パターンの絵柄とでは、10μmの線幅の配線パターンの絵柄の上記割合の方が、100μmの線幅の配線パターンの絵柄の上記割合よりも大きくなる。よって、当該シリコーンブランケット上に受け渡された当該インキの溶剤の揮発や浸透は、10μmの線幅の配線パターンの絵柄の方が、100μmの線幅の配線パターンの絵柄よりも短時間で行われるようになる。
【0007】
このため、例えば、10μmの線幅の配線パターンの絵柄を適切に印刷できるような条件で100μmの線幅の配線パターンの絵柄を印刷すると、100μmの線幅の配線パターンの絵柄で前記シリコーンブランケット上に受け渡されたインキは、乾燥不足となって、凝集力が不十分になってしまい、前記基材上に転写されるときに凝集破壊してしまい、当該基材上にすべて転写されずに当該シリコーンブランケット上に残存してしまうおそれを生じてしまう。
【0008】
他方、100μmの線幅の配線パターンの絵柄を適切に印刷できるような条件で10μmの線幅の配線パターンの絵柄を印刷すると、10μmの線幅の配線パターンの絵柄で前記シリコーンブランケット上に受け渡されたインキは、乾燥し過ぎて、凝集力が過剰となってしまい、前記基材上にうまく転写されなくなるおそれを生じてしまう。
【0009】
このようなことから、前述したようなシリコーンブランケットを使用したグラビアオフセット印刷機では、線幅の異なる複数の絵柄を対象体に一括的に印刷することが非常に難しかった。
【0010】
本発明は、上述した問題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、線幅の異なる複数の絵柄を対象体に一括して印刷することが容易にできるグラビアオフセット印刷機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した課題を解決するための、
第一番目の発明に係るグラビアオフセット印刷機は、第一の絵柄を形成されてインキを供給される第一のグラビア版と、前記第一のグラビア版から前記インキを受け取って
フラットベッド上の対象体に転写する第一のブランケット胴と、前記第一のグラビア版から前記第一のブランケット胴に前記インキを受け渡すように当該第一のグラビア版及び当該第一のブランケット胴のうち少なくとも当該第一のブランケット胴を作動させる第一の受渡作動手段と、
前記第一のブランケット胴を前記フラットベッドに沿って移動させて当該フラットベッド上の当該対象体上で水平方向へ転動させて当該第一のブランケット胴の前記インキを
当該対象体に転写するように当該第一のブランケット胴を作動
させる第一の転写作動手段と、前記第一のグラビア版の前記第一の絵柄の線幅と異なる線幅のみからなる第二の絵柄を形成されてインキを供給される第二のグラビア版と、前記第二のグラビア版から前記インキを受け取って
前記フラットベッド上の前記対象体に転写する第二のブランケット胴と、前記第二のグラビア版から前記第二のブランケット胴に前記インキを受け渡すように当該第二のグラビア版及び当該第二のブランケット胴のうち少なくとも当該第二のブランケット胴を作動させる第二の受渡作動手段と、
前記第二のブランケット胴を前記フラットベッドに沿って移動させて当該フラットベッド上の前記対象体上で水平方向へ転動させて当該第二のブランケット胴の前記インキを
当該対象体に転写するように当該第二のブランケット胴を作動
させる第二の転写作動手段と
、前記フラットベッド上の前記対象体上で前記第一のブランケット胴を転動させた後に、当該フラットベッド上の当該対象体上で前記第二のブランケット胴を転動させるように、前記第一の転写作動手段及び前記第二の転写作動手段の作動を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする。
また、第二番目の発明に係るグラビアオフセット印刷機は、第一番目の発明において、前記第一の転写作動手段が、前記第一のグラビア版と前記フラットテーブル上の前記対象体との間で前記第一のブランケット胴を往復移動させるものであり、前記第二の転写作動手段が、前記第二のグラビア版と前記フラットテーブル上の前記対象体との間で前記第二のブランケット胴を往復移動させるものであることを特徴とする。
また、第三番目の発明に係るグラビアオフセット印刷機は、第一番目又は第二番目の発明において、前記フラットベット上の前記対象体を前記第一のグラビア版と前記第二のグラビア版との間に位置させるように、当該第一のグラビア版及び当該第二のグラビア版が配設されていることを特徴とする。
