特許第6386135号(P6386135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6386135
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】無菌包装物を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 55/08 20060101AFI20180827BHJP
   B65B 55/04 20060101ALI20180827BHJP
   B65B 9/207 20120101ALI20180827BHJP
   A61L 2/08 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   B65B55/08 B
   B65B55/04 P
   B65B9/207
   A61L2/08 108
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-106206(P2017-106206)
(22)【出願日】2017年5月30日
(62)【分割の表示】特願2013-136535(P2013-136535)の分割
【原出願日】2013年6月28日
(65)【公開番号】特開2017-171392(P2017-171392A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2017年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】598008341
【氏名又は名称】大森 弘一郎
(72)【発明者】
【氏名】大森 弘一郎
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−224998(JP,A)
【文献】 特開平11−035015(JP,A)
【文献】 実公昭37−032085(JP,Y1)
【文献】 特開平10−086913(JP,A)
【文献】 特開平11−314676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 55/08
A61L 2/08
B65B 9/207
B65B 55/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが10〜40μmの薄フィルムを2層に折った包装素材を下方に送り出す工程と、
前記包装素材に、加速電圧が200kV以下の低エネルギー電子線照射装置で電子線を一方より照射して、前記包装素材の重なり内面を殺菌する工程と、
折られた前記薄フィルムの内側に飲料などの無菌液を充填物として供給するためのノズルを挿入する工程と、
前記ノズルの挿入後の前記包装素材の側縁を側縁シールして筒体を形成する工程と、
前記筒体の外面に外層シートを供給して両側縁をシールすることにより、前記筒体を補強する外層シートを一体化する工程と、
前記薄フィルムの筒体の内部に飲料などの無菌液を前記ノズルの先端より充填する工程と、
前記筒体内に充填された前記充填物の上部にて、前記筒体を前記外層シートと共にシールして、前記充填物を前記筒体内に封止する工程と、
この封止した部分にて、前記筒体を切断する工程と、を有し、
前記充填物が充填された個別の無菌包装物を得ることを特徴とする飲料などの無菌液の無菌包装物を製造する方法。
【請求項2】
厚さが10〜40μmの薄フィルムからなる2枚の包装素材を下方に送り出す工程と、
前記2枚の包装素材の間にその上部より下方に延びる充填用ノズルを挿入する工程と、
この包装素材の両側縁を側縁シールして筒体に成形する工程と、
この包装素材に対して、加速電圧が200kV以下の低エネルギー電子線照射装置で電子線を一方より照射して、前記包装素材の重なり内面を殺菌する工程と、
前記筒体の外面に外層シートを供給して両側縁をシールすることにより、前記筒体を補強する工程と、
前記薄フィルムの筒体の内部に飲料などの無菌液を前記ノズルの先端より充填する工程と、
前記筒体内に充填された前記充填物の上部にて、前記筒体を前記外層シートと共にシールして、前記充填物を前記筒体内に封止する工程と、
この封止した部分にて、前記筒体を切断する工程と、を有し、
前記ノズルは、前記電子線の照射領域の中で横方向に曲げて、前記ノズルが邪魔をして形成される前記電子線照射領域の陰となる部分をノズルの長手方向に関して横方向にずらすものであり、