また、第四番目の発明に係るグラビアオフセット印刷機は、第一の絵柄を形成されてインキを供給される第一のグラビア版と、前記第一のグラビア版から前記インキを受け取って対象体に転写する第一のブランケット胴と、前記第一のグラビア版から前記第一のブランケット胴に前記インキを受け渡すように当該第一のグラビア版及び当該第一のブランケット胴のうち少なくとも当該第一のブランケット胴を作動させる第一の受渡作動手段と、前記第一のブランケット胴の前記インキを前記対象体に転写するように当該対象体を移動させる第一の転写作動手段と、前記第一のグラビア版の前記第一の絵柄の線幅と異なる線幅のみからなる第二の絵柄を形成されてインキを供給される第二のグラビア版と、前記第二のグラビア版から前記インキを受け取って前記対象体に転写する第二のブランケット胴と、前記第二のグラビア版から前記第二のブランケット胴に前記インキを受け渡すように当該第二のグラビア版及び当該第二のブランケット胴のうち少なくとも当該第二のブランケット胴を作動させる第二の受渡作動手段と、前記第二のブランケット胴の前記インキを前記対象体に転写するように当該対象体を移動させる第二の転写作動手段と、前記第一のブランケット胴と前記第二のブランケット胴との間で前記対象体を往復移動させるように前記第一の転写作動手段及び前記第二の転写作動手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0012】
また、
第五番目の発明に係るグラビアオフセット印刷機は、
第一番目から第四番目の発明のいずれかにおいて、前記対象体が、シート状の基材であることを特徴とする。
【0013】
また、
第六番目の発明に係るグラビアオフセット印刷機は、
第五番目の発明において、前記絵柄が、配線パターンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るグラビアオフセット印刷機によれば、第一の絵柄と、当該第一の絵柄の線幅と異なる線幅のみからなる第二の絵柄のインキを対象体へすべて転写することができ、線幅の異なる複数の絵柄を対象体に一括して印刷することが容易にできる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るグラビアオフセット印刷機の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0017】
〈第一番目の実施形態〉
本発明に係るグラビアオフセット印刷機の第一番目の実施形態を
図1〜4に基づいて説明する。
【0018】
図1,2に示すように、フラットベッド101上の中央部分には、対象体であるシート状の基材1が載置される。前記フラットベッド101の長手方向(
図1,2中、左右方向)一方端側(
図1,2中、右側)には、第一の固定フレーム111が立設されている。前記第一の固定フレーム111には、第一の絵柄(例えば、10μmの線幅の配線パターン)を形成された第一の凹版(グラビア版)を外周に巻き付けた第一の版胴(グラビア胴)112が前記フラットベッド101の幅方向(
図2中、上下方向)へ軸方向を向けて回転可能に支持されている。前記第一の固定フレーム111の前記第一の版胴112の上方には、第一のドクタブレード113が当該第一の版胴112へ先端を接触させるようにして取り付けられている。
【0019】
前記第一の版胴112と前記第一のドクタブレード113との間には、当該第一の版胴112の前記凹版の前記絵柄の線幅に対応する適切な条件に調整された第一のインキ2Aが供給されるようになっており、上記第一のドクタブレード113は、上記第一の版胴112の回転に伴って、当該第一の版胴112の前記凹版の前記絵柄に上記第一のインキ2Aを供給すると同時に、当該凹版の当該絵柄以外の部分に付着した上記第一のインキ2Aを当該凹版から除去することができるようになっている。
【0020】
前記フラットベッド101の長手方向他方端側(
図1,2中、左側)には、第二の固定フレーム121が立設されている。前記第二の固定フレーム121には、第二の絵柄(例えば、100μmの線幅の配線パターン)を形成された第二の凹版(グラビア版)を外周に巻き付けた第二の版胴(グラビア胴)122が前記フラットベッド101の幅方向へ軸方向を向けて回転可能に支持されている。前記第二の固定フレーム121の前記第二の版胴122の上方には、第二のドクタブレード123が当該第二の版胴122へ先端を接触させるようにして取り付けられている。
【0021】
前記第二の版胴122と前記第二のドクタブレード123との間には、当該第二の版胴122の前記凹版の前記絵柄の線幅に対応する適切な条件に調整された第二のインキ2Bが供給されるようになっており、上記第二のドクタブレード123は、上記第二の版胴122の回転に伴って、当該第二の版胴122の前記凹版の前記絵柄に上記第二のインキ2Bを供給すると同時に、当該凹版の当該絵柄以外の部分に付着した上記第二のインキ2Bを当該凹版から除去することができるようになっている。
【0022】
前記フラットベッド101の幅方向両端側の、前記第一の固定フレーム111と前記第二の固定フレーム121との間には、当該フラットベッド101の長手方向に沿って長手方向を向けた一対のガイドレール102が当該固定フレーム111,121間を連絡するようにして配設されている。
【0023】
前記ガイドレール102の前記第一の固定フレーム111側には、当該ガイドレール102に沿ってスライド移動可能な第一のスライド部材114がそれぞれ係合している。前記第一のスライド部材114上には、第一の移動フレーム115が立設されている。前記第一の移動フレーム115には、シリコーンブランケットを外周に巻き付けた第一のブランケット胴(シリコーンブランケット胴)116が前記フラットベッド101の幅方向へ軸方向を向けて回転可能に支持されており、当該第一のブランケット胴116は、当該第一の移動フレーム115が前記第一の固定フレーム111近傍に位置しているとき、前記第一の版胴112に対接すると共に、当該第一の移動フレーム115が前記フラットベッド101上の前記基材1上に位置しているとき、当該基材1に対接するようになっている。
【0024】
前記ガイドレール102の前記第二の固定フレーム121側には、当該ガイドレール102に沿ってスライド移動可能な第二のスライド部材124がそれぞれ係合している。前記第二のスライド部材124上には、第二の移動フレーム125が立設されている。前記第二の移動フレーム125には、シリコーンブランケットを外周に巻き付けた第二のブランケット胴(シリコーンブランケット胴)126が前記フラットベッド101の幅方向へ軸方向を向けて回転可能に支持されており、当該第二のブランケット胴126は、当該第二の移動フレーム125が前記第二の固定フレーム121近傍に位置しているとき、前記第二の版胴122に対接すると共に、当該第二の移動フレーム125が前記フラットベッド101上の前記基材1上に位置しているとき、当該基材1に対接するようになっている。
【0025】
図2に示すように、前記第一の版胴112の一方の軸端には、サーボモータ117が連結されており、当該サーボモータ117は、前記第一の固定フレーム111に設けられたブラケット111aに固定支持されている。前記第一のブランケット胴116の一方の軸端には、サーボモータ118が連結されており、当該サーボモータ118は、前記第一の移動フレーム115に設けられたブラケット115aに固定支持されている。
【0026】
前記第二の版胴122の一方の軸端には、サーボモータ127が連結されており、当該サーボモータ127は、前記第二の固定フレーム121に設けられたブラケット121aに固定支持されている。前記第二のブランケット胴126の一方の軸端には、サーボモータ128が連結されており、当該サーボモータ128は、前記第二の移動フレーム125に設けられたブラケット125aに固定支持されている。
【0027】
図3に示すように、前記サーボモータ117,118,127,128は、制御手段である制御装置130の出力部にそれぞれ電気的に接続している。前記制御装置130の出力部は、前記第一のスライド部材114を介して前記ガイドレール102に沿って前記第一の移動フレーム115を往復移動させる第一の移動用駆動装置119と、前記第二のスライド部材124を介して前記ガイドレール102に沿って前記第二の移動フレーム125を往復移動させる第二の移動用駆動装置129とにそれぞれ電気的に接続している。前記制御装置130の入力部には、当該制御装置130に各種信号を入力する入力装置131が接続されており、当該制御装置130は、入力装置131からの信号等に基づいて、前記サーボモータ117,118,127,128及び前記移動用駆動装置119,129の作動を制御することができるようになっている(詳細は後述する)。
【0028】