前記充填物が充填された個別の無菌包装物を得ることを特徴とする飲料などの無菌液の無菌包装物を製造する方法。
【請求項3】
厚さが10〜40μmの薄フィルムからなる包装素材を一体化した外層シートと、厚さが10〜40μmの他の薄フィルムからなる包装素材を下方に送り出す工程と、
前記一体化した外層シートと薄フィルムの2層の片側一方の側縁を側縁シールして、片側縁が開いた包装素材に成形する工程と、
この包装素材に対して、加速電圧が200kV以下の低エネルギー電子線照射装置で電子線を薄フィルム側より照射して、前記包装素材の重なり内面を殺菌する工程と、
前記薄フィルムと前記他の薄フィルムの内側部に飲料などの無菌液を充填物として供給するためのノズルを挿入する工程と、
前記ノズルの挿入後の前記包装素材の開いた側の側縁を側縁シールして筒体を形成する工程と、
前記筒体の他の薄フィルムの外面に他の外層シートを供給して両側縁をシールすることにより、前記筒体を補強する工程と、
前記筒体内に充填された前記充填物の上部にて、前記筒体を前記一体化した外層シート及び他の外層シートと共にシールして、前記充填物を前記筒体内に封止する工程と、
この封止した部分にて、前記筒体を切断する工程と、を有し、
前記充填物が充填された個別の無菌包装物を得ることを特徴とする飲料などの無菌液の無菌包装物を製造する方法。
【請求項4】
厚さが10〜40μmの薄フィルムからなる包装素材を一体化した外層シートと、厚さが10〜40μmの他の薄フィルムからなる包装素材を下方に送り出す工程と、
前記包装素材の薄フィルムと他の薄フィルムとの間にその上部より下方に延びる充填用のノズルを挿入する工程と、
この包装素材の両側縁を側縁シールして筒体に成形する工程と、
この包装素材に対して、加速電圧が200kV以下の低エネルギー電子線照射装置で電子線を薄フィルム側より照射して、前記包装素材の重なり内面を殺菌する工程と、
前記筒体の他の薄フィルムの外面に他の外層シートを供給して両側縁をシールすることにより、前記筒体を補強する工程と、
前記薄フィルムの筒体の内部に飲料などの無菌液を、充填物として前記ノズルの先端より充填する工程と、
前記筒体内に充填された前記充填物の上部にて、前記筒体を前記一体化した外層シート及び他の外層シートと共にシールして、前記充填物を前記筒体内に封止する工程と、
この封止した部分の中にて、前記筒体を切断する工程と、を有し、
前記ノズルは、前記電子線の照射領域の中で横方向に曲げて、前記ノズルが邪魔をして形成される前記電子線照射領域の陰となる部分をノズルの長手方向に関して横方向にずらすものであり、
前記充填物が充填された個別の無菌包装物を得ることを特徴とする飲料などの無菌液の無菌包装物を製造する方法。
【請求項5】
厚さが10〜40μmの薄フィルムからなる筒体の包装素材を下方に送り出す工程と、
この包装素材に対し、加速電圧が200kV以下の低エネルギー電子線照射装置で電子線を一方より照射して、前記包装素材の重なり内面を殺菌する工程と、
カッターにより前記筒体の側縁を切り、前記筒体の内部に飲料などの無菌液を充填物として供給するためのノズルを挿入する工程と、
前記筒体の切られた側縁の部分を側縁シールする工程と、
前記筒体の外面に外層シートを供給して側縁シールバーにて両側縁を薄フィルムと共にシールして前記筒体を補強する工程と、
前記筒体の内部に飲料などの無菌液を、充填物として前記ノズルの先端より充填する工程と、
前記筒体内に充填された前記充填物の上部にて、前記筒体を前記外層シートと共にシールして、前記充填物を前記筒体内に封止する工程と、
この封止した部分にて、前記筒体を切断する工程と、を有し、
前記充填物が充填された個別の無菌包装物を得ることを特徴とする飲料などの無菌液の無菌包装物を製造する方法。
【請求項6】
厚さが10〜40μmの薄フィルムからなる筒体を外層シートと一体にした包装素材を下方に送り出す工程と、
この包装素材に対し、加速電圧が200kV以下の低エネルギー電子線照射装置で電子線を薄フィルムが露出した側より照射して、前記包装素材の重なり内面を殺菌する工程と、
カッターにより前記筒体の側縁を切り、前記筒体の内部に飲料などの無菌液を充填物として供給するためのノズルを挿入する工程と、
筒体の切られた側縁の部分を側縁シールする工程と、
前記筒体の薄フィルムの外面に他の外層シートを供給して側縁シールバーにて両側縁をシールすることにより、前記筒体を補強する工程と、
前記筒体の内部に飲料などの無菌液を、充填物として前記ノズルの先端より充填する工程と、