このような本実施形態においては、前記サーボモータ117,118等により、第一の受渡作動手段を構成し、前記サーボモータ127,128等により、第二の受渡作動手段を構成し、前記ガイドレール102、前記第一のスライド部材114、前記第一の移動フレーム115、前記サーボモータ118、前記第一の移動用駆動装置119等により、第一の転写作動手段を構成し、前記ガイドレール102、前記第二のスライド部材124、前記第二の移動フレーム125、前記サーボモータ128、前記第二の移動用駆動装置129等により、第二の転写作動手段を構成している。
【0029】
次に、本実施形態に係るグラビアオフセット印刷機100の作動を説明する。
【0030】
前記フラットベッド101の中央部分に前記基材1を載置し、前記第一の版胴112と前記第一のドクタブレード113との間に前記第一のインキ2Aを供給すると共に、前記第二の版胴122と前記第二のドクタブレード123との間に前記第二のインキ2Bを供給して、前記入力装置131で作動開始信号を入力すると、前記制御装置130は、前記第一の版胴112及び前記第一のブランケット胴116を回転させるように前記サーボモータ117,118を作動制御することにより、当該第一の版胴112の前記凹版の前記絵柄に上記第一のインキ2Aを供給すると共に当該凹版の当該絵柄以外の部分から当該第一のインキ2Aを上記第一のドクタブレード113で除去しながら、当該第一のブランケット胴116の前記シリコーンブランケット上に上記第一のインキ2Aを上記絵柄に対応した状態で受け渡す(
図4A参照)。
【0031】
このようにして前記第一のブランケット胴116の前記シリコーンブランケット上に前記第一のインキ2Aが受け渡されると、前記制御装置130は、前記第一のスライド部材114を介して前記ガイドレール102に沿って前記第一の移動フレーム115を前記第二の固定フレーム121側へ向けて移動させるように前記第一の移動用駆動装置119を作動制御して、当該第一のブランケット胴116を前記第二の版胴122側(
図4中、左側)へ向けて移動させると共に、これと並行して、前記第二の版胴122及び前記第二のブランケット胴126を回転させるように前記サーボモータ127,128を作動制御する(
図4B参照)。
【0032】
これにより、前記第一のブランケット胴116が前記基材1上を転動して、前記シリコーンブランケット上の前記第一のインキ2Aが当該基材1上に転写されて印刷されると共に、これと並行して、前記第二の版胴122の前記凹版の前記絵柄に前記第二のインキ2Bが供給され、当該凹版の当該絵柄以外の部分から当該第二のインキ2Bが前記第二のドクタブレード123で除去されながら、前記第二のブランケット胴126の前記シリコーンブランケット上に上記第二のインキ2Bが上記絵柄に対応した状態で受け渡される(
図4B参照)。
【0033】
このとき、前記第一の版胴112の前記凹版から前記第一のブランケット胴116の前記シリコーンブランケット上に受け渡された前記第一のインキ2Aは、当該凹版の前記第一の絵柄(例えば、10μmの線幅の配線パターン)に対応する適切な条件に調整されていることから、生乾きのような状態になって凝集力が増大しているので、当該シリコーンブランケット上から前記基材1へ転写(放出)されやすく、当該基材1へすべて転写するようになる。
【0034】
このようにして前記基材1上に前記第一のインキ2Aが転写されて印刷されると、前記制御装置130は、前記第一のスライド部材114を介して前記ガイドレール102に沿って前記第一の移動フレーム115を前記第一の固定フレーム111側へ向けて移動させるように前記第一の移動用駆動装置119を作動制御して、当該第一のブランケット胴116を当初の位置に戻すように前記第一の版胴112側(
図4中、右側)へ向けて移動させて、当該第一のブランケット胴116を当該第一の版胴112に対接させると共に、これと並行して、前記第二のスライド部材124を介して前記ガイドレール102に沿って前記第二の移動フレーム125を前記第一の固定フレーム111側へ向けて移動させるように前記第二の移動用駆動装置129を作動制御して、当該第二のブランケット胴126を前記第一の版胴112側(
図4中、右側)へ向けて移動させる(
図4C参照)。
【0035】
これにより、前記第一の版胴112の前記凹版の前記絵柄に前記第二のインキ2Aが再び供給され、当該凹版の当該絵柄以外の部分から当該第一のインキ2Aが前記第一のドクタブレード113で除去されながら、前記第一のブランケット胴116の前記シリコーンブランケット上に上記第一のインキ2Aが上記絵柄に対応した状態で再び受け渡されると共に、これと並行して、前記第二のブランケット胴126が前記基材1上を転動して、前記シリコーンブランケット上の前記第二のインキ2Bが当該基材1上にさらに転写されて重ねて印刷される(
図4C参照)。
【0036】
このとき、前記第二の版胴122の前記凹版から前記第二のブランケット胴126の前記シリコーンブランケット上に受け渡された前記第二のインキ2Bは、当該凹版の前記第二の絵柄(例えば、100μmの線幅の配線パターン)に対応する適切な条件に調整されていることから、生乾きのような状態になって凝集力が増大しているので、当該シリコーンブランケット上から前記基材1へ転写(放出)されやすく、当該基材1へすべて転写するようになる。
【0037】
このようにして前記基材1上に前記第二のインキ2Bがさらに転写されて重ねて印刷されると、前記制御装置130は、前記第二のスライド部材124を介して前記ガイドレール102に沿って前記第二の移動フレーム125を前記第二の固定フレーム121側へ向けて移動させるように前記第二の移動用駆動装置129を作動制御して、当該第二のブランケット胴126を当初の位置に戻すように前記第二の版胴112側(
図4中、左側)へ向けて移動させて、当該第一のブランケット胴116を当該第一の版胴112に対接させると共に、前記第一,二の絵柄を印刷された前記基材1を新たな基材1に交換し、これと並行して、前記第一のスライド部材114を介して前記ガイドレール102に沿って前記第一の移動フレーム115を前記第二の固定フレーム121側へ向けて移動させるように前記第一の移動用駆動装置119を作動制御して、当該第一のブランケット胴116を前記第二の版胴122側(
図4中、左側)へ向けて移動させる(
図4B参照)。
【0038】
以下、上述した作動を繰り返すことにより、第一の絵柄に対応した前記第一のインキ2Aと第二の絵柄に対応した前記第二のインキ2Bとを一括して印刷された基材1を得ることができる。
【0039】
このため、本実施形態に係るグラビアオフセット印刷機100においては、互いに線幅の異なる第一の絵柄と第二の絵柄とにそれぞれ供給された第一のインキ2A及び第二のインキ2Bをシリコーンブランケット上に最適な状態でそれぞれ凝集させて、基材1へすべて転写させることができる。
【0040】
したがって、本実施形態に係るグラビアオフセット印刷機100によれば、線幅の異なる複数の絵柄を基材1上に一括して印刷することが容易にできる。
【0041】
また、前記第一のブランケット胴116から前記基材1への前記第一のインキ2Aの転写(第一の転写工程)と前記第二の版胴122から前記第二のブランケット胴126への前記第二のインキ2Bの受け渡し(第二の受渡工程)とを並行して行う、すなわち、前記第一の転写工程を行っている最中に前記第二の受渡工程を行う、言い換えれば、前記第二の受渡工程を行っている最中に前記第一の転写工程を行うので、基材1への印刷にかかる時間を削減することができる。
【0042】
また、前記第二のブランケット胴126から前記基材1への前記第二のインキ2Bの転写(第二の転写工程)と前記第一の版胴112から前記第一のブランケット胴116への前記第一のインキ2Aの受け渡し(第一の受渡工程)とを並行して行う、すなわち、前記第二の転写工程を行っている最中に前記第一の受渡工程を行う、言い換えれば、前記第一の受渡工程を行っている最中に前記第二の転写工程を行うので、複数の基材1への印刷にかかる時間をさらに削減することができる。
【0043】
なお、本実施形態においては、前記基材1に対して、前記第一のブランケット胴14の前記シリコーンブランケット上の前記第一のインキ2Aを転写した後に、前記第二のブランケット胴18の前記シリコーンブランケット上の前記第二のインキ2Bを転写しているが、先に説明したように、シリコーンが表面エネルギの低い材料であるため、前記第二のブランケット胴18の前記シリコーンブランケットが、前記基材1上から前記第一のインキ2Aを受け取ってしまうことはない。
【0044】
〈第二番目の実施形態〉
本発明に係るグラビアオフセット印刷機の第二番目の実施形態を
図5〜7に基づいて説明する。なお、前述した実施形態と同様な部分については、前述した実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0045】
図5に示すように、前記フラットベッド101の長手方向(
図5中、左右方向)一方端側(
図5中、右側)の上面には、第一の絵柄(例えば、10μmの線幅の配線パターン)を形成された平板状の第一の凹版(グラビア版)212が配設されている。前記フラットベッド101の長手方向他方端側(