前記筒体内に充填された前記充填物の上部にて、前記筒体を前記外層シート及び他の外層シートと共にシールして、前記充填物を前記筒体内に封止する工程と、
この封止した部分にて、前記筒体を切断する工程と、を有し、
前記充填物が充填された個別の無菌包装物を得ることを特徴とする飲料などの無菌液の無菌包装物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は従来の如く、無菌包装された包装品(以下、「無菌包装物」という)を製造する方法において、無菌包装物を作る前の細菌に汚染された包装材料(以下、「包装素材」という)の内面に殺菌液を噴霧するのではなく、また包装素材の内面側に直接電子線を照射するのではなく、また包装素材の外面より強い電子線或いは放射線を照射するのではなく、個別に送られて来て、重ねられて合掌されて筒体となる包装素材の、合掌されて電子線照射装置側の内層になる薄フィルム(以下、「EB照射側フィルム」という)を、外層と一体にシールして筒体にする前に、EB照射側フィルムの外側からの電子線を照射して、合掌される包装素材の両内面の殺菌を行うことを行い、殺菌された飲料、調味料、薬品などの無菌液(以下、「無菌液」という)を充填する前に内面を無菌として側縁シールを行ない、その殺菌と側縁シールをされた無菌の内部(以下、「無菌内部」という)を持つ、畳まれた筒体の中に、殺菌された無菌液を充填して、天部のシールと底部のシールを行うことで無菌包装物の製造を行うものであり、包装材料と食品、飲料等に与える殺菌と加熱の影響を最少にすることを図り、なお簡便な装置とすることを行う無菌包装物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無菌包装物の製造は、主に過酸化水素による噴霧と乾燥による包装体の内面殺菌が行われた後に充填シールする方法、過酢酸液で洗浄する方法、紫外線照射で内面殺菌をする方法、過加熱蒸気で殺菌する方法、或いは加速電圧300KV以下の高出力低エネルギー電子線を使用して充填前の包装体に照射して内面を殺菌させる方法であった。
【0003】
しかしこれらにはそれぞれに問題があった、即ち殺菌液の過酢酸や過酸化水素の薬剤を使用する場合、その薬剤の残留が有り得るという問題である。その一つは乾燥不良や洗浄不良という工程のミスへの不安だが、他の一つは、検出されないレベルの微量の残留があり得るという問題である。これらの微量の薬品は、内容品を酸化して消えてしまい、現在の技術では、たとえあっても検出されないのだが、いずれは検出技術も向上する。また薬剤の環境への放出の問題、廃液処理の問題もあった。
【0004】
紫外線においては、簡便であるゆえに使用されるのだが、光の性格を免れることが出来ず、小さなゴミの陰に殺菌できない部分が残り、完全な殺菌を求める場合は不適当であった。
【0005】
100度C以上に加熱された蒸気を使用する方法も試みられているが、容器本体の耐熱性の問題があり、未だ普及しない。
【0006】
300kV以上の中エネルギー電子線においては、容器の外層を透過して、内面の完全殺菌をすることが容易である。しかし高電圧である故の問題が多い、使用には放射線取り扱い主任者の資格が必要であること、装置が巨大で高額であること、電子線を透過した樹脂に、発臭などの影響があること、排ガス処理の問題などである。高出力の低エネルギー電子線においても、電子線は透過するが、図1の如く、そのエネルギーの減衰は大きく、そのため電圧に沿った減衰に合わせて、40mA以上の大出力にする必要がある。
【0007】
これらの問題に対して薬剤殺菌においては噴霧の霧を小さくして少なくすること、洗浄を充分にすることが対策であり、紫外線においては風洗による洗浄を充分に行っても不十分であり、加熱した蒸気においては包装材料の制限で行き詰まり、電子線においては出力を大きくせざるを得ず、装置が巨大で普及するのが容易でないという問題があった。
【0008】
特許文献1は、チューブ状に成形した包装に充填前に筒体の外層の外から電子線を照射するものであるが、170〜600μの厚さの包装材料を使用し、これに対して50〜500kV好ましくは200〜400kVの電子線を使用するものである。図1で示される如く、包装としての強度を保つのに必要最低の170μを透過するためには、200kV以上の加速電圧が必要であり、これは中エネルギー電子線の域に近く、また装置は大掛かりで、さらにこの高価な電子線照射の装置が2台以上必要であるという問題があった。
【0009】
特許文献2は、無菌チャンバー内部で包装材料の両表面を交互に電子線で殺菌し、これを無菌チャンバー内で筒状に成形しつつ充填と天部シールと底部シールをするものである。この方法は表面殺菌であるので小出力の低エネルギー電子線が使える半面、電子線照射の装置が2台必要であり、さらに無菌チャンバーという装置が必要になるという問題があった。
【0010】
特許文献3は、プラスチックの表面改質を目的にして作られた、小出力の低エネルギー電子線の照射装置であり、非特許文献2に示される如く、好ましく完成している。その外観は図2の如くであり、その推奨する使用法は図3の如く表面照射である。非特許文献1には、低エネルギー電子線が、300kV以上の中エネルギー電子線より発生方法にも使用適性にも優れていることと図1のグラフの記載があるが、本発明はこの小出力の低エネルギー電子線を、その透過力の低い性質にもかかわらず、有効に使用するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−35015号公報
【特許文献2】特開平7−13000号公報
【特許文献3】特開2013−24557号公報
【0012】
【非特許文献1】低エネルギー電子線照射の技術と応用、監修:鷲尾方一、第90頁
【非特許文献2】浜松フォトニクスカタログ、BE−ENGINEライン照射型低エネルギー電子線照射源
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、無菌充填を簡便にかつ安全に行おうとするもので、無菌包装物において、製造後に不良となる危険、常温流通中に腐敗する危険があり、設備と作業が煩雑であるという問題を解消し、簡便に常温流通可能な食品の製造が出来る手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、
(1)厚さが10〜40μmの薄フィルムを2層に折った包装素材を下方に送り出す工程と、
前記包装素材に、加速電圧が200kV以下の低エネルギー電子線照射装置で電子線を一方より照射して、前記包装素材の重なり内面を殺菌する工程と、
折られた前記薄フィルムの内側に飲料などの無菌液を充填物として供給するためのノズルを挿入する工程と、
前記ノズルの挿入後の前記包装素材の側縁を側縁シールして筒体を形成する工程と、
前記筒体の外面に外層シートを供給して両側縁をシールすることにより、前記筒体を補強する外層シートを一体化する工程と、
前記薄フィルムの筒体の内部に飲料などの無菌液を前記ノズルの先端より充填する工程と、
前記筒体内に充填された前記充填物の上部にて、前記筒体を前記外層シートと共にシールして、前記充填物を前記筒体内に封止する工程と、
この封止した部分にて、前記筒体を切断する工程と、を有し、
前記充填物が充填された個別の無菌包装物を得ることを特徴とする飲料などの無菌液の無菌包装物を製造する方法。
(2)厚さが10〜40μmの薄フィルムからなる2枚の包装素材を下方に送り出す工程と、
前記2枚の包装素材の間にその上部より下方に延びる充填用ノズルを挿入する工程と、
この包装素材の両側縁を側縁シールして筒体に成形する工程と、
この包装素材に対して、加速電圧が200kV以下の低エネルギー電子線照射装置で電子線を一方より照射して、前記包装素材の重なり内面を殺菌する工程と、
前記筒体の外面に外層シートを供給して両側縁をシールすることにより、前記筒体を補強する工程と、
前記薄フィルムの筒体の内部に飲料などの無菌液を前記ノズルの先端より充填する工程と、
前記筒体内に充填された前記充填物の上部にて、前記筒体を前記外層シートと共にシールして、前記充填物を前記筒体内に封止する工程と、
この封止した部分にて、前記筒体を切断する工程と、を有し、
前記ノズルは、前記電子線の照射領域の中で横方向に曲げて、前記ノズルが邪魔をして形成される前記電子線照射領域の陰となる部分をノズルの長手方向に関して横方向にずらすものであり、
前記充填物が充填された個別の無菌包装物を得ることを特徴とする飲料などの無菌液の無菌包装物を製造する方法。
(3)厚さが10〜40μmの薄フィルムからなる包装素材を一体化した外層シートと、厚さが10〜40μmの他の薄フィルムからなる包装素材を下方に送り出す工程と、
前記一体化した外層シートと薄フィルムの2層の片側一方の側縁を側縁シールして、片側縁が開いた包装素材に成形する工程と、
この包装素材に対して、加速電圧が200kV以下の低エネルギー電子線照射装置で電子線を薄フィルム側より照射して、前記包装素材の重なり内面を殺菌する工程と、
前記薄フィルムと前記他の薄フィルムの内側部に飲料などの無菌液を充填物として供給するためのノズルを挿入する工程と、