図5中、左側)の上面には、第二の絵柄(例えば、100μmの線幅の配線パターン)を形成された平板状の第二の凹版(グラビア版)222が配設されている。
【0046】
前記第一の移動フレーム115には、シリコーンブランケットを外周に巻き付けた第一のブランケット胴(シリコーンブランケット胴)216が前記フラットベッド101の幅方向へ軸方向を向けて回転可能に支持されており、当該第一のブランケット胴216は、上記フラットベッド101上の前記基材1や前記第一の凹版212に対して当接離反できるように昇降移動可能になっている。
【0047】
前記第二の移動フレーム125には、シリコーンブランケットを外周に巻き付けた第二のブランケット胴(シリコーンブランケット胴)226が前記フラットベッド101の幅方向へ軸方向を向けて回転可能に支持されており、当該第二のブランケット胴226は、上記フラットベッド101上の前記基材1や前記第二の凹版222に対して当接離反できるように昇降移動可能になっている。
【0048】
前記第一の移動フレーム115の、前記第一のブランケット胴216よりも前記第二のブランケット胴226側には、第一のドクタブレード213の基端側が回動可能に支持されており、当該第一のドクタブレード213は、前記第一の凹版212の上方に位置しているときに先端側を下方へ向けると当該第一の凹版212の上面に当接することができるようになっている。前記第一のドクタブレード213の下方側には、前記第一の凹版212の前記絵柄の線幅に対応する適切な条件に調整された第一のインキ2Aが供給されるようになっている。
【0049】
前記第二の移動フレーム125の、前記第二のブランケット胴226よりも前記第一のブランケット胴216側には、第二のドクタブレード223の基端側が回動可能に支持されており、当該第二のドクタブレード223は、前記第二の凹版222の上方に位置しているときに先端側を下方へ向けると当該第二の凹版222の上面に当接することができるようになっている。前記第二のドクタブレード223の下方側には、前記第二の凹版222の前記絵柄の線幅に対応する適切な条件に調整された第二のインキ2Bが供給されるようになっている。
【0050】
図6に示すように、前記移動用駆動装置119,129及び前記第一のブランケット胴216を駆動回転させるサーボモータ218並びに前記第二のブランケット胴226を駆動回転させるサーボモータ228は、制御手段である制御装置230の出力部にそれぞれ電気的に接続している。前記制御装置230の出力部は、前記第一のドクタブレード213を回動させるアクチュエータ217と、前記第二のドクタブレード223を回動させるアクチュエータ227と、前記第一のブランケット胴216を昇降移動させるアクチュエータ219と、前記第二のブランケット胴226を昇降移動させるアクチュエータ229とにそれぞれ電気的に接続しており、当該制御装置230は、前記入力装置131からの信号等に基づいて、前記移動用駆動装置119,129、前記サーボモータ218,228、前記アクチュエータ217,219,227,229の作動を制御することができるようになっている(詳細は後述する)。
【0051】
つまり、前述した実施形態に係るグラビアオフセット印刷機100は、円凹版タイプであったが、本実施形態に係るグラビアオフセット印刷機200は、平凹版タイプなのである。
【0052】
このような本実施形態においては、前記ガイドレール102、前記第一のスライド部材114、前記第一の移動フレーム115、前記第一の移動用駆動装置119、前記サーボモータ218、前記アクチュエータ219等により、第一の受渡作動手段と第一の転写作動手段とを兼ねるように構成し、前記ガイドレール102、前記第二のスライド部材124、前記第二の移動フレーム125、前記第二の移動用駆動装置129、前記サーボモータ228、前記アクチュエータ229等により、第二の受渡作動手段と第二の転写作動手段とを兼ねるように構成している。
【0053】
次に、本実施形態に係るグラビアオフセット印刷機200の作動を説明する。
【0054】