前記ノズルの挿入後の前記包装素材の開いた側の側縁を側縁シールして筒体を形成する工程と、
前記筒体の他の薄フィルムの外面に他の外層シートを供給して両側縁をシールすることにより、前記筒体を補強する工程と、
前記筒体内に充填された前記充填物の上部にて、前記筒体を前記一体化した外層シート及び他の外層シートと共にシールして、前記充填物を前記筒体内に封止する工程と、
この封止した部分にて、前記筒体を切断する工程と、を有し、
前記充填物が充填された個別の無菌包装物を得ることを特徴とする飲料などの無菌液の無菌包装物を製造する方法。
(4)厚さが10〜40μmの薄フィルムからなる包装素材を一体化した外層シートと、厚さが10〜40μmの他の薄フィルムからなる包装素材を下方に送り出す工程と、
前記包装素材の薄フィルムと他の薄フィルムとの間にその上部より下方に延びる充填用のノズルを挿入する工程と、
この包装素材の両側縁を側縁シールして筒体に成形する工程と、
この包装素材に対して、加速電圧が200kV以下の低エネルギー電子線照射装置で電子線を薄フィルム側より照射して、前記包装素材の重なり内面を殺菌する工程と、
前記筒体の他の薄フィルムの外面に他の外層シートを供給して両側縁をシールすることにより、前記筒体を補強する工程と、
前記薄フィルムの筒体の内部に飲料などの無菌液を、充填物として前記ノズルの先端より充填する工程と、
前記筒体内に充填された前記充填物の上部にて、前記筒体を前記一体化した外層シート及び他の外層シートと共にシールして、前記充填物を前記筒体内に封止する工程と、
この封止した部分の中にて、前記筒体を切断する工程と、を有し、
前記ノズルは、前記電子線の照射領域の中で横方向に曲げて、前記ノズルが邪魔をして形成される前記電子線照射領域の陰となる部分をノズルの長手方向に関して横方向にずらすものであり、
前記充填物が充填された個別の無菌包装物を得ることを特徴とする飲料などの無菌液の無菌包装物を製造する方法。
(5)厚さが10〜40μmの薄フィルムからなる筒体の包装素材を下方に送り出す工程と、
この包装素材に対し、加速電圧が200kV以下の低エネルギー電子線照射装置で電子線を一方より照射して、前記包装素材の重なり内面を殺菌する工程と、
カッターにより前記筒体の側縁を切り、前記筒体の内部に飲料などの無菌液を充填物として供給するためのノズルを挿入する工程と、
前記筒体の切られた側縁の部分を側縁シールする工程と、
前記筒体の外面に外層シートを供給して側縁シールバーにて両側縁を薄フィルムと共にシールして前記筒体を補強する工程と、
前記筒体の内部に飲料などの無菌液を、充填物として前記ノズルの先端より充填する工程と、
前記筒体内に充填された前記充填物の上部にて、前記筒体を前記外層シートと共にシールして、前記充填物を前記筒体内に封止する工程と、
この封止した部分にて、前記筒体を切断する工程と、を有し、
前記充填物が充填された個別の無菌包装物を得ることを特徴とする飲料などの無菌液の無菌包装物を製造する方法。
(6)厚さが10〜40μmの薄フィルムからなる筒体を外層シートと一体にした包装素材を下方に送り出す工程と、
この包装素材に対し、加速電圧が200kV以下の低エネルギー電子線照射装置で電子線を薄フィルムが露出した側より照射して、前記包装素材の重なり内面を殺菌する工程と、
カッターにより前記筒体の側縁を切り、前記筒体の内部に飲料などの無菌液を充填物として供給するためのノズルを挿入する工程と、
筒体の切られた側縁の部分を側縁シールする工程と、
前記筒体の薄フィルムの外面に他の外層シートを供給して側縁シールバーにて両側縁をシールすることにより、前記筒体を補強する工程と、
前記筒体の内部に飲料などの無菌液を、充填物として前記ノズルの先端より充填する工程と、
前記筒体内に充填された前記充填物の上部にて、前記筒体を前記外層シート及び他の外層シートと共にシールして、前記充填物を前記筒体内に封止する工程と、
この封止した部分にて、前記筒体を切断する工程と、を有し、
前記充填物が充填された個別の無菌包装物を得ることを特徴とする飲料などの無菌液の無菌包装物を製造する方法
である。
【0015】
本発明は無菌包装物の製造の作業が簡便に、安全に、かつ完全に行われるために、小出力の低エネルギー電子線を使用することとし、使用する小出力の低エネルギー電子線の装置が小型であり簡便である反面、透過力が弱いという性質に対して、包装素材の最内面になる、電子線照射側の薄い包装材料、即ちEB照射側フィルムに、その外側に強度を持つために必要な外の層(以下、「外層シート」という)と分離した状態で、先に電子線照射側から電子線の照射(以下、「照射」という)を行い、合掌されている両内面を殺菌し後に外層シートと一致させて、側縁シールを行ない、無菌内部を形成するという方策を取り課題を解決させたものである。
【0016】
小出力の低エネルギー電子線においては、使用の制限が少ない、電子線照射装置も小型である、通常の充填包装の機器に対する安全配慮で通常の人で充分使用でき、放射線源が放射能物質である方式と異なり、スイッチを切ることのみで放射線である電子線の発生が止まるという安全性を持つ。しかし出力に対する透過力は、図1のように加速電圧により顕著に変わる。
【0017】
70kVの電子線の透過力は、この図表から推測可能である。素材の比重1に換算して約40μm以上である。一方10〜40μmのPPフィルムは、十分充填の衝撃と内容液体の保持の強度を持つ。この2つの性質を組み合わせて利用した。
【0018】
70kV、100kV、150kV、200kV、300kVの低エネルギー電子線照射装置は、フィラメントから出された熱電子を加速電圧で加速し、シリコン、チタンまたはベリリウムの箔の窓から空気中に放射するもので、この電子線は空気と包装材料を透過することでエネルギーを消耗して消える。本来低エネルギー電子線照射装置は、高分子材料の表面改質のために作られたもので、この使用目的では、透過深さの浅いことが問題にはならない。
【0019】
しかし無菌包装物の製造に包装体の外側から使用する場合は、包装材料の厚さを透過して内面まで届く必要がある。それに合わせて、包装材料を薄くして、外面から透過した電子線が包装材料の内面に届き、なお内面と接する対面の殺菌のためにエネルギーを消費することを行う。
【0020】
この10〜40μmの薄い包装材料(以下、「薄フィルム」という)は、そのままでは流通に必要とする強度を持たないため、殺菌後に外層になる外層シートを添わせて、筒体を作り充填シールして無菌包装物を完成させる。
【0021】
薄フィルムは、PP、PE、PVC、NY、PVDC、PVAなどヒートシール性のあるものならいずれでも良くまた2層以上の複合フィルムでも良い。外層シートは、薄フィルムとのヒートシールが可能な裏面ラミネートまたは裏面コートした紙または樹脂シートが好ましいがこれに拘らない。AL箔がラミネートされているものは長期保存に適する。
【0022】
図3の如く、1枚の薄フィルムを2枚に折って合掌させてEB照射側から照射して、EB照射側フィルムと対面する2枚の内面を同時に殺菌する方法。図6図7の如く、インフレーションチューブが折り重なっている時に照射してから側縁を切る方法。図4の如く、電子線照射装置の照射幅を広げてその照射面の照射領域の中で充填パイプを曲げて通し、充填パイプに電子線の遮られるところを、2か所の離れた位置において照射して、均一に無菌内部を作る方法。図5の如く、薄フィルムのEB照射側フィルムを充填前に一方から照射する方法。がある。
【0023】
この本発明の、EB照射側フィルムに薄フィルムを使用して、低エネルギー電子線照射により殺菌してから外層シートを添わせて一体にシール成形する方法により、簡便な低出力低エネルギーの電子線発生装置を使用することが可能となり、安全で安価な無菌包装物の製造を可能とし、先進国においてはエネルギー消費の少ない常温流通で、途上国においてはチルドチェーンの整はない地域にも常温流通により、腐敗しやすい食品や飲料を配布できるとしたものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、10〜40μの薄フィルムに、使用が簡便な低出力低エネルギーの電子線を使用して包装材料の内面を外側から殺菌して充填し、外層に強度のある外層シートを添わせて共にシールすることで、無菌包装物を完成させるものである。殺菌直後に筒体は折りたたまれていてその内側に充填パイプがあるために、無菌充填は安心して行われ、エネルギー消費の少ない無菌包装物を普及させることが出来るという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】低エネルギー電子線照射の効果の図
図2】低エネルギー電子線照射装置
図3】1枚のフィルムを使用する方法の図
図4】合掌するフィルムの上部から充填ノズルを入れる装置
図5】薄フィルムが一体化された外層シートを使う装置
図6】外層シートとインフレーションフィルムを使う装置
図7】インフレーションフィルムを使う装置
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下本発明を実施形態について図面を参照して説明する。各図面の符号で共通部分は符号をそろえて記載したので一部説明を略す。