前記フラットベッド101の中央部分に前記基材1を載置して、前記第一のドクタブレード213の下方の前記第一の凹版212上に前記第一のインキ2Aを供給すると共に、前記第二のドクタブレード223の下方の前記第二の凹版222上に前記第二のインキ2Bを供給して、前記入力装置131で作動開始信号を入力すると、前記制御装置230は、前記第一のブランケット胴216を上昇させるように前記アクチュエータ219を作動制御することにより、当該第一のブランケット胴216を前記第一の凹版212から離反させると共に、前記第一のドクタブレード213の先端側を下方に位置させるように前記アクチュエータ217を作動制御することにより、当該第一のドクタブレード213の先端側を前記第一の凹版212に当接させた後、前記第一の移動フレーム115を前記第二の移動フレーム125から離反させる方向(
図7中、右側)へ移動させるように前記第一の移動用駆動装置119を作動制御することにより、前記第一のインキ2Aを上記第一の凹版212の前記絵柄に供給すると共に当該絵柄以外の部分から上記第一のドクタブレード213で除去する(
図7A参照)。
【0055】
このようにして前記第一の凹版212の前記絵柄に前記第一のインキ2Aが供給されると、前記制御装置230は、前記第一のドクタブレード213の先端側を上方に位置させるように前記アクチュエータ217を作動制御することにより、当該第一のドクタブレード213の先端側を上記第一の凹版212から離反させると共に、前記第一のブランケット胴216を下降させるように前記アクチュエータ219を作動制御することにより、当該第一のブランケット胴216を上記第一の凹版212に当接させた後、当該第一のブランケット胴216を回転させるように前記サーボモータ218を作動制御すると共に、前記第一の移動フレーム115を前記第二の移動フレーム125側(
図7中、左側)へ向けて移動させるように前記第一の移動用駆動装置119を作動制御することにより、上記第一の凹版212の前記絵柄に供給されていた前記第一のインキ2Aを当該絵柄に対応させた状態のまま上記第一のブランケット胴216の前記シリコーンブランケット上に受け渡す(
図7B参照)。
【0056】
そして、前記制御装置230は、前記第一の移動フレーム115をそのまま引き続いて移動させる、すなわち、前記基材1の一方端(
図7中、右側)から他方端(
図7中、左側)へ向けて前記第一のブランケット胴216を移動させることにより、当該第一のブランケット胴216の前記シリコーンブランケット上の前記第一のインキ2Aを上記基材1上に転写して印刷する。
【0057】
これと並行して、前記制御装置230は、前記第二のブランケット胴226を上昇させるように前記アクチュエータ229を作動制御することにより、当該第二のブランケット胴226を前記第二の凹版222から離反させると共に、前記第二のドクタブレード223の先端側を下方に位置させるように前記アクチュエータ227を作動制御することにより、当該第二のドクタブレード223の先端側を前記第二の凹版222に当接させた後、前記第二の移動フレーム125を前記第一の移動フレーム115から離反させる方向(
図7中、左側)へ移動させるように前記第二の移動用駆動装置129を作動制御することにより、前記第二のインキ2Bを上記第二の凹版222の前記絵柄に供給すると共に当該絵柄以外の部分から上記第二のドクタブレード223で除去する(
図7B参照)。
【0058】
そして、前記制御装置230は、当前記第二のドクタブレード223の先端側を上方に位置させるように前記アクチュエータ227を作動制御することにより、当該第二のドクタブレード223の先端側を上記第二の凹版222から離反させると共に、前記第二のブランケット胴226を下降させるように前記アクチュエータ229を作動制御することにより、当該第二のブランケット胴226を上記第二の凹版222に当接させた後、当該第二のブランケット胴226を回転させるように前記サーボモータ228を作動制御すると共に、前記第二の移動フレーム125を前記第一の移動フレーム115側(
図7中、右側)へ向けて移動させるように前記第二の移動用駆動装置129を作動制御することにより、上記第二の凹版222の前記絵柄に供給されていた前記第二のインキ2Bを当該絵柄に対応させた状態のまま上記第二のブランケット胴226の前記シリコーンブランケット上に受け渡す(
図7C参照)。
【0059】
これと並行して、前記制御装置230は、前記第一のインキ2Aを前記基材1に転写して印刷し終えた前記第一のブランケット胴216を上昇させるように前記アクチュエータ219を作動制御することにより、当該第一のブランケット胴216を上記基材1から離反させると共に、前記第一の移動フレーム115を前記第二の移動フレーム125から離反させる方向(