【実施例1】
【0027】
図3は最も単純な機構の模式図である。薄フィルムのロール(1)から一定速度で繰り出される薄フィルム(2)は10〜40μであり、折り込み案内板(15)で折られて合掌され、低エネルギー電子線照射装置(5)により電子線の照射がされる。
【0028】
低エネルギー電子線照射装置(5)は図2或いはこれに類似するもので、連続照射を行う、薄フィルムの繰り出しが一定速度であることは殺菌レベルを一定にするために重要であり、また照射が瞬時でも止まると、そこに殺菌不良が生じるので、停電検知器を備える。低エネルギー電子線照射装置(5)の照射から下の筒体の内面は無菌で、無菌内部(18)が作られる。
【0029】
折りたたまれて殺菌された薄フィルムの、開いた側縁側からノズル(13)が差し込まれ、ノズル(13)から充填液が充填される。この充填は計量充填装置(14)により充填液の吐出と停止が行われて、計量充填が行われる、この装置は汎用物であるので形状を省略してある。
【0030】
次に開いた側縁を側縁シールバー(3)でシールする。側縁シールバー(3)は動きを示す記号(4)の如く加圧と離れて戻る往復運動をして、定速で送られる薄フィルムの動きに合わされている。
【0031】
低エネルギー電子線照射装置(5)で殺菌して直後にノズル(13)を薄フィルムの間に差し込み、側縁シールバー(3)でシールして筒体にするまでの間はクリーンボックス内である。
【0032】
外層ロール(6)の外層シートは内面側にシール材がラミネート或いは塗布されている。ここから繰り出される外層シート(7)は側縁シールバー(8)で薄フィルムと共にシールされ、ここで筒体(9)が形成される。側縁シールバー(8)は記号(4)の動きである。
【0033】
天底シールバー(10)は動きを示す記号(4)と同じ動きで、未充填の上の筒体の底シールと充填が済み下に下がった包装体の天部シールが同時に行われている。すなわちシールバーにより行われたシール部を上下に二分すると、下は天部シールとなり、上は次の容器の底部シールになる。切断バー(11)は容器の切り離しを行い、無菌包装物(12)が完成する。
【実施例2】
【0034】
図4は、一方向から低エネルギー電子線照射装置(5)の照射面を広く照射する方法で、側縁シールが終わって筒体が形成されて後の充填の前に、照射殺菌する照射領域の中でノズルを横方向に伸ばして、上部と下部を横に離し、ノズルの陰で電子線照射のされない部分を無くしたものである。この場合ノズルを図4の右の図のように曲げて、薄フィルムに照射される部分が重なるようにする。ノズルは図上太く示してあるが、細いか、扁平にして、薄フィルム間の距離を近づけることが望ましい。
【実施例3】
【0035】
図5は、合掌される一方の薄フィルムが一体化された外層シート(16)の薄フィルム側を筒体(9)内面側に使用するものである。この場合薄フィルムの繰り出しが安定するという利点がある。
【実施例4】
【0036】
図6は、インフレーションの筒状の薄フィルムを外層シートと一体にして用いる。この場合カッター(17)で筒を切り開いて、ここにノズル(13)が入る。薄灰色部(18)は無菌内部を示している。
【実施例5】
【0037】
図7は、単体のインフレーションフィルムを薄フィルムとして使用した方法でカッター(17)の使用は実施例4と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、簡便に使用できる低エネルギー電子線照射装置を使用して、安全に確実に無菌包装物の製造を行うことの出来るものであり、薄フィルムの外面から照射して合掌されている両内面を殺菌することが出来る。その殺菌と充填において、菌の混入がないことにより、管理手段が易しいものである。無菌包装物の普及により常温流通を増やし、チルドチェーンによるエネルギー消費を減らすことにも役立つものである。
【符号の説明】
【0039】
1 薄フィルムのロール
2 薄フィルム
3 側縁シールバー
4 シールの動きを示す記号
5 低エネルギー電子線照射装置
6 外層ロール
7 外層シート
8 側縁シールバー
9 筒体
10 天底シールバー
11 切断バー
12 無菌包装物
13 ノズル
14 計量充填装置
15 折り込み案内板
16 薄フィルムが一体化された外層シート
17 カッター
18 無菌内部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7