図7中、右方向)へ移動させるように前記第一の移動用駆動装置119を作動制御することにより、当該第一の移動フレーム115を当初の位置に戻した後、前記第一のドクタブレード213の先端側を下方に位置させるように前記アクチュエータ217を作動制御することにより、当該第一のドクタブレード213の先端側を前記第一の凹版212に再び当接させ、上記第一の移動フレーム115を前記第二の移動フレーム125から離反させる方向(
図7中、右側)へ再び移動させるように前記第一の移動用駆動装置119を作動制御することにより、前記第一のインキ2Aを上記第一の凹版212の前記絵柄に再び供給すると共に当該絵柄以外の部分から上記第一のドクタブレード213で再び除去する(
図7C参照)。
【0060】
他方、前記制御装置230は、前記第一の移動フレーム115の上記移動と並行して、前記第二の移動フレーム125をそのまま引き続いて移動させる、すなわち、前記基材1の他方端(
図7中、左側)から一方端(
図7中、右側)へ向けて前記第二のブランケット胴226を移動させることにより、当該第二のブランケット胴226の前記シリコーンブランケット上の前記第二のインキ2Bを上記基材1上に転写して印刷する。
【0061】
そして、前記制御装置230は、前記第二のインキ2Bを前記基材1にさらに転写して重ねて印刷し終えた前記第二のブランケット胴226を上昇させるように前記アクチュエータ229を作動制御することにより、当該第二のブランケット胴226を上記基材1から離反させると共に、前記第二の移動フレーム125を前記第一の移動フレーム115から離反させる方向(
図7中、左側)へ移動させるように前記第二の移動用駆動装置129を作動制御することにより、当該第二の移動フレーム125を当初の位置に戻して、前記第一,二の絵柄を印刷された前記基材1を新たな基材1に交換し、前記第二のドクタブレード223の先端側を下方に位置させるように前記アクチュエータ227を作動制御することにより、当該第二のドクタブレード223の先端側を前記第二の凹版222に再び当接させた後、上記第二の移動フレーム125を前記第一の移動フレーム115から離反させる方向(
図7中、左側)へ再び移動させるように前記第二の移動用駆動装置129を作動制御することにより、前記第二のインキ2Bを上記第二の凹版222の前記絵柄に再び供給すると共に当該絵柄以外の部分から上記第二のドクタブレード223で再び除去する(
図7B参照)。
【0062】
以下、上述した作動を繰り返すことにより、前述した実施形態の場合と同様に、第一の絵柄に対応した前記第一のインキ2Aと第二の絵柄に対応した前記第二のインキ2Bとを一括して印刷された基材1を得ることができる。
【0063】
このため、本実施形態に係るグラビアオフセット印刷機200においては、前述した実施形態の場合と同様に、互いに線幅の異なる第一の絵柄と第二の絵柄とにそれぞれ供給された第一のインキ2A及び第二のインキ2Bをシリコーンブランケット上に最適な状態でそれぞれ凝集させて、基材1へすべて転写させることができる。
【0064】
したがって、本実施形態に係るグラビアオフセット印刷機200によれば、前述した実施形態の場合と同様な作用効果を発現し得ることができる。
【0065】
〈他の実施形態〉
なお、前述した第一番目の実施形態においては、前記ブランケット胴116,126を往復移動させることにより、当該ブランケット胴116,126の前記インキ2A,2Bを前記基材1に転写するようにしたグラビアオフセット印刷機100の場合について説明したが、他の実施形態として、例えば、
図8に示すように、前記基材1側を往復移動させることにより、前記ブランケット胴116,126の前記インキ2A,2Bを当該基材1に転写するようにすることも可能である。
【0066】
また、前述した実施形態においては、前記凹版の前記絵柄の線幅にそれぞれ対応する適切な条件に調整された各前記インキ2A,2Bを使用することにより、前記シリコーンブランケット上にそれぞれ受け渡された各前記インキ2A,2Bの凝集力をそれぞれ適切に増大させるようにしたが、他の実施形態として、例えば、前記凹版の前記絵柄の線幅に対応して前記ブランケット胴116,126,216,226の移動速度、すなわち、前記受渡工程と前記転写工程との間の時間(インターバル)を適切な条件に調整することにより、前記シリコーンブランケット上にそれぞれ受け渡された各インキの凝集力をそれぞれ適切に増大させるようにすることも可能である。さらに、前記インキ2A,2Bの条件調整と前記インターバルの条件調整とを組み合わせて、より最適な条件で印刷できるようにすることも可能である。